説明

エレベータのコンペンセーション装置

【課題】設置時にコンペンロープなどの調整部材の質量を所望の質量に容易に調整することができるエレベータのコンペンセーション装置を提供する。
【解決手段】実施形態のエレベータ1のコンペンセーション装置30は乗りかご2とカウンタウェイト3が昇降路内を昇降する際のメインロープ4の重量を相殺する装置である。エレベータ1のコンペンセーション装置30はコンペンロープ7と錘取付部11とを備えている。コンペンロープ7は一端が乗りかご2、他端がカウンタウェイト3に取り付けられかつ可撓性を有する長尺に形成されている。コンペンロープ7は中央部が昇降路内で折り返されている。錘取付部11はコンペンロープ7に複数設けられかつ補助錘13を着脱可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータのコンペンセーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、メインロープの一端に乗りかごを取り付け、他端に釣り合い錘を取り付けて、これらの乗りかごと釣り合い錘を釣瓶式に昇降させるエレベータでは、昇降中の乗りかごなどの振動を抑制するために、一端が乗りかごに取り付けられ他端が釣り合い錘に取り付けられた調整部材としてのコンペンロープとコンペンシーブなどからなるコンペンセーション装置を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−138279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来から用いられているエレベータのコンペンセーション装置は、建造物の昇降路内への設置時にコンペンロープなどの調整部材の質量を所望の質量に調整することが困難となる場合があった。
【0005】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、設置時にコンペンロープなどの調整部材の質量を所望の質量に容易に調整することができるエレベータのコンペンセーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のエレベータのコンペンセーション装置は、乗りかごと釣り合い錘が昇降路内を昇降する際のメインロープの重量を相殺する装置である。エレベータのコンペンセーション装置は調整部材と錘取付部とを備えている。調整部材は一端が乗りかご、他端が釣り合い錘に取り付けられかつ可撓性を有する長尺に形成されている。調整部材は中央部が昇降路内で折り返されている。錘取付部は調整部材に複数設けられかつ補助錘を着脱可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、実施形態1に係るエレベータの構成を示す説明図である。
【図2】図2は、実施形態1に係るエレベータのコンペンセーション装置のコンペンロープの要部を示す斜視図である。
【図3】図3は、実施形態1に係る変形例1のエレベータの構成を示す説明図である。
【図4】図4は、実施形態1に係る変形例2のエレベータのコンペンセーション装置の錘取付部を拡大して示す斜視図である。
【図5】図5は、図4中のV−V線に沿う断面図である。
【図6】図6は、図4中のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】図7は、実施形態2に係るエレベータの要部の構成を示す説明図である。
【図8】図8は、実施形態2に係るエレベータのコンペンセーション装置のコンペンベルトの要部を示す斜視図である。
【図9】図9は、図8中のIX−IX線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係るエレベータの構成を示す説明図、図2は、実施形態1に係るエレベータのコンペンセーション装置のコンペンロープの要部を示す斜視図である。
【0009】
図1に示す本実施形態のエレベータ1は、建造物(建築物ともいう)の昇降路内に設置されて、乗りかご2内の操作装置の各種のボタン及び各階の乗場に設けられた呼び装置の呼びボタンの操作による呼び登録に基づいて乗客などを建造物の所望の階に運搬する。勿論、昇降路は、建造物の複数の階に亘って設けられ、かつ鉛直方向に沿って直線状に延びている。
【0010】
エレベータ1は、図1に示すように、図示しない一対のかご用ガイドレールと、乗りかご2と、釣り合い錘としてのカウンタウェイト3と、図示しない一対のウェイト用ガイドレールと、メインロープ4と、駆動機構5と、安全機構と、制御部としてのエレベータ制御部6と、コンペンセーション装置30と、を備えている。
【0011】
かご用ガイドレールは、直線状に延びかつ鉛直方向と平行に設けられている。かご用ガイドレールは、互いに間隔をあけて平行な状態で昇降路内に設けられている。かご用ガイドレールは、互いの間に乗りかご2を位置づけているとともに、この乗りかご2を鉛直方向に昇降自在に支持している。
