説明

エフィラ生産装置およびエフィラ生産方法

【課題】クラゲの幼生であるエフィラを年中安定して生産できるようにする。
【解決手段】水槽内にポリプ着生基盤16を設置してポリプを培養する水槽であって、水槽内の海水温度をポリプの培養に適した温度に維持するポリプ培養モードと、水槽内の海水温度をポリプがストロビレーションを起こす温度まで冷却するストロビレーションモードとを切り替えることができる水温制御手段26を有するポリプ培養水槽100を用い、ポリプ培養モードでポリプを培養し、エフィラの販売需要に応じてストロビレーションモードに切り替え、エフィラが遊離したらエフィラを回収し、ポリプ培養モードに戻してポリプの培養を継続させる。ポリプ培養水槽を複数備え、順次ローテーションしてストロビレーションモードに切り替えるようにすることで、エフィラを年中連続的に生産できる。また、エフィラ回収路40を設けることで、生産されたエフィラを容易に回収できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クラゲの幼生であるエフィラを生産する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クラゲは、透明な円盤状の傘を有し、海水中をホバーリングして遊泳したり、口腕を拡げて漂ったりする姿が愛らしく、その姿を見ているとヒーリング効果があると言われている。そのため、近年、一般家庭、店舗、病院、公共施設等において、クラゲを癒し系ペットとして飼育することがブームになりつつある。
【0003】
このように、クラゲを一般家庭、店舗、病院、公共施設等において観賞用として飼育するためには、クラゲの大きさに見合った水槽を準備し、水槽内の海水温を一定の範囲に保ち、水質の管理を厳格に行う必要がある。また、クラゲの遊泳が見られるようにするためには水槽内に適正な水流を作る必要があり、水流が適正でないと水槽の壁や底面に擦れて損傷したり、エアレーションによる気泡がクラゲの傘内に入ったりすることで死亡するなど、水生生物の飼育の専門家でない人がクラゲを飼育することは容易なことではない。
【0004】
このような問題を解決するため、例えば特許文献1や特許文献2では、クラゲの飼育に適した水流を生成する水槽が提案されており、このようなアイデアを生かしたクラゲ飼育セットが市販されている。
しかしながら、クラゲを適切に飼育する環境を整備するためには相当の投資を必要とし、またこのような投資を行ったとしてもクラゲを長期間安定して飼育することは難しいとされており、水生生物の飼育経験のない人では、クラゲの飼育に挫折して投資効果が得られないという問題があった。
【0005】
このため、本願の発明者は、大きな初期投資を必要とするクラゲ自体を飼育するのではなく、クラゲの幼生であって、海水を詰めたガラス瓶等の中で2週間くらい生き、遊泳する姿はクラゲと同等以上に愛らしい、エフィラを一般家庭、店舗、病院、公共施設等での観賞用として販売することを発案した。
【0006】
エフィラとは、ミズクラゲやタコクラゲなどの鉢クラゲ鋼のクラゲの幼生であるが、エフィラがどのようにして誕生するかについて、ミズクラゲを例にとって説明する。
図6に示すように、成熟した雌のクラゲが受精すると、その受精卵から「プラヌラ」呼ばれる幼生が生まれる。このプラヌラ幼生は、やがて岩などの基盤上に着生し、イソギンチャクのような触手を有する「ポリプ」に変態する。このポリプは、成長すると分裂または出芽によって増殖し、無性生殖によりコロニーを形成する。各ポリプは、海水温が下がると、徐々に身体に環状のくびれ(環溝)を生じ、各環溝について5枚ないし8枚の縁弁が形成される横分体形成(ストロビレーション)を起こし、「ストロビラ」となる。
エフィラは、このようなストロビレーションにより形成されたストロビラの各節が分離して海中に泳ぎだしたものであり、直径3mm程度の花のような形をした愛らしい形状をしており、腕状の縁弁を動かして遊泳するさまはクラゲにも劣らないヒーリング効果が生ずると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−318269号公報
【特許文献2】特開2001−000071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のようにして産出されたクラゲの幼生であるエフィラは、2週間程度であればビンのなかで飼うことができ、ビンのなかで遊泳している姿をみることでヒーリング効果が期待できることから、一般家庭、店舗、病院、公共施設等における観賞用としての需要は大きいものと考えられる。
しかしながら、エフィラは、自然界では冬期でないと採取することは困難であり、年中自由に購入できるようにすることは困難である。
【0009】
本願発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、需要者からの要求に応じて年中安定してエフィラを生産できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明にかかるエフィラ生産装置は、水槽内の海水中にポリプが着生した基盤を設置してポリプを培養する水槽であって、水槽内の海水温度をポリプの培養に適した温度に維持するポリプ培養モードと、水槽内の海水温度をポリプがストロビレーションを起こす温度まで冷却するストロビレーションモードとを切り替えることができる水温制御手段を有するポリプ培養水槽を備えたものである。
【0011】
この発明によれば、ポリプ培養水槽において、ポリプ培養モードに設定してポリプの培養を行い、エフィラの販売需要に応じて、ストロビレーションモードに切り替えて同一の水槽内でポリプにストロビレーションを起こさせ、エフィラが遊離したら、ポリプ培養モードに戻してポリプの培養を継続させることで、エフィラが遊離したポリプを再度成長させて継続してエフィラを生産させることができ、エフィラを年中安定して生産できる。
【0012】
また、この発明にかかるエフィラ生産装置は、水槽内の海水中にポリプが着生した基盤を設置してポリプを培養する水槽であって、水槽内の海水温度をポリプの培養に適した温度に維持するポリプ培養モードと、水槽内の海水温度をポリプがストロビレーションを起こす温度まで冷却するストロビレーションモードとを切り替えることができる水温制御手段を有するポリプ培養水槽を複数備え、前記複数のポリプ培養水槽において、前記水温制御手段を前記ポリプ培養モードに設定してポリプの培養を行い、エフィラの販売需要に応じて、前記複数のポリプ培養水槽から選択されたいずれかのポリプ培養水槽について、前記水温制御手段を前記ストロビレーションモードに切り替えて当該水槽内でポリプにストロビレーションを起こさせ、エフィラが遊離したら、前記水温制御手段を前記ポリプ培養モードに戻してポリプの培養を継続させることを、前記複数のポリプ培養水槽について順次ローテーションして行われるように制御するエフィラ生産制御手段を備えたものでもよい。
【0013】
この発明によれば、エフィラ生産制御手段により、複数のポリプ培養水槽を用いてポリプを培養し、選択されたいずれかのポリプ培養水槽について、ストロビレーションモードに切り替えてストロビレーションを起こさせ、エフィラが遊離したら、ポリプ培養モードに戻すことを、順次ローテーションして行われるように制御されるので、ストロビレーションを起こさせてエフィラを生産したポリプ培養水槽について次にストロビレーションを起こさせてエフィラを生産できるようになるまでポリプの成長を待つことなく、複数のポリプ培養水槽について順次ストロビレーションを起こさせることができ、エフィラを年中安定して連続的に生産できる。
また、ポリプ培養水槽のローテーションを規則的に行うことで、各ポリプ培養水槽内のポリプの数が平均化されるので、ストロビレーションにより生産されるエフィラの数量が概ね均一化され、安定した生産量を確保することができる。
【0014】
前記ポリプ培養水槽は、水槽内のエフィラを回収するためのエフィラ回収路と、前記エフィラ回収路に水槽内のエフィラを誘導するためのエフィラ誘導照明手段と、前記エフィラ回収路に誘導されたエフィラを取り出すエフィラ取出口とを備えたものでもよい。
【0015】
この発明によれば、エフィラ誘導照明手段によりポリプ培養水槽内のエフィラをエフィラ回収路に誘導することができるので、ストロビレーションにより遊離したエフィラをエフィラ取出口から容易に回収できる。
【0016】
前記ポリプ培養水槽は、前記エフィラ回収路と水槽との間を遮断するためのエフィラ回収路遮蔽手段と、前記エフィラ回収路に進入するエフィラの数を計数するエフィラ計数手段と、前記エフィラ計数手段により所定量のエフィラが計数されたときに前記エフィラ回収路遮断手段により前記エフィラ回収路を遮断するように制御するエフィラ回収制御手段を更に備えたものでもよい。
【0017】
この発明によれば、エフィラ計数手段によりエフィラ回収路に所定量のエフィラが進入したことを検出したときに、エフィラ回収制御手段によりエフィラ回収路を水槽と遮断するように制御されるので、ストロビレーションにより遊離したエフィラを、販売する数量に合わせてエフィラ取出口から容易に回収できる。
尚、エフィラ計数手段は、エフィラ回収路の入口に超音波センサを設け、エフィラの通過による超音波の反射量の変化を検出することで進入するエフィラを計数するようにしてもよく、エフィラ回収路の入口に光の透過量を検出するセンサを設け、エフィラの通過による光の透過量の変化を検出することで進入するエフィラを計数するようにしてもよい。
