説明

エネルギー変換装置およびこれを備えた移動体

【課題】 振動エネルギーを効率よく電気エネルギーに変換することができるエネルギー変換装置、このエネルギー変換装置を備えた移動体を提供する。
【解決手段】 エネルギー変換装置10は、圧電板11と補強板12からなる圧電素子13と、補強板12の外周端に設けられたリブ14と、補強板12の中心部に設けられたスペーサ15と、複数の圧電素子13をその厚み方向に一定間隔で保持することができるように、リブ14を可動に保持する溝部19が一定間隔で形成された保持部材16と、保持部材16に保持された複数の圧電素子13の中央部に外力を作用させるための押圧部材17と、保持部材16に保持された複数の圧電素子13の中心部において押圧部材17側に予圧を加える予圧機構18と、を具備する。押圧部材17に外力が作用し、保持部材16と押圧部材17とが相対的に変位することにより、圧電素子13が撓み、発電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動エネルギーを電気エネルギーに変換するエネルギー変換装置と、このようなエネルギー変換装置を備えた移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、二酸化炭素等による地球温暖化を抑制するために、自動車等の車両の分野では、電気自動車やハイブリッド自動車、燃料電池自動車の開発が進められていることは周知の通りである。このような電気自動車等では、基本的にバッテリーに蓄えられた電気により駆動モータを回転させるために、走行中の車両の運動エネルギーを駆動モータの駆動に利用することにより、バッテリーへの負担を軽減して、走行距離を伸ばすことができるようになる。
【0003】
また、電気自動車等は勿論のこと、一般的なガソリン等の液体燃料を用いる車両においても、カーナビゲーションシステム等の搭載によりバッテリーへの負担が増大しており、走行中の車両の運動エネルギーをこのような電装品の駆動に用いることによって、バッテリーへの負担を軽減することができる。
【0004】
車両の運動エネルギーを有効に活用する方法として、例えば、特許文献1,2には、車両の振動エネルギーを電気エネルギーに変換する装置、すなわちサスペンションで発電する装置が開示されている。しかし、これらの発電装置は、コイルと磁石を用いて電磁誘導により発電するものであるので、装置が大型となり、車両への取り付けが困難である。また、一般的に車両のサスペンションは、このような発電装置がない状態で車両を最適な状態に制動することができるように設計されているため、コイルと磁石との相対的な変位量を大きく取ることはできず、その結果、発電効率を高めることは困難である。
【特許文献1】特開2001−55033号公報
【特許文献2】特開平7−276963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、振動エネルギーを効率よく電気エネルギーに変換することができるエネルギー変換装置を提供することを目的とする。また、本発明はこのようなエネルギー変換装置を搭載した移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、圧電板と補強板とを貼り合わせてなる圧電素子と、
前記圧電素子を、複数、その厚み方向で互いに接触しないように一定間隔で保持する第1の保持部材と、
前記一定間隔で保持された複数の圧電素子に同等の変形が生ずるように、前記第1の保持部材が前記複数の圧電素子を保持する部分とは異なる部分で、前記複数の圧電素子を保持する第2の保持部材と、
を具備し、
前記第1の保持部材と前記第2の保持部材とが外力によって前記圧電素子の厚み方向で相対的に変位した際に前記圧電素子が撓んで発電し、電気エネルギーが得られることを特徴とするエネルギー変換装置、が提供される。
【0007】
また本発明によれば、リング状の圧電板と、金属または樹脂の少なくとも一方からなり、外径が前記圧電板の外径よりも長い円板状の補強板と、を貼り合わせてなる圧電素子と、
前記補強板の外周端に設けられたリブと、
前記補強板の中心部に取り付けられた所定の厚さの円板状のスペーサと、
複数の前記圧電素子をその厚み方向に一定間隔で保持することができるように、前記リブを可動に保持する溝部が一定間隔で形成された保持部材と、
