エレベータのピット梯子
【課題】 エレベータかごと昇降路壁とのスペースが小さい場合であっても保守者が安全かつ容易に昇り降りすることができ、しかもエレベータかごの昇降動作に支障を与えることのないエレベータのピット梯子を提供する。
【解決手段】 エレベータの昇降路内に、支柱1およびステップ2からなる梯子本体を配設する。この梯子本体を、可動アーム3および固定アングル7によって、昇降路の壁面5に近接した収納位置と昇降路の壁面5から離れた使用位置の間で移動自在となるように壁面5に取り付ける。梯子本体が使用位置にあるときは、可動アーム3が水平となって固定アングル7の切欠部7c,7dを塞ぐため、ロックバー8によって支柱1を固定することはできず、収納状態のときにのみロック可能となる。このロック状態はマイクロスイッチ9によって検知され、エレベータの昇降動作が制限される。
【解決手段】 エレベータの昇降路内に、支柱1およびステップ2からなる梯子本体を配設する。この梯子本体を、可動アーム3および固定アングル7によって、昇降路の壁面5に近接した収納位置と昇降路の壁面5から離れた使用位置の間で移動自在となるように壁面5に取り付ける。梯子本体が使用位置にあるときは、可動アーム3が水平となって固定アングル7の切欠部7c,7dを塞ぐため、ロックバー8によって支柱1を固定することはできず、収納状態のときにのみロック可能となる。このロック状態はマイクロスイッチ9によって検知され、エレベータの昇降動作が制限される。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はエレーベータのピット内に配設されるピット梯子に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種のエレベータのピット梯子は、例えば図12〜14に示したように構成されていた。ここで、図12は正面図、図13は側面図、図14は図12におけるA部の拡大斜視図である。
【0003】これらの図に示したように、このピット梯子は支柱101とステップ102とからなり、固定アングル104によってエレベータ昇降路の壁面105に固定されている。通常、固定アングル104は、図12に示したように上下2箇所ずつ合計4箇所にてボルトによって壁面105に固定されている。
【0004】ステップ102と壁面105との水平距離は極めて小さく、例えば約50ミリメートル程度となっている。これは、図13に示したように、壁面105とエレベータかご110の敷居111の端部との隙間が狭いため、ステップ102と壁面105との水平距離をあまりに大きくすると、エレベータかご110の昇降時に敷居111の端部がピット梯子に衝突してしまうからである。
【0005】このように、従来のエレベータのピット梯子は、設置スペースの関係から昇降路の壁面にかなり近接して固設されていたので、保守者がピット梯子を昇降する際のステップ102の足掛け有効幅が小さかった。このため、昇降しづらく、また安全性にも欠けるという不具合があった。
【0006】このような問題に対処すべく、例えば特開平6−146760号公報には、ピット梯子を可動式にすると共にその可動部分に安全スイッチを設けて、エレベータかごの昇降動作を制限できるようにした可動式ピット梯子が記載されている。この梯子によれば、梯子使用時には梯子と壁との距離を確保できるので保守者が昇降し易くなる一方、エレベータ昇降動作時には梯子を壁側に近接収納できるので、エレベータかごと壁との距離が小さくてもエレベータかごと梯子との衝突を回避できる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記の可動式梯子では、梯子が壁側から離れて使用状態になり安全スイッチが作動している間はエレベータかごの昇降動作が禁じられるようになっているため、エレベータかごと梯子との衝突を防止することができる。
【0008】しかしながら、上記の可動梯子では梯子の収納状態を確実に保持するためのロック機構が設けられていなかったので、エレベータかごの昇降移動中または昇降可能状態での停止時において、振動や何らかの原因で梯子が壁側から離れて収納状態から使用状態になってしまうことも考えられる。この場合には、上記の安全スイッチが作動し、エレベータかごが昇降動作を停止しまたは昇降開始が制限されるので、梯子との衝突は回避されるものの、乗客がエレベータかご内に閉じ込められるという不都合な事態も生じ得る。また、その場合、保守者はエレベータかごが停止した原因を調べた上でピット内に入って復旧作業(梯子を壁側に収納する作業)を行わなければならず、エレベータとしての円滑な運行に支障が生じ、信頼性に欠けるという問題があった。
【0009】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、エレベータかごと昇降路壁とのスペースが小さい場合であっても保守者が安全かつ容易に昇り降りすることができ、しかもエレベータかごの昇降動作に支障を与えることのないエレベータのピット梯子を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1記載のエレベータのピット梯子は、エレベータの昇降路内に設けられ人が昇り降り可能な梯子本体と、この梯子本体を昇降路の壁面に近接した収納位置と昇降路の壁面から離れた使用位置の間で移動自在に壁面に取り付ける梯子可動機構と、前記梯子本体を前記収納位置に固定するロック機構と、このロック機構の作動を検知してエレベータの昇降動作を制限するための検知信号を出力するロック検知機構とを備えている。
【0011】このエレベータのピット梯子では、非使用時は梯子本体を昇降路の壁面に近接した位置に収納でき、使用時には昇降路の壁面から離れた位置に移動させることができる。そして、収納時において梯子本体はロック機構によってその収納位置に固定され、さらにそのロック状態がロック検知機構によって検知される。このロック検知状態においてはエレベータの昇降動作が制限される。
【0012】請求項2記載のエレベータのピット梯子は、請求項1記載のエレベータのピット梯子において、梯子本体が収納位置にあるときにのみロック機構が作動し得るように構成したものである。
【0013】このエレベータのピット梯子では、梯子本体が使用位置にあるときにはロック機構が作動し得ないため、梯子本体が壁面から離れている状態での誤ったロック行為が排除される。これにより、梯子本体が壁面から離れている状態においてロック検知機構がロック状態を検知してしまい、エレベータが動作可能状態になるという事態が回避される。
【0014】請求項3記載のエレベータのピット梯子は、請求項1記載のエレベータのピット梯子において、梯子本体が収納位置に移動したときにロック機構が自動的に作動するように構成したものである。
【0015】このエレベータのピット梯子では、梯子本体が収納位置に移動すると自動的にロックがなされるので、ロックし忘れが防止される。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】第1の実施の形態図1〜図4は本発明の一実施の形態に係るエレベータのピット梯子の構成および作用を表すものである。図1および図2に示したように、このピット梯子は、平行な2本の支柱1と、支柱1間に差し渡されて固設された複数のステップ2と、昇降路の壁面5に固定されたL字型の固定アングル4と支柱1との間を接続する可動アーム3とを備えている。支柱1およびステップ2は梯子本体を構成している。固定アングル4は、L字の一辺が壁面5から直立し、かつ鉛直方向を向くようにして、固定ボルト10cによって壁面5に固設されている。可動アーム3の一端側はリーマボルト10aによって支柱1の側面に回動自在に取り付けられ、他端側はリーマボルト10bによって固定アングル4の起立部分に回動自在に取り付けられている。なお、このような可動機構は、図12でいうとA位置以外の3か所に配設されている。