【0018】
この発明にかかるエフィラ生産装置は、水槽内の海水中にポリプが着生した基盤を設置してポリプを培養する水槽であって、水槽内の海水温度をポリプの培養に適した温度に維持する第1の水温制御手段を有するポリプ培養水槽と、水槽内の海水中にポリプが着生した基盤を設置してポリプにストロビレーションを起こさせる水槽であって、水槽内の海水温度をポリプの培養に適した温度に設定するポリプ培養温度モードと、ポリプにストロビレーションを起こさせる温度に冷却するストロビレーション温度モードとを切り替えることができる第2の水温制御手段を有するストロビレーション制御水槽を備えたものでもよい。
【0019】
この発明によれば、ポリプ培養水槽から培養されたポリプが着生した基盤をストロビレーション制御水槽に移設し、ストロビレーション制御水槽において、ポリプ培養温度モードからストロビレーション温度モードに切り替えてポリプにストロビレーションを起こさせ、エフィラが遊離したら、ポリプ培養温度に戻し、移設した基盤をポリプ培養水槽に戻すことで、エフィラが遊離したポリプを再度成長させて継続してエフィラを生産させることができ、エフィラを年中安定して生産できる。
【0020】
また、この発明にかかるエフィラ生産装置は、水槽内の海水中にポリプが着生した基盤を設置してポリプを培養する水槽であって、水槽内の海水温度をポリプの培養に適した温度に維持する第1の水温制御手段を有する複数のポリプ培養水槽と、水槽内の海水中にポリプが着生した基盤を設置してポリプにストロビレーションを起こさせる水槽であって、水槽内の海水温度をポリプの培養に適した温度に設定するポリプ培養温度モードと、水槽内の海水温度をポリプにストロビレーションを起こさせる温度に冷却するストロビレーション温度モードとを切り替えることができる第2の水温制御手段を有するストロビレーション制御水槽を備え、エフィラの販売需要に応じて、前記複数のポリプ培養水槽から選択されたいずれかのポリプ培養水槽から、培養されたポリプが着生した前記基盤を前記ストロビレーション制御水槽に移設し、前記ストロビレーション制御水槽において、前記第2の水温制御手段を前記ポリプ培養温度モードから前記ストロビレーション温度モードに切り替えてポリプにストロビレーションを起こさせ、エフィラが分離したら、前記第2の水温制御手段を前記ポリプ培養温度モードに戻し、前記移設した基盤を元のポリプ培養水槽に戻すことを、前記複数のポリプ培養水槽について順次ローテーションして行われるように制御するエフィラ生産制御手段を備えたものでもよい。
【0021】
この発明によれば、エフィラ生産制御手段により、複数のポリプ培養水槽を用いてポリプを培養し、選択されたいずれかのポリプ培養水槽から培養されたポリプが着生した基盤をストロビレーション制御水槽に移設し、ストロビレーション制御水槽において、ポリプ培養温度モードからストロビレーション温度モードに切り替えてポリプにストロビレーションを起こさせ、エフィラが分離したら、ポリプ培養温度モードに戻し、移設した基盤を元のポリプ培養水槽に戻すことを、複数のポリプ培養水槽について順次ローテーションして行われるように制御されるので、ストロビレーションを起こさせてエフィラを生産した基盤について次にストロビレーションを起こさせてエフィラを生産できるようになるまでポリプの成長を待つことなく、複数のポリプ培養水槽から順次基盤を移設してストロビレーションを起こさせることができ、エフィラを年中安定して連続的に生産できる。
また、ポリプ培養水槽のローテーションを規則的に行うことで、各ポリプ培養水槽内のポリプの数が平均化されるので、ストロビレーションにより生産されるエフィラの数量が概ね均一化され、安定した生産量を確保することができる。
【0022】
前記ストロビレーション水槽は、水槽内のエフィラを回収するためのエフィラ回収路と、前記エフィラ回収路に水槽内のエフィラを誘導するためのエフィラ誘導照明手段と、前記エフィラ回収路に誘導されたエフィラを取り出すエフィラ取出口とを更に備えたものでもよい。
【0023】
この発明によれば、エフィラ誘導照明手段によりストロビレーション制御水槽内のエフィラをエフィラ回収路に誘導することができるので、ストロビレーションにより遊離したエフィラをエフィラ取出口から容易に回収できる。
【0024】
前記ストロビレーション水槽は、前記エフィラ回収路と水槽との間を遮断するためのエフィラ回収路遮蔽手段と、前記エフィラ回収路に進入するエフィラの数を計数するエフィラ計数手段と、前記エフィラ計数手段により所定量のエフィラが計数されたときに前記エフィラ回収路遮断手段により前記エフィラ回収路を遮断するように制御するエフィラ回収制御手段を更に備えたものでもよい。
【0025】
この発明によれば、エフィラ計数手段によりエフィラ回収路に所定量のエフィラが進入したことを検出したときに、エフィラ回収制御手段によりエフィラ回収路を水槽と遮断するように制御されるので、ストロビレーションにより遊離したエフィラを、販売する数量に合わせてエフィラ取出口から容易に回収できる。
【0026】
前記ポリプ培養水槽は、ポリプに与えるエサを前記基盤に着生したポリプの近傍に誘導するためのエサ誘導照明手段を前記基盤の近傍に備えたものでもよい。
【0027】
この発明によれば、エサを光で誘導するエサ誘導照明手段をポリプが着床した基盤の近傍に備えるので、ポリプに対してエサを与えるときに、当該エサ誘導照明手段を点灯することで基盤に着生したポリプの近傍にエサが誘導され、各ポリプに対してピペット等を用いて直接エサを与えることをしなくても培養するポリプに的確に給餌できる。
エサ誘導照明手段は、基盤を透明部材で形成して基盤の裏面側に面光源を設けるようにしてもよく、基盤の表面側に点光源を配列するようにしてもよい。
【0028】
この発明にかかるエフィラ生産方法は、水槽内の海水中にポリプが着生した基盤を設置してポリプを培養する水槽であって、水槽内の海水温度をポリプの培養に適した温度に維持するポリプ培養モードと、水槽内の海水温度をポリプがストロビレーションを起こす温度まで冷却するストロビレーションモードとを切り替えることができる水温制御手段を有するポリプ培養水槽を用いてエフィラを生産する方法であって、
前記水温制御手段を前記ポリプ培養モードに設定して前記ポリプ培養水槽内でポリプの培養を行い、エフィラの販売需要に応じて、前記水温制御手段を前記ストロビレーションモードに切り替えて同一の水槽内でポリプにストロビレーションを起こさせ、エフィラが遊離したら、前記水温制御手段を前記ポリプ培養モードに戻してポリプの培養を継続するようにしたものである。
【0029】
この発明によれば、ポリプ培養水槽において、ポリプ培養モードに設定してポリプの培養を行い、エフィラの販売需要に応じて、ストロビレーションモードに切り替えて同一の水槽内でポリプにストロビレーションを起こさせ、エフィラが遊離したら、前ポリプ培養モードに戻してポリプの培養を継続させるので、エフィラが遊離したポリプを再度成長させて継続してエフィラを生産させることができ、エフィラを年中安定して生産できる。
【0030】
また、この発明にかかるエフィラ生産方法は、水槽内の海水中にポリプが着生した基盤を設置してポリプを培養する水槽であって、水槽内の海水温度をポリプの培養に適した温度に維持するポリプ培養モードと、水槽内の海水温度をポリプがストロビレーションを起こす温度まで冷却するストロビレーションモードとを切り替えることができる水温制御手段を有する複数のポリプ培養水槽を用いてエフィラを生産する方法であって、
前記複数のポリプ培養水槽において、前記水温制御手段を前記ポリプ培養モードに設定して前記ポリプ培養水槽内でポリプの培養を行い、エフィラの販売需要に応じて、前記複数のポリプ培養水槽から選択されたいずれかのポリプ培養水槽について、前記水温制御手段を前記ストロビレーションモードに切り替えて当該水槽内でポリプにストロビレーションを起こさせ、エフィラが遊離したら、前記水温制御手段を前記ポリプ培養モードに戻してポリプの培養を継続させることを、前記複数のポリプ培養水槽について順次ローテーションして行うようにしたものでもよい。
【0031】
この発明によれば、複数のポリプ培養水槽を用いてポリプを培養し、選択されたいずれかのポリプ培養水槽について、ストロビレーションモードに切り替えてストロビレーションを起こさせ、エフィラが遊離したら、ポリプ培養モードに戻すことを、順次ローテーションして行うので、ストロビレーションを起こさせてエフィラを生産したポリプ培養水槽について次にストロビレーションを起こさせてエフィラを生産できるようになるまでポリプの成長を待つことなく、複数のポリプ培養水槽について順次ストロビレーションを起こさせることができ、エフィラを年中安定して連続的に生産できる。
また、ポリプ培養水槽のローテーションを規則的に行うことで、各ポリプ培養水槽内のポリプの数が平均化されるので、ストロビレーションにより生産されるエフィラの数量が概ね均一化され、安定した生産量を確保することができる。
【0032】
この発明にかかるエフィラ生産方法は、水槽内の海水中にポリプが着生した基盤を設置してポリプを培養する水槽であって、水槽内の海水温度をポリプの培養に適した温度に維持する第1の水温制御手段を有するポリプ培養水槽と、水槽内の海水中にポリプが着生した基盤を設置してポリプにストロビレーションを起こさせる水槽であって、水槽内の海水温度をポリプの培養に適した温度に設定するポリプ培養温度モードと、ポリプにストロビレーションを起こさせる温度に冷却するストロビレーション温度モードとを切り替えることができる第2の水温制御手段を有するストロビレーション制御水槽を用いてエフィラを生産する方法であって、
