説明

エレベータの乗り場敷居装置

【課題】この発明は、簡易に付設でき、モルタルの仕上げ面に亀裂の発生を抑制できるエレベータの乗り場敷居装置を得る。
【解決手段】敷居取付金1が支持腕1bを鉛直にして、コンクリート床11の昇降路側の壁面に取付部1aをアンカー固定されて、乗り場出入り口の間口方向に複数配設されている。敷居受け金具2が載置部2bの上面である敷居載置面を同一水平面にして、取付部2aを各敷居取付金1の支持腕1bにボルト12とナット13により締着固定されている。コンクリート受け板3がコンクリート受け部3bを各載置部2bの敷居載置面上に載置し、当て部3aをコンクリート床11の昇降路側の壁面に当接させて、乗り場出入り口の間口方向の全域を超える範囲に延設されている。敷居部材5がコンクリート受け部3bを介在させて各敷居受け金具2の載置部2bにボルト14とナット15とにより締着固定されて、乗り場出入り口の間口方向に延設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータの乗り場敷居装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータの乗り場敷居装置では、水平面と鉛直面とで略L字形状をなす取付部材が乗り場出入り口の間口方向に所定の間隔で複数配設され、各取付部材は水平面をコンクリート床の上面から突出させ、かつ鉛直面を乗り場のコンクリート床の取付面に当接させてアンカー固定されている。そして、敷居部材が複数の取付部材の水平面上に載置、固定されて乗り場出入り口の間口方向に延設され、モルタルがコンクリート床の上面に塗設され、床仕上げ材がモルタルの上面に貼設されて構成されていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平5−78073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のエレベータの乗り場敷居装置では、コンクリート床と敷居部材との間に20mm〜30mm程度の隙間が生じており、モルタルが当該隙間から落下する。そこで、現場にて、モルタルの塗設に先だって、長尺の鋼板をコンクリート床の上面と敷居部材の乗り場側側壁との間に斜めに立て掛け、コンクリート床と敷居部材との間の隙間を塞口するような手立てが必要であった。
【0005】
敷居部材の乗り場側側面がエレベータの各構成部材の芯出し基準面となることから、各乗り場の敷居部材の乗り場側側面は、同一鉛直面上に位置する。一方、各乗り場のコンクリート床の取付面は、建築誤差があり、同一鉛直面上には位置しない。従って、コンクリート床と敷居部材との間の隙間は乗り場毎に異なる。しかも、コンクリート床と敷居部材との間の隙間の寸法は乗り場出入り口の間口方向の両側でも異なる。そこで、当該隙間を塞口する長尺の鋼板の形状は乗り場毎に異なり、現場にて、その都度、鋼板を当該隙間に合わせて切断しなければならず、乗り場敷居装置の付設工事が煩雑となっていた。
【0006】
また、鋼板をコンクリート床の上面と敷居部材の乗り場側側壁との間に斜めに立て掛けて、コンクリート床と敷居部材との間の隙間を塞口しているので、敷居部材近傍のモルタルの塗設厚みがコンクリート床の上面でのモルタルの塗設厚みに対し著しく薄くなり、十分な強度が得られなくなり、仕上げ面に亀裂が発生するという問題もあった。
【0007】
この発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、簡易に付設でき、モルタルの仕上げ面に亀裂の発生を抑制できるエレベータの乗り場敷居装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明によるエレベータの乗り場敷居装置は、それぞれ、取付部および載置部を有し、該載置部の敷居載置面を同一水平面にして該取付部が昇降路の壁面にアンカー固定されて、出入り口の間口方向に複数設置された取付部材と、当て部とコンクリート受け部とで略L字状をなし、該当て部が上記昇降路の壁面に当接され、かつ該コンクリート受け部の当て部と反対側が上記取付部材のそれぞれの上記載置部の敷居載置面上に載置されて、少なくとも上記出入り口の間口方向の全域に亘って延設されたコンクリート受け板と、上記コンクリート受け部を介在させて上記取付部材のそれぞれの上記載置部にボルトにより締着固定され、上記出入り口の間口方向に延設された敷居部材と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、コンクリート床と敷居部材との間の隙間がコンクリート受け板により塞口されるので、従来乗り場毎に作製していた隙間を塞口する鋼板が不要となり、乗り場敷居装置を簡易に付設することができる。
