説明

エレベータの制御装置

【課題】ダブルデッキエレベータの通常運転時に、一方のかごは走行開始可能な状態にあるのにも関わらず他方のかごが戸開しているために走行開始できない場合の待機時間を短縮することができるエレベータの制御装置を提供する。
【解決手段】エレベータの昇降路内において昇降方向に連結された上かご及び下かごの両者を有するダブルデッキエレベータにおいて、前記両者のかご内にそれぞれ設けられたかご操作盤と、前記両者のかごの戸開閉をそれぞれ制御するかご戸開閉制御手段と、前記両者の一方のかごの前記かご操作盤に所定の操作がなされると、前記両者の他方のかごへの戸閉指令を出力するかご戸閉指令手段と、を備え、前記かご戸開閉制御手段は、前記エレベータの通常運転時に、前記かご戸閉指令手段から出力された前記他方のかごへの戸閉指令を受けた場合に、前記他方のかごを戸閉する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ダブルデッキエレベータを制御するエレベータの制御装置においては、消防運転等の非常運転中に、ダブルデッキエレベータの上かご及び下かごのうちの一方から他方のかごの戸開閉動作を制御するものであって、前記一方のかごの操作盤への操作により、上かご及び下かごの戸開閉を連動して制御するものや、正副2つの操作盤がかご内に設置されている場合に、前記一方のかごの正操作盤への操作によりこの一方のかごの戸開閉を制御するとともに、副操作盤への操作により前記他方のかごの戸開閉を制御するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、ダブルデッキエレベータの上かご及び下かごの少なくとも一方のかごに利用者がおらず(あるいは、一定期間利用者の乗降がなく)、かつ、当該利用者がいない(乗降がない)方のかごが着床している階からの乗場呼びが登録されておらず、かつ、他階からの乗場呼びが発生している場合に、かごの戸閉を促進するものも従来において知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−274855号公報
【特許文献2】特開2010−047386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示された従来のエレベータの制御装置においては、ダブルデッキの一方のかごから他方のかごの戸開閉制御が行われるのは、通常の利用者がいない特殊な状況である消防運転等の非常運転時であって、通常の利用者がかご内に搭乗している状況については全く考慮されていない。このため、特許文献1に記載されたエレベータの制御装置を、通常の利用者がかご内に搭乗している可能性がある通常運転時に、そのまま用いることができないという課題がある。
【0006】
特に、上かご及び下かごの戸開閉を連動して制御した場合には、上かご及び下かごの両方が戸閉可能な状態にならなければ、上かご及び下かごのいずれも戸閉させることができないため、利便性が低下してしまうという課題があり、例えば上かごの副操作盤により下かごの戸開閉制御を行うようにした場合には、上かごの副操作盤で上かごの戸開閉制御を行うことができなくなり利便性が低下してしまうという課題がある。
【0007】
また、特許文献2に示された従来のエレベータの制御装置においては、上述したような非常に限られた条件下でのみ戸閉が促進されるものであって、当該条件下以外では利用者が意図して戸閉することはできないという課題がある。
【0008】
この発明は、このような課題を解決するためになされたもので、ダブルデッキエレベータの通常運転時において、上かご及び下かごの一方のかごは走行開始可能な状態にあるのにも関わらず他方のかごが戸開しているために走行開始できない場合の待機時間を短縮することができ、エレベータの運行効率を向上させるとともに、利用者の不快感を軽減することが可能であるエレベータの制御装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るエレベータの制御装置においては、エレベータの昇降路内において昇降方向に連結された上かご及び下かごの両者を有するダブルデッキエレベータであって、前記両者のかご内にそれぞれ設けられたかご操作盤と、前記両者のかごの戸開閉をそれぞれ制御するかご戸開閉制御手段と、前記両者の一方のかごの前記かご操作盤に所定の操作がなされると、前記両者の他方のかごへの戸閉指令を出力するかご戸閉指令手段と、を備え、前記かご戸開閉制御手段は、前記エレベータの通常運転時に、前記かご戸閉指令手段から出力された前記他方のかごへの戸閉指令を受けた場合に、前記他方のかごを戸閉する構成とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係るエレベータの制御装置においては、ダブルデッキエレベータの通常運転時において、上かご及び下かごの一方のかごは走行開始可能な状態にあるのにも関わらず他方のかごが戸開しているために走行開始できない場合の待機時間を短縮することができ、エレベータの運行効率を向上させるとともに、利用者の不快感を軽減することが可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1に係るダブルデッキエレベータの構成を模式的に示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るかご操作盤の正面図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るエレベータの制御装置の基本となる構成を説明するブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係るエレベータの制御装置の全体構成を示すブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係るエレベータの制御装置の動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明を添付の図面に従い説明する。各図を通じて同符号は同一部分又は相当部分を示しており、その重複説明は適宜に簡略化又は省略する。
【0013】
実施の形態1.
