説明

エレクトロウェッティング表示用着色組成物、画像表示構造、及び、エレクトロウェッティング表示装置

【課題】非極性溶媒への溶解性に優れたジピロメテン系色素を含有し、発色濃度が大きいエレクトロウェッティング表示用着色組成物を提供する。また、発色濃度が大きく、バックフロー現象を起こし難い画像表示構造およびエレクトロウェッティング表示装置を提供する。
【解決手段】25℃、0.1MPaにおけるn−ヘキサンへの溶解度が1質量%以上であるジピロメテン系色素と、非極性溶媒とを含有するエレクトロウェッティング表示用着色組成物である。ジピロメテン系色素は、下記一般式(I)で示されるジピロメテン系化合物が金属又は金属化合物に配位した金属錯体化合物であることが好ましい。


〔一般式(I)中、R、R、R、R、R、及びRは、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロウェッティング表示用着色組成物、画像表示構造、及び、エレクトロウェッティング表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイ材料、光記録媒体、インクジェット用材料等に有機色素が数多く用いられている。色素を塗布プロセスやインクジェットプロセスに使用する場合、着色効率を上げるため、高いモル吸光係数に加え、溶媒への高い溶解性が求められる。
また、非特許文献1において、エレクトロウェッティング法のディスプレイが報告されて以来、エレクトロウェッティング法のディスプレイが注目を浴びている。エレクトロウェッティング法のディスプレイは、基板上に水性媒体と油性着色インクの2相で満たされた複数のピクセルを配し、ピクセルごとに電圧印加のon−offによって水性媒体/油性着色インク界面の親和性を制御し、油性着色インクを基板上に展開/凝集させることによって行う画像表示方式である。このようなエレクトロウェッティング法のディスプレイに用いられる色素には、炭化水素系溶媒への高い溶解性が求められる。
【0003】
ディスプレイ部材であるカラーフィルタ用の色素としては、例えば、下記化合物をはじめとする各種ジピロメテン系金属錯体色素化合物が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【化1】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Nature (London), 425, 383 (2003)
【特許文献1】特開2008−292970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に具体的に記載された色素は、非極性溶媒への溶解性、特に炭化水素系溶媒への溶解性の点で不十分で、更なる改善が求められていた。
本発明は、非極性溶媒、特に炭化水素系溶媒への溶解性に優れた紫色系色素(ジピロメテン系色素)を含有し、発色濃度が大きいエレクトロウェッティング表示用着色組成物を提供することを目的とする。
さらには、発色濃度が大きく、バックフロー現象を起こし難い画像表示構造およびエレクトロウェッティング表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<1> 25℃、0.1MPaにおけるn−ヘキサンへの溶解度が1質量%以上であるジピロメテン系色素と、非極性溶媒とを含有するエレクトロウェッティング表示用着色組成物である。
【0008】
<2> ジピロメテン系色素は、下記一般式(I)で示されるジピロメテン系化合物が金属又は金属化合物に配位した金属錯体化合物である<1>に記載のエレクトロウェッティング表示用着色組成物である。
【0009】
【化2】

【0010】
一般式(I)中、R、R、R、R、R、及びRは、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。
【0011】
<3> ジピロメテン系金属錯体化合物が、下記一般式(I−3)で表される化合物である<2>に記載のエレクトロウェッティング表示用着色組成物である。
【0012】
【化3】

【0013】
一般式(I−3)中、R、R、R、及びRは、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表し、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。R及びRは、各々独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、又はヘテロ環アミノ基を表す。Maは、金属原子又は金属化合物を表す。X及びXは、各々独立にNRa(Raは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。)、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子を表す。Y及びYは、各々独立に、NRb(Rbは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。)、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、又は炭素原子を表す。Xは、Maと結合可能な基を表し、aは1、又は2を表す。RとYとは互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成していてもよく、RとYとは互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成していてもよい。
である。
【0014】
<4> 一般式(I−3)に示されるR、R、R、R、R、及びRのうち、少なくとも一つ以上が、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基である<3>に記載のエレクトロウェッティング表示用着色組成物である。
【0015】
<5> 一般式(I−3)に示されるXが、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基を有したMaの電荷を中和する基である<3>または<4>に記載のエレクトロウェッティング表示用着色組成物である。
【0016】
<6> 一般式(I−3)に示されるXが、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキルエステル基である<3>〜<5>のいずれか1つに記載のエレクトロウェッティング表示用着色組成物である。
【0017】
<7> 表面が疎水性である疎水性絶縁膜層と、表面に接触させて配置され、<1>〜<6>のいずれか1つに記載のエレクトロウェッティング表示用着色組成物を含む非導電性のオイルを用いて形成されたオイル層と、前記オイル層に接触させて配置された親水性液体層と、を有する画像表示構造である。
【0018】
<8> 少なくとも一方の表面の少なくとも一部が導電性である第1の基板と、第1の基板の導電性の表面に対向させて配置された第2の基板と、第1の基板の導電性の表面を有する面側の少なくとも一部に配設された疎水性絶縁膜と、疎水性絶縁膜と第2の基板との間に疎水性絶縁膜上を移動可能に設けられ、25℃、0.1MPaにおけるn−ヘキサンへの溶解度が1質量%以上であるジピロメテン系色素と、非極性溶媒とを含有するエレクトロウェッティング表示用着色組成物を含む非導電性のオイルと、疎水性絶縁膜と第2の基板との間に、オイルと接して設けられた導電性の親水性液体と、を有する表示部を備え、親水性液体と第1の基板の導電性の表面との間に電圧を印加し、オイルと親水性液体との界面の形状を変化させることで画像を表示するエレクトロウェッティング表示装置である。
【0019】
<9> ジピロメテン系色素は、下記一般式(I)で示されるジピロメテン系化合物が金属又は金属化合物に配位した金属錯体化合物である<8>に記載のエレクトロウェッティング表示装置である。
【0020】
【化4】

【0021】
一般式(I)中、R、R、R、R、R、及びRは、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。
【0022】
<10> ジピロメテン系金属錯体化合物が、下記一般式(I−3)で表される化合物である<9>に記載のエレクトロウェッティング表示装置である。
【0023】
【化5】

【0024】
一般式(I−3)中、R、R、R、及びRは、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表し、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。R及びRは、各々独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、又はヘテロ環アミノ基を表す。Maは、金属原子又は金属化合物を表す。X及びXは、各々独立にNRa(Raは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。)、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子を表す。Y及びYは、各々独立に、NRb(Rbは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。)、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、又は炭素原子を表す。Xは、Maと結合可能な基を表し、aは1、又は2を表す。RとYとは互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成していてもよく、RとYとは互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成していてもよい。
である。
【0025】
<11> 一般式(I−3)に示されるR、R、R、R、R、及びRのうち、少なくとも一つ以上が、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基である<10>に記載のエレクトロウェッティング表示装置である。
【0026】
<12> 一般式(I−3)に示されるXが、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基を有したMaの電荷を中和する基である<10>または<11>に記載のエレクトロウェッティング表示装置である。
【0027】
<13> 一般式(I−3)に示されるXが、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキルエステル基である<10>〜<12>のいずれか1つに記載のエレクトロウェッティング表示装置である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、非極性溶媒、特に炭化水素系溶媒への溶解性に優れた紫色系色素(ジピロメテン系色素)を含有し、発色濃度が大きいエレクトロウェッティング表示用着色組成物を提供することができる。
さらには、発色濃度が大きく、バックフロー現象を起こし難い画像表示構造およびエレクトロウェッティング表示装置を提供することができる。
本発明におけるジピロメテン系色素は、非極性溶媒、特に炭化水素系溶媒への溶解性に優れた特徴を持つため、ディスプレイ等、中でもエレクトロウェッティング法の原理で動作するエレクトロウェッティング表示装置に用いられる色素として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係るエレクトロウェッティング表示装置の電圧オフ時の状態を示す概略断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るエレクトロウェッティング表示装置の電圧オン時の状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<エレクトロウェッティング表示用着色組成物>
本発明のエレクトロウェッティング表示用着色組成物は、25℃、0.1MPaにおけるn−ヘキサンへの溶解度が1質量%以上であるジピロメテン系色素と、非極性溶媒とを含有する。
以下、「25℃、0.1MPaにおけるn−ヘキサンへの溶解度が1質量%以上であるジピロメテン系色素」を、『本発明のジピロメテン系色素』とも称する。また、「エレクトロウェッティング表示用着色組成物」を、単に「着色組成物」とも称する。
本発明の着色組成物は、本発明のジピロメテン系色素の1種のみを含んでいても、2種以上を含んでいてもよく、2種以上のジピロメテン系色素を含む場合の各色素の比率も任意である。
また、本発明の着色組成物は、色素として、本発明のジピロメテン系色素のみからなっていてもよく、所望の色調とするために、他の色素を含んでいてもよい。例えば、本発明のジピロメテン系色素に赤色、青色の色素を混合して黒色とすることもできる。
【0031】
〔ジピロメテン系色素〕
本発明のジピロメテン系色素は、25℃、0.1MPaにおけるn−ヘキサンへの溶解度が1質量%以上である。
色素として、25℃、0.1MPaにおけるn−ヘキサンへの溶解度が1質量%以上であるジピロメテン系色素を用いることで、ディスプレイ等、中でもエレクトロウェッティング法の原理で動作するディスプレイや電気泳動法で動作するディスプレイに用いられる色素として有用である。
以下、一般式(I)で表される化合物を「特定化合物」とも称し、一般式(I)で示されるジピロメテン系化合物が金属又は金属化合物に配位した金属錯体化合物を「特定金属錯体化合物」とも称する。
本発明の着色組成物は、本発明のジピロメテン系色素を含有することにより、発色濃度が高く、エレクトロウェッティング表示装置に適用したときに、バックフロー現象を抑制することができるが、ジピロメテン系色素が、金属を含む特定金属錯体化合物である場合に、特にバックフロー現象の抑制に優れる。
【0032】
【化6】

