説明

エレベータのかご室内照明装置

【課題】照明器具を覆う傘部材のロックを確実に行うとともに、傘部材の側面を透過した光によりかご室の天井面の周縁部を明るくしてかご室内の意匠性を向上させることである。
【解決手段】エレベータのかご室内照明装置において、かご室の天井に取付けられた照明器具21の外周側に配置されて照明器具31の下側に開口部30を有する照明器具ケース22と、一端側をヒンジにより上下方向回動可能に照明器具ケース22に連結されて開口部30を閉止する閉止位置と開口部30を開放する開放位置との間で回動し、閉止位置で係脱可能にロックされる透光性を有する傘部材24を有する。傘部材24が閉止位置に位置する場合、傘部材24の側面が照明器具ケース22の下端部より下側に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータのかご室内照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータのかご室には、かご室内を照明するかご室内照明装置が設けられており、エレベータのかご室内照明装置の一例として下記特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載されたエレベータのかご室内照明装置は、かご室の天井に取付けられた複数の照明器具と、照明器具を覆うケースとを備えている。ケースは、下側に開口部を有して天井面に固定された固定部と、開口部に配置されて固定部に取付けられた透光性を有する可動部(傘部材)とを備えている。
【0003】
可動部は、一端側がヒンジを介して固定部に回動可能に取付けられ、他端側がフック部とラッチ部とからなるロック装置を介して固定部にロックされている。
【0004】
照明器具の交換や清掃等のメンテナンスを行う場合には、作業員がかご室内に入り、ロック装置のロック状態を解除し、ヒンジを支点として可動部を下方向きに回動させ、開口部を開放する。そして、開放された開口部から作業員が手を入れ、照明器具のメンテナンスを行う。
【0005】
さらに、特許文献1に記載されたエレベータのかご室内照明装置には、ロック装置のロック状態が外れた場合に可動部が開口部を開放する位置に直ちに回動するという誤動作を防止するため、可動部を固定部に固定する第二のロック装置として機能するロックネジが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−6572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されたエレベータのかご室内照明装置では、ロックネジを取付けるために固定部の下端側を可動部の外周側側面を覆う位置まで下げている。
【0008】
このため、可動部の外周側側面を透過した照明器具の光が固定部により遮光され、かご室の天井面の周縁部が暗くなり、かご室内の意匠性が低下している。
【0009】
また、ロック装置のロック操作やロック解除操作は、可動部の外周側側面と固定部との間の隙間から手や操作具を挿入して行っている。ところが、固定部の下端部が可動部の外周側側面を覆う位置まで下がっているため、手や操作具を挿入する隙間の上下方向の寸法が大きくなり、ロック装置のロック操作やロック解除操作に手間がかかっている。
【0010】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、その目的は、照明器具を覆う傘部材のロックを確実に行うとともに、傘部材の側面を透過した光によりかご室の天井面の周縁部を明るくしてかご室内の意匠性を向上させことである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態のエレベータのかご室内照明装置は、かご室の天井に取付けられる照明器具と、前記かご室の天井に取付けられるとともに前記かご室の天井に取付けられた前記照明器具の外周側に配置され、前記照明器具の下側に前記照明器具を露出させる開口部を有する照明器具ケースと、一端側をヒンジにより上下方向回動可能に前記照明器具ケースに連結され、前記開口部を閉止する閉止位置と前記開口部を開放する開放位置との間で回動するとともに、閉止位置に位置する場合に側面の少なくとも一部が前記照明器具ケースの下端部より下側に位置する透光性を有する傘部材と、前記傘部材の他端側に取付けられ、前記傘部材が閉止位置に位置する場合に前記照明器具ケースに取付けられたフック部に係脱可能に引っ掛けられるラッチ部と、を備える。さらに、前記傘部材の他端側の側面に取付けられたロック部材と、前記ロック部材を、前記かご室に設けられた保持部に係脱可能にロックするロック機構と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施の形態のかご室内照明装置を適用したエレベータの全体構造を示す断面図である。
