エネルギー移動色素、ダイターミネーター及びその使用
本発明は蛍光標識ダイターミネーター4つの新規なセットに関する。これらのうち2つは単一ダイ標識ターミネーターであり、他の2つのダイターミネーターはフォスター共鳴エネルギー移動(FRET)に基づくものである。FRETダイターミネーターは4′,5′−ビス−アミノメチルフルオロセインから生成される。ドナー色素である4′,5′−ビス−アミノメチルフルオロセインのアミノ基2個のうち、アミノ基1個を用いてアクセプター色素に結合し、アミノ基の別の1個はジデオキシヌクレオシド−5′−三リン酸に結合するために使用する。その調製、エネルギー移動効率及び標識としての使用、特にDNAシークエンシング反応における標識としての使用を開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエネルギー移動色素及び蛍光標識ダイターミネーター、その調製及びDNA配列決定における標識としての使用に関する。
【0002】
ハイスループット遺伝子配列決定の現在受け入れられている慣行法は、一般則として、4種類の異なる標識を有するエネルギー移動(ET)ダイターミネーターを用いて、フォスター共鳴エネルギー移動(FRET)メカニズムに基づいて、ドナーの励起波長で励起し、4種類の個々の核酸塩基にコンジュゲートした4種類のアクセプターの波長で発光を測定することによって配列を読み取る。
【0003】
しかし、報告されている現在使用可能なETターミネーターセットは輝度が低いという難点を有する。こうした低い輝度はドナーに吸収されたエネルギーのアクセプターへの移動が非効率的であること、及びアクセプターの発光波長における再発光に起因する。こうした非効率性はドナーとアクセプター及び塩基を結合してダイターミネーターの形成に用いられている構造的連結が最適ではないことによる。
【0004】
多数の蛍光色素が生物学的試料中の成分の標識及び検出に最近開発されている。一般にこれらの蛍光色素は、低い検出限界を達成するには、高い吸光係数と量子収率を有さなければならない。
【0005】
フォスター共鳴エネルギー移動(FRET)メカニズムに基づいてストークスシフトを大きくしかつ多様にするために開発され、混合物中の異なる標識を有する試料の同時検出に使用されている色素の1つのクラスはET(エネルギー移動)色素である。これらのET色素はドナー蛍光団及びアクセプター蛍光団並びに目的の生物分子へのコンジュゲーションを可能にするための標識機能からなる複雑な分子構造を含む。ドナー蛍光団の励起によってドナーに吸収されたエネルギーはフォスター共鳴エネルギー移動(FRET)メカニズムでアクセプター蛍光団に移動し、蛍光を発する。1ドナーの場合に、異なるアクセプターを用いて1セットのET色素をなすことにより、該セットが単一のドナー周波数で励起された場合にもアクセプターの選択に応じて様々な発光を観察することができる。こうした異なる発光を定量することにより、これらの色素が目的の生物分子にコンジュゲートしたときに混合物の各成分を容易に分解することができる。これらのET色素セットは現在のハイスループット遺伝子配列決定方法論の骨格をなす。
【背景技術】
【0006】
以前より、二元蛍光団の様々な組合せが報告されている。援用によって図面も含めてその全体が本明細書に組み込まれるMathies等の「Probes Labelled with Energy Transfer Coupled Dyes」と題する米国特許5688648号、「Universal spacer/energy transfer dyes」と題する米国特許5728528号、及び「Methods of sequencing and detection using energy transfer labels with cyanine dyes as donor chromophores」と題する米国特許6150107号には、ドナー色素分子とアクセプター色素分子の対を担持した蛍光標識のセットが開示されており、標識は配列決定用核酸骨格に連結することができる。核酸塩基又は塩基糖単位をスペーサーとして用いてドナー色素とアクセプター色素を分離する。ドナー色素からアクセプター色素への効率的エネルギー移動に最適な距離は約6〜10塩基であることが判明している。蛍光部分がシアニン色素及びキサンテン類のような群から選択される、各種蛍光標識を用いて複数の核酸の混合物中の所定の核酸を同定・検出する方法も開示されている。蛍光標識は蛍光団の対を含んでおり、1つの蛍光団ドナーは蛍光団アクセプターの吸収と重複する発光スペクトルを有していて、対のうちの励起側から他方へのエネルギーの移動が起こる。
【0007】
援用によって図面も含めてその全体が本明細書に組み込まれるWaggoner等の「Fluorescent labeling complexes with large stokes shift formed by coupling together cyanine and other fluorochromes capable of resonance energy transfer」と題する米国特許6008373号には、第1の吸光及び発光スペクトルを有する第1の蛍光色素及び第2の吸光及び発光スペクトルを有する第2の蛍光色素を含む複合体が開示されている。蛍光色素の間のリンカー基はアルキル鎖である。色素の蛍光の性質により、配列決定及び核酸の検出に使用可能となる。
【0008】
援用によってその全体が本明細書に組み込まれる「Energy transfer dyes with enhanced fluorescence」と題するLee等の米国特許5863727号には、ドナー及びアクセプター色素が色素間のリンカーで離隔されたエネルギー移動色素が開示されている。色素間の好ましいリンカーは4−アミノメチル安息香酸である(Nucleic Acid Research,1997,25(14),2816−2822)。このリンカーに基づくエネルギー移動ターミネーターDNA配列決定キットはApplied Biosystems社(米国カリフォルニア州フォスター・シティ)から入手可能であり、BigDyeターミネーターキットとして市販されている。
【0009】
援用によって図及び図面も含めてその全体が本明細書に組み込まれるKumar等の「Energy Transfer Dyes」と題する国際公開第00/13026号には、エネルギー移動色素、その調製及び生物学的な系における標識としてのその使用が開示されている。色素は好ましくは各種生物学的物質へのその結合を可能とするカセットの形態である。ドナー色素、アクセプター色素及びジデオキシヌクレオシド−5′−三リン酸は全て芳香族アミノ酸構造に基づく三官能性リンカーに連結する(Tetrahedron Letter,2000,41,8867−8871)。これらの構造に基づくエネルギー移動ターミネーターキットはAmersham Biosciences社(米国ニュージャージー州ピスカタウェイ)からDNA配列決定用のDYEnamic ETターミネーターキットとして市販されている。
【0010】
援用によって図及び図面も含めてその全体が本明細書に組み込まれるKumar等の「Charge−modified nucleic acids terminators」と題する国際公開第01/19841号には、リンカーアームに正電荷又は負電荷を導入した単一のエネルギー移動ダイ標識ターミネーターが開示している。これらのターミネーターは、ダイ標識ジデオキシヌクレオシド−5′−三リン酸の分解で形成されるいかなる「色素ブロック」も含まないDNAシークエンシングバンドの発生に有用である。荷電ターミネーターの使用により、これらの分解生成物は配列情報の後方(正電荷ターミネーター)又は前方に移動させることができる(Finn et al.,Nucleic Acid Research,2002,30(13),2877−2885、Finn et al.,Nucleic Acids Research, 2003,31,4769−4778)。
【0011】
ただし、これらの特許に記載されたETターミネーターセットは輝度が低いという難点を有する。こうした低い輝度はドナーに吸収されたエネルギーのアクセプターへの移動が非効率的であること並びにアクセプターの発光波長におけるその再発光に起因する。こうした非効率性はドナーとアクセプター及び塩基を結合してダイターミネーターの形成に用いられている構造的連結が最適ではないことによる。従って、最大の輝度を得るためのエネルギー移動色素の構築及び生物学的分子へのその結合をさらに改善するニーズが依然として存在している。
【特許文献1】米国特許5688648号明細書
【特許文献2】米国特許5728528号明細書
【特許文献3】米国特許6150107号明細書
【特許文献4】米国特許6008373号明細書
【特許文献5】米国特許5863727号明細書
【特許文献6】国際公開第00/13026号パンフレット
【特許文献7】国際公開第01/19841号パンフレット
【非特許文献1】Nucleic Acid Research,1997,25(14),2816−2822
【非特許文献2】Tetrahedron Letter,2000,41,8867−8871
【非特許文献3】Finn et al.,Nucleic Acid Research,2002,30(13),2877−2885
【非特許文献4】Finn et al.,Nucleic Acids Research, 2003,31,4769−4778
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は現在入手可能なターミネーターよりも格段に輝度の高い4種類の異なる標識を有するダイターミネーターの新規なセットを提供する。このセットにおけるダイターミネーターの2種類は単一色素からなり、他の2種類は伝統的なET色素ではあるがET効率その他の特性に格段に優れている。本発明のダイターミネーターのセットでの輝度の向上及びそれに伴うSN比の改善は広範な鋳型使用量でのシークエンシングを可能にする。さらに、この新規ダイターミネーターセットは大幅に改善されたピーク均一性を示し、配列特異的なアーチファクトの一部が除かれた電気泳動図を与える。本発明で開示する4′,5′ビス−アミノメチルフルオレセイン及びその5及び6−カルボキシ置換誘導体の形態の新しい蛍光団/リンカーの組合せはトリフルオル(三元発色団系)ET色素の構築を可能にする。標識官能性に加えて2個以上のドナー及び/又はアクセプターを有するトリフルオル色素は単波長励起によってアクセプターの発光可能域を拡張するのに使用できる。これにより、シークエンシング反応のモニタリング及び高輝度発光、さらには他の可能な標識用途への途が広がる。4′,5′ビス−アミノメチルフルオレセイン−5(6)−カルボン酸骨格は様々な電荷のフルオレセイン色素及び荷電エネルギー移動色素の合成に使用できる正荷電又は負荷電部分の結合のための特別の部位を与える。本発明の荷電エネルギー移動ダイターミネーターは直接ローディング式「ブロブフリー」DNA配列決定に使用し得る。
【0013】
本発明は既存のダイターミネーターよりも高輝度であり、DNAポリメラーゼの基質となるエネルギー移動色素及び標識ヌクレオチドを提供する。エネルギー移動色素は4′,5′ビス−アミノメチルフルオレセイン構造に基づく。この系では、アクセプター色素はアクセプター色素に結合する別のリンカーを必要とせずに、アミノ基に直接結合する。この構造の第2のアミノ基はヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチドその他の目的の生物学的分子を始めとする、目的の生物学的分子に結合するように検討されている。
【0014】
本発明は、単フルオレセイン構造系の色素又は各種電荷のエネルギー移動色素を提供する。4′,5′ビス−アミノメチルフルオレセイン又はその5(6)−カルボン酸構造を用いて正荷電又は負荷電部分に結合してよい。本発明の荷電色素及びターミネーターはまた「直接ローディング式」DNA配列決定に用いてよい。
【0015】
本発明は4種類のターミネーターのセットを提供する。ターミネーターセットには単一ダイ(フルオレセイン(FAM)、ローダミン110(R110)又はローダミン6G(REG又はR6G))で標識されたジデオキシヌクレオシド−5′−三リン酸2種類及びエネルギー移動色素(フルオレセイン−テトラメチルローダミン(FAM−TAMRA)及びフルオレセイン−ローダミンX(FAM−ROX)で標識されたジデオキシヌクレオシド−5′−三リン酸2種類が含まれる。このターミネーターセットはDNA配列決定用に最適化されている。セット内の標識ヌクレオチドターミネーターは既存のキットよりも格段に高輝度であり、より均一なバンドを与える。その調製法及びDNA配列決定における使用も本発明において開示する。
【0016】
本発明の組成物及びエネルギー移動色素の製造方法及びヌクレオシド、ヌクレオチド(一、二又は三リン酸)又はオリゴヌクレオチドのような目的の生物学的分子へのその結合についても開示する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
FRETの効率は多くの要因に依存している。フォスター理論(Joseph R. Lakowicz, “Principles of Fluorescence Spectroscopy” 2nd Edition, Chapter 13, Kluwer Academic Plenum Publishers, New York, Boston, Durdrecht, London, Moscow 1999)によれば、それらは主に以下の要因である。