【0033】
一般式(I)中、R、R、R、R、R、及びRは、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。
【0034】
1価の置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24の、直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基で、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−ノルボルニル基、1−アダマンチル基等、さらに好ましくは、炭素数6〜24の直鎖または分岐鎖のアルキル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜18のアルケニル基で、例えば、ビニル基、アリル基、3−ブテン−1−イル基等)、
【0035】
アリール基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリール基で、例えば、フェニル基、ナフチル基等)、
【0036】
ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環基で、例えば、2−チエニル基、4−ピリジル基、2−フリル基、2−ピリミジニル基、1−ピリジル基、2−ベンゾチアゾリル基、1−イミダゾリル基、1−ピラゾリル基、ベンゾトリアゾール−1−イル基等)、
【0037】
シリル基(好ましくは炭素数3〜38、より好ましくは炭素数3〜18のシリル基で、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリブチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、t−ヘキシルジメチルシリル基等)、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、
【0038】
アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルコキシ基で、例えば、メトキシ基、エトキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、ドデシルオキシ基、また、シクロアルキルオキシ基であれば、例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールオキシ基で、例えば、フェノキシ基、1−ナフトキシ基等)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環オキシ基で、例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基等)、
【0039】
シリルオキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のシリルオキシ基で、例えば、トリメチルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基、ジフェニルメチルシリルオキシ基等)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアシルオキシ基で、例えば、アセトキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、ドデカノイルオキシ基等)、
【0040】
アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニルオキシ基で、例えば、エトキシカルボニルオキシ基、t−ブトキシカルボニルオキシ基、また、シクロアルキルオキシカルボニルオキシ基であれば、例えば、シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ基等)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニルオキシ基で、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基等)、
【0041】
カルバモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜48、よりこの好ましくは炭素数1〜24のカルバモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N−ブチルカルバモイルオキシ基、N−フェニルカルバモイルオキシ基、N−エチル−N−フェニルカルバモイルオキシ基等)、スルファモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のスルファモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジエチルスルファモイルオキシ基、N−プロピルスルファモイルオキシ基等)、アルキルスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数1〜38、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルホニルオキシ基で、例えば、メチルスルホニルオキシ基、ヘキサデシルスルホニルオキシ基、シクロヘキシルスルホニルオキシ基等)、アリールスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルホニルオキシ基で、例えば、フェニルスルホニルオキシ基等)、アシル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアシル基で、例えば、ホルミル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、テトラデカノイル基、シクロヘキサノイル基等)、
【0042】
アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニル基で、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルシクロヘキシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニル基で、例えば、フェノキシカルボニル基等)、
【0043】
カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のカルバモイル基で、例えば、カルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、N−エチル−N−オクチルカルバモイル基、N,N−ジブチルカルバモイル基、N−プロピルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基、N−メチルN−フェニルカルバモイル基、N,N−ジシクロへキシルカルバモイル基等)、
【0044】
アミノ基(好ましくは炭素数32以下、より好ましくは炭素数24以下のアミノ基で、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、N,N−ジブチルアミノ基、テトラデシルアミノ基、2−エチルへキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基等)、アニリノ基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは6〜24のアニリノ基で、例えば、アニリノ基、N−メチルアニリノ基等)、ヘテロ環アミノ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは1〜18のヘテロ環アミノ基で、例えば、4−ピリジルアミノ基等)、カルボンアミド基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは2〜24のカルボンアミド基で、例えば、アセトアミド基、ベンズアミド基、テトラデカンアミド基、ピバロイルアミド基、シクロヘキサンアミド基等)、
【0045】
ウレイド基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のウレイド基で、例えば、ウレイド基、N,N−ジメチルウレイド基、N−フェニルウレイド基等)、イミド基(好ましくは炭素数36以下、より好ましくは炭素数24以下のイミド基で、例えば、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基等)、
【0046】
アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニルアミノ基で、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t−ブトキシカルボニルアミノ基、オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、シクロヘキシルオキシカルボニルアミノ基等)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニルアミノ基で、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基等)、
【0047】
スルホンアミド基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のスルホンアミド基で、例えば、メタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基、ヘキサデカンスルホンアミド基、シクロヘキサンスルホンアミド基等)、スルファモイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のスルファモイルアミノ基で、例えば、N、N−ジプロピルスルファモイルアミノ基、N−エチル−N−ドデシルスルファモイルアミノ基等)、
【0048】
アゾ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のアゾ基で、例えば、フェニルアゾ基、3−ピラゾリルアゾ基等)、
【0049】
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルチオ基で、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、オクチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールチオ基で、例えば、フェニルチオ基等)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環チオ基で、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、2−ピリジルチオ基、1−フェニルテトラゾリルチオ基等)、
【0050】
アルキルスルフィニル基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルフィニル基で、例えば、ドデカンスルフィニル基等)、アリールスルフィニル基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルフィニル基で、例えば、フェニルスルフィニル基等)、
【0051】
アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ヘキサデシルスルホニル基、オクチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルホニル基で、例えば、フェニルスルホニル基、1−ナフチルスルホニル基等)、
【0052】
スルファモイル基(好ましくは炭素数32以下、より好ましくは炭素数24以下のスルファモイル基で、例えば、スルファモイル基、N,N−ジプロピルスルファモイル基、N−エチル−N−ドデシルスルファモイル基、N−エチル−N−フェニルスルファモイル基、N−シクロヘキシルスルファモイル基等)、スルホ基、ホスホニル基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のホスホニル基で、例えば、フェノキシホスホニル基、オクチルオキシホスホニル基、フェニルホスホニル基等)、ホスフィノイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のホスフィノイルアミノ基で、例えば、ジエトキシホスフィノイルアミノ基、ジオクチルオキシホスフィノイルアミノ基等)等を表す。
【0053】
上述した1価の置換基が更に置換可能な基である場合には、上述した各基のいずれかによって更に置換されていてもよい。なお、1価の置換基が2個以上の置換基を有している場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0054】
一般式(I)において、RとR、RとR、RとR、及びRとRは、各々独立に、互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成していてもよい。なお、形成される環としては、飽和環、又は不飽和環がある。この5員、6員、又は7員の飽和環、又は不飽和環としては、例えば、ピロール環、フラン環、チオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピロリジン環、ピペリジン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環が挙げられ、好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環が挙げられる。
なお、形成される5員、6員、及び7員の環が、更に置換可能な基である場合には、前記1価の置換基のいずれかで置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0055】
また、一般式(I)において、Rがハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基である場合、これらの好ましい範囲は、前述のR〜Rとしてのハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基の好ましい範囲と同様である。
【0056】
一般式(I)において、R及びRとしては、上記の中でも、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基が好ましく、カルボンアミド基、ウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基がより好ましく、カルボンアミド基、ウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基が更に好ましく、カルボンアミド基、ウレイド基が特に好ましい。
【0057】
一般式(I)において、R及びRとしては、上記の中でも、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ニトリル基、イミド基、カルバモイルスルホニル基が好ましく、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、ニトリル基、イミド基、カルバモイルスルホニル基がより好ましく、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトリル基、イミド基、カルバモイルスルホニル基が更に好ましく、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基が特に好ましい。
一般式(I)において、R及びRとしては、上記の中でも、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のヘテロ環基が好ましく、更に好ましくは置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基である。
【0058】
一般式(I)において、R及びRがアルキル基を表す場合の、アルキル基としては、好ましくは、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖、又は環状の置換又は無置換のアルキル基であり、より具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及び、ベンジル基が挙げられ、より好ましくは炭素数1〜12の分岐鎖、又は環状の置換又は無置換のアルキル基であり、より具体的には、例えば、イソプロピル基、シクロプロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられ、更に好ましくは、炭素数1〜12の2級又は3級の置換又は無置換のアルキル基であり、より具体的には、例えば、イソプロピル基、シクロプロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
【0059】
一般式(I)において、R及びRがアリール基を表す場合の、アリール基としては、好ましくは、置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のナフチル基が挙げられ、より好ましくは置換又は無置換のフェニル基である。
及びRがヘテロ環基を表す場合の、ヘテロ環基としては、好ましくは、置換又は無置換の2−チエニル基、置換又は無置換の4−ピリジル基、置換又は無置換の3−ピリジル基、置換又は無置換の2−ピリジル基、置換又は無置換の2−フリル基、置換又は無置換の2−ピリミジニル基、置換又は無置換の2−ベンゾチアゾリル基、置換又は無置換の1−イミダゾリル基、置換又は無置換の1−ピラゾリル基、置換又は無置換のベンゾトリアゾール−1−イル基が挙げられ、より好ましくは置換又は無置換の2−チエニル基、置換又は無置換の4−ピリジル基、置換又は無置換の2−フリル基、置換又は無置換の2−ピリミジニル基、置換又は無置換の1−ピリジル基が挙げられる。
【0060】
次に、特定金属錯体化合物を形成する金属原子又は金属化合物について説明する。
特定金属錯体化合物を形成する金属又は金属化合物としては、錯体を形成可能な金属原子又は金属化合物であればいずれであってもよく、2価の金属原子、2価の金属酸化物、2価の金属水酸化物、又は2価の金属塩化物が含まれる。例えば、Zn、Mg、Si、Sn、Rh、Pt、Pd、Mo、Mn、Pb、Cu、Ni、Co、Fe、B等の他に、AlCl、InCl、FeCl、TiCl、SnCl、SiCl、GeClなどの金属塩化物、TiO、VO等の金属酸化物、Si(OH)等の金属水酸化物も含まれる。
これらの中でも、錯体の安定性、分光特性、耐熱、耐光性、及び製造適性等の観点から、Fe、Zn、Mg、Si、Pt、Pd、Mo、Mn、Cu、Ni、Co、TiO、B、又はVOが好ましく、Fe、Zn、Mg、Si、Pt、Pd、Cu、Ni、Co、B、又はVOが更に好ましく、Fe、Zn、Cu、Co、B、又はVO(V=O)が最も好ましい。これらの中でも、特にZnが好ましい。
【0061】
特定金属錯体化合物において、好ましい態様を以下に示す。
すなわち、一般式(I)において、R及びRが、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シリル基、ヒドロキシル基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、アニリノ基、ヘテロ環アミノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はホスフィノイルアミノ基で表され、R及びRが、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はスルファモイル基で表され、R及びRが、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シリル基、ヒドロキシル基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アニリノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、又はホスフィノイルアミノ基で表され、Rが、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基で表され、金属原子又は金属化合物が、Zn、Mg、Si、Pt、Pd、Mo、Mn、Cu、Ni、Co、TiO、B、又はVOで表される態様が挙げられる。
【0062】
特定金属錯体化合物のより好ましい態様を以下に示す。
すなわち、一般式(I)において、R及びRが、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、ヘテロ環アミノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はホスフィノイルアミノ基で表され、R及びRが、各々独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はスルファモイル基で表され、R及びRが、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はスルファモイル基で表され、Rが、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基で表され、金属原子又は金属化合物が、Zn、Mg、Si、Pt、Pd、Cu、Ni、Co、B又はVOで表される態様が挙げられる。
【0063】
特定金属錯体化合物の好ましい態様は、下記一般式(I−1)、(I−2)および(I−3)で表される錯体化合物である。
【0064】
【化7】