前記保持部材に保持された前記複数の圧電素子の一端に位置する圧電素子のスペーサに固定された押圧部材と、
前記保持部材に取り付けられ、前記保持部材に保持された前記複数の圧電素子の他端に位置する圧電素子の中心部を所定の力で他の圧電素子側に押圧することができる予圧機構と、
を具備し、
前記保持部材と前記押圧部材とが外力によって前記圧電素子の厚み方向で相対的に変位した際に前記圧電素子が撓んで発電し、電気エネルギーが得られることを特徴とするエネルギー変換装置、が提供される。
【0008】
さらに本発明によれば、上記エネルギー変換装置を備え、接地した回転体の回転により移動する移動体であって、
前記移動体はさらに、前記回転体と前記移動体の本体との間に設けられたサスペンションと、前記移動体を駆動するための蓄電装置および電気装置と、を具備し、
前記エネルギー変換装置は前記回転体と前記移動体の本体との間において前記サスペンションと直列または並列に設けられ、前記移動体が接地面上を移動する際に受ける振動のエネルギーを前記エネルギー変換装置によって電気エネルギーに変換し、得られた電気エネルギーが前記電気装置の駆動または前記蓄電装置への充電に用いられることを特徴とする移動体、が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るエネルギー変換装置によれば、圧電素子を用いているので、小さい変位で大きな電気エネルギーを得ることができる。このため、本発明に係るエネルギー変換装置を車両の足回りに搭載することにより、振動を効率よく電気エネルギーに変換することができ、しかもサスペンション等の仕様を変更する必要がなく、車両の制動にも悪影響を及ぼさない。また、本発明に係るエネルギー変換装置は小型化が容易であり、圧電素子の形状や数、圧電素子を構成する補強板の硬さを変更することにより、発電量を容易に設計することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1にエネルギー変換装置10の概略構造を示す断面図を示す。このエネルギー変換装置10は、リング状の圧電板11と円板状の補強板12とを貼り合わせてなる圧電素子13と、補強板12の外周端に設けられたリブ14と、補強板12の中心部に取り付けられた円板状のスペーサ15と、複数の圧電素子13をその厚み方向(図1において、Z方向)に一定間隔で保持することができるように、リブ14を可動に保持する溝部19が一定間隔で形成された保持部材16と、保持部材16に保持された複数の圧電素子13の一端(+Z方向端)に位置する圧電素子(図1において、符号13aで示す)のスペーサ(図1において、符号15aで示す)に固定された押圧部材17と、保持部材16に取り付けられ、保持部材16に保持された複数の圧電素子13の他端(−Z方向端)に位置する圧電素子(図1において、符号13bで示す)の中心部を所定の力で他の圧電素子側(+Z方向側)に押圧する予圧機構18と、を具備している。
【0011】
圧電板11は、リング状の圧電セラミックスの表裏面に電極膜(図示せず)が形成された構造を有し、圧電セラミックスは厚み方向に分極されている。また、圧電板11は樹脂接着剤を用いて、補強板12に接着されている。なお、圧電セラミックスの代わりに圧電ポリマーを用いてもよい。補強板12は、金属または樹脂の少なくとも一方からなり、その外径が圧電板11の外径よりも長い円板形状を有している。補強板12として樹脂からなるものを用いる場合には、圧電板11からの電極リード(図示せず)の取り出しを容易とするために、圧電板11と貼り合わされる面に、金属箔が設けられているものを用いることが好ましい。
【0012】
補強板12の外周端に円周状に形成されたリブ14には、樹脂材料、セラミックス材料、金属材料を用いることができる。セラミックス材料や金属材料を用いる場合には、例えば、断面略半円形の2つ割のリングを準備し、補強板12の外周端部を挟み込んで、接着剤等で接着すればよい。また、補強板12とリブ14が共に金属材料であれば、これらは一体成形されたものであってもよく、溶接により接合されたものであってもよいし、補強板12とリブ14が共に樹脂であれば、これらは一体成形されたものであってもよい。リブ14に樹脂材料を用いる場合には、補強板12の外周に直接に補強板12に密着するように成形することもできる。
【0013】