1)ドナーの発光スペクトルとアクセプターの吸収スペクトルの重複、
2)ドナーとアクセプターの間の間隔、及び、
3)ドナーとアクセプターの二極の間の空間的配向。
【0018】
実際には、問題ははるかに複雑である。場合によっては、ドナー発光が全く存在しないときでも、ドナーとアクセプター間の特異的な相互作用によって消光が起こり、アクセプターからの発光がほとんどみられないことがある。さらに、ドナーが消光される程度はアクセプターに移動したエネルギーとはほとんど関係なく、観察される発光量とは殆ど関係ない。本発明者等はこれらのダイターミネーターに関する現実的なET過程を説明するために数学的な処理を開発した。かかる数学的処理には、以下に挙げる3つの実験的に測定可能なパラメーターが最も重要である。
1)PQEQ(ドナーの消光率%)、これは以下の通り定義される。
PQWQ=(1−発光ドナー/アクセプター対のドナー/発光アクセプター非存在下での同量のドナー)×100
2)PAEE(アクセプター発光効率%)、
PEAA=(ドナーアクセプター対のアクセプターの発光効率)/(ドナー非存在下でのアクセプターの発光効率)×100%、及び、
3)PET(エネルギー移動率%)、
PET=ドナーの量子収率×(ドナー励起波長で励起されたアクセプターの発光効率)/(アクセプター非存在下のドナーの発光効率)。
【0019】
上記のPETは、実際には、ドナー励起波長で励起されたドナー/アクセプター対の量子収率、及びアクセプター発光波長で測定される発光となる。
【0020】
上述の方法論は1個のドナーと3個以上のアクセプターからなるET集合体にも拡張できる。さらに、これらの数値から、ET過程全体を通じた光子の流れを示すフローダイアグラムを構築できる。一例として、現在のDNAシークエンシング反応に使用されている4種類のETダイターミネーターのセット(Kumar等、国際公開第00/13026、Nampalli等、Tetrahedron Letters,2000,41,8867)に関する数値を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
表に記載の化合物の分子構造を以下に示す。
【0023】
【化1】
【0024】
例示として、例えば化合物(IV)を用いて光子のフローダイアグラムを構築できる。
【0025】
【化2】
【0026】
ダイアグラムの構築は比較的単純である。化合物(IV)のPQEQが99%に等しいので、ドナー(FAM)に吸収された光子100個のうちドナーで再発光されるものは僅か1個である。PETは0.19に等しく、これは、ドナーに吸収された光子100個当たり、光子19個がアクセプター(ROX)から発光されることを意味する。PAEEは0.35であり、その遊離状態におけるROXの量子収率がFAMとの相対値として1.0であると仮定すると、ROXアクセプターから光子19個を発光させるには19/0.35、つまり54個の光子のインプットが必要となる。従って、蛍光以外の過程におけるアクセプター(ROX)で失われた光子の数は35(=54−19)となる。次に光子の保存則から、ドナーFAMから放射過程で失われた光子の数は45(=100−1−54)となるはずである。
【0027】
表1に記載したものについて、本発明者等がダイターミネーターの改良された輝度を精査する過程において、本発明者等は4′,5′ビス−アミノメチルフルオレセイン(BAM−FAM)及びその5置換誘導体(5−カルボキシ−BAM−FAM)に基づく新しい種類のET色素を発見した。BAM−FAMは、ドナー蛍光団としてだけでなく、アクセプター蛍光団及び修飾核酸塩基を結合して輝度その他所望の特性に優れたダイターミネーターを形成できる構造的結合部としての働きも有する。5−カルボキシ−BAM−FAMはさらに、2以上の結合部位を与え、これによりトリフルオルダイターミネーター(1個ドナーと同一又は異なる2個のアクセプターと核酸塩基)の構造を可能とする。
【0028】
即ち、本発明は次式のエネルギー移動色素を提供する。
【0029】
【化3】
【0030】
式中、
R1はキサンチン色素、ローダミン色素及びシアニン色素からなる群から選択されるアクセプター色素であって、R1はフルオレセインドナー発色団からエネルギーを受け取ることができ、
L1は炭素、酸素、窒素、イオウ及びリン原子から選択される連結した原子2〜50個を含むリンカー鎖であって、
該鎖は正荷電又は負荷電の基1個以上又は−CR=CR−及び−C≡C−からなる群から選択される不飽和基1個以上を適宜含む(Rは水素又はC1−C4アルキル基を表す。)か、或いは
該鎖は正荷電又は負荷電の基1個以上及び−CR=CR−及び−C≡C−からなる群から選択される不飽和基1個以上を適宜含んでおり(Rは水素又はC1−C4アルキル基を表す。)、
R2はH、COOR又はCH2OR、又は炭素、酸素、窒素、イオウ及びリン原子から選択される連結した原子2〜30個を含む鎖L2を表し、
該鎖は正荷電又は負荷電の基1個以上又は−CR=CR−及び−C≡C−からなる群から選択される不飽和基1個以上を適宜含む(Rは上記の通り定義される。)か、或いは
該鎖は正荷電又は負荷電の基1個以上及び−CR=CR−及び−C≡C−からなる群から選択される不飽和基1個以上を適宜含んでおり(Rは上記の通り定義される。)、
Xは以下のものから選択され、
【0031】
【化4】
【0032】
Tは生物学的分子である。
【0033】
別の実施形態は次式のエネルギー移動色素を提供する。
【0034】
【化5】
【0035】
式中、
R1はキサンチン色素、ローダミン色素及びシアニン色素からなる群から選択されるアクセプター色素であって、R1はフルオレセインドナー発色団からエネルギーを受け取ることができ、
L1は炭素、酸素、窒素、イオウ及びリン原子から選択される連結した原子2〜50個を含むリンカー鎖であって、
該鎖は正荷電又は負荷電の基1個以上又は−CR=CR−及び−C≡C−からなる群から選択される不飽和基1個以上を適宜含む(Rは水素又はC1−C4アルキル基を表す。)か、或いは
該鎖は正荷電又は負荷電の基1個以上及び−CR=CR−及び−C≡C−からなる群から選択される不飽和基1個以上を適宜含んでおり(Rは水素又はC1−C4アルキル基を表す。)、
YはH、CH2NH2、CH2NHCOR又はCH2OR(Rは上記の通り定義される。)、又は炭素、酸素、窒素、イオウ及びリン原子から選択される連結した原子2〜30個を含む鎖L2を表し、
該鎖は正荷電又は負荷電の基1個以上又は−CR=CR−及び−C≡C−からなる群から選択される不飽和基1個以上を適宜含む(Rは上記の通り定義される。)か、或いは
該鎖は正荷電又は負荷電の基1個以上及び−CR=CR−及び−C≡C−からなる群から選択される不飽和基1個以上を適宜含んでおり(Rは上記の通り定義される。)、
Xは以下のものから選択され、
【0036】
【化6】
【0037】
Tは生物学的分子である。
【0038】
別の特徴においては、本発明は、核酸の配列を決定する方法であって、
a)配列決定すべき核酸の試料、配列決定すべき核酸の少なくとも一部に相補的なプライマー核酸配列、シークエンシング反応を終了するためのデオキシヌクレオチド及び請求項8記載の1種以上のジデオキシヌクレオチドの供給源、及びポリメラーゼを準備すること、
b)核酸鎖伸長及び連鎖停止反応を実施すること、
c)サイズに応じてオリゴヌクレオチドフラグメントを分離すること
を含んでなる方法に関する。
【0039】
さらに本発明は上述の化合物の1種類以上を含むDNA配列決定用キットに関し、標的分子は上述の生物学的分子であり、Tは2′,3′−ジデオキシシチジン−5′−三リン酸、2′,3′−ジデオキシチミジン−5′−三リン酸、2′,3′−ジデオキシウリジン−5′−三リン酸、2′,3′−ジデオキシアデノシン−5′−三リン酸、2′,3′−ジデオキグアノシン−5′−三リン酸及び2′,3′−ジデオキシイノシン−5′−三リン酸、2′,3′−ジデオキシ−7−デアザアデノシン−5′−三リン酸、2′,3′−ジデオキシ−7−デアザグアノシン−5′−三リン酸、2′,3′−ジデオキシ−7−デアザイノシン−5′−三リン酸及びこれらの3′−フルオロ、3′−アジド、3′−アミノ又は3′−チオ誘導体からなる群から選択されるジデオキシヌクレオシド−5′−三リン酸である。
【0040】
上述の通り、適当なR1アクセプター色素は本発明のエネルギー移動化合物の一部を形成するフルオロセインドナー発色団又はエネルギーを受け取ることのできる色素である。例えば、適当なアクセプター色素はキサンチン色素(例えばフルオレセイン、ナフトフルオレセイン、ロドール及び上記のものの誘導体)、ローダミン色素(例えばローダミン110、REG、TAMRA、ROX、テキサスレッド等)及びシアニン色素(例えばCy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7等)からなる群から選択でき、R1はフルオレセインドナー発色団からエネルギーを受け取ることができる。
【0041】
適当なアクセプター色素の具体例としては、フルオレセイン、ナフトフルオレセイン、ロドール、5−カルボキシローダミン、6−カルボキシローダミン、5−カルボキシローダミン−6−G、6−カルボキシローダミン−6−G、N,N,N′,N′−テトラメチル−5−カルボキシローダミン、N,N,N′,N′−テトラメチル−6−カルボキシローダミン、5−カルボキシ−X−ローダミン、6−カルボキシ−X−ローダミン、Cy3(3−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′ ,3′−テトラメチル−5,5′−ジスルホナト−カルボシアニン)、Cy3.5(3−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′ ,3′−テトラメチル−4,5,4′,5′−(1,3−ジスルホナト)ジベンゾ−カルボシアニン、Cy5(3−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′ ,3′−テトラメチル−5,5′−ジスルホナト)ジベンゾ−ジカルボシアニン、Cy5.5((3−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′ ,3′−テトラメチル−4,5,4′,5′−(1,3−ジスルホナト)ジベンゾ−ジカルボシアニン及びCy7((3−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′ ,3′−テトラメチル−5,5′−(1,3−ジスルホナト)トリカルボシアニンが挙げられる。ただし、他の部類の色素もアクセプター色素として使用し得る。
【0042】
エネルギー移動(ET)効率はドナーとアクセプター色素の距離及び配向に依存する。表1の化合物(III)において、ドナーのフルオレセイン(FAM)とアクセプターのテトラメチルローダミン(TAMRA)の間の結合部はその間に11結合長の隔たりを有している。ただし、結合部は(V)のようなBAM−FAM結合化合物に示すように、3結合長程度の小さなものでもよい。
【0043】
実際、Lee等(Nucleic Acids Research, 1997,25(14),1826−2822)はET色素「ビフルオル−I」(V)を検討している。しかし、上記報文でこの研究者等は「しかし、ビフルオル−Iはテトラメチルローダミン単独よりも高輝度ではなかった」と結論している。本発明者等が検討したところでは、化合物(V)又は4′,5′ビス−アミノメチルフルオレセイン(VI)及びその5又は6−カルボキシル誘導体(VII)から誘導したETターミネーターで格段に向上したETが観察されている。
【0044】
【化7】
【0045】
4′−アミノメチルフルオレセイン−5−カルボン酸又は4′−アミノメチルフルオレセイン−6−カルボン酸及び4′,5′ビス−アミノメチルフルオレセイン又は4′,5′ビス−アミノメチルフルオレセイン−5−カルボン酸及び6−カルボン酸の合成を図1に示す通り行った。即ち、フルオレセイン或いはフルオレセイン−5−又は6−カルボン酸を2−クロロ−n−(ヒドロキシメチル)−アセトアミドと硫酸溶液中で反応させ、次に濃塩酸で加水分解して対応アミノエチル誘導体を得た。
【0046】
色素とジデオキシヌクレオシド−5′−三リン酸との間のリンカーが異なる多数の単一ダイ標識ターミネーターを合成し、488nmの励起光でその輝度(PET)を測定した。本発明の方法における各ターミネーターの選択は、DNAポリメラーゼとターミネーターとの反応性、バンドの均一性及び配列全体での分解能に基づいて行った(例えば図11及び図12参照)。単一ダイ標識ターミネーターの輝度も、本発明のエネルギー移動ダイ標識ターミネーター及び従前開示されたターミネーターと比較した(表1(前出)及び表2(後出)参照)。
【0047】
モノアミノメチルフルオレセイン誘導ターミネーターの合成は図3に示す通り行った。即ち、4′−アミノメチルフルオレセイン−5−カルボン酸をトリフルオロアセトアミド−N−ヒドロキシ−スクシンアミド(TFA−NHS)と反応させて一段階で酸の活性化とアミノ保護を行った。活性エステルを、適切に結合したプロパルギルアミノ−ddNTPと反応させ、水酸化アンモニウムで加水分解して得た遊離アミノ化合物を適当な色素−NHSエステルと反応させてエネルギー移動ダイターミネーターを得た。
【0048】
4′,5′ビス−アミノメチルフルオレセイン誘導ターミネーターの合成は図4に示する通り行った。この場合、ビスアミノメチルフルオレセインを無水コハク酸でモノアシル化し、その後TFA−NHSと反応させて、4′(5′)−トリフルオロアセトアミドフルオレセイン−5′(4′)−スクシニルアミドメチル−NHSエステルとした。次の2つの段階は4′−アミノメチルフルオレセイン誘導エネルギー移動ターミネーターの合成に関して上述の方法と基本的に同じ方法で行った。
