説明

エッジガイド、被記録媒体カセット、被記録媒体給送装置、記録装置

【課題】特に下段側トレイと上段側トレイとを備えた複数段構造の用紙カセットにおいて、下段側トレイへの用紙収容枚数(積層枚数)が多くなっても、適切にエッジをガイドすることのできるエッジガイドを得る。
【解決手段】下段側トレイ50と上段側トレイ60とを備えて構成された用紙カセット100において、下段側トレイ50に設けられたエッジガイド52は、ベース52aと、立設部52bと、回動軸52eを中心に回動可能なプレート材52cと、このプレート材52cを矢印c1で示す方向に付勢する付勢手段とを備えて構成されている。上段側トレイ60が取り外された状態では、プレート材52cの回動によりエッジガイド52のガイド高さも高くなるので、用紙積層枚数が多くなっても、これに対応することができる。その結果、スキュー等の給紙不良を招くことなく、適切に用紙を給送することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録媒体のエッジを規制するエッジガイドに関する。また本発明は、当該エッジガイドを備えた被記録媒体カセット、被記録媒体給送装置に関し、また更にこれらを備えた、プリンターやファクシミリに代表される記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
装置本体に対して着脱可能な用紙カセットは従来から広く用いられている。また、その中でも特許文献1や特許文献2に示されるように、一つの着脱自在な用紙カセット(トレイ)において下段と上段に用紙収容部を備えた2段式構造のものが知られている。尚、記録装置において用紙を収容する用紙収容部の呼称としては「カセット」、「トレイ」など種々のものがあるが、本明細書では装置本体に対して着脱可能な一つのユニット体全体を「カセット」と言い、このカセット内に設けられた複数の用紙収容部を「トレイ」と言うこととする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−273565号公報
【特許文献2】特開2007−91445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の2段式構造の用紙カセットにおいては、上段トレイは下段トレイに対し、スライド可能に且つ回動可能に設けられており、スライドすることで上段トレイから用紙を給送可能な状態と下段トレイから用紙を給送可能な状態とを切り換える様になっている。また、上段トレイが回動することで、下段トレイの用紙収容空間が開放される様に構成されている。
【0005】
しかしながら従来の2段式構造の用紙カセットは、上段トレイが下段トレイから取り外すことができかなったことから、例えば上段トレイを殆ど利用しないユーザーにとって、上段トレイは下段トレイの用紙収容可能枚数を少なくする構成として、必ずしも有用なものではなかった。また、下段トレイに用紙を収容する際には上段トレイを回動させるといったワンアクションが必要となる。
【0006】
この様な技術的課題に対し、上段側トレイを下段側トレイに対し着脱可能に構成することが、一つの解決策となる。即ち、上段側トレイを下段側トレイから取り外せば、下段側トレイの用紙収容可能枚数を増やすことができる。しかしながらこの場合、下段側トレイに設けられたエッジガイドのガイド高さが不足し、結果として適切に用紙をガイドしながら給送することができないこととなる。
【0007】
そこで本発明はこの様な状況に鑑みなされたものであり、その目的は、特に下段側トレイと上段側トレイとを備えた複数段構造の用紙カセットにおいて、下段側トレイへの用紙収容枚数(積層枚数)が多くなっても、適切にエッジをガイドすることのできるエッジガイドを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する為に、本発明の第1の態様は、被記録媒体のエッジをガイドするガイド面を備えたエッジガイドであって、前記ガイド面のガイド高さが調整可能に構成されていることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、被記録媒体のエッジをガイドするガイド面を備えたエッジガイドは、ガイド面のガイド高さが調整可能に構成されているので、被記録媒体の積層枚数が多くなっても、これに対応することができる。その結果、スキュー等の給紙不良を招くことなく、適切に被記録媒体を給送することができる。
