説明

エポチロンを含む治療用ポリマーナノ粒子ならびにそれを製造および使用する方法

本開示内容は一般に、治療用ナノ粒子に関する。本明細書で開示される例示的なナノ粒子は、エポチロン、例えばエポチロンB約0.2〜約20重量%、生体適合性ポリマー約50〜約99重量%を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、それぞれが全体として参照により本明細書に援用される、2010年2月22日出願の米国特許出願第61/306,729号、2010年10月22日出願の米国特許出願第61/405,778号、2009年12月15日出願の米国特許出願第61/286,550号への優先権を主張する。
【0002】
特定の薬物(例えば、特定の組織または特定の細胞型に標的化される、または特異的な患部組織には標的化されるが、正常な組織には標的化されない)を患者に送達する、または薬物の放出を制御するシステムは長い間、有益であると認められている。例えば、作用薬作用薬を含み、かつ特定の組織または細胞型、例えば特異的な患部組織において位置付けることができる療法は、治療の必要のない体の組織における薬物の量を低減することができる。これは、薬物の細胞毒性用量が、周囲の非癌性組織を死滅させることなく癌細胞に送達されることが望まれる癌などの状態を治療する場合に特に重要である。さらに、かかる療法は、抗癌療法において一般的な、望ましくなく、時には生命にかかわる副作用を低減し得る。例えば、ナノ粒子療法は、サイズが小さいために、体内での認識を逃れ、例えば有効な長さの時間、安定に維持しながら、送達を標的化し、制御することが可能となる。
【0003】
かかる治療および/または放出制御および/または標的療法を提供する療法は、有効量の薬物も送達しなければならない。有利な送達特性を有するのに、ナノ粒子のサイズを十分に小さく維持しながら、各ナノ粒子と結合した適切な量の薬物を有するナノ粒子システムを製造することは難題である。例えば、多量の治療薬をナノ粒子にロードすることが望まれると同時に、多量すぎる薬物ローディングが用いられたナノ粒子製剤は、実際の治療に使用するにはナノ粒子が大きすぎるだろう。さらに、例えば治療薬の迅速または即時放出を実質的に制限するために、治療用ナノ粒子を安定な状態のままにすることが望ましい。
【0004】
したがって、癌などの疾患を治療するために、患者の副作用も低減しながら、治療的レベルの薬物を送達することができる、新規なナノ粒子製剤ならびにかかるナノ粒子および組成物を製造する方法が必要とされている。例えば、エポチロン、かなりの毒性を有する(例えば、抹消神経障害を生じさせる)微小管阻害剤が現在、クレモホール(cremophor)を含む製剤で投与されている。かかる製剤は、公知のアレルギー副作用と共に、作用薬自体から、または賦形剤から望ましくない副作用を生じるかもしれない。
【0005】
概要
一態様において、本発明は、作用薬または治療薬、例えばエポチロン(例えば、エポチロンB)またはその医薬的に許容される塩、1、2、または3種類の生体適合性ポリマーを含む治療用ナノ粒子を提供する。例えば、エポチロンB約0.2〜約20重量%、生体適合性ポリマー約50〜約99.8重量%、例えば生体適合性ポリマー約70〜約99.8重量%を含む治療用ナノ粒子が本明細書において開示される。例えば、生体適合性ポリマーは、ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー(例えば、PLA−PEG)またはジブロック(ポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸))−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー(例えば、PLGA−PEG)とすることができ、または生体適合性ポリマーは2種類以上の異なる生体適合性ポリマーを含んでもよく、例えば治療用ナノ粒子は、ポリ(乳酸)ホモポリマーなどのホモポリマーを含んでいてもよい。例えば、開示の治療用ナノ粒子は、エポチロンB約0.2〜約20重量%、生体適合性ポリマー約50〜約99.8重量%または約70〜約99.8重量%を含むことができ、生体適合性ポリマーは、a)ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー、b)ジブロックポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー、c)a)とポリ(乳酸)ホモポリマーとの組み合わせ、d)b)とポリ(乳酸)ホモポリマーとの組み合わせ、e)1,2ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー、f)e)とポリ(乳酸)ホモポリマーまたはポリ(乳酸)−co−(グリコール酸)との組み合わせからなる群から選択される。
【0006】
開示のナノ粒子の直径は、例えば約60〜約190nm、約70〜約190nm、約70〜約180nmまたは約80〜約180nmである。
一実施形態において、室温または37℃でリン酸緩衝溶液中に入れた場合に、開示の粒子は実質的に、2時間にわたって治療薬の約60%未満を放出することができる。
【0007】
エポチロンは、その医薬的に許容される塩を含んでいてもよい。例えば、意図されるナノ粒子は、エポチロンBを約0.2〜約20重量%含むことができる。他の実施例において、意図されるナノ粒子は、エポチロンBを約0.2〜約15重量%含むことができる。開示の治療用ナノ粒子は、エポチロンBを約0.2〜約10重量含むことができる。
【0008】
例えば、開示のナノ粒子は、ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーである生体適合性ポリマーを含むことができる。開示のナノ粒子の一部を形成することができるジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーは、数平均分子量約15〜20kDa(または約40〜約90kDa)を有するポリ(乳酸)および数平均分子量約4〜約6kDaを有するポリ(エチレン)グリコールを含むことができる。開示のナノ粒子の一部を形成することができるジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーは、数平均分子量約50kDaを有するポリ(乳酸)および数平均分子量約4〜約6kDaを有するポリ(エチレン)グリコールを含むことができる。ジブロックポリ(乳酸)−co−グリコール酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーは、数平均分子量約15〜20kDaを有するポリ(乳酸)−co−グリコール酸および数平均分子量約4〜約6kDaを有するポリ(エチレン)グリコールを含むことができる。意図されるジブロックポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーのポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)部分は、特定の実施形態において、グリコール酸約50モル%およびポリ(乳酸)約50モル%を有していてもよい。
【0009】
例示的な治療用ナノ粒子は、ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー約40〜約50重量%、ポリ(乳酸)ホモポリマー約40〜約49、または約40〜約60重量%を含むことができる。かかるポリ(乳酸)ホモポリマーは、例えば重量平均分子量約15〜約130kDa、例えば約10kDaを有していてもよい。
【0010】
任意の実施形態において、開示のナノ粒子はさらに、標的化リガンドに共有結合されたジブロックポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー約0.2〜約10重量%を含むことができる。
【0011】
多数の開示の治療用ナノ粒子と医薬的に許容される賦形剤とを含む医薬的に許容される組成物も本明細書において開示される。例示的な医薬的に許容される賦形剤としては、ショ糖などの糖が挙げられる。
【0012】
ガラス転移温度約37〜約50℃、例えば約37〜約39℃を有する、本明細書で開示されるナノ粒子などの多数のナノ粒子を含む医薬水性懸濁液が本明細書において提供される。
【0013】
開示の治療用ナノ粒子を含む有効量の組成物をその必要のある患者に投与することを含む、乳癌、前立腺癌、または非小細胞肺癌などの癌を治療する方法もまた、本明細書に開示される。
【0014】
他の実施形態において、エポチロン、例えばエポチロンB、またはその医薬的に許容される塩およびジブロックポリ(乳酸)−ポリエチレングリコールまたはジブロックポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)−ポリエチレングリコールポリマーおよび任意にホモポリマーを有機溶媒と合わせて、固形分約10〜約40%を有する第1有機相を形成し、その第1有機相を第1水溶液と合わせて粗いエマルジョンを形成し、その粗いエマルジョンを乳化してエマルジョン相を形成し、そのエマルジョン相をクエンチして、クエンチ相を形成し、薬物可溶化剤をそのクエンチ相に添加して、未封入治療薬の可溶化相を形成し、可溶化相を濾過してナノ粒子を回収し、それによって、それぞれがエポチロン約0.2〜約20重量%を有する治療用ナノ粒子のスラリーを形成することによって製造される、多数の治療用ナノ粒子が本明細書で提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】開示のナノ粒子を形成するためのエマルジョンプロセスのフローチャートである。
【図2】開示のエマルジョンプロセスのフローダイヤグラムである。
【図3】本明細書で開示される種々のナノ粒子のエポチロンBの生体外放出を示す。
【図4】ラットに投与した場合の、エポチロンBナノ粒子の薬物動態学的プロファイルを示す。
【0016】
詳細な説明
本発明は一般に、作用薬または治療薬または薬物を含むポリマーナノ粒子、ならびにかかる治療用ナノ粒子を製造かつ使用する方法に関する。一般に、「ナノ粒子」とは、直径1000nm未満、例えば約10〜約200nmを有する粒子を意味する。開示の治療用ナノ粒子は、直径約60〜約190nmまたは約70〜約190nm、または約60〜約180nm、約70〜約180nmまたは約50〜約200nmを有するナノ粒子を含むことができる。
【0017】
開示のナノ粒子は、エポチロン、例えば、ポチロンBなどの作用薬を約0.2〜約35重量%、約0.2〜約30重量%、約0.2〜約20重量%または約1〜約30重量%含むことができる。
【0018】
