エベロリムスのイムノアッセイ
エベロリムス検出用のイムノアッセイを提供する。エベロリムスに対する抗原を産生する化合物、及びエベロリムスから産生される抗原も提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、生体液中のエベロリムス(everolimus)を検出(determination)するための試薬と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エベロリムス[40-O-(2-ヒドロキシエチル)-ラパマイシン]は、新規のマクロライド免疫抑制剤である。エベロリムス(別称:SDZ-RAD, RAD, Certican(R)は、ラパマイシン(Sirolimus)を改善することを目指して、Novartis社により開発された(参照により本稿に援用される非特許文献1)。(ラパマイシン(Sirolimus)は、アロ抗原に対する細胞反応において成長因子による形質導入シグナルを阻止する増殖シグナル阻害剤である。(参照により本稿に援用される特許文献1)エベロリムスは、ラパマイシン(Sirolimus)と比較した場合、有機溶媒中においてより優れた安定性と更に強化された溶解性を示すと共に、副作用が少なくより好ましい薬物動態を示すものである。エベロリムスは、免疫抑制投薬療法の効能を向上させるためにマイクロエマルジョン・サイクロスポリン(Novartis社製Neorale(R))と併用されてきた(参照により本稿に援用されるKovarik JMらの非特許文献2)。
【0003】
臨床状態の複雑性および免疫抑制および腎毒作用に対する感度に個人差があるため、治療の効果と副作用のバランスを維持することは医師にとって非常に困難な課題となっている(参照により本稿に援用される非特許文献3)。
上記薬物の生体液中における濃度の測定および解釈として定義される薬物治療管理(TDM:Therapeutic Drug Monitoring)は、移植プロトコルにおける不可欠な要素となっており、器官反応の予測を最終的な課題目的としている。
【0004】
腎臓移植における副作用(有害影響)を最小限に止めつつ目的の効能を示す濃度として報告されているエベロリムスの治療濃度は、3-15ng/mLである(非特許文献2)。
【0005】
また、最近のデータにより、エベロリムスの薬物治療管理(TDM)は心臓移植患者に有益であることが示されている(参照により本稿に援用される非特許文献4)。1.5mg/日および3mg/日ので治療を受けた患者における、移植後最初の一年間のエベロリムスのトラフレベル(最低濃度)は安定しており、各々平均5.2±3.8ng/mLと9.4±6.3ng/mLであった。
【0006】
エベロリムスのTDMは次の参考文献により報告されており、各々参考により本稿に援用される。
【0007】
McMahon LM, et al. "High-throughput analysis of Certican (RAD001) and cyclosporin A (CsA)in whole blood by liquid chromatography/massspectrometry using a semi-automated 96-well solid-phase extraction system." Rapid Communications in Mass Spectrometry 2000; 14: 1965-1971;
Brignol N, et al. "High-throughput semi-automated 96-wellliquid/liquid extraction and liquid chromatography/mass spectrometric analysisof Certican (RAD001) and cyclosporin A (CsA)in whole blood." Rapid Communications in Mass Spectrometry 2002; 15: 1-10;
Streit F. et al. "Rapid liquid chromatography-tandem massspectrometry routine method for simultaneous determination of sirolimus, Certican, tacrolimus, and cyclosporin A in whole blood." Clinical Chemistry. 2002; 48 (6): 955-958.
【特許文献1】国際公開WO-009409010パンフレット
【非特許文献1】Nashan B.、"The role of Certican in the many pathways of chronic rejection. Transplantation Proceedings," Transplantation Proceedings, 2001, 33:3215-3230.
【非特許文献2】Kovarik JM, et al. "Exposure-response relationship for Certican in de novo kidney transplantation : define a therapeutic range." Transplantation 2002; 73(6): 920-925.
【非特許文献3】Wallemacq, Pierre E. "Therapeutic monitoring of immunosuppressant drugs. Where are we?," Clinical Chemistry and Laboratory Medicine(2004), 42(11), 1204-121.
【非特許文献4】Starling, Randall C.; et al. "Therapeutic drug monitoring for everolimus in heart transplant recipients based on exposure-effect modeling." American Journal of Transplantation (2004), 4(12), 2126- 2131.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、HPLC、LC/MSを使用する方法は、例えば試料の調製や分析(アッセイ)に時間がかかり、コストも高く、且つ労働集約的作業を要するという点で、商業的用途に使用するものとしては実用性に欠ける面がある。日常的なエベロリムスTDMには、単純な自動試験や高出力を有する臨床分析装置を利用できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、新規のエベロリムスの誘導体と新規のエベロリムス免疫原を教示するものである。本発明はまた、エベロリムス免疫原を使用して生成された多クローン性抗体と単クローン抗体についてだけではなく、標識競合体(labeled competitor)および追跡子(トレーサ)についても教示する。これらの抗体、抱合体および追跡子は、生体液中のエベロリムスを検出するイムノアッセイに有用となるものである。
【0010】
本発明は、その一様態において、試料中にエベロリムスが存在するか否かを決定するための競合イムノアッセイを備える。実例として記載される競合イムノアッセイは、特にエベロリムスを結合できる抗体と検出可能な標識に抱合するエベロリムス化合物から構成されており、該抱合エベロリムス化合物は試料中でエベロリムスと競合して抗体を結合するように構成され、且つ、該標識は、試料中のエベロリムスが薬物治療管理濃度に含まれている場合に該試料中のエベロリムス濃度を示すシグナルを提供することを特徴とする。
【0011】
一実施形態において、イムノアッセイは約3〜約15ng/mLの範囲でエベロリムスを管理(監視)するのに適している。他の実施形態において、競合イムノアッセイは、実例として約0〜約40ng/mLといった広範囲にわたりエベロリムスの濃度を示すシグナルを備える。
【0012】
本発明は、他の様態において、試料中のエベロリムス量を測定(判断)する方法を備える。該方法は、特に、エベロリムスを結合できる抗体および検出可能標識に抱合するベロリムス化合物と試料を混合すること(ここにおいて、抱合エベロリムス化合物は、抗体と結合するために試料中のエベロリムスと競合するように構成される)、試料中のエベロリムスの濃度を示す検出可能な標識からのシグナルを測定すること、そして試料中のエベロリムスの量を決定することを含む。
【0013】
また、本発明におけるさらに別の様態では、化合物が次の構成を成して提供されている。
【0014】
【化1】
【0015】
上記構成において、
nは0または1であり、
Xは、3-10個の炭素またはヘテロ原子から成るリンカー鎖であり、このリンカー鎖は置換鎖または非置換鎖でありえ、さらに直鎖または分岐鎖でありえ、
Yは、-C(O)-, -NH-, -S-, -CH2-および-O-から成るグループから選択され、
Zは抗原担体または標識である。
【0016】
特定の一具体例において、Xは-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-であり、Yは--C(O)-であり、Zは抗原担体である。これらの化合物を使用して生成された抗体と該抗体を使用するイムノアッセイ・キットも提供されている。下記のされる好適な実施形態に関する詳細な説明には、本発明を現下認識されるごとく実施するために最良な様式が示されており、本発明のその他の特長は、当事者がこの好適な実施形態の詳細説明を踏まえて考慮すれば明白なものとなるはずである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
「エベロリムス(everolimus)」は、CERTICAN(R)という商標でNovartis AG社により販売されている免疫抑制剤である。エベロリムスは、化学式 Iの構成を有する。
【0018】
【化2】
【0019】
「ハプテン(haptens)」は部分抗原または不完全抗原である。ハプテンは通常、大部分が低分子量からなり、一般的に抗体形成を刺激する能力を有さないが、抗体と反応する無タンパク物質である。高分子量抗原担体にハプテンを共役した後に、この共役生成物(i.e.、免疫原)を被験者(人間)または被験動物の体内へ注入することにより、抗体を形成しえる。エベロリムスはハプテンである。
【0020】
本稿で用いられる「特にエベロリムスを結合できる抗体」という句は、非特異性相互作用とは対照的に、真性抗体・抗原反応において薬物中の少なくとも1つのエピトープと反応できる抗体を示す。
「類似物質(アナログ)」または「誘導体」という用語は、1つ以上の化学反応により親化合物または分子から生成された化学化合物または分子を示す。「活発化ハプテン」は、ハプテン誘導抱合体を、リンキンググループ(連結群)を連結(attach)することなどによって、合成するための反応に利用できる領域を備えるハプテン誘導体を示す。
【0021】
本稿で用いられる「リンキンググループ」または「リンカー」は、ハプテン、担体、免疫原、標識、追跡子またはその他のリンカーなどのサブストラクチャ(下部構造)の2つ以上をつなげる化学構造の一部を示す。リンキンググループは、サブストラクチャ間にまたがる(広がる)水素(またはその他の単価原子)以外の原子の少なくとも1つの途切れなく連結される鎖体を有する。リンキンググループの原子およびリンキンググループ内の鎖体の原子は、化学結合によって自ら接続する。リンカーは、直鎖または分岐鎖でありえ、また飽和あるいは不飽和炭素鎖でありえ、さらに鎖の中間または鎖の末端に1つ以上の異種原子を含みえる。「異種原子」とは、炭素原子以外の原子、具体例として、酸素、窒素、硫黄およびリンを意味する。リンキンググループはまた、鎖の一部として、または鎖内の原子のうちの1つにおける置換として、巡回群または芳香族基を含みえる。リンキンググループまたはリンカー中の原子数は水素以外の原子数により決定される。リンキンググループ内の鎖体における原子数は、結合しているサブストラクチャ間の最短経路に沿った水素以外の原子数により決定される。リンキンググループはハプテンを活性化する(例えば、標識または担体とハプテンの抱合体を合成するためにハプテン上で利用できる領域を提供する)ために使用されえる。
【0022】
本稿に用いられる「免疫原」、「免疫原(性)の」という用語は、有機体中の免疫反応を生成するまたは発生させる能力を有する物質を示す。「活性エステル」は、例えばペプチドとタンパク質のような化合物の自由アミノ基と反応できるエステル基を示す。活性エステルの例として、N-ヒドロキシスクシンイミド、p-ニトロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、N-ヒドロキシ・ベンゾトリアゾリルが挙げられる。
【0023】
本稿に用いられる「担体」または「免疫原担体」という用語は、ハプテンと結合でき、よって、ハプテンが免疫反応を誘発し特に抗原(ハプテン)と結合できる抗体の生成を誘発することを可能にする免疫原性物質(一般にタンパク質)を示す。外来として認識され、よってホスト(宿主)からの免疫反応を誘発する核酸、タンパク質、糖タンパク質、複合多糖、および粒子状物質が、担体物質には含まれている。また、様々なタンパク質がポリ(アミノ酸)免疫原担体として使用されえる。これらのタンパク質はアルブミンおよび血清蛋白質、例えばグロブリン、接眼レンズタンパク質、リポタンパク質など、を含んでいる。タンパク質の具体例として、ウシ血清アルブミン(BSA)、キーホールリンペットヘモシニアン(KLH)、卵オバルブミン、ウシγグロブリン(BGG)などが挙げられる。あるいは、合成ポリ(アミノ酸)を使用しえる。また、免疫原担体は、単糖の凝縮が繰り返されることにより構築された高分子量重合体である多糖(類)でありえる。
【0024】
多糖(類)の例として、でんぷん、グリコーゲン、セルローズ、アラビアゴムなどの炭水化物ガム、寒天などが挙げられる。また、多糖はポリ(アミノ酸)残留物且つ又は脂質残留物を含むことができる。免疫原担体は、単独の、或いは前記ポリ(アミノ酸)または多糖(類)のうちの1つに抱合するポリ(核酸)でもありえる。また、免疫原担体は粒子状物質でもありえる。該粒子状物質の直径は、具体例として約0.02ミクロン(μm)以上、さらに具体例として約100μm以下であり、通常は0.05μm〜10μmである。該粒子状物質は、有機あるいは無機、膨潤可能あるいは膨潤不可能、多孔性あるいは非多孔性でありえ、状況に応じて(任意に)水の密度に近いもの(通常約0.5〜1.5g/mL)であり、そして、透明な材質または部分的に透明な材質あるいは不透明な材質から成るものが使用できる。
【0025】
また、該粒子状物質は、具体例として(これらに限定されないが)赤血球、白血球、リンパ球、ハイブリドーマ(融合細胞)、連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、大腸菌およびビールスなどを含む細胞や微生物のような生体物質でありえる。該粒子状物質はまた、有機・無機重合体、リポソーム、ラテックス、リン脂質小胞、あるいはリポ蛋白質で構成されるものでありうる。
【0026】
「ポリ(アミノ酸)」または「ポリペプチド」はアミノ酸から形成されたポリアミドである。ポリ(アミノ酸)は、例えば約2,000分子量以上の範囲に及び、分子量の上限は無いが、通常10,000,000ダルトン以下、状況に応じて(任意に)約600,000のダルトン以下とされる。しかしながら、この範囲は通常、免疫原担体または酵素が関与するかどうかにより異なる。
【0027】
「ペプチド」には、通常アミド(ペプチド)の結合によるアミノ酸リンケージ(連鎖機構)2つ以上によって形成されるあらゆる化合物( 通常は、(NH2末端以外の)各アミノ酸残基のα-アミノ基が直鎖中における次の残基のα-カルボキシル基に連結されるα-アミノ酸の重合体)を使用できる。本稿において、「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「ポリ(アミノ酸)」という用語は、大きさに関する制限を有さないこの種(クラス)の化合物を示すものの同意語として用いられている。この種(クラス)のもので大型の類に属するものはタンパク質とも呼ばれる。
【0028】
「標識」「検出分子」または「追跡子」は、検出可能シグナルを生成する、あるいは生成するように誘導しえる、あらゆる分子を意味する。標識は、被検体、免疫原、抗体(具体例としては抗原化合物に反応して生成された抗体、あるいは特異性を有する二次抗体)、または配位子(特にハプテン)などのレセプタに結合できるレセプタまたは分子のようなその他の分子に結合しえる。標識の例としてはこれらに限定されないが、放射性同位体、酵素、酵素、断片、酵素基質、酵素抑制因子、補酵素、
触媒、発蛍光団、染料、化学発光剤、発光剤、感光剤、非磁性または磁性粒子状物質、固体担体、リポソーム、配位子、レセプタ、およびハプテン放射性同位体が挙げられる。
【0029】
本稿において用いられる「抗原化合物」という用語は、免疫反応をもたらすために使用される化合物を示す。具体例として、抗原化合物は免疫原担体につながれたハプテン(例えばエベロリムス)である。該抗原化合物は所望の抗体を生成するために使用される。本稿において使用される「標識競合体(labeled competitor)」という用語は、分子が検出可能な標識または追跡子に連結されていることを特徴とする、エベロリムスに対して特異性を有する抗体に特異的に結合しえる分子である。具体例として、該分子はエベロリムス、またはそれの誘導体あるいは被検体である。
【0030】
「生体試料」の例としてはこれらに限定されないが、任意の数量の生物または過去に生存していたものからの物質が含まれる。前記生物の例としてはこれらに限定されないが、人間、ハツカネズミ、猿、ネズミ、ウサギ、馬、あるいはその他の動物が挙げられる。前記物質の例としてはこれらに限定されないが、血液、血清、尿、涙、細胞、臓器、細胞組織、骨、骨髄、リンパ液、リンパ節、滑液膜組織、軟骨細胞、滑膜マクロファージ、内皮細胞および皮膚などが挙げられる。