【0049】
エネルギー移動(ET)効率を本発明で合成した全ての単一ダイ標識ジデオキシヌクレオシド−5′−三リン酸(ターミネーター)及びエネルギー移動ターミネーターについて測定した。全てのダイターミネーターは488nmで励起し、その対応発光波長において発光を測定した。結果を表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
表2に記載したダイターミネーターの分子構造を図5に示す。
【0052】
これらのPET測定から、色素FAM、R110及びREGから誘導された単一ダイターミネーターはFAM−R110及びFAM−REGの複合体から誘導されたETコンストラクトよりも高輝度であることが分かる。FAM−TAM及びFAM−ROXから誘導されたET色素のコンストラクトはTAMRA及びROX単独から誘導された単一ダイターミネーターよりも高輝度である。色素に関する報文(Nucleic Acids Research 1997,25(14),2816−2822)とは逆に、ETダイターミネーター(XVI)は単一ダイターミネーター(XII)より格段に高輝度である。
【0053】
本発明の単一ダイ標識ターミネーター及びエネルギー移動ダイ標識ターミネーター(上記)を、熱安定性DNAポリメラーゼを用いたDNAシークエンシング反応で試験した。個々のダイ標識ターミネーターの利用性はバンドの全体的な配列の特性、輝度及び均一性に基づいて確認した(図11〜14)。これらの基準に基づいて、新しいセットのダイターミネーターを構築した(図6)。この新しいセットのターミネーターのPETを以下に示す。
【0054】
【表3】
【0055】
本発明のターミネーターセットは、Amersham Biosciences社(米国ニュージャージー州ピスカタウェイ)又はApplied Biosystems社(米国カリフォルニア州フォスター・シティ)から入手可能な現在市販されているダイターミネーターよりも高輝度である(図8)。この新しいセットは、幾つかの測定によれば、表1に記載したETターミネーターよりも約2倍高輝度、BigDye(商標)バージョン1及び2のターミネーターよりも4倍高輝度、BigDye(商標)バージョン3のターミネーターよりも約8倍高輝度である(Applied Biosystems社(米国カリフォルニア州フォスター・シティ))。こうした輝度の向上は、少量の鋳型でも検出でき、必要なサイクル数が減り、しかも不十分な鋳型のシークエンシングでも良好な配列が得られる可能性が高まることを意味する。この新しいセットのダイターミネーターは泳動速度の速いG、傾斜するT、及びAの後の弱いGのような電気泳動図における3つの一般的アーチファクトが補正されるという更なる利点を有する。またピーク高さもより均一である(図9)。
【0056】
以下に好ましい結合位置と共に示す(VIII)のような化合物は、さらに、結合した核酸塩基の他に1個のドナー蛍光団及び同一又は異なる2個のアクセプターを有するETトリフルオルダイターミネーターの調製の機会を与える。
【0057】
【化8】
【0058】
かかる集合体は、本発明者等はドナーから生じる2回の連続したエネルギー移動に依存しているため、2つの異なるアクセプター蛍光団の導入を伴うETダイターミネーターの発光範囲を拡張することができる。まず第1のアクセプター蛍光団に、次に第1のアクセプター蛍光団から第2へと、3つの蛍光団の間で妥当なスペクトル重複を維持しながら行われる。さらに、複合蛍光団の励起には1以上の方法が存在する。1つは488nmでフルオレセイン蛍光団を励起し、エネルギー移動過程が最長の発光蛍光団から発光させることである。フルオレセインと第2の蛍光団の両方を488nm及び第2の蛍光団の吸収最大で同時に励起する場合は、両者に吸収されたエネルギーを第3の蛍光団へ移動させそこから生じる輝度を最大としなければならない。
【0059】
本発明の標識複合体は好ましくは4′,5′ビス−アミノメチルフルオレセイン−5−カルボン酸を他の蛍光団に共有結合させてエネルギードナー−アクセプター複合体を形成することによって合成される。本発明は、試薬、並びに担体物質と共に上述の蛍光水溶性標識複合体をインキュベートすることを含む試薬の調製方法も包含する。複合体と担体を結合する目的には、複合体は担体上の反応性基と反応して共有結合を形成する官能基を有していてよい。或いは、複合体は担体上の官能基と反応して共有結合を形成する反応性基を含んでいてもよい。担体物質はアミノ、スルフヒドリル、カルボニル、カルボキシル又はヒドロキシル基のうちの1つを含むように誘導体化された重合体粒子、ガラスビーズ、細胞、抗体、抗原、タンパク質、酵素、ヌクレオチドからなる群から選択される。上述の通り、担体物質は反応性基を含んでいてよく、本発明の蛍光標識複合体は反応性基と反応して共有結合を形成する上述の官能基を含んでいてもよい。
【0060】
別の実施形態では、本発明の蛍光複合体は、別の化合物に非共有結合で結合するために用いられる場合は、反応性基を有する必要はない。例えば、複合体をポリスチレンのような重合体粒子と共に有機溶媒に溶解して混合し、次に乳化重合により攪拌してよい。溶媒を蒸発させ、蛍光色素複合体をポリスチレン粒子に吸着させる。
【0061】
本発明をさらに以下の実施例を参考にしながら説明する。これらの実施例は説明を目的とするのみであり、請求項及び本発明の範囲を限定するものではない。本発明は明細書の記載から明らかな如何なる変更も包含する。
【実施例】
【0062】
1)FAM−18−ddGTP(IX)の調製
11−ddGTP(0.1MNaHCO3/Na2CO3、pH8.5、60μmol、5ml)の溶液を氷/水バス中で冷却した。溶液にDMF(5ml)中の5−カルボキシ−フルオレセイン−NHS(35mg、1等量)を添加した。反応フラスコを冷却バスから取り外し、反応混合物を16時間室温で攪拌した。生成物をアニオン交換クロマトグラフィー及びHPLCで精製した。画分を含む生成物を濃縮し、凍結乾燥し、黄色固体を得た。
【0063】
2)4′,5′ビス−アミノメチルフルオレセイン(BAM−FAM)の合成(図1)
a)4′,5′ビス−(2−クロロアセトアミド)−アミノメチルフルオレセインの調製
フルオレセイン(3.3グラム)及び2−クロロ−n−(ヒドロキシメチル)−アセトアミド(5.0グラム)を濃硫酸20mlに溶解した。暗褐色の溶液を2時間室温で攪拌した。この時点でESMS+はフルオレセインが残存していないことを示した。生成物を氷水200グラムに注ぎ込み、沈殿を濾過し、水、次いでエーテルで洗浄し、風乾した。このようにして得られた物質のNMRは、これが所望の生成物であることを示していた。
b)4′,5′ビス−アミノメチルフルオレセイン(BAM−FAM)を得るための4′,5′ビス−(2−クロロアセトアミド)−アミノメチルフルオレセインの濃塩酸加水分解
上記反応の生成物を濃塩酸40mlに懸濁し、30分間還流下に加熱した。その時点で透明な溶液が得られた。生成物を蒸発乾固させ、残存物をメタノール/ジクロロメタンから再結晶させ、NMR及びESMS+により同定された所望の生成物を得た。
【0064】
3)4′,5′ビス−アミノメチルフルオレセイン−5−カルボン酸の合成(図1)
フルオレセイン−5−カルボン酸は濃硫酸に僅かしか溶解しないため、変法を用いた。
a)4′,5′ビス−(2−クロロアセトアミド)アミノメチルフルオレセイン−5−カルボン酸の調製
室温で攪拌した濃硫酸20mlにジピバロイルフルオレセイン−5−カルボン酸を添加した。懸濁液に過剰(4等量)の2−クロロ−n−(ヒドロキシメチル)−アセトアミドを少しずつ、透明な溶液が得られるまで添加した。溶液の色が明黄色から茶色に変化するまでさらに原料(フルオレセイン及び過剰のHOCH2NHCOCH2Cl)を添加した。次に溶液を氷/水の混合物に注ぎ込んだ。このようにして得られた沈殿を濾過し、水及びエーテルで洗浄した。沈殿のNMR及びESMS+から、所望の生成物であることを確認した。
b)4′,5′ビス−アミノメチルフルオレセイン−5−カルボン酸を得るための4′,5′ビス−(2−クロロアセトアミド)アミノメチルフルオレセイン−5−カルボン酸の濃塩酸加水分解
上記生成物1.01グラムを濃塩酸20ml及び2−メトキシエーテル5mlに溶解した。得られた懸濁液を透明になり始めるまで(約2時間)還流下に加熱した。次に溶液を放冷した。一夜室温で放置した後、沈殿を濾過し、0.1N塩酸、ついでエーテルで洗浄し、NMR及びESMS+スペクトラによれば所望の生成物が得られた。
【0065】
4)トリフルオロアセトアミドメチル−フルオレセインNHSエステル(TFA−AMFAM−NHS)の調製(図3)
4′−アミノメチル−5−カルボキシフルオレセイン(1、0.49g、1.21μmol)を乾燥DMF(15ml)と共に共沸させることにより乾燥した。これを乾燥ピリジンに懸濁し、これにTFA−NHS(1.53g、7.26μmol)をアルゴン雰囲気下に添加した。反応混合物を1時間室温で攪拌し、クロロホルム(125ml)で稀釈し、水(3×75ml)で洗浄した。有機層を乾燥(硫酸ナトリウム)し、蒸発させ、トルエンと共沸させて黄色固体を得た。
【0066】
5)TFA−AMFAM−NHSの11−ddCTPの調製(図3)
上記の生成物(25mg)をDMF(1ml)中に溶解した。溶液にDMSO中の11−dCTPの溶液(1ml、33μmol)又はpH85炭酸塩/重炭酸塩緩衝液中の11−ddCTPの溶液(34μmol)のいずれかを添加した。反応混合物を20時間室温で攪拌した。この時点において、濃水酸化アンモニウム10mlを添加した。室温で3時間攪拌した後、少量となるまで蒸発させた。粗生成物を水(10ml)で稀釈し、イオン交換カラムクロマトグラフィー、次いで逆相カラムクロマトグラフィーで精製した。
【0067】
6)AMFAM−ROX−11−ddCTP(XVII)の合成(図3)
上記の生成物(60μmol)を乾燥DMSO(5ml)に溶解し、これにROX−NHSエステル(60mg、60μmol)を添加し、反応混合物を20時間室温で攪拌した。反応混合物を水で稀釈し、イオン交換カラムクロマトグラフィー、次いで逆相カラムクロマトグラフィーで精製した。
【0068】
7)AMFAM−TAM−18−ddATP(XVI)の合成(図3)
化合物(XVII)の調製について記載した方法と同様にして、TFA−AMFAM−NHSと18−ddATPのコンジュゲーション、次いで、TAMRA−NHSエステルの反応を行い、標的化合物(XVI)を得た。
【0069】
8)Cy−5−AMFAM(XX)の調製
【0070】
【化9】
【0071】
4′−メチルアミノ−フルオレセイン5mgを乾燥DMF0.5mlに溶解した。溶液に重炭酸ナトリウム−炭酸塩緩衝液1.0ml中のCy−5−1官能性反応性色素20mgを添加した。室温で20分の後、溶媒を蒸発させ、残存物をクロマトグラフィーに付し、所望の生成物(XX)を得た。
【0072】
9)Cy−5AMFAM−TAM(XXI)の合成
a)AMFAM−TAM(XVIa)の調製
4′,5′ビス−アミノメチルフルオレセイン4mg及び5−カルボキシテトラメチルローダミンスクシンイミジルエステル10mgを過剰のジエチル−n−イソプロピルアミンと共に乾燥ジメチルホルムアミド(DMF)1mlに溶解した。反応を室温で一夜進行させ、得られた生成物をTLCで精製して所望の物質(XVIa)を得た。
b)Cy−5AMFAM−TAM(XXI)の調製
上記の通り得られた化合物(XVIa)を過剰のジエチル−n−イソプロピルアミンと共に乾燥ジメチルホルムアミドに溶解した。この溶液に、炭酸塩/重炭酸塩緩衝液中の僅かに過剰量のCy−5の1官能性NHSエステルを添加した。薄層クロマトグラフィー(TLC)上における出発物質(BA)の消失で示される通り反応が終了した後、溶媒を蒸発乾固させ、残存物をC18逆相TLCプレート上でクロマトグラフィーに付し、所望の生成物(XXI)を得た。
c)4′(5′)−トリフルオロアセトアミドフルオレセイン−4′(5′)−スクシニルアミドメチル−NHSエステル(図4)
ビス−アミノメチルフルオレセイン(0.14g、0.3μmol)を乾燥DMF(10ml)と共に共沸させることにより乾燥した。次にこれをDMF(8ml)及びピリジン(4ml)の混合物に溶解し、これに無水コハク酸(19mg)を添加した。2時間室温で攪拌した後、さらに7mgの無水コハク酸を添加した。反応をさらに2時間継続し、溶媒を蒸発乾固させた。粗生成物は出発物質であるモノスクシニル誘導体及びジスクシニル誘導体を一部含有していた。モノ及びジスクシニル誘導体を0.5%ギ酸を含有する10〜30%メタノール−ジクロロメタンを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離した。モノスクシニル誘導体を含有する適当な画分を収集し、蒸発乾固させた。
【0073】
モノスクシニル化合物(50mg)を乾燥ピリジン(2×10ml)との共沸により乾燥し、次にピリジン(4ml)とジクロロメタン(4ml)の混合物中に溶解し、これにTFA−NHS(150mg)を添加した。1時間室温で攪拌した後、反応混合物をジクロロメタン(100ml)で稀釈し、水(2×50ml)で洗浄した。有機層を乾燥(硫酸ナトリウム)し、蒸発し、残存物をトルエンと共沸させて明黄色固体50mgを得た。質量スペクトル計算値:683.24、測定値:682.23(M−H)−。
【0074】