【図2】かご室の断面図である。
【図3】図2に示したかご室のA−A線断面図である。
【図4】傘部材を閉止位置でロックする機構部分を拡大して示す断面図である。
【図5】ロック部材を示す斜視図である。
【図6】ロック部材と保持部とのロック解除の手順を示す説明図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態におけるロック部材と保持部とのロック解除の手順を示す説明図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態におけるロック部材と保持部とのロック解除の手順を示す説明図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態におけるロック部材と保持部とのロック解除の手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態を図1ないし図6に基づいて説明する。図1に示すように、エレベータ1は、昇降路2内に配置された乗りかご3と釣合いおもり4とを備えている。エレベータ1が設置されている建物の各利用階には、乗りかご3に乗り降りするためのエレベータホール5が設けられている。エレベータホール5には、ホール出入口6と昇降路2との間を開閉するホールドア7が設けられている。
【0014】
昇降路2の上方には機械室8が設けられている。機械室8内には、巻上機9と、エレベータ1の全体を制御する制御装置10とが設けられている。巻上機9は、メインシーブ11と、このメインシーブ11を回転駆動するモータ12とを備えている。メインシーブ11にはメインロープ13が巻き掛けられ、メインロープ13の両端には乗りかご3と釣合いおもり4とが釣瓶式に連結されている。
【0015】
乗りかご3は、かご枠14とかご室15とを備えている。かご枠14は、水平方向に延びた上梁と下梁、及び、鉛直方向に延びた一対の縦枠を枠状に組み立てて形成されている。かご室15は、エレベータ利用者が乗車可能な箱形に形成され、かご枠14内に配置されている。
【0016】
かご室15は、かご床16と側板17と天井板18とかごドア19とを有し、天井板18の下側にはかご室15内を照明するかご室内照明装置20が設けられている。
【0017】
かご室内照明装置20は、図2及び図3に示すように、複数の照明器具21と、照明器具ケース22と、保持部23と、傘部材24と、ヒンジ25と、フック部26と、ラッチ部27と、ロック部材28と、ロック機構29とを備えている。
【0018】
照明器具21は、例えば蛍光灯であり、天井板18の下面に交換可能に取付けられている。
【0019】
照明器具ケース22は、天井板18に取付けられた照明器具21の外周側に配置され、上端部が天井板18に固定されている。照明器具ケース22の内側面には、断面形状をL字形に形成されたフランジ22aが固定されている。照明器具ケース22は、照明器具21の外周側の4方向の全てに設けられていてもよく、又は、照明器具21の外周側の2方向又は3方向に設けられ、残りの外周側が開放されていてもよい。この照明器具ケース22における照明器具21の下側部分には、照明器具21を下向きに露出させる開口部30が形成されている。
【0020】
保持部23は、照明器具ケース22の外側に位置して天井板18に取付けられた部材であり、かご室15の上部側の側板を兼ねている。保持部23の下端部には外側に向けて屈曲した屈曲部23aが形成されている。
【0021】
傘部材24は、透光性を有する板状の部材であり、図3において実線で示した閉止位置と、図3において二点鎖線で示した開放位置との間で上下方向回動可能に照明器具ケース22に保持されている。傘部材24が閉止位置に位置する場合、開口部30が傘部材24によって閉止されるとともに、天井板18に取付けられた照明器具21の下側が傘部材24によって覆われている。なお、傘部材24が閉止位置に位置する場合において、傘部材24の側面の少なくとも一部は照明器具ケース22の下端部より下側に位置している。
【0022】
