説明

エッジノードの交流トラヒック計算装置および交流トラヒック計算方法

【課題】フルメッシュで交流トラヒックが発生しないサービス統合IP網に於いて、精度よく交流トラヒック量を推定する。
【解決手段】交流トラヒック計算装置11は、全てのエッジノードにて、このエッジノードへの交流トラヒックが存在する他の全てのエッジノードの出力用仮想人口の総和に当該エッジノードの入力用仮想人口を乗じた値が入力トラヒック量に等しく、かつ、当該エッジノードへの交流トラヒックが存在する他の全てのエッジノードの入力用仮想人口の総和に、当該エッジノードの出力用仮想人口を乗じた値が出力トラヒック量に等しくなる出力用仮想人口と入力用仮想人口を求める。第1のエッジノードから第2のエッジノードへの交流トラヒックが存在するとき、第1のエッジノードの入力用仮想人口に、前記第2のエッジノードの出力用仮想人口を乗じた値を、第1のエッジノードから前記第2のエッジノードへの交流トラヒック量とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークの第1のエッジノードから第2のエッジノードへの交流トラヒックを計算する交流トラヒック計算装置および交流トラヒック計算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークの管理に於いては、ネットワークのトポロジおよび経路を最適化してネットワーク資源を有効活用し、転送品質を維持すると共に運用コストを低減することが求められる。ネットワークのトポロジおよび経路を最適化するためには、トポロジおよび経路の情報に加え、任意の2つのエッジノード間のトラヒック量である交流トラヒック量の情報が必要となる。
【0003】
ネットワーク内のノードにNetFlow(登録商標)や、sFLOW(登録商標)などのネットワークトラヒック監視ツールまたは帯域監視ソフトウェアを導入することで、ネットワーク内の任意のノードを始点とし、任意の他のノードを終点とするフロー単位のトラヒック量の測定が可能である。しかし、このフロー単位のトラヒック量をネットワーク内のすべてのノード間について計測しようとすると、長時間を要し、実用的ではない。
【0004】
非特許文献1には、ネットワークからの情報収集負荷が比較的低い入出力トラヒック量の情報をもとに、交流トラヒック量を推定するSimple Gravity法が記載されている。
【0005】
このSimple Gravity法は、最も基本的な交流トラヒック推定法の1つである。このSimple Gravity法が背景とするGravityモデルとは、交流トラヒックが、当該交流トラヒックに係る両エッジノードがカバーする地域の収容者数(人口)に比例するというモデルである。Simple Gravity法は、このGravityモデルを踏まえて、収容者数(人口)の代わりに各エッジノードの外部ネットワークからの入出力トラヒック量に交流トラヒックが比例するものとして計算する方法である。
【0006】
Simple Gravity法では、全てのエッジノードにて、ネットワーク外部から内部へのトラヒック量である入力トラヒック量XINと、ネットワーク内部から外部へのトラヒック量である出力トラヒック量XOUTとを測定する。更に、以下の式(1)または式(2)に基いて、エッジノードiからエッジノードjへの交流トラヒック量ti,jを推定する。
【0007】
【数1】