図1から図5は、この発明の実施の形態1に係るもので、図1はダブルデッキエレベータの構成を模式的に示す図、図2はかご操作盤の正面図、図3はエレベータの制御装置の基本となる構成を説明するブロック図、図4はエレベータの制御装置の全体構成を示すブロック図、図5はエレベータの制御装置の動作を示すフロー図である。
【0014】
図1において、1は、エレベータの図示しない昇降路内に昇降自在に配置されたかごである。このかご1は、かご枠2内に上かご1a及び下かご1bが上下昇降方向に連結されて構成されている。かご枠2の上端には、主ロープ3の一端が連結されている。この主ロープ3の他端はカウンターウェイト5の上端に連結されている。主ロープ3の中間部は、昇降路の頂部に設置された巻上機4の駆動シーブに巻き掛けられている。このようにして、かご1及びカウンターウェイト5は、主ロープ3によって昇降路内で互いに相反する方向に昇降自在なつるべ状に吊持されている。
【0015】
上かご1a及び下かご1bは、隣接階の乗場6に同時に着床可能に配置されている(かご1には、必要であらば停止する階床間の距離に合わせて上かご1a及び下かご1b間の距離を調整する階間距離調整手段が設けられている)。
【0016】
停止階の各乗場6には、乗場操作盤がそれぞれ設置されている。すなわち、上かご停止階の乗場6aには上かご停止階の乗場操作盤7aが、下かご停止階の乗場6bには下かご停止階の乗場操作盤7bが、それぞれ設けられている。そして、これらの上かご停止階の乗場操作盤7a及び下かご停止階の乗場操作盤7bの各々には、上方向乗場呼びボタン8及び下方向乗場呼びボタン9、並びに、乗場音声案内装置10及び乗場案内表示装置11がそれぞれ備えられている。
【0017】
上方向乗場呼びボタン8及び下方向乗場呼びボタン9は、利用者の操作によって所望する方向への乗場呼びを登録するためのものである。乗場音声案内装置10は、乗場6にいる利用者に対してエレベータの呼び登録状況や運転状況、注意喚起メッセージ等の各種情報を音声により報知するためのものである。乗場案内表示装置11は、乗場案内表示装置11の報知内容と同一のものを画面表示により乗場6の利用者に報知するためのものである。
【0018】
上かご1a及び下かご1bのそれぞれには、図示しない戸が開閉自在に設けられている。エレベータの利用者は、これらの戸が開いているときに上かご停止階の乗場6a及び下かご停止階の乗場6bから乗降することができる。
【0019】
上かご1a内には上かご操作盤12aが設置されており(図2(a))、同様に、下かご1b内には下かご操作盤12bが設置されている(図2(b))。これらの上かご操作盤12a及び下かご操作盤12bの各々には、戸開ボタン13、戸閉ボタン14、開延長ボタン15、かご行先階呼びボタン16、かご音声案内装置17及びかご案内表示装置18がそれぞれ備えられている。
【0020】
戸開ボタン13及び戸閉ボタン14は、利用者の操作によって、上かご1a及び下かご1bのうち当該戸開ボタン13及び戸閉ボタン14が設けられている方のかごの戸を開閉させるためのものである。開延長ボタン15は、利用者の操作によって、当該開延長ボタン15が設けられている方のかごの戸が全開状態にあるとき、この全開状態の継続時間を一定時間延長するためのものである。
【0021】
かご行先階呼びボタン16は、当該かご行先階呼びボタン16が設けられている方のかごの行先階として選択可能である各階床に対応して設けられた複数の階床ボタンからなる。そして、利用者が行先階として所望する階床のボタンを操作することにより、その階床を当該かご行先階呼びボタン16が設けられている方のかごの行先階とするかご行先階呼びを登録することができる。