エフィラの販売需要に応じて、前記ポリプ培養水槽から、培養されたポリプが着生した前記基盤を前記ストロビレーション制御水槽に移設し、前記ストロビレーション制御水槽において、前記第2の水温制御手段を前記ポリプ培養温度モードから前記ストロビレーション温度モードに切り替えてポリプにストロビレーションを起こさせ、エフィラが遊離したら、前記第2の水温制御手段を前記ポリプ培養温度モードに戻し、前記移設した基盤を前記ポリプ培養水槽に戻すようにしたものでもよい。
【0033】
この発明によれば、ポリプ培養水槽から、培養されたポリプが着生した基盤をストロビレーション制御水槽に移設し、ストロビレーション制御水槽において、ポリプ培養温度モードからストロビレーション温度モードに切り替えてポリプにストロビレーションを起こさせ、エフィラが遊離したら、ポリプ培養温度に戻し、移設した基盤をポリプ培養水槽に戻すので、エフィラが遊離したポリプを再度成長させて継続してエフィラを生産させることができ、エフィラを年中安定して生産できる。
【0034】
また、この発明にかかるエフィラ生産方法は、水槽内の海水中にポリプが着生した基盤を設置してポリプを培養する水槽であって、水槽内の海水温度をポリプの培養に適した温度に維持する第1の水温制御手段を有する複数のポリプ培養水槽と、水槽内の海水中にポリプが着生した基盤を設置してポリプにストロビレーションを起こさせる水槽であって、水槽内の海水温度をポリプの培養に適した温度に設定するポリプ培養温度モードと、水槽内の海水温度をポリプにストロビレーションを起こさせる温度に冷却するストロビレーション温度モードとを切り替えることができる第2の水温制御手段を有するストロビレーション制御水槽を用いてエフィラを生産する方法であって、
エフィラの販売需要に応じて、前記複数のポリプ培養水槽から選択されたいずれかのポリプ培養水槽から、培養されたポリプが着生した前記基盤を前記ストロビレーション制御水槽に移設し、前記ストロビレーション制御水槽において、前記第2の水温制御手段を前記ポリプ培養温度モードから前記ストロビレーション温度モードに切り替えてポリプにストロビレーションを起こさせ、エフィラが分離したら、前記第2の水温制御手段を前記ポリプ培養温度モードに戻し、前記移設した基盤を元のポリプ培養水槽に戻すことを、前記複数のポリプ培養水槽について順次ローテーションして行うようにしたものでもよい。
【0035】
この発明によれば、複数のポリプ培養水槽を用いてポリプを培養し、選択されたいずれかのポリプ培養水槽から、培養されたポリプが着生した基盤をストロビレーション制御水槽に移設し、ストロビレーション制御水槽において、ポリプ培養温度モードからストロビレーション温度モードに切り替えてポリプにストロビレーションを起こさせ、エフィラが分離したら、ポリプ培養温度モードに戻し、移設した基盤を元のポリプ培養水槽に戻すことを、複数のポリプ培養水槽について順次ローテーションして行うので、ストロビレーションを起こさせてエフィラを生産した基盤について次にストロビレーションを起こさせてエフィラを生産できるようになるまでポリプの成長を待つことなく、複数のポリプ培養水槽から順次基盤を移設してストロビレーションを起こさせることができ、エフィラを年中安定して連続的に生産できる。
また、ポリプ培養水槽のローテーションを規則的に行うことで、各ポリプ培養水槽内のポリプの数が平均化されるので、ストロビレーションにより生産されるエフィラの数量が概ね均一化され、安定した生産量を確保することができる。
【発明の効果】
【0036】
以上のように、本願発明によれば、エフィラを年中安定して生産することができるという効果がある。
【0037】
本願発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための最良の形態の説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本願発明の第1実施形態にかかるエフィラ生産装置の概略構成図である。
【図2】本願発明の第2実施形態にかかるエフィラ生産装置の概略構成図である。
【図3】本願発明の第3実施形態にかかるエフィラ生産装置の概略構成図である。
【図4】本願発明の第4実施形態にかかるエフィラ生産装置の概略構成図である。
【図5】本願発明のエフィラ生産装置により生産したエフィラを販売する際の販売セッ トの一例を示すイメージ図である。
【図6】ミズクラゲのライフサイクルを示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
図1に、本願発明の第1実施形態にかかるエフィラ生産装置の概略構成図を示す。本実施形態のエフィラ生産装置は、ポリプを培養し、ストロビレーションを起こさせてエフィラを生産するストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽100と、ストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽100に対してエフィラ生産のための指令を与えるエフィラ生産制御盤110を備える。
【0040】
ストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽100は、ポリプを培養するための水槽10を備え、培養したポリプを着生させるポリプ着生基盤16を水槽内に設置して使用する。
水槽10は、例えば80cm×40cm程度のアクリル等の樹脂製またはガラス製の透明な水槽を使用する。
また、ポリプ着生基盤16は、水槽内に設置するものであり、例えばポリエチレン等の樹脂製またはガラス製の透明なシャーレ等を使用する。
【0041】
ストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽100は、水槽内の海水温度を調節するため、水槽内の海水を加温するヒータ20、水槽内の海水を冷却する冷却器22、水槽内の海水の温度を計測する水温センサ24、水温センサ24により計測された水温に基づいてヒータ20と冷却器22を制御して水槽内の海水温度を所定温度に制御する水温制御装置26を備える。
【0042】
水温制御装置26は、水槽内でポリプを培養するために水槽内の海水温度をポリプの培養に適した温度を維持するポリプ培養モードと、水槽内の海水温度をポリプにストロビレーションを起こさせるために冷却するストロビレーションモードとを有し、エフィラ生産制御盤110からの指令に基づき、ポリプ培養モードが指定されたら水槽内の海水温度を25℃の近傍に維持し、ストロビレーションモードが指定されたら水槽内の海水温度を15℃以下に冷却する。
【0043】
また、ストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽100は、水槽内の海水を吸水する吸水ポンプ30、吸水された海水を濾過する濾過器32、濾過器32と冷却器22を経由した海水を水槽内に戻す排出パイプ34を備え、水槽内の海水を浄化する。
また、水槽内の海水をエアレーションするためのエアーストーン36を備え、水槽内の海水に酸素を補給するとともに、水槽内に適度な水流を形成する。
【0044】
また、この実施形態のストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽100は、ストロビレーションにより産出されたエフィラを回収するエフィラ回収機構を備えている。
エフィラ回収機構は、水槽内からエフィラを回収するためのエフィラ回収路40、水槽内のエフィラを光によってエフィラ回収路40に誘導するためのエフィラ誘導照明42、エフィラがエフィラ回収路40に回収されたらエフィラ回収路と水槽を遮断するエフィラ回収路遮断機構44、エフィラ回収路40に回収されたエフィラを取り出すためのエフィラ取出口46、エフィラ回収路40に進入するエフィラを計数する通過エフィラ計数センサ47、エフィラ回収路40に所定量のエフィラを自動回収するための制御を行うエフィラ回収制御装置48を備える。
【0045】
エフィラ回収路40は、終端部が透明部材で形成され、そこにエフィラ誘導照明42が設置されている。このエフィラ誘導照明は、エフィラが光に向かって泳ぐ性質(走光性)を有することを利用して水槽内のエフィラをエフィラ回収路に誘導するものである。このため、ストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽100は、暗室内に設置するかまたは水槽の周囲を遮光幕で覆うことで水槽内に光が入らないように遮光し、水槽内のエフィラをエフィラ回収路40に誘導する際は他の照明は消灯し、エフィラ誘導照明42のみを点灯させる。
このエフィラ誘導照明42は、例えばLED照明等の局所照明を用いることができる。また、エフィラ誘導照明として、防水式の局所照明を使用し、エフィラ回収路40の終端部の内側に設けるようにしてもよい。
【0046】
エフィラ回収路遮断機構44は、パッキングを備えたスライド式のシャッタであり、ここではモータによりシャッタを上下にスライドさせる電動式開閉機構を使用している。
