説明

エレクトロデポジション方式の調光デバイス、及びエレクトロデポジション方式の反射型表示装置

【課題】呈色濃度が高く且つ基板面内で呈色濃度が均一であり、消色速度が速く、透明時の透明度が高いエレクトロデポジション方式の調光デバイスを提供すること。呈色濃度が高く且つ基板面内で均一の呈色濃度を示し、消色速度が速く、白色表示時の反射率が高いエレクトロデポジション方式の反射型表示装置を提供すること。
【解決手段】(i)通電により還元可能な金属イオンを含む電解液が、(ii)側鎖にメタロセンを有するポリマーを化学結合により固定化した透明電極と、(iii)前記(ii)の透明電極に対向して備えられ、前記金属イオンの還元反応により金属が生ずる透明電極と、の間に備えられてなることを特徴とするエレクトロデポジション方式の調光デバイス。また、前記電解液がゲル状高分子によって担持され、該ゲル状高分子中に白色顔料が分散されたエレクトロデポジション方式の反射型表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロデポジション方式の調光デバイス、及びエレクトロデポジション方式の反射型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロデポジション方式は、エレクトロクロミック方式の一種であり、金属イオンを含む電解液を通電して、透明電極上に金属を析出させたり溶解させたりする方式である。金属が析出している状態では、金属の鏡面反射や金属微粒子の吸収によって高い遮光性能を呈し、他方、金属イオンの状態では、金属イオンを含む電解液が無色透明であることから高い透明透過率を呈する(例えば、特許文献1,2参照。)。
このエレクトロデポジション方式は、金属として銀、鉛、ビスマス、銅などを用い、可逆的に電解めっきする方法である。特に銀を用いることで、安定に繰り返し析出させることができ、高い遮光性能を実現できる。
【0003】
銀を用いたエレクトロデポジション方式では、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)やN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)などの非プロトン性極性溶媒中に、ハロゲンを含む支持電解質とハロゲン化銀を溶解した電解液が、対向する透明電極の間に注入されてなる。或いは前記電解液をポリマーに混合し高分子固体電解質として透明電極間に注入する。
この透明電極を通電し、所定の電位(析出過電圧)を超えた場合に、銀が透明電極上に析出して発色する。また、通電を遮断し或いは逆の電位を印加することで、透明電極上の銀が再溶解して再び透明にすることが可能である。
【0004】
しかしながら、エレクトロクロミック方式の調光システムでは、透明電極(ITO、IZO、ZnO等)の表面抵抗が高い(10Ω/□以上)ことに起因して電圧降下が発生するという問題があった。特に、大型基板の中心部で実効電圧が低下し、金属が析出せず、遮蔽時に濃度ムラが生じることがあった。
【0005】
この問題に対して、金属イオンの還元反応を促進する材料を電解液に添加する方法が提案されている。このような還元促進材料としては、ヒドロキノン、カテコールやこれら誘導体、1,4−ナフタレンジオール、1,5−ナフタレンジオールやこれらの誘導体、フェロセン、フェロシアンカリウム等が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0006】
特に、電気化学反応に安定なフェロセンは、安定的に還元反応を促進させるので、大型基板の中心部でも銀を析出させることが可能となった。
【0007】
フェロセンを適用する技術としては、フェロセンポリマーと導電性微粒子をバインダーに混合し、これを電極上に塗布する方法(例えば、特許文献4参照。)や、末端にアミノ基を有するシランを修飾した導電性微粒子にフェロセンカルボン酸をアミド結合させ、この導電性微粒子を電極上に塗布し焼成する方法(例えば、特許文献5参照。)や、フェロセンポリマーと高分子固体電解質を共重合する方法(例えば、特許文献6参照。)などが提案されている。
【特許文献1】米国特許第4,240,716号明細書
【特許文献2】米国特許第4,240,717号明細書
【特許文献3】特開平2006−235484号公報
【特許文献4】特開昭63−24225号公報
【特許文献5】特開平10−206907号公報
【特許文献6】特開平2000−235198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記フェロセンを適用する従来の方法は、そもそもエレクトロクロミックの発色を促進することを目的としており、エレクトロデポジション方式のように遮光性能を示す程の金属を析出させる必要が無い。よって、上記従来技術では、エレクロトデポジション方式の用途を想定しておらず、従来のエレクトロクロミックでの方法をそのままエレクトロデポジション方式に適用できない。
【0009】
具体的には、上記従来技術では酸化されたフェロセン(フェロセニウムイオン)が電極表面から離れて存在するために、(1)フェロセニウムイオンの拡散律速により還元反応が進まず、銀の酸化反応すなわち溶解速度が遅い、(2)析出したフェロセニウムイオンが浮遊し、透明時の透過率が低下する、などの問題を生じさせていることが分かった。
【0010】
また、フェロセンを側鎖に有するポリマーをバインダーと混合したり固体電解質と共重合したりする場合では、電極近傍に存在する僅かなフェロセンのみが酸化反応に関与するため、フェロセンの添加量に対する還元反応の促進効果が小さい一方で、フェロセンによる光吸収が発生し、透明時の透過率が低下するといった問題があることがわかった。
更に、フェロセンカルボン酸をアミド結合させた場合では、酸化するフォロセンが少ないといった問題があることがわかった。
【0011】
加えて、多くの金属を析出させるためエレクトロクロミック方式のときよりも大きな電荷量が必要となり、且つ析出によって形成した金属層は高い導電性を示す。その結果、エレクトロクロミック方式のときよりも大きな電流が発生して電圧降下がより大きくなり、基板の中心部では調光し難くなっていることがわかった。
【0012】
本発明は、上記問題を解決し、呈色濃度が高く且つ基板面内で均一の呈色濃度を示し、消色速度が速く、透明時の透明度が高いエレクトロデポジション方式の調光デバイスを提供することを課題とする。
また、本発明は、呈色濃度が高く且つ基板面内で均一の呈色濃度を示し、消色速度が速く、白色表示時の反射率が高いエレクトロデポジション方式の反射型表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
高い呈色濃度を実現するには、析出させる金属量を増やす必要があり、そのため還元反応に寄与する電荷量を多くしなければならない。電荷量を増やすにはメタロセンの添加量を増やせばよいが、メタロセンを増やすと透明時の透過率が低下するといった問題が明らかとなった。
【0014】
更なる鋭意検討の結果、メタロセンをモノマーとして使うのではなく、メタロセンを側鎖に有するポリマーの形態として部分的に固定化し、更にそのポリマーを化学結合によって電極に固定化すると、メタロセンと電極の間での電荷の移動が円滑になることが明らかとなった。
つまり、メタロセンの数を増やすためにメタロセンを複数有するポリマーとし、且つそのポリマーを化学結合によって電極に固定化することで、基板付近にのみメタロセンを多く配置させる。その結果、ポリマーにしたことで電荷移動量も多くなり、また化学結合によって電極に固定化することメタロセンと電極間の距離が短くなり、かつポリマー鎖を介して電荷の移動が効率的に行なわれる。よって、側鎖にメタロセンを有するポリマーを化学結合で電極に固定化すれば、電解液中のメタロセンの総量を然程増大させることなく、電荷移動速度および電荷量を高めることができる。
これにより、高い呈色濃度を実現した上で電圧降下が抑えられ、基板面内での呈色濃度が均一となる。更に、効率的に電荷が移動するので消色速度が速くなる。また、電解液中に浮遊する還元反応に寄与しないメタロセンが低減しているため、透明時の透明度が高くなる。
