説明

エレクトレット処理ブラシ、クリーニングブラシ、及びエレクトレット処理ブラシの製造方法

【課題】クリーニング性能を充分に発揮し得る画像形成用のエレクトレット処理ブラシ、クリーニングブラシ、及びエレクトレット処理ブラシの製造方法を提供する。
【解決手段】クリーニングブラシ22は、エレクトレット処理した繊維からなるブラシ毛22aを静電植毛してなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維からなるブラシ毛をエレクトレット処理してなる画像形成用のエレクトレット処理ブラシ、クリーニングブラシ、及びエレクトレット処理ブラシの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、静電潜像担持体である感光体ドラム上の転写後の残留トナーや紙粉等を除去するクリーニング装置が設けられている。
【0003】
このクリーニング装置には、例えば、感光体ドラム上の転写後の残留トナーや紙粉等を物理的に掻き落として除去するクリーニングブレードが設けられていると共に、このクリーニングブレードよりも感光体ドラムの回転方向上流側には、クリーニングブレードでの残留トナーの除去に先立って、クリーニングブラシが設けられている。
【0004】
従来の例えば特許文献1に開示されているクリーニングブラシ100は、図7(b)(c)に示すように、繊維状のエレクトレット材料101を所定のパターンに配列してクリーニングローラ102の表面に固定されたものからなっている。この繊維状のエレクトレット材料101は、図7(b)に示すように、芯材の表面に正極性の電位と負極性の電位とを分散してなっており、バインダー樹脂や接着剤を用いて芯材の表面に固定されている。
【0005】
この繊維状のエレクトレット材料101は、図7(a)に示すように、射出成形装置110を用いて製造することができる。すなわち、射出成形装置110は、射出成形するためのノズル部111が、正極性の電圧が印加される部分111aと、負極性の電圧が印加される部分111bとに分割されている。これにより、ノズル部111内に強力な電界が形成され、ノズル部111内を移動する溶融した高分子がノズル先端から射出するまでの間に結合イオンや分散イオンが電界に沿って再配列する。そして、電界に沿って再配列した高分子がノズル部111から繊維状に射出成形され、冷間されると、正極性の電位と負極性の電位とを有する繊維状のエレクトレット材料101を得ることができる。このように、材料を正極性の電位と負極性の電位とに分極することをエレクトレット処理という。
【0006】
そして、このエレクトレット処理されたエレクトレット材料101をクリーニングブラシに用いることにより、クリーニングローラ102表面の正極性の電位を有する第1領域にて被清掃面の負極性に帯電した帯電トナーを除去する。一方、クリーニングローラ102表面の負極性の電位を有する第2領域にて正極性に帯電した帯電トナーを除去する。これにより、1本の繊維状のエレクトレット材料101にて被清掃面における両極性の帯電トナーを除去することができる。
【0007】
この結果、良好なクリーニング性能を維持することができるものとなっている。また、第1領域及び第2領域を一本の繊維からなるエレクトレット材料101にて構成するので、表面にバイアスを印加しなくても、正極性の電位を有する第1領域、及び負極性の電位を有する第2領域を形成することができる。したがって、正極性のバイアスを印加する電源装置や負極性のバイアスを印加する電源装置が不要となり、装置の大型化を抑制することができ、装置内におけるレイアウトの自由度の低下を抑制することができる。さらに、装置の部品点数の増加を抑制することができ、コストアップを抑制することができる等の効果を奏するものとなっている。
【0008】
一方、電子写真方式の画像形成装置において、他のエレクトレット処理された一例として、特許文献2には、現像装置において、エレクトレット処理された毛材を用いた回転ファーブラシが開示されている。この現像装置200は、図8(a)に示すように、所定極性に帯電された現像剤201を電気的吸引力によって保持搬送するための回転駆動型の現像剤搬送スリーブ202と、該現像剤搬送スリーブ202に摺擦するように配置されている回転ファーブラシ203とを備え、該回転ファーブラシ203は、図8(b)に示すように、芯体203aが導電性材料で形成され、毛材203bがエレクトレット処理して形成されている。特許文献2では、毛材203bは、先端の電荷が正極性であり、根元の電荷が負極性にエレクトレット処理されている。すなわち、毛材203bは、その先端の電荷は現像剤201の帯電極性とは逆極となっていると共に、芯体203aには、エレクトレット処理された毛材203bの先端の電荷と同極のバイアス電圧が印加されるようになっている。
【0009】
これにより、現像剤搬送スリーブ202に残存する帯電トナーを確実に除去することができると共に、現像装置200の長期間の使用に際しても、ファーブラシの毛乱れが有効に回避され、毛乱れに起因する現像剤201の供給ムラ及びそれによる画像欠損の発生が防止されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−199639号公報(2007年8月9日公開)
【特許文献2】特開平5−35108号公報(1993年2月12日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記従来の特許文献1に開示されたクリーニングブラシでは、図7(b)に示すように、繊維状のエレクトレット材料101がクリーニングローラ102の表面上で、寝るようにして固定されているので、残存トナーの量に対して繊維の数が絶対的に少なくかつ繊維が寝ており、残存トナーの除去性能が充分でないという問題を有している。
【0012】
また、上記従来の特許文献2に開示された回転ファーブラシ203の毛材203bを製造する場合には、図9に示すように、エレクトレット処理したシート210を点線Aに沿って短冊状に裁断することにより作製される。したがって、このような短冊状の毛材203bでは、エレクトレット処理をしても繊維状ではないので、前述したと同様に、残存トナーの量に対して繊維の数が絶対的に少なく、紙粉除去や残存トナーの除去するクリーニングブラシとして使用しても性能的に不十分であるという問題点を有している。
