説明

エレベータのドア装置

【課題】非接触式セーフティ装置を乗りかごに追加的に取付ける際、作業者が昇降路へ入ることなく、非接触式セーフティ装置を容易に取付けることが可能なエレベータのドア装置を提供する。
【解決手段】エレベータのドア装置20は、一対のドアパネル21aと、ドアパネル21aの戸当たり側端部22aに設けられ、障害物との機械式接触により障害物を検知する作動部30と、この作動部30をドアパネル21aに連結する連結部31とを有する機械式セーフティ装置23aとを備えている。また非接触式センサ37と、非接触式センサ37を支持する支持機構38とを有する非接触式セーフティ装置24aが設けられている。非接触式セーフティ装置24aの支持機構38は、機械式セーフティ装置23aの連結部31に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの乗りかごに設けられ、機械式セーフティ装置と非接触式セーフティ装置とを有するエレベータのドア装置に係り、とりわけ非接触式セーフティ装置を追加的に設けることが容易なエレベータのドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータのドアには、セーフティ装置が設けられており、乗客がドアに挟まれてけがをするような事故の発生を防止している。この種のセーフティ装置の作動方式には、大きく分けて機械的な接触により作動する接触式と、非接触センサを利用して作動する非接触式とがある。
【0003】
接触式のセーフティ装置では、ドアパネルの戸当たり側端部から突出するセーフティシューを設け、このセーフティシューが乗客のからだに接触して後退するときの変位を検出してドアをリオープンさせる。
【0004】
他方、非接触式のセーフティ装置では、一方のドアパネルの戸当たり側端部に投光器を設け、他方のドアパネルの戸当たり側端部には受光器を設け、ドアの戸閉動作中に、光線が遮られたときに、ドアをリオープンさせるというものである。
【0005】
一般のエレベータでは、セーフティ装置に機械式(接触式)、電気式(非接触式)のいずれかを単独で用いる他、両者を組み合わせることで、作動不良や誤作動を防止し、信頼性を高めたものもある(特許文献1および特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−118959号公報
【特許文献2】特開平11−322238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したような従来のエレベータにおいて、非接触式セーフティ装置は乗りかごのかご枠(かご出入口柱)やドアパネルに直接取付けられている。このため、非接触式セーフティ装置を乗りかごに追加的に取付けようとする場合、ドアパネルやかご枠を新たに加工する必要がある。したがって、既設の乗りかごに非接触式セーフティ装置を取付ける際、作業者はエレベータの昇降路内に入って取付作業を行なう必要がある。このような取付け作業は、時間や手間がかかるとともに、危険性を伴うものである。
【0007】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、非接触式セーフティ装置を乗りかごに追加的に取付ける際、作業者が昇降路へ入ることなく、非接触式セーフティ装置を容易に取付けることが可能なエレベータのドア装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、エレベータの乗りかごに設けられたエレベータのドア装置において、各々が戸当たり側端部を有する一対のドアパネルと、少なくとも一方の前記ドアパネルの戸当たり側端部に設けられ、障害物との機械式接触により障害物を検知する作動部と、この作動部を前記ドアパネルに連結する連結部とを有する機械式セーフティ装置と、前記機械式セーフティ装置に並設され、前記ドアパネルの戸当たり側端部近傍に存在する前記障害物を検出する非接触式センサと、この非接触式センサを支持する支持機構とを有する非接触式セーフティ装置とを備え、前記非接触式セーフティ装置の前記支持機構は、前記機械式セーフティ装置の前記連結部に固定されていることを特徴とするエレベータのドア装置である。
【0009】
本発明は、前記非接触式セーフティ装置の前記支持機構は、前記非接触式センサを保持するセンサ側ブラケットと、このセンサ側ブラケットを前記連結部に連結する連結部側ブラケットとを有することを特徴とするエレベータのドア装置である。