また、モルタルをコンクリート床に塗設した際に、乗り場敷居部材側のモルタル塗設厚みを厚くでき、十分な強度が得られる。そこで、乗り場床の仕上げ面に亀裂が発生することも防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本願の実施例を図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るエレベータの乗り場敷居装置を示す断面図、図2はこの発明の実施の形態1に係るエレベータの乗り場敷居装置を示す正面図、図3はこの発明の実施の形態1に係るエレベータの乗り場敷居装置を示す上面図、図4はこの発明の実施の形態1に係るエレベータの乗り場敷居装置に適用されるコンクリート受け板を示す斜視図である。なお、図3はモルタル塗設前の状態を示している。
【0011】
図1乃至図4において、敷居取付金1は、例えば鋼板を取付部1aと支持腕1bとを有する略L字状に作製され、支持腕1bを鉛直にして、コンクリート床11の昇降路9側の壁面に取付部1aをアンカー固定されて、乗り場出入り口10の間口方向に所定の間隔で4個配設されている。敷居受け金具2は、例えば鋼板を取付部2aと載置部2bとを有する略L字状に作製され、載置部2bの上面である敷居載置面を同一水平面にして、取付部2aを各敷居取付金1の支持腕1bにボルト12とナット13により締着固定されている。ここで、敷居取付金1と敷居受け金具2とで取付部材を構成している。コンクリート受け板3は、例えば鋼板を当て部3aとコンクリート受け部3bとを有する略L字状に作製され、コンクリート受け部3bを各載置部2bの敷居載置面上に載置し、当て部3aをコンクリート床11の昇降路9側の壁面に当接させて、乗り場出入り口10の間口方向の全域を超える範囲に延設されている。
【0012】
敷居部材5は、コンクリート受け部3bを介在させて各敷居受け金具2の載置部2bにボルト14とナット15とにより締着固定されて、乗り場出入り口10の間口方向に延設されている。そして、敷居部材5の三方枠固定金具6が三方枠17の下端にボルト固定されている。さらに、下地モルタル7がコンクリート床11と同一面位置となるようにコンクリート床11の昇降路9側の壁面と敷居部材5とコンクリート受け板3とで形成される空間に塗設され、仕上げモルタル8がコンクリート床11上と下地モルタル7上に塗設される。
【0013】
ここで、敷居取付金1は、敷居部材5の上面がコンクリート床11の上面から仕上げモルタル8の塗設厚さだけ突出するように高さ調整されてコンクリート床11の昇降路9側の壁面にアンカー固定されている。また、ボルト14が遊貫される大きさを有する切り欠き4が、敷居部材5を各敷居受け金具2に締着固定する位置に対応するようにコンクリート受け部3bに形成されている。
【0014】
この実施の形態1によれば、コンクリート床11と敷居部材5との間の隙間がコンクリート受け板3により塞口されるので、従来乗り場毎に作製していた隙間を塞口する鋼板が不要となり、乗り場敷居装置を簡易に付設することができる。
また、モルタル7,8をコンクリート床11に塗設した際に、敷居部材5側のモルタル塗設厚みを厚くでき、十分な強度が得られる。そこで、乗り場床の仕上げ面に亀裂が発生することも防止できる。
また、敷居部材5の上面がコンクリート床11の上面から仕上げモルタル8の塗設厚み分突出するように位置調整されているので、モルタル塗設量を削減でき、低コスト化が図られる。
【0015】
また、ボルト14が遊貫する大きさの切り欠き4が、ボルト14の締着位置に対応してコンクリート受け板3のコンクリート受け部3bに形成されているので、敷居部材5とコンクリート床11との隙間が乗り場出入り口の間口方向の両側で異なっていても、コンクリート受け板3の当て部3aをコンクリート床11の昇降路9側の壁面に隙間無く当接させることができる。また、コンクリート受け板3がL字状に形成されているので、コンクリート受け板3の剛性が高められ、仕上げモルタル8の亀裂発生をより防止することができる。
【0016】
実施の形態2.