【0065】
一般式(I−1)中、R、R、R、R、R、及びRは、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。Maは、金属原子又は金属化合物を表し、Xは、Maに結合可能な基を表し、Xは、Maの電荷を中和するために必要な基を表す。なお、XとXとは、互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成していてもよい。
【0066】
一般式(I−1)中のR〜Rは、一般式(I)中のR〜Rと同義であり、好ましい態様も同様である。
一般式(I−1)中のMaは、金属原子又は金属化合物を表し、「一般式(I)で示されるジピロメテン系化合物が金属又は金属化合物に配位した金属錯体化合物(特定金属錯体)」における金属原子又は金属化合物と同義であり、その好ましい範囲も同様である。
一般式(I−1)中のRは、一般式(I)中のRと同義であり、好ましい態様も同様である。
【0067】
一般式(I−1)におけるXは、Maに結合可能な基であればいずれであってもよい。
Maに結合可能な基としては、例えば、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等)等、更に「金属キレート」[1]坂口武一・上野景平著(1995年 南江堂)、同[2](1996年)、同[3](1997年)等、に記載の化合物に由来する基が挙げられる。中でも、製造の点で、水、カルボン酸化合物、アルコール類、アミン化合物、及びアミド化合物が好ましく、水、カルボン酸化合物、及びアミド化合物がより好ましい。
【0068】
一般式(I−1)に置けるXは、Maの電荷を中和するために必要な基を表す。
Maの電荷を中和するために必要な基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、水酸基、脂肪族イミド(例えば、コハク酸イミド、マレイミド、グルタルイミド、ジアセトアミド等、好ましくはコハク酸イミド、マレイミド)由来の一価の基、芳香族イミド基又は複素環イミド(例えば、フタルイミド、ナフタルイミド、4−ブロモフタルイミド、4−メチルフタルイミド、4−ニトロフタルイミド、ナフタレンカルボキシイミド、テトラブロモフタルイミド等、好ましくはフタルイミド、4−ブロモフタルイミド、4−メチルフタルイミド)由来の一価の基、
【0069】
芳香族カルボン酸(例えば、安息香酸、2−メトキシ安息香酸、3−メトキシ安息香酸、4−メトキシ安息香酸、4−クロロ安息香酸、2−ナフトエ酸、サリチル酸、3,4,5−トリメトキシ安息香酸、4−ヘプチルオキシ安息香酸、4−t−ブチル安息香酸等、好ましくは安息香酸、4−メトキシ安息香酸、サリチル酸)由来の一価の基、脂肪族カルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸、アクリル酸、メタクリル酸、エタン酸、プロパン酸、乳酸、ピバリン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、2−ヘキサデシルオクタデカン酸、2−ヘキシルデカン酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、5−ノルボルネン−2−カルボン酸、1−アダマンタンカルボン酸等、好ましくは酢酸、メタクリル酸、乳酸、ピバリン酸、2−エチルヘキサン酸、ステアリル酸)由来の一価の基、
【0070】
ジチオカルバミン酸(例えば、ジメチルジチオカルバミン酸、ジエチルジチオカルバミン酸、ジベンジルジチオカルバミン酸等)由来の一価の基、スルホンアミド(例えば、ベンゼンスルホンアミド、4−クロロベンゼンスルホンアミド、4−メトキシベンゼンスルホンアミド、4−メチルベンゼンスルホンアミド、2−メチルベンゼンスルホンアミド、メタンスルホンアミド等、好ましくはベンゼンスルホンアミド、メタンスルホンアミド)由来の一価の基、ヒドロキサム酸(例えば、アセトヒドロキサム酸、オクタノヒドロキサム酸、ベンゾヒドロキサム酸等)由来の一価の基、
【0071】
含窒素環化合物(ヒダントイン、1−ベンジル−5−エトキシヒダントイン、1−アリルヒダントイン、5,5−ジフェニルヒダントイン、5,5−ジメチル−2,4−オキサゾリジンジオン、バルビツール酸、イミダゾール、ピラゾール、4,5−ジシアノイミダゾール、4,5−ジメチルイミダゾール、ベンズイミダゾール、1H−イミダゾール−4,5−ジカルボン酸ジエチル等、好ましくは1−ベンジル−5−エトキシヒダントイン、5,5−ジメチル−2,4−オキサゾリジンジオン、4,5−ジシアノイミダゾール、1H−イミダゾール−4,5−ジカルボン酸ジエチルが挙げられる)由来の一価の基等を表す。
【0072】
Maの電荷を中和するために必要な基としては、上記の中でも、製造の点で、ハロゲン原子、脂肪族カルボン酸基、芳香族カルボン酸基、脂肪族イミド基、芳香族イミド基、スルホン酸基、含窒素環化合物が好ましく、水酸基、脂肪族カルボン酸基、芳香族イミド基、含窒素環化合物がより好ましい。
【0073】
一般式(I−1)におけるXとXとは、互いに結合してMaと共に5員、6員、又は7員の環を形成してもよい。形成される5員、6員、及び7員の環は、飽和環であっても不飽和環であってもよい。また、5員、6員、及び7員の環は、炭素原子及び水素原子のみで構成されていてもよい、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子から選ばれる原子を少なくとも1個有するヘテロ環であってもよい。
【0074】
【化8】

【0075】
一般式(I−2)において、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、及びR13は、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。R及びR14は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。Maは、金属原子又は金属化合物を表す。
【0076】
一般式(I−2)中のR〜Rは、一般式(I)中のR〜Rと同義であり、好ましい態様も同様である。
一般式(I−2)中のR〜R13で表される1価の置換基は、一般式(I)で表される化合物のR〜Rで表される1価の置換基と同義であり、その好ましい態様も同様である。一般式(I−2)で表される化合物のR〜R13で表される1価の置換基が更に置換可能な基である場合には、前述した1価の置換基のいずれかで置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0077】
一般式(I−2)中のRは、一般式(I)中のRと同義であり、好ましい態様も同様である。
一般式(I−2)中のR14は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、R14の好ましい範囲は、Rの好ましい範囲と同様である。R14が更に置換可能な基である場合には、前述した1価の置換基のいずれかで置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0078】
一般式(I−2)中のMaは、金属又は金属化合物を表し、「一般式(I)で示されるジピロメテン系化合物が金属又は金属化合物に配位した金属錯体化合物(特定金属錯体)」における金属原子又は金属化合物と同義であり、その好ましい範囲も同様である。
【0079】
一般式(I−2)中のRとR、RとR10、R11とR12、R12とR13は、各々独立に、互いに結合して5員、6員、又は7員の飽和環、或いは不飽和環を形成していてもよい。形成される飽和環、又は不飽和環としては、RとR、RとR、RとR、及びRとRで形成される飽和環、又は不飽和環と同義であり、好ましい例も同様である。
【0080】
【化9】