【0031】
「治療薬物濃度モニタリング濃度」という用語は、薬物の無作用レベルから毒作用発生レベルまでの濃度を指す。現下認識されているエベロリムスについての治療域は一般的に3-15ng/mLである。しかし、当然のことながら、広範囲な情報を提供することが効果的であり、且つ、一般的にアッセイ範囲は治療域よりも広範囲であるという共通認識がある。したがって、治療薬物モニタリング濃度の管理(モニタリング)を含むアッセイはエベロリムスの幅広い濃度範囲における感度を提供しえる。
【0032】
「患者」という用語は、被験者(人間)および被験動物を含むものを示す。
【0033】
体液中の薬物およびその他の小分子などのハプテンを検出するために行う定量式イムノアッセイ法が数多く知られている。エベロリムスのアッセイ法の具体例としては、抗エベロリムス抗体と試料を組み合わせて、試料中のエベロリムス量を示す抗エベロリムス‐抗体エベロリムス複合体の量を検出するものが挙げられる。
【0034】
イムノアッセイの実施例において、LC/MSなどの解析方法により得られた濃度と比較したエベロリムス濃度に関する情報を統計的に提供するために、適度なエベロリムスに対する感度と特異性を有する多クローン性抗体且つ又は単クローン抗体が採用される。
【0035】
上記のようなイムノアッセイは、具体例として患者から採取された試料(以下、「患者試料」)中の薬物レベルをモニターするのに有用となる。
【0036】
薬物などの小分子を検出するイムノアッセイを設計することは非常に難しい。前記されるような小分子はしばしば抗原性に欠け、抗体を生成することが困難である。これは、免疫反応を抑制するために使用されるエベロリムスなどの薬物で特に問題となる。免疫原性を増加させるために、より大型の抗原化合物(具体例としては、これらに限定されないがウシ血清アルブミン、オバルブミン、キーホールリンペットヘモシニアンなどを含むタンパク質またはポリペプチド)を該薬物に抱合する。さらに、イムノアッセイにおける薬物の検出は、一般的に、抗体、被検体または被検体類似物質に抱合する検出可能な標識の使用を必要とする。
【0037】
免疫原は、水酸基(hydroxyl ヒドロキシ )の1つ(例えば、位置番号28の水酸基など)と反応したリンカーを通してエベロリムスを抗原性担体蛋白質へ共役することによって生成しえる。このような方法は、米国特許第6,635,745号およびヨーロッパ特許0 693 132号に記載されており、参照により本稿に援用される。但し、抗原性担体間に延びるリンカーが、さらに感度の高い抗体の生成をもたらすことも明らかになっている。特定の理論に拘束されることなく考慮すると、リンカーが長くなるにつれてエピトープにアクセスし易くなり、エベロリムスに対する抗体の特異性が増大することにつながる。
【0038】
一実施例において、免疫原抱合体は例えば、nは、0または1であり、 Xは、リンカー鎖が置換ないしは非置換でありえ、また直鎖ないしは分岐鎖でもありえることを特徴とする3-10個の炭素またはヘテロ原子から成るリンカー鎖であり、 Yは、カルボニル、-NH-, -S-, -CH2- および-O-から成る基から選択され、 そして、Zは抗原担体であることを特徴とする、図1および次の化学式IIに示される化合物である。
【0039】
【化3】
【0040】
この実施形態において、リンカー(X)は、少なくとも1つの原子が炭素(C)であることを特徴とする3つ以上の原子の鎖体から成る。リンカー分子は、直鎖または分枝鎖でありえ、少なくとも一つのC原子に加えて、N、O、SおよびPなどの(相互無関係に置き換え可能な)異種原子を含むことができるものである。該リンカーはまた、多重結合を含むこともできる。該リンカーが分岐鎖の場合、各分岐は環状構造(rings)を形成するものでありえる。該リンカーが分岐鎖の場合、リンカーの長さは、エベロリムスと抱合体の間の最短路における原子数によって決定される。具体例として、リンカー(X)は、原子3〜10個の鎖体、より具体的な例として原子4〜7個の鎖体、さらに具体的な例として原子4〜5個の鎖体から成る。特に適した好ましい実施例において、リンカーは原子5個の鎖体から成る。
【0041】
当然のことながら、抗原化合物またはその他のエベロリムス抱合体を、エベロリムス分子上の別の個所(具体的な例として、位置番号6番、32番または9番のケトン基の1つ)を通り、(リンカーが、適切なエベロリムス・エピトープへのアクセスを備えつつ、過度の分離がエベロリムスと抗原担体間に生じないようにするために十分な長さを有することを特徴とする)オキシム、ヒドラゾンなどの適切なリンケージを経て共役することにより形成することができる、という共通認識がある。該リンカーは、タンパク質またはその他の生体分子、または固体担体面への共役を可能にする適切な官能基に追加しえる。
【0042】
特定の一実施例において、n=1、Xは原子5個から成る鎖体、Yは--C(O)-である。このような免疫原化合物の一例には、(ZはBSAである)図6に示されるようなRAD822:BSAが挙げられる。図9の検量線に示されるように、RAD 822: BSA を使って生成された抗体は、強力な結合作用(> 100 mP)と強力な抑制作用(> 50%@ 50 ng/mL)を発揮することが証明されている。強力な結合作用および強力な抑制作用が期待されるその他の例には、n=1、Xは原子7個から成る鎖体(例えば-(CH2)7-)、Yが--C(O)-であることを特徴とする化学式IIの免疫原化合物を使用して生成された抗体が挙げられる。また、その他の化学式IIの化合物を使用して生成された抗体も、強力な結合作用および強力な抑制作用を発揮すると考えられている。
【0043】
しかし、当然のことながら、実施形態によっては中程度の結合作用(50-100 mP)且つ又は中程度の抑制作用(50-500ng/mLで50%)でもよいという共通認識がある。化学式IIの化合物から生成された抗体は、競合アッセイおよび非競合アッセイに適している。
【0044】
免疫原抱合体は、単クローン抗体の生成だけではなく、多クローン性抗体の生成にも有用である。
検出体の目的によっては、代謝物質に対する交差反応性をほとんど有さない(または、全く有さない)エベロリムスを対象に抗体を選択してもよく、あるいは、代替方法として、エベロリムスと同様に代謝物質且つ又は関連薬物の1つ以上を認識できる抗体を選択してもよい。人体の肝臓小胞体を採用して実施されたエベロリムスの生体内変化に関する包括的な研究により、ヒドロキシ-(24/25 OH RAD, 46 OH RAD)、開環化合物(RAD SA, RAD PSA)および40-ホスファチジルコリン-RAD(RAD PC)などの主な代謝物質とともに、エベロリムスのヒドロキシル化および脱メチル化に起因する少なくとも11種の代謝物質が認識されている(参照により本稿に援用されるBornsen KO, et al., Electrospray ionization and collisionally induced dissociationof RAD001 and related compounds and structural characterizationof RAD001 metabolites by nano-spray and micro liquid chromatography massspectrometry; Jacobson W, et al. Comparison of the in vitro metabolism of the macrolide immunosuppressants sirolimu and RAD. Transplantation Proceedings2001 ;33 : 614-615を参照)。
【0045】
エベロリムス代謝物質の生成は、(肝臓および腸内のCYP酵素の中で最も豊富な)シトクロムP450 3A4に起因すると考えられており、またサイクロスポリン(CsA)およびラパマイシン新陳代謝に関与するものである。具体例として、エベロリムスと代謝物質を識別できる抗体が望ましい場合、28-0の誘導体から作製された免疫原によって抗体を任意に誘導してもよい。
【0046】
免疫原以外の他のエベロリムス抱合体を調製してもよい。標識競合体(labeled competitor)分子を生成するために28-0の位置を経由するリンケージを使用する場合、化学式IIのZはビオチン、ホースラディシュ・ペルオキシダーゼまたは他の酵素、蛍光性標識、および染料、または金属ゾル、ラテックス粒子、ポリスチレン粒子などの粒子状物質、または上記されるように他のあらゆる標識、検出分子、または追跡子でありえる。このような抱合体は、任意の数の(当事者にとっては周知である)日常的な手順方法によって形成される。例としてはこれらに限定されないが、蛍光偏光法イムノアッセイ、クローン化酵素ドナーイムノアッセイ、側方流動イムノアッセイ、化学発光微粒子アッセイ法、および免疫比濁法を含む様々なイムノアッセイに有用となるエベロリムス抱合体を調製することが可能である。
【0047】
いくつかの実施形態をここに述べる。
【0048】
一実施形態において、抗体は、図6に示す化学式Iの抗原化合物(例えば、RAD 822: BSA)を使用して生成される。一競合アッセイにおいて、標識競合体(labeled competitor)は、例えば図5に示されるRAD 822:FAMCO-Eのような抗原化合物と同じまたは類似するリンケージを使用することによりエベロリムスから得られうる。但し、当然のことながら、化学式IIにXで示されるように、標識競合体(labeled competitor)が28-0のエベロリムス誘導体である場合、リンカー鎖が3-10個の原子から成る鎖体に限定されないという共通認識がある。
【0049】
競合アッセイの中には、エベロリムスが抗体に結合するときより少ない特異性で抗体に結合する標識競合体を有し、該標識競合体がエベロリムス存在下でより簡単に置き換えられるようにすることが望ましいものもある。このため、抗体結合部位のアクセスを限定するため、そして抗体との特異的結合を弱めるために、リンカーが短いほうが望ましい場合がある。多くの実施形態において標識とエベロリムスの間の距離は重要でないため、リンカーの長さが10個以上の原子から成るものも大いに使用できる。よって、当然のことながら、標識競合体のリンカーは、化学式IIにおけるXの定義に限定されない。
【0050】
他の実施例において、標識競合体は異なるリンケージを使用することによりエベロリムスから誘導される。適切な一標識競合体を化学式IIIに示す。
【0051】
【化4】
【0052】
上記化学式において
X1は1つ以上の原子から成るリンカー鎖であり、その各々は置換鎖または非置換鎖でありえ、さらに分岐鎖または非分岐鎖でありえ、Yは上記のように定義され、そして上に定義されるようにZが標識である。
【0053】
標識競合体については、リンカーX1の構成を特定のアッセイに基づいて選択してもよい。上記のように、抗体への特異的結合を抑えるために鎖体(具体例として-0-CH2-)中に原子を1個または2個だけしか含んでいない短いリンカーを備えることが望ましい場合がある。その一方では、例えば標識競合体のエベロリムスが固体担体に連結されている(tethered )場合には、長いリンカーを備え、且つ、リンカー鎖の柔軟性を増やすことが望ましい場合もある。リンカーの長さは、いかなる長さの鎖体(具体例として10〜100個の原子)から構成されうる。さらに、当然のことながら、上記Xとして定義されるリンカーは多くの用途に適しているという共通認識がある。さらにまた、当然のことながら、上記で化学式IIに関して定義されるように、
X1はXであり、
Yは上記化学式IIで定義されるものであり、そして
Zは抗原担体である、
ことを特徴とする化学式IIIの化合物は、エベロリムス用に抗体を生成するのに用いる抗原化合物として適しているという共通認識がある。
【0054】
競合アッセイの一実施形態は、スクシンイミドが競合イムノアッセイに適する標識と置換されることを特徴とする化学式IIIの抗原化合物により生成された抗体(具体例として図6に示されるRAD 822:BSA)および化学式IIIの標識競合体(具体例として図7に示される32-オキシム化合物)を用いる。FPIA法の場合、標識にFAMCO-Eを使用しえる(但し、この他にも適切な標識や追跡子を使用しえる)。非結合薬物-エベロリムスの(RAD822:BSA免疫原から生成された)抗体に対する親和性は標識された32-オキシム誘導体よりも高いので、試料中、結合オキシム誘導体により抑制(管理)される凝集率に対する効力が検出可能である非結合のエベロリムスの量は非常にわずかである。したがって、標識される32-オキシム誘導体が(例えば)ラテックスに固定化される場合、(-3-15ng/mLと極めて低値且つ狭範囲の治療域を有するが故に、エベロリムスの検出に必要な)優れた感度を達成することができる。
【0055】
オキシム・リンケージの加水分解に対する安定性はエステル結合のものよりも高い。なお、該オキシム誘導体(位置番号32)は、最も有益な条件で脱離反応を受けないことが明らかになっている。
【0056】
オキシム誘導体(活発化エステル)は、ラテックス(感作)免疫比濁法(latex enhanced immunoturbidimetric assays)などの様々なアッセイ法に望ましい候補物質である。オキシム誘導体を共役した微粒子において、安定性の改善が認められた。
【0057】
当然のことながら、上述の抗原化合物と上述の標識競合体を使用して生成された抗体のあらゆる組み合わせを、特定のアッセイおよび所望の感度に応じて最も好ましいとされる競合アッセイにおいて使用できるという共通認識がある。
【0058】
エベロリムスを対象とした蛍光偏光法によるイムノアッセイ
蛍光偏光免疫測定(FPIA)技術は、試料中の抗原/薬物間の競合的結合および標識抗原/薬物の既知濃度に基づくものである。FPIAは、本稿全体を通して援用される米国特許第4,593、089号に記述されている。アッセイ・システムにおいて、エベロリムスなどの試料抗原は、一定の数の抗体部位(sites)を獲得するためにフルオレセイン標識抗原または抗原類似物質と競合する。FPIA法システムにおける主成分は、i)抗原/薬物へ特異的に結合できる抗体、ii)抗原/薬物を含んでいる疑いのある試料、そして iii) 抗原/薬物またはフルオレセインで標識された類似物質である。溶液の分子の回転特性により、偏光度は分子の寸法に直接比例する。分子の大きさが増大するにつれて、偏光も増加する。
【0059】
フルオレセインで標識された(溶液中で高速回転するサイズの小さい)抗原/薬物を励起するために直線偏光を使用すると、放射光の偏光度が著しく減少する(depolarized)。フルオレセインで標識された抗原/薬物が抗体に結合されると、回転が遅くなり、放射光は高い偏光度を示す(highly polarized)。試料中標識されていない抗原/薬物の量が増加すると、抗体によってフルオレセインで標識された抗原/薬物の結合が減少し、試料からの放射光の偏光も減少する。本実施例において、試料中の標識されていないエベロリムスの偏光および濃度に関する精密な関係は、エベロリムスの既知濃度と較正物質(calibrators)の偏光値を比較(測定)することにより確立される。
【0060】
エベロリムスを対象とした均一微粒子(免疫比濁式)イムノアッセイ
形式A:
一実施形態において、キットには、全血、溶血血液、血清または血漿中のエベロリムスの濃度を測定する免疫比濁法を行なう際に用いられる液体試薬セットが備えられている。
この技術において、エベロリムス抱合体(具体例として28-0活発化エベロリムス抱合体)は、微粒子(例えば、Seradyn社<インディアナ州インディアナポリス市>によって製造且つ又は販売されるあらゆる微粒子、但しポリスチレンまたはカルボン酸塩で修飾されたポリスチレンおよびストレプトアビジンでコーティングされ磁粉に限る)上に配置(搭載)される。
【0061】
エベロリムスと特異的に結合可能な抗体は標準緩衝系に配合される。競合反応は、微粒子に固定されたエベロリムスと患者試料中のエベロリムスとの間で生じ、反応溶液中に存在する抗エベロリムス抗体の一定限度の量に結合する。患者試料中に薬物が存在する場合、それにより粒子状物質の凝集反応が阻害される。
【0062】
形式B:
この実施形態は、エベロリムスと特異的に結合可能な抗体が微粒子上に配置(搭載)されるという点を除いて、上述の形式Aと同じようなものである。エベロリムス(具体例として28-O活発化エベロリムス)誘導体は、薬物抱合体を形成するのに最も好ましい高分子(例えば、ウシ血清アルブミン、オバルブミン、デキストランなど)に結合される。競合反応は、緩衝液中の薬物抱合体と患者試料中のエベロリムスとの間で生じ、微粒子に固定化された抗エベロリムス抗体へ結合する。患者試料中に薬物が存在する場合、それにより粒子状物質の凝集反応が阻害される。
【0063】
クローン化酵素ドナー・イムノアッセイ … エベロリムスのCEDIA(R)技術
CEDIA(R)(Roche社の商標)は、極めて精度の高い治療薬計量方法として証明されている。CEDIA(R)は、均一法の競合アッセイにかかる米国特許第4,708,929号、酵素ドナー断片をコード化するための組換えDNAの配列と同ベクターのためのホスト(宿主)にかかる米国特許第5,120,653号、酵素ドナー断片のアミノ酸配列にかかる米国特許第5,604,091号、およびCEDIA(R)アッセイ教育キットにかかる米国特許第5,643, 734号などを含む、さまざまな特許の主題として取り扱われているものである。
【0064】
上記の特許はすべて、参照によりその[内容の]すべてにわたり本稿において援用される。CEDIA法は、生体試料中薬物の、β-D-ガラクトシド・ガラクトヒドロラーゼ(E. C. 3.2. 1.23)からの不活性遺伝子組み替え酵素ドナー(ED)断片に抱合される薬物、または標的薬物を特異的に結合することができる抗体に結合するための大腸菌からのβ-ガラクトシダーゼ(βガル)との競合に基づくものである。
