説明

エネルギー設備管理システム

【課題】地震の揺れによるエネルギー供給設備の異常や故障を自動的に判断し、通知することが可能なエネルギー設備管理システムの提供する。
【解決手段】 エネルギー設備6,8が消費する消費情報を取得する消費エネルギー情報取得部15が取得したエネルギー消費に関する情報に基づき、エネルギー消費実測値を生成する実測値生成部15と、複数の建造物4のエネルギー消費履歴情報を記憶する履歴情報記憶部17gと、実測値生成部15にて生成されたエネルギー消費実測値に基づき、複数の建造物4毎にエネルギー消費の状況を表示する表示画面を生成する表示画面生成部16と、地震計が地震を検出すると、エネルギー消費実測値とエネルギー消費履歴情報とを比較し、所定時間経過してもエネルギー消費実測値がエネルギー消費履歴情報に戻らないとき、設備破損と判断する設備破損検知部32Aとを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー設備管理システム建造物についての設備特にエネルギーを供給する設備を管理するエネルギー設備管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ビル等の建造物におけるエネルギー供給設備管理業務において、エネルギー使用量と設備の異常の有無の管理は重要である。具体的には、エネルギー使用量の目標と実績の管理、エネルギー使用量の削減、そしてこれらの定期的な報告が必要である。また、定められているエネルギー使用量の削減を達成できなかった場合、罰則が課せられる。
【0003】
エネルギー使用量の管理と共に、設備の異常や故障の管理は重要な業務になっており、なかでも電力、ガスといった土ネルギー供給設備の管理は、ビル内のインフラ設備であるため特に重要な設備であり、その異常や故障の監視を簡単且つ的確に実施することは非常に重要な課題となっている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−298412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、地震が多発する傾向にあり、国や地方公共団体等は建物の居庄者に対して、地震発生の際、電気やガスのスイッチをオフにするよう呼びかけている。これは、建物の倒壊等により火事の発生を防止するためである。
【0006】
地震が建物の居住者の避難を伴わない程度の大きさであった場合は、建物の居住者が地震による揺れの停止を確認し、電気やガスのスイッチをONに戻す操作が行われる。
【0007】
しかし、地震の揺れにより、エネルギー供給設備に損傷が生じている可能性も否めない中で、建物の居住者自身によりその状況を的確に把握し異常の有無を判断することは、配管等目に見えない部分があることなどから困難である。
【0008】
本発明の目的は、地震の揺れによるエネルギー供給設備の破損を的確に判断するとともに、迅速に通知することが可能なエネルギー設備管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、複数の建造物において消費される電気及びガスのエネルギー設備の異常発生を検出する異常検知部と、建物内に設けられる地震計と、前記異常検知部及び前記地震計の出力信号を通信回線を介して遠隔的に管理するとともに、前記エネルギー設備で使用したエネルギー消費量を管理する監視センターとを備えたエネルギー設備管理システムにおいて、前記エネルギー設備が消費する消費情報を取得する消費エネルギー情報取得部と、この消費エネルギー情報取得部が取得したエネルギー消費に関する情報に基づき、エネルギー消費実測値を生成する実測値生成部と、前記複数の建造物におけるエネルギー消費履歴情報を記憶する履歴情報記憶部と、前記実測値生成部にて生成されたエネルギー消費実測値に基づき、前記複数の建造物毎にエネルギー消費の状況を表示する表示画面を生成する表示画面生成部と、前記地震計が地震を検出した場合前記エネルギー消費実測値と前記エネルギー消費履歴情報とを比較し、所定時間経過しても前記エネルギー消費実測値が前記エネルギー消費履歴情報に戻らないとき、設備破損と判断する設備破損検知部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、地震発生から所定時間経過しても通常のエネルギー使用量に戻らないとき、エネルギー供給設備破損と判断するので、異常に対する復旧作業に迅速に取り掛かることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るエネルギー設備管理システムを示す構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る動作フローテャートである。
【図3】本発明の実施形態に係るタイムシーケンスである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るエネルギー管理システムの一実施形態を図に基づいて説明する。
【0013】
図1は本発明の一実施形態に係るエネルギー管理システムを示すシステム構成図で、図2は設備の異常を判別する動作のフローチャートで、図3は異常を判別する際のタイムシーケンスである。図1において、本実施形態に係るエネルギー管理システムは、複数の顧客ビル4における、エネルギーを管理するシステムであり、電力積算管理センター1が一般回線2若しくはインターネット3を介して顧客ビル4に含まれるパルス積算装置5、情報処理端末7、異常検知部32といった機器と接続され、設備異常の発報を受付ける監視センター51が一般回線2を介して顧客ビル4に含まれる異常検知部32と接続されている。ここで、異常検知部32には後述する設備破損検知部32Aを有している。
