説明

エネルギー変換器、特に燃料電池スタックまたは電解槽

本発明は、化学的エネルギーを電気的エネルギーに、および/または電気的エネルギーを化学的エネルギーに変換するための装置(1)であって、少なくとも1つの面(6)に向かって開いたハウジング(2、3、3a)を備え、ハウジング(2、3、3a)内に圧力チャンバ(4)が形成され、装置(1)がさらに、エネルギー変換用の少なくとも1つの電気化学的に活性のセル(5)を備え、セル(5)が、ハウジング(2、3、3a)の開いた面(6)からハウジング(2、3、3a)内に延在し、開いた面(6)が、プレート(7、31)によって閉じられ、プレート(7、31)が、セル(5)を保持する、および/またはセル(5)に電力を供給する装置(1)に関する。封止要素(8、9)が、ハウジング(2、3、3a)とプレート(7、31)の間に配置され、ハウジング(2、3、3a)の開いた面(6)を液密および/または気密で閉じて圧力チャンバ(4)を形成し、少なくとも部分的に弾性材料から形成される。圧力チャンバ(4)内に延在する少なくとも1つのポケット(10)が、封止要素(8、9)に形成され、セル(5)が、前記ポケット(10)内に位置決めされ、前記ポケット(10)のポケット壁(28)が、弾性材料により可撓性であり、したがって、圧力チャンバ(4)内に過圧がかかった場合に、ポケット壁(28)がセル(5)に当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学的エネルギーを電気的エネルギーに、または電気的エネルギーを化学的エネルギーに変換するための装置であって、少なくとも1つの開いた面を有するハウジングを備え、ハウジング内に圧力チャンバが形成され、装置がさらに、エネルギーを発生するための少なくとも1つの電気化学的に活性のセルを備え、セルが、ハウジングの開いた面からハウジング内に延在し、開いた面が、プレートによって閉じられ、プレートが、セルを保持する、および/またはセルに電力を供給する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような装置は、燃料電池アセンブリまたは電解槽セルアセンブリ(接合体)として知られている。この場合、活性セルは、化学的エネルギーを電気的エネルギーに変換する燃料電池(燃料セル)、または電気的エネルギーを化学的エネルギーに変換する電解槽セルである。互いに横並びの複数のプレート形セルからなる構成は、スタック、特に燃料電池スタックまたは電解槽スタックと呼ばれる。
【0003】
燃料電池アセンブリの場合、燃料および酸化剤がセルに継続的に供給される。2つの材料の反応中、電子の流れ、したがって電気的エネルギーが生成される。従来の個々の燃料電池は、約1.2Vの低い電圧を生成するが、これとは対照的に、活性反応面積1cm当たり最大約3ampの比較的高い電流密度を生成し、ここで、この面積情報(Flaechenangabe)は燃料電池における活性領域のサイズに関係する。例えば高分子電解質膜(PEM)およびその両側に位置する極板を備える現代の膜燃料電池では、これらの活性面積を100cmよりも大きくすることができるので、そのような個々の燃料電池は、約1.2Vの直流電圧で300アンペア以上の電流を供給することができる。得られる電流は、cm単位での活性面積と、最大電流密度との積として計算される。
【0004】
多くの技術的な用途では、1.2Vの直流電圧では低すぎるので、従来の燃料電池アセンブリでは、複数のセルを直列接続して、それによりセルの電圧を足し合わせることが非常によくある。電気的な直列接続に加えて、供給構造の直列接続を行うこともでき、それにより、セルへの燃料および酸化剤の供給は、上流のセルからの燃料および酸化剤の放出と同時に行われる。そのような実施形態では、特にコンパクトな燃料電池を製造することができる。あるいは、供給構造の並列接続を採用することもできる。
【0005】
通常、従来の燃料電池は、実質的に長方形の底面領域を有する扁平な平坦形状を有し、したがって、個々のセルを互いに平行に横並びに、または上下に積層することができる。これにより、平行六面体の全体の構造が得られ、その寸法はセルの数および面積に応じて決まる。積層内の個々のセルは互いに固定接続される。故障時に個々のセルをそのような堅固な結合から取り外すために、電気接続部、燃料および酸化剤の供給ラインおよび放出ライン、ならびに反応ラインの放出ラインを取り外さなければならない。さらに、燃料電池スタック全体を解体しなければならず、すなわち圧力プレートおよびバイポーラプレートを解体しなければならない。この過程で、良好なセルの損傷のない膜まで破壊されることがよくある。したがって、そのようなスタックから個々の燃料電池を取り外すには、かなりの技術的な労力をかけなければならず、時間もかかる。
