説明

エレクトロクロミック化合物

【課題】シアンを発色及び消色することが可能なエレクトロクロミック化合物及びエレクトロクロミック組成物並びに該エレクトロクロミック化合物又は該エレクトロクロミック組成物を有する表示素子及び表示装置の提供。
【解決手段】一般式


で表されるエレクトロクロミック化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロクロミック化合物、エレクトロクロミック組成物、表示素子及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙に替わる電子媒体として、電子ペーパーが知られている。電子ペーパーは、表示装置が紙のように用いられる。
【0003】
電子ペーパー用途の表示装置としては、反射型液晶表示装置、電気泳動表示装置等が知られている。しかしながら、白反射率及びコントラスト比を確保しながら、多色表示することは大変困難である。一般に、多色表示するためには、カラーフィルタを設けるが、カラーフィルタが光を吸収することに加え、一画素を、例えば、レッド、グリーン及びブルーに3分割するため、白反射率が低下し、それに伴ってコントラスト比が低下する。
【0004】
一方、カラーフィルタを設けない反射型の表示装置として、エレクトロクロミック表示装置が知られている。エレクトロクロミック表示装置は、エレクトロクロミック化合物の構造によって様々な色を発色できるため、多色カラー表示装置として期待されている。
【0005】
特許文献1には、表示電極と、該表示電極に対して間隔をおいて対向して設けた対向電極と、両電極間に配置された電解質とを備え、該表示電極の対向電極側の表面に異なる色を発色し、かつ、発色状態になるための閾値電圧または消色状態になるための閾値電圧または十分な色濃度に発色するための必要電荷量または十分に消色するための必要電荷量のうち少なくともいずれかが異なる2種類以上のエレクトロクロミック組成物を積層または混合して形成した表示層を有することを特徴とする多色表示素子が開示されている。
【0006】
しかしながら、エレクトロクロミック組成物に含まれるビオロゲン化合物は、青色、緑色等を発色するものであり、フルカラー化に必要なシアンを発色することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術が有する問題に鑑み、シアンを発色及び消色することが可能なエレクトロクロミック化合物及びエレクトロクロミック組成物並びに該エレクトロクロミック化合物又は該エレクトロクロミック組成物を有する表示素子及び表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、エレクトロクロミック化合物において、一般式
【0009】
【化1】

(式中、X、X、X、X、X、X、X、X及びXは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアルキルカルボニル基、置換若しくは無置換のアリールカルボニル基、アミノカルボニル基、置換若しくは無置換のモノアルキルアミノカルボニル基、置換若しくは無置換のジアルキルアミノカルボニル基、置換若しくは無置換のモノアリールアミノカルボニル基、置換若しくは無置換のジアリールアミノカルボニル基、スルホン酸基、置換若しくは無置換のアルコキシスルホニル基、置換若しくは無置換のアリールオキシスルホニル基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニル基、置換若しくは無置換のアリールスルホニル基、アミノスルホニル基、置換若しくは無置換のモノアルキルアミノスルホニル基、置換若しくは無置換のジアルキルアミノスルホニル基、置換若しくは無置換のモノアリールアミノスルホニル基、置換若しくは無置換のジアリールアミノスルホニル基、アミノ基、置換若しくは無置換のモノアルキルアミノ基、置換若しくは無置換のジアルキルアミノ基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアルキニル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のアルキルチオ基、置換若しくは無置換のアリールチオ基又は置換若しくは無置換の複素環基であり、R及びRは、それぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアルキニル基、置換若しくは無置換のアリール基であり、Eは、オキシ基、チオ基又はセレノ基であり、A及びBは、それぞれ独立に、1価のアニオンであり、R及び/又はRは、スルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基及びカルボキシル基からなる群より選択される一種以上の官能基で置換されていてもよい。)
で表されることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のエレクトロクロミック化合物において、前記R及びRは、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素数が2以上20以下のアルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基であることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、エレクトロクロミック組成物において、導電性又は半導体性のナノ構造体に請求項1又は2に記載のエレクトロクロミック化合物が結合又は吸着されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、エレクトロクロミック組成物において、導電性又は半導体性のナノ構造体に、一般式
【0013】
【化2】

(式中、Aは、ハロゲン基であり、Bは、アルキレン基であり、Cは、ハロゲン基又はアルコキシ基であり、C及びCは、それぞれ独立に、ハロゲン基、アルコキシ基又はアルキル基である。)
で表される化合物を反応させた後、一般式
【0014】
【化3】