【0012】
乗りかご2は、かご用ガイドレールなどにより昇降路内に鉛直方向に移動自在に収容されている。乗りかご2は、図示しない開閉ドアが設けられた箱状に形成されて、内側に乗客などを収容可能である。
【0013】
カウンタウェイト3は、昇降路内に鉛直方向に移動自在に収容されている。カウンタウェイト3の重さは、所定の数の乗客が乗り込んだ乗りかご2の重さとほぼ等しくなっている。
【0014】
ウェイト用ガイドレールは、直線状に延びかつ鉛直方向と平行に設けられている。ウェイト用ガイドレールは、互いに間隔をあけて平行な状態で昇降路内に設けられている。ウェイト用ガイドレールは、互いの間にカウンタウェイト3を位置づけているとともに、このカウンタウェイト3を鉛直方向に昇降自在に支持している。
【0015】
メインロープ4は、一端部に乗りかご2が固定され、かつ他端部にカウンタウェイト3が固定されている。メインロープ4は、駆動機構5のシーブ8に掛渡されて、乗りかご2とカウンタウェイト3とが互いに上下反対方向に昇降するように設けられている。即ち、エレベータ1は、所謂、つるべ式のエレベータとなっている。このように、メインロープ4は、巻き上げ機により移動されることで、乗りかご2とカウンタウェイト3とを釣瓶式に昇降させる。
【0016】
駆動機構5は、昇降路の上部に設けられた機械室などに設けられ、周知の巻き上げ機と、メインロープ4が掛け渡されて巻き上げ機により回転駆動されるシーブ8などを備えている。駆動機構5は、巻き上げ機がシーブ8を回転駆動することにより、メインロープ4を昇降路内で移動させて、乗りかご2とカウンタウェイト3を昇降させる。安全機構は、前述した機械室などに設けられ、周知のガバナや非常止め装置を備えている。
【0017】
エレベータ制御部6は、前述した機械室などに設けられ、図示しないRAM、ROM、CPU、入出力ポート及び記憶装置を備えた演算装置である。エレベータ制御部6には、図1に示すように、乗りかご2に一端が取り付けられたテールコード9が接続している。テールコード9は、動力線や伝送線を束ねたコードであり、乗りかご2内の操作装置とエレベータ制御部6とを接続している。エレベータ制御部6は、乗りかご2の操作装置の各種のボタンや、各階の乗場の呼び装置の呼びボタン、駆動機構5などとも接続して、エレベータ1全体の制御をつかさどる。
【0018】
コンペンセーション装置30は、コンペンロープ7と、錘取付部11を備えている。コンペンロープ7は、可撓性を有しかつ長尺な周知のワイヤ(鋼索)で構成されて、断面が略円形の長尺に形成されている。コンペンロープ7の断面形状は、このコンペンロープ7の全長に亘って一定に形成されている。コンペンロープ7の長さは、昇降路の全長の略半分である。コンペンロープ7は、一端部が乗りかご2に連結されかつ他端部がカウンタウェイト3に連結されて、乗りかご2及びカウンタウェイト3に懸架されている。さらに、コンペンロープ7は、前記一端と前記他端との間の中央部が昇降路内で折り返されている。本実施形態では、コンペンロープ7の一端が、乗りかご2の底部に取り付けられ、かつ他端が、カウンタウェイト3の底部に取り付けられている。コンペンロープ7の中央部には、昇降路の下端部に回転自在に設けられたコンペンシーブ10が掛けられている。コンペンシーブ10は、コンペンロープ7に張力を付与する。前述したコンペンロープ7は、乗りかご2とカウンタウェイト3が昇降路内を昇降する際のメインロープ4の重量を相殺するように、後述する錘取付部11に取り付けられる補助錘13と合わせて質量が調整される。また、コンペンロープ7は、コンペンシーブ10などと協働して、乗りかご2とカウンタウェイト3が昇降路内を昇降する際に、これらの振動を抑制する。
【0019】
コンペンロープ7には、図1及び図2に示すように、複数の錘止め12が取り付けられている。本実施形態では、複数の錘取付部11は、コンペンロープ7の乗りかご2及びカウンタウェイト3寄りの両端部に設けられている。錘止め12は、コンペンロープ7の両端部のそれぞれにおいて、このコンペンロープ7の長手方向に沿って間隔をあけて設けられている。また、錘止め12は、コンペンロープ7の両端部のそれぞれにおいて等間隔に設けられている。錘止め12は、金属で構成され、円環状に形成されている。錘止め12は、内側にコンペンロープ7を通した状態で、溶接されることなどによって、このコンペンロープ7に取り付けられている。複数の錘止め12のうちの互いに隣り合う二つの錘止め12は、錘取付部11を構成している。このように構成された錘取付部11には、図2に示すように、補助錘13を着脱(取り付け)可能となっている。錘取付部11は、錘止め12の表面上に補助錘13を重ねることで、補助錘13が脱落(落下)することを防止する。
【0020】