【0015】
したがって、上記課題を解決するための手段は以下の通りである。
<1> (i)通電により還元可能な金属イオンを含む電解液が、
(ii)側鎖にメタロセンを有するポリマーを化学結合により固定化した透明電極と、
(iii)前記(ii)の透明電極に対向して備えられ、前記金属イオンの還元反応により金属が生ずる透明電極と、
の間に備えられてなることを特徴とするエレクトロデポジション方式の調光デバイスである。
【0016】
<2> 前記(ii)の透明電極が、ケイ素、チタン、アルミニウムおよびジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むカップリング剤を介して、側鎖にメタロセンを有する前記ポリマーが固定されてなることを特徴とする前記<1>に記載のエレクトロデポジション方式の調光デバイスである。
【0017】
<3> 前記(iii)の透明電極が、2個以上のアミノ基を有するシランカップリング剤により処理されてなることを特徴とする前記<1>又は<2>に記載のエレクトロデポジション方式の調光デバイスである。
【0018】
<4> 前記側鎖にメタロセンを有するポリマーが、フェロセン誘導体のポリマーであることを特徴とする前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のエレクトロデポジション方式の調光デバイスである。
【0019】
<5> (i)ゲル状高分子により担持され、かつ通電により還元可能な金属イオンと白色顔料とを含有する電解液が、
(ii)側鎖にメタロセンを有するポリマーを化学結合により固定化した透明電極と、
(iii)前記(ii)の透明電極に対向して備えられ、前記金属イオンの還元反応により金属が生ずる透明電極と、
の間に備えられてなることを特徴とするエレクトロデポジション方式の反射型表示装置である。
【0020】
<6> 前記(ii)の透明電極が、ケイ素、チタン、アルミニウムおよびジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むカップリング剤を介して、側鎖にメタロセンを有する前記ポリマーが固定されてなることを特徴とする前記<5>に記載のエレクトロデポジション方式の反射型表示装置である。
【0021】
<7> 前記(iii)の透明電極が、2個以上のアミノ基を有するシランカップリング剤により処理されてなることを特徴とする前記<5>又は<6>に記載のエレクトロデポジション方式の反射型表示装置である。
【0022】
<8> 前記側鎖にメタロセンを有するポリマーが、フェロセン誘導体のポリマーであることを特徴とする前記<5>〜<7>のいずれか1項に記載のエレクトロデポジション方式の反射型表示装置である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、呈色濃度が高く且つ基板面内で呈色濃度が均一であり、消色速度が速く、透明時の透明度が高いエレクトロデポジション方式の調光デバイスを提供できる。
また、呈色濃度が高く且つ基板面内で均一の呈色濃度を示し、消色速度が速く、白色表示時の反射率が高いエレクトロデポジション方式の反射型表示装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明の実施の形態を図、実施例等を使用して説明する。
なお、これらの図、実施例等および説明は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。本発明の趣旨に合致する限り他の実施の形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。図中、同一の符号は同一の要素を表す。
また、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0025】
1.エレクトロデポジション方式の調光デバイス
図1は、エレクトロデポジション方式の調光デバイスの模式的断面図である。
図1のエレクトロデポジション方式の調光デバイスでは、透明電極基板2上に透明電極1を備え、対向電極側基板4上に対向透明電極3を備える。透明電極1と対向透明電極3の間には、電解液5が配される。電解液5は、還元と酸化とにより発色と消色とを繰り返し行うことのできる金属イオンを含む。透明電極基板2と対向電極側基板4の間には、電解液5を囲んで封止するシール壁6が設けられる。
【0026】
透明電極1及び対向透明電極3のいずれか一方の表面は、側鎖にメタロセンを有するポリマー(以下、本明細書では「メタロセンポリマー」と称する場合がある)が化学結合によって固定化される。メタロセンポリマーを配さない他方の透明電極では、電圧の印加によって電解液5中の金属イオンが還元されて金属が生ずる。
以下、メタロセンポリマーを固定化した電極を「第一の電極」と称し、他方の電極を「第二の電極」と称して説明する。
【0027】
更に以下では、第一の電極(側鎖にメタロセンを有するポリマー、このポリマーの電極への固定化方法など)、第二の電極、電解液、及びその他本発明の調光デバイスの構成について詳細に説明する。
【0028】
<第一の電極>
(透明電極)
メタロセンポリマーを固定化する第一の電極は、透明電極である。透明電極に使用する材料としては、導電性のある物質であれば特に制限はない。たとえば、銀、金、白金、アルミニウム、銅等の導電性の高い金属、ITO、FTO、SnO、IZO、ZnO、AZOといった金属酸化物など公知の材料を用いることができる。酸化還元反応の耐久性の観点から、好ましくは、FTO、AZOであり、高透過率、低抵抗な透明電極の観点からはITO、FTO、AZOであり、より好ましくはITOである。なお、これらの金属、金属酸化物に関しては、適宜積層構造としてもよい。
【0029】
(基板)
第一の電極である透明電極は、基板上に備えられる。基板としては、基板上に透明電極を形成でき、かつ、電解液により溶解、変形することなく電解液を封止できるものであればどのようなものでもよい。その材質としては、石英ガラス、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス等のガラス、金属、セラミックスの他、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、等の熱可塑性ポリエステル樹脂類、ポリアミド、ポリカーボネート、酢酸セルロース等のセルロースエステル樹脂類、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素系樹脂類、ポリオキシメチレン等のポリエーテル類、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、メチルペンテンポリマー等のポリオレフィン類、ゼオノア、ゼオネックス(以上日本ゼオン製)、アートン(JSR製)といった製品銘柄に代表されるシクロオレフィン系樹脂類及びポリイミド−アミドやポリエーテルイミド等のポリイミド系樹脂類などを挙げることができる。
特に、外光を調光する用途には石英ガラス、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス等のガラスを基板として用いることが好ましく、携帯電話、デジタルカメラ等のモバイル小型機器の用途には、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ゼオノア、ゼオネックス(以上日本ゼオン製)が好適である。
【0030】
(側鎖にメタロセンを有するポリマー)
メタロセンとは、中心金属(Fe、Ti、Zr、Ni等)にシクロペンタジエニルアニオンが上下2個配位結合した有機金属である。メタロセンの中心金属は、電気化学的に酸化・還元反応し、その価数を可逆的に増減させる。
特に中心金属がFeとしたフェロセンは、電気化学反応の繰り返し安定性に優れる化合物であるため、本発明に適する。なお、フェロセンは、酸化によりFe2+からFe3+に価数が変化し、発生した電子が電解液中の金属イオンの還元に利用され、金属が析出する。
【0031】