本明細書で開示されるナノ粒子は、1、2、3種またはそれ以上の生体適合性および/または生分解性ポリマーを含む。例えば、意図されるナノ粒子は、生分解性ポリマー(例えば、ポリ(乳酸)およびポリエチレングリコール)を含む1種または複数種のコポリマー(例えば、ジブロックポリマー)などの1、2、3種またはそれ以上の生体適合性ポリマーを約60〜約99.8重量%、任意にホモポリマー、例えばポリ(乳酸)などの生分解性ポリマーを約0〜約50重量%含むことができる。
【0019】
ポリマー
一部の実施形態において、開示のナノ粒子は、ポリマーのマトリックスを含む。開示のナノ粒子は、1種または複数種のポリマー、例えばジブロックコポリマーおよび/またはモノポリマーを含むことができる。開示の治療用ナノ粒子は、ポリマーマトリックスの表面と会合することができる、ポリマーマトリックス内に封入される、ポリマーマトリックスによって囲まれる、かつ/またはポリマーマトリックス全体に分散される治療薬を含むことができる。
【0020】
多種多様なポリマーおよびそれから粒子を形成する方法は、薬物送達の分野で公知である。一部の実施形態において、本開示内容は、少なくとも1種類のポリマー、例えばコポリマーとすることができる第1ポリマー、例えばジブロックコポリマー、任意に、例えばホモポリマーとすることができるポリマーを有するナノ粒子に関する。
【0021】
本発明に従って、あらゆるポリマーを使用することができる。ポリマーは天然または非天然(合成)ポリマーとすることができる。ポリマーは、ホモポリマーまたは2種類以上のモノマーを含むコポリマーであってもよい。配列に関しては、コポリマーは、ランダム、ブロックであってもよく、またはランダム配列とブロック配列の組み合わせを含んでいてもよい。意図されるポリマーは生体適合性および/または生分解性とすることができる。
【0022】
本明細書で使用される「ポリマー」という用語は、当技術分野で使用されるその通常の意味、つまり共有結合によって連結された1つまたは複数の反復単位(モノマー)を含む分子構造を示す。その反復単位はすべて同一であるか、または場合によっては、ポリマー内に存在する複数種の反復単位であることができる。場合によっては、そのポリマーは、生物学的由来のポリマー、つまりバイオポリマーであることができる。非制限的な例としては、ペプチドまたはタンパク質が挙げられる。場合によっては、更なる部位、例えば以下に記載の部位などの生物学的部位もポリマー中に存在することができる。ポリマー内に複数種の反復単位が存在する場合、そのポリマーは「コポリマー」であると言われる。ポリマーを用いるあらゆる実施形態において、使用されるポリマーは、場合によってはコポリマーであってもよいことを理解されたい。コポリマーを形成する反復単位は、あらゆる様式で配列される。例えば、ランダムな順序で、交互の順序で、またはブロックコポリマーとして、つまり、それぞれが第1反復単位(例えば、第1ブロック)を含む1つまたは複数の領域と、それぞれが第2反復単位(例えば、第2ブロック)を含む1つまたは複数の領域とを含むポリマーとして、反復単位が配列することができる。ブロックコポリマーは、2つの(ジブロックコポリマー)、3つの(トリブロックコポリマー)またはそれ以上の数の別々のブロックを有していてもよい。
【0023】
開示の粒子は、一部の実施形態において、通常2つ以上のポリマーが共に共有結合することによって互いに結合している2種類以上のポリマー(本明細書に記載のポリマーなど)を示すコポリマーを含むことができる。したがって、コポリマーは、互いに結合してブロックコポリマーを形成している、第1ポリマーと第2ポリマーを含み、第1ポリマーは、ブロックコポリマーの第1ブロックであり、第2ポリマーは、ブロックコポリマーの第2ブロックである。当然のことながら、当業者は、ブロックコポリマーは場合によっては、ポリマーの複数のブロックを含有してもよく、かつ本明細書で使用される「ブロックコポリマー」は、1つの第1ブロックと1つの第2ブロックのみを有するブロックコポリマーのみに制限されないことを理解されよう。例えば、ブロックコポリマーは、第1ポリマーを含む第1ブロック、第2ポリマー含む第2ブロックおよび第3ポリマーまたは第1ポリマーを含む第3ブロック等を含んでいてもよい。場合によっては、ブロックコポリマーは、任意の数の第1ポリマーの第1ブロックおよび第2ポリマーの第2ブロック(特定の場合において、第3ブロック、第4ブロック等)を含有していてもよい。さらに、一部の場合には、他のブロックコポリマーからブロックコポリマーを形成することもできることに留意されたい。例えば、第1ブロックコポリマーは、他のポリマー(ホモポリマー、バイオポリマー、他のブロックコポリマー等であり得る)と結合して、複数種のブロックを含有する新たなブロックコポリマーを形成し、かつ/または他の部位(例えば、非ポリマー部位)に結合することができる。
【0024】
一部の実施形態において、ポリマー(例えば、コポリマー、例えばブロックコポリマー)は、両親媒性であり、つまり親水性部分と疎水性部分、または比較的親水性の部分と比較的疎水性の部分を有する。親水性ポリマーは、一般に水を引き付けるポリマーであり、疎水性ポリマーは、一般に水をはじくポリマーである。親水性または疎水性ポリマーは、例えば、ポリマーの試料を作製し、水とのその接触角(通常、ポリマーは60度未満の接触角を有するのに対して、疎水性ポリマーは60度を超える接触角を有する)を測定することによって同定することができる。場合によっては、2種類以上のポリマーの親水性は、互いに対して測定することができ、つまり第1ポリマーは、第2ポリマーよりも高い親水性であってもよい。例えば、第1ポリマーは、第2ポリマーよりも小さな接触角を有していてもよい。
【0025】
一セットの実施形態において、本明細書で意図されるポリマー(例えば、コポリマー、例えばブロックコポリマー)としては、生体適合性ポリマー、つまり、例えばT細胞応答を介した免疫システムによる著しい炎症および/またはポリマーの急性拒絶を起こすことなく、生体被検者に挿入または注入した場合に副反応を一般に誘発しないポリマーが挙げられる。したがって、本明細書で意図される治療用粒子は、非免疫原性であることができる。本明細書で使用される、非免疫原性という用語は、通常、循環抗体、T細胞または反応性免疫細胞を最小レベルでのみ誘発し、またはそれらを全く誘発せず、かつ個体においてそれ自体に対する免疫応答を通常誘発しない、その天然状態の内因性成長因子を意味する。
【0026】
生体適合性とは一般に、免疫システムの少なくとも一部分による物質の急性拒絶を意味し、つまり、被検者に埋め込まれた非生体適合性物質は、被検者における免疫応答を誘発し、それは、免疫システムによる物質の拒絶が適切にコントロールできないほど激しく、被験者からその物質を除去しなければならないほどの程度であることが多い。生体適合性を決定する簡単な試験は、生体外で細胞にポリマーを曝露することである。生体適合性ポリマーは、中程度の濃度で、例えば濃度50マイクログラム/106細胞にて、著しい細胞死を通常生じさせないポリマーである。例えば、生体適合性ポリマーは、線維芽細胞または上皮細胞などの細胞に曝露した場合に、かかる細胞によって貪食された、または取り込まれた場合でさえ、約20%未満の細胞死を生じさせるかもしれない。本発明の種々の実施形態において有用となり得る生体適合性ポリマーの非制限的な例としては、ポリジオキサノン(PDO)、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(グリセロールセバケート)、ポリグリコリド、ポリラクチド、PLGA、ポリカプロラクトン、またはこれらのポリマーおよび/または他のポリマーなどのコポリマーもしくは誘導体が挙げられる。
【0027】
特定の実施形態において、意図される生体適合性ポリマーは、生分解性であり、つまりそのポリマーは、体内などの生理学的環境内で化学的および/または生物学的に分解することができる。本明細書で使用される「生分解性ポリマー」は、細胞内に導入された場合に、細胞機構(生物学的に分解性)によって、かつ/または加水分解などの化学プロセス(化学的に分解性)によって破壊され、細胞に著しく毒性作用を及ぼすことなく、細胞が再利用または処理することができる成分が形成される、ポリマーである。一実施形態において、生分解性ポリマーおよびその分解副生成物は生体適合性であることができる。
【0028】
例えば、意図されるポリマーは、水にさらすと(例えば、被検者内で)同時に加水分解するポリマーであり、そのポリマーは、熱にさらすと(例えば、約37℃の温度で)分解する。ポリマーの分解は、使用されるポリマーまたはコポリマーに応じて、様々な速度で起こるかもしれない。例えば、ポリマーの半減期(ポリマーの50%がモノマーおよび/または他の非ポリマー部位へと分解される時点)は、そのポリマーに応じて、およそ数日、数週、数ヶ月、または数年とすることができる。そのポリマーは、例えば、酵素活性または細胞機構によって、場合によっては、例えばリゾチーム(例えば、比較的低いpHを有する)への曝露によって生物学的に分解される。場合によっては、ポリマーは、細胞に著しく毒性作用を及ぼすことなく、細胞が再利用または処理することができる、モノマーおよび/または他の非ポリマー部位へと破壊されるかもしれない(例えば、ポリラクチドは加水分解されて乳酸を形成し、ポリグリコリドは加水分解されてグリコール酸を形成するなど)。
【0029】
一部の実施形態において、ポリマーは、本明細書において総称して「PLGA」と呼ばれる、乳酸およびグリコール酸単位を含むコポリマー、例えばポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)およびポリ(ラクチド−co−グリコリド)、本明細書において「PGA」と呼ばれる、グリコール酸単位を含むホモポリマー、および本明細書において総称して「PLA」と呼ばれる、乳酸単位を含むホモポリマー、例えばポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸、ポリ−D,L−乳酸、ポリ−L−ラクチド、ポリ−D−ラクチドおよびポリ−D,L−ラクチドなどのポリエステルであることができる。一部の実施形態において、例示的なポリエステルとしては、例えば、ポリヒドロキシ酸;PEG化ポリマーおよびラクチドとグリコリドのコポリマー(例えば、PEG化PLA、PEG化PGA、PEG化PLGA、およびその誘導体)が挙げられる。一部の実施形態において、ポリエステルとしては、例えば、ポリ無水物、ポリ(オルトエステル)PEG化ポリ(オルトエステル)、ポリ(カプロラクトン)、PEG化ポリ(カプロラクトン)、ポリリジン、PEG化ポリリジン、ポリ(エチレンイミン)、PEG化ポリ(エチレンイミン)、ポリ(L−ラクチド−co−L−リジン)、ポリ(セリンエステル)、ポリ(4−ヒドロキシ−L−プロリンエステル)、ポリ[α−(4−アミノブチル)−L−グリコール酸]およびその誘導体が挙げられる。
【0030】