【0022】
かご音声案内装置17は、当該かご音声案内装置17が設けられている方のかご内の利用者に対して、エレベータの呼び登録状況や運転状況、注意喚起メッセージ等の各種情報を音声により報知するためのものである。かご案内表示装置18は、当該かご案内表示装置18が設けられている方のかご内の利用者に対して、かご案内表示装置18の報知内容と同一のものを画面表示により報知するためのものである。
【0023】
上かご1a内に設置された上かご操作盤12aは、図2の(a)に示す構成を有している。すなわち、上かご操作盤12aには、以上において説明した要素の他に、さらに、下かご戸閉ボタン19aが備えられている。この下かご戸閉ボタン19aは、上かご1a内の利用者が操作することにより、下かご1bへの戸閉指令を送るためのものである。
【0024】
また、同様に、下かご1b内に設置された下かご操作盤12bは、図2の(b)に示す構成を有している。すなわち、下かご操作盤12bには、以上において説明した要素の他に、さらに、上かご戸閉ボタン19bが備えられている。この上かご戸閉ボタン19bは、下かご1b内の利用者が操作することにより、上かご1aへの戸閉指令を送るためのものである。
【0025】
この実施の形態におけるエレベータの制御装置の基本となる構成について、図3を参照しながら説明する。
エレベータ制御装置本体20は、上かご戸開閉制御手段21a、下かご戸開閉制御手段21b、上かご戸開指令検出手段22a、下かご戸開指令検出手段22b、上かご戸閉指令検出手段23a及び下かご戸閉指令検出手段23bを備えている。
【0026】
まず、上かご停止階の乗場操作盤7aにおいて、上かご1aの走行予定方向が上方向である場合に上方向乗場呼びボタン8が操作された時、上かご1aの走行予定方向が下方向である場合に下方向乗場呼びボタン9が操作された時、及び、上かご1aの走行予定方向が未決定である場合に上方向乗場呼びボタン8又は下方向乗場呼びボタン9のいずれかが操作された時には、上かご停止階の乗場操作盤7aからエレベータ制御装置本体20が備える上かご戸開指令検出手段22aへと、上かご戸開指令が出力される。
【0027】
また、下かご停止階の乗場操作盤7bにおいて、下かご1bの走行予定方向が上方向である場合に上方向乗場呼びボタン8が操作された時、下かご1bの走行予定方向が下方向である場合に下方向乗場呼びボタン9が操作された時、及び、下かご1bの走行予定方向が未決定である場合に上方向乗場呼びボタン8又は下方向乗場呼びボタン9のいずれかが操作された時には、下かご停止階の乗場操作盤7bから下かご戸開指令検出手段22bへと、下かご戸開指令が出力される。
【0028】
次に、上かご1a内に設けられた上かご操作盤12aにおいて、戸開ボタン13が操作された場合には上かご戸開指令検出手段22aへと上かご戸開指令が出力され、戸閉ボタン14が操作された場合には上かご戸閉指令検出手段23aへと上かご戸閉指令が出力され、下かご戸閉ボタン19aが操作された場合には下かご戸閉指令検出手段23bへと下かご戸閉指令が出力される。
【0029】
また、下かご1b内に設けられた下かご操作盤12bにおいて、戸開ボタン13が操作された場合には下かご戸開指令検出手段22bへと下かご戸開指令が出力され、戸閉ボタン14が操作された場合には下かご戸閉指令検出手段23bへと下かご戸閉指令が出力され、上かご戸閉ボタン19bが操作された場合には上かご戸閉指令検出手段23aへと下かご戸閉指令が出力される。
【0030】