【0010】
本発明の第2の態様は、被記録媒体のエッジをガイドするガイド面を備えたエッジガイドであって、前記ガイド面のガイド高さが第1の高さとなる第1の状態と、前記ガイド面のガイド高さが前記第1の高さより高い第2の高さとなる第2の状態と、を切り換え可能に構成されていることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、被記録媒体のエッジをガイドするガイド面を備えたエッジガイドは、ガイド面のガイド高さが異なる第1の状態と第2の状態とを切り換え可能に構成されているので、上記第1の態様と同様に、被記録媒体の積層枚数が多くなっても、これに対応することができる。その結果、スキュー等の給紙不良を招くことなく、適切に被記録媒体を給送することができる。
【0012】
本発明の第3の態様は、第1のまたは第2の態様において、前記ガイド面は、当該ガイド面と交差する回動軸線を中心に回動可能なプレート材により形成され、前記プレート材が回動することにより、前記ガイド高さが変化する構成を備えることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、前記ガイド面は、回動支点を中心に回動可能なプレート材により形成され、前記プレート材が回動することにより、前記ガイド高さが変化する様に構成されているので、前記ガイド面のガイド高さを変化させる構成を、構造簡単にして低コストに得ることができる。加えて、前記プレート材はガイド面と交差する回動軸線を中心に回動可能であるので、ガイド面をガイド高さに拘わらず一つの面によって形成することができ、即ちガイド高さに拘わらず段差や凹凸、或いは継ぎ目の無いガイド面を形成することができ、被記録媒体のセット時に引っ掛かりなどが生じることがない。
【0014】
本発明の第4の態様は、第3の態様において、前記プレート材は、前記ガイド高さが高くなる回動方向に付勢された状態に設けられていることを特徴とする。
本態様によれば、前記プレート材は、前記ガイド高さが高くなる回動方向に付勢された状態に設けられているので、前記ガイド高さを高くする際の操作性が向上する。
【0015】
本発明の第5の態様は、被記録媒体を収容する下段側トレイと、当該下段側トレイの上部に設けられた、被記録媒体を収容する上段側トレイと、を備えて構成された被記録媒体カセットであって、前記下段側トレイが、第1から第4の態様のいずれかに係るエッジガイドを備え、前記エッジガイドは、前記上段側トレイと係合することにより前記ガイド面のガイド高さが低くなり、前記上段側トレイとの係合が解除されることにより前記ガイド面のガイド高さが高くなる構成を備えていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、下段側トレイと上段側トレイとを備えた複数段構造の被記録媒体カセットにおいて、下段側トレイに設けられたエッジガイドが、上段側トレイと係合することにより前記ガイド面のガイド高さが低くなり、上段側トレイとの係合が解除されることにより前記ガイド面のガイド高さが高くなる構成を備えているので、上段側トレイを取り外した際に下段側トレイの被記録媒体収容可能枚数が増えるとともに、特段の操作を要さずにガイド面のガイド高さが高くなる。従ってユーザビリティの高い被記録媒体カセットを提供することができる。
【0017】
本発明の第6態様は、被記録媒体を給送する被記録媒体給送装置であって、第5の態様に係る被記録媒体カセットを備えていることを特徴とする。また本発明の第7の態様は、被記録媒体に記録を行う記録手段と、第6の態様に係る被記録媒体給送装置と、を備えたことを特徴とする記録装置である。これらの態様によれば、被記録媒体給送装置或いは記録装置において、上述した第5の態様と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係るプリンターの用紙搬送経路を示す側断面図。
【図2】本発明の一実施形態に係る用紙カセットの斜視図。
