説明

エレベータのかご内表示装置

【課題】 サイズが小さく、かご内や昇降路内のスペースに影響を与えることが少なく、また、発光することにより乗客への視認効果が高く、情報を表示する面内で照度にムラのないエレベータのかご内表示装置を提供する。
【解決手段】 エレベータのかご1内には、かご内表示装置10が取り付けられている。かご内表示装置10は、発光面が表向きに設けられた面発光素子よりなる光源11と、前記光源11の面発光素子の発光面に近接して設けられた透光性材料よりなる情報表示体12とを備える。前記光源11は、エレクトロルミネッセンス素子を用いたものとすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客を乗せて建物などの昇降路内を昇降するエレベータのかご内にて、乗客に情報を表示するためのエレベータのかご内表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータのかごには、乗客に情報を表示するために表示装置が取り付けられているものがある。かような表示装置は、例えばデパートや量販店のような店舗のエレベータにおいて店内を案内するための情報や広告情報などを表示したり、また、乗客に安心感を与え乗客を和ませるために絵画などの美術的情報を表示したりする装置である。
【0003】
従来、案内や情報が書き示された案内板を、かごの一部を構成する側板にそのまま取り付けて、上記のような情報を表示することが行われていた。しかしながら、このような案内板は、かご内の照明装置からの光によって乗客へ視認されるものであり、このように発光しない案内板では、乗客への視認効果が低く、乗客の注意を惹かずに視覚的効果が十分ではない場合がある。
【0004】
また、従来のかご内表示装置としては、照明装置が組み込まれた表示装置がある。このような照明装置が組み込まれた従来の表示装置の一例を図3に示す断面図を用いて説明する。同図における表示装置100は、エレベータのかごの一部を構成する側板2に取り付けられている。前記表示装置100は、かごの上下方向に複数本が設けられた直管形の蛍光ランプ101と、この蛍光ランプからみて側板2とは反対側(表側)に設けられ、透光性材料よりなる情報表示体102と、前記蛍光ランプ101を囲むように設けられ、前記蛍光ランプからみて側板2とは反対側に形成された開口部に前記情報表示体102が取り付けられているランプボックス103とを備えている。そして、蛍光ランプ101から発光された光を、情報が示されている情報表示体102を透すことにより、前記情報表示体102に示されている情報を乗客に視認できるようにしている。
【0005】
しかしながら、図3に示したかご内表示装置100では、一般家庭で用いられているのと同様の直管形の蛍光ランプ101を使用しているため、かご内表示装置100の奥行き方向のサイズは、この蛍光ランプ101の直径よりも薄くすることはできなかった。また、また、蛍光ランプ101を用いたかご内表示装置100では、蛍光ランプ101に供給する電流を蛍光ランプ101に合った値に制御するために、また、蛍光ランプ101の点灯に必要な始動電圧と電極に適正な予熱電圧とを供給するために、安定器を設けることが不可欠であり、この安定器を含めた表示装置として全体的に大型とならざるを得なかった。そのため、かご内表示装置100をエレベータのかご内に取り付けたとき、かご内表示装置100が、かご内で大きく突出してしまう不具合があった。この点、かごの側板2に開口を設け、この開口から昇降路側に突出するように前記かご内表示装置100を取り付ければ、かご内に大きく突出する不都合は回避できるが、その反面、昇降路面積の増大につながるという別の問題が生じる。さらに、蛍光ランプ101が複数本設けられているとはいえ、情報表示体102を透された光は、情報表示体102の面内で照度にムラが生じていることから、乗客に不快感を与えるおそれがあった。
【0006】
また、特許文献1には、かご室壁面に配置された面発光板を通して、面発光板の端面に設置された光源からの光を面発光させ、面発光板の裏に設けられた模様付き反射板に反射させて、前記面発光板の前面に模様を影として映し出す補助照明装置を備えたエレベータ乗りかごが記載されている。しかしながら、特許文献1に記載された補助照明装置は、やはり光源に蛍光灯を用いていることから、装置が全体的に大型になってしまうし、面発光板といっても実際には端面に設置した蛍光灯により照らすようにしているので、面発光板の発光面内での照度にムラが生じるのは避けられかった。