上かご戸開指令検出手段22aは、上かご停止階の乗場操作盤7a及び上かご操作盤12aの少なくともいずれかから上かご戸開指令が出力されている場合に、上かご戸開指令の出力を検出する。また、上かご戸閉指令検出手段23aは、上かご操作盤12a及び下かご操作盤12bの少なくともいずれかから上かご戸閉指令が出力されている場合に、上かご戸閉指令の出力を検出する。
【0031】
同様に、下かご戸開指令検出手段22bは、下かご停止階の乗場操作盤7b及び下かご操作盤12bの少なくともいずれかから下かご戸開指令が出力されている場合に、下かご戸開指令の出力を検出する。また、下かご戸閉指令検出手段23bは、上かご操作盤12a及び下かご操作盤12bの少なくともいずれかから下かご戸閉指令が出力されている場合に、下かご戸閉指令の出力を検出する。
【0032】
上かご戸開閉制御手段21aは、上かご戸開指令検出手段22aによる上かご戸開指令検出結果及び上かご戸閉指令検出手段23aによる上かご戸閉指令検出結果に基づいて、上かご1aの戸の開閉動作を制御するものである。具体的には、上かご戸開指令検出手段22aが上かご戸開指令の出力を検出している場合には、上かご戸閉指令検出手段23aの検出結果に関わらず、上かご1aを戸開する。また、上かご戸開指令検出手段22aが上かご戸開指令の出力を検出しておらず、かつ、上かご戸閉指令検出手段23aが上かご戸閉指令の出力を検出している場合には、上かご1aを戸閉する。
【0033】
同様に、下かご戸開閉制御手段21bは、下かご戸開指令検出手段22bによる戸開指令検出結果及び下かご戸閉指令検出手段23bによる下かご戸閉指令検出結果に基づいて、下かご1bの戸の開閉動作を制御するものである。具体的には、下かご戸開指令検出手段22bが下かご戸開指令の出力を検出している場合には、下かご戸閉指令検出手段23bの検出結果に関わらず、下かご1bを戸開する。また、下かご戸開指令検出手段22bが下かご戸開指令の出力を検出しておらず、かつ、下かご戸閉指令検出手段23bが下かご戸閉指令の出力を検出している場合には、下かご1bを戸閉する。
【0034】
なお、以上においては、かご操作盤12の開延長ボタン15が操作された場合についての説明を省略しているが、開延長ボタン15が操作された場合には戸が全開の状態で開延長ボタン15が操作されてから一定時間が経過するまで、戸開指令を出力する。
【0035】
このような以上説明した基本的な構成を有するエレベータの制御装置は、ダブルデッキエレベータにおいて、上かご1a及び下かご1bの一方のかご内から、下かご戸閉ボタン19aや上かご戸閉ボタン19bを操作することにより他方のかごの戸の戸閉を指示することができる。そして、前記一方のかごからの戸閉指令があった場合には、前記他方のかごに対応して設けられた上かご戸閉指令検出手段23a又は下かご戸閉指令検出手段23bが当該戸閉指令を検出し、前記他方のかごの戸開閉制御手段によって前記他方のかごに対する戸開指令が出されていない限り、前記他方のかごの戸を戸閉することができる。
【0036】
なお、以上においては、上かご操作盤12a及び下かご操作盤12bについて、一方のかごから他方のかごへの戸閉を指令するための専用のボタン(下かご戸閉ボタン19a、上かご戸閉ボタン19b)を設けた例について説明した(図2の(a)及び(b))。しかし、一方のかごから他方のかごへの戸閉を指令するための専用のボタンを設けなくとも、通常の目的においてはなされることのない所定のかご戸閉指令操作が行われた時に、他方のかごへの戸閉指令を出力するようにしてもよい(図2の(c))。この所定のかご戸閉指令操作としては、例えば、戸閉ボタン14の長押し等が考えられる。
【0037】