【0018】図3および図4は、図12でいうA位置に配設された可動機構、ロック機構およびロック検出機構の構造を表すものである。これらの図に示したように、この可動機構は、昇降路の壁面5に固定された“コ”の字型の固定アングル7と、固定アングル7と支柱1との間を接続する可動アーム3とを備えている。固定アングル7は、エレベータ昇降路の上方から見下ろしたときに“コ”の字型となるような姿勢で固定ボルト10cによって壁面5に固設されている。可動アーム3は図1に示したものと同一のもので、その一端側はリーマボルト10aによって支柱1の側面に回動自在に取り付けられ、他端側はリーマボルト10bによって固定アングル7の起立部に回動自在に取り付けられている。
【0019】固定アングル7の2つの起立部7a,7bには、それぞれに対応して切欠部7c,7dが形成されている。これらの切欠部7c,7dには、図4に示したように梯子本体が収納状態の場合(すなわち、支柱1および可動アーム3が完全に直立状態になっている場合)のみロックバー8を挿入することができる。一方、図3に示したように梯子本体が収納状態以外の場合(すなわち、支柱1および可動アーム3が直立状態になっていない場合)には挿入不可能となっている。ロックバー8にも2つの切欠部8a,8bが形成されており、これにより挿入時において固定アングル7の2つの切欠部7c,7dと互いに深く噛み合うようになっている。
【0020】また、固定アングル7の一方の起立部7aの外側面には、マイクロスイッチ9が配設され、ロックバー8が固定アングル7の切欠部7c,7dに完全に挿入されたときにその作動片が押されるようになっている。このマイクロスイッチ9はノーマリーオフ接点を有し、図示しないエレベータ安全回路に接続されている。したがって、ロックバー8が固定アングル7の切欠部7c,7dに挿入されていないときにはマイクロスイッチ9はオフ状態となっているため、エレベータは動作することができず、ロックバー8が固定アングル7の切欠部7c,7dに挿入されてマイクロスイッチ9がオン状態になって初めてエレベータは動作可能となるようになっている。
【0021】次に、このような構造のエレベータのピット梯子の作用を説明する。
【0022】梯子本体の使用時においては、図2および図3に示したように、支柱1を壁面から遠ざけるように引くと、梯子の4か所に設けられた可動アーム3が各リーマーボルト10bを支点として回転して水平状態になると共に、支柱1は可動アーム3に引かれ、支柱1の下端部がピット床面6に当たる所まで(図2)、壁面5から離れる。
【0023】この状態では、壁面5とステップ2との間には十分な距離が確保されており、ステップ2におけるいわゆる足掛け有効幅が大きいため、保守者は足の前後方向の中央部でステップを踏みつけることができ、安全に梯子を昇り降りすることができる。
【0024】また、この状態では、図3に示したように、可動アーム3が固定アングル7の一方の切欠部7cを塞ぎ、ロックバー8を挿入することが出来ないため、マイクロスイッチ9はオフ状態を保持する。このため、図示しないエレベータ安全回路によってエレベータは起動することができず、エレベータかごが梯子に衝突するのを防止することができる。
【0025】一方、図1および図4に示したように、梯子本体に対し図3の矢印Bの方向への力を加えると、可動アーム3は、支柱1を固定アングル4または固定アングル7に取り付けているリーマボルト10bを支点として上方に回転すると共に、支柱1は壁面5に接近し、ほぼ直立位置で支柱1の背面が壁面5に突き当たって止まる。したがって、図示しないエレベータかごの側面と梯子のステップ2との距離を充分確保することができ、エレベータかごの昇降時に梯子との衝突を避けることができる。
【0026】また、図4に示したように、梯子本体を収納した状態では、可動アーム3が直立して固定アングル7の切欠部7cが開放されるので、切欠部7c,7dへのロックバー8の挿入が可能になる。そこで、ロックバー8の切欠部8a,8bを固定アングル7の切欠部7c,7dに合わせて挿入することにより、ロックバー8によって支柱1を固定することができる。このとき、マイクロスイッチ9の作動片は、固定アングル7の切欠部7c,7dに挿入されたロックバー8によって押され、その接点がオン状態となる。これにより、エレベータ安全回路が解除状態となり、エレベータが動作可能状態となる。
【0027】このように、本実施の形態では、マイクロスイッチ9がロックバー8によるロック状態を検知しているときにのみエレベータが動作できるようにすると共に、梯子本体が収納状態以外の状態(使用状態または壁面5からわずかでも離れた状態)にあるときにはロックバー8によるロックができない構造としたので、収納状態以外の状態ではエレベータの動作を確実に禁止することができる。すなわち、仮に梯子本体が壁面5から離れた状態でもロックバー8を挿入できる構造とすると、これによりマイクロスイッチ9がオン状態となることから、梯子本体が壁面5から離れていてもエレベータが動作可能となり、エレベータかごと梯子との衝突事故の可能性を排除することができない。したがって、上記のように梯子本体が収納状態以外の状態にあるときはロックバー8を挿入できない構造とすることで、保守者による誤ったロック行為を禁じることができ、不測のエレベータ事故を確実に防止することができる。
【0028】一方、梯子本体が収納状態(梯子の支柱1および可動アーム3が直立した状態)にあるときは、ロックバー8によるロックを行うことによって支柱1を固定できるようにしたので、エレベータの移動や地震による振動等によって梯子本体が自重で壁面5から離れ、収納状態から図2および図3に示した状態になってしまうのを確実に阻止することができる。これにより、エレベータの動作中に梯子本体が自然に壁面5から離れてしまいエレベータかごに衝突するという事故を未然に防止することができる。尤も、本実施の形態では、たとえ保守者が梯子本体の収納後にロックバー8によるロックをし忘れてしまったとしても、この状態ではマイクロスイッチ9がオフ状態を保持しているため、エレベータは動作状態になく、いずれにしてもエレベータと梯子との衝突はありえない。
【0029】第2の実施の形態次に、本発明の他の実施の形態を説明する。
【0030】図5および図6は、本発明の他の実施の形態に係るエレベータのピット梯子の要部を表すものである。このうち、図5はピット梯子の使用時の状態を表し、図6はピット梯子の収納時の状態を表す。これらの図で図3および図4と同一構成要素には同一の符号を付すものとする。
【0031】なお、これらの図は図12でいうA位置に配設された可動機構、ロック機構およびロック検出機構の構造を表すものであり、A位置以外の3か所の可動機構は図1および図2に示したものと同様である。
【0032】本実施の形態では、図3および図4における固定アングル7に代えて、上方からみて“G”の字型の固定アングル12が固定ボルト10cによって壁面5に固定され、その一方の起立部12aに可動アーム3の一端側がリーマボルト10bによって回動自在に取り付けられている。可動アーム3の他端側は梯子本体の支柱1の側面にリーマボルト10aによって回動自在に取り付けられている。固定アングル12の他方の起立部のうち壁面5と平行な部分12bには、ロックバー13の一端側がリーマボルト10dによって回動自在に取り付けられている。このロックバー13の他端側には切欠部13aが形成され、また、固定アングル12の起立部12aにも切欠部12cが形成されている。この切欠部12cの下側にはマイクロスイッチ9が配設されている。その他の構成は上記実施の形態 (図3および図4)の場合と同様である。