【0006】
対照的に、個々の燃料電池がモジュールとして燃料電池ハウジング内に着脱可能に挿入されるモジュール式の燃料電池スタックも知られている。各燃料電池が、閉じたユニットを形成する。
【0007】
燃料電池の機能に関して、極板が、高分子電解質膜、または膜と極板の間に設けられた気体拡散層に圧力を及ぼす必要がある。実質的に、この圧力は、燃料電池内での反応によって生成される電子がカソードに達するように、極板と気体拡散層の間の所要の電気的な接触をもたらす。
【0008】
様々な可能な圧力印加法が知られている。例えば、圧力印加は、極板をクラウニングすることによって行うことができ、極板は凹形湾曲を有するように形成される。燃料電池の組立て中、電気的に絶縁された状態で極板の縁部が互いに接続され、それにより縁部が一緒に引っ張られる。これは、極板のクラウニングおよび所望の接触圧力をもたらす。あるいは、クランプ、特に外部から燃料電池に配置されたばね鋼クランプによって接触圧力を生成することができる。さらに、圧接は液圧式に行うこともできる。これに関し、極板は、高い可撓性を有するように非常に薄い。このとき、外部から極板に及ぼされた圧力は、極板の対応する変形を生じ、圧力は気体拡散層に伝達される。これに関し、燃料電池のハウジングは圧力チャンバを形成し、圧力チャンバ内に、液体または気体、すなわち一般には加圧された媒体が含まれる。燃料電池は液体中に位置決めされ、したがって、大気圧を超える圧力が圧力チャンバ内で生成されるとき、液体が圧力を極板に伝達する。これが、液圧によるセルに対する圧接力となる。
【0009】
そのような燃料電池アセンブリで故障した燃料セルを交換することになった場合、セルを解体する必要がある。圧力チャンバ内の過圧を低下させなければならず、媒体を完全に抜き出さなければならない。そうすることで初めて、故障した燃料電池を交換することができる。そのため、モジュール式システムの故障したセルの交換も労力および時間がかかり、したがって結局、燃料電池の修理にはより高いコストが伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上述した欠点を克服し、修理費が削減されるように、故障したセルを簡単にかつ迅速に交換することができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項1に記載の特徴によって実現される。有利な改良形態は、従属請求項に記載されている。
【0012】
化学的エネルギーを電気的エネルギーに、または電気的エネルギーを化学的エネルギーに変換するための装置であって、少なくとも1つの開いた面を有するハウジングを備え、ハウジング内に圧力チャンバが形成され、装置がさらに、エネルギーを発生するための少なくとも1つの電気化学的に活性のセルを備え、セルが、ハウジングの開いた面からハウジング内に延在し、開いた面が、プレートによって閉じられ、プレートが、セルを保持する、および/またはセルに電力を供給する装置であって、ハウジングとプレートの間の閉止要素(封止要素)が、ハウジングの開いた面を液密で閉じて圧力チャンバを形成し、少なくとも部分的に弾性材料から形成され、閉止要素が、少なくとも1つのポケットを有し、ポケットが、圧力チャンバ内に延在し、ポケット内にセルが位置決めされ、ポケットのポケット壁が、弾性材料により可撓性であり、したがって、圧力チャンバ内に過圧がかかった場合に、ポケット壁がセルに当接する装置が提案される。
【0013】
本発明の基本的な着想は、化学的エネルギーを電気的エネルギーに、または電気的エネルギーを化学的エネルギーに変換するための装置、すなわち燃料電池または電解槽セルにおいて、ハウジングの内部を閉じることによって加圧することができるチャンバを形成することであり、上記内部は、燃料電池または電解槽セルを受け入れるための少なくとも1つのポケットを有する手段によって閉じられ、上記手段は、少なくともポケットの領域内で可撓性であり、ポケットはチャンバ内に延在する。これは、圧力チャンバ内で過圧を生成した後、ポケット壁が、ポケット内に挿入されたセルを押圧し、それによりセルの極板に圧力を及ぼすことを意味する。したがって、セルは、いわば皮膜の形態での保護層によって取り囲まれ、すなわち、ハウジング内部をセルから液密にかつ圧力封止して分離する手段のポケット壁によって取り囲まれ、それによりその手段が閉止要素を形成する。装置のハウジングと閉止要素とが一体となって、閉じたチャンバを形成し、チャンバ内で過圧を生成することができる。チャンバには流体を充填することができ、流体は、チャンバ内の過圧をポケットの外面に伝達し、ポケットの内面をセルの極板に押圧する。これにより、液圧または空気圧によるセルに対する圧迫力が得られる。