【0008】
【数2】

【0009】
図9は、比較例に於ける交流トラヒック計算システムを示す図である。
比較例の交流トラヒック計算システムであるネットワーク10Aは、端末装置30が接続された通信ネットワーク40Aと、交流トラヒック計算装置11Aとを備えている。
【0010】
端末装置30は、例えば、各ユーザが操作するコンピュータである。端末装置30は、図示しない収容システムを介して、この通信ネットワーク40Aに接続されている。
【0011】
交流トラヒック計算装置11Aは、図示しない処理部と記憶部と通信部とを有している。交流トラヒック計算装置11Aは、通信部によって、通信ネットワーク40Aの全てのエッジノードから入出力トラヒック量の情報を受信し、処理部によって、交流トラヒック量を推定(算出)する。
【0012】
この通信ネットワーク40Aは、相互に接続されたノード20a−1〜20a−10を備えている。このノード20a−1〜20a−10は、例えば光クロスコネクト装置であり、端末装置30の間で送受信される通信データの経路を選択する。
【0013】
エッジノード「1」であるノード20a−1は、一方が端末装置30に接続され、他方がノード20a−8とノード20a−9とに接続されている。この端末装置30は複数台または1台であるが、図9では代表して1台だけを示している。他のエッジノードに接続されている端末装置30も、同様に複数台または1台である。
ノード20a−2は、ノード20a−7とノード20a−8とに接続されている。
エッジノード「2」であるノード20a−3は、一方が複数台または1台の端末装置30に接続され、他方がノード20a−9に接続されている。
【0014】
エッジノード「3」であるノード20a−4は、一方が複数台または1台の端末装置30に接続され、他方がノード20a−9とノード20a−10とに接続されている。
【0015】
エッジノード「4」であるノード20a−5は、一方が複数台または1台の端末装置30に接続され、他方がノード20a−7とノード20a−10とに接続されている。
ノード20a−6は、一方が交流トラヒック計算装置11Aに接続され、他方がノード20a−7に接続されている。
ノード20a−7は、ノード20a−2,20a−8,20a−9,20a−10,20a−5,20a−6に接続されている。
ノード20a−8は、ノード20a−1,20a−9,20a−7,20a−2に接続されている。
ノード20a−9は、ノード20a−8,20a−7,20a−10,20a−4,20a−3,20a−1に接続されている。
ノード20a−10は、ノード20a−9,20a−4,20a−5,20a−7に接続されている。
【0016】
各エッジノードであるノード20a−1,20a−3,20a−4,20a−5は、ネットワーク10Aの外部から内部へのトラヒック量である入力トラヒック量XINと、ネットワーク10Aの内部から外部へのトラヒック量である出力トラヒック量XOUTとを計測する。
【0017】
図10(a),(b)は、比較例に於けるフルメッシュIP網の例を示す図である。
前述した図9に示す通信ネットワーク40Aは、それぞれ複数台の端末装置30が、収容システムを介して、それぞれエッジノード「1」(ノード20a−1)、エッジノード「2」(ノード20a−3)、エッジノード「3」(ノード20a−4)、および、エッジノード「4」(ノード20a−5)に接続されている。エッジノード「1」〜「5」には、全て交流トラヒックが発生している。これを、フルメッシュのネットワークという。
【0018】
Gravityモデルによれば、フルメッシュのネットワークに於いて、交流トラヒック量は、当該交流トラヒックに係る両エッジノードに接続されている端末装置30(収容者数=人口)に比例する。よって、各エッジノードの外部ネットワークからの入出力トラヒック量と交流トラヒック量とが比例するものとして計算することにより、この交流トラヒック量を推定することが可能である。
【0019】
図10(a)は、フルメッシュIP網を示す図である。
このフルメッシュIP網は、エッジノード「1」〜エッジノード「4」の間に、全て交流トラヒックが発生している。
エッジノード「1」の入力トラヒック量XINと出力トラヒック量XOUTとは、それぞれ10Mbpsである。
エッジノード「2」の入力トラヒック量XINと出力トラヒック量XOUTとは、それぞれ20Mbpsである。
エッジノード「3」の入力トラヒック量XINと出力トラヒック量XOUTとは、それぞれ30Mbpsである。
エッジノード「4」の入力トラヒック量XINと出力トラヒック量XOUTとは、それぞれ40Mbpsである。
【0020】
エッジノード「1」からエッジノード「1」への交流トラヒック量t1,1の実測値は、1Mbpsである。
エッジノード「1」からエッジノード「2」への交流トラヒック量t1,2の実測値は、2Mbpsである。
エッジノード「1」からエッジノード「3」への交流トラヒック量t1,3の実測値は、3Mbpsである。
エッジノード「1」からエッジノード「4」への交流トラヒック量t1,4の実測値は、4Mbpsである。
【0021】
エッジノード「2」からエッジノード「1」への交流トラヒック量t2,1の実測値は、2Mbpsである。
エッジノード「2」からエッジノード「2」への交流トラヒック量t2,2の実測値は、4Mbpsである。
エッジノード「2」からエッジノード「3」への交流トラヒック量t2,3の実測値は、6Mbpsである。
エッジノード「2」からエッジノード「4」への交流トラヒック量t2,4の実測値は、8Mbpsである。
【0022】
エッジノード「3」からエッジノード「1」への交流トラヒック量t3,1の実測値は、3Mbpsである。
エッジノード「3」からエッジノード「2」への交流トラヒック量t3,2の実測値は、6Mbpsである。
エッジノード「3」からエッジノード「3」への交流トラヒック量t3,3の実測値は、9Mbpsである。
エッジノード「3」からエッジノード「4」への交流トラヒック量t3,4の実測値は、12Mbpsである。
【0023】
エッジノード「4」からエッジノード「1」への交流トラヒック量t4,1の実測値は、4Mbpsである。
エッジノード「4」からエッジノード「2」への交流トラヒック量t4,2の実測値は、8Mbpsである。
エッジノード「4」からエッジノード「3」への交流トラヒック量t4,3の実測値は、12Mbpsである。
エッジノード「4」からエッジノード「4」への交流トラヒック量t4,4の実測値は、16Mbpsである。
これら入出力トラヒック量と、上述したSimple Gravity法の式(1)または式(2)によって、交流トラヒック量を推定(算出)する。
【0024】
例えば、エッジノード「2」からエッジノード「3」への交流トラヒック量t2,3を推定すると、t2,3=20×30/100=6Mbpsであり、実測値と一致する。交流トラヒックがフルメッシュで発生する場合には、各ノードの人口(収容者数)と各ノードの入出力トラヒック量とは比例関係にある。したがって、交流トラヒック量がGravityモデルに従うならば、交流トラヒック量の推定値は、交流トラヒック量の実測値と完全に一致する。
【0025】
図10(b)は、フルメッシュIP網に於けるトポロジ行列Rの例である。
送信元エッジノード「1」〜「4」から宛先エッジノード「1」〜「4」に、全て交流トラヒックが発生している。よって、送信元エッジノードiと宛先エッジノードjで示される交流トラヒック量ti,jが、所定量を超えて発生するか否かを示すトポロジ行列Rに於いて、このトポロジ行列Rの各要素r11〜r44の値は、全て1となる。トポロジ行列Rの各要素が1の場合、交流トラヒック量が所定量を超えて発生することを示している。トポロジ行列Rの各要素が0の場合、交流トラヒック量が所定量以下である(発生していない)ことを示している。
【0026】
図11は、比較例に於ける交流トラヒック量の算出処理(その1)を示すフローチャートである。この処理は、図9に示す交流トラヒック計算装置11Aが行う。
この処理は、上述した式(1)に基いて交流トラヒックを算出する処理である。
処理を開始すると、ステップS30〜S32に於いて、交流トラヒック計算装置11Aの処理部は、全てのエッジノードについて繰り返す。
【0027】
ステップS31に於いて、交流トラヒック計算装置11Aの通信部は、全てのエッジノードそれぞれから、当該エッジノードが計測した入力トラヒック量XINと、出力トラヒック量XOUTとを受信する。
【0028】
ステップS32に於いて、交流トラヒック計算装置11Aの処理部は、全てのエッジノードについて繰り返したか否かを判断する。全てのエッジノードについて繰り返していなかったならば、ステップS30の処理に戻る。
ステップS33に於いて、交流トラヒック計算装置11Aの処理部は、全てのエッジノードの出力トラヒック量XOUTの総和を算出する。
ステップS34〜S36に於いて、交流トラヒック計算装置11Aの処理部は、全てのエッジノードの組合せについて繰り返す。
【0029】
ステップS35に於いて、交流トラヒック計算装置11Aの処理部は、エッジノードiの入力トラヒック量XINiにエッジノードjの出力トラヒック量XOUTjを乗じる。この乗じた値を、ステップS33で求めた出力トラヒック量XOUTの総和で除算して、エッジノードiからエッジノードjへの交流トラヒック量ti,jの推定値を算出する。
【0030】
ステップS36に於いて、交流トラヒック計算装置11Aの処理部は、全てのエッジノードの組合せについて繰り返したか否かを判断する。全てのエッジノードの組合せについて繰り返していなかったならば、ステップS34の処理に戻る。全てのエッジノードの組合せについて繰り返したならば、図11に示す処理を終了する。
この交流トラヒック量の算出処理(その1)によって、入出力トラヒック量に基く交流トラヒック量の推定が可能となる。
【0031】
図12は、比較例に於ける交流トラヒック量の算出処理(その2)を示すフローチャートである。
この処理は、上述した式(2)に基いて交流トラヒックを算出する処理である。
処理を開始したのち、ステップS30〜S32の処理は、図11に示す交流トラヒック量の算出処理(その1)と同様である。
ステップS33aに於いて、交流トラヒック計算装置11Aの処理部は、全てのエッジノードの入力トラヒック量XINの総和を算出する。
ステップS34に於いて、交流トラヒック計算装置11Aの処理部は、全てのエッジノードの組合せについて繰り返す。
【0032】
ステップS35aに於いて、交流トラヒック計算装置11Aの処理部は、エッジノードiの入力トラヒック量XINiにエッジノードjの出力トラヒック量XOUTjを乗じる。この乗じた値を、ステップS33aで求めた入力トラヒック量XINの総和で除算し、エッジノードiからエッジノードjへの交流トラヒック量ti,jの推定値を算出する。
【0033】
ステップS36に於いて、交流トラヒック計算装置11Aの処理部は、全てのエッジノードの組合せについて繰り返したか否かを判断する。全てのエッジノードの組合せについて繰り返していなかったならば、ステップS34の処理に戻る。全てのエッジノードの組合せについて繰り返したならば、図12に示す処理を終了する。
【0034】
この交流トラヒック量の算出処理(その2)によっても、交流トラヒック量の算出処理(その1)と同様に、入出力トラヒック量に基く交流トラヒック量の推定が可能となる。