ddNTP誘導体とのコンジュゲート形成及びET−ターミネーターへの変換(図4)
pH8.5の炭酸塩/重炭酸塩緩衝液(0.5ml)中のddNTP(25μmol)の溶液に、DMF(0.4ml)中の化合物8(25mg)の溶液を添加した。反応混合物を一夜室温で攪拌し、濃水酸化アンモニウム20mlを添加した。3時間後、反応混合物を少量になるまで蒸発させ、水で稀釈し、イオン交換クロマトグラフィーで精製した。純粋な生成物を含有する画分を蒸発させ、残存物をメタノール(3×50ml)と共沸させた。次にこれをDMSO(2ml)中に溶解し、これに色素−NHSエステル(30μmol、ROX、TAMRA又はR6G)を添加し、混合物を20時間室温で攪拌した。反応混合物を水で稀釈し、イオン交換カラムクロマトグラフィー、次いで逆相カラムクロマトグラフィーにより精製した。
【0075】
10)表2及び図6中の化合物IX、XI、XVII及びXVIIIとしての標識化合物を用いたDNAの配列決定(図10)
M13mp18鋳型DNAの配列を標準的な「−40」プライマーを用いて発生させた。反応混合物(20μl)は200μMの各dATP、dCTP及びdTTP、100μMのdTTP、160nMのFAM−18−ddGTP、125nMのR6G−11−ddUTP、95nMのBAMFAM−TAM−22−ddATP,60nMのAMFAM−ROX−11ddCTP、2pmolの−40プライマー、200ngのM13mp18DNA、20単位のテルモシーケンサー又は他の突然変異DNAポリメラーゼ(Amersham Biosciences社)、0.0008単位のサーモプラズマ・アシドフィラムの無機ピロホスファターゼ、50mMのトリス塩酸、pH8.5、30mMのKCl及び5mMのNgCl2を含むものとした。
【0076】
反応混合物を95℃20秒、50℃30秒及び60℃120秒の25サイクルについて熱サイクラー中でインキュベートした。サイクル処理の後、反応生成物を標準的な操作法を用いてエタノールで沈殿させ、洗浄し、ホルムアミドローディング緩衝液中に再懸濁した。試料をApplied Biosystems社377型装置又はMegaBACE100(Amersham Biosciences社)上にローディングし、結果を標準的なソフトウエア法を用いて分析した。
【0077】
上述の本発明の教示の利点を得る当業者は多くの変更を施すことが可能である。かかる変更は添付する請求項に示した本発明の範囲内に包含されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】4′,5′ビス−アミノメチルフルオレセイン及びその5−カルボン酸の合成の模式図である。
【図2】4′,5′ビス−アミノメチルフルオレセイン及びその5−カルボン酸構造上の種々の電荷及び生物学的分子の結合のための可能な部位を示す。
【図3】4′−アミノメチル−5−カルボン酸構造に基づくエネルギー移動色素及びターミネーターの合成の模式図である。
【図4】4′,5′ビス−アミノメチルフルオレセイン−5−カルボン酸構造に基づくエネルギー移動色素及びターミネーターの合成の模式図である。
【図5】本発明の単一ダイ標識ターミネーター及びETターミネーターの構造の模式図である。
【図6】本発明の好ましいダイターミネーターセットすなわち単一ダイターミネーター2つ及びETターミネーター2つの構造の模式図である。
【図7】DNA配列決定用に最適化されたダイターミネーターの正規化発光スペクトルを示す。
【図8】共に本発明のダイターミネーターを用いて発生させたシークエンシングバンドと他の市販のターミネーターを用いた場合の相対的輝度の比較を示す。
【図9】本発明のターミネーターを用いた場合のシークエンシングバンドの均一性及び既存の市販ターミネーターとのその比較を示す。
【図10】本発明の2つの単一ダイ及び2つのET色素のターミネーターを用いたDNA分子のシークエンシングデータを示す。
【図11】各種突然変異DNAポリメラーゼを用いた様々なリンカー長のFAM−ddGTPによるシークエンシングのバンドの均一性を示す。
【図12】各種突然変異DNAポリメラーゼを用いた様々なリンカー長のREG−ddUTPによるシークエンシングのバンドの均一性を示す。
【図13】各種突然変異DNAポリメラーゼを用いた様々なリンカー長のAMFAM−ROX−ddCTPによるシークエンシングのバンドの均一性を示す。
【図14】各種突然変異DNAポリメラーゼを用いた様々なリンカー長のBAMFAM−TAM−ddATPによるシークエンシングのバンドの均一性を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明はエネルギー移動色素及び蛍光標識ダイターミネーター、その調製及びDNA配列決定における標識としての使用に関する。
【0002】
ハイスループット遺伝子配列決定の現在受け入れられている慣行法は、一般則として、4種類の異なる標識を有するエネルギー移動(ET)ダイターミネーターを用いて、フォスター共鳴エネルギー移動(FRET)メカニズムに基づいて、ドナーの励起波長で励起し、4種類の個々の核酸塩基にコンジュゲートした4種類のアクセプターの波長で発光を測定することによって配列を読み取る。
【0003】
しかし、報告されている現在使用可能なETターミネーターセットは輝度が低いという難点を有する。こうした低い輝度はドナーに吸収されたエネルギーのアクセプターへの移動が非効率的であること、及びアクセプターの発光波長における再発光に起因する。こうした非効率性はドナーとアクセプター及び塩基を結合してダイターミネーターの形成に用いられている構造的連結が最適ではないことによる。
【0004】
多数の蛍光色素が生物学的試料中の成分の標識及び検出に最近開発されている。一般にこれらの蛍光色素は、低い検出限界を達成するには、高い吸光係数と量子収率を有さなければならない。
【0005】
フォスター共鳴エネルギー移動(FRET)メカニズムに基づいてストークスシフトを大きくしかつ多様にするために開発され、混合物中の異なる標識を有する試料の同時検出に使用されている色素の1つのクラスはET(エネルギー移動)色素である。これらのET色素はドナー蛍光団及びアクセプター蛍光団並びに目的の生物分子へのコンジュゲーションを可能にするための標識機能からなる複雑な分子構造を含む。ドナー蛍光団の励起によってドナーに吸収されたエネルギーはフォスター共鳴エネルギー移動(FRET)メカニズムでアクセプター蛍光団に移動し、蛍光を発する。1ドナーの場合に、異なるアクセプターを用いて1セットのET色素をなすことにより、該セットが単一のドナー周波数で励起された場合にもアクセプターの選択に応じて様々な発光を観察することができる。こうした異なる発光を定量することにより、これらの色素が目的の生物分子にコンジュゲートしたときに混合物の各成分を容易に分解することができる。これらのET色素セットは現在のハイスループット遺伝子配列決定方法論の骨格をなす。
【背景技術】
【0006】
以前より、二元蛍光団の様々な組合せが報告されている。援用によって図面も含めてその全体が本明細書に組み込まれるMathies等の「Probes Labelled with Energy Transfer Coupled Dyes」と題する米国特許5688648号、「Universal spacer/energy transfer dyes」と題する米国特許5728528号、及び「Methods of sequencing and detection using energy transfer labels with cyanine dyes as donor chromophores」と題する米国特許6150107号には、ドナー色素分子とアクセプター色素分子の対を担持した蛍光標識のセットが開示されており、標識は配列決定用核酸骨格に連結することができる。核酸塩基又は塩基糖単位をスペーサーとして用いてドナー色素とアクセプター色素を分離する。ドナー色素からアクセプター色素への効率的エネルギー移動に最適な距離は約6〜10塩基であることが判明している。蛍光部分がシアニン色素及びキサンテン類のような群から選択される、各種蛍光標識を用いて複数の核酸の混合物中の所定の核酸を同定・検出する方法も開示されている。蛍光標識は蛍光団の対を含んでおり、1つの蛍光団ドナーは蛍光団アクセプターの吸収と重複する発光スペクトルを有していて、対のうちの励起側から他方へのエネルギーの移動が起こる。
【0007】
援用によって図面も含めてその全体が本明細書に組み込まれるWaggoner等の「Fluorescent labeling complexes with large stokes shift formed by coupling together cyanine and other fluorochromes capable of resonance energy transfer」と題する米国特許6008373号には、第1の吸光及び発光スペクトルを有する第1の蛍光色素及び第2の吸光及び発光スペクトルを有する第2の蛍光色素を含む複合体が開示されている。蛍光色素の間のリンカー基はアルキル鎖である。色素の蛍光の性質により、配列決定及び核酸の検出に使用可能となる。
【0008】
援用によってその全体が本明細書に組み込まれる「Energy transfer dyes with enhanced fluorescence」と題するLee等の米国特許5863727号には、ドナー及びアクセプター色素が色素間のリンカーで離隔されたエネルギー移動色素が開示されている。色素間の好ましいリンカーは4−アミノメチル安息香酸である(Nucleic Acid Research,1997,25(14),2816−2822)。このリンカーに基づくエネルギー移動ターミネーターDNA配列決定キットはApplied Biosystems社(米国カリフォルニア州フォスター・シティ)から入手可能であり、BigDyeターミネーターキットとして市販されている。
【0009】
援用によって図及び図面も含めてその全体が本明細書に組み込まれるKumar等の「Energy Transfer Dyes」と題する国際公開第00/13026号には、エネルギー移動色素、その調製及び生物学的な系における標識としてのその使用が開示されている。色素は好ましくは各種生物学的物質へのその結合を可能とするカセットの形態である。ドナー色素、アクセプター色素及びジデオキシヌクレオシド−5′−三リン酸は全て芳香族アミノ酸構造に基づく三官能性リンカーに連結する(Tetrahedron Letter,2000,41,8867−8871)。これらの構造に基づくエネルギー移動ターミネーターキットはAmersham Biosciences社(米国ニュージャージー州ピスカタウェイ)からDNA配列決定用のDYEnamic ETターミネーターキットとして市販されている。
【0010】
援用によって図及び図面も含めてその全体が本明細書に組み込まれるKumar等の「Charge−modified nucleic acids terminators」と題する国際公開第01/19841号には、リンカーアームに正電荷又は負電荷を導入した単一のエネルギー移動ダイ標識ターミネーターが開示している。これらのターミネーターは、ダイ標識ジデオキシヌクレオシド−5′−三リン酸の分解で形成されるいかなる「色素ブロック」も含まないDNAシークエンシングバンドの発生に有用である。荷電ターミネーターの使用により、これらの分解生成物は配列情報の後方(正電荷ターミネーター)又は前方に移動させることができる(Finn et al.,Nucleic Acid Research,2002,30(13),2877−2885、Finn et al.,Nucleic Acids Research, 2003,31,4769−4778)。
【0011】
ただし、これらの特許に記載されたETターミネーターセットは輝度が低いという難点を有する。こうした低い輝度はドナーに吸収されたエネルギーのアクセプターへの移動が非効率的であること並びにアクセプターの発光波長におけるその再発光に起因する。こうした非効率性はドナーとアクセプター及び塩基を結合してダイターミネーターの形成に用いられている構造的連結が最適ではないことによる。従って、最大の輝度を得るためのエネルギー移動色素の構築及び生物学的分子へのその結合をさらに改善するニーズが依然として存在している。
【特許文献1】米国特許5688648号明細書
【特許文献2】米国特許5728528号明細書
【特許文献3】米国特許6150107号明細書
【特許文献4】米国特許6008373号明細書
【特許文献5】米国特許5863727号明細書
【特許文献6】国際公開第00/13026号パンフレット
【特許文献7】国際公開第01/19841号パンフレット
【非特許文献1】Nucleic Acid Research,1997,25(14),2816−2822
【非特許文献2】Tetrahedron Letter,2000,41,8867−8871
【非特許文献3】Finn et al.,Nucleic Acid Research,2002,30(13),2877−2885
【非特許文献4】Finn et al.,Nucleic Acids Research, 2003,31,4769−4778