【0065】
標的薬物が試料中に存在する場合、該標的薬物は、アッセイ反応液中の(前記同様に、β-D-ガラクトシド・ガラクトヒドロラーゼ<E. C. 3.2. 1.23>または、大腸菌からのβ-ガラクトシダーゼ<βガル>からの)酵素受容体(EA)断片との関連により自由に酵素活性を回復できるED薬物抱合体のED部を残して抗体に結合する。その後、活性酵素は、適切な基板に露出された時点で、定量化しえる反応生成物を生成することができる。基板の具体例としては、活性酵素によってガラクトースおよびCPR中に分割されたクロロフェノール・レッド-β-D-ガラクトピラノシド(CPRG)がある。CPRは、吸収度によって570nmの波長で測定される。薬物が試料中に存在しない場合、抗体は、ED断片がEA断片と関連するのを阻害してED薬物抱合体に結合し、よって酵素活性の回復を阻害する。反応生成物量および結果として生ずる吸光度の変化量は、試料中の薬物の量に比例する。
【0066】
不均一法による化学発光イムノアッセイ
一実施形態において、化学発光微粒子イムノアッセイ(CMIA)技術を使用する競合アッセイは、エベロリムスと特異的に結合できて粒子状物質(特に、ろ過、堆積またはその他の手段による分離に適する特定の磁粉または粒子)に共役された抗体の使用を含む。適切な化学発光分子に結合されたエベロリムスから成る標識(例えばアクリジニウム・エステル)は、磁粉上の抗エベロリムス抗体を一定限度の量[獲得するために]患者試料中の遊離エベロリムスと競合する。非結合の標識を取り除くために一般的な洗浄を行った後に、(相対発光量<RLU>で示される)化学発光量が測定される。化学発光量は、患者試料中の遊離薬の量に反比例し、また、濃度は、薬物の概知数を用いて標準曲線を描くことにより決定される。
【0067】
イムノアッセイに関するその他の形式
ここにおいて記述される誘導体、抗体、免疫原且つ又はその他の抱合体はまた、一連の検出体を伴うあらゆる数の均一・不均一法によるイムノアッセイでの使用に適している。なお、ここに提示される実施例は、限定するために記載されているのではない。
【0068】
上に述べたように、本発明は、エベロリムスを検出するためのイムノアッセイで用いられる免疫原や抱合体の調製に使用しえるエベロリムス誘導体を提供する。本発明によるエベロリムス類似物質を免疫原担体物質に共役(coupling)することによって、多クローン性抗体または単クローン抗体を生成・検出(隔離)できるため、エベロリムスを検出するためのイムノアッセイにおいて有用となる試薬である。
【0069】
前記共役は、標識または担体を結合するあらゆる化学反応によって達成することができる。このリンケージは、様々な化学機構(例えば、共有結合、親和性結合、層間挿入<intercalation>、配位結合および錯体形成など)により達成することができる。大抵の場合、該リンケージは共有結合により作製される。共有結合は、既存の側鎖を直接縮合するか、あるいは外部の架橋分子をとり込むことによって達成することができる。担体などの共役蛋白質分子を他の分子に共役する際に、多様な二価または多価連結剤を使用することができる。
【0070】
代表的な共役剤の例として、チオエステル、カルボジイミド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、ジイソシアナート、グルタルアルデヒド、ジアゾベンゼンおよびヘキサメチレンジアミンなどの有機化合物が挙げられるが、当然のことながら、この実例一覧は、本発明が属する技術分野において公知とされる様々な種類(クラス)の共役剤をすべて完全に網羅したものではなく、むしろ極一般的な共役剤の代表例を記載したものに過ぎない。実施形態として挙げられるエベロリムス・イムノアッセイは、抗エベロリムス抗体(多クローン性、単クローン性のどちらでもよい)を使用する。実施形態として挙げられる競合イムノアッセイにおいて、使用される抗体製剤は、ここに記述される免疫原によって誘導されるか、緩衝液などの水溶液に配合されるか、または、補助的あるいは類似する構成に供給される。誘導抗体を検査(テスト)することにより、エベロリムスの特異性を決定しえる。
【0071】
[実施例 I -- 免疫原化合物および標識競合体の合成]
RAD-モノ-フォルマートの合成
100mL丸底フラスコを使って、RADをアルゴン(Aγ)環境下において、0.6gの2mLの乾性塩化メチレンに溶解し、1アリコート(~10μL)を、HPLCおよびTLCアッセイ用に保存した。反応溶液の入っている丸底フラスコを約−20℃の氷/NaClの中に浸して3-5分の間放置することにより反応用フラスコを冷やした。乾性ピリジン(0.25mL)を、金属針(15cm)のついたガラス製注射器(水分が完全に取り除かれているもの)を使ってすべて一度に追加した。約1/2-1分後に、金属針(15cm)のついたガラス製注射器(水分が完全に取り除かれているもの)を使って、0.35mLの乾性アリルクロロフォルマート(allylchloroformate)を追加した。その追加直後に、沈殿が生じたため、1時間の間攪拌した。5mLの飽和NaHCO3を追加することにより反応を停止し、その後、停止した反応を塩化メチレンで抽出した。有機相を混合した後に、乾燥して(Na2S04)、濾過した。濾液を250mLの丸底フラスコに移し(100-250mL)、揮発物を(+30℃以下の水浴中で)減圧蒸発させた。粗製生成物を、塩化メチレン中の40%酢酸エチルの中で、シリカクロマトグラフィーにより精製した。0.53gの最終生成物が収集された。
【0072】
連結(tethered)RADフォルマートの合成(図1)
RAD-モノフォルマート0.4g、DMAP 9mg、ピメリン酸モノアリルエステル0.2gを撹拌棒を装備した50mL丸底フラスコ(水分が完全に取り除かれているもの)に入れ、5mLの乾性CH2Cl2をアルゴン下0℃の氷/水の中に浸された上記フラスコ中に追加した。該溶液を5-10分放置して冷した後、DCC 0.2gを素早く追加し、0℃で5時間放置して反応させた。沈殿したDCUをWhatman #1フィルタ上で収集した。フラスコと沈殿物を氷のように冷たい約10mLのCH2Cl2で共に洗浄し、有機質層を氷のように冷たい1MのHCl、飽和水性重炭酸ナトリウム、で洗浄し、Na2SO4上で乾燥した後上澄みを取り(または濾過し)、固形物質を2x5mLのCH2Cl2で洗浄し、粗製生成物を真空下で濃縮(凝縮)して0.45gを収集した。酢酸エチル/メチレン・クロロライド(1: 1)のシリカゲルカラムを用いたフラッシュクロマトグラフィーによって、さらなる精製を達成することができる。
【0073】
RAD-酸の合成(脱保護)(図2)
0.362gの保護RADを、室温且つアルゴン下において、撹拌棒およびゴムシールを装備した(水分が完全に取り除かれている)琥珀製の丸底フラスコ中に入れた。結露を防ぐために、試薬を室温で少なくとも30分間放置して温めた。
【0074】
5.75mLの乾性塩化メチレンを、(水分が完全に取り除かれている)針のついた(水分が完全に取り除かれている)プラスチックまたはガラス製の注射器を使用して反応フラスコへ加え、73μL(4当量)の氷酢酸を自動ピペットにて加えた。7.4mg(0.02当量または2%)のテトラキス-(トリフェニルフォスフィン)-パラジウム(0)(Pd(PPh3)4)を、秤量紙上で検量してから反応溶液に加えた。室温下で上記反応液に260μLのトリブチルスズヒドリドを滴下させて追加したものを、さらに室温で約30分間攪拌して反応させた。該フラスコは回転蒸発装置に配置され、その中身が約2-3mLの溶液になるまで濃縮した。該溶液は、5-6cmの短いガラス製クロマトグラフィーカラム(乾性Si02量=50cm3、直径約4cm)に置かれた。溶出液:第1酢酸エチル200mL、酢酸エチル中の第2 10%アセトン200mL、酢酸エチル中の第3 50%アセトン200mL 、純アセトン約1.5L。生成物の分留(fractions)を、真空下において濃縮した結果、273mgのRAD酸が収集された。
【0075】
RAD-822の合成(NHS活性化)(図3)
前手順で得られたRAD酸0.281gを室温で温め、再度アルゴンで充填した。DMAP 3.1mg(0.1当量)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)88mg(3当量)、DCC 79mg(1.5当量)を反応フラスコ内にすばやく加え、注射器を介して乾性塩化メチレン3.0mLを加えることにより反応を開始させた。アルゴン下、室温において1時間攪拌して反応作用を続行した。その後、氷/水浴に浸し、さらに2時間攪拌して反応させた。この手順の終わりに、1.5mLのヘキサンを追加し、攪拌を停止した。沈殿した尿素(DCU)を、毛細管ピペットを使って綿栓を通して濾過した。(氷のように冷たい)1.0MのHCl、飽和NaCl、飽和NaHCO3、飽和NaCI、蒸留水の順に、各々均等な量で有機相を抽出した。有機相を
Na2SO4を加えて乾燥させ、減圧濃縮した。粗製のRAD-822を約1mLのCH2Cl2中で溶解し、シリカゲルカラムに載せた。試料をヘキサン/アセトン(1: 1)によって溶出し、そして生成物を収集および真空濃縮した結果、46mgの収量を得ることができた。
【0076】
RAD-822は本発明の様々な実施形態において使用されえる。ここにおいて、この化合物は、位置番号28のエステルで修飾されたリンカーとともに、実施例として記載されるFPIA法の実施形態において使用されえるしかしながら、RAD 822は、脱離反応により加水分解し、結果として化学分解する場合がある。よって、RAD822は、QMS(R)技術など(Seradyn社:インディアナ州インディアナポリス市)厳しい熱応力条件が要求されるその他の実施形態にとっては最適な選択とはいえない。
【0077】
RAD822:FAMCO-E FP追跡子の合成(図4)
100mL丸底フラスコの重量を測定し、ピペットを使って1mLのFAMCO-E溶液を適した大きさの丸底フラスコに移した。ロータリー・エバポレータを使って溶剤を減圧下で回転蒸発させた。プラスチック製キャップでふたをしたフラスコをアルミ箔で包み、磁気撹拌機を上記フラスコに取り付けた(追加した)。1mLのDMF溶液を、ピペットで上記フラスコへ移し、40-50分間室温で攪拌した。十分な量のRADを-78℃の冷凍庫から取り出し、室温に放置して溶かした。4mgのRAD 822の重量を秤量紙上で量り、FAMCO-E溶液の入っているフラスコにその粉末を入れた(移した)。磁気撹拌皿上で該フラスコを氷/水浴に浸し、アルゴン圧下で1時間の反応させた後、さらに室温で30-40分間引き続き反応させた(合計2時間以内)。溶剤を(高真空ポンプによる)減圧下で蒸発させた。粗製生成物(バッチサイズ1mgに対し0.5-2mL)を、メタノール(必要最低限の量)に溶解した。TLC溶剤を、85mLのCH2CL2および15 mLのMeOHを加えることにより調製した。プレートを作動中の換気フード内で少なくとも60分間空気乾燥させ、追跡子バンド(tracer band)を該プレートからこすり落とした(scraped)。粉末状物質を、30mL(孔隙率M)のブーフナー濾過漏斗に移し、100%メタノールで洗浄した。濾液を収集して適切な大きさの丸底フラスコに移した。濾液を乾燥状態になるまで濃縮し、メタノールに再度溶解した。その溶液を0.45μmフィルタを通して濾過し、その濾液を琥珀製の容器に収集した。
【0078】
RAD 822:BSA免疫原の合成(図5)
テフロン(登録商標)でコーティングされた磁気撹拌棒を備える100mL丸底フラスコを使用し、室温および強力な攪拌条件の下に、RAD 822(27.2mg)のDMSO(6.8mL)溶液をBSA:PBS(10mL, 20 mM PBS pH 7.2)の溶液中に滴下させてゆっくりと混合(追加)させた。その結果、その溶液は徐々に濁りだした。丸底フラスコをアルミ箔で覆い、さらに2時間室温下で攪拌した後、冷凍室(cold room)において50mM PBS緩衝液pH 7.5に対して、ベローズ(蛇腹)状透析チューブ(Pierce社)内を通してで5回透析を行った。最終量は45 mLだった。該溶液を、Amicon社製の心式限外濾過器 セントリプレップ(Centriprep)(ロット番号874710、10 kD MWCO)を使用して、9 mL(〜8mg/mL)に濃縮した。該溶液をよく混ぜて均質性を保証するようにした。
【0079】
エベロリムス-O-カルボキシメチル-32-オキシムの合成(図6)
エベロリムス溶液(+23℃の乾性ピリジン3.0 mL中の290mg)に160mgのカルボキシメトキシルアミンヘミ塩酸(carboxymethoxylamine hemihydrochloride)を加え、撹拌棒を備えた丸底フラスコの中で不活性雰囲気下にて反応させた。5-6時間反応溶液を撹拌した後に、該容量を〜25 mLの塩化メチレンで薄め、その後、同量の1.2Mの低温HC1、飽和重炭酸ナトリウム、および飽和塩化ナトリウムで連続的に抽出した。ここで得られる有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し真空下で濃縮した後、次の活性化ステップでそのまま使用した。
【0080】
ヘキサン中の40%酢酸エチル、4%メタノールを移動相として2mL/分で使用して行われた(Regis Technologiesによる)「シリカ」定常期のHPLC分析(280nmにおけるUV検出)の結果は、該反応により異性核(EおよびZ)が(同等の減衰係数有すると仮定した場合)3:1の比率で生成されることを示している。正確なモル体積は1030.6であり、MS-ESI (M+Na+) は1052.8である。
【0081】
エベロリムス-O-カルボキシメチル-32-オキシムの活発化エステル(スクシンイミド)の合成(図7)
(前手順から得られた)エベロリムス-O-カルボキシメチル-27-オキシム309mg、乾性N,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)7mg、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)124mg、およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)173mgをすべて一緒に混合し、乾性塩化メチレンに溶解して0℃に冷却する。不活性雰囲気下において約6時間撹拌した後に、そこで得られた懸濁液を濾過し、1.2MのHCI、飽和重炭酸ナトリウム、飽和塩化ナトリウムで連続的に抽出した。結果として得られた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ヘキサン/アセトン(3/2)、ヘキサン/アセトン(1/1)、ヘキサン/アセトン(2/3) (すべてv/v)の溶媒混合液を用いてシリカゲル上でクロマトグラフィによる分離を連続的に行った。主な生成物含有分留(fractions)を混合して真空濃縮した結果、116mgの活発化エステルが収集された。ヘキサン中の40%酢酸エチル、4%メタノールを移動相として使用して2mL/分で行われた(Regis Technologiesによる)「シリカ」定常期のHPLC分析(280nmにおけるUV検出)の結果は、該反応により異性核(EおよびZ)が生成される(基準となる分解能は設定されていない)ことを示している。
【0082】
アセトン/ヘキサン(3/2, v/v)の混合液における薄層クロマトグラフィーはRf=0.48、正確なモル体積は1127.6であり、MS-ESI(M+Na+)は1150.6である。
【0083】
結果として得られる化合物を図8に示す。当然のことながら、スクシンイミド基は免疫原と置換してもよい(RAD822に関して上述されたRAD 822:BSAを得るための工程に類似)、あるいは、スクシンイミド基は、標識と置換してもよい(RAD822に関して上述されたRAD 822:FAMCO- Eを得るための工程に類似)、という共通認識がある。また、当然のことながら、他の免疫原、標識および追跡子を使用してもよいという共通認識がある。
【0084】
[実施例 II -- 抗体の調製]
多クローン性抗エベロリムス抗体は従来方式によって調製することができる。実施例-Iの作製工程において、被験動物はエベロリムス免疫原(RAD/BSA 822)で免疫化された。予防接種(免疫化)のスケジュールとして、初回注入時には、0.5mLの完全フロイントアジュバント混合の免疫原0.5mLが注入された。初回以降の注入に関しては、0.5mLの不完全フロイントアジュバント混合の免疫原0.5mLを注射した。各被験動物は通常、2週間に一回のスケジュールで該予防接種を受けた。血清をRAD 822:FAMCO-E追跡子を使ってFPIA法にて検診(スクリーニング)した。3匹のウサギからの隔月の生産ブリード(各ブリードごと〜20 mL)を共にプールした。濾過および稀釈前の、プールされた合計量は約500mLである。ウサギから採取した抗血清を0.2um酢酸セルロースフィルタで真空濾過し、アジ化ナトリウムと塩化ナトリウムを伴うリン酸緩衝液でpH7.5に薄めた。最終量は約1000mLである。
【0085】
単クローン性抗エベロリムス抗体は、ハツカネズミの免疫化によって調製することができる。ハツカネズミには、本発明の免疫原およびフロイントのアジュバントを含む成分を注射することができる。最終予防接種(免疫処置)の後、ハツカネズミを殺して脾臓を処理した。脾臓細胞をミエローマ細胞と融合し、その融合細胞を増殖させ、上澄みをELISA法にて検診(スクリーニング)した。
EXAMPLE III -- RAD 822:FAMCO-E 追跡子を用いての蛍光偏光法によるイムノアッセイ:
【0086】
自動蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA)