【0014】
このような構成において、電力積算管理センター1は、一般回線2を介して各顧客ビル4から取得したエネルギー消費に関するデータを解析し、その解析結果を、インターネット3を介して顧客ビル4に送信する。
【0015】
また、各顧客ビル4には、電力計6やガス計8等の消費エネルギー計測機が複数設けられており、夫々の計測結果がパルス信号としてパルス積算装置5に入力され、このパルス積算装置5は、各消費エネルギー計測機から入力されたパルス信号を積算することでパルスデータを生成し、このように生成されたパルスデータが電力積算管理センター1で取得される。
【0016】
また、各顧客ビル4には、情報処理及び表示用の情報処理端末7が設けられ、情報処理端末7は、一般的なPC(Personal Computer)等によって構成され、電力積算管理センター1からインターネット3を介して送信された解析結果を表示する。ここで、本実施形態においては、各顧客ビル4に情報処理端末7が設けられている場合を例としているが、他の建物内に設置されたPC等を情報処理端末7として用いることも可能である。
【0017】
次に、電力積算管理センター1は、制御装置部11、通信インターフェース12、収集装置13、スケジュール管理装置14、演算装置15、画面作成装置16及び記憶装置17とを含んでいる。
【0018】
また、制御装置部11は電力積算管理センター1における全体の動作を制御し、通信インターフェース12は、一般回線2及びインターネット3を介して外部の機器と通信を行なうとともに、一般回線2を介して各顧客ビル4に設けられているパルス積算装置5と接続され、複数の電力計6やガス計8と接続されているパルス積算装置5を介して、各顧客ビル4における電力計6やガス計8の計数値である消費電力量を取得する。
【0019】
また、収集装置13は各顧客ビル4におけるエネルギー計測値を収集し、スケジュール管理装置14は収集装置13によるエネルギー計測値の収集タイミングを管理し、演算装置15は収集されたエネルギー計測値である例えば、C0排出量等のエネルギー量に変換し、画面作成装置16は電力槙草管理センター1による処理の結果、顧客に通知される情報を表示するための画面を生成し、画面作成装置16は比較表作成部16a、グラフ作成部16b、コメント作成部16cを有し、情報処理端末7に表示させる両面を生成する表示画面生成部として機能するものである。
【0020】
また、比較表作成部16aは、演算装置15によって変換されたエネルギー量を、顧客ビル4毎に比較して並べ替え等を行い、各顧客ビル4のエネルギー量を一覧可能な比較表を作成する。
【0021】
また、グラフ作成部16bは例えば、顧客ビル4毎に延床面積に対するエネルギー量の分布をグラフ化したエネルギー分布グラフを作成し、コメント作成部16cは各顧客ビル4のうち対象としたビルに対して、省エネ施策の有無及び有る場合のその内容を記憶装置17から取得して表示させ、記憶装置17は収集されたパルスデータ、変換によって生成された消費エネルギー量、各顧客ビル毎の省エネ施策の実施内容等の情報を記憶している。
【0022】
また、記憶装置17は、ワークエリア17a、パルスデータ格納部17b、変換データ格納部17c、スペックデータ格納部17d、モデルビルデータ格納部17e、シナリオ格納部17f及び履歴データ格納部17gを有し、パルスデータ格納部17bはパルス積算部5から取得されたパルスデータを記憶し、変換データ格納部17cは演算装置15がパルスデータをエネルギー量に変換した変換後のデータを記憶し、スベックデュタ格納部17dは演算装置15がパルスデータを各種のエネルギー量に変換する際の係数や計算式等のデータを記憶し、モデルビルデータ格納部17eは省エネ努力対象ビルを抽出するため、比較対象とするモデルビルのデータを記憶し、シナリオ格納部17fはエネルギー消費の効率が悪いビルに対して情報処理端末7に表示される解析結果の表示画面において表示するヒコメントのフォーマット情報を記憶し、履歴データ格納部17gは顧客ビル4夫々における省エネ施策の実施状況の情報を履歴情報として記憶している履歴情報記憶部である。ここで、省エネ施策の実施状況の情報は、例えば、省エネ施策の実施の有無及び実施がある場合の実施の内容である。
【0023】
このように、情報処理端末7に表示される解析結果の表示画面において、夫々の顧客ビル4における省エネ効率が悪い場合、その顧客ビルが省エネ施策を実施済みであるか否かを表示させることができるため、ユーザは、優先的に省エネ施策を実施すべき顧客ビルを容易に判断することが可能となる。
【0024】
次に、図2のフローチャートと図3のタイムシーケンスを用いて地震により設備が損傷した場合の動作について説明する。
【0025】
地震が発生し、最初は小さい揺れであったものが図3に示す151の時点で大きな揺れになった場合、火災防止のため、建物の居住者は熱器具やガスコンロなどの火器のスイッチを、図3に示す153の時点でOFFする。ここで、153の時点は151の時点より居住者が火災防止を意識し火器のところへ駆けつける時間だけ遅れたタイミングとなる。
【0026】