【0014】
技術的な故障によりセルを交換する必要がある場合、チャンバ内の圧力を減少させるだけでよい。流体の排出は必要ない。減圧した後、セルを閉止要素のポケットから取り外すことができ、特に交換することができる。このため、従来の燃料電池または電解槽ユニットでのセルの交換に比べて最小限の時間しかかからない。
【0015】
閉止要素は、その縁部で、少なくとも部分的にハウジングの上縁部に保定することができ、特に少なくとも1つの固定具によって固定することができる。これに関し、閉止要素は、その縁部で、ハウジングの開いた面に向かって面する側壁の上縁部に位置し、その位置で、接着、溶接、または別の方法で固定することができる。例えば、上縁部にねじ接続によって取り付けることができ、上縁部に閉止要素を押圧する固定具としてのフレームによって固定することができる。このようにして、ハウジングは、閉止要素によって液密に、特にまた圧力封止して閉じられ、ハウジング壁と閉止要素の間に圧力チャンバが形成される。
【0016】
特に、本発明による装置は、複数の活性セルを備えることができ、これらのセルごとにポケットが閉止要素に形成される。このようにして、簡単にかつ迅速にセルを交換することができる燃料電池スタックまたは電解槽セルスタックを製造することができる。
【0017】
平坦なセルの場合、ポケットを互いに平行に形成することができ、ハウジング内でセルのスタック形状の構成が得られる。
【0018】
本発明による装置の有利な改良形態では、ハウジングは、少なくとも1つのポケットを有するそれぞれの閉止要素によってそれぞれ閉じられた2つの向かい合う開いた面を有することができる。この場合、ポケットはそれぞれ、開いた面の一方から圧力チャンバ内に延在する。向かい合う閉止要素のポケットは、互いに平行に横並びに提供することができる。このようにして、装置は、積層方向で、すなわち互いに横並びに配置されたセルの方向でかなり短縮することができる。
【0019】
特に、複数のセル、特に多数のセルを有する燃料電池アセンブリおよび電解槽セルアセンブリの場合、セルは、ハウジングの2つの開いた面に分散させることができ、それにより、セルのいくつかは、一方の開いた面からハウジング内に延在し、セルの残りは、他方の開いた面からハウジング内に延在し、またはセルを取り囲むポケットが圧力チャンバ内に延在する。したがって、挿入方向でハウジングの中心平面に対してユニットの対称構造を実現することができる。ここで、閉止要素のポケットを、それぞれ向かい合う閉止要素のポケットに対して、2つの隣接するポケットの間隔の半分だけずらすことが有利であり、それにより、一方の閉止要素の2つのポケットの間の圧力側空間内に他方の閉止要素のポケットが配置され、他方の圧力要素の2つのポケットの間の圧力側空間に一方の圧力要素のポケットが配置される。これは、燃料電池または電解槽セルアセンブリに関して特にコンパクトな構成をもたらす。
【0020】
第1の実施形態では、閉止要素は、力を加えることによって変形することができる実質的に寸法的に安定な成形部品から形成することができる。この成形部品は、例えば、射出成形法を使用することによってシリコーンまたはポリウレタンから形成することができる。この成形部品を使用するとき、閉止要素の形状を安定させるための追加の補助手段は必要なく、したがって本発明による装置を迅速にかつ簡単に組み立てることができる。
【0021】
好ましくは、ポケットの内側形状は、ポケット内に挿入すべきセルの外側形状に適合させることができる。さらに、ポケットの内側寸法は、ポケット内に挿入すべきセルの外側寸法に適合させることができる。したがって、ポケット内へのセルの挿入、またはそれに対応して減圧状態でのポケットからのセルの取外しは、大きな力を加えずに行うことができる。さらに、形状を互いに適合させることで、ポケット壁とセルの間にエアギャップがなくなるので、圧力チャンバ内の過圧がセルに効果的に伝達されることが保証される。