(式中、X、X、X、X、X、X、X、X及びXは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアルキルカルボニル基、置換若しくは無置換のアリールカルボニル基、アミノカルボニル基、置換若しくは無置換のモノアルキルアミノカルボニル基、置換若しくは無置換のジアルキルアミノカルボニル基、置換若しくは無置換のモノアリールアミノカルボニル基、置換若しくは無置換のジアリールアミノカルボニル基、スルホン酸基、置換若しくは無置換のアルコキシスルホニル基、置換若しくは無置換のアリールオキシスルホニル基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニル基、置換若しくは無置換のアリールスルホニル基、アミノスルホニル基、置換若しくは無置換のモノアルキルアミノスルホニル基、置換若しくは無置換のジアルキルアミノスルホニル基、置換若しくは無置換のモノアリールアミノスルホニル基、置換若しくは無置換のジアリールアミノスルホニル基、アミノ基、置換若しくは無置換のモノアルキルアミノ基、置換若しくは無置換のジアルキルアミノ基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアルキニル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のアルキルチオ基、置換若しくは無置換のアリールチオ基又は置換若しくは無置換の複素環基であり、Eは、オキシ基、チオ基又はセレノ基である。)
で表される化合物を反応させることにより得られることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明は、表示電極と、前記表示電極に対して、所定の間隔を隔てて対向して設けられている対向電極と、前記表示電極及び前記対向電極の間に挟持されている電解質を有する表示素子であって、前記表示電極の前記対向電極側の表面に、請求項1若しくは2に記載のエレクトロクロミック化合物又は請求項3若しくは4に記載のエレクトロクロミック組成物を含む表示層が形成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の発明は、表示装置において、請求項5に記載の表示素子と、前記表示素子を駆動する手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、シアンを発色及び消色することが可能なエレクトロクロミック化合物及びエレクトロクロミック組成物並びに該エレクトロクロミック化合物又は該エレクトロクロミック組成物を有する表示素子及び表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の表示素子の一例を示す図である。
【図2】図1の表示素子の変形例を示す図である。
【図3】図1の表示素子の変形例を示す図である。
【図4】エレクトロクロミック化合物(2)の合成フローを示す図である。
【図5】実施例1の表示素子の反射スペクトルを示す図である。
【図6】図5の発色状態の反射スペクトルをCIE表色系に座標変換した結果を示す図である。
【図7】実施例1の表示層が形成されている表示基板の光吸収スペクトルを示す図である。
【図8】比較例1の表示素子の反射スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明を実施するための形態を図面と共に説明する。
【0020】
本発明のエレクトロクロミック化合物は、一般式
【0021】
【化4】

(式中、X、X、X、X、X、X、X、X及びXは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアルキルカルボニル基、置換若しくは無置換のアリールカルボニル基、アミノカルボニル基、置換若しくは無置換のモノアルキルアミノカルボニル基、置換若しくは無置換のジアルキルアミノカルボニル基、置換若しくは無置換のモノアリールアミノカルボニル基、置換若しくは無置換のジアリールアミノカルボニル基、スルホン酸基、置換若しくは無置換のアルコキシスルホニル基、置換若しくは無置換のアリールオキシスルホニル基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニル基、置換若しくは無置換のアリールスルホニル基、アミノスルホニル基、置換若しくは無置換のモノアルキルアミノスルホニル基、置換若しくは無置換のジアルキルアミノスルホニル基、置換若しくは無置換のモノアリールアミノスルホニル基、置換若しくは無置換のジアリールアミノスルホニル基、アミノ基、置換若しくは無置換のモノアルキルアミノ基、置換若しくは無置換のジアルキルアミノ基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアルキニル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のアルキルチオ基、置換若しくは無置換のアリールチオ基又は置換若しくは無置換の複素環基であり、R及びRは、それぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアルキニル基、置換若しくは無置換のアリール基であり、Eは、オキシ基、チオ基又はセレノ基であり、A及びBは、それぞれ独立に、1価のアニオンであり、R及び/又はRは、スルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基及びカルボキシル基からなる群より選択される一種以上の官能基で置換されていてもよい。)
で表される。
【0022】
、X、X、X、X、X、X、X及びXにより、エレクトロクロミック化合物の溶媒に対する溶解性を付与することができる。これにより、エレクトロクロミック組成物又は表示素子を作製するプロセスが容易になる。また、本発明のエレクトロクロミック化合物は、シアンを発色することができるが、X、X、X、X、X、X、X、X及びXを調整すると、イエローやマゼンタを発色することもできる。
【0023】
なお、耐熱性、耐光性等の安定性を考慮すると、X、X、X、X、X、X、X、X及びXは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン基又は炭素数が1〜6の基であることが好ましい。
【0024】
また、R及びRは、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素数が2〜20のアルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基であることが好ましい。これにより、本発明のエレクトロクロミック化合物の溶解性を向上させることができる。その結果、本発明のエレクトロクロミック化合物の合成が容易となり、収率が向上することに加え、表示層を形成することが容易となる。また、R及びRの立体障害により、表示層における本発明のエレクトロクロミック化合物同士の会合を抑制することができ、会合による酸化還元反応の不具合を低減することができる。アルキル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれであってもよいが、立体障害を考慮すると、分岐状であることが好ましい。
【0025】
及びRのアルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアリール基における置換基としては、特に限定されないが、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、カルボキシル基、トリクロロシリル基、トリアルコキシシリル基、モノクロロシリル基、モノアルコキシシリル基等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、炭素数が1〜4のアルキル基;フルオロ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基;トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基等のハロゲン化アルキル基が好ましい。
【0026】
1価のアニオンとしては、特に限定されないが、Br、Cl、ClO、PF、BF等が挙げられる。
【0027】
なお、本発明のエレクトロクロミック化合物は、合成の容易さ及び安定性の面から、対称的な構造であることが好ましい。
【0028】
本発明のエレクトロクロミック化合物としては、特に限定されないが、エレクトロクロミック化合物(1)〜(11)が挙げられる。
【0029】
【化5】