一部の実施形態において、ポリマーはPLGAとすることができる。PLGAは、乳酸とグリコール酸の生体適合性および生分解性コポリマーであり、PLGAの様々な形態は、乳酸:グリコール酸の比によって特徴付けられる。乳酸は、L−乳酸、D−乳酸またはD,L−乳酸であってもよい。PLGAの分解速度は、乳酸−グリコール酸比を変化させることによって調節することができる。一部の実施形態において、本発明に従って使用されるPLGAは、約85:15、約75:25、約60:40、約50:50、約40:60、約25:75、または約15:85の乳酸:グリコール酸モル比によって特徴付けられる。
【0031】
一部の実施形態において、粒子のポリマー(例えば、PLGAブロックコポリマーまたはPLGA−PEGブロックコポリマー)における乳酸:グリコール酸モノマーの比は、水の取込み、治療薬の放出および/またはポリマー分解キネティクスなどの様々なパラメーターについて最適化されるように選択される。
【0032】
一部の実施形態において、ポリマーは、1種または複数種のアクリルポリマーであり得る。特定の実施形態において、アクリルポリマーとしては、例えば、アクリル酸およびメタクリル酸コポリマー、メチルメタクリレートコポリマー、エトキシエチルメタクリレート、シアノエチルメタクリレート、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミドコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メタクリル酸ポリアクリルアミド)、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、グリシジルメタクリレートコポリマー、ポリシアノアクリレート、および上記のポリマーのうちの1種または複数種を含む組み合わせが挙げられる。アクリルポリマーは、低含有率で第4級アンモニウム基を有する、アクリル酸およびメタクリル酸エステルの完全重合コポリマーを含んでいてもよい。
【0033】
一部の実施形態において、ポリマーは、カチオン性ポリマーであることができる。一般に、カチオン性ポリマーは、核酸(例えばDNA、RNA、またはその誘導体)の負に帯電した鎖を縮合および/または保護することができる。一部の実施形態において、ポリ(リジン)、ポリエチレンイミン(PEI)、およびポリ(アミドアミン)デンドリマーなどのアミン含有ポリマーが、開示の粒子で使用することが意図される。
【0034】
一部の実施形態において、ポリマーは、カチオン性側鎖を有する分解性ポリエステルとすることができる。これらのポリエステルの例としては、ポリ(L−ラクチド−co−L−リジン)、ポリ(セリンエステル)およびポリ(4−ヒドロキシ−L−プロリンエステル)が挙げられる。ポリ(エチレングリコール)反復単位を含有するポリマー(例えば、コポリマー、例えばブロックコポリマー)は、「PEG化ポリマー」とも呼ばれる。かかるポリマーは、炎症および/または免疫原性(つまり、免疫応答を誘発する能力)をコントロールし、かつ/またはポリ(エチレングリコール)基が存在するために、細網内皮系(RES)を介した循環系からのクリアランス速度を下げることができる。
【0035】
場合によっては、例えば、生体部位との相互作用からポリマーを保護する、ポリマー表面の親水性層を形成することによって、ポリマーと生体部位との電荷相互作用を低減するために、ペグ化を用いることができる。場合によっては、ポリ(エチレングリコール)反復単位の付加は、食細胞システムによってポリマーの取込みを低減することによって、ポリマー(例えば、コポリマー、例えばブロックコポリマー)の血漿中半減期を増加することができ、それと同時に、細胞によるトランスフェクション/取込み効率が低減される。例えば、EDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)とNHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)を使用して、ポリマーをアミンの末端にあるPEG基に反応させることによる、開環重合技術(ROMP)による等、ポリマーをPEG化する方法および技術は当業者には公知であろう。
【0036】
PEGは、例えばPEGがリガンドに結合していない場合に、末端基を含んでいてもよい。例えば、PEGは、ヒドロキシル、メトキシまたは他のアルコキシル基、メチルまたは他のアルキル基、アリール基、カルボン酸、アミン、アミド、アセチル基、グアニジノ基、またはイミダゾールにおいて末端をなす。他の意図される末端基としては、アジド、アルキン、マレイミド、アルデヒド、ヒドラジド、ヒドロキシルアミン、アルコキシアミン、またはチオール部位が挙げられる。
【0037】
本明細書で開示される粒子は、PEGを含有しても、しなくてもよい。さらに、特定の実施形態意は、ポリ(エステル−エーテル)を含有するコポリマー、例えば、エステル結合(例えば、R−C(O)−O−R’結合)およびエーテル結合(例えば、R−O−R’結合)によって連結された反復単位を有するポリマーに指向される。本発明の一部の実施形態において、カルボン酸基を含有する加水分解性ポリマーなどの生分解性ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)反復単位と結合して、ポリ(エステル−エーテル)を形成することができる。
【0038】
一実施形態において、ポリマーの分子量は、本明細書に開示されるように有効な治療のために最適化される。例えば、ポリマーの分子量は、粒子の分解速度(生分解性ポリマーの分子量が調節される場合など)、溶解性、水の取込みおよび薬物放出キネティクスに影響を及ぼすかもしれない。例えば、ポリマーの分子量は、治療される被検者において粒子が妥当な期間(数時間から、1〜2週、3〜4週、5〜6週、7〜8週等の範囲)内に生分解するように調節される。例えば、開示の粒子は例えば、PLAとPEGのコポリマーを含み、PEGは、分子量1,000〜20,000Da、例えば5,000〜20,000Da、例えば10,000〜20,000Daを有し、PLAまたはPEG−PLAは、分子量5,000〜100,000Da、例えば20,000〜70,000Da、例えば15,000〜50,000Daを有する。
【0039】
例えば、ポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーまたはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー約10〜約99重量%、またはポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーまたはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー約20〜約80重量%、約40〜約80重量%、または約30〜約50重量%、または約70〜約90重量%を含む、例示的な治療用ナノ粒子が、本明細書で開示される。例示的なポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーは、ポリ(乳酸)の数平均分子量約または約10〜約90kDa、または約15〜約20kDa、または約10〜約25kDa、または約40〜約90kDa、または約50〜約80kDaおよびポリ(エチレン)グリコールの数平均分子量約4〜約6kDa、約4〜約12kDa、または約2〜約10kDaを含んでいてもよい。
【0040】
開示のナノ粒子は任意に、ポリ(乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)(PEG、例えばPLAのホモポリマーを含まない)約1〜約50重量%を含み、または任意に、ポリ(乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)約1〜約50(または約1〜約70)重量%、または約10〜約50重量%、または約30〜約50重量%を含んでいてもよい。一実施形態において、開示のナノ粒子は、重量比約40:60〜約60:40、約50:30〜約30:50、例えば、約50:50(PLA−PEG:PLA)で2つのポリマー、例えばPLA−PEGとPLAを含んでいてもよい。
【0041】
かかる実質的なホモポリマーのポリ(乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)は、重量平均分子量約4.5〜約130kDa、例えば、約20〜約30kDa、または約100〜約130kDaを有し得る。かかるホモポリマーのPLAは、数平均分子量約4.5〜約90kDa、または約4.5〜約12kDa、約5.5〜約7kDa(例えば約6.5kDa)、約15〜約30kDa、または約60〜約90kDaを有していてもよい。例示的なホモポリマーのPLAは、数平均分子量約70または80kDaまたは重量平均分子量約124kDaを有していてもよい。当技術分野で公知のように、ポリマーの分子量は、インヘレント粘度に関係する。一部の実施形態において、ホモポリマーPLAは、インヘレント粘度約0.2〜約0.4、例えば約0.4を有し、他の実施形態では、PLAは、インヘレント粘度約0.6〜約0.8を有する。例示的なPLGAは、数平均分子量約8〜約12kDaを有することができる。
【0042】
特定の実施形態において、開示のポリマーは、脂質に結合し、例えば末端キャップ化され、例えば脂質末端化PEGを含んでいてもよい。以下に記述されるように、ポリマーの脂質部分は、他のポリマーとの自己集合に使用され、ナノ粒子の形成が促進される。例えば、親水性ポリマーは、疎水性ポリマーと自己集合する脂質に結合することができる。
【0043】
例示的な脂質としては、長鎖(例えば、C8−C50)置換または非置換炭化水素などの脂肪酸が挙げられる。一部の実施形態において、脂肪酸基は、C10−C20脂肪酸またはその塩であることができる。一部の実施形態において、脂肪酸基は、C15−C20脂肪酸またはその塩であることができる。一部の実施形態において、脂肪酸は、不飽和、一価不飽和または多価不飽和とすることができる。例えば、脂肪酸基は、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸またはリグノセリン酸のうちの1種または複数種であってもよい。一部の実施形態において、脂肪酸基は、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノール酸、アラキドン酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、またはエルカ酸のうちの1種または複数種であってもよい。
【0044】
特定の実施形態において、その脂質は、式V:

(式中、Rはそれぞれ独立してC1-30アルキルである)
の脂質およびその塩である。式Vの一実施形態において、脂質は、1,2ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DSPE)、およびその塩、例えばナトリウム塩であり、例えば、DSPEは、−NH部位を介してPEGに結合することができる。
【0045】