本発明における「側鎖にメタロセンを有するポリマー」とは、ポリマー主鎖に対してメタロセンが側鎖として結合してなるものをいう。例えば、メタロセン(例えば、フェロセン)に、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基などを導入し、これらの基を一般的な方法で重合すれば、メタロセンポリマーを得ることができる。更に、電気化学反応に影響がなければ、メタロセンポリマーに、カルボキシル基、ベンゾイル基、アルキル基、アミノ基などの任意の官能基を導入してもよい。
【0032】
本発明におけるメタロセンポリマーは、下記一般式(I)で表されるポリマーであることが好ましい。
【0033】
【化1】



【0034】
一般式(I)において、Rは水素原子又はメチル基を表し、Yは単結合又は二価の連結基を表し、MはFe、Ti、Zr又はNiを表す。
一般式(I)におけるYは、単結合又は二価の連結基を表し、単結合又は下記構造式Yであることが好ましい。
【0035】
【化2】



【0036】
構造式Y中、Rは、水素原子又はアルキル基を表す。Rで表すアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がより好ましい。Rとしては特に水素原子又はメチル基が特に好ましい。
【0037】
一般式(I)におけるMは、Feであることが好ましい。つまり、本発明におけるメタロセンポリマーはフェロセン(フェロセン誘導体)を側鎖に有するポリマー(フェロセン誘導体のポリマー、以下「フェロセンポリマー」と称する場合がある)であることが好ましい。
フェロセンポリマーの具体例を下記に挙げるが、これらの具体例に限定されない。
【0038】
【化3】



【0039】
なお、本発明において「ポリマー」とは、オリゴマーを含む概念である。メタロセンポリマーの分子量は特に制限されないが、適切な電荷移動量、電荷移動速度、呈色濃度、透明度等を考慮すれば、前記一般式(I)におけるnは、2〜100000であることが好ましく、10〜1000であることがより好ましい。
【0040】
(化学結合)
メタロセンポリマーを第一の電極に化学結合する方法としては、第一の電極を表面修飾して、その修飾部位とメタロセンポリマーが有する官能基との間で、アミド結合、イミド結合、ウレア結合、エステル結合、共有結合などを形成させる方法が挙げられる。アミド結合、イミド結合、ウレア結合、エステル結合、共有結合などの形成には、公知の方法を適用することができる。
【0041】
透明電極を表面修飾する方法としては、ケイ素、チタン、アルミニウム及びジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むカップリング剤を用いる方法がある。このカップリング剤は、電極表面と反応する官能基として、Cl基などのハロゲン原子、OCH基、OC基などのアルコキシ基を有し、例えば、トリクロロシリル基、トリエトキシシリル基、トリメトキシシリル基などを有することが好ましい。
【0042】
カップリング剤で第一の電極を表面修飾する場合、第一の電極は、アルコール、純水などで洗浄した後、UVオゾン処理することが好ましい。
UVオゾン処理後の第一の電極にカップリング剤を処理する方法としては、以下の公知の方法を挙げることができる。
【0043】
(1)脱水トルエンにカップリング剤を溶解させ、第一の電極基板を該溶媒に1時間以上浸漬させたのち、再洗浄する。
(2)脱水トルエンにカップリング剤を溶解させ、第一の電極基板に塗布し、100℃に加熱した炉に基板を静置する。
(3)アルコールと純水の混合溶液にカップリング剤を溶解させ、第一の電極基板に塗布、加熱乾燥後、再洗浄する。
(4)第一の電極基板にカップリング剤を直接塗布し、加熱乾燥後、再洗浄する。
【0044】
カップリング剤にメタロセンポリマーを結合する方法としては、以下の2つの方法を挙げることができる。
【0045】
第一の方法としては、例えば、アミノ基、ウレイド基、スルフィド基、メルカプト基、カルボキシル基などの任意の官能基を有するカップリング剤を透明電極に結合させ、この官能基とメタロセンポリマーの官能基とを反応させて、アミド結合、イミド結合、ウレア結合、エステル結合、などを形成する方法がある。
具体的には、例えばアミノ基を有するカップリング剤の場合には、カルボン酸基を有するメタロセンポリマーを組み合わせてアミド結合を形成するなどの方法が挙げられる。
【0046】
第一の方法で、カップリング剤との連結のためにカルボキシル基、ベンゾイル基、アルキル基、アミノ基などの任意の官能基を導入したメタロセンポリマーの具体例としては、例えば、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基、グリシジル基、メルカプト基などを有するメタロセンポリマーを挙げることができる。
【0047】
第一の方法によって電極とメタロセンポリマーとを結合する場合に適用するカップリング剤としては、下記一般式(1)で表されるカップリング剤が好適である。
【0048】
【化4】



【0049】
一般式(1)において、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基を表し、Lは単結合又は二価の連結基を表し、Aはアミノ基、ウレイド基、スルフィド基、メルカプト基、グリシジル基、イソシアネート基を表す。
【0050】
一般式(1)におけるXは、好ましくは、塩素原子、メトキシ基、エトキシ基である。
一般式(1)におけるLは、単結合又は炭素数1〜18のアルキレン基、アミノ基などの二価の連結基であることが好ましい。
【0051】
また、カップリング剤にメタロセンポリマーを結合する第二の方法としては、メタロセンモノマーの重合反応と、カップリング剤との化学結合を同時に行う方法である。このような方法として、ラジカル重合を用いた表面グラフト方法を挙げることができる。本発明おいて表面グラフト方法の適用は、メタロセンポリマーの重合度を高くでき、かつ基板とメタロセンポリマーの密着性が高い点で好適である。
【0052】
表面グラフト方法は、以下の方法を採用することができる。
(1)ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基のいずれかの含有するメタロセンのモノマー溶液を作製し、
(A)アゾ基を導入したカップリング剤を処理した第一の電極基板に、前記メタロセン溶液を塗布し、加熱する方法、又は
(B)紫外線照射により開裂し、ラジカルを発生する結合を有する芳香族ケトン基、ベンジルイミド基、トリクロロメチル基、ベンジルクロライド基など有するカップリング剤を処理した第一の電極基板に、前記メタロセン溶液を塗布し、紫外線照射する方法。
【0053】
(2)ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、又はアリル基を有するカップリング剤により処理された第一の電極基板に、メタロセンモノマーとラジカル重合開始剤を溶解した溶液を塗布し、加熱及び/又は紫外線照射する方法。
【0054】
−上記1−Aの表面グラフト方法−
ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基のいずれかの含有するメタロセンモノマーとしては、例えば、ビニルフェロセン、ジビニルフェロセン、アクリロイルフェロセン、メタクリロイルフェロセンなどを用いることが好ましい。
【0055】
メタロセンのモノマー溶液の溶媒は、後の加熱工程やメタロセンモノマーの溶解度、重合中の溶媒の揮発などを考慮して、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの公知の非プロトン性極性溶媒を用いることが好ましい。
【0056】
メタロセンのモノマー溶液中のメタロセンモノマー濃度は、0.05mol/l〜2mol/lであることがメタロセンポリマーの高分子量化の観点から好ましい。
【0057】
アゾ基を導入したカップリング剤としては、Polymer Commutations Vol.32,No.2,P.50〜53、又はMacromocules,Vol.31,No.3,P592〜600などを参照できるが、具体的には、例えば下記一般式(2)で表されるカップリング剤が好適である。