【0033】次に、このような構成のエレベータのピット梯子の作用を説明する。
【0034】図5に示したように、梯子本体の使用状態においては、可動アーム3が水平になって固定アングル12の切欠部12cが塞がれるため、ロックバー13の切欠部13aとの係合ができない。このため、マイクロスイッチ9はオフ状態を保持し、エレベータは起動できない状態となる。
【0035】一方、図6に示したように、ステップ2を壁面5に近接させた収納状態においては、ロックバー13をリーマボルト10dを支点として矢印D方向に回転させることにより固定アングル12の切欠部12cにロックバー13の切欠部13aを係合させることができる。これにより、ロックバー13で支柱1を支える(ロックする)こととなる。このとき、ロックバー13がマイクロスイッチ9の作動片を押してオン状態とするので、エレベータは起動可能となる。
【0036】このように、本実施の形態では、上記の実施の形態(図3および図4)の場合と同様に、梯子本体が収納状態以外の状態にあるときはロックバー13を挿入できない構造とすることで保守者による誤ったロック行為を禁じることができ、不測のエレベータ事故を確実に防止することができると共に、梯子本体が収納状態にあるときはロックバー13によって梯子本体をロックできるようにしたので、エレベータの動作中に梯子本体が自然に壁面5から離れてエレベータかごに衝突するという事故を未然に防止することができる。
【0037】さらに、本実施の形態では、ロックバー13はリーマボルト10dによって固定アングル12に回動自在に取り付けられているため、上記実施の形態(図3R>3)の場合と異なり、非ロック時(すなわち、梯子使用時)におけるロックバー13の保管場所を考慮する必要がなく、ロックバー13の紛失を防止し得るという効果もある。
【0038】第3の実施の形態次に、本発明の他の実施の形態を説明する。
【0039】図7および図8は、本発明の他の実施の形態に係るエレベータのピット梯子の要部を表すものである。このうち、図7はピット梯子の使用時の状態を表し、図8はピット梯子の収納時の状態を表す。これらの図で図3および図4と同一構成要素には同一の符号を付すものとする。
【0040】なお、これらの図は図12でいうA位置に配設された可動機構、ロック機構およびロック検出機構の構造を表すものであり、A位置以外の3か所の可動機構は図1および図2に示したものと同様である。
【0041】本実施の形態では、図3および図4における固定アングル7に代えて、上方からみて“6”の字型の固定アングル14が固定ボルト10cによって壁面5に固定され、その一方の起立部14aに可動アーム3の一端側がリーマボルト10bによって回動自在に取り付けられている。可動アーム3の他端側は梯子本体の支柱1の側面にリーマボルト10aによって回動自在に取り付けられている。固定アングル14のうち壁面5と平行な部分14bは起立部14bの先端部から起立部14aにまで延びている。この平行な部分14bの中央部には、ロックバー15の中央部がリーマボルト10dによって回動自在に取り付けられている。このロックバー15の一端側には切欠部15aが形成されている。また、固定アングル14の起立部14aのうち、部分14bから突出した部分には切欠部14dが形成されている。マイクロスイッチ9は、固定アングル14の起立部14aに、その作動片が部分14bから突出するように配設されている。その他の構成は上記実施の形態(図3および図4)の場合と同様である。
【0042】次に、このような構成のエレベータのピット梯子の作用を説明する。
【0043】図7に示したように、梯子本体の使用状態においては、可動アーム3が水平になって固定アングル14の切欠部14dが塞がれるため、ロックバー15の切欠部15aとの係合ができない。このため、マイクロスイッチ9はオフ状態を保持し、エレベータは起動できない状態となる。なお、ロックバー15が矢印E方向に回転したとしても、ロックバー15の一端側が固定アングル14の起立部14aに突き当たり、ロックバー15の他端側がマイクロスイッチ9の作動片を押すことはないので、オン状態にはならない。
【0044】一方、図8に示したように、ステップ2を壁面5に近接させた収納状態においては、ロックバー15をリーマボルト10dを支点として矢印F方向に回転させることにより固定アングル14の切欠部14dにロックバー15の切欠部15aを係合させることができる。これにより、ロックバー15で支柱1を支える(ロックする)こととなる。このとき、ロックバー15の他端側がマイクロスイッチ9の作動片を押してオン状態とするので、エレベータは起動可能となる。
【0045】このように、本実施の形態では、上記の実施の形態(図5および図6)の場合と同様の効果を奏する。すなわち、保守者による誤ったロック行為を禁じることで不測のエレベータ事故を確実に防止すると共に、エレベータの動作中に梯子本体が自然に壁面5から離れてエレベータかごに衝突するという事故を未然に防止することができる。また、非ロック時(すなわち、梯子使用時)におけるロックバー15の保管場所の考慮が不要であり、ロックバー15の紛失を防止できるという点も同様である。
【0046】第4の実施の形態次に、本発明の他の実施の形態を説明する。
【0047】図9〜図11は、本発明の他の実施の形態に係るエレベータのピット梯子の要部を表すものである。このうち、図9はピット梯子の使用時の状態を表し、図10はピット梯子の収納時の状態を表し、図11は図10の状態を上方からみた平面図を表す。これらの図で図3および図4と同一構成要素には同一の符号を付すものとする。
【0048】なお、これらの図は図12でいうA位置に配設された可動機構、ロック機構およびロック検出機構の構造を表すものであり、A位置以外の3か所の可動機構は図1および図2に示したものと同様である。
【0049】本実施の形態では、上方からみて“コ”の字型の固定アングル17が固定ボルト10cによって壁面5に固定され、その一方の起立部17aに可動アーム3の一端側がリーマボルト10bによって回動自在に取り付けられている。可動アーム3の他端側は梯子本体の支柱1の側面にリーマボルト10aによって回動自在に取り付けられている。
【0050】起立部17aには貫通孔(図示せず)が形成され、この孔にロックバー18の先端部18aが摺動自在に挿入されている。ロックバー18の中央部に隣接するばね装着部18cは先端部18aとほぼ同径に形成され、この部分が固定アングル17の起立部17bに形成された孔に摺動自在に挿入されている。
【0051】ばね装着部18cの端部側には、固定アングル17の起立部17bを介してつまみ部18dが固着され、ばね装着部18cおよびつまみ部18dによってT字形を形成している。そして、つまみ部18dを持ってひくことにより、ロックバー18を引き抜く方向(起立部17bの方向)に移動できるようになっている。ロックバー18のばね装着部18cには圧縮ばね19が圧縮された状態で装着され、これによってロックバー18全体を常時起立部17aの方向に付勢している。
【0052】固定アングル17の壁面取付部の内側面にはマイクロスイッチ20が配設され、その作動片が、固定アングル17の起立部17bに形成された貫通孔(図示せず)を貫通して起立部17bの外面に突出している。この作動片は、ロックバー18のつまみ部18dが起立部17bに接する状態まで移動したときに押されてマイクロスイッチ20の接点をオン状態にするようになっている。その他の構成は上記実施の形態(図3および図4)の場合と同様である。