補助錘13は、全体として円筒状に形成され、長さが互いに隣り合う錘止め12間の間隔よりも若干短く形成されているとともに、内径がコンペンロープ7の外径よりも若干大きく形成されている。補助錘13は、一対の錘部材14で構成されている。一対の錘部材14は、それぞれ、金属で構成され、半円筒状に形成されている。錘部材14は、互いの間にコンペンロープ7を通した状態で、溶接されることなどによって、互いに固定される。補助錘13は、互いに隣り合う錘止め12間に配置されかつ互いの間にコンペンロープ7を通した一対の錘部材14同士が溶接されて、錘取付部11に取り付けられる。前述した構成の錘取付部11は、エレベータ1が建造物の昇降路に設置される際に、乗りかご2とカウンタウェイト3が昇降する際のメインロープ4の重量を相殺できるように、補助錘13が取り付けられたり、補助錘13が取り外される。即ち、複数の錘取付部11は、補助錘13とコンペンロープ7などを合わせた質量が、乗りかご2とカウンタウェイト3が昇降する際のメインロープ4の重量を相殺できる質量となるように、適宜、補助錘13が取り付けられたり、補助錘13が取り外される。また、錘取付部11は、質量の異なる複数種の補助錘13から所望の質量の補助錘13を選択して取り付けるようにしても良い。なお、補助錘13の質量が2〜3kgで、かつ、錘取付部11が20程度設けられているのが望ましい。
【0021】
前述した構成のエレベータ1は、巻き上げ機がメインロープ4をその長手方向に移動させることで、乗りかご2とカウンタウェイト3とを互いに上下反対方向に昇降させて、乗りかご2を所望の階に運搬する。このとき、エレベータ1は、かご用ガイドレールが乗りかご2の昇降方向を案内し、ウェイト用ガイドレールがカウンタウェイト3の昇降方向を案内する。さらに、コンペンロープ7などがコンペンシーブ10などと協働して、乗りかご2とカウンタウェイト3の振動を抑制する。
【0022】
上記のように構成されたエレベータ1のコンペンセーション装置30は、一端が乗りかご2の底部に取り付けられかつ他端がカウンタウェイト3の底部に取り付けられた長尺のコンペンロープ7に、補助錘13を着脱可能な錘取付部11を複数設けているので、複数の錘取付部11に補助錘13を取り付けるか否か又は取り付ける補助錘13の質量を調整することにより、コンペンロープ7と補助錘13とを合わせた質量を容易に増減することができる。即ち、エレベータ1の設置時に、コンペンロープ7のみの質量を調整するのではなく、コンペンロープ7と補助錘13とを合わせた質量を調整できるので、これらコンペンロープ7と補助錘13とを合わせた質量の調製幅をコンペンロープ7のみの質量を調整する場合よりも広くすることができる。勿論、予め錘取付部11に補助錘13を取り付けておき、エレベータ1の設置時に錘取付部11から補助錘13を取り外すようにしても良い。この場合には、設置時にコンペンロープ7の質量を減少させることができる。よって、エレベータ1の建造物の昇降路内への設置時に、コンペンロープ7などの質量を所望の質量に容易に調整することができる。したがって、コンペンロープ7などの質量の調整のために、再度、コンペンロープ7の発注などを行なう必要が生じない。
【0023】
また、コンペンロープ7と補助錘13とを合わせた質量を容易に増減することができるので、昇降路の長さの異なるエレベータ1間において、単位長さ当たりの質量が等しく外径の等しい同一品番のコンペンロープ7を用いても、このコンペンロープ7などの質量を適切な質量に調整することができる。よって、昇降路の長さの異なるエレベータ1間であっても、部品の共通化を図ることができ、エレベータ1のコストの低減を図ることができる。
【0024】
[変形例1]
以下、実施形態1に係るエレベータ1の変形例1について説明する。なお、前述した実施形態1と同一部分には、同一符合を付して説明を省略する。図3は、実施形態1に係る変形例1のエレベータの構成を示す説明図である。
【0025】
実施形態1の変形例1では、図3に示すように、エレベータ制御部6に接続した検出部としての落下検出装置15を備えている。落下検出装置15は、図3に示すように、装置本体16と、この装置本体16に昇降自在に設けられた落下検出板17とを備えている。装置本体16は、図示しないスイッチなどを収容しかつ昇降路の下部に設けられている。落下検出板17は、昇降路の下部でかつ乗りかご2の下方に配置されている、落下検出板17は、錘取付部11から落下した補助錘13を受けることのできる位置に設けられている。落下検出板17は、補助錘13を受けると、補助錘13を受けていない図3中に実線で示す位置から図3中に二点鎖線で示す位置まで降下する。落下検出板17が補助錘13を受けていない図3中に実線で示す位置に位置すると、装置本体16内のスイッチの接点が閉じ、落下検出板17が補助錘13を受けた図3中に二点鎖線で示す位置に位置すると、装置本体16内のスイッチの接点が開く。落下検出装置15は、スイッチの接点が開いているか否かを示す情報をエレベータ制御部6に向かって出力することで、落下検出板17が補助錘13を受けたか否か即ち補助錘13が落下したか否かを検出し、検出した結果をエレベータ制御部6に向かって出力する。