一実施形態において、任意の小分子標的化部位が、ナノ粒子の脂質成分に結合、例えば共有結合される。例えば、治療薬と、官能基化および非官能基化ポリマーを含むポリマーマトリックスと、脂質と、低分子量標的化リガンドとを含むナノ粒子が本明細書において意図され、その標的化リガンドは、ナノ粒子の脂質成分に結合、例えば共有結合される。
【0046】
標的化部位
任意の標的化部位、つまり生物学的実体、例えば、膜成分、細胞表面受容体、前立腺に特異的な膜抗原等と結合または会合することができる部位を含むことができるナノ粒子が本明細書において提供される。粒子の表面上に存在する標的化部位は、粒子が特定の標的化部位、例えば、腫瘍、患部、組織、臓器、細胞型等に局在化することを可能にする。次に、薬物または他のペイロード(payload)は、場合によっては、その粒子から放出され、特定の標的化部位と局所的に相互作用することが可能となる。
【0047】
本発明の一実施形態において、標的化部位は、低分子量リガンド、例えば低分子量PSMAリガンドとすることができる。例えば、標的化部分は、用いられる標的化部位に応じて、被検者の体内の腫瘍、患部、組織、臓器、細胞型等に粒子を局在化させることができる。例えば、低分子量PSMAリガンドは、前立腺の癌細胞に局在化し得る。被検者はヒトまたは非ヒト動物であることができる。被検者の例としては、限定されないが、イヌ、ネコ、ウマ、ロバ、ウサギ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラット、マウス、モルモット、ハムスター、霊長類、ヒト等の哺乳動物が挙げられる。
【0048】
意図される標的化部位は小分子を含む。特定の実施形態において、「小分子」という用語は、天然に存在しようと、人工的に作られようと、相対的に低い分子量を有し、かつタンパク質、ポリペプチドまたは核酸ではない有機化合物を意味する。小分子は一般に、複数の炭素間結合を有する。特定の実施形態において、小分子は、約2000g/モル未満のサイズである。一部の実施形態において、小分子は、約1500g/モル未満または約1000g/モル未満である。一部の実施形態において、小分子は、約800g/モル未満または約500g/モル未満、例えば約100〜約600g/モル、または約200〜約500g/モルである。例えば、リガンドは、

およびその鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオ異性体、またはラセミ化合物などの低分子量PSMAリガンドとすることができる。
【0049】
一部の実施形態において、前立腺癌腫瘍と関連する細胞を標的化するために使用される小分子標的部位としては、PSMAペプチダーゼ阻害剤、例えば2−PMPA、GPI5232、VA−033、フェニルアルキルホスホンアミデートおよび/またはその類似体および誘導体が挙げられる。一部の実施形態において、前立腺癌腫瘍と関連する細胞を標的化するために使用される小分子標的部位としては、チオールおよびインドールチオール誘導体、例えば2−MPPAおよび3−(2−メルカプトエチル)−1H−インドール−2−カルボン酸誘導体が挙げられる。一部の実施形態において、前立腺癌腫瘍と関連する細胞を標的化するために使用される小分子標的部位としては、ヒドロキサメート誘導体が挙げられる。一部の実施形態において、前立腺癌腫瘍と関連する細胞を標的化するために使用される小分子標的部位としては、PBDAベースおよび尿素ベースの阻害剤、例えばZJ43、ZJ11、ZJ17、ZJ38および/またはその類似体および誘導体、アンドロゲン受容体標的化剤(ARTA)、プトレッシン、スペルミン、およびスペルミジンなどのポリアミン、NAAGペプチダーゼまたはNAALADaseとしても知られるグルタミン酸カルボキシラーゼ酵素(GCPII)の阻害剤が挙げられる。
【0050】
意図される標的部位としては、ペプチドが挙げられる。ペプチドは40アミノ酸未満の長さである。ペプチド長さの例としては、2アミノ酸、3アミノ酸、4アミノ酸、5アミノ酸、5〜10アミノ酸、7〜15アミノ酸、10〜20アミノ酸、15〜25アミノ酸、15〜30アミノ酸、5〜40アミノ酸、および25〜40アミノ酸のペプチドが挙げられる。
【0051】
本発明の他の実施形態において、標的化部位は、Her2、EGFR、またはトール受容体を標的化するリガンドとすることができる。例えば、意図される標的部位としては、核酸、ポリペプチド、糖タンパク質、炭水化物、または脂質が挙げられる。例えば、標的化部位は、細胞型特異的マーカーに結合する核酸標的化部位(例えば、アプタマー、例えば、A10アプタマー)とすることができる。一般に、アプタマーは、ポリペプチドなどの特定の標的に結合するオリゴヌクレオチド(例えば、DNA、RNA、またはその類似体または誘導体)である。一部の実施形態において、標的化部位は、細胞表面受容体の天然または合成リガンド、例えば、成長因子、ホルモン、LDL、トランスフェリン等とすることができる。標的化部位は抗体とすることができ、その用語は、抗体断片、抗体の特徴的部分を含むことが意図される。単鎖標的部位などの抗体の特徴的部分は、例えば、ファージディスプレイなどの手順を用いて同定することができる。標的部位は、約50残基までの長さを有する標的化ペプチドまたは標的化ペプチドミメティックとすることができる。例えば、標的部位は、アミノ酸配列AKERC、CREKA、ARYLQKLNまたはAXYLZZLN(XおよびZが、可変アミノ酸である)、またはその保存的変異体またはペプチドミメティックを含んでいてもよい。特定の実施形態において、標的化部位は、アミノ酸配列AKERC、CREKA、ARYLQKLNまたはAXYLZZLN(XおよびZが、可変アミノ酸である)を含み、かつ20、50または100残基未満の長さを有するペプチドである。CREKA(Cys Arg Glu Lys Ala)ペプチドまたはそのペプチドミメティックまたはオクタペプチドAXYLZZLN、ならびにコラーゲンIVと結合する、またはコラーゲンIVと複合体を形成し、または組織基底膜(例えば、血管の基底膜)を標的化する、ペプチド、またはその保存的変異体またはペプチドミメティックも、標的化部位として意図される。
【0052】
例示的な標的化部位としては、ICAM(細胞間接着分子、例えばICAM−1)を標的化するペプチドが挙げられる。
本明細書で開示される標的化部位は一般に、開示のポリマーまたはコポリマー(例えばPLA−PEG)と結合し、かかるポリマー抱合体は、開示のナノ粒子の一部を形成することができる。例えば、開示の治療用ナノ粒子は任意に、PLA−PEGまたはPLGA−PEGを約0.2〜約10重量%含んでもよく、PEGは標的化リガンドで官能基化されている。意図される治療用ナノ粒子は、例えば、PLA−PEG−リガンドまたはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)−PEG−リガンド約0.2〜約10モル%を含むことができる。例えば、PLA−PEG−リガンドは、数平均分子量約10〜約20kDaのPLAおよび数平均分子量約4,000〜約8,000DaのPEGを含むことができる。
【0053】
ナノ粒子
開示のナノ粒子は、実質的に球状(つまり、粒子は一般に、球形であるように見える)または非球状形態を有していてもよい。例えば、粒子は、膨潤または収縮すると、非球状形態をとっていてもよい。場合によっては、粒子はポリマーブレンドを含んでいてもよい。例えば、ポリマーブレンドは、ポリエチレングリコールを含む第1コポリマーおよび第2ポリマーを含むことができる。
【0054】
開示のナノ粒子は、約1マイクロメーター未満の特有の寸法を有し、粒子のその特有の寸法は、粒子と同じ体積を有する完全な球体の直径である。例えば、粒子は、約300nm未満、約200nm未満、約150nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約30nm未満、約10nm未満、約3nm未満、または場合によっては約1nm未満である粒子の特有の直径を有することができる。特定の実施形態において、開示のナノ粒子は、直径約60〜約200nm、約60〜約190nm、約70〜約180nmまたは約80〜約180nmを有していてもよい。
【0055】
一セットの実施形態おいて、粒子は、内部と表面を有し、その表面は、内部と異なる組成を有し、つまり、内部に存在するが、表面には存在しない(または、逆の場合も同様)少なくとも1つの化合物があり、かつ/または少なくとも1つの化合物が、内部および表面に異なる濃度で存在する。例えば、一実施形態において、本発明のポリマー抱合体の標的化部位(つまり低分子量リガンド)などの化合物が、粒子の内部と表面の両方に存在することができるが、場合によっては、粒子の内部よりも表面の濃度が高い場合には、粒子の内部の濃度は本質的にゼロではないかもしれず、つまり粒子の内部に検出可能な量の化合物が存在する。
【0056】
場合によっては、粒子の内部は、粒子の表面よりも疎水性である。例えば、粒子の内部は、粒子の表面に対して相対的に疎水性であり、薬物または他のペイロードも疎水性であり、粒子の相対的に疎水性の中心と容易に会合する。したがって、薬物または他のペイロードは、粒子の内部に含有されることができ、粒子は、粒子周囲の外部環境からそれを保護する(または、逆の場合も同様)。例えば、被検者に投与された粒子内に含有される薬物または他のペイロードは、被検者の体から保護され、少なくとも一定の時間、体は薬物から実質的に隔離されることができる。
【0057】
例えば、第1非官能基化ポリマー、任意の第2非官能基化ポリマー、標的化部位を含む任意の官能基化ポリマーおよび治療薬を含む治療用ポリマーナノ粒子が本明細書において開示される。特定の実施形態において、第1非官能基化ポリマーは、PLA、PLGA、またはPEG、またはそのコポリマー、例えばジブロックコポリマーPLA−PEGである。例えば、例示的なナノ粒子は、密度約0.065g/cm3または約0.01〜約0.10g/cm3を有するPEGコロナを有していてもよい。
【0058】
開示のナノ粒子は、例えばサッカリド、例えば糖を含有する溶液中で少なくとも約3日間、少なくとも約4日間または少なくとも約5日間、室温または25℃にて安定である。
【0059】
一部の実施形態において、開示のナノ粒子は、薬物放出速度を増加する脂肪アルコールを含んでいてもよい。例えば、開示のナノ粒子は、セチルアルコール、オクタノール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ドコサノールまたはオクタソナール(octasonal)などのC8−C30アルコールを含むことができる。
【0060】
ナノ粒子は、放出制御特性を有し、例えば、ある量の作用薬を患者に、例えば患者の特異的な部位に、長時間にわたって、例えば1日、1週間、またはそれ以上にわたって送達することができる。一部の実施形態において、例えば、室温および/または37℃でリン酸緩衝溶液中に入れた場合に、開示のナノ粒子は実質的に即時に、作用薬(例えば、エポチロンB)を約2%未満、約4%未満、約5%未満または約10%未満放出することができる(例えば、約1〜約30分間にわたって)。