【0058】
【化5】



【0059】
一般式(2)において、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基を表し、L及びL2’は各々独立に、単結合又は二価の連結基を表し、Bはアゾ基(−N=N−)、R及びR’は各々独立に任意の官能基を表す
【0060】
一般式(2)におけるXは、好ましくは、塩素原子、メトキシ基、エトキシ基である。
一般式(2)におけるL及びL’は、各々独立に、単結合又は炭素数1〜18のアルキレン基であることが好ましく、R及びR’は各々独立にアミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、ウレイド基などが好ましい。なお、LとL’は同一でも異なっていてもよく、また、RとR’は同一でも異なっていてもよい。
【0061】
また、上記1−Aの表面グラフト方法における加熱温度は、カップリング剤の種類によるが、アゾ基の半減期と反応時間の観点から、0℃〜100℃であることが好ましく、40℃〜80℃であることが好ましい。
【0062】
−上記1−Bの表面グラフト方法−
ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基のいずれかの含有するメタロセンモノマーとしては、上記1−Aの表面グラフト方法で例示のメタロセンモノマーを挙げることができ、好ましくはビニル基、メタクリロイル基を有するメタロセンモノマーである。
【0063】
上記1−Bの表面グラフト方法におけるメタロセンのモノマー溶液の溶媒は、メタロセンモノマーの溶解度、重合中の溶媒の揮発などを考慮して、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの公知の非プロトン性極性溶媒を用いることが好ましい。
【0064】
メタロセンのモノマー溶液中のメタロセンモノマー濃度は、0.05mol/l〜2.0mol/lであることがメタロセンポリマーの高分子量化の観点から好ましい。
【0065】
紫外線照射により開裂し、ラジカルを発生する結合を有する芳香族ケトン基、ベンジルイミド基、トリクロロメチル基、ベンジルクロライド基など有するカップリング剤としては、例えば、特開2006−350237号公報などを参照できるが、このようなカップリング剤としては具体的には、例えば、下記化合物を挙げることができる。
【0066】
【化6】



【0067】
【化7】



【0068】
【化8】



【0069】
また、上記1−Bの表面グラフト方法で照射する紫外線は、用いるカップリング剤の種類にもよるが、波長300nm〜400nmであることが好ましく、350nm〜380nmであることがより好ましい。
【0070】
−上記2の表面グラフト方法−
ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、又はアリル基含有するカップリング剤としては、具体的には例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリクロロシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリクロロシラン、アリルトリメトキシラシラン、3−(N−アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシランなどを挙げることができ、下記一般式(3)で表されるカップリング剤が好適である。
【0071】
【化9】



【0072】
一般式(3)において、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基を表し、Lは単結合又は二価の連結基を表し、Dはビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、又はアリル基を有する官能基を表す。
【0073】
一般式(3)におけるXは、好ましくは、塩素原子、メトキシ基、エトキシ基である。
一般式(3)におけるLは、単結合又は炭素数1〜18のアルキレン基、アミノ基、などの二価の連結基であることが好ましい。
【0074】
ラジカル重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、アゾジイソブチロニトリル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン等を挙げることができる。
【0075】
上記2の表面グラフト方法におけるメタロセンモノマー溶液の溶媒は、メタロセンモノマーやラジカル開始剤の溶解度重合中の溶媒の揮発などを考慮して、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの公知の非プロトン性極性溶媒を用いることが好ましい。
【0076】
メタロセンモノマー溶液中のメタロセンモノマー濃度は、0.05mol/l〜2.0mol/lであることがメタロセンポリマーの高分子量化の観点から好い。
メタロセンモノマー溶液中のメタロセンモノマーとラジカル重合開始剤の配合比率は、メタロセンモノマーに対して0.01質量%〜10質量%であることが好ましく0.1質量%〜5質量%であることがより好ましい。
【0077】
前記2の表面グラフト方法では、紫外線照射と加熱の一方を施してグラフトポリマーを生成してもよいし、両者を施して行ってもよい。
【0078】
前記2の表面グラフト方法で紫外線を照射する場合、波長300nm〜400nmの紫外線を適用することが好ましく、350nm〜380nmであることがより好ましい。
【0079】
前記2の表面グラフト方法で加熱する場合、その加熱温度はラジカル重合開始剤の種類や半減期にもよるが、メタロセンポリマーの高分子量化の観点から、40℃〜120℃であることが好ましい。
【0080】
また、電極表面に形成されたメタロセンポリマー層の厚さは、対極の金属の析出量に伴う着色濃度の観点から、30Å〜1000Åであることが好ましい。
【0081】
<第二の電極>
メタロセンポリマーを配さない他方の透明電極(第二の電極)の表面では、電圧の印加によって電解液5中の金属イオンが還元されて金属が生ずる。
第二の電極として用いる透明電極は、第一の電極で説明したものを同様に適用することができる。また第二の電極を設ける基板も、第一の電極で説明したものを同様に適用することができる。
【0082】
第二の電極付近では、金属イオンの還元によって金属が析出するとともに電解液中の支持電解質も還元されやすい。例えば、支持電解質がヨウ化物イオンの場合、ヨウ素が発生する。ヨウ素は気体のため電解液中で拡散し、レドックス電位の安定性が損われる場合がある。
そこで、第二の電極の表面はカップリング剤によって処理されることが好ましい。カップリング剤による第二の電極の被覆によりヨウ素の発生が抑えられる。
【0083】
より好ましくは、第二の電極は、2個以上のアミノ基を有するカップリング剤によって処理することが好ましい。2個のアミノ基間では、金属イオンがトラップされ、この金属イオンを核にして、金属の析出、溶解が可能になる。すなわち第二の電極から離れた位置で電気化学反応するために、電極自身の電気化学反応を防止でき、抵抗の上昇やクラックの発生を抑制できる。また、カップリング剤同士の共有結合により、第二の電極と電解液の接触面積が低下し、電解液中の支持電解質による電流発生を抑制でき、電圧降下が低減できる。
【0084】
第二の電極に適用するカップリング剤は、第一の電極に適用するカップリング剤と同様に、ケイ素、チタン、アルミニウム及びジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1種の元素有し、電極表面と反応する官能基としては、Cl基、OCH基、OC基を用いることができる。例えば、カップリング剤は、トリクロロシリル基、トリエトキシシリル基、トリメトキシシリル基などを有することが好ましい。