【0035】
図13(a),(b)は、ネットワークの内部リンクで障害が発生した例を示す図である。
図13(a)は、内部リンクで障害が発生する前のネットワークの状態を示している。
このネットワークは、ノード20b−1〜20b−13と、これらノードが接続されて形成されているリンクとを有している。
ノード20b−1は、ノード20b−9に接続されている。
ノード20b−2は、ノード20b−9に接続されている。
ノード20b−3は、ノード20b−4に接続されてリンク#7を形成し、更にノード20b−9に接続されている。
ノード20b−4は、ノード20b−3に接続されてリンク#7を形成し、更にノード20b−5に接続されてリンク#8を形成している。
【0036】
ノード20b−5は、ノード20b−4に接続されてリンク#8を形成し、ノード20b−9に接続されてリンク#2を形成し、ノード20b−10に接続されてリンク#3を形成し、ノード20b−6に接続されてリンク#9を形成している。
ノード20b−6は、ノード20b−5に接続されてリンク#9を形成し、ノード20b−7に接続されてリンク#10を形成している。
ノード20b−7は、ノード20b−6に接続されてリンク#10を形成し、ノード20b−10に接続されている。
ノード20b−8は、ノード20b−9に接続されてリンク#4を形成し、ノード20b−11に接続されてリンク#5を形成している。
【0037】
ノード20b−9は、ノード20b−1,20b−2,20b−3に接続され、ノード20b−5に接続されてリンク#2を形成し、ノード20b−10に接続されてリンク#1を形成し、ノード20b−8に接続されてリンク#4を形成している。
【0038】
ノード20b−10は、ノード20b−12,20b−13,20b−7に接続され、ノード20b−5に接続されてリンク#3を形成し、ノード20b−9に接続されてリンク#1を形成し、ノード20b−11に接続されてリンク#6を形成している。
ノード20b−11は、ノード20b−8に接続されてリンク#5を形成し、ノード20b−10に接続されてリンク#6を形成している。
ノード20b−12は、ノード20b−10に接続されている。
ノード20b−13は、ノード20b−10に接続されている。
【0039】
細かい破線の矢印は、交流トラヒックAを示しており、帯域aを使用している。この交流トラヒックAは、ノード20b−12からノード20b−1への交流トラヒックである。リンク#1で障害が発生する前に於いて、交流トラヒックAは、ノード20b−12からノード20b−10を介してリンク#1を通過し、ノード20b−9を介してノード20b−1へ達している。
【0040】
実線矢印は、交流トラヒックBを示しており、帯域bを使用している。この交流トラヒックBは、ノード20b−13からノード20b−2への交流トラヒックである。リンク#1で障害が発生する前に於いて、交流トラヒックBは、ノード20b−13からノード20b−10を介してリンク#1を通過し、ノード20b−9を介してノード20b−2へ達している。
【0041】
荒い破線の矢印は、交流トラヒックCを示しており、帯域cを使用している。この交流トラヒックCは、ノード20b−7からノード20b−3への交流トラヒックである。リンク#1で障害が発生する前に於いて、交流トラヒックCは、ノード20b−7からノード20b−10を介してリンク#1を通過し、ノード20b−9を介してノード20b−3へ達している。
【0042】
図13(b)は、例えばリンク#1で障害が発生した後のネットワークの状態を示している。
図示しない上位装置であるネットワーク管理システム(Network Management System)は、この障害を検知して、交流トラヒックA(帯域a)の経路と、交流トラヒックB(帯域b)の経路と、交流トラヒックC(帯域c)の経路を変更する。
【0043】
交流トラヒックAは、ノード20b−12からノード20b−10を介してリンク#6,#5,#4を通過し、ノード20b−9を介してノード20b−1へ達するよう変更される。
【0044】
交流トラヒックBは、ノード20b−13からノード20b−10を介してリンク#6,#5,#4を通過し、ノード20b−9を介してノード20b−2へ達するよう変更される。
交流トラヒックCは、ノード20b−7からリンク#10,#9,#8,#7を通過してノード20b−3へ達するよう変更される。
【0045】
このとき、ネットワーク管理システムが把握しているリンク#6,#5,#4の帯域の増加量は、帯域a+帯域bであり、リンク#10,#9,#8,#7の帯域の増加量は、帯域cである。このように、交流トラヒックA,B,Cを把握することによって、ネットワーク経路の設計に役立てることができる。
【0046】
交流トラヒックの帯域を把握していない場合には、障害発生前の障害リンクの帯域値を変動範囲の上限として設計する必要がある。すなわち、障害発生前のリンク#1の帯域を、障害発生後のリンク#6,#5,#4、および、リンク#10,#9,#8,#7の帯域変動の上限として帯域設計する。つまり、ネットワーク管理システムが把握しているリンク#6,#5,#4、および、リンク#10,#9,#8,#7の帯域の増加量は、帯域a+帯域b+帯域cである。ネットワーク管理システムは、リンク#6,#5,#4、および、リンク#10,#9,#8,#7が、実際のトラヒック量よりも多く流れていように把握してしまう。よって、ネットワーク管理システムは、これらリンクの帯域(ネットワーク資源)を無駄にしてしまう虞がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0047】
【非特許文献1】Y.Zhang,et al.、“Fast accurate computation of large-scale IP traffic matrices from link loads”、Sigmetrics、June 2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0048】
非特許文献1に記載されている方法は、電話網などのように、全てのエッジノード間に於いてフルメッシュで交流トラヒックが発生するネットワークには有効である。しかし、各種サービスが統合されたサービス統合IP網のように、主として入力トラヒックしか発生しないサービスに係るエッジノードが含まれていると、交流トラヒックはフルメッシュで発生しない。各ノードの人口(収容者数)と交流トラヒック量との間には、比例関係が成立しない。すなわち、フルメッシュではないサービス統合IP網のようなネットワークに於いて、上述したSimple Gravity法に基づく式(1),(2)による交流トラヒック量の推定値は、実測値と乖離してしまうという問題がある。
【0049】
そこで、本発明は、フルメッシュで交流トラヒックが発生しないネットワークに於いて、入出力トラヒック量に基いて交流トラヒック量を高精度で推定することができるエッジノードの交流トラヒック計算装置および交流トラヒック計算方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0050】
前記した課題を解決するため、請求項1に記載の発明では、通信部、記憶部、および処理部を有する交流トラヒック計算装置であって、前記通信部は、外部ネットワーク、端末、または、サービスと接続されている全てのエッジノードから入力トラヒック量と出力トラヒック量とを受信して前記記憶部に格納し、前記処理部は、前記全てのエッジノードにて、当該エッジノードへの交流トラヒックが存在する他の全てのエッジノードの出力用仮想人口の総和に、当該エッジノードの入力用仮想人口を乗じた値が、当該エッジノードの入力トラヒック量に等しく、かつ、当該エッジノードへの交流トラヒックが存在する前記他の全てのエッジノードの入力用仮想人口の総和に、当該エッジノードの出力用仮想人口を乗じた値が、当該エッジノードの出力トラヒック量に等しいとして、各出力用仮想人口と各入力用仮想人口とを求め、前記処理部は、第1のエッジノードから第2のエッジノードへの交流トラヒックが存在すると判断したとき、前記第1のエッジノードの入力用仮想人口に、前記第2のエッジノードの出力用仮想人口を乗じた値を、前記第1のエッジノードから前記第2のエッジノードへの交流トラヒック量とする、ことを特徴とするエッジノードの交流トラヒック計算装置とした。
【0051】
請求項5に記載の発明では、外部ネットワーク、端末、または、サービスと接続されている全てのエッジノードで入力トラヒック量と出力トラヒック量を測定し、前記全てのエッジノードにて、当該エッジノードへの交流トラヒックが存在する他の全てのエッジノードの出力用仮想人口の総和に当該エッジノードの入力用仮想人口を乗じた値が当該エッジノードの入力トラヒック量に等しく、かつ、当該エッジノードへの交流トラヒックが存在する前記他の全てのエッジノードの入力用仮想人口の総和に当該エッジノードの出力用仮想人口を乗じた値が当該エッジノードの出力トラヒック量に等しいとして、各出力用仮想人口と各入力用仮想人口とを求め、第1のエッジノードから第2のエッジノードへの交流トラヒックが存在すると判断したとき、前記第1のエッジノードの入力用仮想人口に、前記第2のエッジノードの出力用仮想人口を乗じた値を、前記第1のエッジノードから前記第2のエッジノードへの交流トラヒック量とする、ことを特徴とするエッジノードの交流トラヒック計算方法とした。
【0052】
このようにすることで、本発明によれば、フルメッシュで交流トラヒックが発生しないネットワークに於いて、精度よく交流トラヒック量を推定することができる。
全てのエッジノードの入出力トラヒック量に基いて、各エッジノード間の交流トラヒック量を推定している。これにより、短時間に実用的な精度で交流トラヒック量を得ることが可能である。
【0053】
請求項2に記載の発明では、前記処理部は、前記エッジノードが端末または外部ネットワークと接続されていると判断したとき、前記全てのエッジノードから当該エッジノードへの交流トラヒックが存在すると判断し、前記エッジノードがサービスと接続されていると判断したとき、前記全てのエッジノードから当該エッジノードへの交流トラヒックが存在しないと判断する、ことを特徴とする請求項1に記載のエッジノードの交流トラヒック計算装置とした。
【0054】
請求項6に記載の発明では、前記エッジノードが、外部ネットワークまたは端末と接続されていると判断したとき、前記全てのエッジノードから当該エッジノードへの交流トラヒックが存在すると判断し、前記エッジノードが、サービスと接続されていると判断したとき、前記全てのエッジノードから当該エッジノードへの交流トラヒックが存在しないと判断とする、ことを特徴とする請求項5に記載のエッジノードの交流トラヒック計算方法とした。
【0055】
このようにすることで、本発明によれば、エッジノードから属性情報を取得することにより、トポロジ行列Rを自動で作成できる。これにより、手作業でトポロジ行列Rを作成する工数を削減できる。
【0056】
請求項3に記載の発明では、前記処理部は、当該エッジノードの入力トラヒック量が、当該エッジノードの出力トラヒック量と比べて極めて小さいと判断したとき、前記全てのエッジノードから当該エッジノードへの交流トラヒックが存在しないと判断し、当該エッジノードの出力トラヒック量が、当該エッジノードの入力トラヒック量と比べて極めて小さいと判断したとき、当該エッジノードから前記全てのエッジノードへの交流トラヒックが存在しないと判断する、ことを特徴とする請求項1に記載のエッジノードの交流トラヒック計算装置とした。