【0022】
代替実施形態では、閉止要素をテキスタイルシート(布地)として構成することができ、このテキスタイルシートは、ハウジングの開いた面に向かって開く2つの向かい合うハウジング側壁の長手方向切欠き内にループ状に位置決めされる。このとき、セルを受け入れるためのポケットが形成される。ポケットがハウジングの側壁に垂直になるように、向かい合う切欠きを互いに位置合わせすべきであり、すなわち互いに正面に向かい合うようにすべきである。
【0023】
テキスタイルシートは、非常に高い可撓性および弾性を有するように、0.5mm〜1.5mmの間、好ましくは1mmの厚さを有することができ、大気圧を超える圧力が圧力チャンバに印加されるときに、全面でセルの極板に接するように位置させることができる。
【0024】
テキスタイルシートは、補助手段なしでは安定な形状を維持しないので、突起部分によって切欠き内に摩擦係合により(互いの形状同士の係合によらず)固定することができ、突起部分は、形状および寸法に関して長手方向切欠きに対応する。突起部分は、切欠きの内側面にテキスタイルシートを押圧し、それにより圧力チャンバは、テキスタイルシートによって液密に、かつ圧力封止して閉じられる。
【0025】
したがって、2つ以上のセルを有する装置においてこの構成形態を使用するために、2つ以上の向かい合う切欠きをハウジングの側壁に提供することができる。このとき、テキスタイルシートは、それぞれの突起部分によって、これらの各切欠き内に固定することができる。好ましくは、同じ側壁の切欠き内の突起部分は全て1つのバーで担持することができる。したがって、側壁にある切欠き内でのテキスタイルシートの張設は、単一の接合ステップによって全ての切欠きで同時に行われる。これは、装置の組立てをかなり単純化し、時間を短縮する。突起部分とバーは一体形成することができる。
【0026】
複数のセルを有する装置の一実施形態では、2つの隣接するセルの互いに位置合わせされた極板を、機械的に剛性のブリッジによって互いに接続することができる。全ての隣接するセルでこれが行われる場合、これによりセルの直列接続が得られ、したがって、セルによって供給される電圧が足し合わされ、またはセルの直列接続に印加される電圧がセルにわたって実質的に均一に分散される。ここで、ブリッジは、一方のセルのアノードを他方のセルのカソードに接続する。
【0027】
好ましくは、ブリッジを極板と一体形成することができる。すなわち、ブリッジを、極板と共に同一の材料から同じプロセスステップで形成することができる。あるいは、ブリッジは2枚の層板の一部でよく、各層板は、ポケット内に延在し、2つの隣接するセルのそれぞれの極板に当接する。鋼板または銅板、あるいはまた銅被覆鋼板を使用することによって製造を行うことができ、2枚の極板または2枚の層板とブリッジが一緒にシートから押し抜きされ、および/または1つのダイで同時に成形され、その後、曲げプロセスを使用して、極板/層板が最終的に互いに平行に向かい合わせに提供されるように極板または層板の形成が行われる。ここで、一方の極板が他方の極板/層板に対して180°屈曲される。電気ブリッジは実質的にU字形でよい。好ましくは、ブリッジは、極板の全長にわたっては延在しない。ブリッジは、極板の長さのわずか約20〜50%でよく、ブリッジに接続された極板が挿入された状態では、個別のセルに出入りする供給ラインを電気ブリッジの右および/または左に提供することができるようにブリッジを中央に提供することができる。
【0028】
さらに、ポケットの底部にスペーサを提供することが有利である。そのようなスペーサは、圧力チャンバ内に過圧がかかっている状態で、テキスタイルシートがセルの極板に当接するときに、極板の鋭利な縁部によってテキスタイルシートが損傷されるのを防止する。このようにして、テキスタイルシートによって形成されるポケットの内面は、極板の縁部から離されている。
【0029】
スペーサの有利な改良形態では、スペーサは、セルの極板の縁部または層板の縁部を受け入れるための2つの長手方向溝を有する細長い成形部品として形成することができる。ここで、成形部品は、ポケットの全長にわたって延在することができ、それにより、ポケットの底部の各場所で、ポケット底部と極板の縁部との間に隙間が保たれる。さらに、スペーサは、ゴム弾性材料から形成することができる。スペーサに極板または層板を挿入することで、ポケットの寸法的な安定性が得られる。
【0030】