【0053】次に、このような構成のエレベータのピット梯子の作用を説明する。
【0054】図9に示したように、梯子本体の使用状態においては、可動アーム3が水平になって固定アングル17の起立部17aの貫通孔(図示せず)を塞ぐので、ロックバー18の先端部18aは、可動アーム3に突き当たって上記の貫通孔から突出することができない。このため、ロックバー18はそれ以上起立部17aの方向に移動することができず、つまみ部18dは固定アングル17の起立部17bから離間した状態に保持される。このため、つまみ部18dはマイクロスイッチ20の作動片を押し込まず、マイクロスイッチ20はオフ状態を保持するので、エレベータは起動できない状態を保持する。
【0055】一方、図10に示したように、ステップ2を壁面5に近接させた収納状態にすると、固定アングル17の起立部17aに形成された貫通孔(図示せず)が開放される。このため、ロックバー18の先端部18aが起立部17aの表面から突出し、ロックバー18全体が圧縮ばね19によって起立部17aの方向に押されて自動的に移動する。これにより、ロックバー18の先端部18aによって支柱1を支える(ロックする)こととなる。このとき、ロックバー18のつまみ部18dも固定アングル17の起立部17bに突き当たる位置まで移動するため、つまみ部18dがマイクロスイッチ20の作動片を押してオン状態とし、これによりエレベータは起動可能となる。
【0056】このように、本実施の形態では、ロックバー18を圧縮ばね19によって常時ロック位置方向に付勢しておき、梯子本体を使用状態から収納状態にすると自動的にロックが掛かるようにし、これをマイクロスイッチ20で検知してエレベータが起動可能状態になるようにしたので、保守者は特別のロック行為をする必要がない。すなわち、単に梯子本体を壁面5の側に収納するだけでそのロックをすることができると共に、エレベータを起動状態にすることができる。このため、上記の実施の形態(図5〜図8)における効果に加え、保守者等によるロックのし忘れによってエレベータが起動できない状態のままになるという事態を回避できる効果を奏する。
【0057】以上、いくつかの実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、その均等の範囲で種々変形可能である。例えば、上記の実施の形態では、図12における梯子本体の4か所のうち、左上の1か所(A位置)にのみロック機構およびロック検知機構を設けるようにしたが、その他の3か所のいずれかにこれらのロック機構およびロック検知機構を設けるように変更してもよい。さらに、これらの4か所のうち2以上の箇所に設けるようにしてもよい。また、図1および図2に示した可動機構は上記の4か所以外にも設けるようにしてもよい。
【0058】また、上記の各実施の形態では、ロック検知機構としてマイクロスイッチを用いることとしたが、他のタイプのセンサ(光センサ等)を用いるようにしてもよい。また、マイクロスイッチの配設位置は上記の各実施の形態に示した位置に限定されることはなく、ロックバーによるロックを確実に検知し得る位置であれば他の位置に取り付けることも可能である。
【0059】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1記載のエレベータのピット梯子によれば、非使用時は梯子本体を昇降路の壁面に近接した位置に収納でき、使用時には昇降路の壁面から離れた位置に移動させることができるようにしたので、エレベータかごと昇降路の壁面との間隔が小さい場合でも、エレベータの昇降動作に支障を来すことなく、梯子と壁面との距離を十分確保することができる。これにより、梯子使用時においては保守者等の昇降が容易になる。また、収納時においては梯子本体がロックされるようにすると共に、そのロック状態を検知してエレベータの昇降動作を制限するようにしたので、梯子本体が収納状態から使用時の状態に戻ってしまってエレベータと衝突する事故を確実に回避でき、エレベータの安全な運行を担保することができる。
【0060】請求項2記載のエレベータのピット梯子によれば、請求項1記載のエレベータのピット梯子において、梯子本体は収納位置にあるときにのみロックされ得るように構成したので、梯子本体が壁面から離れている状態での誤ったロック行為が排除される。これにより、梯子本体が使用時状態になっているときにエレベータが動作可能状態になって梯子と衝突するという事態が回避され、エレベータのより安全な運行を担保することができる。
【0061】請求項3記載のエレベータのピット梯子によれば、請求項1記載のエレベータのピット梯子において、梯子本体が収納位置に移動すると自動的にロックがなされるようにしたので、ロックし忘れを防止することができる。これにより、保守者等によるロックし忘れによってエレベータ起動不可状態が徒に継続するという事態を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態に係るエレベータのピット梯子の収納時における要部構造を表す斜視図である。
【図2】 本発明の一実施の形態に係るエレベータのピット梯子の使用時における要部構造を表す斜視図である。
【図3】 本発明の一実施の形態に係るエレベータのピット梯子の使用時における他の要部構造を表す斜視図である。
【図4】 本発明の一実施の形態に係るエレベータのピット梯子の収納時における他の要部構造を表す斜視図である。
【図5】 本発明の他の実施の形態に係るエレベータのピット梯子の使用時における要部構造を表す斜視図である。
【図6】 本発明の他の実施の形態に係るエレベータのピット梯子の収納時における要部構造を表す斜視図である。
【図7】 本発明のさらに他の実施の形態に係るエレベータのピット梯子の使用時における要部構造を表す斜視図である。
【図8】 本発明のさらに他の実施の形態に係るエレベータのピット梯子の収納時における要部構造を表す斜視図である。
【図9】 本発明のさらに他の実施の形態に係るエレベータのピット梯子の使用時における要部構造を表す斜視図である。
【図10】 本発明のさらに他の実施の形態に係るエレベータのピット梯子の収納時における要部構造を表す斜視図である。
【図11】 図10におけるエレベータのピット梯子の要部構造の平面図である。
【図12】 従来のエレベータのピット梯子の全体構成および配置を表す正面図である。
【図13】 図12に示したエレベータのピット梯子の全体構成および配置を表す側面図である。
【図14】 図12に示したエレベータのピット梯子の要部構造を表す斜視図である。
【符号の説明】
1 支柱、2 ステップ、3 可動アーム、4,7,12,14,17 固定アングル、5 壁面、6 ピット床面、8,13,15,18 ロックバー、9,20 マイクロスイッチ、19 圧縮ばね。
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はエレーベータのピット内に配設されるピット梯子に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種のエレベータのピット梯子は、例えば図12〜14に示したように構成されていた。ここで、図12は正面図、図13は側面図、図14は図12におけるA部の拡大斜視図である。
【0003】これらの図に示したように、このピット梯子は支柱101とステップ102とからなり、固定アングル104によってエレベータ昇降路の壁面105に固定されている。通常、固定アングル104は、図12に示したように上下2箇所ずつ合計4箇所にてボルトによって壁面105に固定されている。