【図3】本発明の一実施形態に係る用紙カセットの要部断面斜視図。
【図4】(A)、(B)は本発明に係るエッジガイドの一実施形態を示す斜視図。
【図5】(A)、(B)は本発明に係るエッジガイドの一実施形態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1乃至図5を参照しつつ本発明の一実施形態について説明する。図1は本発明に係る「記録装置」の一実施形態であるインクジェットプリンター(以下「プリンター」と言う)1の用紙搬送経路を示す側断面図、図2は本発明に係る「被記録媒体カセット」の一実施形態である用紙カセット100の斜視図、図3は同要部断面斜視図である。尚、図1において右方向は用紙送り出し方向、図面表裏方向が用紙幅方向を示している。
【0020】
また、図4(A)、(B)は本発明の一実施形態に係るエッジガイド52の斜視図であり、図4(A)はガイド面のガイド高さが通常の状態(第1の状態)を、図4(B)はガイド面のガイド高さが高くなった状態(第2の状態)を、それぞれ示している。また図5(A)、(B)も同様に、本発明の他の実施形態に係るエッジガイド52’の斜視図であり、図5(A)はガイド面のガイド高さが通常の状態(第1の状態)を、図5(B)はガイド面のガイド高さが高くなった状態(第2の状態)を、それぞれ示している。
【0021】
■■■1.プリンターの全体構成■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
以下、図1を参照しつつプリンター1の全体構成について概説する。プリンター1は、装置底部に給送装置2を備え、当該給送装置2から、「被記録媒体」の一例としての用紙(主として単票紙)を1枚ずつ給送し、記録手段4において記録(インクジェット記録)を行い、装置前方側(図1において左側)に設けられた図示しない排紙スタッカへ向けて排出される構成を備えている。
以下、用紙搬送経路上の構成要素について更に詳説する。
給送装置2は、用紙カセット100と、ピックアップローラー16と、ガイドローラー20と、分離手段21と、を備えている。
【0022】
複数枚の用紙Pを積層状態でセット可能な用紙カセット100は、給送装置2の装置本体に対し、装置前方側から装着及び取り外し可能であり、下部に位置して用紙カセット100の基体を構成する下段側トレイ50と、その上部に位置する、給送可能位置と退避領域との間をスライド可能な上段側トレイ60と、の2つの用紙収容部を備えている。
【0023】
尚、図1においては、下段側トレイ50に収容される用紙を符号P1で、上段側トレイ60に収容される用紙を符号P2で、それぞれ示している(以下特に区別する必要がない場合は「用紙P」と言う)。
【0024】
図示しないモータによって回転駆動されるピックアップローラー16は、揺動軸18を中心に揺動する揺動部材17に設けられており、上段側トレイ60が最も装置後方側(図1において左方向:用紙カセット100の引き抜き方向側)にスライドした状態、即ち上段側トレイ60が退避領域にあるときは、下段側トレイ50に収容された用紙P1の最上位のものと接して回転することにより、当該最上位の用紙P1を下段側トレイ50から送り出す。
【0025】
また上段側トレイ60が最も装置前方側(図1において右方向:用紙カセット100の装着方向側)にスライドした突き当て位置にあるとき、即ち上段側トレイ60の給送可能位置では、上段側トレイ60に収容された用紙P2の最上位のものと接して回転することにより、当該最上位の用紙P2を上段側トレイ60から送り出す。
【0026】
この上段側トレイ60が給送可能位置に位置決めされた状態(図1の状態)では、下段側トレイ50の分離斜面54が、上段側トレイ60の前方側内壁よりも上段側トレイ60に収容された用紙先端側に突出するように構成されており、これにより分離斜面54が上段側トレイ60から用紙が送り出される際の分離手段として利用されるようになっている。即ち、下段側トレイ50の分離斜面54が、下段側トレイ50と上段側トレイ60の共通の分離手段として利用される様になっている。
【0027】