なお、補強板12の外周に設けられたリブ14は、補強板12の外周を可動に安定して保持するために設けられるものである。このため、図1では補強板12の外周端面がリブ14により覆われた構造を示しているが、例えば、補強板12の外周端面が露出し、断面略半円形のリング部材が補強板12の上下に接着されてリブを形成している構成でもよい。
【0014】
スペーサ15の外径は、圧電板11に接触しないように、圧電板11の内径よりも短ければよい。これは、スペーサ15には押圧部材17から圧電素子13を撓ませるための力が直接に加わるので、その力によって圧電素子13が破壊しないようにするためである。また、円板状のスペーサ15の厚さは、複数の圧電素子13を保持部材16に一定間隔で配置した際に、1つの圧電素子に設けられたスペーサと対面する圧電素子の補強板との間に僅かな隙間が形成されるか、または隣接する圧電素子どうしが互いに撓むことがない程度に接触するように、定められる。さらに、スペーサ15の材質は、図1に示されるように複数の圧電素子13を一定間隔で配置した際に、隣接する圧電素子どうしが絶縁されるように選択される。例えば、補強板12が金属からなる場合には絶縁性の樹脂やセラミックスが好適に用いられ、補強板12が絶縁性の樹脂からなる場合には、金属、樹脂、セラミックスが好適に用いられる。
【0015】
保持部材16は、筒部21と、筒部21の開口端面をそれぞれ閉塞する上蓋22および底蓋23とから構成される。これらは、例えば、ボルト締め(図示せず)等により一体化される。筒部21に形成されている溝部19は、後述するように圧電素子13の外周部ではZ方向に変位することなくその中心部がZ方向に変位して撓むことができるように(このとき、リブ14に所定角度回転するような動きが生じる)、リブ14よりも僅かにサイズが大きくなっている。
【0016】
筒部21としては、径方向で2つ割にされた構造のもの、または厚さ(高さ)方向に多段に分割された構造のもの、が好適に用いられる。2つ割構造のものでは、一方の型に溝部19に圧電素子13のリブ14を嵌め込み、複数の圧電素子13をこの型に仮保持させた状態で、リブ14と他方の型の溝部19とを嵌め合わせ、次いで上蓋22および底蓋23を取り付ければ、複数の圧電素子13を保持部材16に配置することができる。
【0017】
一方、多段分割構造のものでは、内周の上下に溝部19を2分する溝が形成されたリング状の型と圧電素子13とを交互に積層することにより、リブ14を上下の型により形成される溝部19に嵌め込み、これらリング状の型を上蓋22と底蓋23で挟み込んで固定すれば、複数の圧電素子13を保持部材16に配置することができる。なお、このようなリング状の型を用いると、溝部19の開口幅をリブ14よりも薄くすることができるので、リブ14を可動に保持しながら、リブ14が溝部19から容易には抜けない構造を実現することができる。
【0018】
上蓋23の中央部には貫通孔が形成されており、押圧部材17は、この貫通孔にZ方向に可動に挿通されている。また、予圧機構18は、バネ24と、バネ24を保持するために−Z方向端に設けられた圧電素子13bの補強板12に取り付けられた当接部材25と、バネ24を保持するために保持部材16(底蓋23)に設けられた棒部材26から構成されており、バネ24が+Z方向に圧電素子13bに予圧を加えている。
【0019】
このように予圧機構18のバネ24が圧電素子13bに+Z方向に一定の予圧を加えている状態では、前述したようにある圧電素子のスペーサとこのスペーサと対面する別の圧電素子の補強板との間には僅かな隙間があるかまたは隙間がないために、玉突き状態となって、全ての圧電素子13が+Z方向に凸となるように撓もうとする。そこで、エネルギー変換装置10は、予圧機構18による予圧によって圧電素子13が撓むことのないように、押圧部材17が圧電素子13aに−Z方向に一定の予圧を加えた状態となるように、所定の場所に配置される。つまり、押圧部材17は常に+Z方向端に配置された圧電素子13aのスペーサ15と接し、圧電素子13aを−Z方向に押圧している状態に維持される。押圧部材17を圧電素子13aのスペーサ15と接着しておけば、このスペーサ15は押圧部材17の変位量を制限するストッパとして機能する。
【0020】
上述の通りに構成されたエネルギー変換装置10では、保持部材16と押圧部材17とがZ方向で相対的に変位することで圧電素子13を発電させる。図2にエネルギー変換装置10の駆動態様を示す断面図を示し、図3にエネルギー変換装置10から電気エネルギーを回収するための回路構成図を示す。
