説明

エネルギーフィルタが一体化された荷電粒子源

【課題】粒子源のエネルギー分散を減少させる。
【解決手段】レンズ107を介して荷電粒子103のビームを偏心させるように進行させ、像中にエネルギー分散が生じ、この像をエネルギー選択ダイアフラム108内のスリット109上に投影することによって、エネルギー選択が可能となり、通過したビーム113のエネルギー発散は減少する。偏向ユニット112は、前記ビームを光軸101に近づくように偏向させる。エネルギー分散スポットは偏向器111によって前記スリット上で結像する。前記スリット上の前記エネルギー分散スポットの位置設定を行うとき、中心ビーム105は前記軸から偏向され、該ビームは前記エネルギー選択ダイアフラムによって止められ、続く領域において、ビームから生じる反射及び汚染は防止される。また偏向器112の領域内でのエネルギーでフィルタリングされたビームと相互作用する中心ビームの電子-電子相互作用も防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は荷電粒子ビームを生成する荷電粒子源に関する。当該荷電粒子源は、
- 荷電粒子を放出する荷電粒子放出面、
- 該荷電粒子放出面の像を生成するレンズであって光軸を有するレンズ、
- 少なくとも2本のビームが生成され、中心ビームは前記レンズの中心を通り、偏心ビームは前記レンズを偏心して通る、ように配置された、ビームを制限するビーム制限ダイアフラム、
- 前記ビームのうちの1本を前記光軸に近づくように偏向するように配置された第1偏向器、
- 前記偏心ビームの一部を通過させるエネルギー選択アパーチャ、及び前記中心ビームを通過させる中心アパーチャを有するエネルギー選択ダイアフラムであって、前記荷電粒子放出面と前記偏向器との間に設けられているエネルギー選択ダイアフラム、並びに
- 前記偏心ビームを前記エネルギー選択アパーチャに位置合わせする第2偏向器、
を有する。
【0002】
本発明はさらに係る荷電粒子源が備えられた粒子光学装置に関する。
【背景技術】
【0003】
係る荷電粒子源は特許文献1から既知である。本願記載の荷電粒子ビームは、電子顕微鏡-たとえば走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)-の電子源として、又は集束イオンビーム(FIB)装置のイオン源として用いられて良い。
【0004】
荷電粒子源を用いた装置では、ビームは、粒子光学素子-たとえばレンズや偏向器-によって操作される。ビームは、たとえば試料上に焦点を形成し、かつ該試料にわたって形成された焦点を走査するように操作される。
【0005】
試料上での係る焦点の大きさは、少なくとも部分的に所謂色収差によって決定される。粒子光学装置における色収差は、それぞれわずかに異なるエネルギーを有する複数の粒子によって引き起こされるものである。電子顕微鏡で用いられる電子源にとっては、電子のエネルギー広がりは典型的には0.3〜1eVである。FIBで用いられるイオン源にとっては、エネルギー広がりは典型的には1〜10eVである。特に低いビームエネルギーを用いるときには、相対的なエネルギー広がりΔE/Eは大きくなる。その結果色収差が生じる。
【0006】
色収差はビーム径を小さくすることによって減少させることが可能だが、この結果ビーム電流が低下して、所謂回折のスポットサイズへの寄与が増大してしまう恐れがあることに留意して欲しい。
【0007】
また試料を集束ビームではなく平行ビームで照射する荷電粒子装置も知られていることにもさらに留意して欲しい。この場合も同様に色収差が重要となる。
【0008】
特許文献1に記載された荷電粒子源は、エネルギー広がりを小さくすることによって色収差問題に対する解決策を供している。これは、エネルギー広がりが相対的に小さな粒子の一部をフィルタリングし、かつ残りの粒子を阻止することによって実現される。偏心ビームは、レンズがエネルギー分散を起こすように作用するため、エネルギーセンタダイアフラム上でのエネルギー分散線として結像される。ビームが結像されるダイアフラム内でのエネルギー選択アパーチャの幅は、前記アパーチャを通り抜けるエネルギー選択ビームのエネルギーの広がりを決定する。
【0009】