エフィラ取出口46は、開閉コックを備えた排出口であり、エフィラ回収路遮断機構44によりエフィラ回収路40を水槽から遮断して開閉コックを開くことにより、エフィラ回収路40に回収されたエフィラが海水ごと排出される。
【0047】
通過エフィラ計数センサ47は、例えば超音波式センサを用いることができる。エフィラ回収路40の入口付近に超音波アレイセンサを設置し、エフィラが通過する水路に対して超音波をスキャンさせ、走査された反射音の時間変化を連続的に信号処理することによってエフィラを切り出し、水路を通過するエフィラを計数する。
また、通過エフィラ計数センサは、光学式センサを用いることもできる。この場合は、例えばエフィラが通過する水路を挟んで一方側に線光源を他方側にラインセンサを設け、ラインセンサにより走査された透過光の時間変化を連続的に信号処理することによりエフィラを切り出し、通過するエフィラの数を計数する。
尚、エフィラ回収路に回収するエフィラの数はそれほど厳密である必要はないので、通過エフィラ計数センサにより計数するエフィラの数は概算数量でもよい。
【0048】
エフィラ回収制御装置48は、エフィラ生産制御盤110からエフィラ回収指令を受けると、エフィラ誘導照明42を点灯させ、通過エフィラ計数センサ47によりエフィラ回収路に進入するエフィラを計数し、所定量のエフィラの通過が検出されたら、エフィラ回収路遮断機構44を作動させてエフィラ回収路40を水槽から遮断し、エフィラの自動回収動作を終了する。
【0049】
ストロビレーション機能付ポリプ培養水槽100は、ポリプを培養する際にポリプ着生基盤16に着生したポリプに光を照射するために、水槽の上部にポリプ培養照明50を備える。このポリプ培養照明50には、例えば通常の水槽用の蛍光灯照明を用いることができる。
また、ストロビレーション機能付ポリプ培養水槽100は、ポリプ着生基盤16に着生したポリプに対してエサを与える際に、ポリプの触手付近にエサを誘導するためのエサ誘導照明52を備える。このエサ誘導照明52は、ポリプのエサとして使用される後述のアルテミアが走光性を有することを利用してエサを誘導するものである。ここでは、ポリプ着生基盤16は透明部材により形成されているので、エサ誘導照明52は、例えばLED等を面状に配列した防水式の面光源を使用し、ポリプ着生基盤の裏面側から照明するように水槽内に設置されている。尚、エサ誘導照明52は、例えばLED等による点光源を使用し、ポリプ着生基盤16の表面側に配列するようにしてもよい。
また、ストロビレーション機能付ポリプ培養水槽100は、ポリプ培養照明50とエサ誘導照明52の点灯を制御する照明制御装置54を備える。照明制御装置54は、エフィラ生産制御盤からの指令により、ポリプを培養する際はポリプ培養照明50を例えば1日に8時間の割合で点灯させ、ポリプにエサを与える際はポリプ培養照明50を消灯してエサ誘導照明52を点灯させる制御を行う。
【0050】
エフィラ生産制御盤110は、ストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽100に対してポリプ培養指令を与えるとともに、エフィラの販売需要に応じてポリプにストロビレーションを起こさせる指令を与えてエフィラを生産させる。
【0051】
エフィラ生産制御盤110は、ストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽100の水温制御装置26に対して水温制御指令を与えるために、ストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽100をポリプ培養モードに設定する「ポリプ培養モード」ボタンと、ストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽100をストロビレーションモードに設定する「ストロビレーションモード」ボタンを備える。
また、エフィラ生産制御盤110は、ストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽100の照明制御装置54に対して照明制御指令を与えるために、ポリプ培養照明50の点灯制御を行うか否かを設定する「ポリプ培養ON/OFF」ボタン、エサ誘導照明52の点灯を設定する「エサやりON/OFF」ボタンを備える。
また、エフィラ生産制御盤110は、ストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽100のエフィラ回収制御装置48に対してエフィラ回収指令を与える「エフィラ回収ON/OFF」ボタンを備える。
尚、上記エフィラ生産制御盤100の各ボタンは、照光式のボタンであり、各指令が設定されたらボタンの照明が点灯し、解除されたらボタンの照明が消灯する。
【0052】
次に、ストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽100とエフィラ生産制御盤110を用いてエフィラを生産する手順について説明する。
最初に、エフィラ生産制御盤100の水温制御を「ポリプ培養モード」に設定し、自然界から採取したポリプをポリプ着生基盤16に付着させてストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽100内に設置する。
【0053】
ポリプ培養モード中は、照明制御の「ポリプ培養」をONとし、水槽内のポリプ着生基盤16に着生したポリプに対して定期的にエサを与える。
ポリプのエサには、例えば動物プランクトンのアルテミアを用いることができる。アルテミアは、乾燥卵が市販されているので、例えばこれを濾過海水または人工海水が入ったバットに入れ、水温を25℃程度に維持すると30時間程度で孵化してくるので、これを使用する。
ポリプに給餌する際はエフィラ生産制御盤110の照明制御の「ポリプ培養」をOFF、「エサやり」をONとし、給餌が終了したらエフィラ生産制御盤110の照明制御の「ポリプ培養」をON、「エサやり」をOFFに戻す。
【0054】
このようにしてストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽100内でポリプを培養し、ポリプ着生基盤16上に所定量のポリプが培養されたら、ポリプへの給餌を停止し、エフィラ生産制御盤110の水温制御を「ストロビレーションモード」に設定する。
ストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽100の水温制御を「ストロビレーションモード」に設定して2〜3週間程度が経過すると、ポリプがストロビレーションを起こし、エフィラが遊離する。
【0055】
エフィラの遊離が完了したら、エフィラ生産制御盤110のエフィラ回収制御の「エフィラ回収」をONとして、水槽内で遊離したエフィラのエフィラ回収路40への自動回収をスタートさせる。
エフィラ回収路40への所定量のエフィラの回収が完了すると、「エフィラ回収」ボタンが消灯するので、エフィラ取出口46の開閉コックを開いて回収されたエフィラを、例えばエフィラを販売する容器に海水ごと投入する。
このようなエフィラ回収路40へのエフィラの回収動作を繰り返し行い、水槽内のエフィラの回収を終えたら、エフィラ生産制御盤110の水温制御を「ポリプ培養モード」に戻し、ポリプの培養を継続させる。
以上のような手順により、ストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽100内でポリプを培養しながらエフィラの生産を繰り返し行うことができる。
【0056】
図2に、本願発明の第2実施形態にかかるエフィラ生産装置の概略構成図を示す。本実施形態のエフィラ生産装置は、ポリプを培養し、ストロビレーションを起こさせてエフィラを生産する複数のストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽100A,100B,100Cを備え、複数のストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽100A,100B,100Cに対してエフィラ生産のための指令を与えるエフィラ生産制御盤120を備える。
【0057】
ここで、複数のストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽100A,100B,100Cは、いずれも第1実施形態のエフィラ生産装置におけるストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽100と同じである。
一方、エフィラ生産制御盤120は、複数のストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽100A,100B,100Cに対してポリプの培養指令を与えるとともに、エフィラの販売需要に応じて複数のストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽100A,100B,100Cに対して順次ローテーションしてストロビレーションを行わせる指令を与える。
【0058】
エフィラ生産制御盤120は、複数のストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽100A,100B,100Cに対して順次ローテーションしてストロビレーション制御指令を与えるために、ストロビレーション対象水槽を順次ローテーションして選択する機能を有し、現在選択されているストロビレーション対象水槽を表示する「対象水槽表示」ランプを備える。