図5はこの発明の実施の形態2に係るエレベータの乗り場敷居装置を示す正面図である。
図5において、敷居取付金21は、例えば鋼板を取付部21aと一対の支持腕21bとを有する略コ字状に作製され、支持腕21bを鉛直にして、コンクリート床11の昇降路9側の壁面に取付部21aをアンカー固定されて、乗り場出入り口10の間口方向の両側および中央に1個ずつ配設されている。敷居受け金具22は、例えば鋼板を取付部22aと載置部22bとを有する略L字状に作製され、載置部22bの上面である敷居載置面を同一水平面にして、取付部22aを各敷居取付金21の支持腕21bにボルト12とナット13により締着固定されている。ここで、敷居取付金21と敷居受け金具22とで取付部材を構成している。
なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0017】
この実施の形態2においても、コンクリート床11と敷居部材5との間の隙間がコンクリート受け板3により塞口されるので、従来乗り場毎に作製していた隙間を塞口する鋼板が不要となり、乗り場敷居装置を簡易に付設することができる。また、モルタル7,8をコンクリート床11に塗設した際に、敷居部材5側のモルタル塗設厚みを厚くでき、十分な強度が得られる。そこで、乗り場床の仕上げ面に亀裂が発生することも防止できる。
【0018】
なお、上記各実施の形態では、敷居取付金と敷居受け金具との2部品で取付部材を構成するものとしているが、取付部材は昇降路9の壁面にアンカー固定される取付部と敷居部材を載置する載置部とを有していれば、一体物で構成してもよい。
また、上記各実施の形態では、仕上げモルタルを塗設するものとしているが、仕上げモルタルに替えて化粧シートを貼り付けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施の形態1に係るエレベータの乗り場敷居装置を示す断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るエレベータの乗り場敷居装置を示す正面図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るエレベータの乗り場敷居装置を示す上面図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係るエレベータの乗り場敷居装置に適用されるコンクリート受け板を示す斜視図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係るエレベータの乗り場敷居装置を示す正面図である。
【符号の説明】
【0020】
1,21 敷居取付金(取付部材)、1a,21a 取付部、2,22 敷居受け金具(取付部材)、2b,22b 載置部、3 コンクリート受け板、3a 当て部、3b コンクリート受け部、4 切り欠き、9 昇降路、10 乗り場出入り口、11 コンクリート床、14 ボルト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ、取付部および載置部を有し、該載置部の敷居載置面を同一水平面にして該取付部が昇降路の壁面にアンカー固定されて、出入り口の間口方向に複数設置された取付部材と、
当て部とコンクリート受け部とで略L字状をなし、該当て部が上記昇降路の壁面に当接され、かつ該コンクリート受け部の当て部と反対側が上記取付部材のそれぞれの上記載置部の敷居載置面上に載置されて、少なくとも上記出入り口の間口方向の全域に亘って延設されたコンクリート受け板と、
上記コンクリート受け部を介在させて上記取付部材のそれぞれの上記載置部にボルトにより締着固定され、上記出入り口の間口方向に延設された敷居部材と、
を備えたエレベータの乗り場敷居装置。
【請求項2】
上記取付部材は、上記取付部を有し、上記昇降路の壁面にアンカー固定される敷居取付金と、上記載置部を有し、上記敷居取付金に締着固定される敷居受け金具と、を備えていることを特徴とする請求項1記載のエレベータの乗り場敷居装置。
【請求項3】
上記ボルトが遊貫される切り欠きが、上記敷居部材と上記載置部との締着位置に対応して、上記コンクリート受け板のコンクリート受け部に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のエレベータの乗り場敷居装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−265939(P2008−265939A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−110279(P2007−110279)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】