次に、分離斜面54の下流側には自由回転可能なガイドローラー20が設けられ、このガイドローラー20の下流側には、分離ローラー22と駆動ローラー23とを備えて構成された分離手段21が設けられている。分離ローラー22は、外周面が弾性材によって形成されるとともに駆動ローラー23と圧接可能に設けられ、且つ、トルクリミッタ機構により、所定の回転抵抗が与えられた状態に設けられている。従って重送されようとする次位以降の用紙Pが、当該分離ローラー22と駆動ローラー23との間で止められ、即ち重送が防止される様になっている。尚、駆動ローラー23は図示しないモータにより用紙Pを下流側へ送る方向に回転駆動される。
【0028】
分離手段21の下流側には、図示しないモータにより回転駆動される駆動ローラー26と、駆動ローラー26との間で用紙Pをニップして従動回転するアシストローラー27と、を備えて構成された第1中間送り部25が設けられており、この第1中間送り部25により、用紙Pが更に下流側へと送られる。尚、符号29は、用紙Pが湾曲反転経路を通過する際の(特に用紙後端が通過する際の)通紙負荷を軽減する従動ローラーを示している。
【0029】
従動ローラー29の下流側には図示しないモータにより回転駆動される駆動ローラー32と、駆動ローラー32との間で用紙Pをニップして従動回転するアシストローラー33と、を備えて構成された第2中間送り部31が設けられており、この第2中間送り部31により、用紙Pが更に下流側へと送られる。
【0030】
第2中間送り部31の下流側には、記録手段4が配置されている。記録手段4は、搬送手段5と、記録ヘッド42と、下部紙案内39と、排出手段6と、を備えている。搬送手段5は、モータによって回転駆動される搬送駆動ローラー35と、該搬送駆動ローラー35に圧接して従動回転するよう上部紙案内37に軸支される搬送従動ローラー36とを備えて構成されている。搬送手段5に到達した用紙Pは、搬送駆動ローラー35と搬送従動ローラー36とによってニップされた状態で搬送駆動ローラー35が回転することにより、下流側へと精密送りされる。
【0031】
続いて記録ヘッド42はキャリッジ40の底部に設けられ、当該キャリッジ40は主走査方向(図1の紙面表裏方向)に延びるキャリッジガイド軸41にガイドされながら、図示しない駆動モータによって主走査方向に往復動する様に駆動される。尚、キャリッジ40はインクカートリッジを搭載しない所謂オフキャリッジタイプであり、インクカートリッジ(図示せず)がキャリッジ40から独立して設けられ、インク供給チューブ(図示せず)を介してインクカートリッジから記録ヘッド42へとインクが供給されるように構成されている。
【0032】
記録ヘッド42と対向する位置には下部紙案内39が設けられ、当該下部紙案内39によって、用紙Pと記録ヘッド42との距離が規定されるようになっている。そして下部紙案内39の下流側には、記録の行われた用紙Pを排出する排出手段6が設けられている。排出手段6は図示しないモータによって回転駆動される排出駆動ローラー44と、当該排出駆動ローラー44に接して従動回転する排出従動ローラー45とを備えて構成され、記録手段4によって記録の行われた用紙Pは、排出手段6により、装置前方側に設けられた図示を省略するスタッカへと排出される。
【0033】
■■■2.用紙カセットの詳細■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
以上がプリンター1の概要であり、以下、用紙カセット100について図2及び図3をも併せて参照しつつ更に詳説する。
下段側トレイ50は、その底面50aに、用紙送り方向(即ち、用紙長さ方向)にスライド可能なエッジガイド51(図1)を備えており、このエッジガイド51により後端エッジの位置が規制されるようになっている。
【0034】
また、用紙送り方向と直交する方向(即ち、用紙幅方向)にスライド可能なエッジガイド52も設けられており、このエッジガイド52により、一方側のサイドエッジの位置が規制されるようになっている。尚、他方側のサイドエッジを規制するのは、下段側トレイ50の側壁50b(図2)となる。即ち、下段側トレイ50の側壁50bは、固定エッジガイドとして機能する。
【0035】
ここで、用紙P1の後端位置を規制するエッジガイド51は、ガイド面51aが、分離斜面54とほぼ平行になるように傾斜面で形成されており、これによってエッジガイド51を用紙後端に突き当てた際に、用紙束の先端が分離斜面54に倣う様になっている。尚、用紙P1のサイドエッジを規制するエッジガイド52については、後に詳述する。