既知のフィルタは、エネルギー分散素子として軸から外れた部分を用い、かつエネルギー選択ダイアフラム上に粒子放出面の像を生成する。レンズのエネルギー分散作用は、ダイアフラム内のスリットの状態で、小さなアパーチャ上に分散線を生成する。その結果エネルギー分散像の一部が通過して、残りが阻止される。
【0010】
このエネルギーフィルタの問題点は、少なくとも2本のビーム-つまり中心ビームとエネルギーでフィルタリングされたビーム-が銃モジュールから発出されることである。典型的にはこれらのうちの一が軸の周りに集中する一方で、他は軸から遠ざかる。この発散するビームは意図しない反射、汚染等を引き起こす恐れがある。
【0011】
他の問題は、エネルギーでフィルタリングされたビームの荷電粒子が、中心ビームの粒子と相互作用してしまうことである。この相互作用の間、エネルギーでフィルタリングされたビームのエネルギー広がりは、ベルシュ効果及び軌道の変位によって増大すると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第7034315号明細書
【特許文献2】米国特許第6693282号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、一本のビームだけが発出される荷電粒子源を供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的のため、本発明による粒子源は、偏心ビームが、第2偏向器を用いることによってエネルギー選択アパーチャで集束及び位置合わせされるときに、前記第2偏向器は同時に中心ビームを偏向させ、それにより前記中心ビームがエネルギー選択ダイアフラムによって阻止される、ことを特徴とする。
【0015】
前記偏心ビームが、前記エネルギー選択アパーチャに対して位置合わせされ、かつ前記エネルギー選択ダイアフラムを通過するとき、前記中心ビームは、わずかに偏向されることで、前記エネルギー選択ダイアフラムによって阻止される。好適には前記中心ビームの偏向は前記第2偏向器によって行われる。その際には、前記偏心ビームを前記エネルギー選択アパーチャに対して位置合わせするのに必要な動作と同一の動作が行われる。
【0016】
その結果、前記中心ビームは前記荷電粒子源から射出されない。よって前記中心ビームの粒子は意図しない反射、汚染等を引き起こすことができなくなる。またエネルギー選択ビームと前記中心ビームの粒子間の荷電粒子相互作用-たとえばベルシュ効果及び軌道の変位-も、2本のビームが交差しないので、排除される。
【0017】
前記荷電粒子源は、上記のように形成され、かつ一度に1本のビームだけが前記荷電粒子源を発出するように用いられることが好ましいことに留意して欲しい。
【0018】
ビーム制限ダイアフラムは、レンズと放出面との間に設けられることで、偏心ビームが生成されて良いことにさらに留意して欲しい。しかし前記ビーム制限ダイアフラムは、前記放出面と前記第2偏向器との間の任意の位置に設けられても良い。つまり前記ビームが前記レンズと前記第2偏向器との間に設けられているときでさえ、偏心ビームは、前記の偏心ビームを画定するアパーチャにより、前記レンズを照射する前記ビームから除去される。その結果、前記レンズに入射する前に、前記偏心ビームを画定するときと同様の効果が生じる。
【0019】
また前記偏心ビームと前記中心ビームの偏向は同一-つまり前記偏心ビームが偏向されるとき、前記中心ビームは同一の角度で偏向される-であって良いが、前記2本のビームに係る偏向場の大きさ、範囲、又は方向はそれぞれ異なるように前記第2偏光器を生成することによって前記中心ビームの偏向を前記偏心ビームの偏向とは異なるようにすることも可能であることにも留意して欲しい。
【0020】
分散線は一連の環状像を加えることによって生成されて良く、各環状像は前記エネルギー分散ビームの一のエネルギーに相当することに留意して欲しい。しかし線像(前記エネルギー分散方向に対して垂直な線方向を有する)が用いられても良い。前記線像は、前記銃モジュールに続く光学系によって、環状焦点内に生成されて良い。
【0021】
本発明による荷電粒子源の実施例では、他の偏向器及びレンズが一の多極素子内で一体化されている。
【0022】