【0061】
他の実施形態において、例えば室温または37℃でリン酸緩衝溶液中に入れた場合に、開示のナノ粒子は、1日間またはそれ以上の間、約20%未満、約30%未満、約40%未満、約50%未満、または60%未満(またはそれ以上)を放出することができる。一実施形態において、室温でリン酸緩衝溶液中に入れた場合に、開示のナノ粒子は、2時間にわたって治療薬を約60%未満放出することができる。
【0062】
一実施形態において、本発明は、1)ポリマーマトリックスと、2)ポリマーマトリックスを取り囲む、またはポリマーマトリックス中に分散され、粒子に対して連続または非連続シェルを形成する、両親媒性化合物または層とを含む。両親媒性層は、ナノ粒子中への水の浸透を低減し、それによって、薬物封入効率が高められ、薬物放出が遅くなる。さらに、これらの両親媒性層保護ナノ粒子は、適切な時点で封入薬物およびポリマーを放出することによって治療的利点を提供する。
【0063】
本明細書で使用される「両親媒性」という用語は、分子が極性部分と非極性部分の両方を有する特性を意味する。両親媒性化合物は、長い疎水性テールに結合した極性ヘッドを有する場合が多い。一部の実施形態において、極性部分は水に可溶性であるが、非極性部分は水に不溶性である。さらに、極性部分は、形式正電荷または形式負電荷のいずれかを有していてもよい。あるいは、極性部分は、形式正電荷および負電荷の両方を有し、かつ両性イオンまたは分子内塩であってもよい。例示的な両親媒性化合物としては、例えば、以下の天然由来脂質、界面活性剤または親水性と疎水性部位の両方を有する合成化合物のうちの1種または複数種が挙げられる。
【0064】
両親媒性化合物の具体的な例としては、限定されないが、0.01〜60(脂質(重量)/ポリマー(重量))、最も好ましくは0.1〜30(脂質(重量)/ポリマー(重量))の比で組み込まれる、1,2ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DSPE)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジアラキドイルホスファチジルコリン(DAPC)、ジベヘノイルホスファチジルコリン(DBPC)、ジトリコサノイルホスファチジルコリン(DTPC)、およびジリグノセロイルファチジルコリン(DLPC)などのリン脂質が挙げられる。使用することができるリン脂質としては、限定されないが、ホスファチジン酸、飽和脂質と不飽和脂質の両方を有するホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジル誘導体、カルジオリピン、およびβ−アシル−y−アルキルリン脂質が挙げられる。リン脂質の例としては、限定されないが、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジペンタデカノイルホスファチジルコリン、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジアラキドイルホスファチジルコリン(DAPC)、ジベヘノイルホスファチジルコリン(DBPC)、ジトリコサノイルホスファチジルコリン(DTPC)、ジリグノセロイルファチジルコリン(DLPC)などのホスファチジルコリンおよびジオレオイルホスファチジルエタノールアミンまたは1‐ヘキサデシル‐2‐パルミトイルグリセロホスホエタノールアミンなどのホスファチジルエタノールアミンが挙げられる。不斉アシル鎖を有する合成リン脂質(例えば、炭素6個の一方のアシル鎖と炭素12個のもう一方のアシル鎖を有する)も使用することができる。
【0065】
特定の実施形態において、両親媒性成分は、レシチンおよび/または特にホスファチジルコリンを含む。
【0066】
ナノ粒子の作製
本発明の他の態様は、開示のナノ粒子を製造するシステムおよび方法に関する。一部の実施形態において、2種類以上の異なるポリマー(例えば、ジブロックコポリマーなどのコポリマーおよびホモポリマー)を使用して、粒子の特性をコントロールすることができる。
【0067】
特定の実施形態において、本明細書に記載の方法は、高い量の封入治療薬を有する、例えばエポチロンBを約0.2〜約40重量%、または約0.2〜約30重量%、例えば約0.2〜約20重量%または約1〜約10重量%含み得るナノ粒子を形成する。
【0068】
一実施形態において、図1および2に示されるプロセスなどのナノエマルジョンプロセスが提供される。例えば、治療薬、第1ポリマー(例えば、PLA−PEGまたはPLGA−PEG)および/または第2ポリマー(例えば、(PL(G)AまたはPLA)を有機溶液と合わせて、第1有機相が形成される。かかる第1相は、固形分約5〜約50重量%、例えば約5〜約40重量%または固形分約約10〜約30重量%、例えば固形分約10、15、20重量%を含むことができる。第1有機相を第1水溶液と合わせて、第2相が形成される。有機溶液としては、例えばアセトニトリル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、酢酸イソプロピル、ジメチルホルムアミド、塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、ベンジルアルコール、Tween80、Span80等、およびその組み合わせが挙げられる。一実施形態において、有機相は、ベンジルアルコール、酢酸エチル、およびその組み合わせを含み得る。第2相は、固形分約1〜50重量%、例えば5〜40重量%とすることができる。水溶液は、任意に、コール酸ナトリウム、酢酸エチル、およびベンジルアルコールのうちの1種または複数種と組み合わされた水であってもよい。
【0069】
例えば、油相または有機相に、非溶媒(水)と部分的にのみ混和性である溶媒を使用してもよい。したがって、十分に低い比率で混合した場合、かつ/または有機溶媒で予め飽和された水を使用した場合、油相は液状のままである。油相は、水溶液中に乳化することができ、例えば、ホモジナイザーまたは超音波処理器などの高エネルギー分散システムを使用して、液滴として、ナノ粒子へと剪断される。別名「水相」として知られるエマルジョンの水性部分は、コール酸ナトリウムからなり、かつ酢酸エチルおよびベンジルアルコールで予め飽和されている、界面活性剤溶液であってもよい。
【0070】
エマルジョン相を形成するための第2相の乳化は、1または2つの乳化段階で行われる。例えば、最初のエマルジョンを調製し、次いで乳化し、微細エマルジョンが形成される。その最初のエマルジョンは、例えば、簡単な混合、高圧ホモジナイザー、プローブ超音波処理器、撹拌子、またはローターステーター・ホモジナイザーを用いて形成することができる。その最初のエマルジョンは、例えばプローブ超音波処理器または高圧ホモジナイザーを使用して、例えばホモジナイザーを1、2、3回またはそれ以上の回数、操作することによって、微細エマルジョンへと形成することができる。例えば、高圧ホモジナイザーを使用する場合、使用される圧力は、約5000〜約15000psi、または約9900〜約13200psi、例えば9900または13200psiとすることができる。
【0071】
溶媒の抽出を完了し、粒子を固化するために、溶媒の蒸発または希釈のいずれかが必要となる場合がある。抽出のキネティクスをより良くコントロールし、プロセスをさらに拡張可能にするには、水性クエンチによる溶媒希釈を用いることができる。例えば、有機溶媒のすべてを溶解するのに十分な濃度までエマルジョンジョンを冷水中に希釈し、クエンチ相を形成することができる。クエンチは、少なくとも部分的に温度約5℃以下で行われる。例えば、クエンチに使用される水は、室温より低い温度(例えば、約0〜約10℃、または約0〜約5℃)である。
【0072】
一部の実施形態において、治療薬のすべてが、この段階で粒子に封入されるわけではなく、薬物可溶化剤がクエンチ相に添加され、可溶化相が形成される。薬物可溶化剤は、例えば、Tween80、Tween20、ポリビニルピロリドン、シクロデキストラン、ドデシル硫酸ナトリウム、またはコール酸ナトリウムである。例えば、クエンチされたナノ粒子懸濁液にTween80を添加して、遊離薬物を可溶化し、薬物結晶の形成を防ぐことができる。一部の実施形態において、薬物可溶化剤と治療薬の比は、約100:1〜約10:1である。
【0073】
可溶化相を濾過して、ナノ粒子を回収してもよい。例えば、限外濾過膜を使用して、ナノ粒子懸濁液を濃縮し、有機溶媒、遊離薬物および他の加工助剤(界面活性剤)をかなり除去することができる。例示的な濾過は、接線フロー濾過システムを用いて行われる。例えば、溶質、ミセルおよび有機溶媒を通過させると同時に、ナノ粒子を保持するのに適した孔径を有する膜を使用することによって、ナノ粒子を選択的に分離することができる。分画分子量約300〜500kDa(約5〜25nm)を有する例示的な膜を使用することができる。
【0074】
ダイアフィルトレーションは、一定容積アプローチを用いて行われ、懸濁液から濾液が除去されるのと同じ速度でダイア濾液(diafiltrate)(冷たい脱イオン水、例えば約0〜約5℃、または0〜約10℃)が供給懸濁液に添加されることを意味する。一部の実施形態において、濾過は、第1温度約0〜約5℃または0〜約10℃、任意に第2温度約20〜約30℃または15〜約35℃を用いた第1濾過を含み得る。例えば、濾過は、約0〜約5℃にて約10〜約20のダイア容積(diavolume)を処理することを含むことができる。他の実施形態において、濾過は、約0〜約5℃にて約1〜約6のダイア容積を処理すること、および約20〜約30℃で少なくとも1つのダイア容積(約1〜約3または約1〜2のダイア容積)を処理することを含む。
【0075】
任意に、ナノ粒子懸濁液を精製し、濃縮した後、例えば約0.2μmのデプスプレフィルターを用いて、1、2、またはそれ以上の滅菌フィルターおよび/またはデプスフィルターに粒子を通す。
【0076】
ナノ粒子を製造する例示的な実施形態において、治療薬、例えばエポチロンBとポリマー(ホモポリマー、およびコポリマー)との混合物で構成される有機相が形成される。有機相は、約1:5の比(油相:水相)で水相と混合され、水相は、界面活性剤と、任意に溶解された溶媒とで構成される。単に混合して、またはローターステーター・ホモジナイザーを使用して、2つの相を合わせることによって、最初のエマルジョンが形成される。次いで、高圧ホモジナイザーを使用して、最初のエマルジョンが微細エマルジョンへと形成される。続いて、かかる微細エマルジョンは、混合しながら脱イオン水に添加することによってクエンチされる。クエンチ:エマルジョンの例示的な比は約8:1である。次に、Tween(例えば、Tween80)の溶液をクエンチに添加し、全体でTween約1〜2%が達成され、これは、未封入の遊離薬物を溶解する役割を果たす。次いで、遠心分離または限外濾過/ダイアフィルトレーションのいずれかによって、形成されたナノ粒子が単離される。