【0013】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、クリーニング性能を充分に発揮し得る画像形成用のエレクトレット処理ブラシ、クリーニングブラシ、及びエレクトレット処理ブラシの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の画像形成用のエレクトレット処理ブラシは、上記課題を解決するために、エレクトレット処理した繊維からなるブラシ毛を静電植毛してなっていることを特徴としている。
【0015】
上記の発明によれば、エレクトレット処理した繊維からなるブラシ毛は静電植毛してなっているので、従来の特許文献1及び特許文献2に記載の機械植毛に比較して植毛されているブラシ毛の数が圧倒的に多い。また、静電植毛してなるブラシは、ブラシ毛が立っている。したがって、転写後の残存トナー量を充分に除去できるエレクトレット処理ブラシとすることができる。
【0016】
この結果、クリーニング性能を充分に発揮し得る画像形成用のエレクトレット処理ブラシを提供することができる。
【0017】
本発明のエレクトレット処理ブラシでは、前記ブラシ毛は、繊維からなるブラシ毛のエレクトレット処理として軸方向に分極されてなっていることが好ましい。
【0018】
すなわち、軸方向に分極した繊維からなるブラシ毛を静電植毛する場合、分極の程度によって、飛翔するブラシ毛のエネルギーが異なる。したがって、軸方向に分極した繊維からなるブラシ毛を静電植毛して作製したエレクトレット処理ブラシは、分極性能の優れたブラシ毛にて形成されている。
【0019】
したがって、単に、繊維をエレクトレット処理したブラシを機械的に植毛したものに比べて、分極の程度が極めて優れたものとなっている。
【0020】
この結果、残存トナーを充分に除去し得るエレクトレット処理ブラシを提供することができる。
【0021】
また、例えば、静電植毛ブラシに吸着性能を増加させるために、静電植毛ブラシを導電性にして電圧を印加させることが従来行われている。しかしこの技術では、繊維の根元にも先端と同様の電圧が印加されるので、根元まで残存トナーが吸着され、ブラシの耐久性の低下を招くことになる。
【0022】
この点、本発明では、先端には残存トナーとは逆極性が付与されるが、根元には残存トナーと同じ極性が付与されているので、ブラシ毛の根元には残存トナーが吸着されない。
【0023】
したがって、ブラシ毛の目詰まりによりブラシを交換する時期が早まるという耐久性の低下を防止することができる。
【0024】
また、本発明のエレクトレット処理ブラシでは、前記ブラシ毛は、繊維からなるブラシ毛のエレクトレット処理として軸方向とは直交する方向に分極されてなっていることが好ましい。
【0025】
前述したように、従来、例えば、静電植毛ブラシに吸着性能を増加させるために、静電植毛ブラシを導電性にして電圧を印加させることが行われていた。しかし、転写後の残存トナーは正極性と負極性との両方に帯電している場合が存在するので、この従来技術では、印加できる電圧の極性が一方向のみであり、一方の極性のトナー微粉のみしか吸着できなかった。
【0026】
この点、本発明では、一本毎のブラシ毛が軸方向とは直交する方向に分極されてなっているので、いずれに帯電した残存トナーであっても、本発明のエレクトレット処理ブラシにて除去することが可能である。
【0027】
また、感光体ドラムの転写後においては、残存トナーだけではなく、紙粉が付着している場合がある。この紙粉は極性が一定でないため、積極的な電気的清掃が不可能であることから、従来では、電圧を印加せず、力学的又は静電気的に紙粉を吸着することにより除去する方法が採られていた。
【0028】
この点、本発明では、極性が一定でない紙粉でも、除去することが可能であり、別途に紙粉除去手段を設けることによる装置の複雑化及びコスト増大化を回避することができる。
【0029】
本発明のクリーニングブラシは、上記課題を解決するために、上記記載のエレクトレット処理ブラシを備えていることを特徴としている。
【0030】
上記の発明によれば、クリーニング性能を充分に発揮し得るクリーニングブラシを提供することができる。
【0031】
本発明の画像形成用のエレクトレット処理ブラシの製造方法は、上記課題を解決するために、繊維からなるブラシ毛を軸方向に分極する工程と、軸方向に分極された複数のブラシ毛を上側に飛翔させるか又は横向きに飛翔させて基材に静電植毛する工程とを含むことを特徴としている。
【0032】
上記の発明によれば、繊維からなるブラシ毛を軸方向に分極してなるエレクトレット処理ブラシを製造するときには、軸方向に分極された複数のブラシ毛を上側に飛翔させるか又は横向きに飛翔させて基材に静電植毛する。
【0033】
すなわち、軸方向に分極した繊維からなるブラシ毛を静電植毛する場合、分極の程度によって、飛翔するブラシ毛のエネルギーが異なる。したがって、ブラシ毛を上側又は横向きに飛翔させた場合に、分極の程度が悪いブラシ毛は、飛翔するための静電エネルギーが足らないときには、下方に落下する。
【0034】
この結果、軸方向に分極した繊維からなるブラシ毛を静電植毛して作製したエレクトレット処理ブラシは、分極性能の優れたブラシ毛にて形成されていることになる。
【0035】
したがって、単に、繊維をエレクトレット処理したブラシを機械的に植毛したものに比べて、分極の程度が極めて優れたものとなっている。
【0036】
この結果、残存トナーを充分に除去し得る画像形成用のエレクトレット処理ブラシの製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の画像形成用のエレクトレット処理ブラシは、以上のように、エレクトレット処理した繊維からなるブラシ毛を静電植毛してなっているものである。
【0038】
また、本発明のクリーニングブラシは、以上のように、上記記載のエレクトレット処理ブラシを備えているものである。
【0039】
また、本発明の画像形成用のエレクトレット処理ブラシの製造方法は、以上のように、繊維からなるブラシ毛を軸方向に分極する工程と、軸方向に分極された複数のブラシ毛を上側に飛翔させるか又は横向きに飛翔させて基材に静電植毛する工程とを含む方法である。
【0040】