【0004】ステップ102と壁面105との水平距離は極めて小さく、例えば約50ミリメートル程度となっている。これは、図13に示したように、壁面105とエレベータかご110の敷居111の端部との隙間が狭いため、ステップ102と壁面105との水平距離をあまりに大きくすると、エレベータかご110の昇降時に敷居111の端部がピット梯子に衝突してしまうからである。
【0005】このように、従来のエレベータのピット梯子は、設置スペースの関係から昇降路の壁面にかなり近接して固設されていたので、保守者がピット梯子を昇降する際のステップ102の足掛け有効幅が小さかった。このため、昇降しづらく、また安全性にも欠けるという不具合があった。
【0006】このような問題に対処すべく、例えば特開平6−146760号公報には、ピット梯子を可動式にすると共にその可動部分に安全スイッチを設けて、エレベータかごの昇降動作を制限できるようにした可動式ピット梯子が記載されている。この梯子によれば、梯子使用時には梯子と壁との距離を確保できるので保守者が昇降し易くなる一方、エレベータ昇降動作時には梯子を壁側に近接収納できるので、エレベータかごと壁との距離が小さくてもエレベータかごと梯子との衝突を回避できる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記の可動式梯子では、梯子が壁側から離れて使用状態になり安全スイッチが作動している間はエレベータかごの昇降動作が禁じられるようになっているため、エレベータかごと梯子との衝突を防止することができる。
【0008】しかしながら、上記の可動梯子では梯子の収納状態を確実に保持するためのロック機構が設けられていなかったので、エレベータかごの昇降移動中または昇降可能状態での停止時において、振動や何らかの原因で梯子が壁側から離れて収納状態から使用状態になってしまうことも考えられる。この場合には、上記の安全スイッチが作動し、エレベータかごが昇降動作を停止しまたは昇降開始が制限されるので、梯子との衝突は回避されるものの、乗客がエレベータかご内に閉じ込められるという不都合な事態も生じ得る。また、その場合、保守者はエレベータかごが停止した原因を調べた上でピット内に入って復旧作業(梯子を壁側に収納する作業)を行わなければならず、エレベータとしての円滑な運行に支障が生じ、信頼性に欠けるという問題があった。
【0009】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、エレベータかごと昇降路壁とのスペースが小さい場合であっても保守者が安全かつ容易に昇り降りすることができ、しかもエレベータかごの昇降動作に支障を与えることのないエレベータのピット梯子を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1記載のエレベータのピット梯子は、エレベータの昇降路内に設けられ人が昇り降り可能な梯子本体と、この梯子本体を昇降路の壁面に近接した収納位置と昇降路の壁面から離れた使用位置の間で移動自在に壁面に取り付ける梯子可動機構と、前記梯子本体を前記収納位置に固定するロック機構と、このロック機構の作動を検知してエレベータの昇降動作を制限するための検知信号を出力するロック検知機構とを備えている。
【0011】このエレベータのピット梯子では、非使用時は梯子本体を昇降路の壁面に近接した位置に収納でき、使用時には昇降路の壁面から離れた位置に移動させることができる。そして、収納時において梯子本体はロック機構によってその収納位置に固定され、さらにそのロック状態がロック検知機構によって検知される。このロック検知状態においてはエレベータの昇降動作が制限される。
【0012】請求項2記載のエレベータのピット梯子は、請求項1記載のエレベータのピット梯子において、梯子本体が収納位置にあるときにのみロック機構が作動し得るように構成したものである。
【0013】このエレベータのピット梯子では、梯子本体が使用位置にあるときにはロック機構が作動し得ないため、梯子本体が壁面から離れている状態での誤ったロック行為が排除される。これにより、梯子本体が壁面から離れている状態においてロック検知機構がロック状態を検知してしまい、エレベータが動作可能状態になるという事態が回避される。
【0014】請求項3記載のエレベータのピット梯子は、請求項1記載のエレベータのピット梯子において、梯子本体が収納位置に移動したときにロック機構が自動的に作動するように構成したものである。
【0015】このエレベータのピット梯子では、梯子本体が収納位置に移動すると自動的にロックがなされるので、ロックし忘れが防止される。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】第1の実施の形態図1〜図4は本発明の一実施の形態に係るエレベータのピット梯子の構成および作用を表すものである。図1および図2に示したように、このピット梯子は、平行な2本の支柱1と、支柱1間に差し渡されて固設された複数のステップ2と、昇降路の壁面5に固定されたL字型の固定アングル4と支柱1との間を接続する可動アーム3とを備えている。支柱1およびステップ2は梯子本体を構成している。固定アングル4は、L字の一辺が壁面5から直立し、かつ鉛直方向を向くようにして、固定ボルト10cによって壁面5に固設されている。可動アーム3の一端側はリーマボルト10aによって支柱1の側面に回動自在に取り付けられ、他端側はリーマボルト10bによって固定アングル4の起立部分に回動自在に取り付けられている。なお、このような可動機構は、図12でいうとA位置以外の3か所に配設されている。
【0018】図3および図4は、図12でいうA位置に配設された可動機構、ロック機構およびロック検出機構の構造を表すものである。これらの図に示したように、この可動機構は、昇降路の壁面5に固定された“コ”の字型の固定アングル7と、固定アングル7と支柱1との間を接続する可動アーム3とを備えている。固定アングル7は、エレベータ昇降路の上方から見下ろしたときに“コ”の字型となるような姿勢で固定ボルト10cによって壁面5に固設されている。可動アーム3は図1に示したものと同一のもので、その一端側はリーマボルト10aによって支柱1の側面に回動自在に取り付けられ、他端側はリーマボルト10bによって固定アングル7の起立部に回動自在に取り付けられている。
【0019】固定アングル7の2つの起立部7a,7bには、それぞれに対応して切欠部7c,7dが形成されている。これらの切欠部7c,7dには、図4に示したように梯子本体が収納状態の場合(すなわち、支柱1および可動アーム3が完全に直立状態になっている場合)のみロックバー8を挿入することができる。一方、図3に示したように梯子本体が収納状態以外の場合(すなわち、支柱1および可動アーム3が直立状態になっていない場合)には挿入不可能となっている。ロックバー8にも2つの切欠部8a,8bが形成されており、これにより挿入時において固定アングル7の2つの切欠部7c,7dと互いに深く噛み合うようになっている。
【0020】また、固定アングル7の一方の起立部7aの外側面には、マイクロスイッチ9が配設され、ロックバー8が固定アングル7の切欠部7c,7dに完全に挿入されたときにその作動片が押されるようになっている。このマイクロスイッチ9はノーマリーオフ接点を有し、図示しないエレベータ安全回路に接続されている。したがって、ロックバー8が固定アングル7の切欠部7c,7dに挿入されていないときにはマイクロスイッチ9はオフ状態となっているため、エレベータは動作することができず、ロックバー8が固定アングル7の切欠部7c,7dに挿入されてマイクロスイッチ9がオン状態になって初めてエレベータは動作可能となるようになっている。