【0081】
一般式(I−3)中、R、R、R、及びRは、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表し、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。R及びRは、各々独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、又はヘテロ環アミノ基を表す。Maは、金属原子又は金属化合物を表す。X及びXは、各々独立にNRa(Raは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。)、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子を表す。Y及びYは、各々独立に、NRb(Rbは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。)、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、又は炭素原子を表す。Xは、Maと結合可能な基を表し、aは1、又は2を表す。RとYとは互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成していてもよく、RとYとは互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成していてもよい。
【0082】
一般式(I−3)中のR〜R、及びRは、一般式(I)中のR〜R、及びRと同義であり、好ましい態様も同様である。
一般式(I−3)中のMaは、金属又は金属化合物を表し、「一般式(I)で示されるジピロメテン系化合物が金属又は金属化合物に配位した金属錯体化合物(特定金属錯体)」における金属原子又は金属化合物と同義であり、その好ましい範囲も同様である。
【0083】
一般式(I−3)中、R及びRは、各々独立に、アルキル基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12の、直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基で、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基等、さらに好ましくは、炭素数6〜24の直鎖または分岐鎖のアルキル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜24、より好ましくは2〜12のアルケニル基で、例えば、ビニル基、アリル基、3−ブテン−1−イル基等)、アリール基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは6〜18のアリール基で、例えば、フェニル基、ナフチル基等)、
【0084】
ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは1〜12のヘテロ環基で、例えば、2−チエニル基、4−ピリジル基、2−フリル基、2−ピリミジニル基、1−ピリジル基、2−ベンゾチアゾリル基、1−イミダゾリル基、1−ピラゾリル基、ベンゾトリアゾール−1−イル基等)、
【0085】
アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは1〜18のアルコキシ基で、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜24、より好ましくは1〜18のアリールオキシ基で、例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、
【0086】
アルキルアミノ基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは1〜18のアルキルアミノ基で、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、イソプロピルアミノ基、t−ブチルアミノ基、t−オクチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジプロピルアミノ基、N,N−ジブチルアミノ基、N−メチル−N−エチルアミノ基等)、アリールアミノ基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは6〜18のアリールアミノ基で、例えば、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N−エチル−N−フェニルアミノ基等)、又はヘテロ環アミノ基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは1〜12のヘテロ環アミノ基で、例えば、2−アミノピロール基、3−アミノピラゾール基、2−アミノピリジン基、3−アミノピリジン基等)等を表す。
【0087】
一般式(I−3)中、R及びR表されるアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、又はヘテロ環アミノ基が、更に置換可能な基である場合には、前記1価の置換基のいずれかで置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0088】
一般式(I−3)中、X及びXは、各々独立に、NRa、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子を表す。NRaにおいて、Raは、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは1〜12の直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基で、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基等)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜24、より好ましくは2〜12のアルケニル基で、例えば、ビニル基、アリル基、3−ブテン−1−イル基等)、アリール基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは6〜18のアリール基で、例えば、フェニル基、ナフチル基等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは1〜12のヘテロ環基で、例えば、2−チエニル基、4−ピリジル基、2−フリル基、2−ピリミジニル基、1−ピリジル基、2−ベンゾチアゾリル基、1−イミダゾリル基、1−ピラゾリル基、ベンゾトリアゾール−1−イル基等)、アシル基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは2〜18のアシル基で、例えば、アセチル基、ピバロイル基、2−エチルヘキシル基、ベンゾイル基、シクロヘキサノイル基等)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは1〜18のアルキルスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜24、より好ましくは6〜18のアリールスルホニル基で、例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基等)を表す。
また、Raが置換可能な場合は、さらに1価の置換基で置換されていてもよく、複数の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
及びXとして好ましくは、各々独立に、酸素原子、又は硫黄原子であり、X及びXとして特に好ましくは、ともに酸素原子である。
【0089】
一般式(I−3)中、Y及びYは、各々独立にNRb、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、又は炭素原子を表し、Rbは、XにおけるRaと同義である。
及びYとして、好ましくは、各々独立に、NRb(Rbは水素原子、又は炭素数1〜8のアルキル基)であり、Y及びYとして特に好ましくは、ともにNHである。
【0090】
一般式(I−3)中、RとYとが互いに結合して、R、Y、及び炭素原子と共に5員環(例えば、シクロペンタン、ピロリジン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、テトラヒドロチオフェン、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン)、6員環(例えば、シクロヘキサン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ペンタメチレンスルフィド、ジチアン、ベンゼン、ピペリジン、ピペラジン、ピリダジン、キノリン、キナゾリン)、又は7員環(例えば、シクロヘプタン、ヘキサメチレンイミン)を形成してもよい。
【0091】
一般式(I−3)中、RとYとが互いに結合して、R、Y、及び炭素原子と共に5員、6員、又は7員の環を形成していてもよい。形成される5員、6員、及び7員の環は、のRとY及び炭素原子で形成される環中の1個の結合が二重結合に変化した環が挙げられる。
【0092】
一般式(I−3)中、RとY、及びRとYが結合して形成される5員、6員、及び7員の環が、更に置換可能な環である場合には、前記1価の置換基のいずれかで説明した基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0093】
一般式(I−3)中、XはMaと結合可能な基を表し、一般式(I−1)におけるXと同様な基が挙げられる。
は、酸素原子、又は窒素原子を介して結合する基であることが好ましく、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基を有したMaの電荷を中和する基であることがより好ましい。Xは、特に、アルキルエステル基〔−OCORc(Rcは、炭素数1〜20の直鎖又は分岐のアルキル基);例えば、メチルエステル、分岐のペンタデシルエステル、直鎖のヘプタデシルエステル等〕であることが好ましい。
【0094】
一般式(I−3)中、aは1、又は2を表す。aは1がより好ましい。
【0095】
一般式(I−3)で表される化合物の好ましい態様を以下に示す。
すなわち、R〜R、R、及びMaは、それぞれ、特定金属錯体化合物の好ましい態様であり、X及びXは、各々独立にNRa(Raは水素原子、アルキル基、若しくはヘテロ環基)、又は酸素原子であり、Y及びYは、各々独立にNRb(Rbは水素原子、若しくはアルキル基)、窒素原子、又は炭素原子であり、Xは酸素原子、又は窒素原子を介して結合する基であり、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、又はアルキルアミノ基を表すか、RとYとが互いに結合して5員又は6員環を形成し、RとYとが互いに結合して5員、6員環を形成する、aは1で表される態様である。
【0096】
一般式(I−3)で表される化合物のより好ましい態様を以下に示す。
すなわち、R〜R、R、Maは、それぞれ、特定金属錯体化合物の好ましい態様であり、X及びXは、酸素原子であり、YはNHであり、Yは窒素原子であり、Xは酸素原子、又は窒素原子を介して結合する基であり、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、又はアルキルアミノ基を表すか、RとYとが互いに結合して5員又は6員環を形成し、RとYとが互いに結合して5員、6員環を形成する、aは1で表される態様である。
【0097】
特定金属錯体化合物の好ましい態様である、一般式(I−1)、(I−2)および(I−3)で表される錯体化合物のうち、一般式(I−3)で表される金属錯体化合物が、特に好ましい様態である。
【0098】
〔一般式(I)で表される色素化合物の具体例〕
以下、本発明に用いる一般式(I)で表される化合物が金属原子又は金属化合物に配位したジピロメテン系金属錯体化合物の具体例を示す。但し、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0099】
まず、例示化合物(1)〜(30)を示す。例示化合物(1)〜(30)は、下記一般式(I−4)で示される化合物のうち、一般式(I−4)中のR101、R102、R103、X101、及びMが、下記表1〜表3に示されるR101、R102、R103、X101、及びMを有する化合物である。
【0100】
【化10】

【0101】
【表1】

【0102】
【表2】

【0103】
【表3】

【0104】
一般式(I−4)で表される化合物としては、次の例示化合物(31)〜(45)等も挙げられる。
【0105】
【表4】

【0106】
【表5】

【0107】
【表6】

【0108】
これら一般式(I)で示されるジピロメテン系化合物が金属又は金属化合物に配位した金属錯体化合物(特定金属錯体化合物)の例示化合物のうち、例示化合物(40)〜(44)は一般式(I−1)の例示化合物でもあり、例示化合物(45)は一般式(I−2)の例示化合物でもあり、例示化合物(1)〜(39)は一般式(I−3)の例示化合物でもある。
特定金属錯体化合物は、更に、以下の例示化合物(a−1)〜(a−7)が好ましい。
【0109】
【化11】