【0057】
請求項7に記載の発明では、当該エッジノードの入力トラヒック量が、当該エッジノードの出力トラヒック量と比べて極めて小さいと判断したとき、前記全てのエッジノードから当該エッジノードへの交流トラヒックが存在しないと判断し、当該エッジノードの出力トラヒック量が、当該エッジノードの入力トラヒック量と比べて極めて小さいと判断したとき、当該エッジノードから前記全てのエッジノードへの交流トラヒックが存在しないと判断する、ことを特徴とする請求項5に記載のエッジノードの交流トラヒック計算方法とした。
【0058】
このようにすることで、本発明によれば、各エッジノードから入出力トラヒック量を受信するだけで、自動でトポロジ行列Rを算出することができる。これにより、手作業でトポロジ行列Rを作成する工数を削減できると共に、各エッジノードに、属性を取得するように実装する工数を削減できる。
【0059】
請求項4に記載の発明では、前記処理部は、前記全てのエッジノード間に於いて交流トラヒックが存在すると判断したとき、前記全てのエッジノードから入力トラヒック量総和、または、出力トラヒック量総和を算出し、前記第1のエッジノードの入力トラヒック量に前記第2のエッジノードの出力トラヒック量を乗じた値を、前記入力トラヒック量総和、または、前記出力トラヒック量総和で除算し、前記第1のエッジノードから前記第2のエッジノードへの交流トラヒック量とする、ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のエッジノードの交流トラヒック計算装置とした。
【0060】
請求項8に記載の発明では、前記全てのエッジノード間に於いて交流トラヒックが存在すると判断したとき、前記全てのエッジノードから入力トラヒック量総和、または、出力トラヒック量総和を算出し、前記第1のエッジノードの入力トラヒック量に前記第2のエッジノードの出力トラヒック量を乗じた値を、前記入力トラヒック量総和、または、前記出力トラヒック量総和で除算し、前記第1のエッジノードから前記第2のエッジノードへの交流トラヒック量とする、ことを特徴とする請求項5ないし請求項7のいずれか1項に記載のエッジノードの交流トラヒック計算方法とした。
【0061】
このようにすることで、本発明によれば、全てのエッジノード間に於いて交流トラヒックが存在すると判断したとき、すなわち、フルメッシュのネットワークであると判断したとき、Simple Gravity法に基づいて、上述した式(1)または式(2)によって交流トラヒック量を算出している。これにより、フルメッシュのネットワークに於いては、処理量(計算量)の小さいSimple Gravity法で交流トラヒック量を算出することができる。
【発明の効果】
【0062】
本発明によれば、フルメッシュで交流トラヒックが発生しないネットワークに於いて、入出力トラヒック量に基いて交流トラヒック量を高精度で推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】第1の実施形態に於ける交流トラヒック計算システムを示す図である。
【図2】第1の実施形態に於ける交流トラヒック計算装置を示す図である。
【図3】第1の実施形態に於けるサービス統合IP網を示す図である。
【図4】第1の実施形態に於ける交流トラヒック量の算出処理を示すフローチャートである。
【図5】比較例と第1の実施形態の交流トラヒック推定法の評価結果を示す図である。
【図6】第2の実施形態に於ける交流トラヒック計算装置を示す図である。
【図7】第2の実施形態に於ける交流トラヒック量の算出処理を示すフローチャートである。
【図8】第2の実施形態に於けるトポロジ行列Rの算出処理を示すフローチャートである。
【図9】比較例に於ける交流トラヒック計算システムを示す図である。
【図10】比較例に於けるフルメッシュIP網の例を示す図である。
【図11】比較例に於ける交流トラヒック量の算出処理(その1)を示すフローチャートである。
【図12】比較例に於ける交流トラヒック量の算出処理(その2)を示すフローチャートである。
【図13】ネットワークの内部リンクで障害が発生した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以降、本発明を実施するための形態を、図と数式を参照して詳細に説明する。
【0065】
(第1の実施形態の構成)
図1は、第1の実施形態に於ける交流トラヒック計算システムを示す図である。
第1の実施形態に於ける交流トラヒック計算システムであるネットワーク10は、端末装置30と他の通信ネットワーク40とが接続された通信ネットワーク40と、交流トラヒック計算装置11とを備えている。
【0066】
端末装置30は、例えば、各ユーザが操作するコンピュータである。端末装置30は、図示しない収容システムを介して、この通信ネットワーク40に接続されている。
【0067】
交流トラヒック計算装置11は、後述する図2に示すように、処理部13と記憶部16と通信部12とを有している。交流トラヒック計算装置11は、通信部12によって、通信ネットワーク40のエッジノードから入出力トラヒック量の情報を受信し、処理部13によって、交流トラヒック量を推定(算出)する。
【0068】
この通信ネットワーク40は、相互に接続されたノード20−1〜20−10を備えている。このノード20−1〜20−10は、例えば光クロスコネクト装置であり、エッジノードの間で送受信される通信データの経路を選択する。
【0069】
エッジノード「1」であるノード20−1は、一方が他の通信ネットワーク40のノード20−20に接続され、他方がノード20−8とノード20−9とに接続されている。すなわち、他の通信ネットワーク40との境界である。なお、このノード20−20は更に、ノード20−21などに接続されている。
エッジノード「2」であるノード20−2は、一方がサービス提供サーバ31に接続され、他方がノード20−7とノード20−8とに接続されている。
【0070】
エッジノード「3」であるノード20−3は、一方が複数台または1台の端末装置30に接続され、他方がノード20−9に接続されている。この端末装置30は複数台または1台であるが、図1では代表して1台だけを示している。他のエッジノードに接続されている端末装置30も、同様に複数台または1台である。
【0071】
エッジノード「4」であるノード20−4は、一方が複数台または1台の端末装置30に接続され、他方がノード20−9とノード20−10とに接続されている。
エッジノード「5」であるノード20−5は、一方が複数台または1台の端末装置30に接続され、他方がノード20−7とノード20−10とに接続されている。
ノード20−6は、一方が交流トラヒック計算装置11に接続され、他方がノード20−7に接続されている。
ノード20−7は、ノード20−5,20−6,20−2,20−8,20−9,20−10に接続されている。
ノード20−8は、ノード20−1,20−2,20−7,20−9に接続されている。
ノード20−9は、ノード20−1,20−3,20−4,20−10,20−7,20−8に接続されている。
ノード20−10は、ノード20−4,20−5,20−7,20−9に接続されている。
【0072】
ノード20−1〜20−10は、図示しない通信部と、処理部と、記憶部とを有している。そのうち、各エッジノード「1」〜「5」であるノード20−1〜20−5は、処理部によって、ネットワーク10の外部からのネットワーク10の内部へのトラヒック量である入力トラヒック量XINと、ネットワーク10の内部からネットワーク10の外部へのトラヒック量である出力トラヒック量XOUTとを計測する。
【0073】
図2は、第1の実施形態に於ける交流トラヒック計算装置を示す図である。
交流トラヒック計算装置11は、通信部12と、処理部13と、記憶部16とを備えている。処理部13は、仮想人口演算部13aを備えている。記憶部16は、各エッジノードに於ける入出力トラヒック量16aと、通信ネットワーク40のトポロジ行列R(16b)と、各エッジノードに於ける仮想人口16cと、各エッジノード間の交流トラヒック推定値16dとを格納している。
【0074】
通信部12は、各エッジノードであるノード20−1〜20−5の通信部(不図示)に接続されており、これらのエッジノードと相互に通信データを送受信する。
【0075】
処理部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)などで構成され、記憶部16に格納されているソフトウェアプログラムを、RAM(Random Access Memory)に転送して実行することにより、この交流トラヒック計算装置11の種々の処理を行う。
【0076】
仮想人口演算部13aは、各エッジノードが測定した入出力トラヒック量16aと、この通信ネットワーク40のトポロジ行列R(16b)とから、各エッジノードに於ける仮想人口16cを演算する。この仮想人口とは、Gravity法が交流トラヒック量を計算するにあたり、エッジノードの人口(収容者数)に比例した計算を行っていることに立ち戻り、各エッジノードの入出力トラヒック量を基に各ノードに「仮想人口」を与えたものである。第1の実施形態に於いて、交流トラヒック量は、この交流トラヒックの送信元エッジノードの入力用仮想人口PINと、宛先エッジノードの出力用仮想人口POUTとの積として算出(推定)する。
【0077】
記憶部16は、例えばROM(Read Only Memory)やHDD(Hard disk drive)などで構成され、種々の情報を格納する。
各エッジノードに於ける入出力トラヒック量16aは、全てのエッジノードから受信した入力トラヒック量XINと出力トラヒック量XOUTである。
【0078】
通信ネットワーク40のトポロジ行列R(16b)は、送信元エッジノードiと宛先エッジノードjで示される交流トラヒック量ti,jが、所定量を超えて発生するか否かを示す行列である。トポロジ行列Rの要素ri,jが1のとき、エッジノードiからエッジノードjに向かう交流トラヒックは、所定量を超えて発生する。トポロジ行列Rの要素ri,jが0のとき、エッジノードiからエッジノードjに向かう交流トラヒック量ti,jは、発生しないか、または、所定量以下である。
第1の実施形態に於いて、このトポロジ行列R(16b)は、設計者が各エッジノードの属性を考慮して、手作業で作成する。各エッジノードの属性とは、例えば、端末装置30を収容しているか、外部ネットワークとのゲートウェイであるか、サービス提供サーバ31と接続されているか、というものである。
【0079】
サービス提供サーバ31は、例えば、入力トラヒック量が主であるIPTV(Internet Protocol Television)などのサービスを提供する。よって、サービス提供サーバ31が接続されているエッジノードへの交流トラヒックは発生しない。
外部ネットワークとのゲートウェイでは、このゲートウェイが接続されているエッジノード自身への交流トラヒックは発生しない。また、サービス提供サーバ31が接続されているエッジノードから当該エッジノードへの交流トラヒックが発生するか否かは、サービス提供サーバ31が、外部ネットワークにサービスを提供しているか否かによって決定される。