【0030】
【化6】

【0031】
【化7】

【0032】
【化8】

【0033】
【化9】

【0034】
【化10】

【0035】
【化11】

【0036】
【化12】

【0037】
【化13】

【0038】
【化14】

【0039】
【化15】

本発明のエレクトロクロミック化合物は、例えば、X、X、X、X、X、X、X、X及びXの少なくとも一つがカルボキシル基又はスルホン酸基である場合、R及び/又はRがスルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基及びカルボキシル基からなる群より選択される一種以上の官能基で置換されている場合に、導電性又は半導性のナノ構造体に、水素結合等を介して、結合又は吸着することができ、本発明のエレクトロクロミック組成物が得られる。このとき、導電性又は半導性のナノ構造体に対する結合力が大きいことから、R及び/又はRがホスホン酸基で置換されていることが好ましい。
【0040】
また、本発明のエレクトロクロミック組成物は、導電性又は半導体性のナノ構造体に、一般式
【0041】
【化16】

(式中、Aは、ハロゲン基であり、Bは、アルキレン基であり、Cは、ハロゲン基又はアルコキシ基であり、C及びCは、それぞれ独立に、ハロゲン基、アルコキシ基又はアルキル基である。)
で表される化合物を反応させた後、一般式
【0042】
【化17】