また、エフィラ生産制御盤120は、現在選択されているストロビレーション対象水槽の水温制御装置26に対して水温制御指令を与えるために、対象水槽をポリプ培養モードに設定する「ポリプ培養モード」ボタンと、対象水槽をストロビレーションモードに設定する「ストロビレーションモード」ボタンを備え、「ストロビレーションモード」ボタンが押されたら、当該対象水槽の水温制御装置をストロビレーションモードに設定し、当該対象水槽についてエフィラの生産・回収を完了して「ポリプ培養モード」ボタンが押されたら、当該対象水槽の水温制御装置をポリプ培養モードに設定し、ストロビレーション対象水槽を次にストロビレーションの対象となる水槽にローテーションする。
また、エフィラ生産制御盤120は、現在選択されているストロビレーション対象水槽において生産されたエフィラを回収するために、現在選択されているストロビレーション対象水槽のエフィラ回収制御装置48に対してエフィラ回収指令を与える「エフィラ回収ON/OFF」ボタンを備える。
【0059】
上記実施形態では、ストロビレーション対象水槽は、エフィラの生産・回収を完了して「ポリプ培養モード」ボタンが押されたら自動的にローテーションされるものとして説明したが、ストロビレーション対象水槽のローテーションを進める「ローテーション」ボタンを設け、これが押されたときにストロビレーション対象水槽をローテーションするようにしてもよい。
【0060】
また、エフィラ生産制御盤120は、ポリプ培養モードにあるストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽に対して照明制御指令を与えるために、照明制御の対象となる水槽を選択する「対象水槽選択」ボタンを備え、「対象水槽選択」ボタンにより選択された対象水槽の照明制御装置54に対して、ポリプ培養照明50の点灯制御を行うか否かを設定する「ポリプ培養ON/OFF」ボタン、エサ誘導照明52の点灯を設定する「エサやりON/OFF」ボタンを備える。
尚、照明制御の対象となる水槽を選択する「対象水槽選択」ボタンによって、現在選択中のストロビレーション対象水槽が選択された場合には選択をブロックする機能を設けるようにしてもよい。
【0061】
上記実施形態では、複数のストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽に対して照明制御を行うに当って、対象水槽を「対象水槽選択」ボタンにより予め選択するものとして説明したが、複数のポリプ培養水槽のそれぞれについて照明制御のボタンを設けるようにしてもよい。
【0062】
次に、複数のストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽100A,100B,100Cとエフィラ生産制御盤120を用いてエフィラを生産する手順について簡単に説明する。
各ストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽100A,100B,100Cの水温制御装置は初期値としてポリプ培養モードに設定され、エフィラ生産制御盤120のストロビレーション対象水槽は初期値としてAが選択される。
そして、自然界から採取したポリプをポリプ着生基盤16に付着させて各ストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽100A,100B,100C内に設置する。
ポリプ培養モード中の各ストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽100A,100B,100Cでの給餌方法は、第1実施形態の場合と同様である。
また、ポリプ培養モード中の各ストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽100A,100B,100Cでの照明制御は、エフィラ生産制御盤120の照明制御の「対象水槽選択」ボタンを押して対象水槽を選択した上で、第1実施形態の場合と同様に行う。
【0063】
現在選択されているストロビレーション対象水槽のポリプ着生基盤16上で所定量のポリプが培養されたら、ポリプへの給餌を停止し、エフィラ生産制御盤120の水温制御を「ストロビレーションモード」に設定する。
ストロビレーション対象水槽において、ポリプがストロビレーションを起こし、エフィラの遊離が完了したら、エフィラ生産制御盤120のエフィラ回収制御の「エフィラ回収」をONとして、第1実施形態と同様にして対象水槽でのエフィラの回収を行う。
エフィラの回収が完了したら、エフィラ生産制御盤120の水温制御を「ポリプ培養モード」に戻すことで、当該水槽ではポリプの培養が再開され、ストロビレーション対象水槽は次のBに更新される。
次に、ストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽100Bにおいて、上記と同様にポリプにストロビレーションを起こさせてエフィラを生産したら、ストロビレーション対象水槽は次のCに更新される。
そして、ストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽100Cにおいて、上記と同様にポリプにストロビレーションを起こさせてエフィラを生産したら、ストロビレーション対象水槽は再びAに戻る。
以上のようにして、複数のストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽100A,100B,100Cについて順次ローテーションしてストロビレーションを起こさせることで、エフィラを連続して生産することができる。
【0064】
上記実施形態では、3つのストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽を用いて順次ローテーションしてストロビレーションを行わせるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、エフィラの最大販売需要に合わせて適宜必要な数の複数のストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽を用いて順次ローテーションしてストロビレーションを行わせるようにすればよい。
また、ここでは、複数のストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽の中から選択された1つのストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽についてストロビレーションを行わせるものとして説明したが、複数のストロビレーションストロビレーション制御機能付水槽について重複してストロビレーションを行わせるようにしてもよい。このようにすれば、前の水槽でストロビレーションが開始されてからエフィラが生産されるまでの間に、次の水槽でのストロビレーションを開始することができ、エフィラの生産をより連続的に行うことができる。
【0065】
図3に、本願発明の第3実施形態にかかるエフィラ生産装置の概略構成図を示す。本実施形態のエフィラ生産装置は、ポリプを培養するポリプ培養水槽200と、ポリプにストロビレーションを起こさせてエフィラを生産するストロビレーション制御水槽210とを別個に備え、ポリプ培養水槽200に対してポリプ培養指令を与え、ストロビレーション制御水槽210に対してストロビレーション制御指令を与えてエフィラを生産させるエフィラ生産制御盤220を備える。
【0066】
ポリプ培養水槽200は、ポリプが着生したポリプ着生基盤16を水槽内に設置してポリプを培養する専用の水槽12であって、第1実施形態のストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽100に対して、水槽内の海水温度をポリプがストロビレーションを起こす温度に冷却する冷却器22が省略されたものであり、水温制御手段26は水槽内の海水温度をポリプの培養に適した温度に制御する機能のみを有する。但し、水槽を設置する場所の環境がポリプの培養に適した温度よりも高い場合は、その程度に応じた必要な冷却手段を設けてもよい。
また、ポリプ培養水槽200は、水槽内でエフィラは生産されないので、当然のことながらエフィラを回収するエフィラ回収機構は有しない。
【0067】
一方、ストロビレーション制御水槽210は、ポリプ培養水槽200で培養したポリプが着生したポリプ着生水槽16を水槽内に設置してストロビレーションを起こさせてエフィラを生産する専用の水槽14であって、第1実施形態のストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽100に対して、ポリプ培養照明50とエサ誘導照明52と照明制御装置54が省略されたものである。
【0068】
エフィラ生産制御盤210は、ポリプ培養水槽200の照明制御装置54に対して照明制御指令を与えるために、ポリプ培養照明50の点灯制御を行うか否かを設定する「ポリプ培養ON/OFF」ボタン、エサ誘導照明52の点灯を設定する「エサやりON/OFF」ボタンを備える。