【0080】
各エッジノードに於ける仮想人口16cは、Simple Gravity法に於ける人口(収容者数)に相当する概念であり、入出力トラヒックを説明するための仮想的な人口(収容者数)を示すものである。
各エッジノード間の交流トラヒック推定値16dは、前述した仮想人口16cに基いて送信元エッジノードと宛先エッジノードで示される交流トラヒック量を推定したものである。
【0081】
図3(a),(b)は、第1の実施形態に於けるサービス統合IP網を示す図である。
このサービス統合IP網は、図1に示す通信ネットワーク40を書き換えたものである。
エッジノード「1」は、ノード20−1であり、他の通信ネットワーク40とのゲートウェイである。
エッジノード「2」は、ノード20−2であり、サービス提供サーバ31とのゲートウェイである。このサービス提供サーバ31は、この通信ネットワーク40に接続されている端末装置30に限りサービスを提供している。
エッジノード「3」は、ノード20−3であり、複数台または1台の端末装置30を収容している図示しない収容システムと接続されている。
エッジノード「4」は、ノード20−4であり、複数台または1台の端末装置30を収容している図示しない収容システムと接続されている。
エッジノード「5」は、ノード20−5であり、複数台または1台の端末装置30を収容している図示しない収容システムと接続されている。
【0082】
エッジノード「1」の入力トラヒック量XINと出力トラヒック量XOUTとは、それぞれ9Mbpsである。
エッジノード「2」の入力トラヒック量XINは、12Mbpsであり、出力トラヒック量XOUTは0Mbpsである。
エッジノード「3」の入力トラヒック量XINは、6Mbpsであり、出力トラヒック量XOUTは10Mbpsである。
エッジノード「4」の入力トラヒック量XINは、6Mbpsであり、出力トラヒック量XOUTは10Mbpsである。
エッジノード「5」の入力トラヒック量XINは、6Mbpsであり、出力トラヒック量XOUTは10Mbpsである。
【0083】
エッジノード「1」は、外部ネットワークとのゲートウェイである。エッジノード「1」は、自身のエッジノード内での交流トラヒックは発生しない。また、エッジノード「2」に接続されているサービス提供サーバ31は、外部ネットワークにサービスを提供していないので、エッジノード「1」からエッジノード「2」への交流トラヒックは発生しない。
エッジノード「1」からエッジノード「1」への交流トラヒック量t1,1の実測値は、0Mbpsである。
エッジノード「1」からエッジノード「2」への交流トラヒック量t1,2の実測値は、0Mbpsである。
エッジノード「1」からエッジノード「3」への交流トラヒック量t1,3の実測値は、3Mbpsである。
エッジノード「1」からエッジノード「4」への交流トラヒック量t1,4の実測値は、3Mbpsである。
エッジノード「1」からエッジノード「5」への交流トラヒック量t1,5の実測値は、3Mbpsである。
【0084】
エッジノード「2」は、サービス提供サーバ31のゲートウェイである。エッジノード「2」は、自身のエッジノード内での交流トラヒックは発生しない。サービス提供サーバ31は、外部ネットワークにサービスを提供していないので、エッジノード「1」からエッジノード「2」への交流トラヒックは発生しない。
エッジノード「2」からエッジノード「1」への交流トラヒック量t2,1の実測値は、0Mbpsである。
エッジノード「2」からエッジノード「2」への交流トラヒック量t2,2の実測値は、0Mbpsである。
エッジノード「2」からエッジノード「3」への交流トラヒック量t2,3の実測値は、4Mbpsである。
エッジノード「2」からエッジノード「4」への交流トラヒック量t2,4の実測値は、4Mbpsである。
エッジノード「2」からエッジノード「5」への交流トラヒック量t2,5の実測値は、4Mbpsである。
【0085】
エッジノード「3」は、複数台または1台の端末装置30を収容している図示しない収容システムと接続されている。エッジノード「3」は、自身のエッジノードを宛先とする交流トラヒックと、外部ネットワークとのゲートウェイのエッジノード「1」を宛先とする交流トラヒックと、エッジノード「4」,「5」を宛先とする交流トラヒックが発生する。しかし、サービスゲートウェイであるエッジノード「2」を宛先とする交流トラヒックは発生しない。
エッジノード「3」からエッジノード「1」への交流トラヒック量t3,1の実測値は、3Mbpsである。
エッジノード「3」からエッジノード「2」への交流トラヒック量t3,2の実測値は、0Mbpsである。
エッジノード「3」からエッジノード「3」への交流トラヒック量t3,3の実測値は、1Mbpsである。
エッジノード「3」からエッジノード「4」への交流トラヒック量t3,4の実測値は、1Mbpsである。
エッジノード「3」からエッジノード「5」への交流トラヒック量t3,5の実測値は、1Mbpsである。
【0086】
エッジノード「4」は、複数台または1台の端末装置30を収容している図示しない収容システムと接続されている。エッジノード「4」は、自身のエッジノードを宛先とする交流トラヒックと、外部ネットワークとのゲートウェイのエッジノード「1」を宛先とする交流トラヒックと、エッジノード「3」,「5」を宛先とする交流トラヒックが発生する。しかし、サービスゲートウェイであるエッジノード「2」を宛先とする交流トラヒックは発生しない。
エッジノード「4」からエッジノード「1」への交流トラヒック量t4,1の実測値は、3Mbpsである。
エッジノード「4」からエッジノード「2」への交流トラヒック量t4,2の実測値は、0Mbpsである。
エッジノード「4」からエッジノード「3」への交流トラヒック量t4,3の実測値は、1Mbpsである。
エッジノード「4」からエッジノード「4」への交流トラヒック量t4,4の実測値は、1Mbpsである。
エッジノード「4」からエッジノード「5」への交流トラヒック量t4,5の実測値は、1Mbpsである。
【0087】
エッジノード「5」は、複数台または1台の端末装置30を収容している図示しない収容システムと接続されている。エッジノード「5」は、自身のエッジノードを宛先とする交流トラヒックと、外部ネットワークとのゲートウェイのエッジノード「1」を宛先とする交流トラヒックと、エッジノード「3」,「4」を宛先とする交流トラヒックが発生する。しかし、サービスゲートウェイであるエッジノード「2」を宛先とする交流トラヒックは発生しない。
エッジノード「5」からエッジノード「1」への交流トラヒック量t5,1の実測値は、3Mbpsである。
エッジノード「5」からエッジノード「2」への交流トラヒック量t5,2の実測値は、0Mbpsである。
エッジノード「5」からエッジノード「3」への交流トラヒック量t5,3の実測値は、1Mbpsである。
エッジノード「5」からエッジノード「4」への交流トラヒック量t5,4の実測値は、1Mbpsである。
エッジノード「5」からエッジノード「5」への交流トラヒック量t5,5の実測値は、1Mbpsである。
【0088】
このサービス統合IP網に於いて、Simple Gravity法に基いてエッジノード「3」からエッジノード「4」への交流トラヒック量を推定すると、t3,4=(6×10)/39=1.54Mbpsとなる。これは、実測値のt3,4=1Mbpsと一致していない。交流トラヒックがGravityモデルに従ったとしても、その交流トラヒックがフルメッシュで発生しないためである。
【0089】
第1の実施形態では、フルメッシュで交流トラヒックが発生しないネットワークに於いて、「仮想人口」の概念を導入したGravity法で、交流トラヒック量を推定する。すなわち、Gravityモデルに於いて、交流トラヒックは両端エッジノードの人口(収容者数)に比例するということに立ち戻り、各エッジノードの入出力トラヒック量をもとに、各ノードの入力用仮想人口PINと、出力用仮想人口POUTとを仮定して算出し、交流トラヒック量は、この入力用仮想人口PINと出力用仮想人口POUTの積として計算するというものである。
【0090】
図3(b)は、トポロジ行列Rを示す図である。このトポロジ行列Rは、交流トラヒックのトポロジを示している。
送信元ノード1,2から宛先ノード1への交流トラヒックは発生しておらず、送信元ノード3〜5から宛先ノード1への交流トラヒックは発生している。よって、トポロジ行列Rの要素r1,1=r2,1=0,r3,1=r4,1=r5,1=1となる。
【0091】
送信元ノード1〜5から宛先ノード2への交流トラヒックは発生していない。よって、トポロジ行列Rの要素r1,2=r2,2=r3,2=r4,2=r5,2=0となる。
【0092】
送信元ノード1〜5から宛先ノード3への交流トラヒックは発生している。よって、トポロジ行列Rの要素r1,3=r2,3=r3,3=r4,3=r5,3=1となる。
【0093】
送信元ノード1〜5から宛先ノード4への交流トラヒックは発生している。よって、トポロジ行列Rの要素r1,4=r2,4=r3,4=r4,4=r5,4=1となる。
送信元ノード1〜5から宛先ノード5への交流トラヒックは発生している。よって、トポロジ行列Rの要素r1,5=r2,5=r3,5=r4,5=r5,5=1となる。
【0094】
(第1の実施形態の動作)
図4は、第1の実施形態に於ける交流トラヒック量の算出処理を示すフローチャートである。
処理を開始すると、ステップS10〜S12に於いて、交流トラヒック計算装置11の処理部13は、全てのエッジノードについて繰り返す。
【0095】
ステップS11に於いて、交流トラヒック計算装置11の通信部12は、全てのエッジノードそれぞれから、当該エッジノードが計測した入力トラヒック量XINと、出力トラヒック量XOUTとを受信して、記憶部16に格納する。
【0096】
ステップS12に於いて、交流トラヒック計算装置11の処理部13は、全てのエッジノードについて繰り返したか否かを判断する。全てのエッジノードについて繰り返していなかったならば、ステップS10の処理に戻る。
【0097】
ステップS13に於いて、交流トラヒック計算装置11の仮想人口演算部13a(処理部13)は、トポロジ行列Rと、各ノードそれぞれの入力トラヒック量XINおよび出力トラヒック量XOUTから、各エッジノードの入力用仮想人口PINおよび出力用仮想人口POUTの関係を示す連立方程式の解を得る。
この連立方程式は、以下の式(3),(4)にそれぞれの値を代入することで作成される。式(3)は、当該エッジノードへの交流トラヒックが存在する他の全てのエッジノードの出力用仮想人口POUTの総和に、当該エッジノードの入力用仮想人口PINを乗じた値が、当該エッジノードの入力トラヒック量XINに等しいとする式である。
式(4)は、当該エッジノードへの交流トラヒックが存在する前記他の全てのエッジノードの入力用仮想人口PINの総和に、当該エッジノードの出力用仮想人口POUTを乗じた値が、当該エッジノードの出力トラヒック量XOUTに等しいとする式である。
式(3),(4)に係る数値解は無限に存在することが多いので、入力用仮想人口PINまたは出力用仮想人口POUTに一時定数を代入することによって、数値解を得る。
【0098】
【数3】