ケイ素等の前記元素と前記アミノ基の間は、エチレン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エステル等を介して連結されていてもよい。
【0085】
2個以上のアミノ基を有するカップリング剤の具体例としては、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシランなどの市販のシランカップリング剤を挙げることができる。
カップリング剤が有するアミノ基の数は、2〜4個であることが好ましく、2個であることが更に好ましい。
【0086】
2個以上のアミノ基を有するカップリング剤による第二の電極の処理は、第一の電極で説明したカップリング剤の処理方法と同様である。
【0087】
<電解液>
電解液は、調光のため電極に析出させる金属イオンを含む。この金属イオンとしては、銀、鉛、銅、ビスマスなどを挙げることができるが、応答速度、遮光性能の観点から、銀イオンを用いることが好ましく、ハロゲン化銀を用いることがより好ましく、電解液への溶解性の観点から特にヨウ化銀を用いることが好適である。
電解液中のハロゲン化銀の濃度は、析出による着色濃度の観点から、0.5〜3.0mol/lの範囲が好ましく、0.5〜2.0mol/lの範囲がより好ましい。
【0088】
また、電解液は支持電解質を含む。支持電解質としては、溶媒に溶解し、かつ溶解液が導電性を有するのであれば特に制限されないが、上記ヨウ化銀を用いる場合には、ヨウ素化合物であるヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化アンモニウム、ヨウ化テトラメチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラ−N−ブチルアンモニウムおよびヨウ化テトラ−N−ヘキシルアンモニウム用いることが好ましい。
【0089】
支持電解質としてヨウ素化合物を用いた場合には、ハロゲン化銀を溶解するには、ヨウ素化合物の濃度をハロゲン化銀濃度の0.5〜2倍とすることが好ましく、支持電解質による電流を抑制するためには、ハロゲン化銀に対し支持電解質濃度を0.5〜1.0倍の濃度にすることがより好ましい。
【0090】
応答速度は銀の析出速度によって決まるが、この銀の析出反応は銀めっきと同様、拡散律速である。従って、表示速度を大きくするには、電解質である表示組成物中の銀イオン濃度を高くする必要がある。この点では、支持電解質としてヨウ化アンモニウムを使用することが好適である。
【0091】
なお、本発明の趣旨に反しない限り、本発明に係る表示用組成物に使用する支持電解質
としては、前述以外の支持電解質を使用してもよい。このような支持電解質としては、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、チオシアン酸イソシアネート、硫化ナトリウムなどの、過塩素酸塩、チオシアン酸塩、硫酸塩等のその他の支持電解質を挙げることができる。
【0092】
また、電解液には添加剤として、メルカプトベンゾイミダゾール、クマリン、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸カリウム、トリエタノールアミン等を適宜添加してもよい。
【0093】
添加剤の具体例としては、アゾール類、メルカプト化合物類、チオケト化合物、アザインデン類、ベンゼンチオスルホン酸、ベンゼンスルフィン酸やベンゼンスルホン酸アミド、チオ尿素誘導体が好ましく用いられる。
アゾール類の例には、ベンゾチアゾリウム塩、ニトロイミダゾール類、ニトロベンズイミダゾール類、クロロベンズイミダゾール類、ブロモベンズイミダゾール類、ニトロインダゾール類、ベンゾトリアゾール類およびアミノトリアゾール類が含まれる。
メルカプト化合物類の例には、メルカプトチアゾール類、メルカプトベンゾチアゾール類、メルカプトベンズイミダゾール類、メルカプトチアジアゾール類、メルカプトテトラゾール類(例、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール)、メルカプトピリミジン類およびメルカプトトリアジン類が含まれる。
チオケト化合物の例には、オキサゾリンチオンが含まれる。
アザインデン類の例には、トリアザインデン類、テトラアザインデン類(例、4−ヒドロキシ置換(1,3,3a,7)テトラアザインデン類)およびペンタアザインデン類が含まれる。
その他のより詳細な具体例としては、下記の特許に記載されている化合物などが挙げられる。
【0094】
米国特許4400463号明細書; アザインデン類+チオエーテルペプタイザー
米国特許4783398号明細書; ジチアゾリジン−2,4−ジオン
米国特許4713323号明細書; アミノピラゾロビリミジン
米国特許4983508号明細書; ビスピリジニウム塩
米国特許5185239号明細書; トリアミノピリミジン
特開平3−212639号公報; アミノチオエーテル
特開平4−283742号公報; チオ尿素誘導体
特開平11−305374号公報; メルカプト化合物
特開平11−15092号公報; メルカプト化合物
【0095】
更に、電解液は非プトロン性極性溶媒を含有する。
電解液の溶媒は、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、炭酸ジエチル、炭酸プロピレンと炭酸エチレンの混合溶媒、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、N−メチルホルムアミド、N−メチルプロピオンアミドおよびホルムアミド等の公知の溶媒を用いることができる。
なお、上記いずれの有機溶媒についても、単独で使用しても混合物として使用してもよい。また、本発明の趣旨に反しない限り、他の溶媒が共存していてもよいと考えられる。上記いずれの有機溶媒についても、二種以上の有機溶媒が共存すると、融点降下の効果を利用することができるので好ましい場合が多い。
【0096】
電解液は、架橋された高分子によって担持され、固形化、高粘度化、又はゲル化されていてもよく、このためにポリマーを含有させることができる。電解液を固形化、高粘度化、又はゲル化すると取扱が容易になり、装置から洩れ出す心配も少なくなる。電解液中のポリマーの割合については特に制限はなく、実情に応じて任意に定めることができるが、
【0097】
ここで固形化とは、流動性を有さない状態とすることを意味し、いわゆる固体であってもよいが、たとえば粘土のように変形可能の状態であってもよい。
電解液を固形化、高粘度化、又はゲル化する場合、上記金属イオン、上記電極表面処理のためのポリマーおよび溶媒を含む状態で固形化、高粘度化、又はゲル化することが好適である。
【0098】
固形化、高粘度化、又はゲル化のためのポリマーについては特に制限はなく、ポリビニルピロリドン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキサイド、ポリメチルメタクリレート等の公知の材料を用いることができる。
また、ビニルモノマーやビニルオリゴマー等のビニル重合性化合物を重合したものでもよい。
【0099】
これらのポリマーは架橋物であることが好ましい。架橋物であればゲル状になり、少量であっても表示用組成物を固形状態または高粘度状態に保つことができ、従って、調光用組成物が外部に漏洩する恐れが少なくなる。
【0100】
固形化、高粘度化、又はゲル化のために用いることができるビニル重合性化合物としては、ビニル基を有しているものであればよく、例えば、
(1)単官能モノマーとして、ビニルアルコール、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレートなど、
(2)2官能モノマーとして、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなど、
(3)3官能モノマーとして、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレートなど、
(4)4官能モノマーとして、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなど、