(式中、X、X、X、X、X、X、X、X及びXは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアルキルカルボニル基、置換若しくは無置換のアリールカルボニル基、アミノカルボニル基、置換若しくは無置換のモノアルキルアミノカルボニル基、置換若しくは無置換のジアルキルアミノカルボニル基、置換若しくは無置換のモノアリールアミノカルボニル基、置換若しくは無置換のジアリールアミノカルボニル基、スルホン酸基、置換若しくは無置換のアルコキシスルホニル基、置換若しくは無置換のアリールオキシスルホニル基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニル基、置換若しくは無置換のアリールスルホニル基、アミノスルホニル基、置換若しくは無置換のモノアルキルアミノスルホニル基、置換若しくは無置換のジアルキルアミノスルホニル基、置換若しくは無置換のモノアリールアミノスルホニル基、置換若しくは無置換のジアリールアミノスルホニル基、アミノ基、置換若しくは無置換のモノアルキルアミノ基、置換若しくは無置換のジアルキルアミノ基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアルキニル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のアルキルチオ基、置換若しくは無置換のアリールチオ基又は置換若しくは無置換の複素環基であり、Eは、オキシ基、チオ基又はセレノ基である。)
で表される化合物を反応させることにより得られる。
【0043】
一般式(2)で表される化合物は、導電性又は半導性のナノ構造体の表面のヒドロキシル基と反応し、シロキサン結合を介して結合することができる。このとき、導電性又は半導性のナノ構造体に対する結合力が大きいことから、C、C及びCがエトキシ基、メトキシ基等のアルコキシ基又はクロロ基であることが好ましい。また、Aは、ブロモ基であることが好ましく、Bは、炭素数が1〜6のアルキレン基であることが好ましい。
【0044】
、X、X、X、X、X、X、X及びXにより、一般式(3)で表される化合物の溶媒に対する溶解性を付与することができる。これにより、エレクトロクロミック組成物又は表示素子を作製するプロセスが容易になる。また、本発明のエレクトロクロミック組成物は、シアンを発色することができるが、X、X、X、X、X、X、X、X及びXを調整すると、イエローやマゼンタを発色することもできる。
【0045】
なお、耐熱性、耐光性等の安定性を考慮すると、X、X、X、X、X、X、X、X及びXは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン基又は炭素数が1〜6の基であることが好ましい。
【0046】
また、一般式(3)で表される化合物は、合成の容易さ及び安定性の面から、対称的な構造であることが好ましい。
【0047】
このようにして得られる本発明のエレクトロクロミック組成物を含む表示層を有する表示素子は、画像のメモリ性、即ち、画像保持特性に優れる。
【0048】
導電性又は半導性のナノ構造体は、比表面積が100m/g以上であることが好ましい。これにより、エレクトロクロミック化合物で効率的に表面処理することができ、発消色の表示コントラスト比に優れた多色表示が可能となる。
【0049】
導電性又は半導性のナノ構造体としては、特に限定されないが、ナノ粒子集積体、ナノポーラス構造体等のナノスケールの凹凸を有する構造体が挙げられる。ナノ粒子は、平均一次粒径が30nm以下であることが好ましい。これにより、光の透過率が向上し、比表面積が大きくなる。
【0050】
導電性又は半導性のナノ構造体は、透明性や導電性の面から、金属酸化物を含むことが好ましい。金属酸化物としては、特に限定されないが、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、シリカ、酸化イットリウム、酸素ホウ素、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、酸化カルシウム、フェライト、酸化ハフニウム、酸化タングステン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化バナジウム、アルミノケイ酸、リン酸カルシウム、アルミノシリケート等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、発消色の応答速度に優れた多色表示が可能であることから、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化インジウム又は酸化タングステンが好ましく、酸化チタンが特に好ましい。
【0051】
図1に、本発明の表示素子の一例を示す。表示素子10は、表示電極11aが形成されている表示基板11と、表示電極11aに対して、所定の間隔を隔てて対向して設けられている対向電極12aが形成されている対向基板12と、表示基板11及び対向基板12の間に挟持されている表示層13を有する。このとき、表示層13は、電解液13a中に本発明のエレクトロクロミック化合物13bが溶解されている。このとき、エレクトロクロミック化合物13bは、表示電極11の表面で酸化還元反応することにより発消色する。また、対向電極12の表示電極11側の表面に、白色粒子を含む白色反射層14が形成されているため、表示素子10は、反射型の表示素子である。なお、表示基板11及び対向基板12は、スペーサ15を介して、貼り合わされている。
【0052】
図2に、表示素子10の変形例を示す。表示素子20は、表示層13の代わりに、表示電極11aの対向電極12a側の表面に、エレクトロクロミック化合物13bを含む表示層23が形成されている以外は、表示素子10と同一の構成である。表示層23は、ディッピング法、蒸着法、スピンコート法、印刷法、インクジェット法等を用いて形成することができる。なお、R及び/又はRがスルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、カルボキシル基、トリクロロシリル基、トリアルコキシシリル基、モノクロロシリル基及びモノアルコキシシリル基からなる群より選択される一種以上の官能基で置換されている場合、表面にヒドロキシル基を有する表示電極11aをエレクトロクロミック化合物13bで表面処理することができる。
【0053】
図3に、表示素子10の変形例を示す。表示素子30は、表示層13の代わりに、表示電極11aの対向電極12b側の表面に、本発明のエレクトロクロミック組成物33bを含む表示層33が形成されている以外は、表示素子10と同一の構成である。表示層33は、ディッピング法、蒸着法、スピンコート法、印刷法、インクジェット法等を用いて形成することができる。
【0054】
表示基板11は、表示電極11aが形成されている透明基板11bである。
【0055】
表示電極11aを構成する材料としては、透明であれば、特に限定されないが、スズをドープした酸化インジウム(以下、ITOという)、フッ素をドープした酸化スズ(以下、FTOという)、アンチモンをドープした酸化スズ(以下、ATOという)等の無機材料が挙げられる。中でも、スパッタ法を用いて、容易に薄膜を形成できることから、インジウム酸化物、スズ酸化物又は亜鉛酸化物を含む無機材料が好ましく、InSnO、GaZnO、SnO、In、ZnOが特に好ましい。
【0056】
透明基板11bを構成する材料としては、ガラス、プラスチック等が挙げられる。このとき、透明基板11bとして、プラスチックフィルムを用いると、軽量でフレキシブルな表示素子を作製することができる。
【0057】
対向基板12は、対向電極12aが形成されている基板12bである。
【0058】
対向電極12aを構成する材料としては、特に限定されないが、ITO、FTO、酸化亜鉛、亜鉛、白金、カーボン等が挙げられる。このとき、対向電極12aが、エレクトロクロミック化合物が酸化(又は還元)するときに、還元(又は酸化)する材料を含むと、安定に発色及び消色することが可能な表示素子が得られる。
【0059】
基板12bを構成する材料としては、ガラス、プラスチック等が挙げられる。
【0060】
なお、対向基板12の代わりに、亜鉛板等の金属板を用いてもよい。
【0061】
電解液13aとしては、支持塩を溶媒に溶解させた溶液、イオン液体等が用いられる。このため、イオン伝導度が高い。
【0062】
支持塩としては、特に限定されないが、LiClO、LiBF、LiAsF、LiPF、CFSOLi、CFCOOLi、KCl、NaClO、NaCl、NaBF、NaSCN、KBF、Mg(ClO、Mg(BF等の金属塩;過塩素酸テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスファート等の4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0063】
溶媒としては、特に限定されないが、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、エチレンカーボネート、スルホラン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,2−ジメトキシエタン、1,2−エトキシメトキシエタン、ポリエチレングリコール、アルコール類等が挙げられる。
【0064】
なお、電解液13aの代わりに、ゲル状の電解質;ポリマー電解質等の固体電解質を用いてもよい。ポリマー電解質としては、パーフルオロスルホン酸系高分子等が挙げられる。これにより、耐久性に優れる表示素子を作製することができる。
【0065】
白色反射層14は、白色の顔料粒子及び樹脂を含む塗布液を対向電極12上に塗布することにより形成することができる。
【0066】
白色の顔料粒子としては、特に限定されないが、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化セシウム、酸化イットリウム等の金属酸化物が挙げられる。
【0067】
白色の顔料粒子は、反射率を考慮すると、平均粒径が50〜400nmであることが好ましい。
【0068】
なお、白色反射層14を形成する代わりに、ポリマー電解質中に白色の顔料粒子を分散させてもよい。
【0069】
表示素子10、20、30を駆動する方法としては、表示電極11aと対向電極12aの間に、所定の電圧を印加することが可能であれば、特に限定されない。このとき、パッシブ駆動する方法を用いると、安価な表示装置が得られる。また、アクティブ駆動する方法を用いると、高速で、高精細に表示することが可能な表示装置が得られる。なお、対向基板12にアクティブ駆動素子を設けることにより、容易にアクティブ駆動することができる。
【0070】
表示素子10、20、30は、電子書籍、電子看板、電子棚札等の表示装置に適用することができる。
【実施例】
【0071】
(実施例1)
[エレクトロクロミック化合物(2)の合成]
図4に、エレクトロクロミック化合物(2)の合成フローを示す。
【0072】