【0077】
治療薬
特定の実施形態において、治療薬または薬物、例えばエポチロンBは、放出制御様式で粒子から放出され、特定の患者の部位(例えば、腫瘍)と局所的に相互作用することが可能となる。「放出制御」という用語は一般に、選択された部位での、または制御可能な速度、間隔、および/または量での物質(例えば、薬物)の放出を包含することを意味する。放出制御は、必ずしもそれに限定されないが、実質的に連続的な送達、パターン化された送達(例えば、規則的または不規則的な時間間隔によって中断される時間にわたる断続的な送達)および選択物質のボーラス送達(例えば、物質が比較的短時間にわたって(例えば、数秒または数分)投与される場合に所定の、別々の量として)を包含する。
【0078】
作用薬または薬物は、エポチロンA、B、C、D、E、Fなどのエポチロンまたはその医薬的に許容される塩とすることができる。例えば、作用薬または薬物はエポチロンBとすることができる。意図されるエポチロン化合物としては、デヒデロン(dehydelone)、イクサベピロンおよびサゴピロンが挙げられる。
【0079】
一実施形態において、作用薬は、例えば、開示のナノ粒子の一部を形成する開示の疎水性ポリマーに結合してもよく(または、他の実施形態では、結合しなくてもよい)、例えばエポチロンなどの作用薬は、PLAまたはPGLAに、またはPLA−PEGまたはPLGA−PEGなどのコポリマーのPLAまたはPLGA部分部分に結合することができる(例えば、直接共有結合する、または例えば−NH−アルキレン−C(O)−、−NH−アルキレン−O−アルキレン−C(O)−、−NH−アルキレン−C(O)−O−アルキレン−C(O)−、または−NH−アルキレン−S−を含む連結部位などの連結部位を介して、共有結合する)。
【0080】
医薬製剤
本明細書で開示されるナノ粒子を医薬的に許容される担体と組み合わせて、医薬組成物を形成することができる。当業者には理解されるように、担体は、以下に記載の投与経路、標的組織の位置、送達される薬物、薬物送達の時間経過等に基づいて選択される。
【0081】
医薬組成物および本明細書で開示される粒子は、経口的経路および非経口的経路などの当技術分野で公知の手段によって患者に投与される。本明細書で使用される「患者」という用語は、ヒトだけではなく、例えば、哺乳動物、鳥、爬虫類、両生類、および魚などの非ヒトも意味する。例えば、非ヒトは、哺乳動物(例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、霊長類、またはブタ)とすることができる。特定の実施形態において、非経口的経路は、消化管で見られる消化酵素との接触が避けられることから望ましい。かかる実施形態に従って、本発明の組成物は、注射(例えば、静脈内、皮下または筋肉内、腹腔内注射)によって、経直腸、経膣、局所投与(粉末、クリーム、軟膏または点滴剤として)によって、または吸入(スプレーとして)によって投与することができる。
【0082】
特定の実施形態において、開示内容のナノ粒子は、その必要がある被検者に、例えば静脈内点滴または注射によって全身投与される。
【0083】
注射可能な製剤、例えば注射可能な滅菌水性または油性懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して公知の技術に従って製剤化される。注射可能な滅菌製剤は、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液としての、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒中の注射可能な滅菌溶液、懸濁液、またはエマルジョンでもあり得る。用いることができる許容可能な賦形剤および溶媒の中では、水、リンゲル液、U.S.P.、および塩化ナトリウム等張溶液が挙げられる。さらに、滅菌固定油が、溶媒または懸濁媒体として従来から使用されている。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドなどのブランド固定油を使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が、注射可能な製剤で使用される。一実施形態において、本発明の抱合体は、カルボキシルメチルセルロースナトリウム1%(w/v)、TWEEN(商標)80 0.1%(v/v)を含む担体液体に懸濁される。注射可能な製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通す濾過によって、または使用前に滅菌水または他の注射可能な滅菌媒体に溶解または分散することができる滅菌固形組成物の形で滅菌剤を組み込むことによって滅菌することができる。
【0084】
経口投与用の固形剤形としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、および顆粒剤が挙げられる。かかる固形剤形において、封入されたまたは未封入の抱合体を少なくとも1種類の医薬的に許容される不活性賦形剤または担体、例えばクエン酸ナトリウムまたはケイ酸二カルシウムおよび/または(a)デンプン、ラクトース、ショ糖、グルコース、マンニトール、およびケイ酸などの充填剤または増量剤、(b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルジネート、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、ショ糖、およびアカシアなどの結合剤、(c)グリセロールなどの湿潤剤(humectant)、(d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、(e)パラフィンなどの溶解遅延剤、(f)第4級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、(g)例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤(wetting agent)、(h)カオリンおよびベントナイト粘土などの吸収剤および(i)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびその混合物などの滑沢剤と混合される。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合には、その剤形は緩衝剤を含んでいてもよい。
【0085】
開示のナノ粒子は、投薬を容易にするため、かつ投薬量を均一にするために、投薬単位形態で製剤化される。本明細書で使用される「投薬単位形態」という表現は、治療される患者に適したナノ粒子の物理的に別々の単位を意味する。あらゆるナノ粒子に関して、治療上有効な用量が、細胞培養アッセイにおいて、または動物モデル、通常マウス、ウサギ、イヌ、またはブタにおいて最初に推定される。動物モデルを使用して、望ましい濃度範囲および投与経路を得ることもできる。次いで、かかる情報を用いて、ヒトに投与するのに有用な用量および経路を決定することができる。ナノ粒子の治療有効性および毒性、例えば、ED50(この用量は、個体数の50%に治療上有効である)およびLD50(この用量は、個体数の50%において致死量である)は、細胞培養または実験動物における標準的製薬手順によって決定することができる。毒性作用と治療効果と用量比が治療指数であり、LD50/ED50の比として表される。大きな治療指数を示す医薬組成物が、一部の実施形態において有用である。細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータが、ヒトに使用される、ある範囲の投薬量を配合するのに使用される。
【0086】
例示的な実施形態において、治療薬および医薬的に許容される賦形剤をそれぞれが含む多数のナノ粒子を含む医薬組成物が開示される。
一部の実施形態において、本明細書で開示されるナノ粒子を含む凍結に適した組成物が意図され、凍結に適した溶液、例えば、糖(例えばショ糖)溶液がナノ粒子懸濁液に添加される。ショ糖は、例えば凍結保護物質として作用し、凍結した場合に粒子が凝集するのを防ぐ。例えば、多数の開示のナノ粒子、ショ糖、および水を含むナノ粒子製剤が本明細書で提供され、ナノ粒子/ショ糖/水は約5〜10%/10〜15%/80〜90%(w/w/w)で存在する。
【0087】
一実施形態において、例えば、ガラス転移温度約37〜約50℃または約37〜約39℃を有する本明細書で開示される多数のナノ粒子を前記懸濁液中に含む医薬水性懸濁液が本明細書において提供される。
【0088】
治療方法
一部の実施形態において、本明細書で開示される治療用粒子を用いて、疾患、障害および/または病状の1つもしくは複数の症状もしくは特徴を治療、緩和、寛解、軽減し、発症を遅らせ、進行を抑制し、重症度を軽減し、かつ/または発生率を低下させることができる。例えば、エポチロン、例えばエポチロンBを含む開示の治療用粒子を使用して、その必要がある患者において、乳癌、前立腺癌、結癌腸、膠芽腫、急性リンパ性白血病、骨肉腫、非ホジキンリンパ腫、または小細胞肺癌などの肺癌などの癌を治療することができる。
【0089】
癌(例えば、乳癌または前立腺癌)を治療するための開示の方法は、所望の結果を達成するのに必要な量および時間で、その必要がある被検者に治療有効量の開示の治療用粒子を投与することを含むことができる。本発明の特定の実施形態において、「治療有効量」とは、例えば、治療される癌の1つまたは複数の症状もしくは特徴を治療、緩和、寛解、軽減し、発症を遅らせ、進行を抑制し、重症度を軽減し、かつ/または発生率を低下させるのに有効な量である。
【0090】
健康な個体(つまり、癌の症状を示していない、かつ/または癌と診断されていない被検者)に、治療有効量の開示の治療用粒子を投与することを含む治療プロトコルも本明細書で提供される。例えば、癌の発症前かつ/または癌の症状が出始める前に、健康な個体を本発明の標的化粒子で「免疫化」することができ、リスクのある個体(癌の家族歴を有する患者、癌の発症と関連する1つまたは複数の遺伝的突然変異を保有する患者、癌の発症に関連する遺伝的多型を保有する患者、癌の発症と関連するウイルスに感染した患者、癌の発症と関連する嗜癖および/または生活習慣を有する患者)を、癌の症状が出始めたと実質的に同時に(例えば、48時間以内、24時間以内または12時間以内に)、治療することができる。当然のことながら、癌を有することが判明している個体は、いつでも本発明の治療を受けることができる。
【0091】