ヒンジ25は、傘部材24を閉止位置と開放位置との間で回動可能に保持する部材である。ヒンジ25の一端は照明器具ケース22のフランジ22aに固定され、ヒンジ25の他端は傘部材24の一端側に水平方向の軸心を有する支軸25aにより回動可能に連結されている。傘部材24は、支軸25aを支点として閉止位置と開放位置との間で回動する。なお、ヒンジ25は、傘部材24の幅方向(図3において紙面と直交する方向)の両側に位置して一対設けられている。
【0023】
フック部26とラッチ部27とは、傘部材24を閉止位置でロックするための第一のロック手段であり、ラッチ部27をフック部26に引っ掛けることにより傘部材24が閉止位置でロックされる。ラッチ部27は、傘部材24の他端側(ヒンジ25が設けられている側の反対側)における傘部材24の上面側に取付けられている。フック部26は、照明器具ケース22のフランジ22aに固定されている。なお、ラッチ部27には、このラッチ部27をフック部26に引っ掛ける位置と、フック部26への引っ掛けを解除する位置とに回動させるための操作レバー27aが設けられている。
【0024】
ロック部材28とロック機構29とは、傘部材24を閉止位置でロックするための第二のロック手段である。第一のロック手段であるフック部26及びラッチ部27に加えて、第二のロック手段であるロック部材28とロック機構29とが設けられていることにより、閉止位置での傘部材24のロック状態を安定させることができる。
【0025】
ロック部材28は、図5に示すように、第一屈曲部28aと第二屈曲部28bとからなる断面形状をL字形に形成された部材である。第一屈曲部28aには長穴32が形成され、第二屈曲部28bにはダルマ穴33が形成されている。ダルマ穴33は、ロック部材28のスライド方向(長穴32の長手方向と同じ方向)に沿った方向に連続して形成された小径部33aと大径部33bとを有している。
【0026】
ロック部材28は、図3及び図6に示すように、傘部材24における他端側(ヒンジ25が設けられている側の反対側)の側面に取付けられている。傘部材24の側面へのロック部材28の取付けは、長穴32に挿通した一対の取付ネジ34を傘部材24の側面に固定することにより行われている。一対の取付ネジ34の間隔は長穴32の長さ寸法より短く設定され、ロック部材28は長穴32の長手方向に沿ってスライド可能に傘部材24に取付けられている。なお、ロック部材28のスライド方向は、閉止位置に位置する傘部材24における水平方向とされている。
【0027】
ロック機構29は、ロック部材28を保持部23に係脱可能にロックする機構であり、ロック部材28に形成されたダルマ穴33と、保持部23の屈曲部23aに固定されたナット35と、ダルマ穴33を挿通してナット35に螺合されるロックネジ36とを有している。
【0028】
ロックネジ36は、ダルマ穴33の小径部33aより大径であるとともにダルマ穴33の大径部33bより小径である頭部36aを一端側に有している。小径部33aに挿通されているロックネジ36の他端側をナット35に螺合させて締め付けることにより、第二屈曲部28bと屈曲部23aとが押圧され、及び、第二屈曲部28bとロックネジ36の頭部36aとが押圧される。これにより、ロック部材28と保持部23とが締付け固定される。
【0029】
保持部23とロック部材28とロックネジ36とは、同じ色に塗装することが望ましい。これらの保持部23とロック部材28とロックネジ36と同じ色に塗装することにより、ロック部材28とロックネジ36とを目立たなくすることができる。
【0030】
なお、本実施の形態では、第二屈曲部28bと屈曲部23aとが押圧される寸法にロック部材28を形成した場合を例に挙げて説明したが、ロック部材28は第二屈曲部28bと屈曲部23aとが隙間をもって対向する寸法に形成されていてもよい。その場合でも、ロックネジ36を締め付けることにより、ナット35に螺合されたロックネジ36の頭部36aが第二屈曲部28bに押圧され、ロック部材28と保持部23とが締付け固定される。
【0031】
このような構成において、図2及び図3の実線で示した傘部材24は、閉止位置でロックされた状態であり、図3の二点鎖線で示した傘部材24は、開放位置に回動した状態である。
【0032】
閉止位置に位置する傘部材24は、フック部26とラッチ部27とからなる第一のロック手段において、ラッチ部27をフック部26に引っ掛けてロックされている。また、ロック部材28とロック機構29とからなる第二のロック手段において、ダルマ穴33の小径部33aに挿通したロックネジ36をナット35に螺合させることによりロックされている。