本実施例においては、エベロリムスを対象とする代表的な蛍光偏光法によるイムノアッセイ(FPIA)について記述する。
【0087】
抗被検体の抗体(実施例-IIの抗エベロリムス抗体)または「A」、フルオレセイン:エベロリムス類似物質抱合体(追跡子または「T」)、および前処理緩衝液または「B」にかかる競合アッセイを用いた自動TDx偏光分析装置(Abbott社研究所:テキサス州アービング市)を使用して、蛍光偏光法によるイムノアッセイが行なわれた。ヒト血清にスパイクされたエベロリムスの所定濃度を含む様々な種類の較正物質6個を用いて、実施例に記述される自動アッセイの較正を行った。患者試料(血漿)を、TDx器機用に設計された円形の回転荷台に配置されているプラスチック製の試料用カップに入れた。当該の自動アッセイは、Abbott社研究所(テキサス州アービング市)により提供される文献に詳しく記述されている。当然のことながら、TDx偏光分析装置がこの実施例で使用されているが、FPIA法による偏光検出にその他の装置を使用してもよい。
【0088】
分析用検体収集および調製
このアッセイは単にトラフ試料を対象にして特徴づけられたものである。EDTAで処理された全血が各アッセイに使用される。各アッセイには、一般的な無菌静脈穿刺技術を使用してガラス製もしくはプラスチック製のEDTAチューブの中に収集された全血600ゲルが用いられる。具体例として、患者試料を2-8℃にて最大24時間まで保管しえる。24時間以上保管する必要がある場合、全血を-20℃以下に冷凍することにより、最大28日間は試験に使用できる。具体例として、冷凍された試料を使用する際には、使用前に試料を完全に溶かし、くまなくかき混ぜる。試料抽出を行なう前には、(冷凍の場合も、採取直後に使用される場合も)全試料の容器をゆっくりと丁寧に逆さにするという動作を複数回繰り返すことにより、試料をくまなくかき混ぜる。
【0089】
試薬
抗体試薬(5mL)・・・安定剤としてタンパク質を、そして防腐剤として<0.1%アジ化ナトリウム含んでいる、緩衝液中の<5% のウサギ抗血清。 図6(RAD 822: BSA)に示される免疫原を用い、実施例-IIと一貫した方法で多クローン性抗体試薬を生成した。
【0090】
追跡子試薬(5mL) ・・・0.01M PBS、pH7.5、0.1%アジ化ナトリウム、および0.01mg/mLのウシγグロブリンを含んでいる、緩衝液中の <1%のフルオレセイン追跡子(図5に示されるRAD822:FAMCO-E FP)。バイアルキャップの標識は「T」。
【0091】
前処理緩衝液(5mL)・・・トリス緩衝液、洗浄剤、および防腐剤としての<0.1%アジ化ナトリウム。
バイアルキャップの標識は「B」。
【0092】
沈澱剤(7.5 mL)・・・沈殿試薬および<0.1%アジ化ナトリウムを含んでいること。
【0093】
アッセイ手順
A.試料抽出手順:
試料(較正物質、患者試料、および対照群)を器具によって分析直前に抽出する。
分析の対象となっている較正物質、対照、または試料を、各々600μlずつ、ピペットを使って適切な遠心分離管へ入れる。700μlのメタノールをそれぞれの試料に加え、試料とメタノールの入っている遠心分離管の各々に100μlの沈澱剤を加える。蒸発を防ぐため、その後すぐに各遠心分離管にふたをして、それから少なくとも10秒間最高スピードで激しく混合(渦運動による混合)する。その後、少なくとも8分間、13,400 x gで遠心分離機により分離する。上記遠心処理後、各々の上澄み(少なくとも300μl)を回転荷台に載せ、試料カートリッジへピペットで移し、試料蒸発を最小限に抑えるために直ちに該当する器具を作動させる。
【0094】
B.アッセイ手順の要約:
各患者試料と対照用に、2個のカートリッジと2個のキュベットをアッセイ用回転荷台に配置する。試料抽出手順の上澄みを少なくとも300μl、ピペットを使って泡が入らないように上手に各試料へ入れる。試料の入っている容器をゆっくりと丁寧にひっくり返してかき混ぜる。バイアルキャップを取り除き、試薬セットおよびアッセイ用回転荷台を分析装置にセットした後、速やかに(すぐに)アッセイ工程を開始する。
【0095】
ここで使用される標準物質は、ヒト溶血血液への重量追加(gravimetric addition)によって調製された。較正物質の各ロットには、有効とされるLC/MS方法に基づく(由来する)標準物質を用いたTDx(R)の数値が割り当てられる。現在の形状では、各レベルの較正物質に割り当てられた数値濃度は、較正物質の段ボール箱のラベル(標識)およびその箱に同封される較正物質数値カードに表記(印刷)される。これらの数値は、それぞれの新しい較正物質ロットとともにTDx(R)パラメータへプログラムされる。アッセイ範囲は、2.00ng/mLから較正物質Fに割り当てられた数値(〜40ng/mL)までの範囲である。
【0096】
結果:
アッセイシステムの具体例として定量法が挙げられる。エベロリムス濃度は、TDx(R)/TDxFlx(R)分析装置の印刷出力にng/mLの単位で記録される。アッセイの感度よりも低い患者試料の結果は、「<2.00ng/mL」として報告されるものとする。ほとんどの試料中のエベロリムス濃度はアッセイ範囲内である。
【0097】
患者試料から得られた数値が較正物質Fよりも大きい場合は「HI」と印刷される。一例として、このような試料については、エベロリムスに対して陰性の全血を使って手作業にて希釈し(1:1または1:4)、試料抽出手順の再実施および最終的に印刷された数値(真性濃度を得るために希釈係数を掛けた数値)により再分析してもよい。
【0098】
較正物質、対照群および試料は、2回以上の再現でき、平均値が報告されるものであることが好ましい。好ましくは、重複体の変動係数(CV)の結果が20%以上のものを繰り返す。
【0099】
大多数の試料抽出物はメタノールである。メタノールの揮発性により、抽出と試料分析との間の時間は蒸発を防ぐために限定されている。試料の蒸発によりデータが不当に上昇し、結果に誤差が生じえる。したがって、試料が器具上に置かれた時に異常終了する場合、これらの試料は再抽出・再実行されたものである。
【0100】
C. 多クローン性抗体試薬(RAD 822: BSA)と追跡子試薬(RAD822: FAMCO-E)を用いたFPIA法の性能特性
1. スパイクされた試料の回復
エベロリムスに対して陰性の全血の標本を、アッセイ範囲にわたりエベロリムスでスパイクした後、n=3にて異なる3機の分析装置上で分析した。その平均値はLC/MS値と比較され、パーセント回復が計算された。その結果を表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
2. 参照方法に対する患者標本相関
エベロリムス治療を受けている患者から採取した全血試料について、本発明の実施形態によるTDx(R)のアッセイシステムによって測定された濃度をLC/MSによって測定されたものと比較した。
2件の参考検査室による腎臓移植患者に関する試験結果(「Passing Bablock線形回帰分析法」により分析されたデータ)を、本発明の実施形態によるアッセイシステムとLC/MSを比較して図10に示す。
【0103】
TDx上の試料は、2.40ng/mLから33.17ng/mLの範囲におよんだ(110人の患者からの試料)。上記同様に、2件の参考検査室による心臓移植患者に関する試験結果(「Passing Bablock線形回帰分析法」により分析されたデータ)を、本発明の実施形態によるアッセイシステムとLC/MSを比較して図11に示す。TDx上の試料は、2.06ng/mLから20.60 ng/mLの範囲におよんだ(62人の患者からの試料)。
本発明の実施形態によるアッセイシステムは、パーセント稀釈および回復の間でアッセイ範囲にわたって比例関係を示す。
【0104】
本発明の実施形態によるアッセイシステムの精度をNCCLSの基準にのっとって評価した。重複体中の各試料のアッセイ(非継続的な20日間、1日2回実施、分析装置1機のみを使用し且つ必要に応じて較正)を行うことによる研究が実施された。
結果を表2に下に示す。
【0105】
【表2】
【0106】
3. 特異性-- 交差反応性
主なエベロリムス代謝物質に対する抗体試薬「A」の交差反応性を検討するための研究を実施した。(以下表3に一覧される)化合物を、5ng/mLの割合で、通常のプール・ヒト全血(治療域の下限側(約4ng/mL)でスパイクされたエベロリムスを含むもの)に加え、本発明の実施形態によるアッセイシステム(定量法)で試験を実施した。エベロリムスでスパイクされた通常のヒト全血は、対照群として試験を実施した。
【0107】
今回は5ng/mLで試験を実施したが、エベロリムス治療を受けている実際の患者では代謝物質濃度が低目になると予想される。被験対象として人間を採用した薬物代謝研究における親薬物量<20%において、RAD SA、RADおよびPSAが認められた。スパイクされた追加物質を用いてのヒドロキシ-(24/25 OH RAD, 46 OH RAD)代謝物質の交差反応性に関する試験は実施しなかった。
【0108】
【表3】
【0109】
4. 特異性-- 薬物干渉
本発明の実施形態によるアッセイシステムは、干渉する可能性のある化合物に対して試験を行った。表4(表A〜表4C)に一覧される物質を(12ng/mLのエベロリムスを含む)ヒト全血に加えると、試験が臨床的に妥当とされるレベルを上回る濃度で行われた場合には、5%未満の交差反応性を示した。
【0110】
【表4A】
【0111】
【表4B】
【0112】
【表4C】
【0113】
特異性 -- 干渉物質
以下表5に一覧される化合物を、治療域の下限で(または下限以下で)、エベロリムスを含む通常のヒト全血に加えたときに、本発明の実施形態によるアッセイシステムによるエベロリムスの計量(定量)に≦10%の誤差(エラー)が生じた。
【0114】
【表5】
【0115】
20%および60%でのヘマトクリットの場合も、本発明の実施形態によるアッセイシステムによるエベロリムスの計量(定量)に≦10%の誤差(エラー)が生じた。
【0116】
5.感度
複数再現間のアッセイ間CVが≦20%であるところのヒト全血中最低濃度として定義されるところの本発明の実施形態によるアッセイシステムの定量化限界(LOQ:Limit of Quantification)は、2.00ng/mLである。
【0117】
ゼロとは区別されえる最低濃度として定義されるところの本発明の実施形態によるアッセイシステムの検出下限値(LDD:Lower Limit of Detection)は、0.80ng/mLである。当然のことながら、上記結果は、多クローン性抗体試薬(RAD 822: BSA)と追跡子試薬(RAD822:FAMCO-E)を用いるFPIA法に関する一実施形態の具体例として記載されているに過ぎない。
【0118】
本発明の範囲に属するその他の競合アッセイに、異なる総合性能を備えてもよい。
【0119】
本稿において引用される参考文献はすべて、参照により、記述どおり且つ全体的に援用される。
また、本稿において、好ましい実施形態に関連して本発明が詳述されているが、その他の変形・改造様態も、下記の特許請求の範囲に記載および定義される本発明の精神と範囲内に含まれる存在する。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明によるエベロリムス誘導体の具体例の構成を示す。
【図2】連結された(tethered-)RAD-フォルマートの合成を示す。
【図3】RAD酸(脱保護)の合成を示す。
【図4】RAD-822(NHS活性)の合成を示す。
【図5】RAD 822:FAMCO-E FP追跡子の合成を示す。
【図6】RAD 822:BSA免疫原の合成を示す。
【図7】エベロリムスの32-オキシム誘導体の構成を示す。
【図8】図7の32-オキシム誘導体の活発化エステルを示す。
【図9】検量線(FPIA法)を示す(X軸=検量値、Y軸=速度(mp)、抗体(多クローン性)、FP追跡子=RAD822: FAMCO-E)。
【図10】FPIA法によるエベロリムスのアッセイにより、腎臓移植患者における本発明とLC/MSを比較した結果を示す。
【図11】FPIA法によるエベロリムスのアッセイにより、腎臓移植患者における本発明とLC/MSを比較した結果を示す。
【図12】エベロリムスのQMS検量線(抗体:RAD822免疫原からの多クローン抗体、抗原:粒子に共役されるオキシム(図5)誘導体)である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、生体液中のエベロリムス(everolimus)を検出(determination)するための試薬と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エベロリムス[40-O-(2-ヒドロキシエチル)-ラパマイシン]は、新規のマクロライド免疫抑制剤である。エベロリムス(別称:SDZ-RAD, RAD, Certican(R)は、ラパマイシン(Sirolimus)を改善することを目指して、Novartis社により開発された(参照により本稿に援用される非特許文献1)。(ラパマイシン(Sirolimus)は、アロ抗原に対する細胞反応において成長因子による形質導入シグナルを阻止する増殖シグナル阻害剤である。(参照により本稿に援用される特許文献1)エベロリムスは、ラパマイシン(Sirolimus)と比較した場合、有機溶媒中においてより優れた安定性と更に強化された溶解性を示すと共に、副作用が少なくより好ましい薬物動態を示すものである。エベロリムスは、免疫抑制投薬療法の効能を向上させるためにマイクロエマルジョン・サイクロスポリン(Novartis社製Neorale(R))と併用されてきた(参照により本稿に援用されるKovarik JMらの非特許文献2)。
【0003】
臨床状態の複雑性および免疫抑制および腎毒作用に対する感度に個人差があるため、治療の効果と副作用のバランスを維持することは医師にとって非常に困難な課題となっている(参照により本稿に援用される非特許文献3)。
上記薬物の生体液中における濃度の測定および解釈として定義される薬物治療管理(TDM:Therapeutic Drug Monitoring)は、移植プロトコルにおける不可欠な要素となっており、器官反応の予測を最終的な課題目的としている。
【0004】
腎臓移植における副作用(有害影響)を最小限に止めつつ目的の効能を示す濃度として報告されているエベロリムスの治療濃度は、3-15ng/mLである(非特許文献2)。
【0005】
また、最近のデータにより、エベロリムスの薬物治療管理(TDM)は心臓移植患者に有益であることが示されている(参照により本稿に援用される非特許文献4)。1.5mg/日および3mg/日ので治療を受けた患者における、移植後最初の一年間のエベロリムスのトラフレベル(最低濃度)は安定しており、各々平均5.2±3.8ng/mLと9.4±6.3ng/mLであった。
【0006】
エベロリムスのTDMは次の参考文献により報告されており、各々参考により本稿に援用される。
【0007】
McMahon LM, et al. "High-throughput analysis of Certican (RAD001) and cyclosporin A (CsA)in whole blood by liquid chromatography/massspectrometry using a semi-automated 96-well solid-phase extraction system." Rapid Communications in Mass Spectrometry 2000; 14: 1965-1971;
Brignol N, et al. "High-throughput semi-automated 96-wellliquid/liquid extraction and liquid chromatography/mass spectrometric analysisof Certican (RAD001) and cyclosporin A (CsA)in whole blood." Rapid Communications in Mass Spectrometry 2002; 15: 1-10;
Streit F. et al. "Rapid liquid chromatography-tandem massspectrometry routine method for simultaneous determination of sirolimus, Certican, tacrolimus, and cyclosporin A in whole blood." Clinical Chemistry. 2002; 48 (6): 955-958.
【特許文献1】国際公開WO-009409010パンフレット
【非特許文献1】Nashan B.、"The role of Certican in the many pathways of chronic rejection. Transplantation Proceedings," Transplantation Proceedings, 2001, 33:3215-3230.
【非特許文献2】Kovarik JM, et al. "Exposure-response relationship for Certican in de novo kidney transplantation : define a therapeutic range." Transplantation 2002; 73(6): 920-925.
【非特許文献3】Wallemacq, Pierre E. "Therapeutic monitoring of immunosuppressant drugs. Where are we?," Clinical Chemistry and Laboratory Medicine(2004), 42(11), 1204-121.
