説明

エマルジョン型粘着剤及びこれを用いた粘着テープ

【課題】エマルジョン型粘着剤及びこのエマルジョン型粘着剤を用いた粘着テープを提供する。
【解決手段】天然ゴムと合成ゴムを10:90〜90:10の割合で混合したゴム混合物100質量部と、粘着付与樹脂50〜150質量部と、水溶性高分子増粘剤0.1〜5質量部とを、固形分換算で30〜60質量%有するエマルジョン型粘着剤。更に好ましくは、水溶性高分子増粘剤が、粘度3000〜20000mPa・sのものであることを特徴とするエマルジョン型粘着剤。更に別の態様として、前記エマルジョン型粘着剤を、塩化ビニル樹脂などをフィルム状にして得られたフィルム基材の少なくとも一方の面に塗布乾燥させて得られる粘着テープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エマルジョン型粘着剤及びこれを用いた粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤の形態としては、溶剤型、ホットメルト型、硬化性液状樹脂型、エマルジョン型などが知られている。これらのうち溶剤型粘着剤は、粘着力が強く、種々の配合が容易であるため広く用いられてきた。しかしながら、揮発性有機化合物が世界的に問題となっており、揮発性有機化合物を含有しない粘着剤が望まれている。
【0003】
エマルジョン型粘着剤は、揮発性有機化合物を含まない上、塗布に特別の装置を必要とせず、かつ、保存も容易であることから、溶剤型粘着剤の代替品として注目されている。また、天然ゴムや合成ゴムをエマルジョン化した、いわゆるゴムエマルジョン型粘着剤を各種フィルム上に塗布乾燥して得られる粘着テープも検討されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−302660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、エマルジョン型粘着剤及びこのエマルジョン型粘着剤を用いた粘着テープを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち本発明は、天然ゴムと合成ゴムを10:90〜90:10の割合で混合したゴム混合物100質量部と、粘着付与樹脂50〜150質量部と、水溶性高分子増粘剤0.1〜5質量部とを、固形分換算で30〜60質量%有するエマルジョン型粘着剤である。エマルジョン型粘着剤は、その粘度が、2000〜10000mPa・sであるものが好ましく、パラレルプレート型レオメータにて、温度40℃、剪断速度3000s−1の条件で剪断をかけた際に、剪断をかけた後の粘度が2倍になるために要する時間が1800秒以上、増粘後のTI値が7.0〜9.0であることが好ましい。
エマルジョン型粘着剤に用いる水溶性高分子増粘剤は、粘度3000〜20000mPa・sのものが好ましい。
エマルジョン型粘着剤は、塩化ビニル樹脂などをフィルム状にして得られたフィルム基材の少なくとも一方の面に塗布乾燥させることにより、粘着テープとして用いることができる。
【発明の効果】
【0007】
エマルジョン型粘着剤及びこのエマルジョン型粘着剤を用いた粘着テープが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
エマルジョン型粘着剤のゴム混合物は、天然ゴムと合成ゴムを10:90〜90:10の混合比で混合して得られるものである。天然ゴムの混合量が少なくなると、得られるエマルジョン型粘着剤の粘着力が得られない場合があり、合成ゴムの混合量が少なくなると、得られるエマルジョン型粘着剤の耐老化性が得られない場合がある。ゴム混合物の天然ゴムと合成ゴムの混合比は、20:80〜80:20の範囲がより好ましい。
【0009】
天然ゴムとしては、特に限定するものではないが、濃縮原料天然ゴム、有機過酸化物前加硫天然ゴムなどがある。工業的に好ましくは濃縮原料天然ゴムが用いられる。
【0010】
合成ゴムとしては、特に限定するものではないが、スチレン・ブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、スチレングラフト天然ゴム、天然ゴムにメチルメタクリレートをグラフト重合させたメチルメタクリレートグラフト化天然ゴムなどがある。
【0011】