【0036】
次に、下段側トレイ50の底面50aには、ピックアップローラー16と用紙P1との接触位置に対応する場所に高摩擦材53が配置されており、この高摩擦材53により、ピックアップローラー16による用紙送り出し時に用紙束ごと下流側に送られないよう、当該用紙束が保持される様になっている。
【0037】
一方、上段側トレイ60についても下段側トレイ50と同様に、その底面60aに、用紙長さ方向にスライド可能なエッジガイド61と、用紙幅方向にスライド可能なエッジガイド62と、を備えている。またピックアップローラー16と用紙P2との接触位置に対応する場所に高摩擦材64が配置されている。
【0038】
続いて、上段側トレイ60の可動構造について説明する。上段側トレイ60は、スライド部材65と、トレイベース66と、を備えて構成されており、スライド部材65は、下段側トレイ50の側壁50b、50cに対し、用紙送り方向及びその逆方向にスライド変位可能に設けられている。
【0039】
トレイベース66は、用紙収容空間を形成するものであり、このトレイベース66は、スライド部材65に対し、両端の回動軸66a、66aを中心にして矢印rで示す方向に回動可能に設けられている。尚、本実施形態において上段側トレイ60(トレイベース66)の回動限度は、90度より大きく、180度より小さい。即ち、上段側トレイ60が限度一杯に回動した状態では、下段側トレイ50の用紙収容空間が露呈し、下段側トレイ50に用紙を収容することが可能になる。
【0040】
続いて、スライド部材65において一方側の側部の下側には、図3に示す様にラック65aが形成されており、このラック65aに、下段側トレイ50に設けられたピニオン歯車55が噛合する様に構成されている。即ち、ピニオン歯車55が回転することにより、スライド部材65(上段側トレイ60)がスライド変位する様に構成されている。
【0041】
このピニオン歯車55は、用紙カセット100がプリンター1の装置本体に装着された際に、プリンター1の装置本体側に設けられた駆動歯車(不図示)と噛合可能となっている。この駆動歯車は、図示しないモーターにより回転駆動される様になっており、これによってスライド部材65(上段側トレイ60)が駆動される様になっている。
【0042】
ここで、ラック部65aのやや前方側には、係止部65bが形成されており、この係止部65bが、下段側トレイ50に形成された拘束レール50dの下側に入り込める様に構成されている。係止部65bが拘束レール50dの下側に入り込んだ状態(係止部65bが図3の位置LよりA側にある状態:以下では上段側トレイ60の「駆動領域」と言う)では、ラック部65aがピニオン歯車55と噛合するとともに、係止部65bが拘束レール50dの下側に入り込んでいることで、スライド部材65(上段側トレイ60)が下段側トレイ50から取り外せない様に拘束された状態となる。
【0043】
一方、係止部65bが拘束レール50dから手前に外れた状態(係止部65bが図3の位置LよりB側にある状態:以下では上段側トレイ60の「非駆動領域」と言う)では、ラック部65aがピニオン歯車55との噛合を解除するとともに、係止部65bが拘束レール50dから外れることで、スライド部材65(上段側トレイ60)が下段側トレイ50から取り外せる状態となる(図2において仮想線及び符号60’で示す)。尚、本実施形態では、上段側トレイ60の非駆動領域は、上段側トレイ60が最も装置手前側にスライドした位置である。
【0044】
以上の様に、下段側トレイ50と上段側トレイ60とを備えた複数段構造の用紙カセット100は、上段側トレイ60が、下段側トレイ50に対して着脱可能に構成されているので、上段側トレイ60を取り外すことにより下段側トレイ50の用紙収容可能枚数が増え、下段側トレイ50を利用する際の利便性がより一層向上する。また、上段側トレイ60を取り外すことにより下段側トレイ50の用紙収容空間が完全に露呈するので、下段側トレイ50へ用紙を収容する際の作業性がより一層向上する。
【0045】