それゆえ、クリーニング性能を充分に発揮し得る画像形成用のエレクトレット処理ブラシ、クリーニングブラシ、及びエレクトレット処理ブラシの製造方法を提供するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】(a)〜(c)は、本発明におけるエレクトレット処理ブラシの実施の一形態を示すものであり、軸方向に分極されたエレクトレット処理ブラシを示す説明図である。
【図2】上記エレクトレット処理ブラシを備えた画像形成装置の画像形成部を示す全体構成図である。
【図3】(a)〜(d)は、エレクトレット処理ブラシにおけるエレクトレット処理する工程を示す説明図である。
【図4】(a)は、エレクトレット処理されたブラシ毛をアップ法により静電植毛する方法を示す正面図であり、(b)はエレクトレット処理されたブラシ毛をサイド法により静電植毛する方法を示す正面図である。
【図5】(a)〜(c)は、本発明におけるエレクトレット処理ブラシの他の実施の一形態を示すものであり、径方向に分極されたエレクトレット処理ブラシを示す説明図である。
【図6】本実施例2にて用いた画像形成部の構成を示す概略図である。
【図7】(a)〜(c)は、従来のエレクトレット処理ブラシを示す説明図である。
【図8】(a),(b)は、従来の他のエレクトレット処理ブラシを示す説明図である。
【図9】上記従来の他のエレクトレット処理ブラシの製造方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図1ないし図4に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0043】
図2は、本実施の形態のエレクトレット処理ブラシを備えた画像形成装置における画像形成部の構造を模式的に示す正面図である。
【0044】
尚、画像形成装置は、画像形成装置が備えるスキャナにて読み込まれたデータや、画像形成装置に接続された外部機器(例えば、パーソナルコンピュータ等の画像処理装置)からのデータを画像として出力するものである。
【0045】
図2に示すように、画像形成部30は、感光体ドラム1と、帯電装置2と、露光装置3と、現像装置10と、転写ロール4と、搬送ベルト5と、帯電制御装置7と、クリーニング装置20とを備えており、感光体ドラム1の周囲に、回転方向に沿って、帯電装置2、露光装置3、現像装置10、転写ロール4及び搬送ベルト5、帯電制御装置7、並びにクリーニング装置20をこの順序で配置した構成となっている。
【0046】
感光体ドラム1は、画像形成装置における静電潜像担持体となるものであり、円柱形状を有している。
【0047】
帯電装置2は、感光体ドラム1と物理的に接触して、感光体ドラム1の表面を一様に所定の電位まで帯電させるためのものである。帯電装置2は、例えば、コロナ帯電装置や帯電ブラシを用いることができる。
【0048】
露光装置3は、帯電装置2によって帯電された感光体ドラム1の表面を、例えばパーソナルコンピュータ等の画像処理装置からのデータに基づき、レーザ光等により露光して、感光体ドラム1の表面に静電潜像を形成させるためのものである。露光装置3として、例えば半導体レーザや発光ダイオードを用いることができる。
【0049】
現像装置10は、感光体ドラム1の表面に現像ロール11にて現像剤を供給し、感光体ドラム1の表面に形成された静電潜像を現像剤像として顕像化するつまり現像するためのものである。本実施の形態の現像装置10では、例えば非磁性1成分トナーからなる現像剤が使用されており、いわゆる非磁性1成分現像方式を採用している。尚、本発明においては、必ずしも非磁性1成分トナーに限らず、全ての現像剤を対象とすることができる。
【0050】
搬送ベルト5は、感光体ドラム1の表面に現像剤像が形成された後に、PPC(Plain Paper Copy)用紙等の記録媒体6を感光体ドラム1に運搬するためのものである。
【0051】
転写ロール4は、感光体ドラム1の表面の現像剤像を、転写材である記録媒体6に転写するためのものであり、板金の面方向と記録媒体6の面方向とを平行にして、搬送ベルト5を間に挟んで感光体ドラム1と隣接対向するように設置されている。尚、記録媒体6は、例えば用紙、OHP等である。転写ロール4は、例えば、ウレタンゴムロールからなっている。
【0052】
帯電制御装置7は、転写後の感光体ドラム1の残存している正極性及び負極性の残存トナーを例えば全てが負極性になるように帯電制御している。なお、帯電制御装置7は存在しない場合もある。
【0053】
クリーニング装置20は、エレクトレット処理ブラシとしてのクリーニングブラシ22を備えており、感光体ドラム1の表面に残留した現像剤や紙粉等を除去するためのものである。尚、クリーニング装置20については、後で詳述する。
【0054】
上記構成の画像形成装置において、画像を形成する動作を、図2に基づいて説明すると、以下の通りである。
【0055】
感光体ドラム1の表面は、帯電装置2と接触することにより、均一に帯電する。表面が帯電された感光体ドラム1は、露光装置3によって、データに基づき露光され、感光体ドラム1の表面に静電潜像が形成される。そして、現像装置10の現像剤供給ロール12にて現像ロール11の表面に現像剤が塗布され、現像ロール11から感光体ドラム1の表面に現像剤が供給され、感光体ドラム1の表面の静電潜像が、現像されて顕像化される。続いて、搬送ベルト5によって記録媒体6が感光体ドラム1へ運搬され、転写ロール4によって、感光体ドラム1の表面の現像剤像が、記録媒体6に転写される。そして、転写後の感光体ドラム1は、残留したトナーや紙粉等が、帯電制御装置7により正極性又は負極性のいずれかになるように帯電制御された後、クリーニングブラシ22によって除去される。このようなサイクルで画像形成は行われる。
【0056】
次に、本実施の形態のクリーニング装置20の詳細について、図1及び図2に基づいて以下に説明する。尚、図1(a)〜(c)は、本実施の形態のクリーニングブラシ22の構成を示す図である。
【0057】
前述したように、本実施の形態のクリーニング装置20は、図2に示すように、感光体ドラム1の表面に残留した現像剤や紙粉等を除去するものであり、前述したクリーニングブラシ22と、このクリーニングブラシ22に接触する導電ローラ23と、この導電ローラ23に摺察する清掃部材24とを備えている。なお、このクリーニング装置20は、一例であり、例えば、導電ローラ23及び清掃部材24が存在しない場合もある。