【非特許文献4】Starling, Randall C.; et al. "Therapeutic drug monitoring for everolimus in heart transplant recipients based on exposure-effect modeling." American Journal of Transplantation (2004), 4(12), 2126- 2131.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、HPLC、LC/MSを使用する方法は、例えば試料の調製や分析(アッセイ)に時間がかかり、コストも高く、且つ労働集約的作業を要するという点で、商業的用途に使用するものとしては実用性に欠ける面がある。日常的なエベロリムスTDMには、単純な自動試験や高出力を有する臨床分析装置を利用できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、新規のエベロリムスの誘導体と新規のエベロリムス免疫原を教示するものである。本発明はまた、エベロリムス免疫原を使用して生成された多クローン性抗体と単クローン抗体についてだけではなく、標識競合体(labeled competitor)および追跡子(トレーサ)についても教示する。これらの抗体、抱合体および追跡子は、生体液中のエベロリムスを検出するイムノアッセイに有用となるものである。
【0010】
本発明は、その一様態において、試料中にエベロリムスが存在するか否かを決定するための競合イムノアッセイを備える。実例として記載される競合イムノアッセイは、特にエベロリムスを結合できる抗体と検出可能な標識に抱合するエベロリムス化合物から構成されており、該抱合エベロリムス化合物は試料中でエベロリムスと競合して抗体を結合するように構成され、且つ、該標識は、試料中のエベロリムスが薬物治療管理濃度に含まれている場合に該試料中のエベロリムス濃度を示すシグナルを提供することを特徴とする。
【0011】
一実施形態において、イムノアッセイは約3〜約15ng/mLの範囲でエベロリムスを管理(監視)するのに適している。他の実施形態において、競合イムノアッセイは、実例として約0〜約40ng/mLといった広範囲にわたりエベロリムスの濃度を示すシグナルを備える。
【0012】
本発明は、他の様態において、試料中のエベロリムス量を測定(判断)する方法を備える。該方法は、特に、エベロリムスを結合できる抗体および検出可能標識に抱合するベロリムス化合物と試料を混合すること(ここにおいて、抱合エベロリムス化合物は、抗体と結合するために試料中のエベロリムスと競合するように構成される)、試料中のエベロリムスの濃度を示す検出可能な標識からのシグナルを測定すること、そして試料中のエベロリムスの量を決定することを含む。
【0013】
また、本発明におけるさらに別の様態では、化合物が次の構成を成して提供されている。
【0014】
【化1】
【0015】
上記構成において、
nは0または1であり、
Xは、3-10個の炭素またはヘテロ原子から成るリンカー鎖であり、このリンカー鎖は置換鎖または非置換鎖でありえ、さらに直鎖または分岐鎖でありえ、
Yは、-C(O)-, -NH-, -S-, -CH2-および-O-から成るグループから選択され、
Zは抗原担体または標識である。
【0016】
特定の一具体例において、Xは-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-であり、Yは--C(O)-であり、Zは抗原担体である。これらの化合物を使用して生成された抗体と該抗体を使用するイムノアッセイ・キットも提供されている。下記のされる好適な実施形態に関する詳細な説明には、本発明を現下認識されるごとく実施するために最良な様式が示されており、本発明のその他の特長は、当事者がこの好適な実施形態の詳細説明を踏まえて考慮すれば明白なものとなるはずである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
「エベロリムス(everolimus)」は、CERTICAN(R)という商標でNovartis AG社により販売されている免疫抑制剤である。エベロリムスは、化学式 Iの構成を有する。
【0018】
【化2】
【0019】
「ハプテン(haptens)」は部分抗原または不完全抗原である。ハプテンは通常、大部分が低分子量からなり、一般的に抗体形成を刺激する能力を有さないが、抗体と反応する無タンパク物質である。高分子量抗原担体にハプテンを共役した後に、この共役生成物(i.e.、免疫原)を被験者(人間)または被験動物の体内へ注入することにより、抗体を形成しえる。エベロリムスはハプテンである。
【0020】
本稿で用いられる「特にエベロリムスを結合できる抗体」という句は、非特異性相互作用とは対照的に、真性抗体・抗原反応において薬物中の少なくとも1つのエピトープと反応できる抗体を示す。
「類似物質(アナログ)」または「誘導体」という用語は、1つ以上の化学反応により親化合物または分子から生成された化学化合物または分子を示す。「活発化ハプテン」は、ハプテン誘導抱合体を、リンキンググループ(連結群)を連結(attach)することなどによって、合成するための反応に利用できる領域を備えるハプテン誘導体を示す。
【0021】
本稿で用いられる「リンキンググループ」または「リンカー」は、ハプテン、担体、免疫原、標識、追跡子またはその他のリンカーなどのサブストラクチャ(下部構造)の2つ以上をつなげる化学構造の一部を示す。リンキンググループは、サブストラクチャ間にまたがる(広がる)水素(またはその他の単価原子)以外の原子の少なくとも1つの途切れなく連結される鎖体を有する。リンキンググループの原子およびリンキンググループ内の鎖体の原子は、化学結合によって自ら接続する。リンカーは、直鎖または分岐鎖でありえ、また飽和あるいは不飽和炭素鎖でありえ、さらに鎖の中間または鎖の末端に1つ以上の異種原子を含みえる。「異種原子」とは、炭素原子以外の原子、具体例として、酸素、窒素、硫黄およびリンを意味する。リンキンググループはまた、鎖の一部として、または鎖内の原子のうちの1つにおける置換として、巡回群または芳香族基を含みえる。リンキンググループまたはリンカー中の原子数は水素以外の原子数により決定される。リンキンググループ内の鎖体における原子数は、結合しているサブストラクチャ間の最短経路に沿った水素以外の原子数により決定される。リンキンググループはハプテンを活性化する(例えば、標識または担体とハプテンの抱合体を合成するためにハプテン上で利用できる領域を提供する)ために使用されえる。
【0022】
本稿に用いられる「免疫原」、「免疫原(性)の」という用語は、有機体中の免疫反応を生成するまたは発生させる能力を有する物質を示す。「活性エステル」は、例えばペプチドとタンパク質のような化合物の自由アミノ基と反応できるエステル基を示す。活性エステルの例として、N-ヒドロキシスクシンイミド、p-ニトロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、N-ヒドロキシ・ベンゾトリアゾリルが挙げられる。
【0023】
本稿に用いられる「担体」または「免疫原担体」という用語は、ハプテンと結合でき、よって、ハプテンが免疫反応を誘発し特に抗原(ハプテン)と結合できる抗体の生成を誘発することを可能にする免疫原性物質(一般にタンパク質)を示す。外来として認識され、よってホスト(宿主)からの免疫反応を誘発する核酸、タンパク質、糖タンパク質、複合多糖、および粒子状物質が、担体物質には含まれている。また、様々なタンパク質がポリ(アミノ酸)免疫原担体として使用されえる。これらのタンパク質はアルブミンおよび血清蛋白質、例えばグロブリン、接眼レンズタンパク質、リポタンパク質など、を含んでいる。タンパク質の具体例として、ウシ血清アルブミン(BSA)、キーホールリンペットヘモシニアン(KLH)、卵オバルブミン、ウシγグロブリン(BGG)などが挙げられる。あるいは、合成ポリ(アミノ酸)を使用しえる。また、免疫原担体は、単糖の凝縮が繰り返されることにより構築された高分子量重合体である多糖(類)でありえる。
【0024】
多糖(類)の例として、でんぷん、グリコーゲン、セルローズ、アラビアゴムなどの炭水化物ガム、寒天などが挙げられる。また、多糖はポリ(アミノ酸)残留物且つ又は脂質残留物を含むことができる。免疫原担体は、単独の、或いは前記ポリ(アミノ酸)または多糖(類)のうちの1つに抱合するポリ(核酸)でもありえる。また、免疫原担体は粒子状物質でもありえる。該粒子状物質の直径は、具体例として約0.02ミクロン(μm)以上、さらに具体例として約100μm以下であり、通常は0.05μm〜10μmである。該粒子状物質は、有機あるいは無機、膨潤可能あるいは膨潤不可能、多孔性あるいは非多孔性でありえ、状況に応じて(任意に)水の密度に近いもの(通常約0.5〜1.5g/mL)であり、そして、透明な材質または部分的に透明な材質あるいは不透明な材質から成るものが使用できる。
【0025】
また、該粒子状物質は、具体例として(これらに限定されないが)赤血球、白血球、リンパ球、ハイブリドーマ(融合細胞)、連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、大腸菌およびビールスなどを含む細胞や微生物のような生体物質でありえる。該粒子状物質はまた、有機・無機重合体、リポソーム、ラテックス、リン脂質小胞、あるいはリポ蛋白質で構成されるものでありうる。
【0026】
「ポリ(アミノ酸)」または「ポリペプチド」はアミノ酸から形成されたポリアミドである。ポリ(アミノ酸)は、例えば約2,000分子量以上の範囲に及び、分子量の上限は無いが、通常10,000,000ダルトン以下、状況に応じて(任意に)約600,000のダルトン以下とされる。しかしながら、この範囲は通常、免疫原担体または酵素が関与するかどうかにより異なる。
【0027】
「ペプチド」には、通常アミド(ペプチド)の結合によるアミノ酸リンケージ(連鎖機構)2つ以上によって形成されるあらゆる化合物( 通常は、(NH2末端以外の)各アミノ酸残基のα-アミノ基が直鎖中における次の残基のα-カルボキシル基に連結されるα-アミノ酸の重合体)を使用できる。本稿において、「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「ポリ(アミノ酸)」という用語は、大きさに関する制限を有さないこの種(クラス)の化合物を示すものの同意語として用いられている。この種(クラス)のもので大型の類に属するものはタンパク質とも呼ばれる。
【0028】
「標識」「検出分子」または「追跡子」は、検出可能シグナルを生成する、あるいは生成するように誘導しえる、あらゆる分子を意味する。標識は、被検体、免疫原、抗体(具体例としては抗原化合物に反応して生成された抗体、あるいは特異性を有する二次抗体)、または配位子(特にハプテン)などのレセプタに結合できるレセプタまたは分子のようなその他の分子に結合しえる。標識の例としてはこれらに限定されないが、放射性同位体、酵素、酵素、断片、酵素基質、酵素抑制因子、補酵素、
触媒、発蛍光団、染料、化学発光剤、発光剤、感光剤、非磁性または磁性粒子状物質、固体担体、リポソーム、配位子、レセプタ、およびハプテン放射性同位体が挙げられる。
【0029】
本稿において用いられる「抗原化合物」という用語は、免疫反応をもたらすために使用される化合物を示す。具体例として、抗原化合物は免疫原担体につながれたハプテン(例えばエベロリムス)である。該抗原化合物は所望の抗体を生成するために使用される。本稿において使用される「標識競合体(labeled competitor)」という用語は、分子が検出可能な標識または追跡子に連結されていることを特徴とする、エベロリムスに対して特異性を有する抗体に特異的に結合しえる分子である。具体例として、該分子はエベロリムス、またはそれの誘導体あるいは被検体である。
【0030】
「生体試料」の例としてはこれらに限定されないが、任意の数量の生物または過去に生存していたものからの物質が含まれる。前記生物の例としてはこれらに限定されないが、人間、ハツカネズミ、猿、ネズミ、ウサギ、馬、あるいはその他の動物が挙げられる。前記物質の例としてはこれらに限定されないが、血液、血清、尿、涙、細胞、臓器、細胞組織、骨、骨髄、リンパ液、リンパ節、滑液膜組織、軟骨細胞、滑膜マクロファージ、内皮細胞および皮膚などが挙げられる。
【0031】
「治療薬物濃度モニタリング濃度」という用語は、薬物の無作用レベルから毒作用発生レベルまでの濃度を指す。現下認識されているエベロリムスについての治療域は一般的に3-15ng/mLである。しかし、当然のことながら、広範囲な情報を提供することが効果的であり、且つ、一般的にアッセイ範囲は治療域よりも広範囲であるという共通認識がある。したがって、治療薬物モニタリング濃度の管理(モニタリング)を含むアッセイはエベロリムスの幅広い濃度範囲における感度を提供しえる。
【0032】
「患者」という用語は、被験者(人間)および被験動物を含むものを示す。
【0033】
体液中の薬物およびその他の小分子などのハプテンを検出するために行う定量式イムノアッセイ法が数多く知られている。エベロリムスのアッセイ法の具体例としては、抗エベロリムス抗体と試料を組み合わせて、試料中のエベロリムス量を示す抗エベロリムス‐抗体エベロリムス複合体の量を検出するものが挙げられる。
【0034】
イムノアッセイの実施例において、LC/MSなどの解析方法により得られた濃度と比較したエベロリムス濃度に関する情報を統計的に提供するために、適度なエベロリムスに対する感度と特異性を有する多クローン性抗体且つ又は単クローン抗体が採用される。
【0035】
上記のようなイムノアッセイは、具体例として患者から採取された試料(以下、「患者試料」)中の薬物レベルをモニターするのに有用となる。
【0036】
薬物などの小分子を検出するイムノアッセイを設計することは非常に難しい。前記されるような小分子はしばしば抗原性に欠け、抗体を生成することが困難である。これは、免疫反応を抑制するために使用されるエベロリムスなどの薬物で特に問題となる。免疫原性を増加させるために、より大型の抗原化合物(具体例としては、これらに限定されないがウシ血清アルブミン、オバルブミン、キーホールリンペットヘモシニアンなどを含むタンパク質またはポリペプチド)を該薬物に抱合する。さらに、イムノアッセイにおける薬物の検出は、一般的に、抗体、被検体または被検体類似物質に抱合する検出可能な標識の使用を必要とする。
【0037】
免疫原は、水酸基(hydroxyl ヒドロキシ )の1つ(例えば、位置番号28の水酸基など)と反応したリンカーを通してエベロリムスを抗原性担体蛋白質へ共役することによって生成しえる。このような方法は、米国特許第6,635,745号およびヨーロッパ特許0 693 132号に記載されており、参照により本稿に援用される。但し、抗原性担体間に延びるリンカーが、さらに感度の高い抗体の生成をもたらすことも明らかになっている。特定の理論に拘束されることなく考慮すると、リンカーが長くなるにつれてエピトープにアクセスし易くなり、エベロリムスに対する抗体の特異性が増大することにつながる。
【0038】
一実施例において、免疫原抱合体は例えば、nは、0または1であり、 Xは、リンカー鎖が置換ないしは非置換でありえ、また直鎖ないしは分岐鎖でもありえることを特徴とする3-10個の炭素またはヘテロ原子から成るリンカー鎖であり、 Yは、カルボニル、-NH-, -S-, -CH2- および-O-から成る基から選択され、 そして、Zは抗原担体であることを特徴とする、図1および次の化学式IIに示される化合物である。
【0039】
【化3】
【0040】
この実施形態において、リンカー(X)は、少なくとも1つの原子が炭素(C)であることを特徴とする3つ以上の原子の鎖体から成る。リンカー分子は、直鎖または分枝鎖でありえ、少なくとも一つのC原子に加えて、N、O、SおよびPなどの(相互無関係に置き換え可能な)異種原子を含むことができるものである。該リンカーはまた、多重結合を含むこともできる。該リンカーが分岐鎖の場合、各分岐は環状構造(rings)を形成するものでありえる。該リンカーが分岐鎖の場合、リンカーの長さは、エベロリムスと抱合体の間の最短路における原子数によって決定される。具体例として、リンカー(X)は、原子3〜10個の鎖体、より具体的な例として原子4〜7個の鎖体、さらに具体的な例として原子4〜5個の鎖体から成る。特に適した好ましい実施例において、リンカーは原子5個の鎖体から成る。
【0041】
当然のことながら、抗原化合物またはその他のエベロリムス抱合体を、エベロリムス分子上の別の個所(具体的な例として、位置番号6番、32番または9番のケトン基の1つ)を通り、(リンカーが、適切なエベロリムス・エピトープへのアクセスを備えつつ、過度の分離がエベロリムスと抗原担体間に生じないようにするために十分な長さを有することを特徴とする)オキシム、ヒドラゾンなどの適切なリンケージを経て共役することにより形成することができる、という共通認識がある。該リンカーは、タンパク質またはその他の生体分子、または固体担体面への共役を可能にする適切な官能基に追加しえる。
【0042】
特定の一実施例において、n=1、Xは原子5個から成る鎖体、Yは--C(O)-である。このような免疫原化合物の一例には、(ZはBSAである)図6に示されるようなRAD822:BSAが挙げられる。図9の検量線に示されるように、RAD 822: BSA を使って生成された抗体は、強力な結合作用(> 100 mP)と強力な抑制作用(> 50%@ 50 ng/mL)を発揮することが証明されている。強力な結合作用および強力な抑制作用が期待されるその他の例には、n=1、Xは原子7個から成る鎖体(例えば-(CH2)7-)、Yが--C(O)-であることを特徴とする化学式IIの免疫原化合物を使用して生成された抗体が挙げられる。また、その他の化学式IIの化合物を使用して生成された抗体も、強力な結合作用および強力な抑制作用を発揮すると考えられている。
【0043】
しかし、当然のことながら、実施形態によっては中程度の結合作用(50-100 mP)且つ又は中程度の抑制作用(50-500ng/mLで50%)でもよいという共通認識がある。化学式IIの化合物から生成された抗体は、競合アッセイおよび非競合アッセイに適している。
【0044】
免疫原抱合体は、単クローン抗体の生成だけではなく、多クローン性抗体の生成にも有用である。