また、エフィラ生産制御盤210は、ストロビレーション制御水槽210の水温制御装置26に対して水温制御指令を与えるために、ストロビレーション制御水槽210をポリプの培養に適した温度に制御するモードに設定する「ポリプ培養温度モード」ボタンと、ストロビレーション制御水槽100をポリプがストロビレーションを起こす温度まで冷却するモードに設定する「ストロビレーション温度モード」ボタンを備える。
また、エフィラ生産制御盤210は、ストロビレーション制御水槽210のエフィラ回収制御装置48に対してエフィラ回収指令を与える「エフィラ回収ON/OFF」ボタンを備える。
【0069】
次に、ポリプ培養水槽200およびストロビレーション制御水槽210並びにエフィラ生産制御盤220を用いてエフィラを生産する手順について簡単に説明する。
最初に、ポリプ培養水槽200の水温制御装置26は水槽内の海水温度をポリプの培養に適した温度に維持するポリプ培養モードに常時設定され、エフィラ生産制御盤220の水温制御は初期値として「ポリプ培養温度モード」に設定される。そして、自然界から採取したポリプをポリプ着生基盤16に付着させてポリプ培養水槽200内に設置する。
【0070】
ポリプ培養水槽200におけるポリプ培養中の照明制御と給餌の手順は、第1実施形態の場合と同様であるので説明は省略する。
ポリプ培養水槽200においてポリプ着生基盤16上に所定量のポリプが培養されたら、ポリプへの給餌は停止し、ポリプ着生基盤16をストロビレーション制御水槽210に移設し、エフィラ生産制御盤220の水温制御を「ストロビレーション温度モード」に設定する。
ストロビレーション制御水槽210において、ポリプ着生基盤16に着生しているポリプがストロビレーションを起こし、エフィラの遊離が完了したら、エフィラ生産制御盤220のエフィラ回収制御の「エフィラ回収」をONとして、第1実施形態と同様にしてエフィラの回収を行う。
エフィラの回収を完了したら、エフィラ生産制御盤220の水温制御を「ポリプ培養温度モード」に戻し、ポリプ着生基盤16をポリプ培養水槽200に戻し、ポリプの培養を継続させる。
以上のような手順により、ポリプ培養水槽200でポリプを培養し、ストロビレーション制御水槽でポリプにストロビレーションを起こさせてエフィラを生産することを繰り返し行うことができる。
【0071】
図4に、本願発明の第4実施形態にかかるエフィラ生産装置の概略構成図を示す。本実施形態のエフィラ生産装置は、ポリプを培養する複数のポリプ培養水槽200A,200B,200Cと、ポリプにストロビレーションを起こさせてエフィラを生産するストロビレーション制御水槽210とを備え、ポリプ培養水槽200A,200B,200Cに対してポリプ培養指令を与え、ストロビレーション制御水槽210に対してストロビレーション制御指令を与えてエフィラを生産させるエフィラ生産制御盤230を備える。
【0072】
ここで、複数のポリプ培養水槽200A,200B,200Cは、いずれも第3実施形態のエフィラ生産装置におけるポリプ培養水槽200と同じであり、ストロビレーション制御水槽210は第3実施形態のストロビレーション制御水槽と同じである。
一方、エフィラ生産制御盤220は、複数のポリプ培養水槽200A,200B,200Cに対してポリプの培養指令を与えるとともに、エフィラの販売需要に応じて複数のポリプ培養水槽200A,200B,200Cから順次ローテーションしてポリプ着生基盤16を取り出してストロビレーション制御水槽に移設させ、ポリプにストロビレーションを行わせるように制御する。
【0073】
エフィラ生産制御盤220は、複数のポリプ培養水槽200A,200B,200Cから順次ローテーションしてポリプ着生基盤16をストロビレーション制御水槽210に移設させるために、次にストロビレーションの対象となるポリプ培養水槽を順次ローテーションして指定する機能を有し、現在指定されているストロビレーション対象水槽を表示する「ストロビレーション対象水槽表示」ランプを備える。
また、エフィラ生産制御盤220は、複数のポリプ培養水槽200A,200B,200Cに対して照明制御指令を与えるために、照明制御の対象となる水槽を選択する「対象水槽選択」ボタンを備え、「対象水槽選択」ボタンにより選択された対象水槽の照明制御装置54に対して、ポリプ培養照明50の点灯制御を行うか否かを設定する「ポリプ培養ON/OFF」ボタン、エサ誘導照明52の点灯を設定する「エサやりON/OFF」ボタンを備える。
また、エフィラ生産制御盤220は、ストロビレーション制御水槽210の水温制御装置26に対して水温制御指令を与えるために、ストロビレーション制御水槽をポリプ培養温度モードに設定する「ポリプ培養温度モード」ボタンと、ストロビレーション制御水槽をストロビレーション温度モードに設定する「ストロビレーション温度モード」ボタンを備え、「ストロビレーション温度モード」ボタンが押されたら、水温制御装置26をストロビレーション温度モードに設定し、エフィラの生産・回収を完了して「ポリプ培養温度モード」ボタンが押されたら、水温制御装置26をポリプ培養温度モードに設定し、ポリプ培養水槽のストロビレーション対象水槽を次にストロビレーションの対象となるポリプ培養水槽にローテーションする。
また、エフィラ生産制御盤120は、ストロビレーション制御水槽210において生産されたエフィラを回収するために、エフィラ回収制御装置48に対してエフィラ回収指令を与える「エフィラ回収ON/OFF」ボタンを備える。
【0074】
上記実施形態では、ストロビレーション対象水槽は、エフィラの生産・回収を完了して「ポリプ培養温度モード」ボタンが押されたら自動的にローテーションされるものとして説明したが、ストロビレーション対象水槽のローテーションを進める「ローテーション」ボタンを設け、これが押されたときにストロビレーション対象水槽をローテーションするようにしてもよい。
また、上記実施形態では、複数のポリプ培養水槽に対して照明制御を行うに当っては、対象水槽を「対象水槽選択」ボタンにより予め選択するものとして説明したが、複数のポリプ培養水槽のそれぞれについて照明制御のボタンを設けるようにしてもよい。
【0075】
次に、複数のポリプ培養水槽200A,200B,200Cと、ストロビレーション制御水槽210と、エフィラ生産制御盤220を用いてエフィラを生産する手順について簡単に説明する。
最初に、各ポリプ培養水槽200A,200B,200Cの水温制御装置26は常時ポリプ培養モードに設定され、エフィラ生産制御盤220のストロビレーション対象水槽は初期値としてAが選択される。また、ストロビレーション制御水槽210の温度制御装置26は初期値として「ポリプ培養温度モード」に設定される。そして、自然界から採取したポリプをポリプ着生基盤16に付着させて各ポリプ培養水槽200A,200B,200C内に設置する。
【0076】
ポリプ培養水槽200A,200B,200Cでの照明制御は、エフィラ生産制御盤220の照明制御の「対象水槽選択」ボタンを押して対象水槽を選択した上で、第1実施形態の場合と同様に行う。
現在指定されているストロビレーション対象水槽のポリプ着生基盤16上で所定量のポリプが培養されたら、ポリプへの給餌を停止し、ポリプ着生基盤16をストロビレーション制御水槽210に移設し、エフィラ生産制御盤220の水温制御を「ストロビレーション温度モード」に設定する。
ストロビレーション制御水槽において、ポリプがストロビレーションを起こし、エフィラの遊離が完了したら、エフィラ生産制御盤220のエフィラ回収制御の「エフィラ回収」をONとして、第1実施形態と同様にしてエフィラの回収を行う。
エフィラの回収が完了したら、エフィラ生産制御盤220の水温制御を「ポリプ培養温度モード」に戻すことで、ストロビレーション制御水槽の海水温度はポリプ培養温度に戻り、ストロビレーション対象水槽は次のBに更新される。
そして、ストロビレーション制御水槽のポリプ着生基盤16を元のポリプ培養水槽に戻し、次のポリプ培養水槽200Bからポリプ着生基盤16を取り出し、ストロビレーション制御水槽210に移設して上記と同様の事を行うことでストロビレーション対象水槽は次のCに更新され、更にポリプ培養水槽200Cからポリプ着生基盤16を取り出し、ストロビレーション制御水槽に移設して上記と同様の事を行うことでストロビレーション対象水槽は再びAに戻る。
以上のようにして、複数のポリプ培養水槽200A,200B,200Cについて順次ローテーションしてポリプ着生基盤16をストロビレーション制御水槽に移設してストロビレーションを起こさせることで、エフィラを連続して生産することができる。
【0077】
図5に、エフィラを販売する際の販売セットの一例を示す。図に示すエフィラ販売セット500では、エフィラ生産装置によって生産されたエフィラを収容したエフィラ収容瓶510、エフィラのエサを収容したエサ収容瓶520、エフィラにエサを与えるときに使用するスポイト530が同梱される。
エフィラ収容瓶510は、例えば100ml程度のガラス瓶を用い、これに例えば5匹程度のエフィラを海水とともに収容することで、購入者はこれを卓上に置いてエフィラの遊泳の様子を自宅や職場で鑑賞することができる。
また、エサ収容瓶520は、エフィラのエサとなるアルテミアを海水と共に収容したものであり、購入者はエサ収容瓶520のエサを同梱のスポイト530で吸引してエフィラ収容瓶510にエフィラに与えて飼育する。
尚、エフィラのエサは、アルテミアの乾燥卵、人工海水、バットを同梱して購入者に孵化させて与えてもらうようにしてもよい。
また、エフィラ収容瓶内の海水にエアレーションを与えて適度な水流を作るエアーポンプをオプションとして提供するようにしてもよい。