【0033】
したがって、傘部材24が閉止位置に位置する場合には、傘部材24はフック部26とラッチ部27とからなる第一のロック手段と、ロック部材28とロック機構29とからなる第二のロック手段とによりロックされている。このため、閉止位置に位置する傘部材24に対して様々な振動や衝撃が加わった場合でも、ロック状態が外れて傘部材24が開放位置に回動するという誤動作を防止することができる。
【0034】
照明器具21の清掃や交換等のメンテナンスを行う場合には、作業員がかご室15内に入り、図3において実線で示す閉止位置でロックされている傘部材24を図3において二点鎖線で示す開放位置に回動させる。
【0035】
閉止位置でロックされている傘部材24を開放位置に回動させる場合には、まず、第二のロック手段のロックを解除する。このロック解除は、以下の手順で行う。まず、図6(a)に示すロック状態から図6(b)に示すようにロックネジ36を緩め、第二屈曲部28bと屈曲部23a、及び、第二屈曲部28bとロックネジ36の頭部36aとの締付け状態を解除する。この締付け状態の解除により、ロック部材28は長穴32及びダルマ穴33の長手方向に沿ってスライド可能となる。そこで、スライド可能となったロック部材28を矢印B方向にスライドさせ、ロックネジ36をダルマ穴33の大径部33bに位置させることにより、第二のロック手段によるロックが解除される。
【0036】
第二のロック手段によるロックを解除した後、ラッチ部27を回動させてフック部26への引っ掛かりを解除することにより第一のロック手段によるロックを解除する。ラッチ部27を回動させる操作は、傘部材24の側面と照明器具ケース22との間の隙間から操作工具を差し込み、操作レバー27aを回動させることにより行う。
【0037】
第二のロック手段のロックと第一のロック手段のロックとを解除することにより、傘部材24はヒンジ25の支軸25aを支点として回動可能となり、傘部材24を図3の二点鎖線で示す開放位置へ回動させることができる。傘部材24が閉止位置から開放位置へ回動する場合、ロック部材28も傘部材24と共に回動する。ロック部材28が傘部材24と共に回動する場合、ロックネジ36がダルマ穴33の大径部33b内に位置しているため、大径部33bの縁部とロックネジ36とを干渉させることなくロックネジ36をダルマ穴33から外すことができる。
【0038】
傘部材24が開放位置に回動することにより照明器具ケース22の開口部30が開放され、作業員は開放された開口部30から手を入れて照明器具21のメンテナンスを行うことができる。
【0039】
照明器具21のメンテナンスを終了した後は、開放位置に位置する傘部材24を閉止位置に回動させ、第一のロック手段によるロックと第二のロック手段によるロックとを行い、傘部材24を閉止位置でロックする。
【0040】
ここで、第一のロック手段を構成するフック部26とラッチ部27とは傘部材24の上面側に配置されている。また、第二のロック手段を構成するロック部材28は傘部材24の側面に取付けられ、このロック部材28がロック機構29を用いて保持部23にロックされている。そして、天井板18に取付けられている照明器具21の外周側に配置された照明器具ケース22は、第二のロック手段を取付けるために使用していない。このため、傘部材24を、傘部材24の側面の少なくとも一部が照明器具ケース22の下端部より下側に位置するように配置することができる。
【0041】
したがって、照明器具21から出射された後に傘部材24の側面を透過した光のうち、照明器具ケース22により遮光される光の量を減らすことができる。これにより、照明器具21から出射されて傘部材24の側面を透過した光が照明器具ケース22により遮光されたためにかご室15の天井側の周囲に暗い影ができるという事態の発生を抑制することができ、かご室15の天井側の周囲が明るくなり、かご室15内の意匠性及び美観を向上させることができる。
【0042】
また、傘部材24の側面の少なくとも一部が照明器具ケース22の下端部より下側に位置するように配置されているため、傘部材24を閉止位置と開放位置との間で回動させる場合に、傘部材24の側面が照明器具ケース22に干渉して破損するという事態の発生を抑制することができる。
【0043】