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は現在入手可能なターミネーターよりも格段に輝度の高い4種類の異なる標識を有するダイターミネーターの新規なセットを提供する。このセットにおけるダイターミネーターの2種類は単一色素からなり、他の2種類は伝統的なET色素ではあるがET効率その他の特性に格段に優れている。本発明のダイターミネーターのセットでの輝度の向上及びそれに伴うSN比の改善は広範な鋳型使用量でのシークエンシングを可能にする。さらに、この新規ダイターミネーターセットは大幅に改善されたピーク均一性を示し、配列特異的なアーチファクトの一部が除かれた電気泳動図を与える。本発明で開示する4′,5′ビス−アミノメチルフルオレセイン及びその5及び6−カルボキシ置換誘導体の形態の新しい蛍光団/リンカーの組合せはトリフルオル(三元発色団系)ET色素の構築を可能にする。標識官能性に加えて2個以上のドナー及び/又はアクセプターを有するトリフルオル色素は単波長励起によってアクセプターの発光可能域を拡張するのに使用できる。これにより、シークエンシング反応のモニタリング及び高輝度発光、さらには他の可能な標識用途への途が広がる。4′,5′ビス−アミノメチルフルオレセイン−5(6)−カルボン酸骨格は様々な電荷のフルオレセイン色素及び荷電エネルギー移動色素の合成に使用できる正荷電又は負荷電部分の結合のための特別の部位を与える。本発明の荷電エネルギー移動ダイターミネーターは直接ローディング式「ブロブフリー」DNA配列決定に使用し得る。
【0013】
本発明は既存のダイターミネーターよりも高輝度であり、DNAポリメラーゼの基質となるエネルギー移動色素及び標識ヌクレオチドを提供する。エネルギー移動色素は4′,5′ビス−アミノメチルフルオレセイン構造に基づく。この系では、アクセプター色素はアクセプター色素に結合する別のリンカーを必要とせずに、アミノ基に直接結合する。この構造の第2のアミノ基はヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチドその他の目的の生物学的分子を始めとする、目的の生物学的分子に結合するように検討されている。
【0014】
本発明は、単フルオレセイン構造系の色素又は各種電荷のエネルギー移動色素を提供する。4′,5′ビス−アミノメチルフルオレセイン又はその5(6)−カルボン酸構造を用いて正荷電又は負荷電部分に結合してよい。本発明の荷電色素及びターミネーターはまた「直接ローディング式」DNA配列決定に用いてよい。
【0015】
本発明は4種類のターミネーターのセットを提供する。ターミネーターセットには単一ダイ(フルオレセイン(FAM)、ローダミン110(R110)又はローダミン6G(REG又はR6G))で標識されたジデオキシヌクレオシド−5′−三リン酸2種類及びエネルギー移動色素(フルオレセイン−テトラメチルローダミン(FAM−TAMRA)及びフルオレセイン−ローダミンX(FAM−ROX)で標識されたジデオキシヌクレオシド−5′−三リン酸2種類が含まれる。このターミネーターセットはDNA配列決定用に最適化されている。セット内の標識ヌクレオチドターミネーターは既存のキットよりも格段に高輝度であり、より均一なバンドを与える。その調製法及びDNA配列決定における使用も本発明において開示する。
【0016】
本発明の組成物及びエネルギー移動色素の製造方法及びヌクレオシド、ヌクレオチド(一、二又は三リン酸)又はオリゴヌクレオチドのような目的の生物学的分子へのその結合についても開示する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
FRETの効率は多くの要因に依存している。フォスター理論(Joseph R. Lakowicz, “Principles of Fluorescence Spectroscopy” 2nd Edition, Chapter 13, Kluwer Academic Plenum Publishers, New York, Boston, Durdrecht, London, Moscow 1999)によれば、それらは主に以下の要因である。
1)ドナーの発光スペクトルとアクセプターの吸収スペクトルの重複、
2)ドナーとアクセプターの間の間隔、及び、
3)ドナーとアクセプターの二極の間の空間的配向。
【0018】
実際には、問題ははるかに複雑である。場合によっては、ドナー発光が全く存在しないときでも、ドナーとアクセプター間の特異的な相互作用によって消光が起こり、アクセプターからの発光がほとんどみられないことがある。さらに、ドナーが消光される程度はアクセプターに移動したエネルギーとはほとんど関係なく、観察される発光量とは殆ど関係ない。本発明者等はこれらのダイターミネーターに関する現実的なET過程を説明するために数学的な処理を開発した。かかる数学的処理には、以下に挙げる3つの実験的に測定可能なパラメーターが最も重要である。
1)PQEQ(ドナーの消光率%)、これは以下の通り定義される。
PQWQ=(1−発光ドナー/アクセプター対のドナー/発光アクセプター非存在下での同量のドナー)×100
2)PAEE(アクセプター発光効率%)、
PEAA=(ドナーアクセプター対のアクセプターの発光効率)/(ドナー非存在下でのアクセプターの発光効率)×100%、及び、
3)PET(エネルギー移動率%)、
PET=ドナーの量子収率×(ドナー励起波長で励起されたアクセプターの発光効率)/(アクセプター非存在下のドナーの発光効率)。
【0019】
上記のPETは、実際には、ドナー励起波長で励起されたドナー/アクセプター対の量子収率、及びアクセプター発光波長で測定される発光となる。
【0020】
上述の方法論は1個のドナーと3個以上のアクセプターからなるET集合体にも拡張できる。さらに、これらの数値から、ET過程全体を通じた光子の流れを示すフローダイアグラムを構築できる。一例として、現在のDNAシークエンシング反応に使用されている4種類のETダイターミネーターのセット(Kumar等、国際公開第00/13026、Nampalli等、Tetrahedron Letters,2000,41,8867)に関する数値を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
表に記載の化合物の分子構造を以下に示す。
【0023】
【化1】
【0024】
例示として、例えば化合物(IV)を用いて光子のフローダイアグラムを構築できる。
【0025】
【化2】
【0026】
ダイアグラムの構築は比較的単純である。化合物(IV)のPQEQが99%に等しいので、ドナー(FAM)に吸収された光子100個のうちドナーで再発光されるものは僅か1個である。PETは0.19に等しく、これは、ドナーに吸収された光子100個当たり、光子19個がアクセプター(ROX)から発光されることを意味する。PAEEは0.35であり、その遊離状態におけるROXの量子収率がFAMとの相対値として1.0であると仮定すると、ROXアクセプターから光子19個を発光させるには19/0.35、つまり54個の光子のインプットが必要となる。従って、蛍光以外の過程におけるアクセプター(ROX)で失われた光子の数は35(=54−19)となる。次に光子の保存則から、ドナーFAMから放射過程で失われた光子の数は45(=100−1−54)となるはずである。
【0027】
表1に記載したものについて、本発明者等がダイターミネーターの改良された輝度を精査する過程において、本発明者等は4′,5′ビス−アミノメチルフルオレセイン(BAM−FAM)及びその5置換誘導体(5−カルボキシ−BAM−FAM)に基づく新しい種類のET色素を発見した。BAM−FAMは、ドナー蛍光団としてだけでなく、アクセプター蛍光団及び修飾核酸塩基を結合して輝度その他所望の特性に優れたダイターミネーターを形成できる構造的結合部としての働きも有する。5−カルボキシ−BAM−FAMはさらに、2以上の結合部位を与え、これによりトリフルオルダイターミネーター(1個ドナーと同一又は異なる2個のアクセプターと核酸塩基)の構造を可能とする。
【0028】
即ち、本発明は次式のエネルギー移動色素を提供する。
【0029】
【化3】
【0030】
式中、
R1はキサンチン色素、ローダミン色素及びシアニン色素からなる群から選択されるアクセプター色素であって、R1はフルオレセインドナー発色団からエネルギーを受け取ることができ、
L1は炭素、酸素、窒素、イオウ及びリン原子から選択される連結した原子2〜50個を含むリンカー鎖であって、
該鎖は正荷電又は負荷電の基1個以上又は−CR=CR−及び−C≡C−からなる群から選択される不飽和基1個以上を適宜含む(Rは水素又はC1−C4アルキル基を表す。)か、或いは
該鎖は正荷電又は負荷電の基1個以上及び−CR=CR−及び−C≡C−からなる群から選択される不飽和基1個以上を適宜含んでおり(Rは水素又はC1−C4アルキル基を表す。)、
R2はH、COOR又はCH2OR、又は炭素、酸素、窒素、イオウ及びリン原子から選択される連結した原子2〜30個を含む鎖L2を表し、
該鎖は正荷電又は負荷電の基1個以上又は−CR=CR−及び−C≡C−からなる群から選択される不飽和基1個以上を適宜含む(Rは上記の通り定義される。)か、或いは
該鎖は正荷電又は負荷電の基1個以上及び−CR=CR−及び−C≡C−からなる群から選択される不飽和基1個以上を適宜含んでおり(Rは上記の通り定義される。)、
Xは以下のものから選択され、
【0031】
【化4】
【0032】
Tは生物学的分子である。
【0033】
別の実施形態は次式のエネルギー移動色素を提供する。
【0034】
【化5】
【0035】
式中、
R1はキサンチン色素、ローダミン色素及びシアニン色素からなる群から選択されるアクセプター色素であって、R1はフルオレセインドナー発色団からエネルギーを受け取ることができ、
L1は炭素、酸素、窒素、イオウ及びリン原子から選択される連結した原子2〜50個を含むリンカー鎖であって、
該鎖は正荷電又は負荷電の基1個以上又は−CR=CR−及び−C≡C−からなる群から選択される不飽和基1個以上を適宜含む(Rは水素又はC1−C4アルキル基を表す。)か、或いは
該鎖は正荷電又は負荷電の基1個以上及び−CR=CR−及び−C≡C−からなる群から選択される不飽和基1個以上を適宜含んでおり(Rは水素又はC1−C4アルキル基を表す。)、
YはH、CH2NH2、CH2NHCOR又はCH2OR(Rは上記の通り定義される。)、又は炭素、酸素、窒素、イオウ及びリン原子から選択される連結した原子2〜30個を含む鎖L2を表し、
該鎖は正荷電又は負荷電の基1個以上又は−CR=CR−及び−C≡C−からなる群から選択される不飽和基1個以上を適宜含む(Rは上記の通り定義される。)か、或いは
該鎖は正荷電又は負荷電の基1個以上及び−CR=CR−及び−C≡C−からなる群から選択される不飽和基1個以上を適宜含んでおり(Rは上記の通り定義される。)、
Xは以下のものから選択され、
【0036】
【化6】
【0037】
Tは生物学的分子である。
【0038】
別の特徴においては、本発明は、核酸の配列を決定する方法であって、
a)配列決定すべき核酸の試料、配列決定すべき核酸の少なくとも一部に相補的なプライマー核酸配列、シークエンシング反応を終了するためのデオキシヌクレオチド及び請求項8記載の1種以上のジデオキシヌクレオチドの供給源、及びポリメラーゼを準備すること、
b)核酸鎖伸長及び連鎖停止反応を実施すること、
c)サイズに応じてオリゴヌクレオチドフラグメントを分離すること
を含んでなる方法に関する。
【0039】
さらに本発明は上述の化合物の1種類以上を含むDNA配列決定用キットに関し、標的分子は上述の生物学的分子であり、Tは2′,3′−ジデオキシシチジン−5′−三リン酸、2′,3′−ジデオキシチミジン−5′−三リン酸、2′,3′−ジデオキシウリジン−5′−三リン酸、2′,3′−ジデオキシアデノシン−5′−三リン酸、2′,3′−ジデオキグアノシン−5′−三リン酸及び2′,3′−ジデオキシイノシン−5′−三リン酸、2′,3′−ジデオキシ−7−デアザアデノシン−5′−三リン酸、2′,3′−ジデオキシ−7−デアザグアノシン−5′−三リン酸、2′,3′−ジデオキシ−7−デアザイノシン−5′−三リン酸及びこれらの3′−フルオロ、3′−アジド、3′−アミノ又は3′−チオ誘導体からなる群から選択されるジデオキシヌクレオシド−5′−三リン酸である。
【0040】
上述の通り、適当なR1アクセプター色素は本発明のエネルギー移動化合物の一部を形成するフルオロセインドナー発色団又はエネルギーを受け取ることのできる色素である。例えば、適当なアクセプター色素はキサンチン色素(例えばフルオレセイン、ナフトフルオレセイン、ロドール及び上記のものの誘導体)、ローダミン色素(例えばローダミン110、REG、TAMRA、ROX、テキサスレッド等)及びシアニン色素(例えばCy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7等)からなる群から選択でき、R1はフルオレセインドナー発色団からエネルギーを受け取ることができる。
【0041】
適当なアクセプター色素の具体例としては、フルオレセイン、ナフトフルオレセイン、ロドール、5−カルボキシローダミン、6−カルボキシローダミン、5−カルボキシローダミン−6−G、6−カルボキシローダミン−6−G、N,N,N′,N′−テトラメチル−5−カルボキシローダミン、N,N,N′,N′−テトラメチル−6−カルボキシローダミン、5−カルボキシ−X−ローダミン、6−カルボキシ−X−ローダミン、Cy3(3−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′ ,3′−テトラメチル−5,5′−ジスルホナト−カルボシアニン)、Cy3.5(3−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′ ,3′−テトラメチル−4,5,4′,5′−(1,3−ジスルホナト)ジベンゾ−カルボシアニン、Cy5(3−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′ ,3′−テトラメチル−5,5′−ジスルホナト)ジベンゾ−ジカルボシアニン、Cy5.5((3−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′ ,3′−テトラメチル−4,5,4′,5′−(1,3−ジスルホナト)ジベンゾ−ジカルボシアニン及びCy7((3−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′ ,3′−テトラメチル−5,5′−(1,3−ジスルホナト)トリカルボシアニンが挙げられる。ただし、他の部類の色素もアクセプター色素として使用し得る。