【0010】
本発明は、前記機械式セーフティ装置の前記連結部は締結孔を有し、前記非接触式セーフティ装置の前記支持機構の前記連結部側ブラケットは、前記連結部の前記締結孔に挿入された締結手段を介して前記ドアパネルに固定されることを特徴とするエレベータのドア装置である。
【0011】
本発明は、前記機械式セーフティ装置の前記作動部は、前記ドアパネルと前記非接触式セーフティ装置の前記非接触式センサとの間に位置していることを特徴とするエレベータのドア装置である。
【0012】
本発明は、前記非接触式セーフティ装置の前記非接触式センサは、前記ドアパネルの戸当たり側端部に沿って配置された多孔軸センサからなることを特徴とするエレベータのドア装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、非接触式セーフティ装置の非接触式センサは、支持機構を介して機械式セーフティ装置の連結部に取付けられているので、機械式セーフティ装置を有するエレベータのドア装置に追加的に非接触式センサを取付ける場合、ドアパネルやかご枠に新たな加工を施す必要がない。したがって、既設の乗りかごに非接触式セーフティ装置を容易に取付けることができるとともに、取付けた後のメンテナンス作業も容易に行なうことができる。また作業者が昇降路へ入ることなく作業を行えるので、安全性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態について、図1乃至図4を参照して説明する。
ここで、図1は、乗りかごの全体を示す水平断面図であり、図2は、本発明の一実施の形態によるエレベータのドア装置を乗り場側から見た正面図である。また図3は、図2のA部拡大図であり、図4は、図2のB方向から見たエレベータのドア装置の上面図である。
【0015】
まず、図1により、エレベータ装置の乗りかご周辺の構成について説明する。
図1に示すように、エレベータ装置10は、建造物の昇降路11内を昇降する乗りかご12と、乗りかご12の出入口13を囲むように配置された一対のかご出入口柱14a、14bと、乗りかご12の出入口13に設けられたドア装置20とを備えている。また、乗り場15の出入口16には一対のホールドア17a、17bが開閉自在に設けられ、さらに出入口16を囲むようにホール三方枠18が設置されている。
【0016】
次に、図2乃至図4により、本実施の形態によるエレベータのドア装置の構成について説明する。
図2に示すように、エレベータのドア装置20は、各々が戸当たり側端部22a、22bを有する一対のドアパネル21a、21bと、各ドアパネル21a、21bの戸当たり側端部22a、22bに設けられた機械式セーフティ装置23a、23bと、各機械式セーフティ装置23a、23bに並設された非接触式セーフティ装置24a、24bとを備えている。
【0017】
また各ドアパネル21a、21bには、図示しないドアモータからの駆動力を伝達するドアリンク25a、25bが連結され、このドアリンク25a、25bが作動することにより各ドアパネル21a、21bが開閉動作するようになっている。
【0018】
一方、各機械式セーフティ装置23a、23bは、後述するように作動部30を有し、この作動部30にセーフティ作動装置26a、26bが連結されている。すなわちセーフティ作動装置26a、26bは、ドアパネル21a、21bの開閉動作と連動するリンク機構29a、29bと、リンク機構29a、29bからの駆動力を伝達するカム機構28a、28bと、各作動部30に揺動可能に取付けられ、カム機構28a、28bから伝達された駆動力によって各作動部30を作動させる作動リンク27a、27bとを有している。
【0019】
次に、図3および図4により、上述した機械式セーフティ装置23a、23bおよび非接触式セーフティ装置24a、24bの構成について更に説明する。なお、図3および図4において、便宜上一方のドアパネル21a側の構成について説明するが、他方のドアパネル21b側の構成も同様である。
【0020】
図3および図4に示すように、機械式セーフティ装置23a、23bは、乗客や荷物等の障害物との機械式接触によりこの障害物を検知する作動部(セーフティシュー)30と、この作動部30に第1支軸33を中心に回動自在に連結されたリンク32と、リンク32および作動部30をドアパネル21aに連結する連結部31とを有している。
【0021】