【0099】
【数4】

【0100】
ここで、図3に示すサービス統合IP網についての連立方程式を、以下の式(5)〜式(13)で示す。
【0101】
【数5】

【0102】
【数6】

【0103】
【数7】

【0104】
【数8】

【0105】
【数9】

【0106】
【数10】

【0107】
【数11】

【0108】
【数12】

【0109】
【数13】

【0110】
これらの式に於いて、端末装置30が接続されているエッジノード「3」〜「5」と、他の通信ネットワーク40との境界であるエッジノード「1」とは、入力用仮想人口PINと出力用仮想人口POUTとが等しくなる。しかし、サービスが接続されているエッジノード「2」は、入力用仮想人口PIN2しか存在しない。この仮定もとに、エッジノード「3」の入力用仮想人口PIN3に一時係数として1を代入し、すべての仮想人口の数値解を算出すると、以下のようになる。
エッジノード「1」の入力用仮想人口PIN1=3、出力用仮想人口POUT1=3
エッジノード「2」の入力用仮想人口PIN2=4、出力用仮想人口POUT2=0
エッジノード「3」の入力用仮想人口PIN3=1、出力用仮想人口POUT3=1
エッジノード「4」の入力用仮想人口PIN4=1、出力用仮想人口POUT4=1
エッジノード「5」の入力用仮想人口PIN5=1、出力用仮想人口POUT5=1
【0111】
仮想人口演算部13a(処理部13)は、この解を、記憶部16の仮想人口16cに格納する。
ステップS14〜S16に於いて、交流トラヒック計算装置11の処理部13は、全てのエッジノードの組合せについて繰り返す。
【0112】
ステップS15に於いて、交流トラヒック計算装置11の処理部13は、エッジノードiの入力用仮想人口PINiに、エッジノードjの出力用仮想人口POUTjを乗じる。この乗じた値に、トポロジ行列Rの要素ri,jを乗じて、エッジノードiからエッジノードjへの交流トラヒック量ti,jの推定値を算出する。すなわち、以下の式(14)に値を代入することで作成される。
【0113】
【数14】

【0114】
この式(14)は、第1のエッジノードiから第2のエッジノードjへの交流トラヒックが存在すると判断したとき、この第1のエッジノードiの入力用仮想人口PINiに、この第2のエッジノードjの出力用仮想人口POUTjを乗じた値を、第1のエッジノードiから第2のエッジノードjへの交流トラヒック量ti,jとする式である。
ステップS16に於いて、交流トラヒック計算装置11の処理部13は、全てのエッジノードの組合せについて繰り返したか否かを判断する。全てのエッジノードの組合せについて繰り返していなかったならば、ステップS14の処理に戻る。全てのエッジノードの組合せについて繰り返していたならば、図4に示す処理を終了する。
ここで、図3に示すサービス統合IP網の交流トラヒック量の解Tは、以下の行列となり、交流トラヒック量の実測値と一致する。
【0115】
【数15】