少なくとも2つの極を有する多極素子を用いることによって、その多極素子は、偏向器が上に設けられた環状レンズとして機能することができる。このように一体化することによって、部品の総数つまり銃モジュールの複雑性は減少する。そのような極は、磁極面又は静電電極のいずれかであって良いことに留意して欲しい。そのような多極素子は、双極子の配向の調節が可能なように4つの極を有することが好ましいことにさらに留意して欲しい。
【0023】
本発明による荷電粒子源に係る他の実施例では、多極素子はビームのスティグメータとして用いられるように備えられている。
【0024】
少なくとも4つの極を有する多極を用いることによって、レンズ場及び偏向場にスティグメータの電場を重ねることができる。
【0025】
当業者にとって知られているように、そのような極は磁極面又は静電電極であって良い。また一の構成素子内で電極と磁極面を組み合わせることも当業者には既知である。そのような多極素子は、たとえ6極つまり8極未満の回転可能なスティグメータが実現できるとしても、スティグメータの配向を調節するのに少なくとも8つの極を有することが好ましいことに留意して欲しい。
【0026】
本発明による荷電粒子源に係るさらに他の実施例では、多極素子は静電多極素子である。
【0027】
(静電)電極として極を形成することによって、小さな多極素子を作製する結果、小型の銃モジュールを作製することが可能となる。
【0028】
本発明による荷電粒子源に係るさらに他の実施例では、エネルギー選択ダイアフラムは、偏心ビームの一部を通過させる多数のエネルギー選択アパーチャを有する。
【0029】
偏心ビームは、レンズのエネルギー分散作用により、エネルギー選択ダイアフラム上でのエネルギー分散線として結像される。偏心ビームが結像されるエネルギー選択アパーチャの幅は該アパーチャを通過するエネルギー選択ビームのエネルギー広がりを決定する。よってそれぞれ幅の異なる多数のエネルギー選択アパーチャによって、エネルギー選択されたビームのそれぞれ異なるエネルギー広がりを選ぶことが可能となる。また一のアパーチャがたとえば汚染又は損傷したときには代替アパーチャが使用できるように、それぞれ異なるアパーチャが魅力的である。分散方向でのスリット幅は、エネルギー選択ダイアフラム上で結像される荷電粒子放出面の幾何学的結像サイズにほぼ等しいことが好ましい。
【0030】
本発明による荷電粒子源に係るさらに他の実施例では、多重偏心ビームが生成され、多重偏心ビームの各々はエネルギー選択アパーチャを通り抜ける偏心ビームとして用いられて良い。
【0031】
様々なエネルギー広がりを有するエネルギー選択されたビームを生成する他の方法は、ある程度中心から遠ざかるようにレンズを通過する様々な偏心ビームを選ぶことである。偏心ビームのエネルギー広がりが大きくなればなるほど、所与のアパーチャについては、ビームのエネルギー広がりは小さくなる。
【0032】
第2偏向器又はレンズの集束作用は、所望の偏心ビームをエネルギー選択アパーチャへ案内するのに用いられて良いことに留意して欲しい。
【0033】
本発明による荷電粒子源に係るさらに他の実施例では、中心ビームがエネルギー選択ダイアフラムを通過するときには偏心ビームはそのエネルギー選択ダイアフラムを通過しない。
【0034】
中心ビームがエネルギー選択ダイアフラムを通過し、かつ荷電粒子源を中心から外れる(第1偏向器によって軸から偏向される)ように発出するときには、中心ビームは一般的に偏心ビームよりもはるかに大きな強度を示すので、反射及び汚染の効果が典型的には最も深刻であるが、偏心ビームが中心から外れるように銃モジュールを発出するときにも同様の効果が生じる。よって中心から外れるように荷電粒子源を発出する全てのビームを阻止することは有利である。
【0035】
本発明による荷電粒子源に係るさらに他の実施例では、第2偏向器は、中心ビームの偏向とは異なる偏心ビームの偏向を引き起こす。
【0036】
偏心場が2つのビームについてそれぞれ異なるように第2偏向器を形成することによって、それぞれ異なる偏向強度又は方向の実現が可能となる。特別な場合は、第2偏向器が、偏心ビームと中心ビームとの間に位置する第1電極、及び2つの接地された電極を有する。ここで2つの接地された電極とは、一は中心ビームの2つの側のうち前記第1電極が設けられている側と反対の側に設けられ、かつ他は偏心ビームの2つの側のうち前記第1電極が設けられている側と反対の側に設けられている。この結果、各ビームについての偏向場は反対方向を向き、場合によっては強度もそれぞれ異なる。よってビームはそれぞれ異なる方向に偏向される。