【0058】
上記クリーニングブラシ22は、感光体ドラム1と物理的に接触して、感光体ドラム1の表面に残留した現像剤や紙粉等を除去する。そして、このクリーニングブラシ22に接触する導電ローラ23は、例えば正極性に帯電されることにより、クリーニングブラシ22の正極性からなるブラシ毛22aの先端にて吸着した負極性の残存トナーを吸着すると共に、導電ローラ23に吸着された残存トナーは、この導電ローラ23に摺察する清掃部材24によって除去されるものとなっている。
【0059】
ここで、特徴のある本実施の形態のクリーニングブラシ22の構成について詳述する。
【0060】
まず、一般的なクリーニングブラシにおける繊維からなる絶縁のブラシ毛は、図1(a)に示すように、正極性電荷と負極性電荷とが均一に分散されており、ブラシ毛全体として電荷は中和されたものとなっている。これに対して、本実施の形態のクリーニングブラシ22における繊維からなる絶縁のブラシ毛は、図1(b)に示すように、例えば、軸方向に分極したエレクトレット処理を行ったブラシ毛22aとしてなっており、図1(c)に示すように、クリーニングブラシ22は、これら複数のブラシ毛22aを基材22bに静電植毛してなっている。上記基材22bとしては、金属若しくは樹脂からなるシャフト、板金、フィルム、又はモールド等を使用することができる。シャフトの場合には回転効果が得られる一方、板金、フィルム、又はモールド等の場合には省スペース化が可能となる。また、基材22bには、静電植毛されたブラシ毛22aを接着するための図示しない接着剤が塗布されている。この接着剤について、本実施の形態では、導電性の付与については問わない。
【0061】
また、絶縁性の繊維からなるブラシ毛22aにおける繊維材料としては、例えば、永久に分極状態を保持するポリプロピレン等の高分子材料を使用している。このため、一旦、エレクトレット処理により分極された正極性及び負極性が元に戻ることはない。また、このような永久に分極状態を保持する他の高分子材料としては、例えば、ポリエチレン、フッ素樹脂、塩素樹脂、熱可塑性ポリエステル、ナイロン等のポリアミド、各種アクリル系樹脂等を使用することができる。
【0062】
さらに、ブラシ毛22aの繊度及び繊維形状は、プロセスに応じて適宜選定することができる。ブラシ毛22aの長さは、例えば、0.5〜2.5mmが好ましい。ブラシ毛22aの感光体ドラム1への食い込み量は、プロセスに応じて適宜選定することができるが、例えば、食い込み量がブラシ毛22aの長さの50%以下とすることが好ましい。すなわち、目詰まりをなくすためには、異物やイレギュラーな逆極性トナーの吸着を防止する必要がある。したがって、そのためには、繊維の対向物への食い込み量を繊維長の50%以下とすることが好ましい。
【0063】
ここで、本実施の形態では、例えば負極性に帯電されるトナーを使用している。そこで、本実施の形態では、図1(b)(c)に示すように、ブラシ毛22aの先端側を正極性に帯電する一方、ブラシ毛22aの根元側を負極性に帯電するように分極させている。すなわち、エレクトレット処理により、長手方向に分極した繊維をトナー極性と異極性に分極した側がブラシ表層に向くように植毛したブラシ毛22aをクリーニング部材として用いている。
【0064】
これによって、転写後の感光体ドラム1に残存している負極性のトナーをブラシ毛22aの先端側にて集中的に帯電された正極の電荷にて吸着することにより、効率よく残存トナーを除去することができる。このように、ブラシ毛22aの先端に所望の極性の強い電界を作り、ブラシ毛22aの根元では先端と逆極性つまり残存トナーと同極性になっているため、互いに反発し、クリーニングブラシ22の内部に残存トナーを取り込まず、常に、クリーンな状態を維持することができる。
【0065】
ところで、エレクトレット処理していない従来のブラシ毛を用いたクリーニングブラシでは、残存トナーの吸着性をよくするために、例えば、導電性繊維を配したブラシ毛を用いたクリーニングブラシにてトナーに対して逆極性の電圧を印加してクリーニングを行っていた。しかしながら、このような従来品では、導電性繊維の根元にも先端と同様の電圧が印加されているので、根元までトナーが吸着され、その結果、クリーニングブラシの目詰まりによって、クリーニング能力が落ちるという問題があった。そして、この問題は、クリーニングブラシの耐久性の問題として顕在化し、クリーニングブラシ22の取替え時期が早まることになっていた。
【0066】
これに対して、本実施の形態のクリーニングブラシ22では、ブラシ毛22aの先端は残存トナーとは逆極性の正極性となっている。このため、残存トナーはブラシ毛22aの先端で吸着される一方、ブラシ毛22aの根元は負極性となっているので、ブラシ毛22aの根元には残存トナーが吸着されない。
【0067】
したがって、残存トナーを効率よく吸着すると共に、ブラシ毛22aの根元を常にクリーンな状態に保ち、トナーの目詰まりによる耐久性の低下を抑制することができる。
【0068】
また、本実施の形態では、エレクトレット処理されたブラシ毛22aを基材22bに静電植毛している。このため、静電植毛により植毛してなるクリーニングブラシ22は、ブラシ毛22aの分極効率が、通常のエレクトレット処理されたブラシ毛を植毛したクリーニングブラシよりもブラシ毛22aの分極効率が高い。このため、残存トナーの除去性能も高いというメリットがある。
【0069】
上述した静電植毛したクリーニングブラシ22の分極効率が高いのは、静電植毛したクリーニングブラシ22の製造方法に特徴があるためである。以下に、静電植毛によるクリーニングブラシ22の製造方法について、繊維にエレクトレット処理する方法を含めて、図3(a)〜(d)及び図4(a)(b)に基づいて説明する。図3(a)〜(d)は、繊維にエレクトレット処理する方法を示す説明図である。また、図4(a)はアップ法による静電植毛方法を示す正面図であり、図4(b)はサイド法による静電植毛方法を示す正面図である。
【0070】
まず、繊維にエレクトレット処理する場合には、図3(a)に示すように、複数の長い繊維毛を、結着剤を用いて毛束40にする。次いで、図3(b)に示すように、上記毛束40を0.5〜2.5mmの長さにカットする。上記毛束40をカットしたものを短パイル束41と呼ぶ。次いで、図3(c)に示すように、これら短パイル束41を正電極45aと負電極45bとの間に複数並べて立設させる。これにより、短パイル束41は、軸方向に正極性と負極性とにエレクトレット処理される。