【0021】
図2(a)に示されるように、例えば、保持部材16が固定された状態で押圧部材17に−Z方向の力が加わると、バネ24は縮んで、全ての圧電素子13が−Z方向に凸となるように撓む。一方、図2(b)に示されるように、保持部材16が固定された状態で押圧部材17に+Z方向の力が加わると、押圧部材17が圧電素子13に与える力が減少するので、バネ24が伸びて、全ての圧電素子13が+Z方向に凸となるように撓む。したがって、押圧部材17にZ方向の振動が加わると、圧電素子13が図2(a)・(b)に示すように変形する撓み振動を繰り返し、その際に圧電板11が発電する。
【0022】
こうして圧電素子13から得られる電気エネルギーは交流電力であるために、通常は図3に示されるように、これを整流回路27を通して直流電力に変換し、コンデンサや二次電池等の蓄電装置28に充電するか、または直接に負荷29に供給して負荷29を駆動することができる。なお、複数の圧電素子13は、上述の通り、一様に+Z方向または−Z方向に凸となるように撓み振動するために、個々の圧電素子13に整流回路27を設ける必要はなく、これにより回路を単純に構成することができる。
【0023】
エネルギー変換装置10は、圧電素子13を用いることによって、小型化が容易である。圧電素子13の変位量は、補強板の材質や厚さ、圧電素子の形状や数を変えることによって調整することができるので、弱い力で大きく変位する圧電素子を用いたエネルギー変換装置を実現することもできれば、強い力で小さく変位する圧電素子を用いたエネルギー変換装置を実現することもでき、その場合でも、圧電素子を用いることで、十分に大きな電気エネルギーを得ることができる。さらに、エネルギー変換装置10を直並列に接続することによって、押圧部材17に印加される力の大きさに対するバランスを取ることもできる。
【0024】
次に別のエネルギー変換装置の実施の形態について説明する。図4にエネルギー変換装置30の概略構造を示す断面図を示す。このエネルギー変換装置30は、リング状の圧電板31をリング状の補強板32に貼り合わせてなる圧電素子33と、リング状の第1スペーサ34aと、リング状の第2スペーサ34bと、を有している。
【0025】
圧電板31は先に説明したエネルギー変換装置10を構成する圧電素子13の圧電板11と同じである。補強板32の内径は圧電板31の内径よりも短く、その外径は圧電板31の外径よりも長くなっている。また、第1スペーサ34aの外径は圧電板31の内径よりも短くなっており、第2スペーサ34bの内径は圧電板31の外径よりも長く、外径は補強板32の外径よりも長くなっている。これは、補強板32をその内孔側で第1スペーサ34aにより保持し、かつ、その外周側を第2スペーサ34bにより保持するためである。
【0026】
第2スペーサ34bには等間隔で第2支持棒36を挿通させるための孔部が形成されている。これら孔部は少なくとも周方向に等間隔に3カ所以上(図4では2カ所が示されている)に設けることが好ましい。これは、均等に圧電素子33を撓ませるためには、均等な力で補強板32(圧電素子33)を保持することが望ましいからである。第1スペーサ34a・第2スペーサ34bには、硬質ゴム等の樹脂材料を用いることができる。
【0027】
複数の圧電素子33と複数の第1スペーサ34aは、これらの内孔に第1支持棒35を挿通させて、交互に積層される。同様に、複数の圧電素子33と複数の第2スペーサ34bとが交互に積層され、第2スペーサ34bの孔部に第2支持棒36が挿通される。複数の第2支持棒36はさらに連結部材37により一体となっている。なお、図4に示されるように、このとき第1スペーサ34aと第2スペーサ34bとは並列に配置される。
【0028】
こうして積層された複数の第1スペーサ34aを第1締付部材38により積層方向に所定の力で締め付けて、第1支持棒35に保持させる。同様に、積層された第2スペーサ34bを第2締付部材39により積層方向に所定の力で締め付けて、第2支持棒36に保持させる。これにより、複数の圧電素子33は略等間隔で、その内周側は第1支持棒35に、その外周側は第2支持棒36に、それぞれ固定されることとなる。
【0029】