【0037】
本発明のさらに他の実施例では、試料像を生成する粒子光学装置には、本発明による粒子光学源が備えられている。
【0038】
当該荷電粒子源は、たとえば走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型透過電子顕微鏡(STEM)、集束イオンビーム装置(FIB)、又はエネルギー広がりの小さな荷電粒子源が必要とされる他の粒子光学装置に用いられて良い。
【0039】
本発明による粒子光学装置に係る他の実施例では、当該装置は試料上に集束ビームを生成するように備えられている。
【0040】
エネルギー広がりが小さいことは、粒子光学レンズ及び/又は偏向器の色収差が生じるときに重要となる。このことは特に、ビームが試料上に集束されるときに当てはまる。
【0041】
本発明による粒子光学装置に係る他の実施例では、当該装置は、当該粒子光学源によって生成されて、荷電粒子が試料に衝突する前に偏向器によって軸へ向かうように偏向された荷電粒子のエネルギーを変化させるように備えられている。
【0042】
当該荷電粒子源は典型的には、生成されたある特定のエネルギー範囲の荷電粒子用に構築及び最適化される。生成された粒子ビームは他の値に加速又は減速されて良い。
【0043】
本発明による粒子光学装置に係る他の実施例では、エネルギー変化とはエネルギーを下げることである。
【0044】
エネルギー広がりが小さいことは、特に低エネルギービームを利用するときに重要である。なぜなら、エネルギーが低くなる結果、相対的なエネルギー広がりΔE/Eが大きくなり、色収差が大きくなるからである。従って荷電粒子源を用いて、その後粒子のエネルギーを所望のエネルギーにまで下げるとき、本発明によるエネルギーフィルタが魅力的となる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明による荷電粒子源を概略的に図示している。当該荷電粒子源では中心ビームが阻止されている。
【図2】粒子源を励起するフィルタリングされていないビームとフィルタリングされたビームのエネルギー分布を概略的に図示している。
【図3】本発明による荷電粒子源の代替実施例を概略的に図示している。
【発明を実施するための形態】
【0046】
ここで本発明を図に基づいて説明する。図中、対応する素子は同一の参照番号を用いて図示されている。
【0047】
図1は、本発明による荷電粒子源を概略的に図示している。当該荷電粒子源では中心ビームが阻止されている。
【0048】
荷電粒子放出面102は軸101を取り囲むように荷電粒子ビーム103を発生させる。ビーム制限ダイアフラム104は、放出粒子の一部を阻止して、かつ少なくとも2本のビームを通過させる。2本のビームとは軸を中心とする軸方向ビーム105と軸から外れたビーム106である。軸ビーム105は粒子光学レンズ107の中心を通過する一方で、軸から外れたビーム前記レンズを中心から外れるようにして通過する。レンズは、エネルギー選択ダイアフラム108に対して粒子放出面102を位置合わせする。エネルギー選択ダイアフラムは2つのアパーチャを有する。2つのアパーチャとは、(前記ビームが偏向されないときに)中心ビームを通過させる中心アパーチャ110と、ビームの一部106を通過させる偏心アパーチャ109である。偏向器111-図では2つの偏向板111aと111bで概略的に表されている-は、偏心ビームをエネルギー選択偏心アパーチャ109に対して位置合わせする。それにより、ビームの最も強い部分が偏心アパーチャ109を通過する。典型的にはレンズは、高いエネルギーの粒子よりも低いエネルギーの粒子をより強く集束させるので、軸へ向かうようなエネルギー分散線がエネルギー選択ダイアフラム上に生成される。半径方向での偏心アパーチャの幅は、エネルギー選択ビーム113のエネルギー広がりを決定する。偏向器112-図では2つの偏向板112aと112bで概略的に表されている-は、軸を取り囲むように偏心ビームを位置合わせする。
【0049】