【0071】
次いで、図3(d)に示すように、軸方向に正極性と負極性とにエレクトレット処理された短パイル束41を取り出し、ばらばらに分散して一本毎のブラシ毛22aとする。
【0072】
次に、これら一本毎のブラシ毛22aを基材22bに静電植毛する方法について説明する。本実施の形態では、ブラシ毛22aを上向きに飛翔させるアップ法、又は横向きに飛翔させるサイド法による静電植毛方法を採用している。
【0073】
最初に、アップ法にて静電植毛する場合には、図4(a)に示すように、下側の負極性用電極プレート51の上に、上述の方法により作製した軸方向に正極性と負極性とにエレクトレット処理された多数のブラシ毛22aを山盛りに載置する。そして、負極性用電極プレート51の上方には正極性用電極プレート52を設けると共に、この正極性用電極プレート52の下面には基材22bを貼り付け、その基材22bの下面には接着剤22cを塗布しておく。
【0074】
次いで、直流高電圧電源53により、正極性用電極プレート52には正電極を印加すると共に、負極性用電極プレート51には負電極を印加する。この結果、下側の負極性用電極プレート51に載置されていたブラシ毛22aは静電的に上側の正極性用電極プレート52に向かって飛翔し、接着剤22cに立設状態に接着される。これにより、図1(c)に示すクリーニングブラシ22が完成する。
【0075】
ここで、上記アップ法による静電植毛では、ブラシ毛22aにおける軸方向の分極効率のよいもののみが、正極性用電極プレート52に向かって飛翔し、接着剤22cに立設状態に接着される。しかし、ブラシ毛22aにおける軸方向の分極効率の悪いものについては、正極性用電極プレート52の接着剤22cに到達できるほどの静電エネルギーが得られない。この結果、アップ法によって静電植毛されたブラシ毛22aは、分極効率のよいブラシ毛22aのみが集められたものとなる。
【0076】
したがって、アップ法によって静電植毛されたクリーニングブラシ22は、必然的に、分極効率及び分極性能がよく、従来の静電植毛以外のエレクトレット処理ブラシに比べて残存トナーの除去効率が高いものとなる。すなわち、特許文献2に示すような従来の静電植毛以外のエレクトレット処理ブラシでは、電界の均一性つまり分極性能が悪くなる。
【0077】
次に、サイド法にて静電植毛する場合について、図4(b)に基づいて説明する。
【0078】
サイド法での静電植毛は、図4(b)に示すように、横向きにブラシ毛22aを飛翔させる。したがって、サイド法にて静電植毛する場合には、前記図4(a)に示すアップ法による静電植毛に使用された下側に設けられた負極性用電極プレート51及び上側に設けられた正極性用電極プレート52を横向きに対峙するように立設する点と、負極性用電極プレート51側にはブラシ毛22aを載置する載置台54が設けられている点とが異なっている。
【0079】
このサイド法での静電植毛においても、ブラシ毛22aにおける軸方向の分極効率のよいもののみが、正極性用電極プレート52に向かって飛翔し、接着剤22cに横向きの立設状態に接着される。しかし、ブラシ毛22aにおける軸方向の分極効率の悪いものについては、正極性用電極プレート52の接着剤22cに到達できるほどの静電エネルギーが得られず、下方に落下する。この結果、このサイド法によって静電植毛されたブラシ毛22aは、分極効率のよいブラシ毛22aのみが集められたものとなる。
【0080】
したがって、サイド法によって静電植毛されたクリーニングブラシ22は、必然的に、分極効率及び分極性能がよく、従来の静電植毛以外のエレクトレット処理ブラシに比べて残存トナーの除去効率が高いものとなる。すなわち、前述したように、特許文献2に示すような従来の静電植毛以外のエレクトレット処理ブラシでは、電界の均一性、つまり分極性能が悪くなる。
【0081】
ここで、一般的に、エレクトレット処理しない絶縁性の繊維を静電植毛する場合には、前記図3(b)に示す短パイル束41を界面活性剤にて電着処理する。これにより、短パイル束41の端部が分極により一時的に極性を有することになる。
【0082】
これに対して、本実施の形態では、ブラシ毛22aを静電植毛する前処理工程において軸方向に分極させるので、端部を界面活性剤にて電着処理する工程を省略することができる。すなわち、本実施の形態では、エレクトレット処理を行ったブラシ毛22aを、該エレクトレット処理による分極を利用して静電植毛することができるものとなっている。
【0083】
また、繊維を静電植毛する方法としては、上述したアップ法及びサイド法以外に、アップ法とは逆に下側に向けて繊維を飛翔させるダウン法がある。しかしながら、本実施の形態のクリーニングブラシ22の形成においては、分極性能の向上の観点から、ダウン法よりも上述したアップ法及びサイド法にて静電植毛するのが好ましい。
【0084】
このようにして作製したクリーニングブラシ22について、耐久性能について、確認実験を行ったところ、後述する実施例1に記載の表2に示す結果が得られた。すなわち、導電性ブラシを使用した比較例では、ブラシ毛の根元でも残存トナーが吸着されることから、40000枚の印刷数にて画像汚れが発生し、ブラシの取替えが必要となるという耐久性能であった。これに対して、本実施の形態のブラシ毛22aを軸方向に分極したクリーニングブラシ22では、分極により、ブラシ毛22aの根元では残存トナーと同極性となっているので、ブラシ毛22aの根元に残存トナーが吸着されない。この結果、50000枚の印刷数でも画像汚れは発生せず、本実施の形態の静電植毛したエレクトレット処理ブラシからなるクリーニングブラシ22が優れていることが立証された。尚、特許文献2に開示された、従来の静電植毛を採用しない回転ファーブラシ203の毛材203bを用いた実験では、初期から筋状に画像汚れが発生することが確認できた。
【0085】
このように、本実施の形態の画像形成用のクリーニングブラシ22は、エレクトレット処理した繊維からなるブラシ毛22aを静電植毛してなっている。このため、従来の特許文献1及び特許文献2に記載の機械植毛に比較して植毛されているブラシ毛の数が圧倒的に多い。また、静電植毛してなるブラシは、ブラシ毛22aが立っている。したがって、転写後の残存トナー量を充分に除去できるエレクトレット処理ブラシとすることができる。