4−アセチルピリジン5.6g、イソニコチン酸エチル7.0g及び1,4−ジオキサン30mlを反応フラスコに仕込み、カリウムtert−ブトキシド5.2gを徐々に加えた後、90℃で1時間撹拌し、放冷した。反応液を水80mlで希釈した後、酢酸7mlを加えて生成物を析出させた。析出した生成物を濾過した後、水洗し、乾燥して、化合物(A)2.7gを得た。
【0073】
ヒドロキシルアミン塩酸塩3.36g、水酸化ナトリウム1.93g及びエタノール32mlを反応フラスコに仕込み、40℃で10分撹拌した。次に、化合物(A)2.7gを投入し、還流下で1時間撹拌した後、水酸化ナトリウム2.1gを加えて還流下で1時間撹拌し、放冷した。反応液からエタノールを留去した後、残留物中の不純物を水に溶解させた。さらに、濾過した後、水洗し、乾燥して、化合物(B)1.1gを得た。化合物(B)のGC/MSを測定したところ、分子イオンピークの質量電荷比は223であった。
【0074】
化合物(B)0.45g、2−ブロモエチルホスホン酸ジエチル2.0g、1−プロパノール3ml及び水6mlを反応フラスコに仕込み、90℃で40時間撹拌した後、放冷した。反応液を、水15mlと酢酸エチル30mlの混合液中に排出し、水層を分取した。得られた水層及び濃塩酸20mlを反応フラスコに仕込み、90℃で23時間撹拌した後、放冷した。反応液から水を留去し、タール状の残留物をメタノールに溶解させた後、撹拌下、2−プロパノール/エタノール混合溶媒(容量比2/1)中に滴下して生成物を結晶化させた。さらに、濾過した後、2−プロパノールで洗浄し、乾燥して、エレクトロクロミック化合物(2)0.30gを得た。エレクトロクロミック化合物(2)のH−NMR(300MHz,DO)を測定したところ、エレクトロクロミック化合物(2)の構造を支持するシグナルδ2.23(m,4H)、δ4.76(m,4H)、δ7.99(s,1H)、δ8.43(m,4H)、8.96(dd,4H)が得られた。
【0075】
[表示素子の作製]
スパッタ法を用いて、30mm×30mmのガラス基板11bの上面の16mm×23mmの領域に、厚さが約100nmのITOからなる表示電極11aを形成して、表示基板11を得た。表示電極11aの端部間の抵抗を測定したところ、約200Ωであった。
【0076】
次に、スピンコート法を用いて、表示電極11a上に、酸化チタンのナノ粒子の分散液SP210(昭和タイタニウム社製)を塗布し、120℃で15分間アニール処理して、ナノ粒子集積体を形成した。さらに、スピンコート法を用いて、エレクトロクロミック化合物(2)の1質量%2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール溶液を塗布し、120℃で10分間アニール処理して、ナノ粒子集積体の表面にエレクトロクロミック化合物(2)を吸着させて、エレクトロクロミック組成物33bを含む表示層33を形成した。
【0077】
一方、スパッタ法を用いて、30mm×30mmのガラス基板12bの上面の全面に、厚さが約150nmのITO膜を形成した。次に、スピンコート法を用いて、ITO膜上に、熱硬化性の導電性カーボンインクCH10(十条ケミカル社製)に対して、酢酸2−エトキシエチルを25質量%添加した液を塗布した後、120℃で15分間アニール処理して、対向電極12aを形成し、対向基板12を得た。
【0078】
表示基板11及び対向基板12を、75μmのスペーサ15を介して貼り合わせ、セルを得た。次に、過塩素酸テトラブチルアンモニウムを、ジメチルスルホキシド(DMSO)に対して、20質量%溶解させた電解液13a中に、平均一次粒径が300nmの酸化チタン粒子(石原産業社製)を35質量%分散させた液をセル内に封入して、白色反射層14を形成し、表示素子30を得た。
【0079】
[発消色試験]
表示素子30の表示電極11aに負極を、対向電極12aに正極を接続し、3.0Vの電圧を1秒間印加したところ、シアンを発色した。次に、−4.5Vの電圧を2秒間印加したところ、完全に消色し、白色に戻った。また、表示素子30は、3.0Vの電圧を1秒間印加した後、電圧を印加せずに300秒間放置しても、発色状態が保持されたことから、画像保持特性に優れることが確認された。
【0080】
分光測色計LCD−5000(大塚電子社製)を用いて、発色状態及び消色状態の表示素子30に拡散光を照射したところ、図5に示す反射スペクトルが得られた。また、図6に、図5の発色状態の反射スペクトルをCIE表色系に座標変換した結果を示す。図5及び図6から、表示素子30は、可視域において反射率が低い領域の幅が狭く、シアンを発色することが確認された。
【0081】
[光吸収スペクトルの測定]
表示層33が形成されている表示基板11を石英セルに入れ、対極として、白金電極、参照電極として、Ag/Ag電極RE−7(ビー・エー・エス社製)を用い、過塩素酸テトラブチルアンモニウムを、ジメチルスルホキシド(DMSO)に対して、20質量%溶解させた電界液で石英セルを満たした。ポテンショスタットALS−660C(ビー・エー・エス社製)を用いて、−1.5Vの電圧を印加したところ、シアンを発色した。
【0082】
重水素タングステンハロゲン光源DH−2000(オーシャンオプティクス社製)を用いて、石英セルに光を照射し、透過した光をスペクトロメータUSB4000(オーシャンオプティクス社製)で検出したところ、図7に示す光吸収スペクトルが得られた。
【0083】
図7から、発色状態の表示層33は、720nm付近にシャープな吸収ピークを有することが確認された。
【0084】
(実施例2)
[エレクトロクロミック化合物(10)の合成]
化合物(B)0.45g、適量の臭化エチル、1−プロパノール3ml及び水6mlを反応フラスコに仕込み、90℃で40時間撹拌した後、放冷した。反応液を、水15mlと酢酸エチル30mlの混合液中に排出し、水層を分取した。得られた水層及び濃塩酸20mlを反応フラスコに仕込み、90℃で23時間撹拌した後、放冷した。反応液から水を留去し、タール状の残留物をメタノールに溶解させた後、撹拌下、2−プロパノール/エタノール混合溶媒(容量比2/1)中に滴下して生成物を結晶化させた。さらに、濾過した後、2−プロパノールで洗浄し、乾燥して、エレクトロクロミック化合物(10)0.30gを得た。
【0085】
[表示素子の作製]
表示基板11及び対向基板12として、上面の全面に、それぞれSnOからなる表示電極11a及び対向電極12aが形成されている30mm×30mmのガラス基板11b及び12b(AGCファブリテック社製)を用いた。表示電極11aの端部間の抵抗を測定したところ、約20Ωであった。
【0086】
表示基板11及び対向基板12を、75μmのスペーサ15を介して貼り合わせ、セルを得た。次に、エレクトロクロミック化合物(10)13bの1質量%水/2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール混合溶媒(質量比1/9)溶液を、過塩素酸テトラブチルアンモニウムを、ジメチルスルホキシド(DMSO)に対して、20質量%溶解させた液に対して、50質量%添加した電解液13aをセル内に封入して、白色反射層14が形成されていない形態の表示素子10を得た。
【0087】
[発消色試験]
表示素子10の表示電極11aに負極を、対向電極12aに正極を接続し、3.0Vの電圧を2秒間印加したところ、シアンを発色した。次に、−3.0Vの電圧を4秒間印加したところ、完全に消色し、無色透明に戻った。また、表示素子10は、3.0Vの電圧を2秒間印加した後、電圧を印加せずに300秒間放置しても、発色状態が保持されたことから、画像保持特性に優れることが確認された。
【0088】
(実施例3)
[エレクトロクロミック化合物(11)の合成]
2−ブロモエチルホスホン酸ジエチルの代わりに、4−(ブロモメチル)ベンジルホスホン酸ジエチルを用いた以外は、エレクトロクロミック化合物(2)と同様にして、エレクトロクロミック化合物(11)を得た。
【0089】
[表示素子の作製]
エレクトロクロミック化合物(2)の1質量%2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール溶液の代わりに、エレクトロクロミック化合物(11)の1.5質量%2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、表示素子30を得た。
【0090】
[発消色試験]
表示素子30の表示電極11aに負極を、対向電極12aに正極を接続し、3.0Vの電圧を0.5秒間印加したところ、シアンを発色した。次に、−4.5Vの電圧を2秒間印加したところ、完全に消色し、白色に戻った。また、表示素子30は、3.0Vの電圧を0.5秒間印加した後、電圧を印加せずに300秒間放置しても、発色状態が保持されたことから、画像保持特性に優れることが確認された。
【0091】
(実施例4)
[表示素子の作製]
表示基板として、上面の全面にSnOからなる表示電極11aが形成されている30mm×30mmのガラス基板11b(AGCファブリテック社製)を用いた。
【0092】
次に、スピンコート法を用いて、表示電極11a上に、酸化チタンのナノ粒子の分散液SP210(昭和タイタニウム社製)を塗布し、120℃で15分間アニール処理して、ナノ粒子集積体を形成した。ナノ粒子集積体が形成された表示基板11を、3−ブロモプロピルトリクロロシランの0.02質量%トルエン溶液中に30分間浸漬し、ナノ粒子集積体を表面処理した。さらに、表面処理されたナノ粒子集積体が形成された表示基板11を、化合物(B)の0.1質量%トルエン溶液に浸漬し、2時間還流して、ナノ粒子集積体を表面処理して、エレクトロクロミック組成物33bを含む表示層33を形成した。
【0093】
一方、スパッタ法を用いて、30mm×30mmのガラス基板12bの上面の全面に、厚さが約150nmのITO膜を形成した。次に、スピンコート法を用いて、ITO膜上に、熱硬化性の導電性カーボンインクCH10(十条ケミカル社製)に対して、酢酸2−エトキシエチルを25質量%添加した液を塗布した後、120℃で15分間アニール処理して、対向電極12aを形成し、対向基板12を得た。
【0094】
表示基板11及び対向基板12を、75μmのスペーサ15を介して貼り合わせ、セルを得た。次に、過塩素酸テトラブチルアンモニウムを、ジメチルスルホキシド(DMSO)に対して、20質量%溶解させた電解液13a中に、平均一次粒径が300nmの酸化チタン粒子(石原産業社製)を35質量%分散させた液をセル内に封入して、白色反射層14を形成し、表示素子30を得た。
【0095】
[発消色試験]
表示素子10の表示電極11aに負極を、対向電極12aに正極を接続し、3.0Vの電圧を1秒間印加したところ、シアンを発色した。次に、−4.5Vの電圧を2秒間印加したところ、完全に消色し、無色透明に戻った。また、表示素子10は、3.0Vの電圧を1秒間印加した後、電圧を印加せずに300秒間放置しても、発色状態が保持されたことから、画像保持特性に優れることが確認された。
【0096】
(比較例1)
[表示素子の作製]
エレクトロクロミック化合物(2)の代わりに、化学式
【0097】
【化18】