偏向器111が起動していないとき、つまり中心ビーム105が軸101の中心とするときには、その中心ビームは、エネルギー選択ダイアフラム108の中心アパーチャ110を通過する。一般的には、中心ビームとは、偏心ビーム106よりも電流の大きなビームである。このようにビームが偏向されない状況では、偏心ビーム106は典型的にはエネルギー選択ダイアフラムによって阻止される。偏心アパーチャ109に対して位置合わせするように偏心ビームを偏向させるとき、中心ビームも偏向される。中心ビームの偏向は、(集束した)中心ビームを、中心アパーチャではなくエネルギー選択ダイアフラムの材料上に動かすのに十分なものである。それにより、中心ビームの通路が阻止され、かつ偏心ビームの一部だけがエネルギー選択ダイアフラムを通過して、エネルギー選択ビームが生成される。続いてこのエネルギー選択ビーム113は軸101を取り囲むように偏向され、当該荷電粒子源で用いられている他の装置によって操作(集束、偏向、走査等)される。
【0050】
たとえ中心ビームがエネルギー選択ダイアフラムを通過するときでさえも、その中心ビームを中心アパーチャ110に対して位置合わせするには、その中心ビームを偏向させる必要があると考えられる。これは、電極の位置合わせのズレに対抗する、又は放出面-たとえばショットキーエミッタのような-機械的変位及び/若しくはドリフトに対抗するのに用いられて良い。
【0051】
図2は、粒子源を励起するフィルタリングされていないビームとフィルタリングされたビームのエネルギー分布を概略的に図示している。
【0052】
フィルタリングされていないビームのエネルギー分布が曲線201で与えられている。曲線201は、公称エネルギーEnomからのエネルギー偏差の関数として強度を表している。Enomはビームを加速又は減速することによって変化させることが可能である。通常このエネルギー分布曲線201は、半値幅(FWHM)でのエネルギー広がり203によって特徴付けられるガウシアン分布であると推定される。電子源については、FWHMでのエネルギー広がりは典型的には0.5〜1eVである。液体金属イオン源については、FWHMでのエネルギー広がりは典型的には3〜10eVである。電子のわずかな一部をフィルタリングすることによって、FWHMでのエネルギー広がり204を有する分布202を得ることができる。当業者にとって既知であるように、そのようにフィルタリングされたビームは、たとえフィルタリングされていないビームよりも全電流が少ないとしても、レンズの色収差が支配的な場合では、はるかに小さな焦点内で集束可能であるので、結果として焦点内での電流密度は高くなる。
【実施例1】
【0053】
図3は、本発明による荷電粒子源の代替実施例を概略的に図示している。図3は図1から導かれたものと考えることができる。ここではビーム制限アパーチャ104は、レンズ107と第2偏向器111の間に設けられている。さらにここでは第2偏向器は、偏心ビーム106と中心ビーム105との間に設けられた1つの電極111bと、各ビームの電極111bと向き合う側とは反対の側と向き合う2つの接地された電極111aとして形成されている。その結果、偏心ビームは、中心ビームが偏向される方向とは反対の方向に偏向される。電極111bに対する2つの電極111aの間隔がそれぞれ異なっている結果、偏向場強度もそれぞれ異なるので、ビームが偏向される角度の大きさもそれぞれ異なる。よってこのような偏向器111の配置は、2本のビームの方向及び偏向角の大きさをそれぞれ異なったものにするので、さらなる設計の柔軟性が供される。
【0054】
(ほとんど)励起されないことで中心ビームを(ほとんど)集束させないレンズ107を有するこのような粒子源を用いることも可能であることに留意して欲しい。よって銃モジュールからの別な電流を有する中心ビームを取り出すことが可能である。またレンズとエネルギー選択アパーチャとの間でのクロスオーバーを生成するのに十分なだけレンズを励起することは、中心ビームを用いることによって、そのモジュールからの所望の電流を抽出するために利用されることが考えられる。これにより、中心ビーム-つまりエネルギー選択されていないビーム-を、レンズ107の調節による適切な電流によって選ぶこと、及び放出面から放出されるビームをエネルギー選択ダイアフラム上で結像させるレンズ107の設定によって偏心ビームを利用することが可能となる。銃モジュール内の別なレンズを用いることによるこのモードでの銃モジュールの利用は、特許文献2に記載されていることに留意して欲しい。
【符号の説明】
【0055】