【0026】
実施形態1の変形例1では、エレベータ制御部6が、落下検出装置15からスイッチの接点が開いている情報が入力されると即ち落下検出装置15が補助錘13が落下したことを検出すると、乗りかご2が最寄り階に位置するまで巻き上げ機を駆動した後、この巻き上げ機の運転即ちエレベータ1の運転を停止する。このように、エレベータ制御部6は、落下検出装置15が錘取付部11から補助錘13が落下したことを検出すると巻き上げ機の運転状況を変更する。
【0027】
この変形例1のエレベータ1のコンペンセーション装置30によれば、錘取付部11から補助錘13が脱落すると、巻き上げ機を停止するので、コンペンロープ7などの質量が変化して、アンバランスな状態でのエレベータ1の運転を抑制できる。また、この変形例1では、エレベータ制御部6が、落下検出装置15からスイッチの接点が開いている情報が入力されると即ち落下検出装置15が補助錘13が落下したことを検出すると、巻き上げ機の回転速度即ち乗りかご2の昇降速度を減速して、エレベータ1の運転を継続しても良い。
【0028】
[変形例2]
以下、実施形態1に係るエレベータ1の変形例2について説明する。なお、前述した実施形態1及び変形例1と同一部分には、同一符合を付して説明を省略する。図4は、実施形態1に係る変形例2のエレベータのコンペンセーション装置の錘取付部を拡大して示す斜視図、図5は、図4中のV−V線に沿う断面図、図6は、図4中のVI−VI線に沿う断面図である。
【0029】
実施形態1の変形例2では、錘取付部11は、図4に示すように、衝突規制部18を備えている。衝突規制部18は、図4乃至図6に示すように、複数の支持針19と、複数の支持片20とを備えている。本実施形態では、支持針19と支持片20は、それぞれ、四つ設けられている。支持針19は、金属で構成されかつ針金状に形成されている。支持針19は、中央部と一端部が錘取付部11を構成する二つの錘止め12を貫通して、一端部と他端部とが寄り合わされて張力が付与された状態で、錘止め12に取り付けられている。また、支持針19は、適宜箇所が錘止め12に溶接されて、固定されている。支持針19は、錘止め12に取り付けられた状態で、長手方向がコンペンロープ7の長手方向と平行である。支持針19は、錘止め12の周方向に等間隔に設けられている。
【0030】
支持片20は、金属で構成されかつ板状に形成されている。支持片20は、支持針19の中央部と錘部材14の外周面との双方に溶接されるなどして固定されている。支持針19に張力が付与され、かつ支持片20が支持針19と錘部材14の外周面との双方に固定されていることで、衝突規制部18は、周方向に均等に、錘部材14をコンペンロープ7の外周方向に引っ張って、コンペンロープ7と錘取付部11に取り付けられた補助錘13の錘部材14とが互いに衝突することを規制する。
【0031】
この変形例2のエレベータ1のコンペンセーション装置30によれば、コンペンロープ7と錘取付部11に取り付けられた補助錘13の錘部材14とが衝突することを衝突規制部18が規制するので、乗りかご2の昇降中などにコンペンロープ7と補助錘13とが衝突することを防止でき、これらが衝突することで生じる異音も防止することができる。
【0032】
なお、実施形態1、変形例2においては、後述する実施形態2のように、コンペンロープ7の長手方向の中央部(前述した一端と他端との間)に錘取付部11を複数設けて、コンペンシーブ10を設けなくても良い。この場合には、錘取付部11をコンペンロープ7の両端の間の中央部に設けているので、このコンペンロープ7に張力を付与するためにコンペンシーブ10などを掛ける必要が生じない。このために、エレベータ1の設置にかかる工数などを削減できるとともに、エレベータ1自体のコストの低減を図ることができる。
【0033】
[実施形態2]
以下、実施形態2に係るエレベータ1のコンペンセーション装置30について説明する。なお、前述した実施形態1、変形例1及び2と同一部分には、同一符合を付して説明を省略する。図7は、実施形態2に係るエレベータの構成の要部を示す説明図、図8は、実施形態2に係るエレベータのコンペンセーション装置のコンペンベルトの要部を示す斜視図、図9は、図8中のIX−IX線に沿う断面図である。
【0034】
実施形態2では、エレベータ1のコンペンセーション装置30は、図7に示すように、調製部材としてのコンペンベルト21を備え、錘取付部22がコンペンベルト21の両端の間の中央部に複数設けられて、コンペンシーブ10を備えていない。
【0035】