【特許文献1】特開平7−232883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題を有利に解決するもので、サイズが小さく、かご内や昇降路内のスペースに影響を与えることが少なく、また、発光することにより乗客への視認効果が高く、情報を表示する面内で照度にムラのないエレベータのかご内表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、エレベータのかご内にて、発光面が表向きに設けられた面発光素子よりなる光源と、前記光源の面発光素子の発光面に近接して設けられた透光性材料よりなる情報表示体と、を備えることを特徴とするエレベータのかご内表示装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエレベータのかご内表示装置によれば、発光面が表向きに設けられた面発光素子を光源としていくことから、薄型で、かご内や昇降路内のスペースに影響を与えることが少なく、また、発光面内での発光ムラが小さく乗客への視認効果が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施形態のエレベータのかご内表示装置を取り付けたエレベータのかご内構成図である。図1に示すように、エレベータのかご1は、かごの箱形を構成する側壁部材としての側板2a、2b、2cと、これらの側板2a、2b、2cの上端部に取り付けられた天井部材としての天板3と、側板2a、2b、2cの下端部に取り付けられたかご床部材としての床板4とを備えている。また、側板2cに形成された開口部にかごドア5が取り付けられていて、このかごドア5の上方には、化粧板として幕板6がとりつけられている。また、かごドア5の側方には、操作盤7が設けられている。また、側板のうち、かごドア5が取り付けられている側板2c以外の側板(2a及び2b)には、その床板4と接する部分には、側板の基部の損傷を防ぐための幅木8が設けられている。一方、かご1の天板3には、かご内を照らす照明装置9が設けられている。そして、図1に示したエレベータのかご1の側板2aに、本発明の一実施形態のかご内表示装置10が取り付けられている。
【0011】
図2は、かご内表示装置10の断面図である。同図に示したかご内表示装置10は、シート状の面発光素子よりなる光源11と、この光源11からみて側板2とは反対側(表側)に近接して設けられた透光性材料よりなる情報表示体12と、この情報表示体12よりも表側に近接して設けられ、前記情報表示体12の表面を保護する透光性樹脂シート13と、前記面発光素子よりなる光源11の裏側に設けられたバックボード14とを重ね合わせた積層体を、その周縁部に設けられた枠体15で支持してなる。この枠体15を側板2に固着させることにより、かご内表示装置10は側板2に取り付けられている。また、光源11の電源コードは、側板2の裏面より光源11に引き回されている。
【0012】
かご内表示装置10の光源11の面発光素子には、エレルトロルミネッセンス(EL)発光素子を用いることができ、有機EL、無機ELの種別を問わず本発明の光源11として用いることができる。エレルトロルミネッセンス(EL)発光素子は、シート全面が均一に発光する視認性の高い自発光型の素子であり、また、厚みが0.5mm程度の薄い発光素子であって、消費電力は蛍光灯よりも格段に少なく、かつ、蛍光灯のように大量に発熱することはない。また、振動や衝撃にも強く、仮に損壊した場合でも蛍光灯のようにガラスが飛散することはなく、安全性に優れる発光素子である。
【0013】
シート状の面発光素子よりなる光源11の表側に、光源11に近接して設けられている情報表示体12は、透光性材料よりなり、例えば透明なアクリル樹脂、あるいはその他の半透明又は着色された薄い樹脂などを材料として用いることができる。この情報表示体12の表面又は裏面に、印刷などの手法により情報を描いておき、光源11から放射される光を透過させることにより、情報表示体12の表面に描かれた情報をエレベータのかご1内の乗客に表示する。情報表示体12は、乗客への視覚効果を高めるために定期的に交換できるように、光源11とは分離可能に枠体15に取り付けられていることが好ましい。
【0014】
情報表示体12よりも表側に近接して設けられた透光性樹脂シート13は、前記情報表示体12の表面に傷などが入るのを防止したり、また薄い光源11を保護したりするためのものである。透光性樹脂シート13には、例えば透明なアクリル樹脂シートを用いることができる。なお、情報表示体12の硬度、強度が高い場合や、情報表示体12を定期的に交換する場合は、必ずしも透光性樹脂シート13を設けることを要しない。
【0015】