このような構造を有するエネルギー変換装置30では、例えば、連結部材37(第2支持棒36)を固定した状態で、圧電素子33の積層方向であるZ方向の力が第1支持棒35に作用すると、第1支持棒35と第2支持棒36とが相対的に変位し、エネルギー変換装置10と同様に、第1支持棒35に作用する力の向きに応じて、圧電素子33に+Z方向に凸となるか、または−Z方向に凸になる撓みが生じ、これにより電気エネルギーを得ることができる。
【0030】
次に上述したエネルギー変換装置10を備え、接地した回転体の回転により移動する移動体について、図5に示す模式図を参照しながら説明する。なお、この図5ではエネルギー変換装置10を簡略化して示している。移動体50は、接地した回転体51(自動車、二輪車等のタイヤ、電車等の車輪等)と、回転体51と移動体50の本体(ボディ)50aとの間に設けられたサスペンション52と、移動体50を駆動するための蓄電装置53および電気装置54と、を具備している。
【0031】
図5では、エネルギー変換装置10は、回転体51と移動体50の本体50aとの間に設けられるサスペンション52と並列に配設されている。これは、一般的な車両にはエネルギー変換装置10のような発電装置は取り付けられておらず、サスペンションはその状態で車両を最適な状態に制動することができるように設計されているために、サスペンション52と並列にエネルギー変換装置10を配設し、エネルギー変換装置10の保持部材16と押圧部材17とがサスペンション52の動きを妨げないように相対変位するように圧電素子13の硬さ(撓みやすさ)を設計しておけば、サスペンション52の設計を変更せずに移動体50を適切に制動することができ、しかも既存の車両に搭載することができ、また新車販売時にはオプションとして取り付けることができる等のメリットがあるからである。
【0032】
サスペンション52は、通常、振動を吸収するための振動体であるバネと、バネの伸縮を調整する油圧シリンダーから構成される。移動体50が走行すると、路面の凹凸等に起因する振動がサスペンション52とエネルギー変換装置10に加わり、その振動はサスペンション52によって適切に減衰されて移動体50の走行状態が良好に確保され、サスペンション52の動きに追従してエネルギー変換装置10では押圧部材17と保持部材16とが相対的に変位して、圧電素子13が撓み、発電する。
【0033】
エネルギー変換装置10から取り出された電気エネルギーは、バッテリーやコンデンサ等の蓄電装置53の充電に用いられ、または電気装置54の駆動に用いられる。例えば、移動体50が、自動車であるとしたならば、電気装置54としては、ウインカーランプ、ストップランプ、ヘッドライト、テールライト、ワイパー、パワーウインドウ、カーナビゲーションシステム、オーディオ等が挙げられ、移動体50がハイブリッド自動車や電気自動車、燃料電池自動車であれば、さらに、走行のための電気モータが挙げられる。また、移動体50が電車等の車両であれば、電気装置54として、車内表示板(停車駅案内、車内広告用液晶画面等)等が挙げられる。
【0034】
このような移動体50では、蓄電装置53への負担を軽減することができるので、バッテリーとしてより小型のものを搭載することができるようになる。また、蓄電装置53が鉛蓄電池等の比重の大きい二次電池の場合には、小型の鉛蓄電池を搭載することによって化石燃料の燃費を高めることができ、電気自動車では1回の充電あたりの走行距離を伸ばすことができ、ハイブリッド自動車や燃料電池自動車でも、燃料を満タンとした場合の走行距離を伸ばすことができる。
【0035】
エネルギー変換装置10の移動体50への取り付けは、上述した通りのサスペンション52と並列に配設する形態に限定されるものではなく、図6に示すように、エネルギー変換装置10は、回転体51と移動体50の本体50aとの間に設けられるサスペンション52と直列に配設することもでき、その場合にエネルギー変換装置10は、図6(a)に示すようにサスペンション52と回転体51との間に配置してもよいし、図6(b)に示すようにサスペンション52と移動体50の本体50aとの間に配置してもよい。
【0036】
このようにエネルギー変換装置10をサスペンション52と直列に接続配置する場合には、エネルギー変換装置10は、回転体51と本体50aとを接続する機械部品としての性能が確保されるように、かつ、圧電素子13のバネ性によって乗り心地が悪くならないように設計されなければならず、例えば、補強板12の材質や厚み、補強板12を保持部材16に保持させるためのリブ14の材質や溝部19の形状について、適切に設計する必要がある。