【0078】
上述のエフィラ生産制御盤110,120,220,230の制御手順は、シーケンサやマイクロコンピュータ等を用いることで簡単に実現することができる。
また、エフィラ生産制御盤に、エフィラ培養温度条件、ストロビレーション温度条件、ポリプ培養温度とストロビレーション温度との温度変化条件等を設定する機能を設け、ポリプの培養状況やストロビレーションの発生状況に応じて水温制御の制御条件を変化させることができるようにしてもよい。
また、エフィラ生産制御盤において、水温制御装置26や照明制御装置54やエフィラ回収制御装置48の制御機能を含めて一括制御させるようにし、個々の制御装置を省略するようにしてもよい。
尚、エフィラ生産制御盤は、パーソナルコンピュータによって構成することもでき、必要なボタンやランプを画面上に表示させて操作できるようにしてもよい。
【0079】
上記実施形態では、いずれもエフィラ生産制御盤を用いてエフィラを生産するものとして説明したが、ストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽の水温制御装置、照明制御装置およびエフィラ回収制御装置、または、ポリプ培養水槽の水温制御装置および照明制御装置並びにストロビレーション制御水槽の水温制御装置およびエフィラ回収制御装置を、上述の手順に基づいて直接操作することでエフィラを生産するようにしてもよい。
【0080】
上記実施形態では、水槽内にヒータと水温センサを設け、水槽外に冷却器を設けることで水槽内の海水温度を制御するものとしたが、水槽内の海水温度を所定の条件を満たすように制御できるものである限りどのような構成であってもよい。例えば、水槽を恒温槽に設置し、恒温槽の温度を制御することで水槽内の海水温度を所定の温度条件を満たすように制御してもよい。
【0081】
上記実施形態では、水槽内の海水に対して外部に設けた濾過器を通して還流させることで水槽内の海水を浄化するようにしているが、これに限定されるものではなく、止水式として水槽内の海水を例えば毎日3分の1量ずつ交換するようにしてもよい。
【0082】
上記実施形態では、水槽内でストロビレーションによって産出されたエフィラを回収するエフィラ回収機構を備えるものとしたが、水槽内に産出されたエフィラを例えばスポイトを用いて手動で回収するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、エフィラ回収機構は、エフィラ回収路とエフィラ誘導照明とエフィラ回収路遮断機構とエフィラ取出口と通過エフィラ計数センサとエフィラ回収制御手段とを備え、所定量のエフィラを自動回収するものとして説明したが、エフィラ回収路とエフィラ誘導照明とエフィラ取出口のみを備え、産出されたエフィラをエフィラ誘導照明でエフィラ回収路に誘導してエフィラ取出口から手動で取り出すようにしてもよい。
また、エフィラ回収路は、水槽の外に設けるものとして説明したが、水槽内にエフィラを回収する区画を設け、エフィラ誘導照明によって当該区画にエフィラを誘導するようにしてもよい。
また、エフィラ取出口は、単に開口部を有し、エフィラ回収路に回収されたエフィラを例えばカップ等により当該開口部から取り出せるようにしたものでもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、エフィラ回収路に回収されたエフィラをエフィラ取出口のコックを開放することで、エフィラを販売セットのエフィラ収容瓶に直接回収するとして説明したが、一旦所定量のエフィラを収容する容器に回収し、そこからエフィラ販売セットのエフィラ収容瓶に小分けするようにしてもよい。
また、生産されたエフィラを保管するための温度制御されたエフィラ保管水槽を別途備え、ストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽またはストロビレーション制御水槽から回収したエフィラをエフィラ保管水槽に入れて保管し、お客からの注文が入り次第、エフィラ保管瓶に所定量のエフィラを詰めて販売するようにしてもよい。
【0084】
上記実施形態では、ポリプ培養水槽内にエサ誘導照明を設けるものとして説明したが、スポイト等を用いて直接ポリプにエサを与えるようにしてもよい。
また、ポリプのエサを飼育するための温度制御されたエサ飼育水槽を別途設け、このなかに乾燥卵から孵化したアルテミアを入れて、例えば酵母菌などを与えて飼育し、本水槽から計量カップ等によってエサを収集してポリプに与えたり、エフィラ販売セットのエサ収容瓶に入れてエフィラとセット販売したりするようにしてもよい。
【0085】
上記実施形態では、ポリプ着生基盤をポリプ培養水槽の底面においてポリプ着生面が上向きになるように設置し、ポリプを上向きに着生させるものとして説明したが、ポリプ着生基盤を水槽の上部においてポリプ着生面が下向きになるように設置し、自然界で見られるようにポリプを下向きに着生させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
以上述べたように、本願発明によれば、エフィラを年中安定して生産することが可能となるので、ホームセンター等において、本願発明のエフィラ生産装置を設置してエフィラを生産したり、本願発明のエフィラ生産方法によりエフィラを生産することにより、エフィラを店頭販売したり、インターネット等を通じて注文を受け付けて宅配する等のサービスを提供することができる。
【0087】
上記説明では、エフィラを一般家庭、店舗、病院、公共施設等における観賞用として販売するためにエフィラを生産するものとして説明したが、本願発明はこれに限定されるものではなく、アクアショップなどの事業者、クラゲの研究を行う研究施設、教育機関等に対してエフィラを供給するために使用されるものであってもよい。
【0088】
本願発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本願発明の効果を奏する限り、各実施形態で述べた構成要素を適宜入れ替えたり、新たな構成要素を追加したり、一部の構成要素を削除したりしてもよいことはいうまでもない。
尚、本願発明では、生産するクラゲの幼生としてエフィラを対象としているが、横分裂形成により産出されるクラゲの幼生である限り本願発明の効果を奏するものであり、その種別によって限定されるものではない。
【符号の説明】
【0089】
100 ストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽
110 エフィラ生産制御盤(単一のストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽を用いた場合)
120 エフィラ生産制御盤(複数のストロビレーション制御機能付ポリプ培養水槽を用いた場合)
200 ポリプ培養水槽
210 ストロビレーション制御水槽
220 エフィラ生産制御盤(単一のポリプ培養水槽と単一のストロビレーション制御水槽を用いた場合)
230 エフィラ生産制御盤(複数のポリプ培養水槽と単一のストロビレーション制御水槽を用いた場合)
10、12、14 水槽
16 ポリプ着生基盤
20 ヒータ
22 冷却器
24 水温センサ
26 水温制御装置
30 吸水ポンプ
32 濾過器
34 排出パイプ
36 エアーストーン
40 エフィラ回収路
42 エフィラ誘導照明
44 エフィラ回収路遮断機構
46 エフィラ取出口
47 通過エフィラ計数センサ
48 エフィラ回収制御装置
50 ポリプ培養照明
52 エサ誘導照明
54 照明制御装置
500 エフィラ販売セット
510 エフィラ収容瓶
520 エサ収容瓶
530 給餌用スポイト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽内の海水中にポリプが着生した基盤を設置してポリプを培養する水槽であって、水槽内の海水温度をポリプの培養に適した温度に維持するポリプ培養モードと、水槽内の海水温度をポリプがストロビレーションを起こす温度まで冷却するストロビレーションモードとを切り替えることができる水温制御手段を有するポリプ培養水槽を備え、
前記ポリプ培養水槽において、前記水温制御手段を前記ポリプ培養モードに設定してポリプの培養を行い、エフィラの販売需要に応じて、前記水温制御手段を前記ストロビレーションモードに切り替えて同一の水槽内でポリプにストロビレーションを起こさせ、エフィラが遊離したら、前記水温制御手段を前記ポリプ培養モードに戻してポリプの培養を継続することで、エフィラを年中安定して生産できることを特徴とする、エフィラ生産装置。
【請求項2】
水槽内の海水中にポリプが着生した基盤を設置してポリプを培養する水槽であって、水槽内の海水温度をポリプの培養に適した温度に維持するポリプ培養モードと、水槽内の海水温度をポリプがストロビレーションを起こす温度まで冷却するストロビレーションモードとを切り替えることができる水温制御手段を有するポリプ培養水槽を複数備え、
前記複数のポリプ培養水槽において、前記水温制御手段を前記ポリプ培養モードに設定してポリプの培養を行い、エフィラの販売需要に応じて、前記複数のポリプ培養水槽から選択されたいずれかのポリプ培養水槽について、前記水温制御手段を前記ストロビレーションモードに切り替えて当該水槽内でポリプにストロビレーションを起こさせ、エフィラが遊離したら、前記水温制御手段を前記ポリプ培養モードに戻してポリプの培養を継続させることを、前記複数のポリプ培養水槽について順次ローテーションして行われるように制御するエフィラ生産制御手段を備え、エフィラを年中安定して生産できることを特徴とする、エフィラ生産装置。