検出体の目的によっては、代謝物質に対する交差反応性をほとんど有さない(または、全く有さない)エベロリムスを対象に抗体を選択してもよく、あるいは、代替方法として、エベロリムスと同様に代謝物質且つ又は関連薬物の1つ以上を認識できる抗体を選択してもよい。人体の肝臓小胞体を採用して実施されたエベロリムスの生体内変化に関する包括的な研究により、ヒドロキシ-(24/25 OH RAD, 46 OH RAD)、開環化合物(RAD SA, RAD PSA)および40-ホスファチジルコリン-RAD(RAD PC)などの主な代謝物質とともに、エベロリムスのヒドロキシル化および脱メチル化に起因する少なくとも11種の代謝物質が認識されている(参照により本稿に援用されるBornsen KO, et al., Electrospray ionization and collisionally induced dissociationof RAD001 and related compounds and structural characterizationof RAD001 metabolites by nano-spray and micro liquid chromatography massspectrometry; Jacobson W, et al. Comparison of the in vitro metabolism of the macrolide immunosuppressants sirolimu and RAD. Transplantation Proceedings2001 ;33 : 614-615を参照)。
【0045】
エベロリムス代謝物質の生成は、(肝臓および腸内のCYP酵素の中で最も豊富な)シトクロムP450 3A4に起因すると考えられており、またサイクロスポリン(CsA)およびラパマイシン新陳代謝に関与するものである。具体例として、エベロリムスと代謝物質を識別できる抗体が望ましい場合、28-0の誘導体から作製された免疫原によって抗体を任意に誘導してもよい。
【0046】
免疫原以外の他のエベロリムス抱合体を調製してもよい。標識競合体(labeled competitor)分子を生成するために28-0の位置を経由するリンケージを使用する場合、化学式IIのZはビオチン、ホースラディシュ・ペルオキシダーゼまたは他の酵素、蛍光性標識、および染料、または金属ゾル、ラテックス粒子、ポリスチレン粒子などの粒子状物質、または上記されるように他のあらゆる標識、検出分子、または追跡子でありえる。このような抱合体は、任意の数の(当事者にとっては周知である)日常的な手順方法によって形成される。例としてはこれらに限定されないが、蛍光偏光法イムノアッセイ、クローン化酵素ドナーイムノアッセイ、側方流動イムノアッセイ、化学発光微粒子アッセイ法、および免疫比濁法を含む様々なイムノアッセイに有用となるエベロリムス抱合体を調製することが可能である。
【0047】
いくつかの実施形態をここに述べる。
【0048】
一実施形態において、抗体は、図6に示す化学式Iの抗原化合物(例えば、RAD 822: BSA)を使用して生成される。一競合アッセイにおいて、標識競合体(labeled competitor)は、例えば図5に示されるRAD 822:FAMCO-Eのような抗原化合物と同じまたは類似するリンケージを使用することによりエベロリムスから得られうる。但し、当然のことながら、化学式IIにXで示されるように、標識競合体(labeled competitor)が28-0のエベロリムス誘導体である場合、リンカー鎖が3-10個の原子から成る鎖体に限定されないという共通認識がある。
【0049】
競合アッセイの中には、エベロリムスが抗体に結合するときより少ない特異性で抗体に結合する標識競合体を有し、該標識競合体がエベロリムス存在下でより簡単に置き換えられるようにすることが望ましいものもある。このため、抗体結合部位のアクセスを限定するため、そして抗体との特異的結合を弱めるために、リンカーが短いほうが望ましい場合がある。多くの実施形態において標識とエベロリムスの間の距離は重要でないため、リンカーの長さが10個以上の原子から成るものも大いに使用できる。よって、当然のことながら、標識競合体のリンカーは、化学式IIにおけるXの定義に限定されない。
【0050】
他の実施例において、標識競合体は異なるリンケージを使用することによりエベロリムスから誘導される。適切な一標識競合体を化学式IIIに示す。
【0051】
【化4】
【0052】
上記化学式において
X1は1つ以上の原子から成るリンカー鎖であり、その各々は置換鎖または非置換鎖でありえ、さらに分岐鎖または非分岐鎖でありえ、Yは上記のように定義され、そして上に定義されるようにZが標識である。
【0053】
標識競合体については、リンカーX1の構成を特定のアッセイに基づいて選択してもよい。上記のように、抗体への特異的結合を抑えるために鎖体(具体例として-0-CH2-)中に原子を1個または2個だけしか含んでいない短いリンカーを備えることが望ましい場合がある。その一方では、例えば標識競合体のエベロリムスが固体担体に連結されている(tethered )場合には、長いリンカーを備え、且つ、リンカー鎖の柔軟性を増やすことが望ましい場合もある。リンカーの長さは、いかなる長さの鎖体(具体例として10〜100個の原子)から構成されうる。さらに、当然のことながら、上記Xとして定義されるリンカーは多くの用途に適しているという共通認識がある。さらにまた、当然のことながら、上記で化学式IIに関して定義されるように、
X1はXであり、
Yは上記化学式IIで定義されるものであり、そして
Zは抗原担体である、
ことを特徴とする化学式IIIの化合物は、エベロリムス用に抗体を生成するのに用いる抗原化合物として適しているという共通認識がある。
【0054】
競合アッセイの一実施形態は、スクシンイミドが競合イムノアッセイに適する標識と置換されることを特徴とする化学式IIIの抗原化合物により生成された抗体(具体例として図6に示されるRAD 822:BSA)および化学式IIIの標識競合体(具体例として図7に示される32-オキシム化合物)を用いる。FPIA法の場合、標識にFAMCO-Eを使用しえる(但し、この他にも適切な標識や追跡子を使用しえる)。非結合薬物-エベロリムスの(RAD822:BSA免疫原から生成された)抗体に対する親和性は標識された32-オキシム誘導体よりも高いので、試料中、結合オキシム誘導体により抑制(管理)される凝集率に対する効力が検出可能である非結合のエベロリムスの量は非常にわずかである。したがって、標識される32-オキシム誘導体が(例えば)ラテックスに固定化される場合、(-3-15ng/mLと極めて低値且つ狭範囲の治療域を有するが故に、エベロリムスの検出に必要な)優れた感度を達成することができる。
【0055】
オキシム・リンケージの加水分解に対する安定性はエステル結合のものよりも高い。なお、該オキシム誘導体(位置番号32)は、最も有益な条件で脱離反応を受けないことが明らかになっている。
【0056】
オキシム誘導体(活発化エステル)は、ラテックス(感作)免疫比濁法(latex enhanced immunoturbidimetric assays)などの様々なアッセイ法に望ましい候補物質である。オキシム誘導体を共役した微粒子において、安定性の改善が認められた。
【0057】
当然のことながら、上述の抗原化合物と上述の標識競合体を使用して生成された抗体のあらゆる組み合わせを、特定のアッセイおよび所望の感度に応じて最も好ましいとされる競合アッセイにおいて使用できるという共通認識がある。
【0058】
エベロリムスを対象とした蛍光偏光法によるイムノアッセイ
蛍光偏光免疫測定(FPIA)技術は、試料中の抗原/薬物間の競合的結合および標識抗原/薬物の既知濃度に基づくものである。FPIAは、本稿全体を通して援用される米国特許第4,593、089号に記述されている。アッセイ・システムにおいて、エベロリムスなどの試料抗原は、一定の数の抗体部位(sites)を獲得するためにフルオレセイン標識抗原または抗原類似物質と競合する。FPIA法システムにおける主成分は、i)抗原/薬物へ特異的に結合できる抗体、ii)抗原/薬物を含んでいる疑いのある試料、そして iii) 抗原/薬物またはフルオレセインで標識された類似物質である。溶液の分子の回転特性により、偏光度は分子の寸法に直接比例する。分子の大きさが増大するにつれて、偏光も増加する。
【0059】
フルオレセインで標識された(溶液中で高速回転するサイズの小さい)抗原/薬物を励起するために直線偏光を使用すると、放射光の偏光度が著しく減少する(depolarized)。フルオレセインで標識された抗原/薬物が抗体に結合されると、回転が遅くなり、放射光は高い偏光度を示す(highly polarized)。試料中標識されていない抗原/薬物の量が増加すると、抗体によってフルオレセインで標識された抗原/薬物の結合が減少し、試料からの放射光の偏光も減少する。本実施例において、試料中の標識されていないエベロリムスの偏光および濃度に関する精密な関係は、エベロリムスの既知濃度と較正物質(calibrators)の偏光値を比較(測定)することにより確立される。
【0060】
エベロリムスを対象とした均一微粒子(免疫比濁式)イムノアッセイ
形式A:
一実施形態において、キットには、全血、溶血血液、血清または血漿中のエベロリムスの濃度を測定する免疫比濁法を行なう際に用いられる液体試薬セットが備えられている。
この技術において、エベロリムス抱合体(具体例として28-0活発化エベロリムス抱合体)は、微粒子(例えば、Seradyn社<インディアナ州インディアナポリス市>によって製造且つ又は販売されるあらゆる微粒子、但しポリスチレンまたはカルボン酸塩で修飾されたポリスチレンおよびストレプトアビジンでコーティングされ磁粉に限る)上に配置(搭載)される。
【0061】
エベロリムスと特異的に結合可能な抗体は標準緩衝系に配合される。競合反応は、微粒子に固定されたエベロリムスと患者試料中のエベロリムスとの間で生じ、反応溶液中に存在する抗エベロリムス抗体の一定限度の量に結合する。患者試料中に薬物が存在する場合、それにより粒子状物質の凝集反応が阻害される。
【0062】
形式B:
この実施形態は、エベロリムスと特異的に結合可能な抗体が微粒子上に配置(搭載)されるという点を除いて、上述の形式Aと同じようなものである。エベロリムス(具体例として28-O活発化エベロリムス)誘導体は、薬物抱合体を形成するのに最も好ましい高分子(例えば、ウシ血清アルブミン、オバルブミン、デキストランなど)に結合される。競合反応は、緩衝液中の薬物抱合体と患者試料中のエベロリムスとの間で生じ、微粒子に固定化された抗エベロリムス抗体へ結合する。患者試料中に薬物が存在する場合、それにより粒子状物質の凝集反応が阻害される。
【0063】
クローン化酵素ドナー・イムノアッセイ … エベロリムスのCEDIA(R)技術
CEDIA(R)(Roche社の商標)は、極めて精度の高い治療薬計量方法として証明されている。CEDIA(R)は、均一法の競合アッセイにかかる米国特許第4,708,929号、酵素ドナー断片をコード化するための組換えDNAの配列と同ベクターのためのホスト(宿主)にかかる米国特許第5,120,653号、酵素ドナー断片のアミノ酸配列にかかる米国特許第5,604,091号、およびCEDIA(R)アッセイ教育キットにかかる米国特許第5,643, 734号などを含む、さまざまな特許の主題として取り扱われているものである。
【0064】
上記の特許はすべて、参照によりその[内容の]すべてにわたり本稿において援用される。CEDIA法は、生体試料中薬物の、β-D-ガラクトシド・ガラクトヒドロラーゼ(E. C. 3.2. 1.23)からの不活性遺伝子組み替え酵素ドナー(ED)断片に抱合される薬物、または標的薬物を特異的に結合することができる抗体に結合するための大腸菌からのβ-ガラクトシダーゼ(βガル)との競合に基づくものである。
【0065】
標的薬物が試料中に存在する場合、該標的薬物は、アッセイ反応液中の(前記同様に、β-D-ガラクトシド・ガラクトヒドロラーゼ<E. C. 3.2. 1.23>または、大腸菌からのβ-ガラクトシダーゼ<βガル>からの)酵素受容体(EA)断片との関連により自由に酵素活性を回復できるED薬物抱合体のED部を残して抗体に結合する。その後、活性酵素は、適切な基板に露出された時点で、定量化しえる反応生成物を生成することができる。基板の具体例としては、活性酵素によってガラクトースおよびCPR中に分割されたクロロフェノール・レッド-β-D-ガラクトピラノシド(CPRG)がある。CPRは、吸収度によって570nmの波長で測定される。薬物が試料中に存在しない場合、抗体は、ED断片がEA断片と関連するのを阻害してED薬物抱合体に結合し、よって酵素活性の回復を阻害する。反応生成物量および結果として生ずる吸光度の変化量は、試料中の薬物の量に比例する。
【0066】
不均一法による化学発光イムノアッセイ
一実施形態において、化学発光微粒子イムノアッセイ(CMIA)技術を使用する競合アッセイは、エベロリムスと特異的に結合できて粒子状物質(特に、ろ過、堆積またはその他の手段による分離に適する特定の磁粉または粒子)に共役された抗体の使用を含む。適切な化学発光分子に結合されたエベロリムスから成る標識(例えばアクリジニウム・エステル)は、磁粉上の抗エベロリムス抗体を一定限度の量[獲得するために]患者試料中の遊離エベロリムスと競合する。非結合の標識を取り除くために一般的な洗浄を行った後に、(相対発光量<RLU>で示される)化学発光量が測定される。化学発光量は、患者試料中の遊離薬の量に反比例し、また、濃度は、薬物の概知数を用いて標準曲線を描くことにより決定される。
【0067】
イムノアッセイに関するその他の形式
ここにおいて記述される誘導体、抗体、免疫原且つ又はその他の抱合体はまた、一連の検出体を伴うあらゆる数の均一・不均一法によるイムノアッセイでの使用に適している。なお、ここに提示される実施例は、限定するために記載されているのではない。
【0068】
上に述べたように、本発明は、エベロリムスを検出するためのイムノアッセイで用いられる免疫原や抱合体の調製に使用しえるエベロリムス誘導体を提供する。本発明によるエベロリムス類似物質を免疫原担体物質に共役(coupling)することによって、多クローン性抗体または単クローン抗体を生成・検出(隔離)できるため、エベロリムスを検出するためのイムノアッセイにおいて有用となる試薬である。
【0069】
前記共役は、標識または担体を結合するあらゆる化学反応によって達成することができる。このリンケージは、様々な化学機構(例えば、共有結合、親和性結合、層間挿入<intercalation>、配位結合および錯体形成など)により達成することができる。大抵の場合、該リンケージは共有結合により作製される。共有結合は、既存の側鎖を直接縮合するか、あるいは外部の架橋分子をとり込むことによって達成することができる。担体などの共役蛋白質分子を他の分子に共役する際に、多様な二価または多価連結剤を使用することができる。
【0070】
代表的な共役剤の例として、チオエステル、カルボジイミド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、ジイソシアナート、グルタルアルデヒド、ジアゾベンゼンおよびヘキサメチレンジアミンなどの有機化合物が挙げられるが、当然のことながら、この実例一覧は、本発明が属する技術分野において公知とされる様々な種類(クラス)の共役剤をすべて完全に網羅したものではなく、むしろ極一般的な共役剤の代表例を記載したものに過ぎない。実施形態として挙げられるエベロリムス・イムノアッセイは、抗エベロリムス抗体(多クローン性、単クローン性のどちらでもよい)を使用する。実施形態として挙げられる競合イムノアッセイにおいて、使用される抗体製剤は、ここに記述される免疫原によって誘導されるか、緩衝液などの水溶液に配合されるか、または、補助的あるいは類似する構成に供給される。誘導抗体を検査(テスト)することにより、エベロリムスの特異性を決定しえる。
【0071】
[実施例 I -- 免疫原化合物および標識競合体の合成]
RAD-モノ-フォルマートの合成
100mL丸底フラスコを使って、RADをアルゴン(Aγ)環境下において、0.6gの2mLの乾性塩化メチレンに溶解し、1アリコート(~10μL)を、HPLCおよびTLCアッセイ用に保存した。反応溶液の入っている丸底フラスコを約−20℃の氷/NaClの中に浸して3-5分の間放置することにより反応用フラスコを冷やした。乾性ピリジン(0.25mL)を、金属針(15cm)のついたガラス製注射器(水分が完全に取り除かれているもの)を使ってすべて一度に追加した。約1/2-1分後に、金属針(15cm)のついたガラス製注射器(水分が完全に取り除かれているもの)を使って、0.35mLの乾性アリルクロロフォルマート(allylchloroformate)を追加した。その追加直後に、沈殿が生じたため、1時間の間攪拌した。5mLの飽和NaHCO3を追加することにより反応を停止し、その後、停止した反応を塩化メチレンで抽出した。有機相を混合した後に、乾燥して(Na2S04)、濾過した。濾液を250mLの丸底フラスコに移し(100-250mL)、揮発物を(+30℃以下の水浴中で)減圧蒸発させた。粗製生成物を、塩化メチレン中の40%酢酸エチルの中で、シリカクロマトグラフィーにより精製した。0.53gの最終生成物が収集された。
【0072】
連結(tethered)RADフォルマートの合成(図1)
RAD-モノフォルマート0.4g、DMAP 9mg、ピメリン酸モノアリルエステル0.2gを撹拌棒を装備した50mL丸底フラスコ(水分が完全に取り除かれているもの)に入れ、5mLの乾性CH2Cl2をアルゴン下0℃の氷/水の中に浸された上記フラスコ中に追加した。該溶液を5-10分放置して冷した後、DCC 0.2gを素早く追加し、0℃で5時間放置して反応させた。沈殿したDCUをWhatman #1フィルタ上で収集した。フラスコと沈殿物を氷のように冷たい約10mLのCH2Cl2で共に洗浄し、有機質層を氷のように冷たい1MのHCl、飽和水性重炭酸ナトリウム、で洗浄し、Na2SO4上で乾燥した後上澄みを取り(または濾過し)、固形物質を2x5mLのCH2Cl2で洗浄し、粗製生成物を真空下で濃縮(凝縮)して0.45gを収集した。酢酸エチル/メチレン・クロロライド(1: 1)のシリカゲルカラムを用いたフラッシュクロマトグラフィーによって、さらなる精製を達成することができる。
【0073】
RAD-酸の合成(脱保護)(図2)
0.362gの保護RADを、室温且つアルゴン下において、撹拌棒およびゴムシールを装備した(水分が完全に取り除かれている)琥珀製の丸底フラスコ中に入れた。結露を防ぐために、試薬を室温で少なくとも30分間放置して温めた。
【0074】