以下、本発明のさらなる特徴および利点を、2つの具体的な実施形態および添付図面を参照して例示する。同一の参照番号は、同一または少なくとも機能的に同一の部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】閉止要素として成形部品を備える第1の実施形態による燃料電池の分解図である。
【図2】組み立てられた状態での、積層方向で中心平面に沿った図1による燃料電池の断面図である。
【図3】成形部品の側面図である。
【図4】図2による燃料電池の断面図である。
【図5】閉止要素としてテキスタイルシートを備える第2の実施形態による燃料電池の分解図である。
【図6】図5による燃料電池の前面図である。
【図7】組み立てられた状態での、積層方向で中心平面に沿った図5による燃料電池の断面図である。
【図8】組み立てられた状態での図5による燃料電池の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、底部プレート(底板)2と4面の側壁3を備えるハウジングを有する本発明の第1の実施形態による燃料電池アセンブリ1を示す。したがって、ハウジングは、5面の閉じた面と、1面の開いた面6とを有する。この開いた面6は、寸法的に安定な成形部品または閉止要素8によって液密に、かつ圧力封止して閉じられる。成形部品8は外縁部カラー15を有し、カラー15は、側壁3の上縁部14の上に被さり、特に固定具(図示せず)によって上縁部14に押圧され、それにより、側壁3および底部と成形部品8とを有するハウジングが閉じたチャンバ4を形成する(図2参照)。
【0033】
成形部品8は、チャンバ4内に、すなわちハウジングの底部2に向かう方向に延在する5個のポケットを有する。これらのポケット10はそれぞれ、形状および内側寸法に関して燃料電池5と相補的であり、燃料電池5は、燃料電池アセンブリ1が組み立てられた状態では、ポケット10のそれぞれ1つに挿入される。燃料電池5は、扁平であり、狭い端面にキャップ24を有し、キャップ24は、燃料電池の残りの部分よりも幅が広い。動作流体用の供給接続部25と、集電器23とが、キャップ24から、プレート31の対応する穴を通って外に延在する。このようにして、プレート31が燃料電池5を所定の位置に保持する。
【0034】
図2は、組み立てられたときの燃料電池アセンブリ1を示す。ここでは、成形部品8は、ハウジング2、3とプレート31との間に設けられ、プレート31は、成形部品8の外縁部15を側壁3の上縁部14に押圧する。そのようにして、チャンバ4は、底部2と、側壁3と、成形部品8とによって閉じられる。成形部品8に形成されたポケット10は、チャンバ4内に延在する。各ポケット10は、それぞれの燃料電池5を保持する。セルの供給接続部25は、プレートの孔29を通って延在する。集電器23は、プレートの穴30を通って延在し、それぞれのセル5の供給接続部25と一列に位置合わせされている。
【0035】
図3は、本発明による閉止要素8を拡大して示す。それぞれ実質的に扁平形状の5個の個別のポケット10が閉止要素8に成形され、等間隔で配置され、互いに平行に、縁部カラーを形成する平坦領域から離れるように延在する。各ポケット10は、それぞれの燃料電池5を受け取ることができるチャンバ32と、それぞれの燃料電池を取り囲み、燃料電池を燃料電池アセンブリ1の残りの部分から隔離する壁28とを形成する。ポケットチャンバは破線で示されている。さらに、各ポケット10は、幅の広い第1のポケット区域11と、狭い下側ポケット区域12と、ポケット底部13とを有する。上側ポケット区域11は、それぞれのセルのキャップ24を受け入れ、下側ポケット区域12は、それぞれのセル5の活性部分を受け入れる。
【0036】
図4は、燃料電池5を横切る図2による燃料電池アセンブリ1の平面図である。燃料電池5は、それぞれ2枚の極板19を有し、極板19は、それぞれのセルのアノードおよびカソードを形成する。極板19の各対の間に、それぞれの高分子電解質膜(PEM)27がある。さらに、膜27と極板19の間に気体拡散層(図示せず)を設けることができる。動作流体、すなわち燃料および酸化剤を供給するチャネルが、膜27と極板19の間に形成される。極板19は集電器23に移行し、集電器23は、プレート31の穴30を通って延在する。
【0037】
図1〜図4による実施形態における成形部品8は、弾性変形可能であり、シリコーンまたはポリウレタンから一部片で形成される。成形部品の寸法安定性が保証されるように、ポケット壁28の壁厚さ、および平坦領域の厚さ、特に縁部領域15の厚さは、1〜4ミリメートルの間である。ポケット10の形状が成形部品8をさらに補強する。