【請求項3】
前記ポリプ培養水槽は、水槽内のエフィラを回収するためのエフィラ回収路と、前記エフィラ回収路に水槽内のエフィラを誘導するためのエフィラ誘導照明手段と、前記エフィラ回収路に誘導されたエフィラを取り出すエフィラ取出口とを備えたことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のエフィラ生産装置。
【請求項4】
前記ポリプ培養水槽は、前記エフィラ回収路と水槽との間を遮断するためのエフィラ回収路遮蔽手段と、前記エフィラ回収路に進入するエフィラの数を計数するエフィラ計数手段と、前記エフィラ計数手段により所定量のエフィラが計数されたときに前記エフィラ回収路遮断手段により前記エフィラ回収路を遮断するように制御するエフィラ回収制御手段を更に備えたことを特徴とする、請求項3に記載のエフィラ生産装置。
【請求項5】
水槽内の海水中にポリプが着生した基盤を設置してポリプを培養する水槽であって、水槽内の海水温度をポリプの培養に適した温度に維持する第1の水温制御手段を有するポリプ培養水槽と、
水槽内の海水中にポリプが着生した基盤を設置してポリプにストロビレーションを起こさせる水槽であって、水槽内の海水温度をポリプの培養に適した温度に設定するポリプ培養温度モードと、水槽内の海水温度をポリプにストロビレーションを起こさせる温度に冷却するストロビレーション温度モードとを切り替えることができる第2の水温制御手段を有するストロビレーション制御水槽を備え、
前記ポリプ培養水槽内でポリプの培養を行い、エフィラの販売需要に応じて、前記ポリプ培養水槽から、培養されたポリプが着生した前記基盤を前記ストロビレーション制御水槽に移設し、前記ストロビレーション制御水槽において、前記第2の水温制御手段を前記ポリプ培養温度モードから前記ストロビレーション温度モードに切り替えてポリプにストロビレーションを起こさせ、エフィラが遊離したら、前記第2の水温制御手段を前記ポリプ培養温度モードに戻し、前記移設した基盤を前記ポリプ培養水槽に戻すことで、エフィラを年中安定して生産できることを特徴とする、エフィラ生産装置。
【請求項6】
水槽内の海水中にポリプが着生した基盤を設置してポリプを培養する水槽であって、水槽内の海水温度をポリプの培養に適した温度に維持する第1の水温制御手段を有する複数のポリプ培養水槽と、
水槽内の海水中にポリプが着生した基盤を設置してポリプにストロビレーションを起こさせる水槽であって、水槽内の海水温度をポリプの培養に適した温度に設定するポリプ培養温度モードと、水槽内の海水温度をポリプにストロビレーションを起こさせる温度に冷却するストロビレーション温度モードとを切り替えることができる第2の水温制御手段を有するストロビレーション制御水槽を備え、
エフィラの販売需要に応じて、前記複数のポリプ培養水槽から選択されたいずれかのポリプ培養水槽から、培養されたポリプが着生した前記基盤を前記ストロビレーション制御水槽に移設し、前記ストロビレーション制御水槽において、前記第2の水温制御手段を前記ポリプ培養温度モードから前記ストロビレーション温度モードに切り替えてポリプにストロビレーションを起こさせ、エフィラが分離したら、前記第2の水温制御手段を前記ポリプ培養温度モードに戻し、前記移設した基盤を元のポリプ培養水槽に戻すことを、前記複数のポリプ培養水槽について順次ローテーションして行われるように制御するエフィラ生産制御手段を備え、エフィラを年中安定して生産できることを特徴とする、エフィラ生産装置。
【請求項7】
前記ストロビレーション水槽は、水槽内のエフィラを回収するためのエフィラ回収路と、前記エフィラ回収路に水槽内のエフィラを誘導するためのエフィラ誘導照明手段と、前記エフィラ回収路に誘導されたエフィラを取り出すエフィラ取出口とを更に備えたことを特徴とする、請求項5または請求項6に記載のエフィラ生産装置。
【請求項8】
前記ストロビレーション水槽は、前記エフィラ回収路と水槽との間を遮断するためのエフィラ回収路遮蔽手段と、前記エフィラ回収路に進入するエフィラの数を計数するエフィラ計数手段と、前記エフィラ計数手段により所定量のエフィラが計数されたときに前記エフィラ回収路遮断手段により前記エフィラ回収路を遮断するように制御するエフィラ回収制御手段を更に備えたことを特徴とする、請求項7に記載のエフィラ生産装置。
【請求項9】
前記ポリプ培養水槽は、ポリプに与えるエサを前記基盤に着生したポリプの近傍に誘導するためのエサ誘導照明手段を前記基盤の近傍に備えたことを特徴とする、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載のエフィラ生産装置。
【請求項10】
水槽内の海水中にポリプが着生した基盤を設置してポリプを培養する水槽であって、水槽内の海水温度をポリプの培養に適した温度に維持するポリプ培養モードと、水槽内の海水温度をポリプがストロビレーションを起こす温度まで冷却するストロビレーションモードとを切り替えることができる水温制御手段を有するポリプ培養水槽を用いてエフィラを生産する方法であって、
前記水温制御手段を前記ポリプ培養モードに設定して前記ポリプ培養水槽内でポリプの培養を行い、エフィラの販売需要に応じて、前記水温制御手段を前記ストロビレーションモードに切り替えて同一の水槽内でポリプにストロビレーションを起こさせ、エフィラが遊離したら、前記水温制御手段を前記ポリプ培養モードに戻してポリプの培養を継続するようにしたことを特徴とする、エフィラ生産方法。
【請求項11】
水槽内の海水中にポリプが着生した基盤を設置してポリプを培養する水槽であって、水槽内の海水温度をポリプの培養に適した温度に維持するポリプ培養モードと、水槽内の海水温度をポリプがストロビレーションを起こす温度まで冷却するストロビレーションモードとを切り替えることができる水温制御手段を有する複数のポリプ培養水槽を用いてエフィラを生産する方法であって、
前記複数のポリプ培養水槽において、前記水温制御手段を前記ポリプ培養モードに設定して前記ポリプ培養水槽内でポリプの培養を行い、エフィラの販売需要に応じて、前記複数のポリプ培養水槽から選択されたいずれかのポリプ培養水槽について、前記水温制御手段を前記ストロビレーションモードに切り替えて当該水槽内でポリプにストロビレーションを起こさせ、エフィラが遊離したら、前記水温制御手段を前記ポリプ培養モードに戻してポリプの培養を継続させることを、前記複数のポリプ培養水槽について順次ローテーションして行うようにしたことを特徴とする、エフィラ生産方法。
【請求項12】
水槽内の海水中にポリプが着生した基盤を設置してポリプを培養する水槽であって、水槽内の海水温度をポリプの培養に適した温度に維持する第1の水温制御手段を有するポリプ培養水槽と、水槽内の海水中にポリプが着生した基盤を設置してポリプにストロビレーションを起こさせる水槽であって、水槽内の海水温度をポリプの培養に適した温度に設定するポリプ培養温度モードと、ポリプにストロビレーションを起こさせる温度に冷却するストロビレーション温度モードとを切り替えることができる第2の水温制御手段を有するストロビレーション制御水槽を用いてエフィラを生産する方法であって、
エフィラの販売需要に応じて、前記ポリプ培養水槽から、培養されたポリプが着生した前記基盤を前記ストロビレーション制御水槽に移設し、前記ストロビレーション制御水槽において、前記第2の水温制御手段を前記ポリプ培養温度モードから前記ストロビレーション温度モードに切り替えてポリプにストロビレーションを起こさせ、エフィラが遊離したら、前記第2の水温制御手段を前記ポリプ培養温度モードに戻し、前記移設した基盤を前記ポリプ培養水槽に戻すようにしたことを特徴とする、エフィラ生産方法。
【請求項13】
水槽内の海水中にポリプが着生した基盤を設置してポリプを培養する水槽であって、水槽内の海水温度をポリプの培養に適した温度に維持する第1の水温制御手段を有する複数のポリプ培養水槽と、水槽内の海水中にポリプが着生した基盤を設置してポリプにストロビレーションを起こさせる水槽であって、水槽内の海水温度をポリプの培養に適した温度に設定するポリプ培養温度モードと、水槽内の海水温度をポリプにストロビレーションを起こさせる温度に冷却するストロビレーション温度モードとを切り替えることができる第2の水温制御手段を有するストロビレーション制御水槽を用いてエフィラを生産する方法であって、
エフィラの販売需要に応じて、前記複数のポリプ培養水槽から選択されたいずれかのポリプ培養水槽から、培養されたポリプが着生した前記基盤を前記ストロビレーション制御水槽に移設し、前記ストロビレーション制御水槽において、前記第2の水温制御手段を前記ポリプ培養温度モードから前記ストロビレーション温度モードに切り替えてポリプにストロビレーションを起こさせ、エフィラが分離したら、前記第2の水温制御手段を前記ポリプ培養温度モードに戻し、前記移設した基盤を元のポリプ培養水槽に戻すことを、前記複数のポリプ培養水槽について順次ローテーションして行うようにしたことを特徴とする、エフィラ生産方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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