【0042】
エネルギー移動(ET)効率はドナーとアクセプター色素の距離及び配向に依存する。表1の化合物(III)において、ドナーのフルオレセイン(FAM)とアクセプターのテトラメチルローダミン(TAMRA)の間の結合部はその間に11結合長の隔たりを有している。ただし、結合部は(V)のようなBAM−FAM結合化合物に示すように、3結合長程度の小さなものでもよい。
【0043】
実際、Lee等(Nucleic Acids Research, 1997,25(14),1826−2822)はET色素「ビフルオル−I」(V)を検討している。しかし、上記報文でこの研究者等は「しかし、ビフルオル−Iはテトラメチルローダミン単独よりも高輝度ではなかった」と結論している。本発明者等が検討したところでは、化合物(V)又は4′,5′ビス−アミノメチルフルオレセイン(VI)及びその5又は6−カルボキシル誘導体(VII)から誘導したETターミネーターで格段に向上したETが観察されている。
【0044】
【化7】
【0045】
4′−アミノメチルフルオレセイン−5−カルボン酸又は4′−アミノメチルフルオレセイン−6−カルボン酸及び4′,5′ビス−アミノメチルフルオレセイン又は4′,5′ビス−アミノメチルフルオレセイン−5−カルボン酸及び6−カルボン酸の合成を図1に示す通り行った。即ち、フルオレセイン或いはフルオレセイン−5−又は6−カルボン酸を2−クロロ−n−(ヒドロキシメチル)−アセトアミドと硫酸溶液中で反応させ、次に濃塩酸で加水分解して対応アミノエチル誘導体を得た。
【0046】
色素とジデオキシヌクレオシド−5′−三リン酸との間のリンカーが異なる多数の単一ダイ標識ターミネーターを合成し、488nmの励起光でその輝度(PET)を測定した。本発明の方法における各ターミネーターの選択は、DNAポリメラーゼとターミネーターとの反応性、バンドの均一性及び配列全体での分解能に基づいて行った(例えば図11及び図12参照)。単一ダイ標識ターミネーターの輝度も、本発明のエネルギー移動ダイ標識ターミネーター及び従前開示されたターミネーターと比較した(表1(前出)及び表2(後出)参照)。
【0047】
モノアミノメチルフルオレセイン誘導ターミネーターの合成は図3に示す通り行った。即ち、4′−アミノメチルフルオレセイン−5−カルボン酸をトリフルオロアセトアミド−N−ヒドロキシ−スクシンアミド(TFA−NHS)と反応させて一段階で酸の活性化とアミノ保護を行った。活性エステルを、適切に結合したプロパルギルアミノ−ddNTPと反応させ、水酸化アンモニウムで加水分解して得た遊離アミノ化合物を適当な色素−NHSエステルと反応させてエネルギー移動ダイターミネーターを得た。
【0048】
4′,5′ビス−アミノメチルフルオレセイン誘導ターミネーターの合成は図4に示する通り行った。この場合、ビスアミノメチルフルオレセインを無水コハク酸でモノアシル化し、その後TFA−NHSと反応させて、4′(5′)−トリフルオロアセトアミドフルオレセイン−5′(4′)−スクシニルアミドメチル−NHSエステルとした。次の2つの段階は4′−アミノメチルフルオレセイン誘導エネルギー移動ターミネーターの合成に関して上述の方法と基本的に同じ方法で行った。
【0049】
エネルギー移動(ET)効率を本発明で合成した全ての単一ダイ標識ジデオキシヌクレオシド−5′−三リン酸(ターミネーター)及びエネルギー移動ターミネーターについて測定した。全てのダイターミネーターは488nmで励起し、その対応発光波長において発光を測定した。結果を表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
表2に記載したダイターミネーターの分子構造を図5に示す。
【0052】
これらのPET測定から、色素FAM、R110及びREGから誘導された単一ダイターミネーターはFAM−R110及びFAM−REGの複合体から誘導されたETコンストラクトよりも高輝度であることが分かる。FAM−TAM及びFAM−ROXから誘導されたET色素のコンストラクトはTAMRA及びROX単独から誘導された単一ダイターミネーターよりも高輝度である。色素に関する報文(Nucleic Acids Research 1997,25(14),2816−2822)とは逆に、ETダイターミネーター(XVI)は単一ダイターミネーター(XII)より格段に高輝度である。
【0053】
本発明の単一ダイ標識ターミネーター及びエネルギー移動ダイ標識ターミネーター(上記)を、熱安定性DNAポリメラーゼを用いたDNAシークエンシング反応で試験した。個々のダイ標識ターミネーターの利用性はバンドの全体的な配列の特性、輝度及び均一性に基づいて確認した(図11〜14)。これらの基準に基づいて、新しいセットのダイターミネーターを構築した(図6)。この新しいセットのターミネーターのPETを以下に示す。
【0054】
【表3】
【0055】
本発明のターミネーターセットは、Amersham Biosciences社(米国ニュージャージー州ピスカタウェイ)又はApplied Biosystems社(米国カリフォルニア州フォスター・シティ)から入手可能な現在市販されているダイターミネーターよりも高輝度である(図8)。この新しいセットは、幾つかの測定によれば、表1に記載したETターミネーターよりも約2倍高輝度、BigDye(商標)バージョン1及び2のターミネーターよりも4倍高輝度、BigDye(商標)バージョン3のターミネーターよりも約8倍高輝度である(Applied Biosystems社(米国カリフォルニア州フォスター・シティ))。こうした輝度の向上は、少量の鋳型でも検出でき、必要なサイクル数が減り、しかも不十分な鋳型のシークエンシングでも良好な配列が得られる可能性が高まることを意味する。この新しいセットのダイターミネーターは泳動速度の速いG、傾斜するT、及びAの後の弱いGのような電気泳動図における3つの一般的アーチファクトが補正されるという更なる利点を有する。またピーク高さもより均一である(図9)。
【0056】
以下に好ましい結合位置と共に示す(VIII)のような化合物は、さらに、結合した核酸塩基の他に1個のドナー蛍光団及び同一又は異なる2個のアクセプターを有するETトリフルオルダイターミネーターの調製の機会を与える。
【0057】
【化8】
【0058】
かかる集合体は、本発明者等はドナーから生じる2回の連続したエネルギー移動に依存しているため、2つの異なるアクセプター蛍光団の導入を伴うETダイターミネーターの発光範囲を拡張することができる。まず第1のアクセプター蛍光団に、次に第1のアクセプター蛍光団から第2へと、3つの蛍光団の間で妥当なスペクトル重複を維持しながら行われる。さらに、複合蛍光団の励起には1以上の方法が存在する。1つは488nmでフルオレセイン蛍光団を励起し、エネルギー移動過程が最長の発光蛍光団から発光させることである。フルオレセインと第2の蛍光団の両方を488nm及び第2の蛍光団の吸収最大で同時に励起する場合は、両者に吸収されたエネルギーを第3の蛍光団へ移動させそこから生じる輝度を最大としなければならない。
【0059】
本発明の標識複合体は好ましくは4′,5′ビス−アミノメチルフルオレセイン−5−カルボン酸を他の蛍光団に共有結合させてエネルギードナー−アクセプター複合体を形成することによって合成される。本発明は、試薬、並びに担体物質と共に上述の蛍光水溶性標識複合体をインキュベートすることを含む試薬の調製方法も包含する。複合体と担体を結合する目的には、複合体は担体上の反応性基と反応して共有結合を形成する官能基を有していてよい。或いは、複合体は担体上の官能基と反応して共有結合を形成する反応性基を含んでいてもよい。担体物質はアミノ、スルフヒドリル、カルボニル、カルボキシル又はヒドロキシル基のうちの1つを含むように誘導体化された重合体粒子、ガラスビーズ、細胞、抗体、抗原、タンパク質、酵素、ヌクレオチドからなる群から選択される。上述の通り、担体物質は反応性基を含んでいてよく、本発明の蛍光標識複合体は反応性基と反応して共有結合を形成する上述の官能基を含んでいてもよい。
【0060】
別の実施形態では、本発明の蛍光複合体は、別の化合物に非共有結合で結合するために用いられる場合は、反応性基を有する必要はない。例えば、複合体をポリスチレンのような重合体粒子と共に有機溶媒に溶解して混合し、次に乳化重合により攪拌してよい。溶媒を蒸発させ、蛍光色素複合体をポリスチレン粒子に吸着させる。
【0061】
本発明をさらに以下の実施例を参考にしながら説明する。これらの実施例は説明を目的とするのみであり、請求項及び本発明の範囲を限定するものではない。本発明は明細書の記載から明らかな如何なる変更も包含する。
【実施例】
【0062】
1)FAM−18−ddGTP(IX)の調製
11−ddGTP(0.1MNaHCO3/Na2CO3、pH8.5、60μmol、5ml)の溶液を氷/水バス中で冷却した。溶液にDMF(5ml)中の5−カルボキシ−フルオレセイン−NHS(35mg、1等量)を添加した。反応フラスコを冷却バスから取り外し、反応混合物を16時間室温で攪拌した。生成物をアニオン交換クロマトグラフィー及びHPLCで精製した。画分を含む生成物を濃縮し、凍結乾燥し、黄色固体を得た。
【0063】
2)4′,5′ビス−アミノメチルフルオレセイン(BAM−FAM)の合成(図1)
a)4′,5′ビス−(2−クロロアセトアミド)−アミノメチルフルオレセインの調製
フルオレセイン(3.3グラム)及び2−クロロ−n−(ヒドロキシメチル)−アセトアミド(5.0グラム)を濃硫酸20mlに溶解した。暗褐色の溶液を2時間室温で攪拌した。この時点でESMS+はフルオレセインが残存していないことを示した。生成物を氷水200グラムに注ぎ込み、沈殿を濾過し、水、次いでエーテルで洗浄し、風乾した。このようにして得られた物質のNMRは、これが所望の生成物であることを示していた。
b)4′,5′ビス−アミノメチルフルオレセイン(BAM−FAM)を得るための4′,5′ビス−(2−クロロアセトアミド)−アミノメチルフルオレセインの濃塩酸加水分解
上記反応の生成物を濃塩酸40mlに懸濁し、30分間還流下に加熱した。その時点で透明な溶液が得られた。生成物を蒸発乾固させ、残存物をメタノール/ジクロロメタンから再結晶させ、NMR及びESMS+により同定された所望の生成物を得た。
【0064】
3)4′,5′ビス−アミノメチルフルオレセイン−5−カルボン酸の合成(図1)
フルオレセイン−5−カルボン酸は濃硫酸に僅かしか溶解しないため、変法を用いた。
a)4′,5′ビス−(2−クロロアセトアミド)アミノメチルフルオレセイン−5−カルボン酸の調製
室温で攪拌した濃硫酸20mlにジピバロイルフルオレセイン−5−カルボン酸を添加した。懸濁液に過剰(4等量)の2−クロロ−n−(ヒドロキシメチル)−アセトアミドを少しずつ、透明な溶液が得られるまで添加した。溶液の色が明黄色から茶色に変化するまでさらに原料(フルオレセイン及び過剰のHOCH2NHCOCH2Cl)を添加した。次に溶液を氷/水の混合物に注ぎ込んだ。このようにして得られた沈殿を濾過し、水及びエーテルで洗浄した。沈殿のNMR及びESMS+から、所望の生成物であることを確認した。
b)4′,5′ビス−アミノメチルフルオレセイン−5−カルボン酸を得るための4′,5′ビス−(2−クロロアセトアミド)アミノメチルフルオレセイン−5−カルボン酸の濃塩酸加水分解
上記生成物1.01グラムを濃塩酸20ml及び2−メトキシエーテル5mlに溶解した。得られた懸濁液を透明になり始めるまで(約2時間)還流下に加熱した。次に溶液を放冷した。一夜室温で放置した後、沈殿を濾過し、0.1N塩酸、ついでエーテルで洗浄し、NMR及びESMS+スペクトラによれば所望の生成物が得られた。
【0065】
4)トリフルオロアセトアミドメチル−フルオレセインNHSエステル(TFA−AMFAM−NHS)の調製(図3)
4′−アミノメチル−5−カルボキシフルオレセイン(1、0.49g、1.21μmol)を乾燥DMF(15ml)と共に共沸させることにより乾燥した。これを乾燥ピリジンに懸濁し、これにTFA−NHS(1.53g、7.26μmol)をアルゴン雰囲気下に添加した。反応混合物を1時間室温で攪拌し、クロロホルム(125ml)で稀釈し、水(3×75ml)で洗浄した。有機層を乾燥(硫酸ナトリウム)し、蒸発させ、トルエンと共沸させて黄色固体を得た。
【0066】
5)TFA−AMFAM−NHSの11−ddCTPの調製(図3)
上記の生成物(25mg)をDMF(1ml)中に溶解した。溶液にDMSO中の11−dCTPの溶液(1ml、33μmol)又はpH85炭酸塩/重炭酸塩緩衝液中の11−ddCTPの溶液(34μmol)のいずれかを添加した。反応混合物を20時間室温で攪拌した。この時点において、濃水酸化アンモニウム10mlを添加した。室温で3時間攪拌した後、少量となるまで蒸発させた。粗生成物を水(10ml)で稀釈し、イオン交換カラムクロマトグラフィー、次いで逆相カラムクロマトグラフィーで精製した。