【0086】
この結果、クリーニング性能を充分に発揮し得るクリーニングブラシ22を提供することができる。
【0087】
また、本実施の形態では、エレクトレット処理工程における電界の印加の仕方により、ブラシ毛22aの極性を任意の方向に揃えたクリーニングブラシ22を作製することが可能である。
【0088】
例えば、本実施の形態のクリーニングブラシ22では、ブラシ毛22aは、繊維からなるブラシ毛22aのエレクトレット処理として軸方向に分極したものからなっている。
【0089】
すなわち、軸方向に分極した繊維からなるブラシ毛22aを静電植毛する場合、分極の程度によって、飛翔するブラシ毛22aのエネルギーが異なる。したがって、軸方向に分極した繊維からなるブラシ毛22aを静電植毛して作製したクリーニングブラシ22は、分極性能の優れたブラシ毛22aにて形成されている。
【0090】
したがって、単に、繊維をエレクトレット処理したブラシを機械的に植毛したものに比べて、分極の程度が極めて優れたものとなっている。
【0091】
この結果、残存トナーを充分に除去し得るクリーニングブラシ22を提供することができる。
【0092】
また、例えば、静電植毛ブラシに吸着性能を増加させるために、静電植毛ブラシを導電性にして電圧を印加させることが従来行われている。しかしこの技術では、繊維の根元にも先端と同様の電圧が印加されるので、根元まで残存トナーが吸着され、ブラシの耐久性の低下を招くことになる。
【0093】
この点、本実施の形態では、先端には残存トナーとは逆極性が付与されるが、根元には残存トナーと同じ極性が付与されているので、ブラシ毛22aの根元には残存トナーが吸着されない。
【0094】
したがって、ブラシ毛22aの目詰まりによりブラシを交換する時期が早まるという耐久性の低下を防止することができる。
【0095】
また、本実施の形態のクリーニングブラシ22は、上記記載のエレクトレット処理ブラシを備えている。したがって、クリーニング性能を充分に発揮し得るクリーニングブラシ22を提供することができる。
【0096】
また、本実施の形態のエレクトレット処理ブラシの製造方法では、繊維からなるブラシ毛22aを軸方向に分極してなるクリーニングブラシ22を製造するときには、軸方向に分極された複数のブラシ毛22aを上側に飛翔させるか又は横向きに飛翔させて基材22bに静電植毛する。
【0097】
すなわち、軸方向に分極した繊維からなるブラシ毛22aを静電植毛する場合、分極の程度によって、飛翔するブラシ毛22aのエネルギーが異なる。したがって、ブラシ毛22aを上側又は横向きに飛翔させた場合に、分極の程度が悪いブラシ毛22aは、飛翔するための静電エネルギーが足らないときには、下方に落下する。
【0098】
この結果、軸方向に分極した繊維からなるブラシ毛22aを静電植毛して作製したクリーニングブラシ22は、分極性能の優れたブラシ毛22aにて形成されていることになる。
【0099】
したがって、単に、繊維をエレクトレット処理したブラシを機械的に植毛したものに比べて、分極の程度が極めて優れたものとなっている。この結果、残存トナーを充分に除去し得るクリーニングブラシ22の製造方法を提供することができる。
【0100】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について図5に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0101】
前記実施の形態1のクリーニングブラシ22における繊維からなるブラシ毛22aは、軸方向に分極してなっていたが、本実施の形態のクリーニングブラシ22’では、図5(a)(b)(c)に示すように、繊維からなるブラシ毛22a’は、軸方向とは直交する方向つまり径方向に分極してなっている点が異なっている。
【0102】
本実施の形態のクリーニングブラシ22’では、ブラシ毛22a’は径方向に分極してなっている。このため、例えば、ブラシ毛22a’の右側面では正極性となっており、左側面では負極性となっているので、1本のブラシ毛22a’において正極性側面と負極性側面とが混在している。ここで、転写後の残存トナーは、正極性と負極性とが混在したものとなっている場合があるが、本実施の形態では、そのような場合においても、両方の極性の残存トナーを吸着できるので、クリーニング能力が向上することになる。
【0103】
上記構成のクリーニングブラシ22’の製造方法について、繊維にエレクトレット処理する方法を含めて説明する。
【0104】
まず、繊維にエレクトレット処理する場合には、前記実施の形態1における図3(a)に示すように、複数の長い繊維毛を、結着剤を用いて毛束40にする。次いで、本実施の形態では、この毛束40の状態で電着処理とエレクトレット処理とを行う。このとき、エレクトレット処理のための電極と繊維とが平行になるように繊維を通過させながら処理する。これにより、毛束40は、径方向に正極性と負極性とにエレクトレット処理される。
【0105】
その後、図3(b)に示すように、電着処理及びエレクトレット処理された毛束40を0.5〜2.5mmの長さにカットして短パイル束41を作製する。次いで、本実施の形態では、電着処理された部分のみ一時的に軸方向に分極させて基材22bに静電植毛する。
【0106】
これにより、図5(c)に示すように、繊維内部のエレクトレット化による分極のみが保持され、ブラシ毛22a’が径方向に正極性と負極性とにエレクトレット処理されたクリーニングブラシ22’を製造することができる。
【0107】
尚、このように実施の形態1とは製造方法を変えているのは、短パイルをエレクトレット化処理すると、電界によってパイルが立ち上がって、軸方向に分極されるパイルが混ざる虞があるためである。また、エレクトレット処理後に電着処理をすると、エレクトレット処理が失われる虞があるためである。
【0108】
このように、本実施の形態のクリーニングブラシ22’では、ブラシ毛22a’は、繊維からなるブラシ毛22a’のエレクトレット処理として軸方向とは直交する方向に分極されてなっている。
【0109】