【0021】次に、このような構造のエレベータのピット梯子の作用を説明する。
【0022】梯子本体の使用時においては、図2および図3に示したように、支柱1を壁面から遠ざけるように引くと、梯子の4か所に設けられた可動アーム3が各リーマーボルト10bを支点として回転して水平状態になると共に、支柱1は可動アーム3に引かれ、支柱1の下端部がピット床面6に当たる所まで(図2)、壁面5から離れる。
【0023】この状態では、壁面5とステップ2との間には十分な距離が確保されており、ステップ2におけるいわゆる足掛け有効幅が大きいため、保守者は足の前後方向の中央部でステップを踏みつけることができ、安全に梯子を昇り降りすることができる。
【0024】また、この状態では、図3に示したように、可動アーム3が固定アングル7の一方の切欠部7cを塞ぎ、ロックバー8を挿入することが出来ないため、マイクロスイッチ9はオフ状態を保持する。このため、図示しないエレベータ安全回路によってエレベータは起動することができず、エレベータかごが梯子に衝突するのを防止することができる。
【0025】一方、図1および図4に示したように、梯子本体に対し図3の矢印Bの方向への力を加えると、可動アーム3は、支柱1を固定アングル4または固定アングル7に取り付けているリーマボルト10bを支点として上方に回転すると共に、支柱1は壁面5に接近し、ほぼ直立位置で支柱1の背面が壁面5に突き当たって止まる。したがって、図示しないエレベータかごの側面と梯子のステップ2との距離を充分確保することができ、エレベータかごの昇降時に梯子との衝突を避けることができる。
【0026】また、図4に示したように、梯子本体を収納した状態では、可動アーム3が直立して固定アングル7の切欠部7cが開放されるので、切欠部7c,7dへのロックバー8の挿入が可能になる。そこで、ロックバー8の切欠部8a,8bを固定アングル7の切欠部7c,7dに合わせて挿入することにより、ロックバー8によって支柱1を固定することができる。このとき、マイクロスイッチ9の作動片は、固定アングル7の切欠部7c,7dに挿入されたロックバー8によって押され、その接点がオン状態となる。これにより、エレベータ安全回路が解除状態となり、エレベータが動作可能状態となる。
【0027】このように、本実施の形態では、マイクロスイッチ9がロックバー8によるロック状態を検知しているときにのみエレベータが動作できるようにすると共に、梯子本体が収納状態以外の状態(使用状態または壁面5からわずかでも離れた状態)にあるときにはロックバー8によるロックができない構造としたので、収納状態以外の状態ではエレベータの動作を確実に禁止することができる。すなわち、仮に梯子本体が壁面5から離れた状態でもロックバー8を挿入できる構造とすると、これによりマイクロスイッチ9がオン状態となることから、梯子本体が壁面5から離れていてもエレベータが動作可能となり、エレベータかごと梯子との衝突事故の可能性を排除することができない。したがって、上記のように梯子本体が収納状態以外の状態にあるときはロックバー8を挿入できない構造とすることで、保守者による誤ったロック行為を禁じることができ、不測のエレベータ事故を確実に防止することができる。
【0028】一方、梯子本体が収納状態(梯子の支柱1および可動アーム3が直立した状態)にあるときは、ロックバー8によるロックを行うことによって支柱1を固定できるようにしたので、エレベータの移動や地震による振動等によって梯子本体が自重で壁面5から離れ、収納状態から図2および図3に示した状態になってしまうのを確実に阻止することができる。これにより、エレベータの動作中に梯子本体が自然に壁面5から離れてしまいエレベータかごに衝突するという事故を未然に防止することができる。尤も、本実施の形態では、たとえ保守者が梯子本体の収納後にロックバー8によるロックをし忘れてしまったとしても、この状態ではマイクロスイッチ9がオフ状態を保持しているため、エレベータは動作状態になく、いずれにしてもエレベータと梯子との衝突はありえない。
【0029】第2の実施の形態次に、本発明の他の実施の形態を説明する。
【0030】図5および図6は、本発明の他の実施の形態に係るエレベータのピット梯子の要部を表すものである。このうち、図5はピット梯子の使用時の状態を表し、図6はピット梯子の収納時の状態を表す。これらの図で図3および図4と同一構成要素には同一の符号を付すものとする。
【0031】なお、これらの図は図12でいうA位置に配設された可動機構、ロック機構およびロック検出機構の構造を表すものであり、A位置以外の3か所の可動機構は図1および図2に示したものと同様である。
【0032】本実施の形態では、図3および図4における固定アングル7に代えて、上方からみて“G”の字型の固定アングル12が固定ボルト10cによって壁面5に固定され、その一方の起立部12aに可動アーム3の一端側がリーマボルト10bによって回動自在に取り付けられている。可動アーム3の他端側は梯子本体の支柱1の側面にリーマボルト10aによって回動自在に取り付けられている。固定アングル12の他方の起立部のうち壁面5と平行な部分12bには、ロックバー13の一端側がリーマボルト10dによって回動自在に取り付けられている。このロックバー13の他端側には切欠部13aが形成され、また、固定アングル12の起立部12aにも切欠部12cが形成されている。この切欠部12cの下側にはマイクロスイッチ9が配設されている。その他の構成は上記実施の形態 (図3および図4)の場合と同様である。
【0033】次に、このような構成のエレベータのピット梯子の作用を説明する。
【0034】図5に示したように、梯子本体の使用状態においては、可動アーム3が水平になって固定アングル12の切欠部12cが塞がれるため、ロックバー13の切欠部13aとの係合ができない。このため、マイクロスイッチ9はオフ状態を保持し、エレベータは起動できない状態となる。
【0035】一方、図6に示したように、ステップ2を壁面5に近接させた収納状態においては、ロックバー13をリーマボルト10dを支点として矢印D方向に回転させることにより固定アングル12の切欠部12cにロックバー13の切欠部13aを係合させることができる。これにより、ロックバー13で支柱1を支える(ロックする)こととなる。このとき、ロックバー13がマイクロスイッチ9の作動片を押してオン状態とするので、エレベータは起動可能となる。
【0036】このように、本実施の形態では、上記の実施の形態(図3および図4)の場合と同様に、梯子本体が収納状態以外の状態にあるときはロックバー13を挿入できない構造とすることで保守者による誤ったロック行為を禁じることができ、不測のエレベータ事故を確実に防止することができると共に、梯子本体が収納状態にあるときはロックバー13によって梯子本体をロックできるようにしたので、エレベータの動作中に梯子本体が自然に壁面5から離れてエレベータかごに衝突するという事故を未然に防止することができる。
【0037】さらに、本実施の形態では、ロックバー13はリーマボルト10dによって固定アングル12に回動自在に取り付けられているため、上記実施の形態(図3R>3)の場合と異なり、非ロック時(すなわち、梯子使用時)におけるロックバー13の保管場所を考慮する必要がなく、ロックバー13の紛失を防止し得るという効果もある。
【0038】第3の実施の形態次に、本発明の他の実施の形態を説明する。