【0038】
図5〜図8は、本発明の第2の実施形態を示す。この燃料電池アセンブリ1は、ハウジングを封止する閉止要素が、寸法的に不安定な可撓性のテキスタイルシート9によって形成されるという点で、図1のものとは異なる。テキスタイルシート9は、燃料電池5と、ハウジング3に燃料電池5を固定するための重畳部(Ueberstand;突出部)との幅にほぼ対応する幅を有する。テキスタイルシート9の長さは燃料電池の数に応じて決まり、長さLを有するn個のセルの場合には、2×L×nよりも大きい。したがって、約10cmの長さを有する5個のセルのためのテキスタイルシートの長さは、約1.2mとなることがある。
【0039】
ハウジングの2つの向かい合う側壁3aは切欠き16を有し、切欠き16は、ハウジングの開いた面6に向かって開いている。側壁3aにある切欠き16は、互いに正面に向かい合っている。テキスタイルシート9は、ループ状に切欠き16に嵌められる。側壁3、3aの上縁部14から延び出して、テキスタイルシートは、まず、切欠きの1つの内側面に沿って、切欠きの下端部に向かって下方向に延び、そこから、下縁部に沿って反対側の内側面にさらに進み、次いで切欠きの口部まで上方向に戻る。そこで、テキスタイルシート9は切欠き16から出て、側壁3aの上縁部を通して送られ、隣接する切欠き16内に進む。このようにして、テキスタイルシートは、全ての切欠き16を通って蛇行してループ状に供給される。
【0040】
テキスタイルシート9は、突起部分17によって切欠き16内に保持される。突起部分17は、長さおよび幅に関して切欠き16の内側寸法に対応し、したがってテキスタイルシート9は、突起部分17と切欠き16の内縁部との間に押し込まれる。突起部分17はバー18で担持され、バー18と一体形成される。したがって、バー18は櫛形を有する。各バー18は、それぞれの突起部分17の端部を越えて延在し、突起部分17を挿入した状態では、両端の切欠き16を越え出たテキスタイルシート9を側壁3aの上縁部14にしっかりと押圧する。
【0041】
2つの向かい合う切欠き16の内側面に沿ってテキスタイルシート9を敷設し、切欠き16内に突起部分を挿入することによって適切に固定することによって、テキスタイルシートは、ハウジングの側壁3aから反対側の側壁3aまでわたって広げられ、それによりそれぞれポケット10を形成する。
【0042】
また図5による実施形態では、5個のポケットが存在し、各ポケットがそれぞれの燃料電池5を受け入れる。前述した実施形態と同様に、燃料電池5はそれぞれ2つの隣接する極板19を有し、極板19の間に、膜27がそれぞれのキャップ24からそれぞれのポケット10内に延在する。キャップ24は、その狭い面に供給接続部25を有し、供給接続部25は、供給プレート7にプラグ接続することができ、またはプラグ接続されている。膜27、ひいてはセル5自体が、供給プレート7によって保持され、供給プレート27から動作流体を供給される。このために、供給プレート7は、入口開口と出口開口を有する経路構造を備えることができ、それらの開口を通して、全てのセル5が燃料供給され、または全ての反応生成物が排出される。そのような供給プレート7はバックプレーンとも呼ばれる。
【0043】
1つの集電器23が、各極板19から供給プレート7に向かって延在し、外端部の燃料電池5の極板19は、それらの端部で90°湾曲された電気端子23を有する。さらに、残りの各極板19は、それぞれの機械的ブリッジ20を介して、隣接するセル5の極板に電気的に接続され、1つのセルのアノードが、隣接するセル5のカソードに接続される。したがって、セル5は直列接続される。互いに接続される極板19と、それらを接続するブリッジ20は一部片で形成される。ブリッジ20はU字形であり、その幅はセル5の約3分の1にすぎない。各ブリッジ20の左右に供給ライン(図示せず)を提供することができるように、セル5の横方向で、ブリッジ20はそれぞれ極板19に対して中心を合わされる。
【0044】
図6は、スロットを設けられたハウジング側壁3aの分解前面図で図5による構成を示す。
【0045】