で表されるビオロゲン化合物を用いた以外は、実施例1と同様にして、表示素子30を得た。
【0098】
[発消色試験]
表示素子30の表示電極11aに負極を、対向電極12aに正極を接続し、3.0Vの電圧を1秒間印加したところ、青色を発色した。次に、−4.5Vの電圧を2秒間印加したところ、完全に消色し、白色に戻った。また、表示素子30は、3.0Vの電圧を1秒間印加した後、電圧を印加せずに300秒間放置しても、発色状態が保持されたことから、画像保持特性に優れることが確認された。
【0099】
分光測色計LCD−5000(大塚電子社製)を用いて、発色状態の表示素子30に拡散光を照射したところ、図8に示す反射スペクトルが得られた。図8から、表示素子30は、可視域において反射率が低い領域の幅が広く、光吸収がブロードであるため、青色を発色することが確認された。
【符号の説明】
【0100】
10、20、30 表示素子
11 表示基板
11a 表示電極
11b 透明基板
12 対向基板
12a 対向電極
12b 基板
13、23 表示層
13a 電解液
13b エレクトロクロミック化合物
14 白色反射層
15 スペーサ
33 表示層
33b エレクトロクロミック組成物
【先行技術文献】
【特許文献】
【0101】
【特許文献1】特開2006−106669号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
【化1】