【0039】図7および図8は、本発明の他の実施の形態に係るエレベータのピット梯子の要部を表すものである。このうち、図7はピット梯子の使用時の状態を表し、図8はピット梯子の収納時の状態を表す。これらの図で図3および図4と同一構成要素には同一の符号を付すものとする。
【0040】なお、これらの図は図12でいうA位置に配設された可動機構、ロック機構およびロック検出機構の構造を表すものであり、A位置以外の3か所の可動機構は図1および図2に示したものと同様である。
【0041】本実施の形態では、図3および図4における固定アングル7に代えて、上方からみて“6”の字型の固定アングル14が固定ボルト10cによって壁面5に固定され、その一方の起立部14aに可動アーム3の一端側がリーマボルト10bによって回動自在に取り付けられている。可動アーム3の他端側は梯子本体の支柱1の側面にリーマボルト10aによって回動自在に取り付けられている。固定アングル14のうち壁面5と平行な部分14bは起立部14bの先端部から起立部14aにまで延びている。この平行な部分14bの中央部には、ロックバー15の中央部がリーマボルト10dによって回動自在に取り付けられている。このロックバー15の一端側には切欠部15aが形成されている。また、固定アングル14の起立部14aのうち、部分14bから突出した部分には切欠部14dが形成されている。マイクロスイッチ9は、固定アングル14の起立部14aに、その作動片が部分14bから突出するように配設されている。その他の構成は上記実施の形態(図3および図4)の場合と同様である。
【0042】次に、このような構成のエレベータのピット梯子の作用を説明する。
【0043】図7に示したように、梯子本体の使用状態においては、可動アーム3が水平になって固定アングル14の切欠部14dが塞がれるため、ロックバー15の切欠部15aとの係合ができない。このため、マイクロスイッチ9はオフ状態を保持し、エレベータは起動できない状態となる。なお、ロックバー15が矢印E方向に回転したとしても、ロックバー15の一端側が固定アングル14の起立部14aに突き当たり、ロックバー15の他端側がマイクロスイッチ9の作動片を押すことはないので、オン状態にはならない。
【0044】一方、図8に示したように、ステップ2を壁面5に近接させた収納状態においては、ロックバー15をリーマボルト10dを支点として矢印F方向に回転させることにより固定アングル14の切欠部14dにロックバー15の切欠部15aを係合させることができる。これにより、ロックバー15で支柱1を支える(ロックする)こととなる。このとき、ロックバー15の他端側がマイクロスイッチ9の作動片を押してオン状態とするので、エレベータは起動可能となる。
【0045】このように、本実施の形態では、上記の実施の形態(図5および図6)の場合と同様の効果を奏する。すなわち、保守者による誤ったロック行為を禁じることで不測のエレベータ事故を確実に防止すると共に、エレベータの動作中に梯子本体が自然に壁面5から離れてエレベータかごに衝突するという事故を未然に防止することができる。また、非ロック時(すなわち、梯子使用時)におけるロックバー15の保管場所の考慮が不要であり、ロックバー15の紛失を防止できるという点も同様である。
【0046】第4の実施の形態次に、本発明の他の実施の形態を説明する。
【0047】図9〜図11は、本発明の他の実施の形態に係るエレベータのピット梯子の要部を表すものである。このうち、図9はピット梯子の使用時の状態を表し、図10はピット梯子の収納時の状態を表し、図11は図10の状態を上方からみた平面図を表す。これらの図で図3および図4と同一構成要素には同一の符号を付すものとする。
【0048】なお、これらの図は図12でいうA位置に配設された可動機構、ロック機構およびロック検出機構の構造を表すものであり、A位置以外の3か所の可動機構は図1および図2に示したものと同様である。
【0049】本実施の形態では、上方からみて“コ”の字型の固定アングル17が固定ボルト10cによって壁面5に固定され、その一方の起立部17aに可動アーム3の一端側がリーマボルト10bによって回動自在に取り付けられている。可動アーム3の他端側は梯子本体の支柱1の側面にリーマボルト10aによって回動自在に取り付けられている。
【0050】起立部17aには貫通孔(図示せず)が形成され、この孔にロックバー18の先端部18aが摺動自在に挿入されている。ロックバー18の中央部に隣接するばね装着部18cは先端部18aとほぼ同径に形成され、この部分が固定アングル17の起立部17bに形成された孔に摺動自在に挿入されている。
【0051】ばね装着部18cの端部側には、固定アングル17の起立部17bを介してつまみ部18dが固着され、ばね装着部18cおよびつまみ部18dによってT字形を形成している。そして、つまみ部18dを持ってひくことにより、ロックバー18を引き抜く方向(起立部17bの方向)に移動できるようになっている。ロックバー18のばね装着部18cには圧縮ばね19が圧縮された状態で装着され、これによってロックバー18全体を常時起立部17aの方向に付勢している。
【0052】固定アングル17の壁面取付部の内側面にはマイクロスイッチ20が配設され、その作動片が、固定アングル17の起立部17bに形成された貫通孔(図示せず)を貫通して起立部17bの外面に突出している。この作動片は、ロックバー18のつまみ部18dが起立部17bに接する状態まで移動したときに押されてマイクロスイッチ20の接点をオン状態にするようになっている。その他の構成は上記実施の形態(図3および図4)の場合と同様である。
【0053】次に、このような構成のエレベータのピット梯子の作用を説明する。
【0054】図9に示したように、梯子本体の使用状態においては、可動アーム3が水平になって固定アングル17の起立部17aの貫通孔(図示せず)を塞ぐので、ロックバー18の先端部18aは、可動アーム3に突き当たって上記の貫通孔から突出することができない。このため、ロックバー18はそれ以上起立部17aの方向に移動することができず、つまみ部18dは固定アングル17の起立部17bから離間した状態に保持される。このため、つまみ部18dはマイクロスイッチ20の作動片を押し込まず、マイクロスイッチ20はオフ状態を保持するので、エレベータは起動できない状態を保持する。
【0055】一方、図10に示したように、ステップ2を壁面5に近接させた収納状態にすると、固定アングル17の起立部17aに形成された貫通孔(図示せず)が開放される。このため、ロックバー18の先端部18aが起立部17aの表面から突出し、ロックバー18全体が圧縮ばね19によって起立部17aの方向に押されて自動的に移動する。これにより、ロックバー18の先端部18aによって支柱1を支える(ロックする)こととなる。このとき、ロックバー18のつまみ部18dも固定アングル17の起立部17bに突き当たる位置まで移動するため、つまみ部18dがマイクロスイッチ20の作動片を押してオン状態とし、これによりエレベータは起動可能となる。
【0056】このように、本実施の形態では、ロックバー18を圧縮ばね19によって常時ロック位置方向に付勢しておき、梯子本体を使用状態から収納状態にすると自動的にロックが掛かるようにし、これをマイクロスイッチ20で検知してエレベータが起動可能状態になるようにしたので、保守者は特別のロック行為をする必要がない。すなわち、単に梯子本体を壁面5の側に収納するだけでそのロックをすることができると共に、エレベータを起動状態にすることができる。このため、上記の実施の形態(図5〜図8)における効果に加え、保守者等によるロックのし忘れによってエレベータが起動できない状態のままになるという事態を回避できる効果を奏する。