このうちリンク32は、第2支軸34を中心に連結部31に対して回動自在となっている。また連結部31は、予め形成された締結孔36a−36dを有し、この各締結孔36a−36dに挿入されたボルト等からなる締結手段35a−35dを介してドアパネル21aに固定されている。
【0022】
また機械式セーフティ装置23a、23bは、図示しない制御装置に接続され、制御装置は、作動部30が乗客等に接触して後退するときの変位を検出してドアパネル21a、21bをリオープンさせるようになっている。
【0023】
一方、非接触式セーフティ装置24aは、ドアパネル21aの戸当たり側端部22a近傍に存在する障害物を検出する非接触式センサ37と、この非接触式センサ37を支持する支持機構38とを有している。このうち非接触式センサ37は、ドアパネル21aの戸当たり側端部22aに沿って上下に配置された多孔軸センサからなっている。
【0024】
この非接触式セーフティ装置24a、24bは、上述した制御装置に接続され、制御装置は、ドアパネル21a、21bの戸閉動作中に非接触式センサ37の光線が遮られたときに、ドアパネル21a、21bをリオープンさせるようになっている。
【0025】
また支持機構38は、非接触式センサ37を保持するセンサ側ブラケット39と、ボルト41a、41bを介してセンサ側ブラケット39に連結され、センサ側ブラケット39を連結部31に連結する連結部側ブラケット40とを有している。
【0026】
このうち連結部側ブラケット40は、上述した連結部31の締結孔36dに挿入された締結手段35dを介して連結部31およびドアパネル21aに固定されている。すなわち締結手段35dは、連結部31をドアパネル21aに固定するとともに、連結部側ブラケット40をドアパネル21aに固定する役割をも果たす。
【0027】
図4に示すように、連結部側ブラケット40は、直角に曲げられた2つの屈曲部40a、40bを有している。これにより、非接触式セーフティ装置24aの非接触式センサ37は、ドアパネル21aから見て機械式セーフティ装置23aの作動部30の反対側に配置されている。すなわち、作動部30はドアパネル21aと非接触式センサ37との間に位置している。
【0028】
なおセンサ側ブラケット39を連結部側ブラケット40に対して上下に移動可能に構成し、非接触式センサ37の検知範囲を容易に調整できるようにしても良い。
【0029】
なお、図3乃至図4において、非接触式セーフティ装置24aの支持機構38は、ドアパネル21aの上部に設けられた連結部31に固定されているが、更にドアパネル21aの下部(図2に示すセーフティ作動装置26a近傍)にも第2の連結部(連結部31と略同様の構成からなる)が設けられている。また非接触式センサ37は、第2の支持機構(支持機構38と略同様の構成からなる)を介してこの第2の連結部にも連結されている。
【0030】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について述べる。
とりわけ、予めドアパネル21aに設けられた機械式セーフティ装置23aに、新たに非接触式セーフティ装置24aを取付ける際の作用について説明する。
【0031】
まず、非接触式セーフティ装置24aの非接触式センサ37と支持機構38とを、ボルト41a、41bを介して予め連結しておく。次いで非接触式センサ37および支持機構38を乗りかご12内に搬入する。
【0032】
次に、締結手段35dを機械式セーフティ装置23aの連結部31の締結孔36dから一旦取り外した後、締結手段35dを、非接触式セーフティ装置24aの支持機構38の連結部側ブラケット40を介して再度締結孔36dに挿入する。このようにして、非接触式セーフティ装置24aの支持機構38が連結部31およびドアパネル21aに固定される。
【0033】
このように本実施の形態によれば、非接触式セーフティ装置24aの非接触式センサ37は、支持機構38を介して機械式セーフティ装置23aの連結部31に取付けられるので、機械式セーフティ装置23aを有するエレベータのドア装置20に追加的に非接触式センサ37を取付ける場合、ドアパネル21aやかご枠に新たな加工を施す必要がない。したがって、既設の乗りかご12に非接触式セーフティ装置24aを容易に取付けることができるとともに、取付けた後のメンテナンス作業も容易に行なうことができる。また作業者が昇降路11へ入ることなく作業を行えるので、安全性を高めることができる。
【0034】