(式中、X、X、X、X、X、X、X、X及びXは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアルキルカルボニル基、置換若しくは無置換のアリールカルボニル基、アミノカルボニル基、置換若しくは無置換のモノアルキルアミノカルボニル基、置換若しくは無置換のジアルキルアミノカルボニル基、置換若しくは無置換のモノアリールアミノカルボニル基、置換若しくは無置換のジアリールアミノカルボニル基、スルホン酸基、置換若しくは無置換のアルコキシスルホニル基、置換若しくは無置換のアリールオキシスルホニル基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニル基、置換若しくは無置換のアリールスルホニル基、アミノスルホニル基、置換若しくは無置換のモノアルキルアミノスルホニル基、置換若しくは無置換のジアルキルアミノスルホニル基、置換若しくは無置換のモノアリールアミノスルホニル基、置換若しくは無置換のジアリールアミノスルホニル基、アミノ基、置換若しくは無置換のモノアルキルアミノ基、置換若しくは無置換のジアルキルアミノ基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアルキニル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のアルキルチオ基、置換若しくは無置換のアリールチオ基又は置換若しくは無置換の複素環基であり、R及びRは、それぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアルキニル基、置換若しくは無置換のアリール基であり、Eは、オキシ基、チオ基又はセレノ基であり、A及びBは、それぞれ独立に、1価のアニオンであり、R及び/又はRは、スルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基及びカルボキシル基からなる群より選択される一種以上の官能基で置換されていてもよい。)
で表されることを特徴とするエレクトロクロミック化合物。
【請求項2】
前記R及びRは、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素数が2以上20以下のアルキル基又は置換若しくは無置換のアリール基であることを特徴とする請求項1に記載のエレクトロクロミック化合物。
【請求項3】
導電性又は半導体性のナノ構造体に請求項1又は2に記載のエレクトロクロミック化合物が結合又は吸着されていることを特徴とするエレクトロクロミック組成物。
【請求項4】
導電性又は半導体性のナノ構造体に、一般式
【化2】