コンペンベルト21は、断面が偏平な矩形の長尺に形成されている。コンペンベルト21の断面形状は、このコンペンベルト21の全長に亘って一定に形成されている。コンペンベルト21の長さは、昇降路の全長の略半分である。コンペンベルト21の一端が、乗りかご2の底部に取り付けられ、かつ他端が、カウンタウェイト3の底部に取り付けられている。コンペンベルト21もコンペンロープ7と同様に、乗りかご2とカウンタウェイト3が昇降する際のメインロープ4の重量を相殺するように、その質量が調整される。コンペンベルト21もコンペンロープ7と同様に、乗りかご2とカウンタウェイト3が昇降する際に、これらの振動を抑制する。なお、コンペンベルト21は、鋼線がベルト状に編まれてゴムにより被覆されて構成されたり、金属などを含んだコムにより構成されることができる。
【0036】
コンペンベルト21の中央部に設けられた複数の錘取付部22は、図8及び図9に示すように、コンペンベルト21を貫通した孔23により構成されている。孔23の平面形状は、矩形状に形成されており、コンペンベルト21の長手方向に等間隔に設けられている。錘取付部22は、互いに隣合う二つの孔23により構成されている。また、実施形態2の錘取付部22に取り付けられる補助錘24は、金属で構成され、かつ、図8及び図9に示すように、質量体部25と一対の係止片26とを一体に備えている。質量体部25は、直方体状に形成されている。係止片26は、質量体部25の互いに裏側に位置する面から互いに逆向きに延在している。補助錘24は、質量体部25が、コンペンベルト21の互いに隣り合う二つの孔23間に重ねられ、係止片26が孔23内に通された後にコンペンベルト21に密に重なるように折り曲げられて、錘取付部22に取り付けられる。このように、補助錘24は、係止片26が孔23内に係止することで、錘取付部22に取り付けられる。
【0037】
実施形態2のエレベータ1のコンペンセーション装置30によれば、錘取付部22をコンペンベルト21の両端の間の中央部に設けているので、このコンペンベルト21に張力を付与するためにコンペンシーブ10などを掛ける必要が生じない。このために、エレベータ1の設置にかかる工数などを削減できるとともに、エレベータ1自体のコストの低減を図ることができる。
【0038】
なお、実施形態2においても、実施形態1と同様に、錘取付部22をコンペンベルト21の両端部に設けて、コンペンシーブ10を設けても良い。
【0039】
なお、以上で説明したエレベータ1は、上述した実施形態及び変形例を複数組み合わせることで構成してもよい。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0041】
1 エレベータ
2 乗りかご
3 カウンタウェイト(釣り合い錘)
4 メインロープ
6 エレベータ制御部(制御部)
7 コンペンロープ(調製部材)
11 錘取付部
13 補助錘
15 落下検出装置(検出部)
18 衝突規制部
21 コンペンベルト(調製部材)
22 錘取付部
24 補助錘
30 コンペンセーション装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごと釣り合い錘が昇降路内を昇降する際のメインロープの重量を相殺するエレベータのコンペンセーション装置において、
一端が前記乗りかご、他端が前記釣り合い錘に取り付けられ、かつ、可撓性を有する長尺に形成されているとともに、中央部が昇降路内で折り返されている調整部材と、
前記調整部材に複数設けられかつ補助錘を着脱可能な錘取付部と、を備えることを特徴とする、
エレベータのコンペンセーション装置。
【請求項2】
前記錘取付部に取り付けられた前記補助錘が落下したか否かを検出する検出部と、
前記検出部が前記錘取付部から前記補助錘が落下したことを検出すると前記乗りかごと前記釣り合い錘の昇降動作を変更する制御部と、を備えることを特徴とする、
請求項1に記載のエレベータのコンペンセーション装置。
【請求項3】
前記錘取付部を、前記調整部材の前記一端と前記他端との間の中央部に設けたことを特徴とする、
請求項1に記載のエレベータのコンペンセーション装置。
【請求項4】
前記調整部材と、前記錘取付部に取り付けられた前記補助錘とが互いに衝突することを規制する衝突規制部を備えることを特徴とする、
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のエレベータのコンペンセーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−49541(P2013−49541A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189229(P2011−189229)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】