粘着付与樹脂は、得られるエマルジョン型粘着剤の粘着力を調整するために配合するものである。粘着付与樹脂は、軟化点及び各成分との相溶性を有するものを用いることが好ましい。また、環球法により測定された軟化点が20〜180℃のものが好ましい。軟化点が20℃未満の粘着付与樹脂を配合すると、得られるエマルジョン型粘着剤の粘着特性が低下することがある。一方、軟化点が180℃を超える粘着付与樹脂を配合すると、粘着付与樹脂をエマルジョン化した時の安定性が低下することがある。本発明に適した粘着付与樹脂としては、テルペン樹脂、ロジン樹脂、水添ロジン樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン樹脂、脂肪族及び脂環族などの石油樹脂、水添した脂肪族及び脂環族などの石油樹脂、テルペン−フェノール樹脂、キシレン樹脂、その他の脂肪族炭化水素樹脂や芳香族炭化水素樹脂などがある。粘着付与樹脂は、これらの化合物から少なくとも1種以上の樹脂を選択して用いればよい。特に、初期粘着力を向上させるためには、軟化点65〜150℃の石油樹脂の脂環族飽和炭化水素樹脂や軟化点80〜150℃のポリテルペン樹脂、軟化点80〜150℃の水添ロジンのグリセリンエステルなどを用いるとよい。
【0012】
粘着付与樹脂は、ゴム混合物100質量部に対して、50〜150質量部の範囲で用いる。粘着付与樹脂の配合量が50質量部未満では、得られるエマルジョン型粘着剤の粘着力が発揮されない場合がある。150質量部を超えて配合してしまうと、得られるエマルジョン型粘着剤の凝集力が低下する場合がある。粘着付与樹脂の配合量は、70〜120質量部の範囲がより好ましい。
【0013】
水溶性高分子増粘剤は、得られるエマルジョン型粘着剤の粘度を調整するために配合するものである。水溶性高分子増粘剤としては、変性ポリアクリル、ポリエーテル、ウレタン変性ポリエーテルなどがある。
【0014】
水溶性高分子増粘剤は、天然ゴムと合成ゴムのゴム混合物100質量部に対して0.1〜5質量部の範囲で用いる。水溶性高分子増粘剤の配合量が0.1質量部未満では、得られるエマルジョン型粘着剤の粘度が低くなり、壁面などへ塗布した際に液垂れなどの問題が発生する場合がある。5質量部を超えて配合してしまうと、得られるエマルジョン型粘着剤の粘度が高くなり、粘着剤を均一に塗布できなくなる場合がある。水溶性高分子増粘剤の配合量は、0.3〜1.0質量部の範囲がより好ましい。
【0015】
エマルジョン型粘着剤は、上述の化合物を、固形分換算で30〜60質量%となるようにエマルジョン化させて得られるものである。
化合物の濃度が30質量%未満であると、増粘剤による増粘効果が低下してしまう場合がある。化合物の濃度が60質量%を超えてしまうと、エマルジョン型粘着剤の貯蔵安定性が低下する場合がある。エマルジョン型粘着剤の固形分濃度は、40〜50質量%の範囲がより好ましい。
【0016】
エマルジョン型粘着剤にはその特性を損なわない限り、さらに各種添加剤を追加することができる。このような添加剤としては特に限定されないが、例えば、湿潤剤、増粘剤、老化防止剤などを挙げることができる。湿潤剤を配合すると、エマルジョン型粘着剤の表面張力を下げることができ、粘着テープを製造する際に、フィルム基材への濡れ性を改善できるようになる。湿潤剤としては、例えば、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤などを使用できる。好ましくは、ゴム混合物と結合しにくい、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が用いられる。
【0017】
湿潤剤の配合量は、ゴム混合物100質量部に対して、0.1〜15質量部が好ましい。湿潤剤の配合量が0.1質量部未満では、エマルジョン型粘着剤のフィルム基材への濡れ性改善効果が得られない場合がある。15質量部を超えて配合してしまうと、エマルジョン型粘着剤のゴム成分と石油樹脂成分との相溶性が阻害され、さらにはエマルジョン型粘着剤の粘着力が低下する場合がある。
【0018】
老化防止剤は、例えば、フェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤、ベンズイミダゾール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤及びリン系老化防止剤等の単独物または混合物を挙げることができる。好ましくは、フェノール系老化防止剤が用いられる。
【0019】
老化防止剤の配合量は、ゴム混合物100質量部に対して0.1〜5質量部が好ましい。老化防止剤の配合量が0.1質量部未満では、酸素や光の存在下で得られたエマルジョン型粘着剤が劣化する場合がある。5質量部を超えて配合してしまうとエマルション型粘着剤の粘着力が低下することがある。