(5)6官能モノマーとして、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなど、
の公知の材料が挙げられる。
【0101】
上記ビニル重合性化合物のうち、一分子中にビニル基を二個以上有する2官能以上のビニル重合性化合物の場合には、架橋ポリマーを容易に得ることができ好適である。
【0102】
また、モノマー中のアルキル鎖、エチレンオキサイド鎖、プロピレンオキサイド鎖長は任意でよい。
これらのモノマーは、電解液の全量に対し5〜20質量%であることが好ましく、5〜12質量%であることが好ましい。
【0103】
電解液に含有する重合開始剤としては、アゾ系重合開始剤、過酸化物などの公知の材料が挙げられる。
電解液中の重合開始剤の含有量は、上記モノマー100質量部に対して、0.5〜30質量部であることが好ましく、0.1〜5質量部であることが好ましい。
電解液中のモノマーを前記重合開始剤により重合するには、熱、光などを付与して重合することができる。
【0104】
また、電解液には、第一の電極と第二の電極の間隔を一定に保つためのスペーサーを含有することができる。
本発明に係るスペーサーとしては、粒子状、柱状のものを用いることができるが、開口率が高いという点では透明電極との接触面積が少ない粒子状の方が好ましい。スペーサーに用いることができる材料としては、表示用組成物中の他の成分に不溶のものであればどのようなものでもよい。たとえば、ガラス、シリカ、アルミナ、ジルコニア、窒化アルミニウム等の各種セラミックス、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン−ジビニルベンゼンなどの樹脂、鉄、ステンレス等の金属を好適に用いることができる。
【0105】
粒子状スペーサーのサイズ(第一の電極と第二の電極の間隔)は、目的に応じて適宜選択することができるが、一般的には、平均粒径で20〜500μmの範囲が好ましい。粒径のばらつきは小さい方が好ましいまた、粒子状スペーサーの形状は真球状でなくてもよく、粒子表面に他の微粒子が付着していてもよい。粒子表面に凹凸があってもよい。
【0106】
<他の構成部分>
電解液と透明電極の間に、酸化ケイ素、酸化アルミニウムなどの無機材料層、ポリアミドなどの有機材料膜を形成してもよい。これにより、電解液の密着性向上、ガスや溶媒に対するバリヤ性向上といった効果が得られる。
本発明に係るエレクトロデポジション方式の調光システムは、透明電極同士が対向するように構成される。スペーサーを介して透明電極を接着剤で貼り合せる場合、この接着剤としては、光硬化、熱硬化、ホットメルト型やエポキシ系の2液混合型などを用いることができる。なお、電解液に含まれる溶媒への溶解性が低いことが必要であり、接着剤としては、オレフィン系樹脂からなるホットメルト型接着剤を用いるのが好ましい。
【0107】
本発明のエレクトロデポジション方式の調光デバイスは、基板面内で均一の呈色濃度となり、透明時の透明度が高いため、大型基板へも好適に適用できる。また、応答速度が速いなどの特徴を有する。
【0108】
2.エレクトロデポジション方式の反射型表示装置
本発明のエレクトロデポジション方式の反射型表示装置は、前述のエレクトロデポジション方式の調光デバイスにおいて、電解液が白色顔料を含有する以外は同様であり、同様の構成については説明を省略する。また、エレクトロデポジション方式の反射型表示装置では、電解液がゲル状高分子によって担持され、該ゲル状高分子中に白色顔料が分散されていることが、白色表示時の反射率を高める観点から好適である。
【0109】
白色顔料としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、リトポン、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化珪素、三酸化アンチモン、燐酸チタニウム、酸化亜鉛、鉛白、酸化ジルコニウム等の無機顔料やポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、等の有機微粉末等を挙げることができる。
これらの顔料の中でも、二酸化チタン、酸化アルミニウム、チタン酸バリウムの使用が好適であり、二酸化チタンが特に効果的である。二酸化チタンは、ルチル型およびアナターゼ型のいずれでもよいが、白色度を優先する場合はアナターゼ型が、また隠蔽性を優先する場合はルチル型が好ましい。白色度と鮮鋭度両方を考慮してアナターゼ型とルチル型をブレンドして用いてもよい。これらの二酸化チタンは、サルフェート法、クロライド法のいずれの方法で製造されたものであってもよい。
【0110】
二酸化チタンの具体例としては、JR、JRNC、JR−301、403、405、600A、605、600E、603、701、800、805、806、JA−1、C、3、4、5、MT−01、02、03、04、05、100AQ、100SA、100SAK、100SAS、100TV、100Z、100ZR、150W、500B、500H、500SA、500SAK、500SAS、500T、SMT−100SAM、100SAS、500SAM、500SAS(テイカ社製)、CR−50、50−2、57、58、58−2、60、60−2、63、67、80、85、90、90−2、93、95、97、953、Super70、PC−3、PF−690、691、711、736、737、739、740、742、R−550、580、630、670、680、780、780−2、820、830、850、855、930、980、S−305、UT771、TTO−51(A)、51(C)、55(A)、55(B)、55(C)、55(D)、S−1、S−2、S−3、S−4、V−3、V−4、MPT−136、FTL−100、110、200、300(石原産業社製)、KA−10、15、20、30、KR−310、380、KV−200、STT−30EHJ、65C−S、455、485SA15、495M、495MC(チタン工業社製)、TA−100、200、300、400、500、TR−600、700、750、840、900(富士チタン工業社製)などが挙げられ、これらを単独、もしくは混合して用いてもよい。
【0111】
また、高分子ゲルへの分散性を向上させるため、二酸化チタンは、官能基として、アミノ基、グリシジル基、ウレイド基、イシアネート基、メルカプト基、ビニル基、アリル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、スチリル基を有するシランカップリング剤などの公知の材料で処理してもよい。
【0112】
または、分散剤として、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、シアノエチル化セルロースなどの公知の可溶性高分子を添加してもよい。可溶性高分子の使用量としては、電解質層中に0.5質量%〜10質量%含有させることが好ましく、0.5質量%〜7質量%含有させることがより好ましく、1質量%〜5質量%含有させることが更に好ましい。
【0113】
白色顔料は、十分な白色度を得るために、その種類や使用量を適宜決定すればよい。
白色顔料の使用量としては、一般的に、電解質層中に質量あたり10%〜70%含有させることが好ましく、質量あたり15%〜60%含有させることがより好ましく、質量あたり20%〜60%含有させることが最も好ましい。
【0114】
前記白色顔料の分散方法としては、振動ミル、ロールミル、ボールミル、ビーズミル、ペイントシェーカー、ホモジナイザー等を挙げることができ、白色顔料の高い分散性の観点から、ロールミル、ボールミル、ビーズミルがより好適である。
【0115】
また、エレクトロデポジション方式の反射型表示装置では、一方の電極基板の背面に反射層を設けることが好ましい。前記反射板としては、背面へのAl蒸着やAl蒸着フィルムの接着などの方法を適用できる。
【0116】
本発明のエレクトロデポジション方式の反射型表示装置は、基板面内で均一の呈色濃度となり、大型基板へも好適に適用できる。また、応答速度が速く、白色表示時の反射率が高いなどの特徴を有する。
【実施例】