また、傘部材24の側面の少なくとも一部が照明器具ケース22の下端部より下側に位置するように配置されているため、ラッチ部27を回動させるために傘部材24の側面と照明器具ケース22との間の隙間から操作工具を差し込んで操作レバー27aを回動させる場合において、操作工具の差し込み寸法が小さくなり、操作工具の操作性を向上させることができる。
【0044】
また、傘部材24の側面が照明器具ケース22の下端部より下側に位置するように配置されているため、照明器具ケース22と保持部23とが上下方向で重なっている寸法が小さくなる。この照明器具ケース22と保持部23とが上下方向で重なっている部分はエアコンからの吹出口に用いられる部分であり、この吹出口の長さが短くなることにより結露発生を抑制することができる。
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態を図7に基づいて説明する。なお、本実施の形態及び以下に説明する他の実施の形態において、第1の実施の形態で説明した構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付け、重複する説明は省略する。
【0045】
第2の実施の形態の基本的な構造は第1の実施の形態と同じである。第2の実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、傘部材24の側面へのロック部材28の取付け構造である。第2の実施の形態では、傘部材24の側面へのロック部材28の取付けが、長穴32に挿通した一本の取付ネジ34により行われている。
【0046】
このため、ロック部材28を矢印B方向にスライドさせ、ロックネジ36をダルマ穴33の大径部33b内に位置させた場合、ロック部材28は取付ネジ34を支点としてロック部材28のスライド方向と直交する上下方向へ回動可能となる。
【0047】
そこで、図7(c)に示すように取付ネジ34を支点としてロック部材28を矢印C方向へ回動させる。この場合おいて、ロックネジ36がダルマ穴33の大径部33b内に位置しているため、大径部33bの縁部とロックネジ36とを干渉させることなくロック部材28を回動させることができる。ついで、ラッチ部27を回動させてフック部26への引っ掛かりを解除することにより第一のロック手段によるロックを解除する。その後、図3において二点鎖線で示すように傘部材24を開放位置に回動し、照明器具21のメンテナンスを行う。
【0048】
このような構成において、ロックネジ36をダルマ穴33から外す作業を、傘部材24に比べて小型の部品であるロック部材28を回動させることにより行える。このため、ロックネジ36をダルマ穴33から外す作業を容易に行え、傘部材24を開放位置に回動させる場合にロックネジ36が大径部33bの縁部に干渉するという事態の発生を確実に防止することができる。
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態を図8に基づいて説明する。第3の実施の形態の基本的な構造は第1の実施の形態と同じである。第3の実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、傘部材24を閉止位置でロックする第二のロック手段を構成するロック機構29Aの構造である。
【0049】
ロック機構29Aは、小径部33aと大径部33bとを有するダルマ穴33と、保持部23に固定されたマグネット41と、ロックピン42とを有している。
【0050】
ロックピン42は、屈曲部23aに形成された挿通穴23bに上下方向スライド可能に挿通されている。
【0051】
ロックピン42の一端側には、小径部33aより大径であるとともに大径部33bより小径である頭部42aが形成され、ロックピン42の他端側には表面積を大きくしてマグネット41への吸着性を高くした吸着部42bが形成されている。また、ロックピン42の略中央部には、挿通穴23bより大径であるストッパ部42cが形成されている。ロックピン42を小径部33aに挿通して吸着部42bをマグネット41に吸着させた場合に、第二屈曲部28bと屈曲部23aとが押圧され、及び、第二屈曲部28bとロックピン42の頭部42aとが押圧される。これにより、ロック部材28と保持部23とが締付け固定される。
【0052】