また本実施形態では、上段側トレイ60はラック部65a、ピニオン歯車55、これを駆動するモーター(不図示)等、のこれら駆動手段によってスライド変位可能であり、上段側トレイ60の駆動領域では当該上段側トレイ60は下段側トレイ50に拘束された状態となり、非駆動領域では前記拘束状態が解除されるので、駆動領域においてはラック部65aとピニオン歯車55との噛合が解除されることなく、上段側トレイ60を確実にスライド変位させことができる。
【0046】
尚、本実施形態では上段側トレイ60は、退避領域において下段側トレイ50の用紙収容空間の上方に位置するが、他の実施形態として、下段側トレイ50の用紙収容領域外までスライド変位可能に構成すれば、上段側トレイ60を回動させたり、或いは取り外したりすることなく、下段側トレイ50の用紙収容領域を完全に開放することができる。
【0047】
更に、他の実施形態として上段側トレイ60を、下段側トレイ50から取り外した状態で、プリンター1の装置本体に対して独立して着脱可能に構成すれば、下段側トレイ50を利用することなく上段側トレイ60から用紙を送り出すことができ、ユーザビリティをより一層向上させることができる。
【0048】
■■■3.エッジガイドの詳細■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
続いて、図4及び図5を参照しながら下段側トレイ50に設けられるエッジガイド52について詳説する。
上述の様に上段側トレイ60を下段側トレイ50から取り外すと、下段側トレイ50の用紙収容空間が増加し、より多数枚の用紙を下段側トレイ50に収容することができる。しかしながら、下段側トレイ50に設けられているエッジガイドのガイド高さが不変であると、上段側トレイ60を取り外しても、下段側トレイ50に収容された用紙を適切にガイドすることができない。
【0049】
そこで本実施形態では、下段側トレイ50に設けられるエッジガイド52は、ガイド面のガイド高さが調節可能に構成されている。より具体的には、図4(A)、(B)に示すように、エッジガイド52は下段側トレイ50の底面に沿ってスライドするベース52aと、このベース52aに立設される様にベース52aと一体的に形成された立設部52bと、この立設部52bに対して回動軸52eを中心に回動可能なプレート材52cと、このプレート材52cを矢印c1で示す方向に付勢する、図示しない付勢手段と、を備えて構成されている。
【0050】
符号52dは用紙エッジをガイドするガイド面を示しており、図4(A)に示す第1の状態から、図4(B)に示す第2の状態への変化に示す様に、プレート材52cが矢印c1で示す方向に回動することによってガイド面52dのガイド高さが高くなる様に構成されている。
【0051】
より詳しくは、通常、上段側トレイ60が下段側トレイ50に装着された状態では、プレート材52cは上段側トレイ60の底面と係合することにより、つまり上方から押されることによって、図4(A)に示す第1の状態を維持する。
【0052】
そして上段側トレイ60が図2において符号60’で示すように下段側トレイ50から取り外されると、上段側トレイ60とプレート材52cとの係合状態が解除されるので、これによって付勢手段の付勢力を受けてプレート材52cが図4(B)に示すように回動し、第2の状態に切り換わる。これによってガイド面52dのガイド高さが、h0(図4(A))からh1(図4(B))に変化する(高くなる:h1>h0)。
【0053】
即ち、ガイド面52dのガイド高さが調整可能であり、下段側トレイ50の用紙収容可能枚数の増加に伴い、エッジガイド52のガイド高さを高くすることができるので、用紙積層枚数が多くなっても、これに対応することができる。その結果、スキュー等の給紙不良を招くことなく、適切に用紙を給送することができる。
【0054】
また本実施形態においては、ガイド面52dは、回動軸52eを中心に回動可能なプレート材52cにより形成され、プレート材52cが回動することにより、ガイド面52dのガイド高さが調整可能に構成されているので、ガイド面52dのガイド高さ切り換え機構を、構造簡単にして低コストに得ることができる。
【0055】