(式中、Aは、ハロゲン基であり、Bは、アルキレン基であり、Cは、ハロゲン基又はアルコキシ基であり、C及びCは、それぞれ独立に、ハロゲン基、アルコキシ基又はアルキル基である。)
で表される化合物を反応させた後、一般式
【化3】

(式中、X、X、X、X、X、X、X、X及びXは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアルキルカルボニル基、置換若しくは無置換のアリールカルボニル基、アミノカルボニル基、置換若しくは無置換のモノアルキルアミノカルボニル基、置換若しくは無置換のジアルキルアミノカルボニル基、置換若しくは無置換のモノアリールアミノカルボニル基、置換若しくは無置換のジアリールアミノカルボニル基、スルホン酸基、置換若しくは無置換のアルコキシスルホニル基、置換若しくは無置換のアリールオキシスルホニル基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニル基、置換若しくは無置換のアリールスルホニル基、アミノスルホニル基、置換若しくは無置換のモノアルキルアミノスルホニル基、置換若しくは無置換のジアルキルアミノスルホニル基、置換若しくは無置換のモノアリールアミノスルホニル基、置換若しくは無置換のジアリールアミノスルホニル基、アミノ基、置換若しくは無置換のモノアルキルアミノ基、置換若しくは無置換のジアルキルアミノ基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアルキニル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のアルキルチオ基、置換若しくは無置換のアリールチオ基又は置換若しくは無置換の複素環基であり、Eは、オキシ基、チオ基又はセレノ基である。)
で表される化合物を反応させることにより得られることを特徴とするエレクトロクロミック組成物。
【請求項5】
表示電極と、前記表示電極に対して、所定の間隔を隔てて対向して設けられている対向電極と、前記表示電極及び前記対向電極の間に挟持されている電解質を有する表示素子であって、
前記表示電極の前記対向電極側の表面に、請求項1若しくは2に記載のエレクトロクロミック化合物又は請求項3若しくは4に記載のエレクトロクロミック組成物を含む表示層が形成されていることを特徴とする表示素子。
【請求項6】
請求項5に記載の表示素子と、
前記表示素子を駆動する手段を有することを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−102288(P2011−102288A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172866(P2010−172866)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【出願人】(000179306)山田化学工業株式会社 (29)
【Fターム(参考)】