101 光軸
102 荷電粒子放出面
103 荷電粒子
104 ビーム制限ダイアフラム
105 中心ビーム
106 軸から外れたビーム
107 レンズ
108 エネルギー選択ダイアフラム
109 スリット
110 中心ビーム
111 偏向器
112 偏向ユニット
113 通過したビーム
201 エネルギー分布曲線
202 分布
203 半値全幅
204 半値全幅でのエネルギーの広がり

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームを生成する荷電粒子源であって、
当該荷電粒子源は:
荷電粒子を放出する荷電粒子放出面;
該荷電粒子放出面の像を生成するレンズであって光軸を有するレンズ;
少なくとも2本のビームが生成され、中心ビームは前記レンズの中心を通り、偏心ビームは前記レンズを偏心して通る、ように配置された、ビームを制限するビーム制限ダイアフラム;
前記ビームのうちの1本を前記光軸に近づくように偏向するように配置された第1偏向器;
前記偏心ビームの一部を通過させるエネルギー選択アパーチャ、及び前記中心ビームを通過させる中心アパーチャを有するエネルギー選択ダイアフラムであって、前記荷電粒子放出面と前記第1偏向器との間に設けられているエネルギー選択ダイアフラム;並びに
前記偏心ビームを前記エネルギー選択アパーチャに位置合わせする第2偏向器;
を有し、
前記偏心ビームが、前記第2偏向器を用いることによって前記エネルギー選択アパーチャで集束及び位置合わせされるときに、前記第2偏向器は同時に前記中心ビームを偏向させ、それにより前記中心ビームが前記エネルギー選択ダイアフラムによって阻止される、
ことを特徴とする荷電粒子源。
【請求項2】
前記第2偏向器及び前記レンズが一の多極素子内で一体化されている、請求項1に記載の荷電粒子源。
【請求項3】
前記多極素子が前記ビームのスティグメータとして用いられるように備えられている、上記請求項のうちいずれかに記載の荷電粒子源。
【請求項4】
前記多極素子が静電多極素子である、上記請求項のうちいずれかに記載の荷電粒子源。
【請求項5】
前記エネルギー選択ダイアフラムは前記偏心ビームの一部を通過させる多数のエネルギー選択アパーチャを有する、上記請求項のうちいずれかに記載の荷電粒子源。
【請求項6】
多重偏心ビームが生成され、かつ
該多重偏心ビームの各々は前記エネルギー選択アパーチャを通り抜ける前記偏心ビームとして用いられることが可能である、
上記請求項のうちいずれかに記載の荷電粒子源。
【請求項7】
前記中心ビームが前記エネルギー選択ダイアフラムを通過するときには、偏心ビームは前記エネルギー選択ダイアフラムを通過しない、上記請求項のうちいずれかに記載の荷電粒子源。
【請求項8】
前記第2偏向器は前記中心ビームの偏向とは異なる前記偏心ビームの偏向を引き起こす、上記請求項のうちいずれかに記載の荷電粒子源。
【請求項9】
上記請求項のうちいずれかに記載の粒子光学源が備えられている、試料像を生成する粒子光学装置。
【請求項10】
前記試料上に集束ビームを生成するように備えられている、請求項9に記載の粒子光学装置。
【請求項11】
前記粒子光学源によって生成されて、前記荷電粒子が前記試料に衝突する前に前記偏向器によって前記軸へ向かうように偏向された前記荷電粒子のエネルギーを変化させるように備えられている、請求項9又は10に記載の粒子光学装置。
【請求項12】
前記のエネルギー変化とは前記エネルギーを下げることである、請求項11に記載の粒子光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−289748(P2009−289748A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124911(P2009−124911)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(501233536)エフ イー アイ カンパニ (87)
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
【住所又は居所原語表記】7451 NW Evergreen Parkway, Hillsboro, OR 97124−5830 USA
【Fターム(参考)】