以上のような構成を有する本実施形態のかご内表示装置10をエレベータのかご内の側板2に取り付け、光源11を発光させて、この光を情報が示された情報表示体12を透して、乗客に表示させる。本実施形態のかご内表示装置10は、シート状の面発光素子を光源11として用いているから、従来の蛍光灯などを光源に用いた表示装置に比べて、格段に薄くすることができ、エレベータのかご内や昇降路内のスペースに影響を与えることが少なく、かご内面積を有効活用することができる。また、かご内表示装置10は奥行きが薄いから、意匠面からも優れている。更に、面発光するから情報を表示している面内での照度ムラがなく、乗客の視認性が高く、不快感を与えることがない。さらに、消費電力や安全性の面からも有利である。
【0016】
図2に示した本実施形態のエレベータのかご内表示装置10は、エレベータのかごの側板2に取り付けられているが、取り付ける位置は、かご内における側板に限られるものではなく、かご内で乗客に視認できる位置であれば、取り付ける位置を問わず、本発明の優れた効果が得られる。例えば、図1に示すかごドア5の上方に化粧板として取り付けられている幕板6にかご内表示装置10Aとして取り付けてもよいし、また、かごドア5に、かご内表示装置10Bとして取り付けることもできる。本発明のかご内表示装置は奥行きが薄いため、かごドア5の厚み方向に埋め込むようにかご内表示装置10Bを取り付けることができ、よって従来のかご内表示装置では困難であったかごドア5への表示装置の取り付けが可能になり、また、かごドアの意匠性をも向上させることができる。
【0017】
また、本発明の装置を、図1に示す側板2a又は2bの床板4と接する部分に設けられている幅木8に、かご内表示装置10Cとして取り付けることもできる。幅木8に、かご内表示装置10Cを取り付けることにより、乗客に情報を表示するという表示装置そのものの機能を発揮させることができるばかりでなく、かご内表示装置10Cを足元灯として乗客の足元を明るくする照明装置としての役割を果たすこともできる。
【0018】
以上、図面を用いて本発明のエレベータのかご内表示装置の実施形態について説明したが、本発明の装置は、図示した実施形態に限られるものではない。例えば、図2に示したかご内表示装置10は、側板2のかご内側の表面上に取り付けられているが、側板2に開口を形成して、その開口から、かご内表示装置10を側板2の昇降路側に突出させるように取り付けて、側板2のかご内側の表面と、かご内表示装置10の透光性樹脂シート13の表面とが同一面内に位置するようにすることもできる。かご内表示装置10は奥行きが薄いために、側板2の昇降路側に突出させるように取り付けたとしても、昇降路面積の増大にはつながらない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態のエレベータのかご内表示装置を取り付けたエレベータのかご内構成図である。
【図2】図1に示すかご内表示装置の断面図である。
【図3】従来のかご内表示装置の断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 エレベータのかご
2、2a、2b、2c 側板
2a 貫通孔
5 かごドア
6 幕板
8 幅木
10 かご内表示装置
11 光源
12 情報表示体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータのかご内にて、発光面が表向きに設けられた面発光素子よりなる光源と、
前記光源の面発光素子の発光面に近接して設けられた透光性材料よりなる情報表示体と、
を備えることを特徴とするエレベータのかご内表示装置。
【請求項2】
前記面発光素子が、エレクトロルミネッセンス発光素子である請求項1記載のエレベータのかご内表示装置。
【請求項3】
前記かご内表示装置が、エレベータのかごを構成する側板に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のエレベータのかご内表示装置。
【請求項4】
前記かご内表示装置が、エレベータのかごを構成する幕板に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のエレベータのかご内表示装置。
【請求項5】
前記かご内表示装置が、エレベータのかごドアに取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のエレベータのかご内表示装置。
【請求項6】
前記かご内表示装置が、エレベータのかごを構成する幅木に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のエレベータのかご内表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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