【0110】
【化12】

【0111】
本発明の色素は既知の方法、例えば前述の特許文献1(特開2008−292970号公報)に記載の方法に準じて合成することができる。
【0112】
〔本発明のジピロメテン系色素の溶解度〕
本発明のジピロメテン系色素は、非極性溶媒への溶解性、特に炭化水素系溶媒への溶解性に優れ、25℃、0.1MPaにおけるn−ヘキサンに対する溶解度が、1質量%以上である。以下、「色素の25℃、0.1MPaにおけるn−ヘキサンに対する溶解度」を、単に『溶解度』とも称する。
本発明のジピロメテン系色素を、エレクトロウェッティング法の原理で動作するディスプレイや電気泳動法で動作するディスプレイを製造するための画像表示材料〔例えば、画像表示構造(例:ピクセルのオン/オフ状態(画像表示/非表示の状態)を切替える光シャッターや、電気泳動法で動作する表示装置のカラー表示層(カラーフィルタ))等の表示用部材〕に適用する場合には、溶解度は、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることが更に好ましい。溶解度は高ければ高いほど好ましいが、通常は80質量%以下程度である。
【0113】
なお、本発明のジピロメテン系色素を、エレクトロウェッティングディスプレイに用いる場合、その原理から、水不溶性であることが望ましい。ここで「水不溶性」とは、25℃、1気圧(0.1MPa)の条件下における水に対する溶解度が、0.1質量%以下、好ましくは0.01質量%以下であることをいう。
【0114】
既述のように、本発明の着色組成物は、本発明のジピロメテン系色素のみからなっていてもよいが、所望の色調とするために、他の色素を含んでいてもよい。
次に、本発明の着色組成物が含み得る本発明のジピロメテン系色素以外の色素(他の色素)について説明する。
【0115】
−他の色素−
本発明の着色組成物が含んでいてもよい他の色素としては、使用する媒体に対して溶解性・分散性を有する色素の中から、本発明の色素の効果を損なわない範囲で、任意に選択する
ことが可能である。
例えば、本発明の着色組成物をエレクトロウェッティングディスプレイ用に用いる場合、本発明の着色組成物が含んでいてもよい他の色素としては、脂肪族炭化水素系溶媒などの非極性溶媒に溶解するものの中から任意の色素を用いることが出来る。具体例としては、Oil Blue N(アルキルアミン置換アントラキノン)、Solvent Green、Sudan Red、Sudan Blackなどが挙げられる。
【0116】
〔非極性溶媒〕
本発明の着色組成物は、本発明のジピロメテン系色素の他に、非極性溶媒を含有する。
非極性溶媒とは、比誘電率の値が小さい溶媒(いわゆる無極性溶媒)をいう。非極性溶媒は、本発明の着色組成物がエレクトロウェッティング表示装置に適用されるとき、オイルとして機能する。
本発明の着色組成物が含有する非極性溶媒は、上記色素を溶解させる溶媒であれば特に制限されず、例えば、n−ヘキサン、n−デカン、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒(好ましくは、炭素数6〜30の脂肪族炭化水素系溶媒)、脂肪族炭化水素系溶媒がフッ素で置換された溶媒(例えばフルオロカーボンオイル等)、シリコーン系溶媒(例えばシリコーンオイル等)などが挙げられる。中でも、脂肪族炭化水素系溶媒が好ましい。
【0117】
〔その他の成分〕
その他、本発明の着色組成物は、必要に応じて任意の紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
添加剤の含有量に特に制限はないが、通常、着色組成物の総量に対して20質量%以下程度で用いられる。
【0118】
本発明のジピロメテン系色素、および、必要に応じて用いる他の色素は、既述の脂肪族炭化水素系溶媒などの非極性溶媒に溶解することにより、エレクトロウェッティングディスプレイ用のインクとすることができる。
【0119】
本発明の着色組成物中の本発明のジピロメテン系色素の含有量は、特に制限されないが、発色濃度を向上する観点から、5質量%〜50質量%であることが好ましく、10質量%〜40質量%であることがより好ましい。
【0120】
本発明の着色組成物中における本発明の色素の濃度(C)については、その目的に応じて任意の濃度で調製される。エレクトロウェッティングディスプレイ用の紫色色素として用いる場合、通常0.2質量%以上の濃度で、必要とされるεC値(εは着色組成物の吸光係数)に応じて非極性溶媒に希釈して用いられる。
【0121】
本発明の色素について、モル吸光係数について、特に制限はないが、50,000以上である場合が好ましく、特に好ましくは80,000以上である。モル吸光係数が50,000以上であると、高い表示性能と応答性を両立することが容易となる点で好ましい。 本発明のエレクトロウェッティング表示装置等の画像表示装置のOD(画像発色濃度)値は、高いほど画像の識別性や鮮明さがより向上する。その為、本発明の色素の極大吸収波長におけるOD値は、オイル層の厚み1μmあたり0.5以上(つまり、0.5/μm以上)が好ましく、より好ましくは1.6/μm以上、更に好ましくは2.0/μm以上である。
【0122】
<画像表示構造及び表示装置>
本発明の画像表示構造は、表面が疎水性である疎水性絶縁膜層と、表面に接触させて配置され、既述の本発明のエレクトロウェッティング表示用着色組成物を含む非導電性のオイルを用いて形成されたオイル層と、前記オイル層に接触させて配置された親水性液体層と、を有する。
また、本発明の画像表示構造は、エレクトロウェッティング法の原理または電気泳動法で動作する表示装置に好適に用いることができる。
【0123】
表示装置は、特に、エレクトロウェッティング表示装置であることが好ましい。
具体的には、本発明のエレクトロウェッティング表示装置は、少なくとも一方の表面の少なくとも一部が導電性である第1の基板と、第1の基板の導電性の表面に対向させて配置された第2の基板と、第1の基板の導電性の表面を有する面側の少なくとも一部に配設された疎水性絶縁膜と、疎水性絶縁膜と第2の基板との間に疎水性絶縁膜上を移動可能に設けられ、25℃、0.1MPaにおけるn−ヘキサンへの溶解度が1質量%以上であるジピロメテン系色素と、非極性溶媒とを含有するエレクトロウェッティング表示用着色組成物を含む非導電性のオイルと、疎水性絶縁膜と第2の基板との間に、オイルと接して設けられた導電性の親水性液体と、を有する表示部を備え、親水性液体と第1の基板の導電性の表面との間に電圧を印加し、オイルと親水性液体との界面の形状を変化させることで画像を表示する表示装置である。
【0124】
金属錯体色素である本発明のジピロメテン系色素は、非極性溶媒、特に炭化水素系溶媒への溶解性に優れた特徴を持つため、非極性溶媒と本発明のジピロメテン系色素とを含有する本発明の着色組成物は、高い発色濃度を有する。従って、本発明の着色組成物は、ディスプレイ等の表示装置、中でもエレクトロウェッティング法の原理で動作するディスプレイや電気泳動法で動作するディスプレイに有用であり、特に、エレクトロウェッティング表示装置(ディスプレイ)を製造するための画像表示材料である画像表示構造や表示装置に有用である。
【0125】
さらに、画像表示構造および表示装置は、エレクトロウェッティング表示用に用いたとき、本発明の着色組成物を用いて構成することで、バックフロー現象を起こし難くすることができる。ここで、バックフロー現象は、電圧印加した状態で保持されたときに収縮して減少したオイルの面積が経時で広がる現象である。
バックフロー現象は、一般に、画像の発色濃度を高くするために非極性溶媒に多くの色素を溶解した場合に起こり易い。これは、色素量が多くなると、電圧印加したときのオイルの動作感度(応答性)が低下するためと考えられる。
しかしながら、本発明のエレクトロウェッティング表示装置においては、理由は定かではないが、本発明のジピロメテン系色素が、非極性溶媒に溶解し易く、画像の発色濃度を高めながら、バックフロー現象を抑制することができる。特に、本発明のジピロメテン系色素として、金属を含む特定金属錯体化合物を用いた場合には、バックフロー現象の抑制が更に向上する。
【0126】
エレクトロウェッティング法の原理は、国際公開第2005−098524号に記載されている。この原理は、疎水液に対する疎水性表面をもつポリマー固体の濡れ性に依存する2つの切り替え可能な状態に関連する。
疎水性ポリマー固体は、好ましくは白色を呈している。疎水液および固体は、さらに親水液(例えば水)によって取り囲まれている。親水液と疎水性固体との間に印加される電圧により電圧差が発生し、それに起因して疎水液の表面張力に変化が現われ、印加された電位を退ける。それにより、疎水液は、好ましくは白色であるピクセル底部をもしくは完全には覆わずに、その一部分だけを覆うようになる。最大電圧が印加された場合および電圧が印加されない場合の表面張力のこの変化が、観察者にはピクセルの「オン」または「オフ」の状態として認識され得る。「オン」状態ではピクセルは白、「オフ」状態ではカラーの光学的印象が生じる。
【0127】
ディスプレイにおけるエレクトロウェッティング技術は、他のディスプレイ技術に比べて少ないエネルギー消費や、ビデオの使用にとって必須である、ピクセル状態の迅速な切り替え時間など、多くの利点を有している。さらに、疎水液中に溶解された着色材(本発明においては着色組成物)によってピクセルの彩色性が保証されるので、ディスプレイのピクセルは様々な色を呈することが可能である。着色材は親水液に不溶でなければならない。それによって、赤、緑、青(“RGB”)および黒を基調にした透過型ディスプレイ、またはシアン、マゼンタ、イエロー(“CMY”)および黒を基調にした反射型ディスプレイを実現することができる。
【0128】
疎水液の表面張力の変化は印加電圧に比例する。したがって、電圧に応じてピクセル中に様々なグレースケールを表現することができ、ディスプレイにおいて高品質の画像を生成することができる。
【0129】
エレクトロウェッティングは、ディスプレイの他、光学フィルター、適応レンズ、およびラボオンチップ技術にも利用できる。
【0130】
また、電気泳動法は、溶媒中に分散された電荷を帯びた粒子が、電界によって移動する現象を利用した原理であり、省消費電力で、視野角依存性がないという利点を有している。
電気泳動法の原理で動作するディスプレイは、着色溶液中に分散粒子を添加してなる分散液を対向する基板間に配置させ、基板間に数ボルト程度の電圧を印加することにより、液相中を粒子が移動して画像表示を行うものである。例えば、着色溶液として、本発明の着色組成物を用い、分散液をマイクロカプセル化して、これを対向する基板間に配置して、ディスプレイを構成することが考えられる。
【0131】
以下、本発明のエレクトロウェッティング表示装置の実施形態を代表に、画像表示構造および表示装置の具体的態様を、図面を用いて説明する。
なお、本発明の画像表示構造における疎水性絶縁膜層は、本発明のエレクトロウェッティング表示装置における疎水性絶縁膜として機能し、本発明の画像表示構造におけるオイル層は、本発明のエレクトロウェッティング表示装置におけるオイルとして機能し、本発明の画像表示構造における親水性液体層は、本発明のエレクトロウェッティング表示装置における親水性液体として機能する。
図1および図2には、本発明のエレクトロウェッティング表示装置の一例である実施形態が示されている。本実施形態は、導電性を有する第1の基板としてITO付ガラス基板を用い、オイルを構成する非極性溶媒としてデカンを、親水性液体として電解質水溶液を用いた構成となっている。
【0132】
図1に示すように、本実施形態のエレクトロウェッティング表示装置100は、導電性を有する基板(第1の基板)11と、基板11に対向させて配置された導電性を有する基板(第2の基板)12と、基板11上に配設された疎水性絶縁膜20と、疎水性絶縁膜20及び基板12間のシリコーンゴム壁22aとシリコーンゴム壁22bとにより区画された領域に充填された親水性液体14及びオイル16とを備えている。疎水性絶縁膜20と基板12との間がシリコーンゴム壁22aとシリコーンゴム壁22bとで区画された領域は、オイル16の移動により画像表示を行なう表示部(表示セル)として構成されている。
【0133】
基板11は、基材11aと、基材11aに設けられ、導電性を有する導電膜11bとを有しており、基板表面の全面が導電性を示すように構成されている。また、基板12は、基板11と対向する位置に配設されている。基板12は、基板11と同様に、基材12aと、基板12aに設けられ、導電性を有する導電膜12bとを有しており、基板表面の全面が導電性を示すように構成されている。本実施形態では、基板11及び基板12は、透明性のガラス基板と、その上に設けられた透明性のITO膜とで構成されている。
【0134】