【0117】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、実施例は本発明を説明するためのものであり、本発明は実施例に限定されるものでない。
【0118】
[実施例1]
<第一の透明電極の作製>
基板サイズが100×100mmのITO電極基板(10Ω/□)のITO面に、UVオゾンクリーナー(UV24、日本レーザー電子社製)を用いて、5分間UVオゾン処理を行った。脱水トルエンに下記化合物(化合物1)1.0質量%を溶解し、溶解液にITO電極基板を12時間浸漬した。室温下で乾燥後、トルエン、アセトンを用いて、基板洗浄し、再度乾燥させた。
次に、N,N−ジメチルアセトアミドにビニルフェロセン(東京化成社製)を30質量%溶解させたフェロセンモノマー溶液を作製し、下記化合物1で処理されたITO基板を浸漬し、カバーガラスを乗せた状態で露光機(UVX 02516S1LP01, 1.5kW、ウシオ電機社製)にて、5分間露光した。
再度、アセトンで洗浄し、フェロセンポリマーが固定化されたITO電極を作製した。エリプソメーターDHA−XA/S4(溝尻光学工業社製)で測定したところ、フェロセンポリマー層が65Åの厚さで形成されていた。
【0119】
【化10】



【0120】
<第二の透明電極の作製>
基板サイズが100×100mmのITO電極基板(10Ω/□)のITO面に、UVオゾンクリーナー(UV24、日本レーザー電子社製)を用いて、5分間UVオゾン処理を行った。N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン5質量部を、純水5質量部とイソプロピルアルコール90質量部に溶解し、室温下で1時間撹拌した。作製した混合液をITO電極基板に滴下し、表面温度80℃のホットプレート上で5分間乾燥させた。イソプロピルアルコールおよび純水を用いて、超音波洗浄後、乾燥させて、カップリング処理した基板を作製した。
【0121】
<テスト用調光装置の作製>
第一の透明電極と第二の透明電極を、ギャップ75μmで張り合わせた。次に、N−メチルホルムアミドに、ヨウ化銀(1.0mol/L)およびヨウ化アンモニウム(0.5mol/L)を溶解した電解液を、電極間に注入し、注入口をアラルダイトスタンダード(ニチバン製)でふさぐことで、テスト用調光装置−1を作製した。
【0122】
<評価>
テスト用調光装置−1に電圧−5.0Vを印加すると(GND:第二の透明電極)、調光装置の全体が遮光され、基板の中心部および取り出し電極近傍部ともに、波長550nmでの透過率は1%以下になった。
【0123】
一方、回路を開放すると、速やかに銀が溶解し、60秒以内で透明状態になった。このときの波長550nmでの透過率は82%であり、波長450nmの透過率は82%であった。
【0124】
[実施例2](第二の透明電極におけるカップリング剤の種類の変更)
第二の透明電極のシランカップリング剤として、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシランを用いた以外には、実施例1と同様にテスト用調光装置−2を作製した。
【0125】
テスト用調光装置−2に電圧−5.0Vを印加すると(GND:第二の透明電極)、調光装置の全体が遮光され、基板の中心部と取り出し電極近傍部ともに、波長550nmでの透過率は1%以下になった。一方、回路を開放すると、速やかに銀が溶解し、60秒以内で透明状態になった。このときの波長550nmでの透過率は82%であり、波長450nmの透過率は82%であった。
【0126】
[実施例3](高分子固体電解質)
実施例1と同様の第一の透明電極と第二の透明電極を、ギャップ75μmで張り合わせた。
実施例1の電解液88質量部に、2官能モノマー:2−ヒドロキシ1‐アクリロキシ3−メタクリロキシプロパン(商品名:701A、新中村化学工業社製)10質量部とポリエチレングリコールジメタクリレート(商品名:ポリエチレングリコール(1000)ジメタクリレート、Polysciences,Inc.製)2質量部を溶解し、重合開始剤:2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン(商品名:DAROCUR1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.6質量部を添加し、高分子固体電解質の前駆体溶液を作製した。
この前駆体溶液を電極間に注入し、紫外線照射により硬化し、高分子固体電解質を得た。注入口をアラルダイトスタンダード(ニチバン製)でふさぐことで、テスト用調光装置−3を作製した。
【0127】
テスト用調光装置−3に電圧−5.0Vを印加すると(GND:第二の透明電極)、調光装置の全体が遮光され、基板の中心部と取り出し電極近傍部ともに、波長550nmでの透過率は1%以下になった。
一方、回路を開放すると、速やかに銀が溶解し、3分以内で透明状態になった。このときの波長550nmでの透過率は78%であり、波長450nmの透過率は78%であった。
【0128】
[実施例4](フェロセンポリマーの結合方法の変更)
<第一の透明電極の作製>
メチルエチルケトン300質量部中に、ビニルフェロセン30質量部を溶解し、三口フラスコ中で1時間窒素バブリングし、窒素雰囲気下で撹拌しながら、オイルバスにより60℃まで加熱した。カルボキシル基を有する重合開始剤VA-057(和光純薬商品名)0.6質量部をメチルエチルケトン10質量部に溶解し、1時間かけながら三口フラスコ内に滴下し、その後7時間、60℃で加熱した。メチルエチルケトンをエバポレーターで回収し、末端にカルボン酸が導入されたフェロセンポリマーを得た。
【0129】
基板サイズが100×100mmのITO電極基板(10Ω/□)のITO面に、UVオゾンクリーナー(UV24、日本レーザー電子社製)を用いて、5分間UVオゾン処理を行った。3−アミノプロピルトリメトキシシラン5質量部を、純水5質量部とイソプロピルアルコール90質量部に溶解し、室温下で1時間撹拌した。作製した混合液をITO電極基板に滴下し、表面温度80℃のホットプレート上で5分間乾燥させた。イソプロピルアルコールおよび純水を用いて、超音波洗浄後、乾燥させて、カップリング処理した基板を作製した。
【0130】
フェロセンポリマーをN,N−ジメチルアセトアミドに溶解し、3−アミノプロピルトリメトキシシランで処理したITO電極基板にスピンコートし、200℃で1時間加熱した。基板をN,N−ジメチルアセトアミド、アセトンで洗浄し、フェロセンポリマーが固定された基板を作製した。
フェロセンポリマー層の厚さを実施例1と同様の方法で測定したところ、800Åであった。
【0131】
<第二の透明電極の作製>
実施例1と同様に、第二の透明電極を作製した。
【0132】
<テスト用調光装置の作製およびその評価>
実施例4で作製した第一の透明電極を用いた以外は実施例1と同様にして、テスト用調光装置−4を作製した。また、その評価も実施例1と同様にして行なった。
テスト用調光装置−4に電圧−5.0Vを印加すると(GND:第二の透明電極)、調光装置の全体が遮光され、基板の中心部と取り出し電極近傍部ともに波長550nmでの透過率は1%以下になった。
一方、回路を開放すると、速やかに銀が溶解し、3分以内で透明状態になった。このときの波長550nmでの透過率は75%であり、波長450nmの透過率は75%であった。
【0133】
[実施例5](フェロセンポリマーの種類の変更)
実施例1のビニルフェロセンをメタクリロフェロセンに変えた以外は実施例1と同様にしてテスト用調光装置−5を作製した。フェロセンポリマー層の厚さを実施例1と同様の方法で測定したところ、180Åであった。
このテスト用調光装置−5に電圧−5.0Vを印加すると(GND:第二の透明電極)、調光装置の全体が遮光され、基板の中心部と取り出し電極近傍部ともに波長550nmでの透過率は1%以下になった。一方、回路を開放すると、速やかに銀が溶解し、60秒以内で透明状態になった。このときの波長550nmでの透過率は75%であり、波長450nmの透過率は75%であった。
【0134】
[実施例6](白色の高分子固体電解質)