【0116】
(第1の実施形態の評価)
シミュレーションにより、比較例と第1の実施形態の交流トラヒック推定法を評価した。
シミュレーションを行った評価モデルは、ユーザを収容しているエッジノード「1」0台と、入出力トラヒックが均等に発生するゲートウェイのエッジノード「3」台と、入力トラヒックのみが発生するゲートウェイのエッジノード「3」台とを有しているネットワークである。
【0117】
以下、ユーザを収容しているエッジノードをユーザ収容ノードと呼ぶ。入出力トラヒックが均等に発生するゲートウェイのエッジノードを、サービスAゲートウェイと呼ぶ。入力トラヒックのみが発生するゲートウェイのエッジノードを、サービスBゲートウェイと呼ぶ。
【0118】
この評価モデルに於いて、サービスAゲートウェイとユーザ収容ノードとの間と、ユーザ収容ノードとユーザ収容ノードとの間とで双方向に交流トラヒックが流れるものとした。更に、サービスBゲートウェイからユーザ収容ノードへの片方向のみに交流トラヒックが流れ、逆方向には交流トラヒックが流れないものとした。
そして、実際に流れる交流トラヒック量と、入出力トラヒックを基に交流トラヒック推定法によって算出した交流トラヒック量とを比較して評価した。
【0119】
図5(a)〜(c)は、比較例と第1の実施形態の交流トラヒック推定法の評価結果を示す図である。縦軸は、入出力トラヒックを基に各方式によって求めた交流トラヒック量である。横軸は、実際の交流トラヒック量である。
図5(a)は、比較例(その1)によるSimple Gravity法による交流トラヒック推定の評価結果である。
実際に流れている交流トラヒック量が0Kbps〜700Kbpsのときには、推定した交流トラヒック量の方がやや多く、誤差が発生している。
実際に流れている交流トラヒック量が700Kbps〜1800Kbpsのときには、推定した交流トラヒック量の方がやや少なく、誤差が発生している。
実際に流れている交流トラヒック量が1800Kbps以上のときには、推定した交流トラヒック量と、ほぼ一致しており、誤差が少ない。
図5(b)は、比較例(その2)によるSimple Gravity法による交流トラヒック推定の評価結果である。
実際に流れている交流トラヒック量が0Kbps〜700Kbpsのときには、推定した交流トラヒック量の方がやや多く、誤差が発生している。
実際に流れている交流トラヒック量が700Kbps以上のときには、推定した交流トラヒック量の方がやや少なく、誤差が発生している。
図5(c)は、第1の実施形態による交流トラヒック推定の評価結果である。
実際に流れている交流トラヒック量が全ての値の範囲で、推定した交流トラヒック量と、ほぼ一致しており、誤差が少ない。
【0120】
この結果より、Simple Gravity法では、式(1),(2)のいずれに於いても実際の値とのズレ(誤差率24%)が発生した。一方で、第1の実施形態による交流トラヒック推定では、実際の交流トラヒックと完全に一致することが確かめられた。
(第1の実施形態の効果)
以上説明した第1の実施形態では、次の(A),(B)のような効果がある。
【0121】
(A) 各エッジノードの属性に基いてトポロジ行列Rを作成して、このトポロジ行列Rと仮想人口に基いて、交流トラヒック量を推定している。これにより、フルメッシュで交流トラヒックが発生しないサービス統合IP網に於いて、Gravity法よりも精度よく交流トラヒック量を推定することが可能である。
【0122】
(B) 全てのエッジノードの入出力トラヒック量に基いて、各エッジノード間の交流トラヒック量を推定している。これにより、全てのエッジノード間の交流トラヒック量を計測することと比べ、短時間に実用的な精度で交流トラヒック量を得ることが可能である。
【0123】
(第2の実施形態の構成)
第2の実施形態は、第1の実施形態に加えて更に、トポロジ行列Rを自動で作成するものである。
【0124】
図6は、第2の実施形態に於ける交流トラヒック計算装置を示す図である。図2に示す第1の実施形態の交流トラヒック計算装置11と同一の要素には同一の符号を付与している。
第2の実施形態の交流トラヒック計算装置11Bは、第1の実施形態の交流トラヒック計算装置11と同様の構成に加えて、処理部13にトポロジ行列演算部13bを備えている。それ以外の構成は、第1の実施形態の交流トラヒック計算装置11と同様である。
第2の実施形態の各エッジノードは、それぞれ当該エッジノードの属性の情報を有している。端末装置30を収容しているエッジノードが有している属性の情報は、「端末」である。外部ネットワークとのゲートウェイであるエッジノードが有している属性の情報は、「外部ネットワーク」である。サービス提供サーバ31と接続されているエッジノードが有している属性の情報は、「サービス」である。各エッジノードは、接続されている装置の種類を判断して、自らの属性の情報を設定する。
【0125】
(第2の実施形態の動作)
図7は、第2の実施形態に於ける交流トラヒック量の算出処理を示すフローチャートである。図4に示す第1の実施形態の交流トラヒック量の算出処理と同一の要素には同一の符号を付与している。
処理を開始すると、ステップS10〜S12に於いて、交流トラヒック計算装置11Bの処理部13は、全てのエッジノードについて繰り返す。
ステップS11に於いて、交流トラヒック計算装置11Bの通信部12は、全てのエッジノードそれぞれから、当該エッジノードが計測した入力トラヒック量XINと、出力トラヒック量XOUTとを受信する。
ステップS11aに於いて、交流トラヒック計算装置11Bの通信部12は、全てのエッジノードそれぞれから、当該エッジノードの属性情報を受信する。
【0126】
ステップS12に於いて、交流トラヒック計算装置11の処理部13は、全てのエッジノードについて繰り返したか否かを判断する。全てのエッジノードについて繰り返していなかったならば、ステップS10の処理に戻る。
【0127】
ステップS12aに於いて、交流トラヒック計算装置11のトポロジ行列演算部13bは、ステップS11aで受信したエッジノードの属性に基き、トポロジ行列Rを算出して、記憶部16のトポロジ行列R(16b)に格納する。ステップS12aの詳細は、後述する図8で説明する。
【0128】
ステップS13に於いて、交流トラヒック計算装置11の仮想人口演算部13aは、図4に示す第1の実施形態と同様に、トポロジ行列Rと、各ノードそれぞれの入力トラヒック量XINおよび出力トラヒック量XOUTから、各エッジノードの入力用仮想人口PINおよび出力用仮想人口POUTの関係を示す連立方程式の解を得る。
【0129】
ステップS14〜S16の処理は、前述した図4に示すステップS14〜S16の処理と同様である。ステップS16に於いて、交流トラヒック計算装置11の処理部13は、全てのエッジノードの組合せについて繰り返したならば、図7に示す処理を終了する。
【0130】
図8は、第2の実施形態に於けるトポロジ行列Rの算出処理を示すフローチャートである。
処理を開始すると、ステップS20〜S27に於いて、交流トラヒック計算装置11のトポロジ行列演算部13bは、全ての送信元エッジノードiについて繰り返す。
ステップS21〜S26に於いて、交流トラヒック計算装置11のトポロジ行列演算部13bは、全ての宛先エッジノードjについて繰り返す。
【0131】
ステップS22に於いて、交流トラヒック計算装置11のトポロジ行列演算部13bは、宛先エッジノードjの属性を判断する。宛先エッジノードjの属性が、「サービス」であったならば、ステップS24の処理を行う。宛先エッジノードjの属性が、「外部ネットワーク」であったならば、ステップS23の処理を行う。宛先エッジノードjの属性が、「端末」であったならば、ステップS25の処理を行う。
【0132】
ステップS23に於いて、交流トラヒック計算装置11のトポロジ行列演算部13bは、送信元エッジノードiの属性がサービスであるか否かを判断する。送信元エッジノードiの属性がサービスであったならば(Yes)、ステップS24の処理を行う。送信元エッジノードiの属性がサービスでなかったならば(No)、ステップS25の処理を行う。
【0133】
ステップS24に於いて、交流トラヒック計算装置11のトポロジ行列演算部13bは、トポロジ行列Rの要素ri,jを0に設定する。ステップS24の処理が終了したら、ステップS26の処理を行う。
ステップS25に於いて、交流トラヒック計算装置11のトポロジ行列演算部13bは、トポロジ行列Rの要素ri,jを1に設定する。
【0134】
ステップS26に於いて、交流トラヒック計算装置11のトポロジ行列演算部13bは、全ての宛先エッジノードjについて繰り返したか否かを判断する。全ての宛先エッジノードjについて繰り返していなかったならば、ステップS21の処理に戻る。
【0135】
ステップS27に於いて、交流トラヒック計算装置11のトポロジ行列演算部13bは、全ての送信元エッジノードiについて繰り返したか否かを判断する。全ての送信元エッジノードiについて繰り返していなかったならば、ステップS20の処理に戻る。全ての送信元エッジノードiについて繰り返していたならば、図8の処理を終了する。
図8の処理により、手作業によることなく、自動でトポロジ行列Rを取得することができ、工数を減らすと共に、手作業による誤りを抑止することが可能となる。
【0136】
(第2の実施形態の効果)
以上説明した第2の実施形態では、次の(C),(D)のような効果がある。
【0137】
(C) 手作業によることなく、自動でトポロジ行列Rを算出することができ、工数を減らすと共に、手作業による誤りを抑止することが可能となる。
【0138】
(D) 各エッジノードの接続状態の変化に伴い、動的にトポロジ行列Rを変化させて交流トラヒック量を算出可能となる。
【0139】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更実施が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a)〜(e)のようなものがある。
【0140】