他の実施形態において、開示のナノ粒子を使用して、癌細胞、例えば乳癌細胞の増殖を抑制することができる。本明細書で使用される、「癌細胞の増殖を抑制する」または「癌細胞の増殖の抑制」とは、癌細胞増殖の速度が、未処置対照癌細胞の成長の観察速度または予測速度と比較して低減されるような、癌細胞増殖および/または転移の速度の減速および/または癌細胞増殖および/または転移の停止、または癌細胞の死滅を意味する。「増殖を抑制する」という表現は、癌細胞または腫瘍のサイズの低減または消失、ならびにその転移能の低減も意味する。好ましくは、細胞レベルでのかかる抑制は、患者の癌のサイズを低減し、癌の増殖を阻止し、癌の攻撃性を低減し、または癌の拡散転移を予防または抑制することができる。当業者であれば、癌細胞の増殖が抑制されるかどうかは、様々な適切な証拠によって容易に決定することができる。
【0092】
癌細胞増殖の抑制は、例えば、細胞周期の特定の相における癌細胞の停止、例えば細胞周期のG2/M相での停止によって証明される。癌細胞増殖の抑制は、癌細胞または腫瘍サイズの直接的または間接的な測定によっても証明することができる。ヒトの癌患者において、かかる測定は一般に、磁気共鳴像、コンピューター断層撮影およびX線などの公知のイメージング法を用いて行われる。癌細胞増殖は、循環抗体癌胎児性抗原、前立腺特異的抗原または癌細胞増殖と相関する他の癌特異的抗原のレベルを決定することによってなど、間接的に決定することもできる。癌増殖の抑制は一般に、被検者の長期の生存時間および/または高められた健康および幸福感とも相関する。
【0093】
本明細書において意図される他の方法は、アルツハイマー病などの神経変性疾患をその必要のある患者において治療する方法であって、開示のナノ粒子、例えばエポチロンDを有する開示のナノ粒子を投与することを含む方法を含む。
【実施例】
【0094】
ここで、本発明が一般に説明され、本発明の特定の態様および実施形態を単に説明する目的で含まれ、かつ決して本発明を制限することを意図するものではない、以下の実施例を参照することによって、より容易に理解されよう。
【0095】
実施例1:PLA−PEGの製造
この合成は、マクロ開始剤としてのα−ヒドロキシ−ω−メトキシポリ(エチレングリコール)とD,L−ラクチドとの開環重合によって達成され、以下に示されるように触媒としてスズ(II)2−エチルヘキサノエートを使用して高温にて行われる(PEG Mn約5,000Da;PLA Mn約16,000Da;PEG−PLA Mn約21,000Da)。
【0096】

ポリマーは、ジクロロメタンにポリマーを溶解し、ヘキサンとジエチルエーテルの混合物中でそれを沈殿させることによって精製される。この段階から回収されるポリマーはオーブンで乾燥させる。
【0097】
実施例2:ナノ粒子の製造
以下の配合を用いて、エポチロンBナノ粒子を製造した。
理論的薬物10%(w/w)
ポリマー−PEG、16−5 PLA−PEGまたは50−5 PLA−PEG90%(w/w)
全固形分%=20%
溶媒:ベンジルアルコール21%、酢酸エチル79%(w/w)
1グラムのバッチサイズに関して、薬物100mgをポリマー−PEG:16−5または50−5 PLA−PEG900mgと混合した。
【0098】
エポチロンBナノ粒子を以下のように製造した。薬物/ポリマー溶液を調製するために、酢酸エチル3.16gと共に、エポチロンB100mgを7mLガラスバイアルに添加した。薬物の大部分が溶解するまで、混合物をボルテックスした。続いて、ベンジルアルコール0.840gをガラスバイアルに添加し、薬物が完全に溶解するまでボルテックスした。最後に、ポリマー−PEG900mgを混合物に添加し、すべて溶解するまでボルテックスした。
【0099】
16−5 PLA−PEG製剤または50−5 PLA−PEG製剤のいずれかの水溶液を調製した。16−5 PLA−PEG製剤の水溶液は、水中にコール酸ナトリウム0.1%、ベンジルアルコール2%、および酢酸エチル4%を含有した。具体的には、コール酸ナトリウム1gおよび脱イオン水939gを1L瓶に添加し、それらが溶解するまで、攪拌プレートを使用して混合した。続いて、ベンジルアルコール20gおよび酢酸エチル40gをコール酸ナトリウム/水混合物に添加し、すべて溶解するまで、攪拌プレートを使用して混合した。50−5 PLA−PEG製剤の水溶液は、水中にコール酸ナトリウム5%、ベンジルアルコール2%、および酢酸エチル4%を含有した。具体的には、コール酸ナトリウム50gおよび脱イオン水890gを1L瓶に添加し、それらが溶解するまで、攪拌プレートを使用して混合した。続いて、ベンジルアルコール20gおよび酢酸エチル40gをコール酸ナトリウム/水混合物に添加し、すべて溶解するまで、攪拌プレートを使用して混合した。
【0100】
水溶液に有機相を5:1(水相:油相)の比で合わせることによって、エマルジョンを形成した。有機相を水溶液に注ぎ、ローターステーター・ホモジナイザーを使用して室温で10秒間ホモジナイズして、粗いエマルジョンを形成した。続いて、1つの相互作用Zチャンバを用いて高圧ホモジナイザー(110S)を通してこの溶液を供給した。16−5 PLA−PEG製剤に関しては、2つの別個のパスに対して圧力を9900psiに設定し、ナノエマルジョンを形成した。50−5 PLA−PEG製剤に関しては、2つの別個のパスに対して圧力を9900psiに設定し、次いで更なる2つのパスに対して13200psiに増加した。
【0101】
攪拌プレート上で攪拌しながら、エマルジョンを5℃未満の冷たい脱イオン水中にクエンチした。クエンチとエマルジョンの比は8:1であった。次いで、水中のTween80 35%(w/w)をクエンチされたエマルジョンに25:1(Tween80:薬物)の比で添加した。
【0102】
接線フロー濾過(TFF)に続いて、ダイアフィルトレーションを通してナノ粒子を濃縮し、溶媒、未封入薬物および可溶化剤を除去した。クエンチされたエマルジョンを最初に、300KDa Pall cassette(2つの膜)を使用したTFFを通して容積約100mLに濃縮した。これに続いて、冷たい脱イオン水約20ダイア容積(2L)を用いてダイアフィルトレーションを行った。その体積は、冷水100mLを容器に添加し、すすぎのために膜を通してポンピングすることによって最小限に抑えられた。約100〜180mLの材料をガラスバイアルに収集した。より小さなTFFを使用して、ナノ粒子をさらに、最終容積約10〜20mLに濃縮した。
【0103】
濾過されていない最終スラリーの固形分濃度を決定するために、一定容積の最終スラリーを風袋引きされた20mLシンチレーションバイアルに添加し、凍結乾燥(lyo)/オーブンで真空下にて乾燥させた。続いて、ナノ粒子の重量を乾燥スラリーの容積で決定した。濃縮ショ糖(ショ糖0.666g/g)を最終スラリー試料に添加し、ショ糖10%の最終濃度が得られた。
【0104】
0.45μm濾過された最終スラリーの固形分濃度を決定するために、ショ糖を添加する前に、0.45μmシリンジフィルターを使用して、最終スラリー試料の一部を濾過した。次いで、一定容積の濾過試料を風袋引きされた20mLシンチレーションバイアルに添加し、凍結乾燥(lyo)/オーブンで真空下にて乾燥させた。濾過されていない最終スラリーの残存試料をショ糖で凍結した。
【0105】
実施例3 粒径および薬物ローディング分析
2つの技術、動的光散乱(DLS)およびレーザー回折(LD)によって、粒径を分析した。90度で散乱される660nmレーザーを使用して、希釈水性懸濁液中で25℃にてBrookhaven ZetaPals装置を使用して、DLSを行い、キュミュラントおよびNNLS法を用いて解析した。90度で散乱される、633nmのHeNeレーザーおよび405nmのLEDの両方を使用して、希釈水性懸濁液中でHoriba LS950装置でレーザー回折を行い、Mie optical modelを使用して解析した。DLSからの結果は、PEG「コロナ」を誘導する、粒子の流体力学的半径と関連し、レーザー回折装置は、PLA粒子「コア」の幾何学的サイズとより密接に関係する。
【0106】
表1は、上述の粒子の粒径および薬物ローディングを示す。
【表1】

【0107】
実施例4 生体外放出
ナノ粒子からのエポチロンBの生体外放出を決定するために、ナノ粒子をPBS放出媒体に懸濁し、37℃の水浴でインキュベートした。試料を特定の時点で収集した。超遠心分離法を用いて、ナノ粒子から放出薬物を分離した。
【0108】
図3は、16−5 PLA−PEGおよび50/5 PLA/PEG製剤についての生体外放出研究の結果を示す。データから、1時間後に16/5 PLA/PEG製剤からEpoBが100%放出されたことが示されている。50/5 PLA/PEG製剤は、1時間の時点で50%放出し、2時間で60%放出し、4時間で70%放出し、24時間の時点で80%を超える薬物放出を有する、より徐放性の製剤である。この2種類の製剤によって、ナノ粒子内にエポチロンBを封入する能力、および製剤に使用されるポリマーの種類の選択によって生体外放出が影響を受ける能力が実証されている。
【0109】
実施例5 エマルジョンの調製
水性懸濁液中の薬物ローディングされたナノ粒子を製造する一般的なエマルジョン手順を以下に示す(ショ糖10重量%、粒子重量に対して薬物を約10重量%含有するポリマーナノ粒子3〜5重量%)。ポリマー24%および作用薬6%を含む固形分30%(重量%)で構成される有機相が形成される。有機溶媒は、酢酸エチル(EA)およびベンジルアルコール(BA)であり、BAは、有機相の21%(重量%)を占める。有機相は、比約1:2(油相:水相)で水相と混合され、その水相は、水中のコール酸ナトリウム0.25%、BA2%、およびEA4%(重量%)で構成される。単に混合して、またはローターステーター・ホモジナイザーを使用して、2つの相を合わせることによって、最初のエマルジョンが形成される。次いで、高圧ホモジナイザーを使用して、最初のエマルジョンが微細エマルジョンへと形成される。続いて、微細エマルジョンは、混合しながら脱イオン水の冷却クエンチ(0〜5℃)に添加することによってクエンチされる。クエンチ:エマルジョン比は約10:1である。次に、Tween80 35%(重量%)の溶液をクエンチに添加し、全体でTween80約4%が達成される。次いで、限外濾過/ダイアフィルトレーションによって、ナノ粒子を単離し、濃縮する。
【0110】
gが抑えられた迅速放出性ナノ粒子を製造するための例示的な手順において、そのポリマーの50%はポリラクチド−ポリ(エチレングリコール)ジブロックコポリマー(PLA−PEG;16kDa−5kDa)であり、ポリマーの50%はポリ(D,L−ラクチド)(PLA;8.5kDa)である。
【0111】
gが増加された通常放出性(normal-releasing)ナノ粒を製造するための例示的な手順において、ポリマーの100%がポリラクチド−ポリ(エチレングリコール)ジブロックコポリマー(PLA−PEG;16kDa−5kDa)である。
【0112】
gが増加された徐放性ナノ粒子を製造するための例示的な手順において、そのポリマーの50%がポリラクチド−ポリ(エチレングリコール)ジブロックコポリマー(PLA−PEG;16kDa−5kDa)であり、ポリマーの50%がポリ(D,L−ラクチド)(PLA;75kDa)である。