【0057】以上、いくつかの実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、その均等の範囲で種々変形可能である。例えば、上記の実施の形態では、図12における梯子本体の4か所のうち、左上の1か所(A位置)にのみロック機構およびロック検知機構を設けるようにしたが、その他の3か所のいずれかにこれらのロック機構およびロック検知機構を設けるように変更してもよい。さらに、これらの4か所のうち2以上の箇所に設けるようにしてもよい。また、図1および図2に示した可動機構は上記の4か所以外にも設けるようにしてもよい。
【0058】また、上記の各実施の形態では、ロック検知機構としてマイクロスイッチを用いることとしたが、他のタイプのセンサ(光センサ等)を用いるようにしてもよい。また、マイクロスイッチの配設位置は上記の各実施の形態に示した位置に限定されることはなく、ロックバーによるロックを確実に検知し得る位置であれば他の位置に取り付けることも可能である。
【0059】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1記載のエレベータのピット梯子によれば、非使用時は梯子本体を昇降路の壁面に近接した位置に収納でき、使用時には昇降路の壁面から離れた位置に移動させることができるようにしたので、エレベータかごと昇降路の壁面との間隔が小さい場合でも、エレベータの昇降動作に支障を来すことなく、梯子と壁面との距離を十分確保することができる。これにより、梯子使用時においては保守者等の昇降が容易になる。また、収納時においては梯子本体がロックされるようにすると共に、そのロック状態を検知してエレベータの昇降動作を制限するようにしたので、梯子本体が収納状態から使用時の状態に戻ってしまってエレベータと衝突する事故を確実に回避でき、エレベータの安全な運行を担保することができる。
【0060】請求項2記載のエレベータのピット梯子によれば、請求項1記載のエレベータのピット梯子において、梯子本体は収納位置にあるときにのみロックされ得るように構成したので、梯子本体が壁面から離れている状態での誤ったロック行為が排除される。これにより、梯子本体が使用時状態になっているときにエレベータが動作可能状態になって梯子と衝突するという事態が回避され、エレベータのより安全な運行を担保することができる。
【0061】請求項3記載のエレベータのピット梯子によれば、請求項1記載のエレベータのピット梯子において、梯子本体が収納位置に移動すると自動的にロックがなされるようにしたので、ロックし忘れを防止することができる。これにより、保守者等によるロックし忘れによってエレベータ起動不可状態が徒に継続するという事態を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態に係るエレベータのピット梯子の収納時における要部構造を表す斜視図である。
【図2】 本発明の一実施の形態に係るエレベータのピット梯子の使用時における要部構造を表す斜視図である。
【図3】 本発明の一実施の形態に係るエレベータのピット梯子の使用時における他の要部構造を表す斜視図である。
【図4】 本発明の一実施の形態に係るエレベータのピット梯子の収納時における他の要部構造を表す斜視図である。
【図5】 本発明の他の実施の形態に係るエレベータのピット梯子の使用時における要部構造を表す斜視図である。
【図6】 本発明の他の実施の形態に係るエレベータのピット梯子の収納時における要部構造を表す斜視図である。
【図7】 本発明のさらに他の実施の形態に係るエレベータのピット梯子の使用時における要部構造を表す斜視図である。
【図8】 本発明のさらに他の実施の形態に係るエレベータのピット梯子の収納時における要部構造を表す斜視図である。
【図9】 本発明のさらに他の実施の形態に係るエレベータのピット梯子の使用時における要部構造を表す斜視図である。
【図10】 本発明のさらに他の実施の形態に係るエレベータのピット梯子の収納時における要部構造を表す斜視図である。
【図11】 図10におけるエレベータのピット梯子の要部構造の平面図である。
【図12】 従来のエレベータのピット梯子の全体構成および配置を表す正面図である。
【図13】 図12に示したエレベータのピット梯子の全体構成および配置を表す側面図である。
【図14】 図12に示したエレベータのピット梯子の要部構造を表す斜視図である。
【符号の説明】
1 支柱、2 ステップ、3 可動アーム、4,7,12,14,17 固定アングル、5 壁面、6 ピット床面、8,13,15,18 ロックバー、9,20 マイクロスイッチ、19 圧縮ばね。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エレベータの昇降路内に設けられ、人が昇り降り可能な梯子本体と、この梯子本体を、昇降路の壁面に近接した収納位置と昇降路の壁面から離れた使用位置の間で移動自在に壁面に取り付ける梯子可動機構と、前記梯子本体を前記収納位置に固定するロック機構と、このロック機構の作動を検知し、エレベータの昇降動作を制限するための検知信号を出力するロック検知機構とを備えたことを特徴とするエレベータのピット梯子。
【請求項2】 前記ロック機構は、前記梯子本体が前記収納位置にあるときにのみ作動し得る構造を有することを特徴とする請求項1記載のエレベータのピット梯子。
【請求項3】 前記ロック機構は、前記梯子本体が前記収納位置に移動したときに自動的に作動する構造を有することを特徴とする請求項1記載のエレベータのピット梯子。
【請求項1】 エレベータの昇降路内に設けられ、人が昇り降り可能な梯子本体と、この梯子本体を、昇降路の壁面に近接した収納位置と昇降路の壁面から離れた使用位置の間で移動自在に壁面に取り付ける梯子可動機構と、前記梯子本体を前記収納位置に固定するロック機構と、このロック機構の作動を検知し、エレベータの昇降動作を制限するための検知信号を出力するロック検知機構とを備えたことを特徴とするエレベータのピット梯子。
【請求項2】 前記ロック機構は、前記梯子本体が前記収納位置にあるときにのみ作動し得る構造を有することを特徴とする請求項1記載のエレベータのピット梯子。
【請求項3】 前記ロック機構は、前記梯子本体が前記収納位置に移動したときに自動的に作動する構造を有することを特徴とする請求項1記載のエレベータのピット梯子。
【図1】
【図2】
【図11】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図12】
【図8】
【図9】
【図10】
【図13】
【図14】
【図2】
【図11】
【図3】
【図4】
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【図7】
【図12】
【図8】
【図9】
【図10】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開平9−315723
【公開日】平成9年(1997)12月9日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−141361
【出願日】平成8年(1996)6月4日
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【公開日】平成9年(1997)12月9日
【国際特許分類】
【出願日】平成8年(1996)6月4日
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
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