5.75mLの乾性塩化メチレンを、(水分が完全に取り除かれている)針のついた(水分が完全に取り除かれている)プラスチックまたはガラス製の注射器を使用して反応フラスコへ加え、73μL(4当量)の氷酢酸を自動ピペットにて加えた。7.4mg(0.02当量または2%)のテトラキス-(トリフェニルフォスフィン)-パラジウム(0)(Pd(PPh3)4)を、秤量紙上で検量してから反応溶液に加えた。室温下で上記反応液に260μLのトリブチルスズヒドリドを滴下させて追加したものを、さらに室温で約30分間攪拌して反応させた。該フラスコは回転蒸発装置に配置され、その中身が約2-3mLの溶液になるまで濃縮した。該溶液は、5-6cmの短いガラス製クロマトグラフィーカラム(乾性Si02量=50cm3、直径約4cm)に置かれた。溶出液:第1酢酸エチル200mL、酢酸エチル中の第2 10%アセトン200mL、酢酸エチル中の第3 50%アセトン200mL 、純アセトン約1.5L。生成物の分留(fractions)を、真空下において濃縮した結果、273mgのRAD酸が収集された。
【0075】
RAD-822の合成(NHS活性化)(図3)
前手順で得られたRAD酸0.281gを室温で温め、再度アルゴンで充填した。DMAP 3.1mg(0.1当量)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)88mg(3当量)、DCC 79mg(1.5当量)を反応フラスコ内にすばやく加え、注射器を介して乾性塩化メチレン3.0mLを加えることにより反応を開始させた。アルゴン下、室温において1時間攪拌して反応作用を続行した。その後、氷/水浴に浸し、さらに2時間攪拌して反応させた。この手順の終わりに、1.5mLのヘキサンを追加し、攪拌を停止した。沈殿した尿素(DCU)を、毛細管ピペットを使って綿栓を通して濾過した。(氷のように冷たい)1.0MのHCl、飽和NaCl、飽和NaHCO3、飽和NaCI、蒸留水の順に、各々均等な量で有機相を抽出した。有機相を
Na2SO4を加えて乾燥させ、減圧濃縮した。粗製のRAD-822を約1mLのCH2Cl2中で溶解し、シリカゲルカラムに載せた。試料をヘキサン/アセトン(1: 1)によって溶出し、そして生成物を収集および真空濃縮した結果、46mgの収量を得ることができた。
【0076】
RAD-822は本発明の様々な実施形態において使用されえる。ここにおいて、この化合物は、位置番号28のエステルで修飾されたリンカーとともに、実施例として記載されるFPIA法の実施形態において使用されえるしかしながら、RAD 822は、脱離反応により加水分解し、結果として化学分解する場合がある。よって、RAD822は、QMS(R)技術など(Seradyn社:インディアナ州インディアナポリス市)厳しい熱応力条件が要求されるその他の実施形態にとっては最適な選択とはいえない。
【0077】
RAD822:FAMCO-E FP追跡子の合成(図4)
100mL丸底フラスコの重量を測定し、ピペットを使って1mLのFAMCO-E溶液を適した大きさの丸底フラスコに移した。ロータリー・エバポレータを使って溶剤を減圧下で回転蒸発させた。プラスチック製キャップでふたをしたフラスコをアルミ箔で包み、磁気撹拌機を上記フラスコに取り付けた(追加した)。1mLのDMF溶液を、ピペットで上記フラスコへ移し、40-50分間室温で攪拌した。十分な量のRADを-78℃の冷凍庫から取り出し、室温に放置して溶かした。4mgのRAD 822の重量を秤量紙上で量り、FAMCO-E溶液の入っているフラスコにその粉末を入れた(移した)。磁気撹拌皿上で該フラスコを氷/水浴に浸し、アルゴン圧下で1時間の反応させた後、さらに室温で30-40分間引き続き反応させた(合計2時間以内)。溶剤を(高真空ポンプによる)減圧下で蒸発させた。粗製生成物(バッチサイズ1mgに対し0.5-2mL)を、メタノール(必要最低限の量)に溶解した。TLC溶剤を、85mLのCH2CL2および15 mLのMeOHを加えることにより調製した。プレートを作動中の換気フード内で少なくとも60分間空気乾燥させ、追跡子バンド(tracer band)を該プレートからこすり落とした(scraped)。粉末状物質を、30mL(孔隙率M)のブーフナー濾過漏斗に移し、100%メタノールで洗浄した。濾液を収集して適切な大きさの丸底フラスコに移した。濾液を乾燥状態になるまで濃縮し、メタノールに再度溶解した。その溶液を0.45μmフィルタを通して濾過し、その濾液を琥珀製の容器に収集した。
【0078】
RAD 822:BSA免疫原の合成(図5)
テフロン(登録商標)でコーティングされた磁気撹拌棒を備える100mL丸底フラスコを使用し、室温および強力な攪拌条件の下に、RAD 822(27.2mg)のDMSO(6.8mL)溶液をBSA:PBS(10mL, 20 mM PBS pH 7.2)の溶液中に滴下させてゆっくりと混合(追加)させた。その結果、その溶液は徐々に濁りだした。丸底フラスコをアルミ箔で覆い、さらに2時間室温下で攪拌した後、冷凍室(cold room)において50mM PBS緩衝液pH 7.5に対して、ベローズ(蛇腹)状透析チューブ(Pierce社)内を通してで5回透析を行った。最終量は45 mLだった。該溶液を、Amicon社製の心式限外濾過器 セントリプレップ(Centriprep)(ロット番号874710、10 kD MWCO)を使用して、9 mL(〜8mg/mL)に濃縮した。該溶液をよく混ぜて均質性を保証するようにした。
【0079】
エベロリムス-O-カルボキシメチル-32-オキシムの合成(図6)
エベロリムス溶液(+23℃の乾性ピリジン3.0 mL中の290mg)に160mgのカルボキシメトキシルアミンヘミ塩酸(carboxymethoxylamine hemihydrochloride)を加え、撹拌棒を備えた丸底フラスコの中で不活性雰囲気下にて反応させた。5-6時間反応溶液を撹拌した後に、該容量を〜25 mLの塩化メチレンで薄め、その後、同量の1.2Mの低温HC1、飽和重炭酸ナトリウム、および飽和塩化ナトリウムで連続的に抽出した。ここで得られる有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し真空下で濃縮した後、次の活性化ステップでそのまま使用した。
【0080】
ヘキサン中の40%酢酸エチル、4%メタノールを移動相として2mL/分で使用して行われた(Regis Technologiesによる)「シリカ」定常期のHPLC分析(280nmにおけるUV検出)の結果は、該反応により異性核(EおよびZ)が(同等の減衰係数有すると仮定した場合)3:1の比率で生成されることを示している。正確なモル体積は1030.6であり、MS-ESI (M+Na+) は1052.8である。
【0081】
エベロリムス-O-カルボキシメチル-32-オキシムの活発化エステル(スクシンイミド)の合成(図7)
(前手順から得られた)エベロリムス-O-カルボキシメチル-27-オキシム309mg、乾性N,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)7mg、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)124mg、およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)173mgをすべて一緒に混合し、乾性塩化メチレンに溶解して0℃に冷却する。不活性雰囲気下において約6時間撹拌した後に、そこで得られた懸濁液を濾過し、1.2MのHCI、飽和重炭酸ナトリウム、飽和塩化ナトリウムで連続的に抽出した。結果として得られた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ヘキサン/アセトン(3/2)、ヘキサン/アセトン(1/1)、ヘキサン/アセトン(2/3) (すべてv/v)の溶媒混合液を用いてシリカゲル上でクロマトグラフィによる分離を連続的に行った。主な生成物含有分留(fractions)を混合して真空濃縮した結果、116mgの活発化エステルが収集された。ヘキサン中の40%酢酸エチル、4%メタノールを移動相として使用して2mL/分で行われた(Regis Technologiesによる)「シリカ」定常期のHPLC分析(280nmにおけるUV検出)の結果は、該反応により異性核(EおよびZ)が生成される(基準となる分解能は設定されていない)ことを示している。
【0082】
アセトン/ヘキサン(3/2, v/v)の混合液における薄層クロマトグラフィーはRf=0.48、正確なモル体積は1127.6であり、MS-ESI(M+Na+)は1150.6である。
【0083】
結果として得られる化合物を図8に示す。当然のことながら、スクシンイミド基は免疫原と置換してもよい(RAD822に関して上述されたRAD 822:BSAを得るための工程に類似)、あるいは、スクシンイミド基は、標識と置換してもよい(RAD822に関して上述されたRAD 822:FAMCO- Eを得るための工程に類似)、という共通認識がある。また、当然のことながら、他の免疫原、標識および追跡子を使用してもよいという共通認識がある。
【0084】
[実施例 II -- 抗体の調製]
多クローン性抗エベロリムス抗体は従来方式によって調製することができる。実施例-Iの作製工程において、被験動物はエベロリムス免疫原(RAD/BSA 822)で免疫化された。予防接種(免疫化)のスケジュールとして、初回注入時には、0.5mLの完全フロイントアジュバント混合の免疫原0.5mLが注入された。初回以降の注入に関しては、0.5mLの不完全フロイントアジュバント混合の免疫原0.5mLを注射した。各被験動物は通常、2週間に一回のスケジュールで該予防接種を受けた。血清をRAD 822:FAMCO-E追跡子を使ってFPIA法にて検診(スクリーニング)した。3匹のウサギからの隔月の生産ブリード(各ブリードごと〜20 mL)を共にプールした。濾過および稀釈前の、プールされた合計量は約500mLである。ウサギから採取した抗血清を0.2um酢酸セルロースフィルタで真空濾過し、アジ化ナトリウムと塩化ナトリウムを伴うリン酸緩衝液でpH7.5に薄めた。最終量は約1000mLである。
【0085】
単クローン性抗エベロリムス抗体は、ハツカネズミの免疫化によって調製することができる。ハツカネズミには、本発明の免疫原およびフロイントのアジュバントを含む成分を注射することができる。最終予防接種(免疫処置)の後、ハツカネズミを殺して脾臓を処理した。脾臓細胞をミエローマ細胞と融合し、その融合細胞を増殖させ、上澄みをELISA法にて検診(スクリーニング)した。
EXAMPLE III -- RAD 822:FAMCO-E 追跡子を用いての蛍光偏光法によるイムノアッセイ:
【0086】
自動蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA)
本実施例においては、エベロリムスを対象とする代表的な蛍光偏光法によるイムノアッセイ(FPIA)について記述する。
【0087】
抗被検体の抗体(実施例-IIの抗エベロリムス抗体)または「A」、フルオレセイン:エベロリムス類似物質抱合体(追跡子または「T」)、および前処理緩衝液または「B」にかかる競合アッセイを用いた自動TDx偏光分析装置(Abbott社研究所:テキサス州アービング市)を使用して、蛍光偏光法によるイムノアッセイが行なわれた。ヒト血清にスパイクされたエベロリムスの所定濃度を含む様々な種類の較正物質6個を用いて、実施例に記述される自動アッセイの較正を行った。患者試料(血漿)を、TDx器機用に設計された円形の回転荷台に配置されているプラスチック製の試料用カップに入れた。当該の自動アッセイは、Abbott社研究所(テキサス州アービング市)により提供される文献に詳しく記述されている。当然のことながら、TDx偏光分析装置がこの実施例で使用されているが、FPIA法による偏光検出にその他の装置を使用してもよい。
【0088】
分析用検体収集および調製
このアッセイは単にトラフ試料を対象にして特徴づけられたものである。EDTAで処理された全血が各アッセイに使用される。各アッセイには、一般的な無菌静脈穿刺技術を使用してガラス製もしくはプラスチック製のEDTAチューブの中に収集された全血600ゲルが用いられる。具体例として、患者試料を2-8℃にて最大24時間まで保管しえる。24時間以上保管する必要がある場合、全血を-20℃以下に冷凍することにより、最大28日間は試験に使用できる。具体例として、冷凍された試料を使用する際には、使用前に試料を完全に溶かし、くまなくかき混ぜる。試料抽出を行なう前には、(冷凍の場合も、採取直後に使用される場合も)全試料の容器をゆっくりと丁寧に逆さにするという動作を複数回繰り返すことにより、試料をくまなくかき混ぜる。
【0089】
試薬
抗体試薬(5mL)・・・安定剤としてタンパク質を、そして防腐剤として<0.1%アジ化ナトリウム含んでいる、緩衝液中の<5% のウサギ抗血清。 図6(RAD 822: BSA)に示される免疫原を用い、実施例-IIと一貫した方法で多クローン性抗体試薬を生成した。
【0090】
追跡子試薬(5mL) ・・・0.01M PBS、pH7.5、0.1%アジ化ナトリウム、および0.01mg/mLのウシγグロブリンを含んでいる、緩衝液中の <1%のフルオレセイン追跡子(図5に示されるRAD822:FAMCO-E FP)。バイアルキャップの標識は「T」。
【0091】
前処理緩衝液(5mL)・・・トリス緩衝液、洗浄剤、および防腐剤としての<0.1%アジ化ナトリウム。
バイアルキャップの標識は「B」。
【0092】
沈澱剤(7.5 mL)・・・沈殿試薬および<0.1%アジ化ナトリウムを含んでいること。
【0093】
アッセイ手順
A.試料抽出手順:
試料(較正物質、患者試料、および対照群)を器具によって分析直前に抽出する。
分析の対象となっている較正物質、対照、または試料を、各々600μlずつ、ピペットを使って適切な遠心分離管へ入れる。700μlのメタノールをそれぞれの試料に加え、試料とメタノールの入っている遠心分離管の各々に100μlの沈澱剤を加える。蒸発を防ぐため、その後すぐに各遠心分離管にふたをして、それから少なくとも10秒間最高スピードで激しく混合(渦運動による混合)する。その後、少なくとも8分間、13,400 x gで遠心分離機により分離する。上記遠心処理後、各々の上澄み(少なくとも300μl)を回転荷台に載せ、試料カートリッジへピペットで移し、試料蒸発を最小限に抑えるために直ちに該当する器具を作動させる。
【0094】
B.アッセイ手順の要約:
各患者試料と対照用に、2個のカートリッジと2個のキュベットをアッセイ用回転荷台に配置する。試料抽出手順の上澄みを少なくとも300μl、ピペットを使って泡が入らないように上手に各試料へ入れる。試料の入っている容器をゆっくりと丁寧にひっくり返してかき混ぜる。バイアルキャップを取り除き、試薬セットおよびアッセイ用回転荷台を分析装置にセットした後、速やかに(すぐに)アッセイ工程を開始する。
【0095】
ここで使用される標準物質は、ヒト溶血血液への重量追加(gravimetric addition)によって調製された。較正物質の各ロットには、有効とされるLC/MS方法に基づく(由来する)標準物質を用いたTDx(R)の数値が割り当てられる。現在の形状では、各レベルの較正物質に割り当てられた数値濃度は、較正物質の段ボール箱のラベル(標識)およびその箱に同封される較正物質数値カードに表記(印刷)される。これらの数値は、それぞれの新しい較正物質ロットとともにTDx(R)パラメータへプログラムされる。アッセイ範囲は、2.00ng/mLから較正物質Fに割り当てられた数値(〜40ng/mL)までの範囲である。
【0096】
結果:
アッセイシステムの具体例として定量法が挙げられる。エベロリムス濃度は、TDx(R)/TDxFlx(R)分析装置の印刷出力にng/mLの単位で記録される。アッセイの感度よりも低い患者試料の結果は、「<2.00ng/mL」として報告されるものとする。ほとんどの試料中のエベロリムス濃度はアッセイ範囲内である。
【0097】
患者試料から得られた数値が較正物質Fよりも大きい場合は「HI」と印刷される。一例として、このような試料については、エベロリムスに対して陰性の全血を使って手作業にて希釈し(1:1または1:4)、試料抽出手順の再実施および最終的に印刷された数値(真性濃度を得るために希釈係数を掛けた数値)により再分析してもよい。
【0098】
較正物質、対照群および試料は、2回以上の再現でき、平均値が報告されるものであることが好ましい。好ましくは、重複体の変動係数(CV)の結果が20%以上のものを繰り返す。
【0099】
大多数の試料抽出物はメタノールである。メタノールの揮発性により、抽出と試料分析との間の時間は蒸発を防ぐために限定されている。試料の蒸発によりデータが不当に上昇し、結果に誤差が生じえる。したがって、試料が器具上に置かれた時に異常終了する場合、これらの試料は再抽出・再実行されたものである。
【0100】
C. 多クローン性抗体試薬(RAD 822: BSA)と追跡子試薬(RAD822: FAMCO-E)を用いたFPIA法の性能特性
1. スパイクされた試料の回復
エベロリムスに対して陰性の全血の標本を、アッセイ範囲にわたりエベロリムスでスパイクした後、n=3にて異なる3機の分析装置上で分析した。その平均値はLC/MS値と比較され、パーセント回復が計算された。その結果を表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
2. 参照方法に対する患者標本相関
エベロリムス治療を受けている患者から採取した全血試料について、本発明の実施形態によるTDx(R)のアッセイシステムによって測定された濃度をLC/MSによって測定されたものと比較した。
2件の参考検査室による腎臓移植患者に関する試験結果(「Passing Bablock線形回帰分析法」により分析されたデータ)を、本発明の実施形態によるアッセイシステムとLC/MSを比較して図10に示す。
【0103】
TDx上の試料は、2.40ng/mLから33.17ng/mLの範囲におよんだ(110人の患者からの試料)。上記同様に、2件の参考検査室による心臓移植患者に関する試験結果(「Passing Bablock線形回帰分析法」により分析されたデータ)を、本発明の実施形態によるアッセイシステムとLC/MSを比較して図11に示す。TDx上の試料は、2.06ng/mLから20.60 ng/mLの範囲におよんだ(62人の患者からの試料)。
本発明の実施形態によるアッセイシステムは、パーセント稀釈および回復の間でアッセイ範囲にわたって比例関係を示す。
【0104】
本発明の実施形態によるアッセイシステムの精度をNCCLSの基準にのっとって評価した。重複体中の各試料のアッセイ(非継続的な20日間、1日2回実施、分析装置1機のみを使用し且つ必要に応じて較正)を行うことによる研究が実施された。
結果を表2に下に示す。
【0105】
【表2】
【0106】
3. 特異性-- 交差反応性
主なエベロリムス代謝物質に対する抗体試薬「A」の交差反応性を検討するための研究を実施した。(以下表3に一覧される)化合物を、5ng/mLの割合で、通常のプール・ヒト全血(治療域の下限側(約4ng/mL)でスパイクされたエベロリムスを含むもの)に加え、本発明の実施形態によるアッセイシステム(定量法)で試験を実施した。エベロリムスでスパイクされた通常のヒト全血は、対照群として試験を実施した。