前記実施の形態1にも述べたように、従来、例えば、静電植毛ブラシに吸着性能を増加させるために、静電植毛ブラシを導電性にして電圧を印加させることが行われていた。しかし、転写後の残存トナーは正極性と負極性との両方に帯電している場合が存在するので、この従来技術では、印加できる電圧の極性が一方向のみであり、一方の極性のトナー微粉のみしか吸着できなかった。
【0110】
この点、本実施の形態では、一本毎のブラシ毛22a’が軸方向とは直交する方向つまり径方向に分極されてなっているので、いずれに帯電した残存トナーであっても、本実施の形態のクリーニングブラシ22’にて除去することが可能である。
【0111】
また、感光体ドラム1の転写後においては、残存トナーだけではなく、紙粉が付着している場合がある。この紙粉は極性が一定でないため、積極的な電気的清掃が不可能であることから、従来では、電圧を印加せず、力学的又は静電気的に紙粉を吸着することにより除去する方法が採られていた。
【0112】
この点、本実施の形態では、極性が一定でない紙粉でも、除去することが可能であり、別途に紙粉除去手段を設けることによる装置の複雑化及びコスト増大化を回避することができる。
【0113】
尚、本実施の形態では、ブラシ毛22a’は、軸方向とは直交する方向としての径方向に分極してなっており、ブラシ毛22a’が円形断面となっていることを前提としている。しかしながら、本発明においては、軸方向とは直交する方向であればよい。したがって、ブラシ毛22a’の断面形状は、円だけではなく、多角形、楕円、その他不定形状であってもよい。
【0114】
また、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0115】
本実施の形態のエレクトレット処理したクリーニングブラシ22・22’についての効果を確認するために、実験を行ったので、実施例1及び実施例2に説明する。
【0116】
〔実施例1〕
本実施例では、実施の形態1にて説明した軸方向にエレクトレット処理したクリーニングブラシ22についての効果を確認するための実験について説明する。
【0117】
まず、本実施例では、軸方向にエレクトレット処理したクリーニングブラシ22について、転写後の帯電している残存トナーのクリーニングを行い、所定枚数の印字後における画像異常の有無を比較した。
【0118】
実験に用いた画増形成装置は、本実施の形態1で説明した図2に示す画像形成部30を使用した。すなわち、転写後の感光体ドラム1の下流側かつクリーニング装置20の上流側に設けた帯電制御装置7によって、転写後の感光体ドラム1の残存している正極性及び負極性の残存トナーを例えば全てが負極性になるように帯電制御している。
【0119】
一方、クリーニング装置20では、クリーニングブラシ22に接触する導電ローラ23を正極性に帯電することにより、クリーニングブラシ22の正極性からなるブラシ毛22aの先端にて吸着した負極性の残存トナーを吸着するようになっていると共に、導電ローラ23に吸着された残存トナーは、清掃部材24が摺察することにより除去している。
【0120】
本実施例では、このような画像形成部30を用いると共に、表1に示す実施例1、比較例1及び従来例1の各種仕様の各ブラシを用いて実験を行った。
【0121】
【表1】

【0122】
具体的には、実施例1は、表1に示すように、軸方向にエレクトレット処理したものを静電植毛したものであり、繊維種がポリプロピレン、エレクトレット処理が先端(+:正極性)かつ根元(−:負極性)、抵抗値は絶縁性、ブラシ化方法は静電植毛、印加電圧については電圧を印加しないもの(フローティング)とした。また、比較例1は、導電性ブラシを使用するものであり、繊維種がナイロン、エレクトレット処理が無し、抵抗値は10Ω、ブラシ化方法は静電植毛、印加電圧は+400Vとした。さらに、従来例1は、特許文献2に示すものであり、繊維種がポリプロピレン、エレクトレット処理が先端(+:正極性)かつ根元(−:負極性)、抵抗値は絶縁性、ブラシ化方法は機械化植毛、印加電圧は電圧を印加しないもの(フローティング)とした。
【0123】
そして、これらの各種仕様の各ブラシを用いた場合に、印字を50000枚以上行い、記録媒体6における画像の乱れ等の画像異常の有無を比較検討した。この結果、表2に示す実験結果を得た。
【0124】
【表2】

【0125】
すなわち、表2に示すように、実施例1では、ブラシ毛22aが充分に軸方向に分極された繊維のみからなるため、充分なクリーニング性能を発揮し、50000枚の印刷後も目詰まりせず、安定した良好な性能を発揮した。
【0126】
これに対して、比較例1では、40000枚の印刷後に画像に汚れが発生した。また、根元までトナーを取り込むことにより、ブラシがトナーで充満状態となり、ブラシからトナーがこぼれ落ちる現象が見られた。
【0127】
また、特許文献2に記載の従来例1では、初期から記録媒体6に画像汚れが発生した。すなわち、従来例1では、高密度化が難しく、かつエレクトレット処理化が不十分な繊維も植毛されてしまうことから、均一なクリーニングを行うことができなかったと考えられる。
【0128】
このように、軸方向にエレクトレット処理したブラシ毛22aを有するクリーニングブラシ22は、導電性ブラシを有する比較例1や特許文献2に記載の従来例に比べて、耐久性が優れていることが立証できた。
【0129】
〔実施例2〕
本実施例では、実施の形態2にて説明した径方向にエレクトレット処理したクリーニングブラシ22’についての効果を確認するための実験について説明する。
【0130】
まず、本実施例では、径方向にエレクトレット処理したクリーニングブラシ22’を用いて転写後の帯電している残存トナーのクリーニングを行うと共に、印字率の違いによる画像異常の有無を検討した。また、比較例2、比較例3及び従来例2との比較を行った。
【0131】
実験に用いた画増形成装置としては、前記実施の形態1説明した図2に示す画像形成部30に対して、図6に示すように、帯電制御装置7、導電ローラ23及び清掃部材24を省略したものを使用した。
【0132】
すなわち、本実施例で用いた画像形成部には、転写後の帯電制御装置7が存在しないため、感光体ドラム1における転写後の残存トナーには、正極性と負極性との両方の極性のトナーが存在していることになる。しかし、径方向にエレクトレット処理したクリーニングブラシ22’を用いているので、いずれの極性のトナーであってもクリーニングブラシ22’にて吸着することができる。また、この結果、クリーニングブラシ22’には、正極性と負極性との両方の極性のトナーが吸着されていることになるので、導電ローラ23及び清掃部材24も不要となる。