また、図3に示す153の時点で揺れが収まった後、避難するぼどの大きな揺れで無かった場合は、図3に示す154の時点で建物内の建物の居住者は元の行為を継続するため熱器具や火器のスイッチを再びONにし、マイコンガスメータにより自動的にガスの供給が遮断された場合、これを解除することで、エネルギーの消費量は地震前の消費量に戻ることになる。
【0027】
また、電気配線の断線やガス管の損傷といったエネルギー供給設備に異常が発生していた場合、建物の居住者がスイッチをONに戻しても、エネルギーの供給が不可能となり、消費量は、地震前のレベルには戻らず、図3に示す154の時点でエネルギーの消費量が地震前の消費量に戻らない場合、エネルギー供給設備に異常が発生したと判断することができる。
【0028】
ただし、地震の揺れが大きかった場合、揺れが収まった後であっても、建物の居住者がスイッチをONに戻さない場合が想定され、地震計からの入力値により、閾値より大きい揺れの場合、異常か否かの判断を行わなければ誤検出を回避できる。
【0029】
次に、設備破損検知部32Aの動作であるエネルギー供給設備異常の判断の流れを、図2に基づいて説明する。
【0030】
ステップS101で周期的にエネルギー消費量を収集する。収集した後、ステップS102で図1の消費量履歴記憶部33に格納されている前回の収集値と比較する。比較の結果、ステップS103で変化量が小さい場合は、何も起こっていないのでステップS108で処理を終了する。変化量が大きい場合は、ステップS104で地震計31からの入力をチェックし、地震が無い場合は、起こるべくして起こったエネルギー消費量の変化として、ステップS108で処理を終了する。地震があった場合は、揺れている最中も含めるが、ステップS105で一定時間待ちの状態をとる。一定時間後、ステップS106でエネルギー消費量の水準を地震前の消費量と比較し、地震前の水準に戻っている場合は、エネルギー供給設備に異常なしとしてステップS108で処理を終了する。地震前の水準に戻らない場合、設備破損検知部32Aはエネルギー供給設備に異常ありとして、ステップS107で監視センターへ一般回線を通じて、設備損傷異常発報を行う。
【0031】
本実施形態によれば、地震発生前後の電気やガスの消費量を比較することで、電気やガス設備が地震によって破損したことが容易に判断できる。
【0032】
顧客建物側で異常の判断を行う動作にて記述したが、これを電力積算管理センター1にて行うことも可能である。図1の異常検知部32及び設備破損検知部32Aを電力積算管理センター1内に設置し、一般回線2、通信インターフェース12を介して収集装置13が収集したエネルギー消費量を、履歴データ格納部17gに格納されている前回値と比較することにより異常の検知が可能で、電力積算管理センター1から監視センター51へ設備損傷異常発報させることができる。
【0033】
また、監視センター51への発報ではなく、画面作成装置16が異常検知情報を取り込み、画面に異常発生を表示させることも可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 電力積算管理センター
2 一般回線
3 インターネット
4 顧客ビル
5 パルス積算装置
6 電力計
7 情報処理端末
8 ガス計
11 制御装置
12 通信インターフェース
13 収集装置
14 スケジュール管理装置
15 演算装置
16 画面作成装置
16a 比較表作成部
16b グラブ作成部
16c コメント作成部
17 記憶装置
17a ワークエリア
17b パルスデータ格納部
17c 変換データ格納部
17d スペックデータ格納部
17e モデルビルデータ格納部
17f シナリオ格納部
17g 履歴データ格納部
31 地震計
32 異常検知部
32A 設備破損検知部
33 消費履歴格納部
51 監視センター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の建造物においで消費される電気及びガスのエネルギー設備の異常発生を検出する異常検知部と、建物内に設けられる地震計と、前記異常検知部及び前記地震計の出力信号を通信回線を介して遠隔的に管理するとともに、前記エネルギー設備で使用したエネルギー消費量を管理する監視センターとを備えたエネルギー設備管理システムにおいて、
前記エネルギー設備が消費する消費情報を取得する消費エネルギー情報取得部と、
この消費エネルギー情報取得部が取得したエネルギー消費に関する情報に基づき、エネルギー消費実測値を生成する実測値生成部と、
前記複数の建造物におけるエネルギー消費履歴情報を記憶する履歴情報記憶部と、
前記実測値生成部にて生成されたエネルギー消費実測値に基づき、前記複数の建造物毎にエネルギー消費の状況を表示する表示画面を生成する表示画面生成部と、
前記地震計が地震を検出すると、前記エネルギー消費実測値と前記エネルギー消費履歴情報とを比較し、所定時間経過しても前記エネルギー消費実測値が前記エネルギー消費履歴情報に戻らないとき、設備破損と判断する設備破損検知部と、
を備えたことを特徴とするエネルギー設備管理システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−100993(P2013−100993A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243421(P2011−243421)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】