(a) 第2の実施形態の交流トラヒック計算装置11Bは、各エッジノードの属性を取得してトポロジ行列Rを作成している。しかし、これに限られず、各エッジノードの入出力トラヒック量を取得して、これに基いてトポロジ行列Rを作成してもよい。例えば、当該エッジノードの入力トラヒック量が、当該エッジノードの出力トラヒック量と比べて極めて小さいと判断したとき、前記全てのエッジノードから当該エッジノードへの交流トラヒックが存在しないと判断してもよい。同様に、当該エッジノードの出力トラヒック量が、当該エッジノードの入力トラヒック量と比べて極めて小さいと判断したとき、当該エッジノードから前記全てのエッジノードへの交流トラヒックが存在しないと判断してもよい。
ここで、出力トラヒック量が入力トラヒック量と比べて極めて小さいとは、例えば、出力トラヒック量と入力トラヒック量の比率が所定以上(1対1000以上など)であることをいう。入力トラヒック量が出力トラヒック量と比べて極めて小さいとは、例えば、入力トラヒック量と出力トラヒック量の比率が所定以上(1対1000以上など)であることをいう。
入力トラヒック量が主であるIPTV(Internet Protocol Television)などのサービス提供サーバ31が接続されていたとしても、例えば、チャンネル情報の送信や、番組データの取得要求などを送信するなどによって、僅かに出力トラヒック量が観測される。しかし、この出力トラヒック量は、入力トラヒック量に比べて無視しえるほど小さい。そのため、例えば、出力トラヒック量が入力トラヒック量よりも極めて小さいと判断することで、当該エッジノードを宛先エッジノードとする交流トラヒックが存在しないと判断できる。更に、当該エッジノードが送信サービスに係る装置に接続されていることも判断できる。これにより、各エッジノードに属性を判断する機能を有していなくても、トポロジ行列Rを自動で作成することが可能となる。
【0141】
(b) 第1の実施形態の交流トラヒック計算装置11と、第2の実施形態の交流トラヒック計算装置11Bとは、例えばネットワーク管理システムである。しかし、これに限られず、通信部と演算機能を有する処理部とを有する装置であればよい。
【0142】
(c) 第1の実施形態の交流トラヒック計算装置11は、トポロジ行列Rと入出力トラヒック量に基いて、交流トラヒック量を算出している。しかし、これに限られず、トポロジ行列Rの全ての要素が1のとき、または、全てのエッジノード間に於いて交流トラヒックが存在すると判断したとき、Simple Gravity法に基づいて、式(1)または式(2)によって交流トラヒック量を算出してもよい。
Simple Gravity法に基づいて交流トラヒック量を算出する方法とは、全てのエッジノードから入力トラヒック量総和、または、出力トラヒック量総和を算出し、第1のエッジノードの入力トラヒック量に第2のエッジノードの出力トラヒック量を乗じた値を、前記入力トラヒック量総和、または、前記出力トラヒック量総和で除算し、第1のエッジノードから第2のエッジノードへの交流トラヒック量とする方法である。
これにより、フルメッシュのネットワークに於いては、処理量(計算量)の小さいSimple Gravity法で交流トラヒック量を算出することができる。
【0143】
(d) 第1、第2の実施形態では、交流トラヒック計算装置11,11Bによって交流トラヒック量を算出している。しかし、これに限られず、いずれかのエッジノードが交流トラヒックを算出してもよい。更に、全てのエッジノードが自律分散的に交流トラヒックを算出してもよい。
【0144】
(e) 第1、第2の実施形態では、交流トラヒック計算装置11,11Bによって交流トラヒック量を算出している。しかし、これに限られず、交流トラヒック量を算出するソフトウェアプログラムとしてもよい。
【符号の説明】
【0145】
10,10A ネットワーク
11,11A 交流トラヒック計算装置
12 通信部
13 処理部
13a 仮想人口演算部
13b トポロジ行列演算部
16 記憶部
16a 入出力トラヒック量
16b トポロジ行列R
16c 仮想人口
16d 交流トラヒック推定値
20−1〜20−21,20a−1〜20a−10,20b−1〜20b−13 ノード
30 端末装置
31 サービス提供サーバ
40,40A 通信ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信部、記憶部、および処理部を有する交流トラヒック計算装置であって、
前記通信部は、外部ネットワーク、端末、または、サービスと接続されている全てのエッジノードから入力トラヒック量と出力トラヒック量とを受信して前記記憶部に格納し、
前記処理部は、前記全てのエッジノードにて、当該エッジノードへの交流トラヒックが存在する他の全てのエッジノードの出力に係る仮想的な収容者人口を示す出力用仮想人口の総和に、当該エッジノードの入力に係る仮想的な収容者人口を示す入力用仮想人口を乗じた値が、当該エッジノードの入力トラヒック量に等しく、かつ、当該エッジノードへの交流トラヒックが存在する前記他の全てのエッジノードの入力用仮想人口の総和に、当該エッジノードの出力用仮想人口を乗じた値が、当該エッジノードの出力トラヒック量に等しいとして、各出力用仮想人口と各入力用仮想人口とを求め、
前記処理部は、第1のエッジノードから第2のエッジノードへの交流トラヒックが存在すると判断したとき、前記第1のエッジノードの入力用仮想人口に、前記第2のエッジノードの出力用仮想人口を乗じた値を、前記第1のエッジノードから前記第2のエッジノードへの交流トラヒック量とする、
ことを特徴とするエッジノードの交流トラヒック計算装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記エッジノードが端末または外部ネットワークと接続されていると判断したとき、前記全てのエッジノードから当該エッジノードへの交流トラヒックが存在すると判断し、
前記エッジノードがサービスと接続されていると判断したとき、前記全てのエッジノードから当該エッジノードへの交流トラヒックが存在しないと判断する、
ことを特徴とする請求項1に記載のエッジノードの交流トラヒック計算装置。
【請求項3】
前記処理部は、当該エッジノードの入力トラヒック量が、当該エッジノードの出力トラヒック量と比べて極めて小さいと判断したとき、前記全てのエッジノードから当該エッジノードへの交流トラヒックが存在しないと判断し、
当該エッジノードの出力トラヒック量が、当該エッジノードの入力トラヒック量と比べて極めて小さいと判断したとき、当該エッジノードから前記全てのエッジノードへの交流トラヒックが存在しないと判断する、
ことを特徴とする請求項1に記載のエッジノードの交流トラヒック計算装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記全てのエッジノード間に於いて交流トラヒックが存在すると判断したとき、前記全てのエッジノードから入力トラヒック量総和、または、出力トラヒック量総和を算出し、
前記第1のエッジノードの入力トラヒック量に前記第2のエッジノードの出力トラヒック量を乗じた値を、前記入力トラヒック量総和、または、前記出力トラヒック量総和で除算し、前記第1のエッジノードから前記第2のエッジノードへの交流トラヒック量とする、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のエッジノードの交流トラヒック計算装置。
【請求項5】
外部ネットワーク、端末、または、サービスと接続されている全てのエッジノードで入力トラヒック量と出力トラヒック量を測定し、
前記全てのエッジノードにて、当該エッジノードへの交流トラヒックが存在する他の全てのエッジノードの出力用仮想人口の総和に当該エッジノードの入力用仮想人口を乗じた値が当該エッジノードの入力トラヒック量に等しく、かつ、当該エッジノードへの交流トラヒックが存在する前記他の全てのエッジノードの入力用仮想人口の総和に当該エッジノードの出力用仮想人口を乗じた値が当該エッジノードの出力トラヒック量に等しいとして、各出力用仮想人口と各入力用仮想人口とを求め、
第1のエッジノードから第2のエッジノードへの交流トラヒックが存在すると判断したとき、前記第1のエッジノードの入力用仮想人口に、前記第2のエッジノードの出力用仮想人口を乗じた値を、前記第1のエッジノードから前記第2のエッジノードへの交流トラヒック量とする、
ことを特徴とするエッジノードの交流トラヒック計算方法。
【請求項6】
前記エッジノードが、外部ネットワークまたは端末と接続されていると判断したとき、前記全てのエッジノードから当該エッジノードへの交流トラヒックが存在すると判断し、
前記エッジノードが、サービスと接続されていると判断したとき、前記全てのエッジノードから当該エッジノードへの交流トラヒックが存在しないと判断とする、
ことを特徴とする請求項5に記載のエッジノードの交流トラヒック計算方法。
【請求項7】
当該エッジノードの入力トラヒック量が、当該エッジノードの出力トラヒック量と比べて極めて小さいと判断したとき、前記全てのエッジノードから当該エッジノードへの交流トラヒックが存在しないと判断し、
当該エッジノードの出力トラヒック量が、当該エッジノードの入力トラヒック量と比べて極めて小さいと判断したとき、当該エッジノードから前記全てのエッジノードへの交流トラヒックが存在しないと判断する、
ことを特徴とする請求項5に記載のエッジノードの交流トラヒック計算方法。
【請求項8】
前記全てのエッジノード間に於いて交流トラヒックが存在すると判断したとき、前記全てのエッジノードから入力トラヒック量総和、または、出力トラヒック量総和を算出し、
前記第1のエッジノードの入力トラヒック量に前記第2のエッジノードの出力トラヒック量を乗じた値を、前記入力トラヒック量総和、または、前記出力トラヒック量総和で除算し、前記第1のエッジノードから前記第2のエッジノードへの交流トラヒック量とする、
ことを特徴とする請求項5ないし請求項7のいずれか1項に記載のエッジノードの交流トラヒック計算方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−46182(P2013−46182A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182117(P2011−182117)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】