加えて、本実施形態では回動軸52eはガイド面52dと交差する(本実施形態では直交する)回動軸線を形成する回動軸であり、この様な回動軸を中心に回動することで、第1の状態及び第2の状態の双方において一つの面であるガイド面52dによって用紙エッジが規制されるので、第1の状態及び第2の状態の双方において段差や凹凸、或いは継ぎ目の無いガイド面を形成することができ、用紙セット時に引っ掛かりなどが生じることがない。
【0056】
加えて本実施形態では、エッジガイド52は、上段側トレイ60と係合することによりガイド面52dのガイド高さが低くなり、上段側トレイ60との係合が解除されることによりガイド面52dのガイド高さが高くなるので、特段の操作を要さずにガイド面52dのガイド高さが高くなる。これによりユーザビリティの高い用紙カセットを得ることができる。尚、本実施形態では、上段側トレイ60が下段側トレイ50に装着された状態において、上段側トレイ60がそのスライド領域のいずれの場所にあっても、上段側トレイ60とエッジガイド52(プレート材52c)との係合状態が維持される様になっている。
【0057】
以上説明した実施形態は、ガイド面52dのガイド高さについて、低い状態(図4(A))と高い状態(図4(B))の2つの高さを切り換える様に構成されているが、例えば高さ位置を更に細分化して段階的に切り換わる様に構成しても良いし、或いは段階的ではなく連続的に切り換わる様に構成しても良い。その際、設定したガイド高さを保持する手段を設けることが好ましい。
【0058】
続いて、図5(A)、(B)を参照しながら他の実施形態について説明する。尚、図5(A)、(B)において図4(A)、(B)と同じ構成については同一符号を付しており、また対応する構成ではあるが異なるものについては符号に「’」(ダッシュ記号)を付している。
【0059】
図5(A)、(B)において、エッジガイド52’はベース52aと、このベース52aに立設される様にベース52aと一体的に形成された立設部52b’と、この立設部52b’に対して回動軸受52f、52fを中心に回動可能なプレート材52c’と、このプレート材52c’を矢印c2で示す方向に付勢する、図示しない付勢手段と、を備えて構成されている。尚、回動軸受52f、52fは、立設部52b’に形成された軸(不図示)を受ける軸受けである。
【0060】
符号52d-1、52d-2は用紙エッジをガイドするガイド面を示しており、図5(A)に示す第1の状態では、立設部52b’が形成するガイド面52d-1が、エッジガイド52’のガイド面を構成する。尚このときのガイド高さは、h0である。
【0061】
そして図5(A)に示す第1の状態から、図5(B)に示す第2の状態への変化に示す様に、プレート材52c’が矢印c2で示す方向に回動することによって、プレート材52c’が形成するガイド面52d-2が、ガイド面52d-1の上部に展開されて、全体としてのガイド高さがh1に変化する(高くなる)ようになっている(h1>h0)。
【0062】
従って本実施形態においても、下段側トレイ50の用紙収容可能枚数の増加に伴い、エッジガイド52’のガイド高さも高くなるので、用紙積層枚数が多くなっても、これに対応することができる。その結果、スキュー等の給紙不良を招くことなく、適切に用紙を給送することができる。
【0063】
尚、本実施形態に係るエッジガイド52’も、図4(A)、(B)を参照しつつ説明したエッジガイド52と同様に、上段側トレイ60が下段側トレイ50に装着された状態では、プレート材52c’が上段側トレイ60の底面と係合することにより、つまり上方から押されることによって、第1の状態を維持する様に構成しても良い。従って第1の状態は、必ずしも図5(A)に示すようにプレート材52c’が完全に下方に回動して立設部52b’に密着している状態に限られず、図5(A)に示す状態から矢印c1方向に或る程度の角度回動した状態であっても構わない。
【0064】
また、図5(B)に示す状態から、上段側トレイ60によってプレート材52c’が上方から押される際、プレート材52c’が下方向に回動し易い様に、図5(B)に示す第2の状態においてプレート材52c’が、多少の角度、第1の状態側に傾いていても良い。
【0065】
更に、以上説明したエッジガイド52、52’は、上段側トレイ60と係合/係合解除することによって第1の状態と第2の状態とを切り換えるが、これに限られず、例えば第1の状態や第2の状態を保持する保持手段を別途設け、ユーザー操作によって当該保持手段による状態保持を解除する様に構成しても良い。