【0107】
今回は5ng/mLで試験を実施したが、エベロリムス治療を受けている実際の患者では代謝物質濃度が低目になると予想される。被験対象として人間を採用した薬物代謝研究における親薬物量<20%において、RAD SA、RADおよびPSAが認められた。スパイクされた追加物質を用いてのヒドロキシ-(24/25 OH RAD, 46 OH RAD)代謝物質の交差反応性に関する試験は実施しなかった。
【0108】
【表3】
【0109】
4. 特異性-- 薬物干渉
本発明の実施形態によるアッセイシステムは、干渉する可能性のある化合物に対して試験を行った。表4(表A〜表4C)に一覧される物質を(12ng/mLのエベロリムスを含む)ヒト全血に加えると、試験が臨床的に妥当とされるレベルを上回る濃度で行われた場合には、5%未満の交差反応性を示した。
【0110】
【表4A】
【0111】
【表4B】
【0112】
【表4C】
【0113】
特異性 -- 干渉物質
以下表5に一覧される化合物を、治療域の下限で(または下限以下で)、エベロリムスを含む通常のヒト全血に加えたときに、本発明の実施形態によるアッセイシステムによるエベロリムスの計量(定量)に≦10%の誤差(エラー)が生じた。
【0114】
【表5】
【0115】
20%および60%でのヘマトクリットの場合も、本発明の実施形態によるアッセイシステムによるエベロリムスの計量(定量)に≦10%の誤差(エラー)が生じた。
【0116】
5.感度
複数再現間のアッセイ間CVが≦20%であるところのヒト全血中最低濃度として定義されるところの本発明の実施形態によるアッセイシステムの定量化限界(LOQ:Limit of Quantification)は、2.00ng/mLである。
【0117】
ゼロとは区別されえる最低濃度として定義されるところの本発明の実施形態によるアッセイシステムの検出下限値(LDD:Lower Limit of Detection)は、0.80ng/mLである。当然のことながら、上記結果は、多クローン性抗体試薬(RAD 822: BSA)と追跡子試薬(RAD822:FAMCO-E)を用いるFPIA法に関する一実施形態の具体例として記載されているに過ぎない。
【0118】
本発明の範囲に属するその他の競合アッセイに、異なる総合性能を備えてもよい。
【0119】
本稿において引用される参考文献はすべて、参照により、記述どおり且つ全体的に援用される。
また、本稿において、好ましい実施形態に関連して本発明が詳述されているが、その他の変形・改造様態も、下記の特許請求の範囲に記載および定義される本発明の精神と範囲内に含まれる存在する。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明によるエベロリムス誘導体の具体例の構成を示す。
【図2】連結された(tethered-)RAD-フォルマートの合成を示す。
【図3】RAD酸(脱保護)の合成を示す。
【図4】RAD-822(NHS活性)の合成を示す。
【図5】RAD 822:FAMCO-E FP追跡子の合成を示す。
【図6】RAD 822:BSA免疫原の合成を示す。
【図7】エベロリムスの32-オキシム誘導体の構成を示す。
【図8】図7の32-オキシム誘導体の活発化エステルを示す。
【図9】検量線(FPIA法)を示す(X軸=検量値、Y軸=速度(mp)、抗体(多クローン性)、FP追跡子=RAD822: FAMCO-E)。
【図10】FPIA法によるエベロリムスのアッセイにより、腎臓移植患者における本発明とLC/MSを比較した結果を示す。
【図11】FPIA法によるエベロリムスのアッセイにより、腎臓移植患者における本発明とLC/MSを比較した結果を示す。
【図12】エベロリムスのQMS検量線(抗体:RAD822免疫原からの多クローン抗体、抗原:粒子に共役されるオキシム(図5)誘導体)である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特異的にエベロリムスを結合することができる抗体と、検出可能な標識に抱合するエベロリムス化合物を備える試料中のエベロリムスの存在を決定するための競合イムノアッセイにおいて、
該抱合エベロリムス化合物が、抗体と結合するために、試料中のエベロリムスと競合するように構成されること、そして
試料中のエベロリムスが治療薬物モニタリング濃度に存在する場合、標識が試料中のエベロリムスの濃度を示すシグナルを提供することを特徴とする競合イムノアッセイ。
【請求項2】
治療薬濃度の範囲が約3〜約15ng/mLのエベロリムスにかかることを特徴とする請求項1に記載の競合イムノアッセイ。
【請求項3】
約0〜約40ng/mLの エベロリムスが存在する場合にシグナルがエベロリムスの濃度を示すことを特徴とする請求項1に記載の競合イムノアッセイ。
【請求項4】
nが0または1であり、 Xが3-10個の炭素またはヘテロ原子から成るリンカー鎖であり、このリンカー鎖は置換鎖または非置換リンカー鎖でありえ、さらに直鎖または分岐鎖でありえ、 Yが-C(O)-, -NH-, -S-, -CH2-および-O-から成るグループから選択され、そして Zが抗原担体である次の化学式を有する抗原を使用して抗体が生成されることを特徴とする請求項1に記載の競合イムノアッセイ。
【化1】
【請求項5】
次の化学式を有する抗原を使用して抗体が生成されることを特徴とする請求項4に記載される競合イムノアッセイ。
【化2】
【請求項6】
アッセイが、FPIA法、均一微粒子(免疫比濁法)イムノアッセイ、クローン化酵素ドナー・イムノアッセイ(CEDIA法)、化学発光不均一イムノアッセイおよび側方流動イムノアッセイから成るグループから選択されることを特徴とする請求項1に記載の競合イムノアッセイ。
【請求項7】
抱合エベロリムス化合物が、X1が1つ以上の原子から成るリンカー鎖であり、各々のリンカー鎖は置換鎖または非置換鎖でありえ、さらに分岐鎖または非分岐鎖でありえ、Yが-C(O)-, -NH-, -S-, -CH2-および-O-から成るグループのから選択され、そしてZが標識である次の化学式の化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の競合イムノアッセイ。
【化3】
【請求項8】
X1が -O-CH2-であり, Yが-C(O)-であることを特徴とする請求項7に記載される競合イムノアッセイ。
【請求項9】
抗体が、エベロリムスにかかるアッセイ範囲において50%以上の置換(displacement)の強力な結合作用と強力な抑制作用を示すことを特徴とする請求項1に記載される競合イムノアッセイ。
【請求項10】
キットとして提供される請求項1に記載の競合イムノアッセイ。
【請求項11】
較正物質をさらに備える請求項10に記載の競合イムノアッセイ。
【請求項12】
抱合エベロリムス化合物が、抗体を結合するために、試料中のエベロリムスと競合するように構成されることを特徴とし、
検出可能な標識に抱合するエベロリムス化合物および特異的にエベロリムスを結合できる抗体と試料を混合すること、
試料中のエベロリムスの濃度を示す検出可能な標識からのシグナルを測定すること、および
試料中のエベロリムスの量を決定することを含む、試料中のエベロリムスの量を決定する方法。
【請求項13】
試料中のエベロリムスが治療薬物モニタリング濃度に存在する、請求項14に記載の方法。
【請求項14】
治療薬濃度の範囲が約3〜約15ng/mLのエベロリムスにかかる、請求項15に記載の方法。
【請求項15】
nが0または1であり、 Xは、3-10個の炭素またはヘテロ原子から成るリンカー鎖であり、このリンカー鎖は置換鎖または非置換リンカー鎖でありえ且つ直鎖または分岐鎖でありえ、 Yが-C(O)-, -NH-, -S-, -CH2-および-O-から成るグループから選択され、そして Zが抗原担体である次の化学式を有する抗原を使用して抗体が生成されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【化4】
【請求項16】
試料が体液であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項17】
混合ステップが、まず検出可能な標識に抱合するエベロリムス化合物と抗体を混合し、その後で試料を加えることを含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項18】
混合ステップが、まず抗体と試料混合し、その後で検出可能な標識に抱合するエベロリムス化合物を加えることを含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項19】
nは0または1であり、 Xは、3-10個の炭素またはヘテロ原子から成るリンカー鎖であり、このリンカー鎖は置換鎖または非置換リンカー鎖でありえ且つ直鎖または分岐鎖でありえ、Yが-C(O)-, -NH-, -S-, -CH2-および-O-から成るグループから選択され、 Zが抗原担体または標識である、次の構成を有する化合物。
【化5】
【請求項20】
n=1およびXが4-6個の置換鎖または非置換、直鎖または分枝鎖のカーボンまたはヘテロ原子から成るリンカー群であることを特徴とする請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
Xが-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-であり、Yが-C(O)-であることを特徴とする請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
Zが抗原担体であることを特徴とする請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
エベロリムスへ特異的結合ができる請求項22に記載の化合物を使用して生成される抗体。
【請求項24】
抗体が単クローン抗体であることを特徴とする請求項23に記載の抗体。
【請求項25】
抗体が多クローン性抗体であることを特徴とする請求項23に記載の抗体。
【請求項26】
請求項23の抗体および検出可能な標識を備える試料のエベロリムスを検出するためのイムノアッセイ・キットにおいて、試料、抗体および標識がともに混合され、エベロリムスが試料の中にある場合に標識が検出可能なシグナルを生成するように構成されることを特徴とするイムノアッセイ・キット。
【請求項27】
標識が、抗体または抗体に対して特異性を有する2次抗体に連結されることを特徴とする請求項26に記載のイムノアッセイ。
【請求項28】
抗体と結合するために試料中のエベロリムスと競合するように構成されるエベロリムス分子に標識が連結されることを特徴とする請求項26に記載のイムノアッセイ。
【請求項1】
特異的にエベロリムスを結合することができる抗体と、検出可能な標識に抱合するエベロリムス化合物を備える試料中のエベロリムスの存在を決定するための競合イムノアッセイにおいて、
該抱合エベロリムス化合物が、抗体と結合するために、試料中のエベロリムスと競合するように構成されること、そして
試料中のエベロリムスが治療薬物モニタリング濃度に存在する場合、標識が試料中のエベロリムスの濃度を示すシグナルを提供することを特徴とする競合イムノアッセイ。
【請求項2】
治療薬濃度の範囲が約3〜約15ng/mLのエベロリムスにかかることを特徴とする請求項1に記載の競合イムノアッセイ。
【請求項3】
約0〜約40ng/mLの エベロリムスが存在する場合にシグナルがエベロリムスの濃度を示すことを特徴とする請求項1に記載の競合イムノアッセイ。
【請求項4】
nが0または1であり、 Xが3-10個の炭素またはヘテロ原子から成るリンカー鎖であり、このリンカー鎖は置換鎖または非置換リンカー鎖でありえ、さらに直鎖または分岐鎖でありえ、 Yが-C(O)-, -NH-, -S-, -CH2-および-O-から成るグループから選択され、そして Zが抗原担体である次の化学式を有する抗原を使用して抗体が生成されることを特徴とする請求項1に記載の競合イムノアッセイ。
【化1】
【請求項5】
次の化学式を有する抗原を使用して抗体が生成されることを特徴とする請求項4に記載される競合イムノアッセイ。
【化2】
【請求項6】
アッセイが、FPIA法、均一微粒子(免疫比濁法)イムノアッセイ、クローン化酵素ドナー・イムノアッセイ(CEDIA法)、化学発光不均一イムノアッセイおよび側方流動イムノアッセイから成るグループから選択されることを特徴とする請求項1に記載の競合イムノアッセイ。
【請求項7】
抱合エベロリムス化合物が、X1が1つ以上の原子から成るリンカー鎖であり、各々のリンカー鎖は置換鎖または非置換鎖でありえ、さらに分岐鎖または非分岐鎖でありえ、Yが-C(O)-, -NH-, -S-, -CH2-および-O-から成るグループのから選択され、そしてZが標識である次の化学式の化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の競合イムノアッセイ。
【化3】
【請求項8】
X1が -O-CH2-であり, Yが-C(O)-であることを特徴とする請求項7に記載される競合イムノアッセイ。
【請求項9】
抗体が、エベロリムスにかかるアッセイ範囲において50%以上の置換(displacement)の強力な結合作用と強力な抑制作用を示すことを特徴とする請求項1に記載される競合イムノアッセイ。
【請求項10】
キットとして提供される請求項1に記載の競合イムノアッセイ。
【請求項11】
較正物質をさらに備える請求項10に記載の競合イムノアッセイ。
【請求項12】
抱合エベロリムス化合物が、抗体を結合するために、試料中のエベロリムスと競合するように構成されることを特徴とし、
検出可能な標識に抱合するエベロリムス化合物および特異的にエベロリムスを結合できる抗体と試料を混合すること、
試料中のエベロリムスの濃度を示す検出可能な標識からのシグナルを測定すること、および
試料中のエベロリムスの量を決定することを含む、試料中のエベロリムスの量を決定する方法。
【請求項13】
試料中のエベロリムスが治療薬物モニタリング濃度に存在する、請求項14に記載の方法。
【請求項14】
治療薬濃度の範囲が約3〜約15ng/mLのエベロリムスにかかる、請求項15に記載の方法。
【請求項15】
nが0または1であり、 Xは、3-10個の炭素またはヘテロ原子から成るリンカー鎖であり、このリンカー鎖は置換鎖または非置換リンカー鎖でありえ且つ直鎖または分岐鎖でありえ、 Yが-C(O)-, -NH-, -S-, -CH2-および-O-から成るグループから選択され、そして Zが抗原担体である次の化学式を有する抗原を使用して抗体が生成されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【化4】
【請求項16】
試料が体液であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項17】
混合ステップが、まず検出可能な標識に抱合するエベロリムス化合物と抗体を混合し、その後で試料を加えることを含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項18】
混合ステップが、まず抗体と試料混合し、その後で検出可能な標識に抱合するエベロリムス化合物を加えることを含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項19】
nは0または1であり、 Xは、3-10個の炭素またはヘテロ原子から成るリンカー鎖であり、このリンカー鎖は置換鎖または非置換リンカー鎖でありえ且つ直鎖または分岐鎖でありえ、Yが-C(O)-, -NH-, -S-, -CH2-および-O-から成るグループから選択され、 Zが抗原担体または標識である、次の構成を有する化合物。
【化5】
【請求項20】
n=1およびXが4-6個の置換鎖または非置換、直鎖または分枝鎖のカーボンまたはヘテロ原子から成るリンカー群であることを特徴とする請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
Xが-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-であり、Yが-C(O)-であることを特徴とする請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
Zが抗原担体であることを特徴とする請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
エベロリムスへ特異的結合ができる請求項22に記載の化合物を使用して生成される抗体。
【請求項24】
抗体が単クローン抗体であることを特徴とする請求項23に記載の抗体。
【請求項25】
抗体が多クローン性抗体であることを特徴とする請求項23に記載の抗体。
【請求項26】
請求項23の抗体および検出可能な標識を備える試料のエベロリムスを検出するためのイムノアッセイ・キットにおいて、試料、抗体および標識がともに混合され、エベロリムスが試料の中にある場合に標識が検出可能なシグナルを生成するように構成されることを特徴とするイムノアッセイ・キット。
【請求項27】
標識が、抗体または抗体に対して特異性を有する2次抗体に連結されることを特徴とする請求項26に記載のイムノアッセイ。
【請求項28】
抗体と結合するために試料中のエベロリムスと競合するように構成されるエベロリムス分子に標識が連結されることを特徴とする請求項26に記載のイムノアッセイ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2007−528502(P2007−528502A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503037(P2007−503037)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【国際出願番号】PCT/US2005/008078
【国際公開番号】WO2005/088307
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(502377420)セラディン インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【国際出願番号】PCT/US2005/008078
【国際公開番号】WO2005/088307
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(502377420)セラディン インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
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