このような構成において、第二のロック手段のロックを解除する場合には、図8(a)に示したように吸着部42bをマグネット41に吸着されているロックピン42を下向きに引っ張り、図8(b)に示すように吸着部42bをマグネット41から離反させる。これにより、マグネット41によるロックピン42の吸着が解除され、第二屈曲部28bと屈曲部23a、及び、第二屈曲部28bとロックピン42の頭部42aとの締付け状態が解除される。この締め付け状態の解除により、ロック部材28は長穴32及びダルマ穴33の長手方向に沿ってスライド可能となる。そこで、スライド可能となったロック部材28を矢印B方向にスライドさせ、ロックピン42をダルマ穴33の大径部33b内に位置させることにより、第二のロック手段によるロックを解除する。
【0053】
第二のロック手段によるロックを解除した後は、第1の実施の形態において説明したように、第一のロック手段によるロックを解除する。
【0054】
そして、第二のロック手段によるロックと第一のロック手段によるロックを解除した後に傘部材24を図3において二点鎖線で示した開放位置に回動させ、照明器具21のメンテナンスを行う。
【0055】
ここで、第3の実施の形態においても第1の実施の形態と同様に、傘部材24は、傘部材24の側面の少なくとも一部が照明器具ケース22の下端部より下側に位置するように配置されている。したがって、第3の実施の形態でも、傘部材24の側面が照明器具ケース22の下端部より下側に位置することに起因する第1の実施の形態で説明した作用及び効果と同じ作用及び効果を奏する。
【0056】
なお、第3の実施の形態においても、図7に示した第2の実施の形態と同様に傘部材24をスライド方向と直交する上下方向へ回動可能としてもよい。
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態を図9に基づいて説明する。第4の実施の形態の基本的な構造は第1の実施の形態と同じである。第4の実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、傘部材24を閉止位置でロックする第二のロック手段を構成するロック機構29Bの構造である。
【0057】
ロック機構29Bは、小径部33aと大径部33bとを有するダルマ穴33と、ロックピン51と、コイルバネ52とを有している。
【0058】
ロックピン51は、一端側に小径部33aより大径であるとともに大径部33bより小径である頭部51aを有し、他端側にバネ受け部51bを有し、屈曲部23aに形成された挿通穴23bに上下方向スライド可能に挿通されている。バネ受け部51bは、コイルバネ52をロックピン51の周囲に装着した場合に、コイルバネ52が抜け落ちることを防止する。
【0059】
コイルバネ52は、ロックピン51の外周であってバネ受け部51bと保持部23の屈曲部23aとの間に介装される部材である。コイルバネ52を外周に取付けたロックピン51が小径部33aに挿通されている場合、ロックピン51はコイルバネ52の付勢力により第二屈曲部28bと屈曲部23aとが押圧され、及び、第二屈曲部28bとロックピン51の頭部51aとが押圧される。これにより、ロック部材28と保持部23とが締付け固定される。
【0060】
このような構成において、第二のロック手段のロックを解除する場合には、コイルバネ52の付勢力により頭部21aを第二屈曲部28bに押圧させているロックピン51を下向きに引っ張り、図9(b)に示すように頭部21aを第二屈曲部28bから離反させる。これにより、第二屈曲部28bと屈曲部23a、及び、第二屈曲部28bとロックピン51の頭部51aとの締付け状態が解除される。この締め付け状態の解除により、ロック部材28は長穴32及びダルマ穴33の長手方向に沿ってスライド可能となる。そこで、スライド可能となったロック部材28を矢印B方向にスライドさせ、ロックピン51をダルマ穴33の大径部33b内に位置させることにより、第二のロック手段によるロックを解除する。
【0061】
第二のロック手段によるロックを解除した後は、第1の実施の形態において説明したように、第一のロック手段によるロックを解除する。
【0062】
そして、第二のロック手段によるロックと第一のロック手段によるロックを解除した後に傘部材24を図3において二点鎖線で示した開放位置に回動させ、照明器具21のメンテナンスを行う。
【0063】
ここで、第4の実施の形態においても第1の実施の形態と同様に、傘部材24は、傘部材24の側面の少なくとも一部が照明器具ケース22の下端部より下側に位置するように配置されている。したがって、第4の実施の形態でも、傘部材24の側面が照明器具ケース22の下端部より下側に位置することに起因する第1の実施の形態で説明した作用及び効果と同じ作用及び効果を奏する。