【0066】
また、以上説明したエッジガイド52、52’は、用紙のサイドエッジをガイドするエッジガイドとして説明したが、用紙の後端をガイドするエッジガイド(図1において符号51)に適用しても良いことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0067】
1 インクジェットプリンター、2 給送装置、4 記録手段、5 搬送手段、6 排出手段、16 ピックアップローラー、17 揺動部材、18 揺動軸、20 従動ローラー、21 分離手段、22 分離ローラー、23 駆動ローラー、25 第1中間送り部、26 駆動ローラー、27 アシストローラー、29 従動ローラー、31 第2中間送り部、32 駆動ローラー、33 アシストローラー、35 搬送駆動ローラー、36 搬送従動ローラー、37 上部紙案内、39 下部紙案内、40 キャリッジ、41 キャリッジガイド軸、42 記録ヘッド、44 排出駆動ローラー、45 排出従動ローラー、
50 下段側トレイ、50a 底面、50b、50c 側壁、50d 拘束レール、51、52、52’ エッジガイド、52a ベース部、52b、52b’ 立設部、52c、52c’ プレート材、52d、52d-1、52d-2 ガイド面、52e 回動軸、52f 回動軸受、53 高摩擦材、54 分離斜面、55 ピニオン歯車、
60 上段側トレイ、60a 底面、61、62 エッジガイド、64 高摩擦材、65 スライド部材、65a ラック、65b 係止部、66 トレイベース、66a 回動軸、
100 用紙カセット、P、P1、P2 記録用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体のエッジをガイドするガイド面を備えたエッジガイドであって、
前記ガイド面のガイド高さが調整可能に構成されている、
ことを特徴とするエッジガイド。
【請求項2】
被記録媒体のエッジをガイドするガイド面を備えたエッジガイドであって、
前記ガイド面のガイド高さが第1の高さとなる第1の状態と、
前記ガイド面のガイド高さが前記第1の高さより高い第2の高さとなる第2の状態と、を切り換え可能に構成されている、
ことを特徴とするエッジガイド。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエッジガイドにおいて、前記ガイド面は、当該ガイド面と交差する回動軸線を中心に回動可能なプレート材により形成され、
前記プレート材が回動することにより、前記ガイド高さが変化する構成を備える、
ことを特徴とするエッジガイド。
【請求項4】
請求項3に記載のエッジガイドにおいて、前記プレート材は、前記ガイド高さが高くなる回動方向に付勢された状態に設けられている、
ことを特徴とするエッジガイド。
【請求項5】
被記録媒体を収容する下段側トレイと、当該下段側トレイの上部に設けられた、被記録媒体を収容する上段側トレイと、を備えて構成された被記録媒体カセットであって、
前記下段側トレイが、請求項1から4のいずれか1項に記載のエッジガイドを備え、
前記エッジガイドは、前記上段側トレイと係合することにより前記ガイド面のガイド高さが低くなり、前記上段側トレイとの係合が解除されることにより前記ガイド面のガイド高さが高くなる構成を備えている、
ことを特徴とする被記録媒体カセット。
【請求項6】
被記録媒体を給送する被記録媒体給送装置であって、請求項5に記載の被記録媒体カセットを備えている、
ことを特徴とする被記録媒体給送装置。
【請求項7】
被記録媒体に記録を行う記録手段と、
請求項6に記載の被記録媒体給送装置と、を備えたことを特徴とする記録装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−144315(P2012−144315A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2751(P2011−2751)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】