基材11a及び基材12aは、装置の表示形態に応じて、透明性材料又は不透明材料のいずれを用いて形成されたものでもよい。画像を表示する観点からは、基材11a及び基材12aの少なくとも一方は、光透過性を有していることが好ましい。具体的には、基材11a及び基板12の少なくとも一方が、380nm〜770nmの波長領域全域において80%以上(より好ましくは90%以上)の透過率を有していることが好ましい。
【0135】
基材11a及び基材12aに用いる材料の例としては、ガラス基板(例えば、無アルカリガラス基板、ソーダガラス基板、パイレックス(登録商標)ガラス基板、石英ガラス基板等)、プラスチック基板(例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板、ポリカーボネート(PC)基板、ポリイミド(PI)基板等)、アルミ基板やステンレス基板等の金属基板、シリコン基板等の半導体基板等を用いることができる。中でも、光透過性の観点から、ガラス基板又はプラスチック基板が好ましい。
また、基材として、薄膜トランジスタ(TFT)が設けられたTFT基板を用いることもできる。この場合、導電膜がTFTに接続された形態(すなわち、導電膜がTFTに接続された画素電極である形態)が好適である。これにより、画素ごとに独立して電圧を印加できるようになり、TFTを備えた公知の液晶表示装置と同様に、画像表示装置全体のアクティブ駆動が可能となる。
TFT基板における、TFT、各種配線、積蓄容量等の配置については、公知の配置とすることができ、例えば、特開2009−86668号公報に記載された配置を参照することができる。
【0136】
導電膜11b及び導電膜12bは、装置の表示形態に応じて、透明性の膜又は不透明膜のいずれであってもよい。導電膜は、導電性を有する膜のことであり、導電性とは、電圧を印加できる程度の電気伝導性を有していればよく、表面抵抗が500Ω/□以下(好ましくは70Ω/□以下、より好ましくは60Ω/以下、更に好ましくは50Ω/□以下)の性質を有していることをいう。
【0137】
導電膜は、銅膜などの不透明な金属膜、又は透明膜のいずれでもよいが、光透過性を与えて画像表示を行なう観点からは、透明導電膜が好ましい。透明導電膜は、380nm〜770nmの波長領域全域において80%以上(より好ましくは90%以上)の透過率を有していることが好ましい。透明導電膜の例としては、酸化インジウムスズ(ITO:Indium Tin Oxide)、酸化インジウム亜鉛(IZO:Indium Zinc Oxide)、酸化スズ、酸化インジウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化カドミウム、及び酸化マグネシウムの少なくとも1種を含む膜が挙げられる。中でも、透明導電膜としては、光透過性及び導電性の点で、酸化インジウムスズ(ITO)を含む膜が好ましい。
ITOを含む膜における酸化スズの量は、抵抗値を小さくする点で、5〜15質量%の範囲が好ましく、8〜12質量%の範囲がより好ましい。
【0138】
導電膜の比抵抗としては、特に制限はなく、例えば、1.0×10−3Ω・cm以下とすることができる。
【0139】
好ましい形態として、基板12の導電膜12bに表示画素をなす複数の表示セルに対して共通の電位を付与する一方、基板11の導電膜11bには表示画素(表示セル)毎に独立した電位を付与することで、各表示セル(画素)に独立した電圧を印加する形態が挙げられる。この形態については、公知の液晶表示装置の形態を参照することができる。
【0140】
本実施形態では、基板12は、基板11と同様に導電性を有する基板として配設されているが、基板12は導電膜を設けずに導電性を有しない態様でもよく、導電膜11bと親水性液体14との間で電圧印加するようにしてもよい。この場合、基板12の構成に特に制限はなく、例えば上記の基材12aに用いられる例として挙げた材料を用いることができる。
【0141】
疎水性絶縁膜20は、基板11の導電膜11bの全面に亘って設けられており、少なくともオイル16と接している。この疎水性絶縁膜は、電圧が印加されていないときは(画像非表示時)、主としてオイルと接触した状態にあり、電圧が印加されたときは(画像表示時)、オイルがその表面を移動し、オイルが存在しなくなった領域は親水性液体と接触している状態となる。画像表示構造においては、疎水性絶縁膜層が、疎水性絶縁膜20に相当する。
【0142】
疎水性とは、水を接触させたときの接触角が60°以上である性質をいい、好ましくは接触角が70°以上(より好ましくは80°以上)である性質をいう。
接触角は、JIS R3257「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」内の「6.静滴法」に記載された方法が適用される。具体的には、接触角測定器(協和界面科学(株)製の接触角計CA−A)を用い、20メモリの大きさの水滴をつくり、針先から水滴を出して、疎水性絶縁膜に接触させて水滴を形成し、10秒静置後、接触角計の覗き穴から水滴の形状を観察したときの接触角θ(25℃)から求められる。
【0143】
絶縁膜の「絶縁」とは、比抵抗が10Ω・cm以上である性質をいい、好ましくは比抵抗が10Ω・cm以上(より好ましくは10Ω・cm以上)である性質をいう。
【0144】
疎水性絶縁膜は、オイル16との間で親和性を示し、親水性液体14との親和性が低い絶縁膜を用いることができるが、電圧印加を繰り返すことでオイルを移動させることにより生じる膜劣化を抑制する観点から、多官能性化合物に由来する架橋構造を有する膜が好ましい。中でも、疎水性絶縁膜は、重合性基を2つ以上有する多官能性化合物に由来する架橋構造を有する膜がより好ましい。架橋構造は、多官能性化合物の少なくとも1種を(必要に応じ他のモノマーとともに)重合させることにより好適に形成される。
本実施形態では、5員環状パーフルオロジエンを共重合した共重合体で構成されている。
【0145】
多官能性化合物は、分子中に重合性基を2つ以上有する化合物が好ましい。重合性基としては、ラジカル重合性基、カチオン重合性基、縮合重合性基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基、アリル基、アルコキシシリル基、α−フルオロアクリロイル基、エポキシ基、−C(O)OCH=CH等が好ましい。また、多官能性化合物に含まれる2つ以上の重合性基は、同一であっても互いに異なっていてもよい。
架橋構造の形成において、多官能性化合物は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0146】
多官能性化合物は、分子中に重合性基を3つ以上(好ましくは4つ以上、より好ましくは5つ以上)有することが好ましい。これにより、膜中における架橋構造の密度を更に増加させることができるので、電圧印加を繰り返したときの疎水性絶縁膜の劣化がさらに抑制される。
【0147】
多官能性化合物としては、含フッ素化合物が好ましく、フッ素含有率が分子量の35質量%以上(好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上)である多官能性化合物がより好ましい。多官能性化合物がフッ素原子を(特にフッ素含有率が分子量の35質量%以上)含むことにより、疎水性絶縁膜の疎水性がより向上する。多官能性化合物におけるフッ素含有率の上限には特に制限はないが、上限は、例えば分子量の60質量%(好ましくは55質量%、より好ましくは50質量%)とすることができる。
多官能性化合物である含フッ素化合物としては、例えば、特開2006−28280号公報の段落0007〜0032に記載された含フッ素化合物を用いることができる。
【0148】
疎水性絶縁膜は、多官能性化合物を含有する硬化性組成物を用いて好適に作製される。硬化性組成物に含まれる多官能性化合物は、1種又は2種以上のいずれでもよく、硬化性組成物は、さらに単官能性化合物を含んでもよい。単官能性化合物としては、公知の単官能モノマーを用いることができる。
【0149】
硬化性組成物中における多官能性化合物の含有量(2種以上である場合には総含有量;以下同じ)は特に制限はないが、硬化性の観点からは、硬化性組成物の全固形分に対し、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上が特に好ましい。全固形分とは、溶剤を除いた全成分をいう。
【0150】
疎水性絶縁膜の膜厚は、特に制限されるものではないが、50nm〜10μmが好ましく、より好ましくは100nm〜1μmである。疎水性絶縁膜の膜厚が上記範囲であると、絶縁性と駆動電圧とのバランスの点で好ましい。
【0151】
〜疎水性絶縁膜の形成方法〜
疎水性絶縁膜は、下記の方法により好適に作製できる。すなわち、
基板11の導電性が付与されている面(本実施形態では基板11の導電膜11aの表面)に、多官能性化合物を含有する硬化性組成物を付与して硬化性層を形成する硬化性層形成工程と、形成された硬化性層中の多官能性化合物を重合させて硬化性層を硬化させる硬化工程とを有する方法である。このような方法により、架橋構造を有する疎水性絶縁膜が形成される。
【0152】
基板11上に硬化性層である疎水性絶縁膜20を形成する場合、公知の塗布法又は転写法により行なうことができる。
【0153】
本実施形態において、疎水性絶縁膜20と基板12との間には、親水性液体14とオイル16とが注入されている。
【0154】
親水性液体14とオイル16とは、互いに混じり合わない液体であり、図1〜図2に示すように、界面17A又は界面17Bを境に互いに分離して存在している。なお、図1〜図2において、界面17Aは、電圧オフ状態での親水性液体14とオイル16との界面を表し、界面17Bは、電圧オン状態における親水性液体14とオイル16との界面を表す。
【0155】
オイル16は、既述の本発明のエレクトロウェッティング表示用着色組成物であり、25℃、0.1MPaにおけるn−ヘキサンへの溶解度が1質量%以上であるジピロメテン系色素と、非極性溶媒とを少なくとも含有する非導電性の液体である。本発明のジピロメテン系色素は、オイル組成全体に対して10質量%以上の比率で含有することが好ましい。また、画像表示構造においては、オイル層を構成する。
オイル16は、本発明のジピロメテン系色素を含むことで着色されており、本発明のジピロメテン系色素の含有比率が10質量%以上である(好ましくは20質量%を超える)と、コントラスト比が高く識別性や鮮明さを有する画像が得易くなる。このような濃度で色素を含む組成では、電圧印加したときのオイル16の応答性が低下し易く、画像表示性が損なわれ易いが、本発明では、本発明のエレクトロウェッティング表示用着色組成物を用いることで、オイル16の応答性を向上し、電圧印加時のバックフロー現象を抑制して、画像表示性に優れたエレクトロウェッティング表示装置が得られる。
【0156】
なお、非導電性とは、比抵抗が10Ω・cm以上(好ましくは10Ω・cm以上)である性質をいう。
【0157】
オイル16は、比誘電率が小さいことが好ましい。オイルの比誘電率は、10.0以下の範囲が好ましく、2.0〜10.0の範囲がより好ましい。比誘電率がこの範囲内であると、比誘電率が10.0を超える場合と比較して、応答速度が速く、より低い電圧で駆動(動作)させ得る点で好ましい。
比誘電率は、オイル16をセルギャップ10μmのITO透明電極付きガラスセルに注入し、得られたセルの電気容量を、エヌエフ株式会社製の型式2353LCRメーター(測定周波数:1kHz)を用いて20℃、40%RHにて測定される値である。
【0158】
オイル16の粘度としては、20℃での動的粘度で10mPa・s以下であることが好ましい。中でも、粘度は、0.01mPa・s以上が好ましく、更には0.01mPa・s以上8mPa・s以下がより好ましい。オイル16の粘度が10mPa・s以下であることで、粘度が10mPa・sを超える場合と比較して、応答速度が速くより低い電圧で駆動させ得る点で好ましい。なお、動的粘度は、粘度計(500型、東機産業(株)製)を用いて20℃に調整して測定される値である。
【0159】
オイル16は、実質的に後述する親水性液体と混ざり合わないことが好ましい。具体的には、オイル16の親水性液体に対する溶解度(25℃)が、0.1質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下がより好ましく、0.001質量%以下が特に好ましい。
【0160】
〜非極性溶媒〜
オイル16は、非極性溶媒の少なくとも一種を用いて構成されている。オイル16が含有する非極性溶媒は、既述の本発明のエレクトロウェッティング表示用着色組成物が含有する非極性溶媒と同義である。
【0161】
非極性溶媒の溶存酸素は、10ppm以下の範囲であることが好ましい。溶存酸素量が10ppm以下であることで、オイル16が、劣化し難く、応答性が低下し難い。溶存酸素量は、少ないほど好ましく、8ppm以下であることがより好ましい。
【0162】