図7は、図5および図6による燃料電池アセンブリ1を組み立てられた状態で示す。テキスタイルシート9が、供給プレート7とハウジングの側壁3、3aとの間に提供され、ハウジングの開いた面6を閉じ、それにより圧力チャンバ4が形成される。図7は、強調して拡大した詳細図Aも示す。この詳細図Aは、ポケット10の底部領域を示し、スペーサ22がポケット10の底部21に取り付けられている。スペーサ22は、2つの長手方向溝を有する細長い成形部品によって形成される。スペーサ22は、下に向かって丸められており、極板19の縁部をテキスタイルシート9から離し、したがって、テキスタイルシート9が極板19をどの側面から押しても極板19の縁部がテキスタイルシート9に損傷を及ぼすことはない。
【0046】
図8は、図5および図6による燃料電池を、完全に組み立てられた状態で示す。底部プレート、側壁3、3a、および供給プレート7によって形成される平行六面体ハウジングから、電気接続部23が突出する。
【0047】
図1〜図8による燃料電池1の動作中、チャンバ4は液体で満たされる。液体は圧縮可能でないので、大気圧を超える圧力がチャンバ4に印加されるとき、液体はこの圧力をポケット10に伝達する。したがって、ポケット10に対して外部から圧力が及ぼされ、その結果、ポケット10の内面が極板19に押圧され、極板19がさらに膜27に押圧されるか、または膜27と極板19の間の気体拡散プレートに押圧される。
【0048】
故障によりセル5を交換しなければならない場合、チャンバ4の圧力を減少させるだけでよい。減圧した後、故障しているセル5を、それぞれのポケット10から容易にかつ迅速に取り外すことができ、新たなセル5と交換することができる。このようにして、時間ひいてはコストを節約することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 装置、燃料電池
2 底部プレート
3 側壁
3a 切欠きのある側壁
4 圧力チャンバ
5 活性セル、燃料電池
6 ハウジングの開いた面
7 バックプレーン、供給プレート
8 閉止要素、成形部品
9 閉止要素、テキスタイルシート
10 ポケット
11 上側ポケット区域
12 下側ポケット区域
13 ポケット底部
14 側壁の上縁部
15 閉止要素の縁部領域
16 切欠き
17 突起部分
18 バー
19 極板
20 ブリッジ
21 ポケットの底部
22 スペーサ、ゴム成形部品
23 電流接続部
24 キャップ
25 供給接続部
26 動作流体および反応物用の経路
27 膜
28 ポケット壁
29 孔
30 穴
31 プレート
32 チャンバ
33 供給接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学的エネルギーを電気的エネルギーに、または電気的エネルギーを化学的エネルギーに変換するための装置(1)であって、少なくとも1つの開いた面(6)を有するハウジング(2、3、3a)と、前記ハウジング(2、3、3a)の開いた面(6)からハウジング(2、3、3a)内に延在する、エネルギー発生のための少なくとも1つの電気化学的に活性なセル(5)とを備え、前記ハウジング(2、3、3a)内には圧力チャンバ(4)が形成され、前記開いた面(6)が、前記セル(5)を保持しおよび/または前記セル(5)に電力を供給するプレート(7、31)によって閉じられる、装置(1)において、前記ハウジング(2、3、3a)と前記プレート(7、31)の間に閉止要素(8、9)が設けられ、前記閉止要素は、前記ハウジング(2、3、3a)の開いた面(6)を液密および/または気密に閉じて前記圧力チャンバ(4)を形成するとともに、少なくとも部分的に弾性材料から形成されていて、前記閉止要素(8、9)が、前記圧力チャンバ(4)内に延在する少なくとも1つのポケット(10)を有し、前記ポケット(10)内に前記セル(5)が位置決めされ、前記ポケット(10)の前記ポケット壁(28)が、前記弾性材料により可撓性であり、したがって、前記圧力チャンバ(4)内に過圧がかかった場合に、前記ポケット壁(28)が前記セル(5)に当接することを特徴とする装置(1)。
【請求項2】
前記閉止要素(8、9)が、その縁部(15)で、少なくとも部分的に前記ハウジング(2、3、3a)の前記上縁部(14)に保定され、特に少なくとも1つの固定具によって固定されることを特徴とする請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