【0067】
6)AMFAM−ROX−11−ddCTP(XVII)の合成(図3)
上記の生成物(60μmol)を乾燥DMSO(5ml)に溶解し、これにROX−NHSエステル(60mg、60μmol)を添加し、反応混合物を20時間室温で攪拌した。反応混合物を水で稀釈し、イオン交換カラムクロマトグラフィー、次いで逆相カラムクロマトグラフィーで精製した。
【0068】
7)AMFAM−TAM−18−ddATP(XVI)の合成(図3)
化合物(XVII)の調製について記載した方法と同様にして、TFA−AMFAM−NHSと18−ddATPのコンジュゲーション、次いで、TAMRA−NHSエステルの反応を行い、標的化合物(XVI)を得た。
【0069】
8)Cy−5−AMFAM(XX)の調製
【0070】
【化9】
【0071】
4′−メチルアミノ−フルオレセイン5mgを乾燥DMF0.5mlに溶解した。溶液に重炭酸ナトリウム−炭酸塩緩衝液1.0ml中のCy−5−1官能性反応性色素20mgを添加した。室温で20分の後、溶媒を蒸発させ、残存物をクロマトグラフィーに付し、所望の生成物(XX)を得た。
【0072】
9)Cy−5AMFAM−TAM(XXI)の合成
a)AMFAM−TAM(XVIa)の調製
4′,5′ビス−アミノメチルフルオレセイン4mg及び5−カルボキシテトラメチルローダミンスクシンイミジルエステル10mgを過剰のジエチル−n−イソプロピルアミンと共に乾燥ジメチルホルムアミド(DMF)1mlに溶解した。反応を室温で一夜進行させ、得られた生成物をTLCで精製して所望の物質(XVIa)を得た。
b)Cy−5AMFAM−TAM(XXI)の調製
上記の通り得られた化合物(XVIa)を過剰のジエチル−n−イソプロピルアミンと共に乾燥ジメチルホルムアミドに溶解した。この溶液に、炭酸塩/重炭酸塩緩衝液中の僅かに過剰量のCy−5の1官能性NHSエステルを添加した。薄層クロマトグラフィー(TLC)上における出発物質(BA)の消失で示される通り反応が終了した後、溶媒を蒸発乾固させ、残存物をC18逆相TLCプレート上でクロマトグラフィーに付し、所望の生成物(XXI)を得た。
c)4′(5′)−トリフルオロアセトアミドフルオレセイン−4′(5′)−スクシニルアミドメチル−NHSエステル(図4)
ビス−アミノメチルフルオレセイン(0.14g、0.3μmol)を乾燥DMF(10ml)と共に共沸させることにより乾燥した。次にこれをDMF(8ml)及びピリジン(4ml)の混合物に溶解し、これに無水コハク酸(19mg)を添加した。2時間室温で攪拌した後、さらに7mgの無水コハク酸を添加した。反応をさらに2時間継続し、溶媒を蒸発乾固させた。粗生成物は出発物質であるモノスクシニル誘導体及びジスクシニル誘導体を一部含有していた。モノ及びジスクシニル誘導体を0.5%ギ酸を含有する10〜30%メタノール−ジクロロメタンを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離した。モノスクシニル誘導体を含有する適当な画分を収集し、蒸発乾固させた。
【0073】
モノスクシニル化合物(50mg)を乾燥ピリジン(2×10ml)との共沸により乾燥し、次にピリジン(4ml)とジクロロメタン(4ml)の混合物中に溶解し、これにTFA−NHS(150mg)を添加した。1時間室温で攪拌した後、反応混合物をジクロロメタン(100ml)で稀釈し、水(2×50ml)で洗浄した。有機層を乾燥(硫酸ナトリウム)し、蒸発し、残存物をトルエンと共沸させて明黄色固体50mgを得た。質量スペクトル計算値:683.24、測定値:682.23(M−H)−。
【0074】
ddNTP誘導体とのコンジュゲート形成及びET−ターミネーターへの変換(図4)
pH8.5の炭酸塩/重炭酸塩緩衝液(0.5ml)中のddNTP(25μmol)の溶液に、DMF(0.4ml)中の化合物8(25mg)の溶液を添加した。反応混合物を一夜室温で攪拌し、濃水酸化アンモニウム20mlを添加した。3時間後、反応混合物を少量になるまで蒸発させ、水で稀釈し、イオン交換クロマトグラフィーで精製した。純粋な生成物を含有する画分を蒸発させ、残存物をメタノール(3×50ml)と共沸させた。次にこれをDMSO(2ml)中に溶解し、これに色素−NHSエステル(30μmol、ROX、TAMRA又はR6G)を添加し、混合物を20時間室温で攪拌した。反応混合物を水で稀釈し、イオン交換カラムクロマトグラフィー、次いで逆相カラムクロマトグラフィーにより精製した。
【0075】
10)表2及び図6中の化合物IX、XI、XVII及びXVIIIとしての標識化合物を用いたDNAの配列決定(図10)
M13mp18鋳型DNAの配列を標準的な「−40」プライマーを用いて発生させた。反応混合物(20μl)は200μMの各dATP、dCTP及びdTTP、100μMのdTTP、160nMのFAM−18−ddGTP、125nMのR6G−11−ddUTP、95nMのBAMFAM−TAM−22−ddATP,60nMのAMFAM−ROX−11ddCTP、2pmolの−40プライマー、200ngのM13mp18DNA、20単位のテルモシーケンサー又は他の突然変異DNAポリメラーゼ(Amersham Biosciences社)、0.0008単位のサーモプラズマ・アシドフィラムの無機ピロホスファターゼ、50mMのトリス塩酸、pH8.5、30mMのKCl及び5mMのNgCl2を含むものとした。
【0076】
反応混合物を95℃20秒、50℃30秒及び60℃120秒の25サイクルについて熱サイクラー中でインキュベートした。サイクル処理の後、反応生成物を標準的な操作法を用いてエタノールで沈殿させ、洗浄し、ホルムアミドローディング緩衝液中に再懸濁した。試料をApplied Biosystems社377型装置又はMegaBACE100(Amersham Biosciences社)上にローディングし、結果を標準的なソフトウエア法を用いて分析した。
【0077】
上述の本発明の教示の利点を得る当業者は多くの変更を施すことが可能である。かかる変更は添付する請求項に示した本発明の範囲内に包含されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】4′,5′ビス−アミノメチルフルオレセイン及びその5−カルボン酸の合成の模式図である。
【図2】4′,5′ビス−アミノメチルフルオレセイン及びその5−カルボン酸構造上の種々の電荷及び生物学的分子の結合のための可能な部位を示す。
【図3】4′−アミノメチル−5−カルボン酸構造に基づくエネルギー移動色素及びターミネーターの合成の模式図である。
【図4】4′,5′ビス−アミノメチルフルオレセイン−5−カルボン酸構造に基づくエネルギー移動色素及びターミネーターの合成の模式図である。
【図5】本発明の単一ダイ標識ターミネーター及びETターミネーターの構造の模式図である。
【図6】本発明の好ましいダイターミネーターセットすなわち単一ダイターミネーター2つ及びETターミネーター2つの構造の模式図である。
【図7】DNA配列決定用に最適化されたダイターミネーターの正規化発光スペクトルを示す。
【図8】共に本発明のダイターミネーターを用いて発生させたシークエンシングバンドと他の市販のターミネーターを用いた場合の相対的輝度の比較を示す。
【図9】本発明のターミネーターを用いた場合のシークエンシングバンドの均一性及び既存の市販ターミネーターとのその比較を示す。
【図10】本発明の2つの単一ダイ及び2つのET色素のターミネーターを用いたDNA分子のシークエンシングデータを示す。
【図11】各種突然変異DNAポリメラーゼを用いた様々なリンカー長のFAM−ddGTPによるシークエンシングのバンドの均一性を示す。
【図12】各種突然変異DNAポリメラーゼを用いた様々なリンカー長のREG−ddUTPによるシークエンシングのバンドの均一性を示す。
【図13】各種突然変異DNAポリメラーゼを用いた様々なリンカー長のAMFAM−ROX−ddCTPによるシークエンシングのバンドの均一性を示す。
【図14】各種突然変異DNAポリメラーゼを用いた様々なリンカー長のBAMFAM−TAM−ddATPによるシークエンシングのバンドの均一性を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式の化合物。
【化1】
式中、
R1はキサンチン色素、ローダミン色素及びシアニン色素からなる群から選択されるアクセプター色素であって、R1はフルオレセインドナー発色団からエネルギーを受け取ることができ、
L1は炭素、酸素、窒素、イオウ及びリン原子から選択される連結した原子2〜50個を含むリンカー鎖であって、
該鎖は正荷電又は負荷電の基1個以上又は−CR=CR−及び−C≡C−からなる群から選択される不飽和基1個以上を適宜含む(Rは水素又はC1−C4アルキル基を表す。)か、或いは
該鎖は正荷電又は負荷電の基1個以上及び−CR=CR−及び−C≡C−からなる群から選択される不飽和基1個以上を適宜含んでおり(Rは水素又はC1−C4アルキル基を表す。)、
R2はH、COOR又はCH2OR、又は炭素、酸素、窒素、イオウ及びリン原子から選択される連結した原子2〜30個を含む鎖L2を表し、
該鎖は正荷電又は負荷電の基1個以上又は−CR=CR−及び−C≡C−からなる群から選択される不飽和基1個以上を適宜含む(Rは上記の通り定義される。)か、或いは
該鎖は正荷電又は負荷電の基1個以上及び−CR=CR−及び−C≡C−からなる群から選択される不飽和基1個以上を適宜含んでおり(Rは上記の通り定義される。)、
Xは以下のものから選択され、
【化2】
Tは生物学的分子である。
【請求項2】
次式の化合物。
【化3】
式中、
R1はキサンチン色素、ローダミン色素及びシアニン色素からなる群から選択されるアクセプター色素であって、R1はフルオレセインドナー発色団からエネルギーを受け取ることができ、
L1は炭素、酸素、窒素、イオウ及びリン原子から選択される連結した原子2〜50個を含むリンカー鎖であって、
該鎖は正荷電又は負荷電の基1個以上又は−CR=CR−及び−C≡C−からなる群から選択される不飽和基1個以上を適宜含む(Rは水素又はC1−C4アルキル基を表す。)か、或いは、
該鎖は正荷電又は負荷電の基1個以上及び−CR=CR−及び−C≡C−からなる群から選択される不飽和基1個以上を適宜含んでおり(Rは水素又はC1−C4アルキル基を表す。)、
YはH、CH2NH2、CH2NHCOR(Rは上記の通り定義される。)、又はCH2OR(Rは上記の通り定義される。)、又は炭素、酸素、窒素、イオウ及びリン原子から選択される連結した原子2〜30個を含む鎖L2を表し、
該鎖は正荷電又は負荷電の基1個以上又は−CR=CR−及び−C≡C−からなる群から選択される不飽和基1個以上を適宜含む(Rは上記の通り定義される。)か、或いは
該鎖は正荷電又は負荷電の基1個以上及び−CR=CR−及び−C≡C−からなる群から選択される不飽和基1個以上を適宜含んでおり(Rは上記の通り定義される。)、
Xは以下のものから選択され、
【化4】
Tは生物学的分子である。
【請求項3】
L1がC2−50アルキル鎖であり、該鎖は−C(O)−、−C(S)−、−NR−、−N+R2−、−O−、−S−、−CR=CR−、−C≡C−、−CO−NR−及び次式の基から選択される基1個以上を適宜含む(Rは請求項1又は請求項2と同様に定義される。)、請求項1又は請求項2記載の化合物。
【化5】
【請求項4】
L2がC2−30アルキル鎖であり、該鎖は−C(O)−、−C(S)−、−NR−、−N+R2−、−O−、−S−、−CR=CR−、−C≡C−、−CO−NR−及び次式の基から選択される基1個以上を適宜含む(Rは請求項1又は請求項2と同様に定義される。)、請求項1又は請求項2記載の化合物。
【化6】
【請求項5】
Tがヌクレオシド、ヌクレオチド、ヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド誘導体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド誘導体、ペプチド、タンパク質及び炭水化物からなる群から選択される、請求項1又は請求項2記載の化合物。
【請求項6】
Tがリボヌクレオチド、2′−又は3′−デオキシリボヌクレオチド及び2,3′−ジデオキシリボヌクレオチドからなる群から選択される、請求項1又は請求項2記載の化合物。
【請求項7】
Tがヌクレオシド−5′−一、二又は三リン酸である、請求項1又は請求項2記載の化合物。
【請求項8】
Tが2′,3′−ジデオキシシチジン−5′−三リン酸、2′,3′−ジデオキシチミジン−5′−三リン酸、2′,3′−ジデオキシウリジン−5′−三リン酸、2′,3′−ジデオキシアデノシン−5′−三リン酸、2′,3′−ジデオキグアノシン−5′−三リン酸及び2′,3′−ジデオキシイノシン−5′−三リン酸、2′,3′−ジデオキシ−7−デアザアデノシン−5′−三リン酸、2′,3′−ジデオキシ−7−デアザグアノシン−5′−三リン酸、2′,3′−ジデオキシ−7−デアザイノシン−5′−三リン酸及びこれらの3′−フルオロ、3′−アジド、3′−アミノ又は3′−チオ誘導体からなる群から選択されるジデオキシヌクレオシド−5′−三リン酸である、請求項1又は請求項2記載の化合物。
【請求項9】
L1が標的分子に対し、該標的分子がピリミジンを含む場合はC−5位に、該標的分子が7−デアザプリンを含む場合はC−7位に結合している、請求項1又は請求項2記載の化合物。
【請求項10】