非極性溶媒のオイル16中に占める含有量は、オイル全量に対して、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましい。非極性溶媒の含有量が30質量%以上であることで、より優れた光シャッター特性が発現される。また、オイルに含有される色素の溶解性がより良好に保たれる。
また、オイルには、非極性溶媒以外の他の溶媒が含まれてもよい。この場合、非極性溶媒のオイル中に占める比率は、オイル中の溶媒全量に対して70質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上である。
【0163】
〜色素〜
オイル16は、有色画像を表示する観点から、色材として色素の少なくとも1種を含有する。色素としては、非極性溶媒に対して溶解性を有するものが好適に選択され、本発明においては、本発明のジピロメテン系色素が少なくとも用いられる。
本発明のジピロメテン系色素のオイル16中に含有される比率としては、オイル16全量に対して、10質量%以上であることが好ましい。色素のオイル16中の含有量は、表示画像の濃度及び鮮明性等を高める観点から、オイル16全量に対して20質量%を超える範囲であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上である。オイル16中に含有される色素量が多くなると、電圧印加時のオイルの応答性が低下すると共に電圧印加状態でのバックフロー現象も悪化するため、画像表示性が低下する傾向にある。そのため、色素の含有比率が10質量%以上(好ましくは20質量%を超える範囲)であるオイル組成において、特に本発明の効果がより奏される。また、色素のオイル16中の含有量は、表示装置の応答速度を高める観点から、オイル16全量に対して80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは75質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以下である。
【0164】
〜各種添加剤〜
オイル16は、必要に応じて、他の成分として、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。添加剤を含有する場合、その含有量は特に制限されるものではないが、通常はオイル16の全質量に対して20質量%以下程度で用いられる。
【0165】
オイル16は、一種単独の色素を用いて黒色等のインクとして調製されたものでもよく、複数の色素を混合して黒色等のインクとして調製されたものでもよい。
複数の色素を組み合わせて用いる場合、その組み合わせとしては、吸収波長が400〜500nmの範囲のイエロー色素、吸収波長が500〜600nmの範囲のマゼンタ色素、吸収波長が600〜700nmの範囲のシアン色素を混合して用いることが好ましい。
ここで、「黒色」とは、450nm、500nm、550nm、600nmにおける各々の透過率のうち、最大値となる透過率と最小値となる透過率との差が20%以下である性質を示し、前記差は、好ましくは15%以下であり、特に好ましくは10%以下である。
【0166】
親水性液体14は、導電性の親水性液体である。導電性とは、比抵抗10Ω・cm以下(好ましくは10Ω・cm以下)の性質をいう。親水性液体14は、画像表示構造においては、親水性液体層を構成する。
【0167】
親水性液体は、例えば、電解質及び水性溶媒を含んで構成される。
電解質としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、テトラブチルアンモニウムクロリド等の塩が挙げられる。親水性液体中における電解質の濃度は、0.1〜10mol/Lが好ましく、0.1〜5mol/Lがより好ましい。
水性溶媒としては、水及びアルコールが好適であり、さらに水以外の水性溶媒を含んでいてもよい。アルコールとしては、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
【0168】
エレクトロウェッティング表示装置100には、導電膜11bと親水性液体14を介して導電膜12bとの間に電圧を印加するための電源25(電圧印加手段)及びこの電圧をオン/オフするためのスイッチ26が電気的に接続されている。
【0169】
本実施形態では、基板12に設けられている導電膜12bに電圧印加することで、親水性液体14への電圧(電位)の印加が行なえるようになっている。このように、本実施形態では、基板12の親水性液体14に接する側の表面が導電性を有する構成(基材12aの親水性液体14に接する側に導電膜としてITO膜が存在する構成)となっているが、この形態に限られるものではない。例えば、基板12に導電膜12bを設けずに親水性液体14中に電極を差し込んで、差し込まれた電極によって親水性液体14に電圧(電位)を印加するようにしてもよい。
【0170】
次に、エレクトロウェッティング表示装置100の動作(電圧オフ状態及び電圧オン状態)について説明する。
【0171】
図1に示すように、電圧オフ状態では、疎水性絶縁膜20とオイル16との親和性が高いことから、疎水性絶縁膜20の全面にオイル16が接した状態となっている。エレクトロウェッティング表示装置100のスイッチ26をオンして電圧が印加されると、親水性液体14とオイル16との界面は、図1の界面17Aから図2に示す界面17Bに変形する。このとき、疎水性絶縁膜20とオイル16との接触面積が減少し、図2に示すようにオイル16がセルの端に移動する。この現象は、電圧印加により疎水性絶縁膜20の表面に電荷が発生し、この電荷によって、親水性液体14が、疎水性絶縁膜20に接していたオイル16を押しのけて疎水性絶縁膜20に接触するために生じる現象である。
エレクトロウェッティング表示装置100のスイッチ26をオフし、電圧の印加をオフ状態とすると、再び図1の状態に戻る。
エレクトロウェッティング表示装置100では、図1及び図2に示す動作が繰り返し行なわれる。
【0172】
上記では、エレクトロウェッティング表示装置の実施形態について、図1及び図2を参照して説明したが、本実施形態に限定されるものではない。
例えば、図1及び図2では、基板11において、導電膜11bが基材11aの表面全体に亘って設けられているが、導電膜11bが基材11aの表面の一部にのみ設けられた形態であってもよい。また、基板12では、導電膜12bが基材12aの表面全体に亘って設けられているが、導電膜12bが基材12aの表面の一部にのみ設けられた形態であってもよい。
【0173】
また、実施形態において、オイル16に色素を含めて所望の色(例えば黒、赤、緑、青、シアン、マゼンタ、イエロー等)に着色することにより、エレクトロウェッティング表示装置の画像表示を担う画素として機能させることができる。この場合、オイル16が、例えば、画素のオン状態及びオフ状態を切り替える光シャッターとして機能する。この場合、エレクトロウェッティング表示装置は、透過型、反射型、半透過型のいずれの方式に構成されてもよい。
【0174】
また、本実施形態におけるエレクトロウェッティング表示装置は、第1の基板及び第2の基板の少なくとも一方の外側(オイルに対向する面の反対側)に、紫外線カット層を有していてもよい。これにより、表示装置の耐光性を更に向上させることができる。
紫外線カット層としては公知のものを用いることができ、例えば、紫外線吸収剤を含有する紫外線カット層(例えば紫外線カットフィルム)を用いることができる。紫外線カット層は、波長380nmの光を90%以上吸収することが好ましい。
紫外線カット層は、第1の基板及び第2の基板の少なくとも一方の外側に接着剤を用いて貼り付ける方法等、公知の方法により設けることができる。
【0175】
エレクトロウェッティング表示装置では、図1に示す構造(疎水性絶縁膜20と基板12との間がシリコーンゴム壁22aとシリコーンゴム壁22bとで例えば格子状に区画された領域(表示セル))を表示部となる一画素とし、この表示セルを複数個2次元方向に配列することによって、画像表示が可能になる。このとき、導電膜11bは、一画素(表示セル)毎に独立してパターニングされた膜であってもよいし(例えばアクティブマトリクス型の画像表示装置の場合など)、複数の画素(表示セル)に跨るストライプ状にパターニングされた膜であってもよい(例えばパッシブマトリクス型の画像表示装置の場合など)。
【0176】
エレクトロウェッティング表示装置100は、基材11a及び基材12aとして、ガラス、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)等の光透過性を有する基板を用い、かつ導電膜11b、12b及び疎水性絶縁膜20として光透過性を有する膜を用いることにより、透過型の表示装置とすることができる。この透過型の表示装置の画素において、表示セルの外部に反射板を設けることで、反射型の表示装置とすることもできる。
また、例えば、導電膜11bとして、反射板としての機能を兼ね備えた膜(例えばAl膜、Al合金膜などの金属膜)を用いたり、基材11aとして、反射板としての機能を兼ね備えた基板(例えばAl基板、Al合金基板などの金属基板)を用いたりすることで、反射型の画像表示装置の画素とすることもできる。
【0177】
本実施形態のエレクトロウェッティング表示装置100を構成する表示セルや画像表示装置のその他の構成は、例えば、特開2009−86668号公報、特開平10−39800、特表2005−517993、特開2004−252444、特開2004−287008、特表2005−506778、特表2007−531917号公報、特開2009−86668号公報等に記載の公知の構成とすることができる。また、公知のアクティブマトリクス型又はパッシブマトリクス型の液晶表示装置の構成も参照することができる。
【0178】
エレクトロウェッティング表示装置は、表示セル(表示画素)に加え、必要に応じてバックライト、セルギャップ調整用のスペーサ、封止用のシール材等、公知の液晶表示装置と同様の部材を用いて構成することができる。このとき、オイル及び親水性液体は、例えば、基板11上のシリコーンゴム壁によって区画された領域にインクジェット法により付与することで設けられてもよい。
【0179】
本実施形態のエレクトロウェッティング表示装置100は、例えば、基板11を準備する基板準備工程と、基板11の導電性表面側に疎水性絶縁膜20を形成する工程と、基板11の疎水性絶縁膜20形成面上を区画する隔壁を形成する隔壁形成工程と、隔壁により区画された領域に(例えばインクジェット法により)オイル16及び親水性液体14を付与する付与工程と、付与工程後の基板11のオイル16及び親水性液体14が付与された側に基板12を重ねてセル(表示部)を形成するセル形成工程と、必要に応じて基板11と基板12とをセルの周囲で接着することでセルを封止する封止工程とを有する方法が挙げられる。基板11と基板12との接着は、液晶表示装置の作製に通常用いられるシール材を用いて行なうことができる。
また、隔壁形成工程の後であってセル形成工程の前に、セルギャップ調整用のスペーサを形成するスペーサ形成工程が設けられていてもよい。
【実施例】
【0180】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0181】
<色素溶液(エレクトロウェッティング表示用着色組成物)の調製>
〔実施例1〜7〕
例示化合物a−1〜a−7で示される色素を、溶媒(hexane〔n−ヘキサン〕)に溶解して0.001質量%色素溶液(インク)を調製した。得られた色素溶液(インク)について、溶液の色、吸収極大波長(λmax)、吸光度(abs)、吸光係数(ε)、及び、溶媒に対する各色素の溶解度(質量%)を評価した。評価結果を表7に示す。
【0182】
−各物性判断手法−
1.溶液の色
色素溶液の色は、目視で判断した。
【0183】
2.溶液の吸収極大波長、吸光度、及び吸光係数
色素溶液の吸収極大波長(λmax)、および吸光度(abs)は、可視光吸光度計(島津製 UV−1800PC)で測定し、ランベルト・ベールの法則に基づいて、吸光係数(ε)を算出した。
【0184】
3.非極性溶媒への溶解度
非極性溶媒であるn−hexaneに対する各色素の溶解度は、次のようにして測定した。
50℃に加熱したn−hexaneに各色素を溶解して飽和溶液を調製し、得られた飽和溶液を、25℃、0.1MPa環境下に1時間放置し、析出した色素を濾過し、析出量を測定することにより、25℃、0.1MPaにおける各色素のn−hexaneに対する溶解度(質量%)を算出した。
【0185】
〔比較例1〕
実施例1において、色素として例示化合物a−1を用いる代わりに、下記化合物C−101(特開2008−292970号公報に記載の例示化合物I−22)を用いた他は同様にして、色素溶液の色、吸収極大波長、吸光度、吸光係数、及び溶解度を評価した。評価結果を表7に示す。
【0186】
【化13】