【0020】
エマルジョン型粘着剤は、その粘度が2000〜10000mPa・sであることが望ましい。粘度が2000mPa・s未満であると壁面などへ塗布した際に液垂れなどの問題が発生する場合がある。10000mPa・sを越えてしまう水溶性高分子増粘剤添加量では、得られるエマルジョン型粘着剤の粘度が高くなり、粘着剤を均一に塗布できなくなる場合がある。エマルジョン型粘着剤の粘度を調整するためには、固形分濃度を調整するか、配合する水溶性高分子増粘剤の配合量を調整すればよい。
【0021】
一般に、エマルジョン型粘着剤は、コーンプレート型レオメータ、例えば、MCR300(Paar Phisica社製)cp50−2を用い、40℃、3000s−1の一定条件下で剪断力を連続的にかけたときに、粘度が急激に上昇する現象が見られる。
本発明のエマルジョン型粘着剤は、上述の条件で剪断力をかけた際の粘度が、測定開始直後の粘度の2倍になるために要する時間が、測定開始から1800秒以上であることが望ましい。このようなエマルジョン型粘着剤は、いわゆる貯蔵安定性にすぐれるものである。エマルジョン型粘着剤の粘度の上昇を抑えるためには、エマルジョン型粘着剤の固形分濃度を低く設定すればよい。
【0022】
エマルジョン型粘着剤は、フィルム基材の少なくとも一方の面に塗布乾燥させることで、粘着テープとすることができる。
【0023】
エマルジョン型粘着剤をフィルム基材に塗布する方法としては、公知の方法を用いることができる。特に限定するものではないが、例えば、ナイフコーター、ロールコーター、コンマコーター、リップコーター、ダイコーターなどを用いて塗布すればよい。
【0024】
フィルム基材としては、塩化ビニル樹脂組成物が好適に用いられる。塩化ビニル樹脂組成物は、ポリ塩化ビニルを含有していれば特に制限されない。塩化ビニル樹脂組成物の樹脂成分全量に対するポリ塩化ビニルの割合は、例えば、50質量%以上、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90〜100質量%である。なお、塩化ビニル樹脂組成物は、樹脂成分以外に、必要に応じて、公知の添加物(例えば、安定剤、可塑剤など)を含有していてもよい。
【0025】
フィルム基材の厚みは特に制限されず、例えば、10〜500μm、好ましくは70〜200μm、さらに好ましくは80〜160μmである。なお、フィルム基材は単層の形態を有していてもよく、また、複層の形態を有していてもよい。
なお、フィルム基材には、必要に応じて、背面処理、帯電防止処理、プライマー処理などの各種処理が施すこともできる。
【0026】
粘着剤層の厚みは、例えば、5〜100μm、好ましくは10〜50μmである。これより薄いと粘着力が低下して、得られる粘着テープの巻付け作業性が低下することがある。一方これより厚くなると、塗工性能が悪くなることがある。
【実施例】
【0027】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0028】
表1および表2において、「粘度の立ち上がり時間」とは、Paar Phisica社製のコーンプレート型レオメータMCR300 cp50−2を用い、40℃、3000s−1の一定条件下で剪断力を連続的にかけたとき凝集物、皮張りの発生により測定される粘度が急激に上昇するのに要する時間であり、この時間が1800秒以上のものを○、1800秒未満のものを×とした。
【0029】
表1および表2において、「増粘剤粘度」「粘着剤粘度」は、JIS Z 8803,8.項「単一円筒形回転粘度計による粘度測定方法」に準じて測定した。なお、測定はB型粘度計(東京計器社製)ローター:No.3、回転数:6rpm、測定温度:23℃にて行った。
【0030】
表1および表2において、「粘着剤TI値」とは粘度測定にて使用したB型粘度計を用いて、回転数60rpmと6rpmの粘度の比(60rpm/6rpm)にてチクソトロピー性を評価した。
【0031】
「試験板粘着力」とは、JIS C 2107, 10. 項「粘着力」の11.4.1項に規定されている「試験板粘着力試験の準備」に準拠して測定した。
【0032】
表1および表2において、「自背面粘着力」とは、JIS C 2107 10. 項「粘着力」の11.4.2項に規定されている「背面粘着力試験の準備」に準拠して測定した。
【0033】
表1および表2において、「保持力」とは、JIS Z 0237, 13 項「保持力」に準拠して測定した。
【0034】