実施例1と同様の第一の透明電極と第二の透明電極を、ギャップ75μmで張り合わせた。
実施例1の電解液86質量部に、シアノエチル化セルロース(商品名:CR-S、信越化学工業社製)2質量部と、2官能モノマー:2−ヒドロキシ1‐アクリロイキシ3−メタクリロキシプロパン(商品名:701A、新中村化学工業社製)10質量部とポリエチレングリコールジメタクリレート(商品名:ポリエチレングリコール(1000)ジメタクリレート、Polysciences,Inc.製)2質量部を溶解し、重合開始剤:2−ヒドロキシー2−メチルプロピオフェノン(商品名:DAROCUR1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.6質量部を添加し、高分子固体電解質の前駆体溶液を作製した。
この前駆体溶液に二酸化チタン(商品名:TITANIX JR-301、テイカ社製)20質量部を混合し、撹拌装置(商品名:ARE−250、シンキー社製)用い、回転数2000rpm、5分間による撹拌と、回転数1000rpm、3分間による脱泡処理を行った。
この高分子固体電解質の前駆体溶液を電極間に注入し、紫外線照射により硬化し、高分子固体電解質を得た。注入口をアラルダイトスタンダード(ニチバン製)でふさぎ、第二の透明電極の背面部にAl蒸着フィルムを貼り合わせ、テスト用反射型表示装置を作製した。
【0135】
反射型表示装置に電圧−5.0Vを印加すると(GND:第二の透明電極)、表示装置の全体が黒に発色し、基板の中心部と取り出し電極近傍部ともに、反射率(Y値)は2%になった。
一方、回路を開放すると、速やかに銀が溶解し、3分以内で白色状態になった。このときの反射率(Y値)は82%であった。
【0136】
[比較例1]
実施例1の第二の透明電極と、未処理のITO電極極を、ギャップ75μmで張り合わせた。次に、N−メチルホルムアミドに、ヨウ化銀(1.0mol/L)、ヨウ化アンモニウム(0.5mol/L)、フェロセン(0.1mol/L)を溶解した電解液を、電極間に注入し、注入口をアラルダイトスタンダード(ニチバン製)でふさぐことで、比較のテスト用調光装置−1を作製した。
【0137】
比較のテスト用調光装置−1に電圧−5.0Vを印加すると(GND:第二の透明電極カップリング処理した基板)、調光装置の全体が遮光され、基板の中心部と取り出し電極近傍部ともに、波長550nmでの透過率は1%以下になった。
一方、回路を開放すると、銀の消え残りが発生し、かつ対向電極上には、フェロセニウムイオン粒子が浮遊し、透明状態になるのに10分以上を要した。このときの波長550nmでの透過率は80%であり、かつ、フェロセンによる吸収で波長450nmの透過率は70%であった。
【0138】
[比較例2]
比較例2は、特開平10−206907号公報の実施例1のエレクトロクロミック素子を調光装置に適用したものに相当する。
3−アミノプロピルトリメトキシシランを用いて、カップリング処理した透明電極基板を作製した。N,N−ジメチルアセトアミド(脱水)にフェロセンカルボン酸(東京化成社製)を30質量%溶解させたフェロセンモノマー溶液を作製し、基板を浸漬し、100℃で3時間加熱し、フェロセンモノマーが固定された電極基板を用いた以外には、実施例1と同様にして比較のテスト用調光装置−2を作製した。
比較のテスト用調光装置−2に電圧−5.0Vを印加しても(GND:カップリング処理した基板)、基板の中心部では銀の析出はほとんど無かった。
【0139】
[比較例3]
比較例3は、特開昭63−24225号公報のエレクトロクロミック表示素子を調光装置に適用したものに相当する。
【0140】
メチルエチルケトン300質量部中に、ビニルフェロセン30質量部を溶解し、三口フラスコ中で1時間窒素バブリングし、窒素雰囲気下で撹拌しながら、オイルバスにより60℃まで加熱した。重合開始剤V-65(和光純薬商品名)0.6質量部をメチルエチルケトン10質量部に溶解し、1時間かけながら三口フラスコ内に滴下し、その後7時間、60℃で加熱した。メチルエチルケトンをエバポレーターで回収し、フェロセンポリマーを作製した。
フェロセンポリマー5質量部をN,N−ジメチルアセトアミド95質量部に溶解し、ITO電極上にバーコーターを用いて塗布し、200℃で乾燥し、厚さ0.5μmのフェロセンポリマー層を有する透明電極を作製した。この電極を用いた以外には、実施例1と同様にして比較のテスト用調光装置−3を作製した。
比較のテスト用調光装置−3に電圧−5.0Vを印加しても(GND:カップリング処理した基板)、基板の中心部では銀の析出はほとんど無かった。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】エレクトロデポジション方式の調光デバイスの模式的断面図である。
【符号の説明】
【0142】
1 透明電極
2 基板
3 透明電極
4 基板
5 電解液
6 シール壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)通電により還元可能な金属イオンを含む電解液が、
(ii)側鎖にメタロセンを有するポリマーを化学結合により固定化した透明電極と、
(iii)前記(ii)の透明電極に対向して備えられ、前記金属イオンの還元反応により金属が生ずる透明電極と、
の間に備えられてなることを特徴とするエレクトロデポジション方式の調光デバイス。
【請求項2】
前記(ii)の透明電極が、ケイ素、チタン、アルミニウムおよびジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むカップリング剤を介して、側鎖にメタロセンを有する前記ポリマーが固定されてなることを特徴とする請求項1に記載のエレクトロデポジション方式の調光デバイス。
【請求項3】
前記(iii)の透明電極が、2個以上のアミノ基を有するシランカップリング剤により処理されてなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエレクトロデポジション方式の調光デバイス。
【請求項4】
前記側鎖にメタロセンを有するポリマーが、フェロセン誘導体のポリマーであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のエレクトロデポジション方式の調光デバイス。
【請求項5】
(i)ゲル状高分子により担持され、かつ通電により還元可能な金属イオンと白色顔料とを含有する電解液が、
(ii)側鎖にメタロセンを有するポリマーを化学結合により固定化した透明電極と、
(iii)前記(ii)の透明電極に対向して備えられ、前記金属イオンの還元反応により金属が生ずる透明電極と、
の間に備えられてなることを特徴とするエレクトロデポジション方式の反射型表示装置。
【請求項6】
前記(ii)の透明電極が、ケイ素、チタン、アルミニウムおよびジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むカップリング剤を介して、側鎖にメタロセンを有する前記ポリマーが固定されてなることを特徴とする請求項5に記載のエレクトロデポジション方式の反射型表示装置。
【請求項7】
前記(iii)の透明電極が、2個以上のアミノ基を有するシランカップリング剤により処理されてなることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のエレクトロデポジション方式の反射型表示装置。
【請求項8】
前記側鎖にメタロセンを有するポリマーが、フェロセン誘導体のポリマーであることを特徴とする請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載のエレクトロデポジション方式の反射型表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−175718(P2009−175718A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323607(P2008−323607)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】