R1がフルオレセイン、ナフトフルオレセイン、ロドール、5−カルボキシローダミン、6−カルボキシローダミン、5−カルボキシローダミン−6−G、6−カルボキシローダミン−6−G、N,N,N′,N′−テトラメチル−5−カルボキシローダミン、N,N,N′,N′−テトラメチル−6−カルボキシローダミン、5−カルボキシ−X−ローダミン、6−カルボキシ−X−ローダミン、Cy3(3−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′ ,3′−テトラメチル−5,5′−ジスルホナト−カルボシアニン)、Cy3.5(3−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′ ,3′−テトラメチル−4,5,4′,5′−(1,3−ジスルホナト)ジベンゾ−カルボシアニン、Cy5(3−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′ ,3′−テトラメチル−5,5′−ジスルホナト)ジベンゾ−ジカルボシアニン、Cy5.5((3−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′ ,3′−テトラメチル−4,5,4′,5′−(1,3−ジスルホナト)ジベンゾ−ジカルボシアニン及びCy7((3−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′ ,3′−テトラメチル−5,5′−(1,3−ジスルホナト)トリカルボシアニンからなる群から選択される、請求項1又は請求項2記載の化合物。
【請求項11】
次式の化合物。
【化7】
【請求項12】
次式の化合物。
【化8】
【請求項13】
次式の化合物。
【化9】
【請求項14】
次式の化合物。
【化10】
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれか1項記載の化合物1種以上のヌクレオシド部分を含むデオキシリボ核酸配列。
【請求項16】
核酸の配列を決定する方法であって、
a)配列決定すべき核酸の試料、配列決定すべき核酸の少なくとも一部に相補的なプライマー核酸配列、シークエンシング反応を終了するためのデオキシヌクレオチド及び請求項8記載の1種以上のジデオキシヌクレオチドの供給源、及びポリメラーゼを準備すること、
b)核酸鎖伸長及び連鎖停止反応を実施すること、
c)サイズに応じてオリゴヌクレオチドフラグメントを分離すること
を含んでなる方法。
【請求項17】
核酸の配列を決定する方法であって、
a)配列決定すべき核酸の試料、配列決定すべき核酸の少なくとも一部に相補的なプライマー核酸配列、シークエンシング反応を終了するためのデオキシヌクレオチド及び請求項11乃至請求項14のいずれか1項記載の1種以上のジデオキシヌクレオチドの供給源、及び、ポリメラーゼを準備すること、
b)核酸鎖伸長及び連鎖停止反応を実施すること、
c)サイズに応じてオリゴヌクレオチドフラグメントを分離すること、
を含んでなる方法。
【請求項18】
請求項7記載の1種以上の化合物を含むDNA配列決定用キット。
【請求項19】
DNAポリメラーゼをさらに含む、請求項18記載のキット。
【請求項1】
次式の化合物。
【化1】
式中、
R1はキサンチン色素、ローダミン色素及びシアニン色素からなる群から選択されるアクセプター色素であって、R1はフルオレセインドナー発色団からエネルギーを受け取ることができ、
L1は炭素、酸素、窒素、イオウ及びリン原子から選択される連結した原子2〜50個を含むリンカー鎖であって、
該鎖は正荷電又は負荷電の基1個以上又は−CR=CR−及び−C≡C−からなる群から選択される不飽和基1個以上を適宜含む(Rは水素又はC1−C4アルキル基を表す。)か、或いは
該鎖は正荷電又は負荷電の基1個以上及び−CR=CR−及び−C≡C−からなる群から選択される不飽和基1個以上を適宜含んでおり(Rは水素又はC1−C4アルキル基を表す。)、
R2はH、COOR又はCH2OR、又は炭素、酸素、窒素、イオウ及びリン原子から選択される連結した原子2〜30個を含む鎖L2を表し、
該鎖は正荷電又は負荷電の基1個以上又は−CR=CR−及び−C≡C−からなる群から選択される不飽和基1個以上を適宜含む(Rは上記の通り定義される。)か、或いは
該鎖は正荷電又は負荷電の基1個以上及び−CR=CR−及び−C≡C−からなる群から選択される不飽和基1個以上を適宜含んでおり(Rは上記の通り定義される。)、
Xは以下のものから選択され、
【化2】
Tは生物学的分子である。
【請求項2】
次式の化合物。
【化3】
式中、
R1はキサンチン色素、ローダミン色素及びシアニン色素からなる群から選択されるアクセプター色素であって、R1はフルオレセインドナー発色団からエネルギーを受け取ることができ、
L1は炭素、酸素、窒素、イオウ及びリン原子から選択される連結した原子2〜50個を含むリンカー鎖であって、
該鎖は正荷電又は負荷電の基1個以上又は−CR=CR−及び−C≡C−からなる群から選択される不飽和基1個以上を適宜含む(Rは水素又はC1−C4アルキル基を表す。)か、或いは、
該鎖は正荷電又は負荷電の基1個以上及び−CR=CR−及び−C≡C−からなる群から選択される不飽和基1個以上を適宜含んでおり(Rは水素又はC1−C4アルキル基を表す。)、
YはH、CH2NH2、CH2NHCOR(Rは上記の通り定義される。)、又はCH2OR(Rは上記の通り定義される。)、又は炭素、酸素、窒素、イオウ及びリン原子から選択される連結した原子2〜30個を含む鎖L2を表し、
該鎖は正荷電又は負荷電の基1個以上又は−CR=CR−及び−C≡C−からなる群から選択される不飽和基1個以上を適宜含む(Rは上記の通り定義される。)か、或いは
該鎖は正荷電又は負荷電の基1個以上及び−CR=CR−及び−C≡C−からなる群から選択される不飽和基1個以上を適宜含んでおり(Rは上記の通り定義される。)、
Xは以下のものから選択され、
【化4】
Tは生物学的分子である。
【請求項3】
L1がC2−50アルキル鎖であり、該鎖は−C(O)−、−C(S)−、−NR−、−N+R2−、−O−、−S−、−CR=CR−、−C≡C−、−CO−NR−及び次式の基から選択される基1個以上を適宜含む(Rは請求項1又は請求項2と同様に定義される。)、請求項1又は請求項2記載の化合物。
【化5】
【請求項4】
L2がC2−30アルキル鎖であり、該鎖は−C(O)−、−C(S)−、−NR−、−N+R2−、−O−、−S−、−CR=CR−、−C≡C−、−CO−NR−及び次式の基から選択される基1個以上を適宜含む(Rは請求項1又は請求項2と同様に定義される。)、請求項1又は請求項2記載の化合物。
【化6】
【請求項5】
Tがヌクレオシド、ヌクレオチド、ヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド誘導体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド誘導体、ペプチド、タンパク質及び炭水化物からなる群から選択される、請求項1又は請求項2記載の化合物。
【請求項6】
Tがリボヌクレオチド、2′−又は3′−デオキシリボヌクレオチド及び2,3′−ジデオキシリボヌクレオチドからなる群から選択される、請求項1又は請求項2記載の化合物。
【請求項7】
Tがヌクレオシド−5′−一、二又は三リン酸である、請求項1又は請求項2記載の化合物。
【請求項8】
Tが2′,3′−ジデオキシシチジン−5′−三リン酸、2′,3′−ジデオキシチミジン−5′−三リン酸、2′,3′−ジデオキシウリジン−5′−三リン酸、2′,3′−ジデオキシアデノシン−5′−三リン酸、2′,3′−ジデオキグアノシン−5′−三リン酸及び2′,3′−ジデオキシイノシン−5′−三リン酸、2′,3′−ジデオキシ−7−デアザアデノシン−5′−三リン酸、2′,3′−ジデオキシ−7−デアザグアノシン−5′−三リン酸、2′,3′−ジデオキシ−7−デアザイノシン−5′−三リン酸及びこれらの3′−フルオロ、3′−アジド、3′−アミノ又は3′−チオ誘導体からなる群から選択されるジデオキシヌクレオシド−5′−三リン酸である、請求項1又は請求項2記載の化合物。
【請求項9】
L1が標的分子に対し、該標的分子がピリミジンを含む場合はC−5位に、該標的分子が7−デアザプリンを含む場合はC−7位に結合している、請求項1又は請求項2記載の化合物。
【請求項10】
R1がフルオレセイン、ナフトフルオレセイン、ロドール、5−カルボキシローダミン、6−カルボキシローダミン、5−カルボキシローダミン−6−G、6−カルボキシローダミン−6−G、N,N,N′,N′−テトラメチル−5−カルボキシローダミン、N,N,N′,N′−テトラメチル−6−カルボキシローダミン、5−カルボキシ−X−ローダミン、6−カルボキシ−X−ローダミン、Cy3(3−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′ ,3′−テトラメチル−5,5′−ジスルホナト−カルボシアニン)、Cy3.5(3−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′ ,3′−テトラメチル−4,5,4′,5′−(1,3−ジスルホナト)ジベンゾ−カルボシアニン、Cy5(3−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′ ,3′−テトラメチル−5,5′−ジスルホナト)ジベンゾ−ジカルボシアニン、Cy5.5((3−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′ ,3′−テトラメチル−4,5,4′,5′−(1,3−ジスルホナト)ジベンゾ−ジカルボシアニン及びCy7((3−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′ ,3′−テトラメチル−5,5′−(1,3−ジスルホナト)トリカルボシアニンからなる群から選択される、請求項1又は請求項2記載の化合物。
【請求項11】
次式の化合物。
【化7】
【請求項12】
次式の化合物。
【化8】
【請求項13】
次式の化合物。
【化9】
【請求項14】
次式の化合物。
【化10】
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれか1項記載の化合物1種以上のヌクレオシド部分を含むデオキシリボ核酸配列。
【請求項16】
核酸の配列を決定する方法であって、
a)配列決定すべき核酸の試料、配列決定すべき核酸の少なくとも一部に相補的なプライマー核酸配列、シークエンシング反応を終了するためのデオキシヌクレオチド及び請求項8記載の1種以上のジデオキシヌクレオチドの供給源、及びポリメラーゼを準備すること、
b)核酸鎖伸長及び連鎖停止反応を実施すること、
c)サイズに応じてオリゴヌクレオチドフラグメントを分離すること
を含んでなる方法。
【請求項17】
核酸の配列を決定する方法であって、
a)配列決定すべき核酸の試料、配列決定すべき核酸の少なくとも一部に相補的なプライマー核酸配列、シークエンシング反応を終了するためのデオキシヌクレオチド及び請求項11乃至請求項14のいずれか1項記載の1種以上のジデオキシヌクレオチドの供給源、及び、ポリメラーゼを準備すること、
b)核酸鎖伸長及び連鎖停止反応を実施すること、
c)サイズに応じてオリゴヌクレオチドフラグメントを分離すること、
を含んでなる方法。
【請求項18】
請求項7記載の1種以上の化合物を含むDNA配列決定用キット。
【請求項19】
DNAポリメラーゼをさらに含む、請求項18記載のキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2006−500065(P2006−500065A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−539949(P2004−539949)
【出願日】平成15年9月25日(2003.9.25)
【国際出願番号】PCT/US2003/030360
【国際公開番号】WO2004/029578
【国際公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願人】(598041463)アマシャム・バイオサイエンス・コーポレイション (43)
【氏名又は名称原語表記】Amersham Biosciences Corp
【住所又は居所原語表記】800 Centennial Avenue, P.O.Box 1327,Piscataway,New Jersey 08855−1327,United States of America
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年9月25日(2003.9.25)
【国際出願番号】PCT/US2003/030360
【国際公開番号】WO2004/029578
【国際公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願人】(598041463)アマシャム・バイオサイエンス・コーポレイション (43)
【氏名又は名称原語表記】Amersham Biosciences Corp
【住所又は居所原語表記】800 Centennial Avenue, P.O.Box 1327,Piscataway,New Jersey 08855−1327,United States of America
【Fターム(参考)】
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