【0113】
実施例6 動物研究
図4は、エポチロンBを有する実施例5と同様な徐放性および迅速放出性ナノ粒子の薬物動態学を示す。SDラット(n=3/群)に用量0.5mg/kgで投与した。
【0114】
均等物
当業者であれば、単なる慣例の実験を用いて、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態の多くの等価物を理解されるであろう、あるいは確かめることができるであろう。かかる等価物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
参照による援用
本明細書に記載のすべての特許、公開特許出願、ウェブサイト、および他の参考文献の内容全体が、参照によりその全体が本明細書に明示的に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポチロン約0.2〜約20重量%、
生体適合性ポリマー約50〜約99.8重量%を含む治療用ナノ粒子であって、
前記生体適合性ポリマーが、
a)ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー、
b)ジブロックポリ(乳酸)−co−(グリコール酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー、
c)a)とポリ(乳酸)ホモポリマーまたはポリ(乳酸)−co−(グリコール酸)との組み合わせ、
d)b)とポリ(乳酸)ホモポリマーまたはポリ(乳酸)−co−(グリコール酸)との組み合わせ、
e)1,2ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー、
f)e)とポリ(乳酸)ホモポリマーまたはポリ(乳酸)−co−(グリコール酸)との組み合わせからなる群から選択される治療用ナノ粒子。
【請求項2】
前記エポチロンがエポチロンBである請求項1に記載の治療用ナノ粒子。
【請求項3】
エポチロンを約0.2〜約10重量%含む請求項1または2に記載の治療用ナノ粒子。
【請求項4】
エポチロンを約0.2〜約5重量%含む請求項1から3のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
【請求項5】
前記治療用ナノ粒子の直径が約60〜約190nmである請求項1から4のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
【請求項6】
前記ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーが、数平均分子量約15〜約90kDaを有するポリ(乳酸)および数平均分子量約4〜約12kDaを有するポリ(エチレン)グリコールを含む請求項1から5のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
【請求項7】
前記ジブロックポリ(乳酸)−co−グリコール酸−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーが、数平均分子量約15〜約90kDaを有するポリ(乳酸)−co−グリコール酸および数平均分子量約4〜約12kDaを有するポリ(エチレン)グリコールを含む請求項1から5のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
【請求項8】
前記1,2ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーが、数平均分子量約2kDaを有するポリ(エチレン)グリコールを含む請求項1から5のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
【請求項9】
前記粒子が、37℃のリン酸緩衝液溶液に入れた場合に、2時間後に治療薬の約60%未満を実質的に即時に放出する請求項1から8のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
【請求項10】
前記生体適合性ポリマーがジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーである請求項1から9のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
【請求項11】
前記治療用ナノ粒子が、ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー約40〜約50重量%およびポリ(乳酸)ホモポリマー約40〜約49重量%を含む請求項1から10のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
【請求項12】
前記ポリ(乳酸)ホモポリマーが、重量平均分子量約15〜約130kDaを有する請求項1から11のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
【請求項13】
前記ポリ(乳酸)ホモポリマーが、インヘレント粘度約0.2〜約0.9を有する請求項1から11のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
【請求項14】
前記ポリ(乳酸)ホモポリマーが、インヘレント粘度約0.3を有する請求項1から11のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
【請求項15】
前記ポリ(乳酸)ホモポリマーが、重量平均分子量約124kDaを有する請求項1から11のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
【請求項16】
前記ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーが、数平均分子量約16kDaを有するポリ(乳酸)および数平均分子量約5kDaを有するポリ(エチレン)グリコールを含む請求項1から15のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
【請求項17】
前記ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーが、数平均分子量約40〜約90kDaを有するポリ(乳酸)および数平均分子量約4〜約12kDaを有するポリ(エチレン)グリコールを含む請求項1から15のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
【請求項18】
前記ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーが、数平均分子量約50kDaを有するポリ(乳酸)および数平均分子量約5kDaを有するポリ(エチレン)グリコールを含む請求項1から15のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
【請求項19】
前記ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーが、数平均分子量約80kDaを有するポリ(乳酸)および数平均分子量約10kDaを有するポリ(エチレン)グリコールを含む請求項1から15のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
【請求項20】
標的化リガンドに共有結合しているジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー約0.2〜約10重量%をさらに含む請求項1から18のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか一項に記載の治療用ナノ粒子を含む有効量の組成物を、その必要がある患者に投与することを含む乳癌、前立腺癌または非小細胞肺癌を治療する方法。
【請求項22】
エポチロンまたはその医薬的に許容される塩およびジブロックポリ(乳酸)−ポリエチレングリコールまたはジブロックポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)−ポリエチレングリコールポリマーおよび任意にホモポリマーを有機溶媒と合わせて、固形分約10〜約40%を有する第1有機相を形成し、
前記第1有機相を第1水溶液と合わせて第2相を形成し、
前記第2相を乳化してエマルジョン相を形成し、
前記エマルジョン相をクエンチして、クエンチ相を形成し、
薬物可溶化剤を前記クエンチ相に添加して、未封入治療薬の可溶化相を形成し、
前記可溶化相を濾過してナノ粒子を回収し、それによって、それぞれがエポチロン約0.2〜約20重量%を有する治療用ナノ粒子のスラリーを形成することによって製造される多数の治療用ナノ粒子。
【請求項23】
前記エポチロンがエポチロンBである請求項21に記載の多数の治療用ナノ粒子。
【請求項24】
エポチロンまたはその医薬的に許容される塩約0.2〜約20重量%、
ポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーまたはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーから選択されるジブロックポリマーを含む放出制御治療用ナノ粒子であって、前記エポチロンが放出制御速度で放出される、放出制御治療用ナノ粒子。
【請求項25】
前記エポチロンがエポチロンBである請求項24に記載の放出制御治療用ナノ粒子。
【請求項26】
前記エポチロンが、患者に投与された場合に少なくとも1日またはそれ以上の期間にわたって放出される請求項25に記載の放出制御治療用ナノ粒子。
【請求項27】
ガラス転移温度約37〜約50℃を有する請求項1から20のいずれか一項に記載の多数のナノ粒子を前記懸濁液中に含む医薬水性懸濁液。
【請求項28】
前記ガラス転移温度が約37〜約39℃である請求項27に記載の医薬水性懸濁液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−514381(P2013−514381A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544796(P2012−544796)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/060575
【国際公開番号】WO2011/084521
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(510083773)バインド バイオサイエンシズ インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】