【0037】
上述した移動体50において、サスペンション52と直列に接続するエネルギー変換装置としては、図7に示す構造を有するものを用いることも、好ましい。この図7に示すエネルギー変換装置70は、円柱状の棒部材71に一定の間隔で円板72が一体的に形成されており、半円弧状の圧電板73が円板72上でリング状となるように円板72に貼り付けられている。すなわち、円板72と圧電板73から圧電素子74が形成されている。円板72の外周端には、リブ75が設けられており、リブ75は円筒部材76の内周面に形成された溝部77に可動に嵌め込まれている。
【0038】
このようなエネルギー変換装置70を、例えば、回転体51とサスペンション52との間に配設する場合には、棒部材71をサスペンション52と回転体51を回転可動に保持するシャフトとを接続するための部材として用い、円筒部材76を直接に移動体50の本体50aに連結保持する。このような構成とすることにより、移動体50の足回りの機械的強度は棒部材71によって確保される。また、サスペンション52の伸縮にしたがって棒部材71の位置が移動体50の本体部50aに対して変化するので、そのときに圧電素子74が撓み、発電を行うことができる。なお、円筒部材76の両端面には、内部に収容された圧電素子74を水等から保護するためのカバーが、棒部材71の動きを妨げることのないように設けられる。
【0039】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこのような実施の形態に限定されるものではない。例えば、エネルギー変換装置10では、圧電素子13を直列に配置されているが、圧電素子13を並列に配置した構造としてもよく、さらに直並列に配置した構造としてもよい。
【0040】
また、エネルギー変換装置10を構成する圧電素子は、図1に示した構造のもの、つまり圧電素子13に限定されるものではなく、図8に示す圧電素子13′のように、内周側の圧電板11aと外周側の圧電板11bとに分けて、これらを補強板12に貼り付けた構造のものを用いてもよい。
【0041】
これは、圧電素子13を屈曲させると、図2に示したように一様な曲率で屈曲せずに、圧電素子13の内側と外側とで屈曲の向きが逆になる(つまり、圧電素子13の断面における内周端と外周端とを結ぶ線が略S字型となるように屈曲する)おそれがあり、その場合には、圧電板11を構成する圧電セラミックスの内側と外側とでは同一表面に発生する電荷の正負が逆となってしまい、こうして圧電セラミックスの表面に発生した電荷は、圧電セラミックスに形成された電極膜で相殺され、外部に取り出すことができなくなってしまうおそれがあるからである。図8に示した構造の圧電素子13′では、そのような電荷相殺を回避することができる。
【0042】
なお、圧電素子13′を構成する補強板12は、圧電板11aの接着面側の電極膜と圧電板11bの接着面側の電極膜とを短絡させない構造とする必要がある。このため、補強板12として金属箔・金属板を用いる場合には、圧電板11a・11bの一方を、この金属箔・金属板と短絡しないように、絶縁膜を介して金属箔・金属板に接着する等の工夫が必要となる。また、補強板12としてプリント配線基板のように樹脂基板に金属箔を取り付けてなるものを用いる場合には、圧電板11a・11bが絶縁されるように、その金属箔を内周側部と外周側部とに分かれたパターンとしておけばよい。
【0043】
また、エネルギー変換装置10では、圧電素子13として、補強板12の一方の面に圧電板11が取り付けられた、所謂、ユニモルフ構造のものを示したが、補強板12の両面にそれぞれ圧電板11が取り付けられた、所謂、バイモルフ構造のものを用いてもよい。さらに、圧電板は単板に限定されず、積層構造(積層コンデンサ型構造)を有しているものであってもよい。このような圧電素子の設計は、エネルギー変換装置30を構成する圧電素子33にも同様に適用することができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係るエネルギー変換装置は、自動車や電車等の車両の足回りに装着する発電装置として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係るエネルギー変換装置の概略構造を示す断面図。