表1および表2において、「塗工性」とは、基材に粘着剤を塗布する際に液垂れがなく、また粘着剤を塗布した後の粘着剤層の厚みが均一なものを○、そうでないものを×とした。
【0035】
(実施例1)本実施例におけるエマルジョン型粘着剤は、固形分質量比で天然ゴム(EXCELTEX‐HLX LA‐TZ)20質量部、スチレン・ブタジエンゴム(イーテックス社製KT4615B)40質量部、NR−graft−MMA(ムサシノケミカル社製MG30)40質量部、粘着付与樹脂(荒川化学社製E−200)30質量部、石油樹脂(荒川化学社製AP−1100−NT)70質量部、潤滑剤としてジアルキルスルフォコハク酸ナトリウム塩(花王社製ペレックスOT−P)1質量部、水溶性高分子増粘剤(ADEKA社製アデカノールUH−756VF)0.3質量部を、水に固形分換算で50質量%となるようにエマルジョン化させたものである。
また、フィルム基材は、ポリ塩化ビニル樹脂(大洋塩ビ社製)100質量部、可塑剤としてのDOP(ジェイプラス社製)50質量部、安定剤としてのCa−Zn系安定剤(水澤化学社製)2質量部を混合して塩化ビニル樹脂組成物を調整し、得られた塩化ビニル樹脂組成物を、カレンダー成形機を用いて厚さ160μmのフィルム状に成形したものである。得られたフィルム基材の一方の面にプライマーを積層し、さらにエマルジョン型粘着剤を塗布乾燥して、粘着剤層の厚みが20±1μmの粘着テープを作成した。この粘着テープを用いて、試験板粘着力、背面粘着力、保持力を評価した。
【0036】
(実施例2)粘着付与樹脂、水溶性高分子増粘剤の配合を表1に示した比率とし、純水を加えることによって固形分を表1に示した値に調整した以外は、実施例1と同様にして粘着テープを作成して評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0037】
(実施例3〜10)ゴム混合物及び粘着付与樹脂の配合を表1に示した比率とした以外は、実施例1と同様にして粘着テープを作成して評価を行った。評価結果を表1に示す。なお、表1中、水溶性高分子増粘剤(SN−812)は、サンノプコ社製のSNシックナーA-812、水溶性高分子増粘剤(UH−450VF)は、ADEKA製のアデカノールUH-450VF、水溶性高分子増粘剤(UH-756VF)はADEKA製のアデカノールUH-756VFである。
【0038】
(比較例1〜4)粘着付与樹脂や水溶性高分子増粘剤の配合を表2に示した比率とした以外は、実施例1と同様にして粘着テープを作成して評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0039】
表1から明らかなように、本発明の各実施例の粘着テープは、粘度の立ち上がり時間が遅く、熱や剪断に対する安定性に優れ、且つ粘着力、保持力は適正な範囲にあり、塗工も問題なく行えた。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴムと合成ゴムを10:90〜90:10の割合で混合したゴム混合物100質量部と、粘着付与樹脂50〜150質量部と、水溶性高分子増粘剤0.1〜5質量部とを、固形分換算で30〜60質量%有するエマルジョン型粘着剤。
【請求項2】
粘度が、2000〜10000mPa・sであることを特徴とする、請求項1記載のエマルジョン型粘着剤。
【請求項3】
パラレルプレート型レオメータにて、温度40℃、剪断速度3000s−1の条件で剪断をかけた際に、剪断をかけた後の粘度が、剪断をかける前の粘度の2倍になるために要する時間が1800秒以上であることを特徴とする、請求項1または2記載のエマルジョン型粘着剤。
【請求項4】
水溶性高分子増粘剤が、粘度3000〜20000mPa・sのものであることを特徴とする、請求項1〜3いずれか一項記載のエマルジョン型粘着剤。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか一項記載のエマルジョン型粘着剤を、フィルム基材の少なくとも一方の面に塗布乾燥させて得られる粘着テープ。
【請求項6】
フィルム基材の材料が、塩化ビニル樹脂組成物であることを特徴とする請求項6記載の粘着テープ。

【公開番号】特開2011−84615(P2011−84615A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237215(P2009−237215)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】