複数の活性なセル(5)があり、それぞれのポケット(10)が各セル(5)ごとに前記閉止要素(8、9)に形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記活性なセル(5)が概して平坦であり、前記ポケット(10)が互いに平行であることを特徴とする請求項3に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記ハウジング(2、3、3a)が、2つの向かい合う開いた面(6)を有し、これらの面(6)がそれぞれ、少なくとも1つのポケット(10)を有するそれぞれの閉止要素(8、9)によって閉じられ、前記ポケット(10)が、それぞれの前記開いた面(6)から前記圧力チャンバ(4)内にそれぞれ延在し、互いに平行に横並びしていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記閉止要素(8、9)が、実質的に寸法的に安定な成形部品(8)から形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項7】
ポケット(10)の内側寸法が、それぞれの前記セル(5)の外側寸法に対応することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項8】
前記閉止要素(8、9)がテキスタイルシート(9)によって形成され、前記ハウジング(2、3、3a)の2つの向かい合う側壁(3、3a)がそれぞれ少なくとも1つの細長い切欠き(16)を有し、前記切欠き(16)が、前記ハウジング(2、3、3a)の前記開いた面(6)に向かって開いており、前記テキスタイルシート(9)が、前記切欠き(16)内にループ状に延在して、前記ポケット(10)を形成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記テキスタイルシート(9)が、前記細長い切欠き(16)の形状に対応する形状を有する突起部分(17)によって、前記切欠き(16)内に摩擦係合で固定されることを特徴とする請求項8に記載の装置(1)。
【請求項10】
前記側壁(3、3a)がそれぞれ2つ以上の切欠き(16)を有し、一つの側壁(3、3a)の前記切欠き(16)のための前記突起部分(17)が、バー(18)と一体に保持されることを特徴とする請求項9に記載の装置(1)。
【請求項11】
前記セル(5)が極板(19)を有し、2つの隣接するセル(5)の隣接する極板(19)が、機械的に剛性の電気的ブリッジ(20)によって互いに接続されることを特徴とする請求項3〜10のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項12】
前記ブリッジ(20)が前記極板(19)と一体形成されることを特徴とする請求項11に記載の装置(1)。
【請求項13】
前記ブリッジ(20)が、2枚の層板の一部であり、前記層板がそれぞれ、ポケット(10)内に延在し、かつ2つの隣接するセル(5)のそれぞれの極板(19)に当接することを特徴とする請求項11に記載の装置(1)。
【請求項14】
ポケット(10)の底部(21)にスペーサ(22)が位置決めされることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項15】
前記スペーサ(22)が、それぞれの前記セル(5)の前記極板(19)の縁部または前記層板の縁部を受け入れる2つの長手方向溝を有する細長い成形部品であることを特徴とする請求項14に記載の装置(1)。
【請求項16】
前記閉止要素(8、9)が、シリコーンまたは可撓性ポリウレタンからなることを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項17】
前記テキスタイルシートが、0.5mm〜2.5mmの間、好ましくは1mm〜1.5mmの間の厚さを有することを特徴とする請求項8〜16のいずれか一項に記載の装置(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−513908(P2013−513908A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542388(P2012−542388)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【国際出願番号】PCT/EP2010/007384
【国際公開番号】WO2011/069625
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(512151414)
【Fターム(参考)】