また本実施の形態によれば、機械式セーフティ装置23aの連結部31に予め締結孔36dが形成され、支持機構38の連結部側ブラケット40は、この締結孔36dに挿入された締結手段35dを介してドアパネル21aに固定されるので、既設の構造を利用して非接触式センサ37を機械式セーフティ装置23aに容易に取付けることができる。
【0035】
さらに本実施の形態によれば、機械式セーフティ装置23aの作動部30は、ドアパネル21aと非接触式セーフティ装置24aの非接触式センサ37との間に位置しているので、作動部30より乗り場15側に位置する障害物を、非接触式センサ37により確実に検知することができる。
【0036】
なお、本実施の形態において、機械式セーフティ装置23a、23bおよび非接触式セーフティ装置24a、24bは、一対のドアパネル21a、21bの両方に設けられているが、これに限らず、機械式セーフティ装置および非接触式セーフティ装置はドアパネル21a、21bのうちいずれか一方に設けられていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、乗りかごの全体を示す水平断面図。
【図2】図2は、本発明の一実施の形態によるエレベータのドア装置を乗り場側から見た正面図。
【図3】図3は、図2のA部拡大図。
【図4】図4は、図2のB方向から見たエレベータのドア装置の上面図。
【符号の説明】
【0038】
10 エレベータ装置
11 昇降路
12 乗りかご
13 出入口
14a、14b かご出入口柱
15 乗り場
16 出入口
17a、17b ホールドア
18 ホール三方枠
19
20 ドア装置
21a、21b ドアパネル
22a、22b 戸当たり側端部
23a、23b 機械式セーフティ装置
24a、24b 非接触式セーフティ装置
25a、25b ドアリンク
26a、26b セーフティ作動装置
27a、27b 作動リンク
28a、28b カム機構
29a、29b リンク機構
30 作動部
31 連結部
32 リンク
33 第1支軸
34 第2支軸
35a−35d 締結手段
36a−36d 締結孔
37 非接触式センサ
38 支持機構
39 センサ側ブラケット
40 連結部側ブラケット
40a、40b 屈曲部
41a、41b ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの乗りかごに設けられたエレベータのドア装置において、
各々が戸当たり側端部を有する一対のドアパネルと、
少なくとも一方の前記ドアパネルの戸当たり側端部に設けられ、障害物との機械式接触により障害物を検知する作動部と、この作動部を前記ドアパネルに連結する連結部とを有する機械式セーフティ装置と、
前記機械式セーフティ装置に並設され、前記ドアパネルの戸当たり側端部近傍に存在する前記障害物を検出する非接触式センサと、この非接触式センサを支持する支持機構とを有する非接触式セーフティ装置とを備え、
前記非接触式セーフティ装置の前記支持機構は、前記機械式セーフティ装置の前記連結部に固定されていることを特徴とするエレベータのドア装置。
【請求項2】
前記非接触式セーフティ装置の前記支持機構は、前記非接触式センサを保持するセンサ側ブラケットと、このセンサ側ブラケットを前記連結部に連結する連結部側ブラケットとを有することを特徴とする請求項1記載のエレベータのドア装置。
【請求項3】
前記機械式セーフティ装置の前記連結部は締結孔を有し、前記非接触式セーフティ装置の前記支持機構の前記連結部側ブラケットは、前記連結部の前記締結孔に挿入された締結手段を介して前記ドアパネルに固定されることを特徴とする請求項2記載のエレベータのドア装置。
【請求項4】
前記機械式セーフティ装置の前記作動部は、前記ドアパネルと前記非接触式セーフティ装置の前記非接触式センサとの間に位置していることを特徴とする請求項1記載のエレベータのドア装置。
【請求項5】
前記非接触式セーフティ装置の前記非接触式センサは、前記ドアパネルの戸当たり側端部に沿って配置された多孔軸センサからなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載のエレベータのドア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−155032(P2009−155032A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334542(P2007−334542)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】