【0187】
【表7】

【0188】
表7から、例示化合物a−1〜a−7が比較例化合物であるC−101に比べ、炭化水素系溶媒に対して高い溶解度を示すことがわかる。
従って、例示化合物a−1〜a−7を、エレクトロウェッティング法の原理で動作するディスプレイや電気泳動法で動作するディスプレイのカラーフィルタを好適に作製することができる。
【0189】
<テストセルの作製>
(実施例8、実施例9)
−色素溶液(エレクトロウェッティング表示用着色組成物)の調製−
アルゴンガスをn−デカン中にバブリングし、溶存酸素が10ppm以下であるn−デカン溶液を得た。得られたn−デカン溶液に対して下記表8に示す色素を10質量%の濃度にて添加した。このようにして、実施例8および実施例9における色素溶液を調製した。
【0190】
−テストセルの作製−
透明電極として厚み100nmのインジウムスズオキサイド(ITO)膜が付いたガラス基板(10mm×10mm)のITO膜の表面に、フッ素系ポリマー(商品名:サイトップ、旭硝子社製、型番CTL−809M)を厚み600nmとなるように塗布し、フッ素ポリマー層を形成して疎水性絶縁膜とした。続いて、このフッ素ポリマー層上に、1cm×1cmサイズのシリコーンゴム〔厚み50μmのシール材;扶桑ゴム社製のシリウス(商品名)〕の中心部から8mm×8mm×50μmサイズの四面体を切り抜いて作製した額縁状のシリコーンゴム壁を置いて表示部を形成した。
このシリコーンゴム壁で取り囲まれた中に、上記のようにして調製したn−デカン溶液(色素溶液)を厚み4μmとなるように注入した。注入された色素溶液の上に、エチレングリコールを厚み46μmとなるように注入した。その上部から、さらにITO膜付ガラス基板をITO膜が色素溶液や電解質水溶液と向き合うようにして置き、固定化することで、図1に示す構造を有するエレクトロウェッティングテストセルを作製した。
【0191】
−評価−
2枚のITO膜付ガラス基板の各ITO膜(透明電極)に、信号発生器にて100V直流電圧を印加(フッ素ポリマー層(疎水性絶縁膜)が形成されている側のITO電極にマイナス電圧を印加)し、表示セル(図2中の表示セル30)を観察したところ、染料インクがフッ素ポリマー層の表面を一方向に移動し、フッ素ポリマー層上を覆う面積が縮小していることを確認した。このときの色素溶液の応答性、及び電圧を印加したままの状態で保持したときのバックフロー現象の程度を評価した。
【0192】
電圧印加による面積の縮小については、下記式(1)で算出される面積収縮率[%]により、バックフロー現象については、下記式(2)で算出されるバックフロー比率[%]により、それぞれ評価した。
a)応答時間[msec]=電圧未印加状態から電圧印加を開始し、印加時点から最も縮んだ状態に達するまでに要した時間
b)面積収縮率[%]=(最も縮んだ時の色素溶液の面積)/(電圧印加前の色素溶液の面積)×100 ・・・(1)
c)バックフロー比率[%]=(電圧印加状態で5秒経過した後の色素溶液の面積)/(最も縮んだ時の色素溶液の面積)×100 ・・・(2)
また、OD(画像の発色濃度)は、TOPCOM社製の分光放射計SR−3を用いて、染料の極大吸収波長におけるOD値を測定し、評価した。OD値はオイル層の厚み1μmあたりの値である。
【0193】
【表8】

【0194】
表8に示すように、本発明の着色組成物である色素溶液を用いたエレクトロウェッティング表示装置は、良好な応答性を示し、しかも画像表示後(電圧印加状態)のバックフロー現象が改善された。
【符号の説明】
【0195】
11・・・第1の基板
11a,12a・・・基材
11b,12b・・・ITO膜
12・・・第2の基板
14・・・親水性液体
16・・・オイル
17A、17B・・・親水性液体とオイルとの界面
20・・・疎水性絶縁膜
22a、22b・・・シリコーンゴム壁
30・・・表示セル
100・・・エレクトロウェッティング表示装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃、0.1MPaにおけるn−ヘキサンへの溶解度が1質量%以上であるジピロメテン系色素と、非極性溶媒とを含有するエレクトロウェッティング表示用着色組成物。
【請求項2】
前記ジピロメテン系色素は、下記一般式(I)で示されるジピロメテン系化合物が金属又は金属化合物に配位した金属錯体化合物である請求項1に記載のエレクトロウェッティング表示用着色組成物。
【化1】


〔一般式(I)中、R、R、R、R、R、及びRは、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。〕
【請求項3】
前記ジピロメテン系金属錯体化合物が、下記一般式(I−3)で表される化合物である請求項2に記載のエレクトロウェッティング表示用着色組成物。
【化2】


〔一般式(I−3)中、R、R、R、及びRは、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表し、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。R及びRは、各々独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、又はヘテロ環アミノ基を表す。Maは、金属原子又は金属化合物を表す。X及びXは、各々独立にNRa(Raは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。)、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子を表す。Y及びYは、各々独立に、NRb(Rbは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。)、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、又は炭素原子を表す。Xは、Maと結合可能な基を表し、aは1、又は2を表す。RとYとは互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成していてもよく、RとYとは互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成していてもよい。〕
【請求項4】
前記一般式(I−3)に示されるR、R、R、R、R、及びRのうち、少なくとも一つ以上が、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基である請求項3に記載のエレクトロウェッティング表示用着色組成物。
【請求項5】
前記一般式(I−3)に示されるXが、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基を有したMaの電荷を中和する基である請求項3または請求項4に記載のエレクトロウェッティング表示用着色組成物。
【請求項6】
前記一般式(I−3)に示されるXが、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキルエステル基である請求項3〜請求項5のいずれか1項に記載のエレクトロウェッティング表示用着色組成物。
【請求項7】
表面が疎水性である疎水性絶縁膜層と、
前記表面に接触させて配置され、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のエレクトロウェッティング表示用着色組成物を含む非導電性のオイルを用いて形成されたオイル層と、
前記オイル層に接触させて配置された親水性液体層と、
を有する画像表示構造。
【請求項8】
少なくとも一方の表面の少なくとも一部が導電性である第1の基板と、
前記第1の基板の導電性の表面に対向させて配置された第2の基板と、
前記第1の基板の導電性の表面を有する面側の少なくとも一部に配設された疎水性絶縁膜と、
前記疎水性絶縁膜と前記第2の基板との間に疎水性絶縁膜上を移動可能に設けられ、25℃、0.1MPaにおけるn−ヘキサンへの溶解度が1質量%以上であるジピロメテン系色素と、非極性溶媒とを含有するエレクトロウェッティング表示用着色組成物を含む非導電性のオイルと、
前記疎水性絶縁膜と前記第2の基板との間に、前記オイルと接して設けられた導電性の親水性液体と、
を有する表示部を備え、
前記親水性液体と前記第1の基板の導電性の表面との間に電圧を印加し、前記オイルと前記親水性液体との界面の形状を変化させることで画像を表示するエレクトロウェッティング表示装置。
【請求項9】
前記ジピロメテン系色素は、下記一般式(I)で示されるジピロメテン系化合物が金属又は金属化合物に配位した金属錯体化合物である請求項8に記載のエレクトロウェッティング表示装置。
【化3】


〔一般式(I)中、R、R、R、R、R、及びRは、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。〕
【請求項10】
前記ジピロメテン系金属錯体化合物が、下記一般式(I−3)で表される化合物である請求項9に記載のエレクトロウェッティング表示装置。
【化4】


〔一般式(I−3)中、R、R、R、及びRは、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表し、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。R及びRは、各々独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、又はヘテロ環アミノ基を表す。Maは、金属原子又は金属化合物を表す。X及びXは、各々独立にNRa(Raは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。)、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子を表す。Y及びYは、各々独立に、NRb(Rbは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。)、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、又は炭素原子を表す。Xは、Maと結合可能な基を表し、aは1、又は2を表す。RとYとは互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成していてもよく、RとYとは互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成していてもよい。〕
【請求項11】
前記一般式(I−3)に示されるR、R、R、R、R、及びRのうち、少なくとも一つ以上が、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基である請求項10に記載のエレクトロウェッティング表示装置。
【請求項12】
前記一般式(I−3)に示されるXが、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基を有したMaの電荷を中和する基である請求項10または請求項11に記載のエレクトロウェッティング表示装置。
【請求項13】
前記一般式(I−3)に示されるXが、炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキルエステル基である請求項10〜請求項12のいずれか1項に記載のエレクトロウェッティング表示装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−14746(P2013−14746A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−123414(P2012−123414)
【出願日】平成24年5月30日(2012.5.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】