【0064】
なお、第4の実施の形態においても、図7に示した第2の実施の形態と同様に傘部材24をスライド方向と直交する上下方向へ回動可能としてもよい。
【符号の説明】
【0065】
15 かご室
21 照明器具
22 照明器具ケース
24 傘部材
25 ヒンジ
26 フック部
27 ラッチ部
28 ロック部材
29 ロック機構
29A ロック機構
29B ロック機構
33 ダルマ穴
33a 小径部
33b 大径部
35 ナット
36 ロックネジ
36a 頭部
41 マグネット
42 ロックピン
42a 頭部
51 ロックピン
51a 頭部
51b バネ受け部
52 コイルバネ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
かご室の天井に取付けられる照明器具と、
前記かご室の天井に取付けられるとともに前記かご室の天井に取付けられた前記照明器具の外周側に配置され、前記照明器具の下側に前記照明器具を露出させる開口部を有する照明器具ケースと、
一端側をヒンジにより上下方向回動可能に前記照明器具ケースに連結され、前記開口部を閉止する閉止位置と前記開口部を開放する開放位置との間で回動するとともに、閉止位置に位置する場合に側面の少なくとも一部が前記照明器具ケースの下端部より下側に位置する透光性を有する傘部材と、
前記傘部材の他端側に取付けられ、前記傘部材が閉止位置に位置する場合に前記照明器具ケースに取付けられたフック部に係脱可能に引っ掛けられるラッチ部と、
前記傘部材の他端側の側面に取付けられたロック部材と、
前記ロック部材を、前記かご室に設けられた保持部に係脱可能にロックするロック機構と、
を備えることを特徴とするエレベータのかご室内照明装置。
【請求項2】
前記ロック部材は、閉止位置に位置する前記傘部材における水平方向へスライド可能に取付けられ、
前記ロック機構は、前記ロック部材に形成されてこのロック部材のスライド方向に沿った方向に小径部と大径部とを有するダルマ穴と、前記保持部に固定されたナットと、前記小径部より大径であるとともに前記大径部より小径である頭部を一端側に有し、前記小径部に挿通されて他端側が前記ナットに螺合された場合に前記ロック部材と前記保持部とを締付け固定するロックネジと、を有することを特徴とする請求項1記載のエレベータのかご室内照明装置。
【請求項3】
前記ロック部材は、閉止位置に位置する前記傘部材における水平方向へスライド可能に取付けられ、
前記ロック機構は、前記ロック部材に形成されてこのロック部材のスライド方向に沿った方向に小径部と大径部とを有するダルマ穴と、前記保持部に固定されたマグネットと、前記小径部より大径であるとともに前記大径部より小径である頭部を一端側に有し、前記小径部に挿通されて他端側が前記マグネットに吸着された場合に前記ロック部材と前記保持部とを締め付け固定するロックピンと、を有することを有することを特徴とする請求項1記載のエレベータのかご室内照明装置。
【請求項4】
前記ロック部材は、閉止位置に位置する前記傘部材における水平方向へスライド可能に取付けられ、
前記ロック機構は、前記ロック部材に形成されてこのロック部材のスライド方向に沿った方向に小径部と大径部とを有するダルマ穴と、前記小径部より大径であるとともに前記大径部より小径である頭部を一端側に有して他端側にバネ受け部を有するロックピンと、前記バネ受け部と前記保持部との間に介装されて前記ロックピンが前記小径部に挿通されている場合に前記ロック部材と前記保持部とを締め付け固定する方向に前記ロックピンを付勢するコイルバネと、を有することを特徴とする請求項1記載のエレベータのかご室内照明装置。
【請求項5】
前記ロック部材は、スライドする水平方向と直交する上下方向へ回動可能に取付けられていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか一項に記載のエレベータのかご室内照明装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−20816(P2012−20816A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158479(P2010−158479)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】