【0133】
本実施例では、表3に示す実施例2、比較例2、比較例3及び従来例2の各種仕様の各ブラシを用いた。
【0134】
【表3】

【0135】
具体的には、実施例2は、表3に示すように、径方向にエレクトレット処理したものを静電植毛したものであり、繊維種がポリプロピレン、エレクトレット処理が径方向に分極、抵抗値は絶縁性、ブラシ化方法は静電植毛、印加電圧は電圧を印加しないもの(フローティング)とした。
【0136】
また、比較例2は、導電性ブラシを使用するものであり、繊維種がナイロン、エレクトレット処理が無し、抵抗値は10Ω、ブラシ化方法は静電植毛、印加電圧は+400Vとした。
【0137】
さらに、比較例3は、静電植毛ではないブラシを使用するものであり、繊維種がポリプロピレン、エレクトレット処理が径方向に分極、抵抗値は絶縁性、ブラシ化方法は機械的植毛、印加電圧は電圧を印加しないもの(フローティング)とした。
【0138】
また、従来例2は、特許文献1に示す平面にエレクトレット処理した繊維を貼り付けたローラを用いたものであり、繊維種がポリプロピレン、エレクトレット処理が径方向に分極、抵抗値は絶縁性、ブラシ化方法は平面に繊維を貼り付け、印加電圧は電圧を印加しないもの(フローティング)とした。
【0139】
そして、これらの各種仕様の各ブラシを用いた場合に、印字率5%、印字率20%、印字率50%、印字率100%とした場合に、記録媒体6における画像の乱れ等の画像異常の有無を比較検討した。この結果、表4に示す実験結果を得た。
【0140】
【表4】

【0141】
すなわち、表4に示すように、実施例2では、ブラシ毛22a’が充分に径方向に分極された繊維からなるため、両極性のトナーの充分なクリーニング性能を発揮すると共に、静電植毛により、充分な繊維密度が存在している。このため、印字率5%〜印字率100%のいずれの場合においても、残存トナーのすり抜けやブラシ毛22a’に残存トナーが充満してこぼれ落ちるということが無かった。
【0142】
これに対して、比較例2では、+の電圧を印加しているため、正極性の残存トナーはクリーニングできず、画像の乱れ等の画像不良が発生した。
【0143】
また、比較例3では、機械的な植毛を行っているので、ブラシの密度が不足しており、残存トナーのすり抜けが発生する。このため、筋状の画像の乱れ等の画像不良が発生した。
【0144】
さらに、特許文献1に記載の従来例2では、印字率5%〜印字率50%では異常が無かったが、印字率100%では画像の乱れ等の画像不良が発生した。この理由は、従来例2における、平面に繊維を貼り付けたローラでは、すぐにブラシが残存トナーにて飽和し、高濃度の印字に耐えられないことが理解できる。
【0145】
このように、径方向にエレクトレット処理したブラシ毛22a’を有するクリーニングブラシ22’は、導電性ブラシを有する比較例2、静電植毛ではないブラシを使用する比較例3、及び特許文献1に記載の従来例に比べて、クリーニングブラシ22の除去性能が優れていることが立証できた。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明のエレクトレット処理ブラシは、感光体上の静電潜像を現像するプリンタ、複写機、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置における画像形成用のエレクトレット処理ブラシ、クリーニングブラシ、及びエレクトレット処理ブラシの製造方法並びに画像形成装置に適用できる。また、クリーニングブラシの用途としては、感光体ドラムのクリーニングだけではなく、転写ベルトのクリーニングブラシとしても適用できる。さらに、クリーニングブラシとしての用途だけではなく、トナーを撹乱する撹乱ブラシや紙粉除去ブラシとしても使用することができる。
【符号の説明】
【0147】
1 感光体ドラム
2 帯電装置
3 露光装置
4 転写ロール
6 記録媒体
7 帯電制御装置
10 現像装置
20 クリーニング装置
22 クリーニングブラシ(エレクトレット処理ブラシ)
22’ クリーニングブラシ(エレクトレット処理ブラシ)
22a ブラシ毛
22a’ ブラシ毛
22b 基材
23 導電ローラ
24 清掃部材
30 画像形成部
40 毛束
41 短パイル束
45a 正電極
45b 負電極
51 負極性用電極プレート
52 正極性用電極プレート
53 直流高電圧電源
54 載置台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレクトレット処理した繊維からなるブラシ毛を静電植毛してなっていることを特徴とする画像形成用のエレクトレット処理ブラシ。
【請求項2】
前記ブラシ毛は、繊維からなるブラシ毛のエレクトレット処理として軸方向に分極されてなっていることを特徴とする請求項1記載のエレクトレット処理ブラシ。
【請求項3】
前記ブラシ毛は、繊維からなるブラシ毛のエレクトレット処理として軸方向とは直交する方向に分極されてなっていることを特徴とする請求項1記載のエレクトレット処理ブラシ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のエレクトレット処理ブラシを備えていることを特徴とするクリーニングブラシ。
【請求項5】
繊維からなるブラシ毛を軸方向に分極する工程と、
軸方向に分極された複数のブラシ毛を上側に飛翔させるか又は横向きに飛翔させて基材に静電植毛する工程とを含むことを特徴とする画像形成用のエレクトレット処理ブラシの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−256601(P2010−256601A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106266(P2009−106266)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(390026147)東英産業株式会社 (38)
【出願人】(000187046)東レ・ファインケミカル株式会社 (153)
【Fターム(参考)】