【図2】図1に示すエネルギー変換装置の駆動態様を示す断面図
【図3】図1に示すエネルギー変換装置から電気エネルギーを回収するための回路構成図。
【図4】本発明に係る別のエネルギー変換装置の概略構造を示す断面図。
【図5】図1に示すエネルギー変換装置を備えた移動体の概略構成を示す模式図。
【図6】図1に示すエネルギー変換装置を備えた移動体の別の構成を示す模式図。
【図7】本発明に係るさらに別のエネルギー変換装置の概略構造を示す断面図。
【図8】本発明に係るエネルギー変換装置に用いられる圧電素子の概略構造を示す断面図。
【符号の説明】
【0046】
10・30・70;エネルギー変換装置
11・31・73;圧電板
12・32;補強板
13・13a・13b・13′・33・74;圧電素子
14・75;リブ
15・15a;スペーサ
16;保持部材
17;押圧部材
18;予圧機構
19;溝部
21;筒部
22;上蓋
23;底蓋
24;バネ
25;当接部材
26;棒部材
27;整流回路
28・53;蓄電装置
29;負荷
34a;第1スペーサ
34b;第2スペーサ
35;第1支持棒
36;第2支持棒
37;連結部材
38;第1締付部材
39;第2締付部材
50;移動体
50a;(移動体の)本体(ボディ)
51;回転体
52;サスペンション
54;電気装置
71;棒部材
72;円板
76;円筒部材
77;溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電板と補強板とを貼り合わせてなる圧電素子と、
前記圧電素子を、複数、その厚み方向で互いに接触しないように一定間隔で保持する第1の保持部材と、
前記一定間隔で保持された複数の圧電素子に同等の変形が生ずるように、前記第1の保持部材が前記複数の圧電素子を保持する部分とは異なる部分で、前記複数の圧電素子を保持する第2の保持部材と、
を具備し、
前記第1の保持部材と前記第2の保持部材とが外力によって前記圧電素子の厚み方向で相対的に変位した際に前記圧電素子が撓んで発電し、電気エネルギーが得られることを特徴とするエネルギー変換装置。
【請求項2】
リング状の圧電板と、金属または樹脂の少なくとも一方からなり、外径が前記圧電板の外径よりも長い円板状の補強板と、を貼り合わせてなる圧電素子と、
前記補強板の外周端に設けられたリブと、
前記補強板の中心部に取り付けられた所定の厚さの円板状のスペーサと、
複数の前記圧電素子をその厚み方向に一定間隔で保持することができるように、前記リブを可動に保持する溝部が一定間隔で形成された保持部材と、
前記保持部材に保持された前記複数の圧電素子の一端に位置する圧電素子のスペーサに固定された押圧部材と、
前記保持部材に取り付けられ、前記保持部材に保持された前記複数の圧電素子の他端に位置する圧電素子の中心部を所定の力で他の圧電素子側に押圧することができる予圧機構と、
を具備し、
前記保持部材と前記押圧部材とが外力によって前記圧電素子の厚み方向で相対的に変位した際に前記圧電素子が撓んで発電し、電気エネルギーが得られることを特徴とするエネルギー変換装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のエネルギー変換装置を備え、接地した回転体の回転により移動する移動体であって、
前記移動体はさらに、前記回転体と前記移動体の本体との間に設けられたサスペンションと、前記移動体を駆動するための蓄電装置および電気装置と、を具備し、
前記エネルギー変換装置は前記回転体と前記移動体の本体との間において前記サスペンションと直列または並列に設けられ、前記移動体が接地面上を移動する際に受ける振動のエネルギーを前記エネルギー変換装置によって電気エネルギーに変換し、得られた電気エネルギーが前記電気装置の駆動または前記蓄電装置への充電に用いられることを特徴とする移動体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−115662(P2006−115662A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−302974(P2004−302974)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】