このように、かご操作盤に、一方のかごから他方のかごへの戸閉を指令するための専用ボタンを設けた構成や、所定のかご戸閉指令操作により一方のかごから他方のかごへと戸閉指令を出力する構成は、一方のかごから他方のかごへの戸閉を指令するためのかご戸閉指令手段を構成している。具体的には、上かご操作盤12aには下かご戸閉指令手段が、下かご操作盤12bには上かご戸閉指令手段が、それぞれ備えられている。
【0038】
以上のような基本となる構成をもとにして、さらに、構成を追加したエレベータの制御装置の構成を、図4を参照しながら説明する。
上かご1a及び下かご1bには、それぞれの戸において何らかの物体が挟まれそうになる状態を検出するための上かご挟まれ防止センサ30a及び下かご挟まれ防止センサ30bが、それぞれに設けられている。これらの挟まれ防止センサは、例えば、赤外線センサ、超音波センサや光電センサ等が利用される。そしてかごの戸に何らかの物体が接触しそうになる、あるいは、かごの戸の閉じる方向に何らかの物体が接触したことを検出した場合に、戸開指令を出力する。
【0039】
具体的には、上かご挟まれ防止センサ30aは、上かご1aの戸に物体が挟まれそうな状態が検出されると、上かご戸開指令検出手段22aへと上かご戸開指令を出力する。下かご挟まれ防止センサ30bは、下かご1bの戸に物体が挟まれそうな状態が検出されると、下かご戸開指令検出手段22bへと下かご戸開指令を出力する。
【0040】
この図4の構成においては、図3の構成と異なり、上かご操作盤12aの下かご戸閉指令手段からの下かご戸閉指令は、下かご戸閉指令検出手段23bに直接に入力されるのではなく、上かごからの下かご戸閉指令検出手段31bへと一度入力される。この上かごからの下かご戸閉指令検出手段31bは、上かご呼び検出手段32a及び上かご戸位置検出手段33aの検出結果に基づいて、下かご戸閉指令検出手段23bへと下かご戸閉指令を送信するものである。
【0041】
ここで、上かご呼び検出手段32aは、上かご操作盤12aの1以上のかご行先階呼びボタン16が操作されて、上かご1aに対して少なくとも1以上の行先階呼びが登録されているか否かを検出する。また、上かご戸位置検出手段33aは、上かご1aの戸の位置が全閉位置にあるか否かを検出する。
【0042】
そして、上かごからの下かご戸閉指令検出手段31bは、上かご呼び検出手段32aにより上かご1aに対して少なくとも1以上の行先階呼びが登録されていることが検出され、かつ、上かご戸位置検出手段33aにより上かご1aの戸が全閉位置にあることが検出された状態において、上かご操作盤12aの下かご戸閉指令手段からの下かご戸閉指令を検出した場合に、下かご戸閉指令検出手段23bへと下かご戸閉指令を送信する。
【0043】
同様に、下かご操作盤12bの上かご戸閉指令手段からの上かご戸閉指令は、上かご戸閉指令検出手段23aに直接に入力されるのではなく、下かごからの上かご戸閉指令検出手段31aへと一度入力される。この下かごからの上かご戸閉指令検出手段31aは、下かご呼び検出手段32b及び下かご戸位置検出手段33bの検出結果に基づいて、上かご戸閉指令検出手段23aへと上かご戸閉指令を送信するものである。
【0044】
ここで、下かご呼び検出手段32bは、下かご操作盤12bの1以上のかご行先階呼びボタン16が操作されて、下かご1bに対して少なくとも1以上の行先階呼びが登録されているか否かを検出する。また、下かご戸位置検出手段33bは、下かご1bの戸の位置が全閉位置にあるか否かを検出する。
【0045】
そして、下かごからの上かご戸閉指令検出手段31aは、下かご呼び検出手段32bにより下かご1bに対して少なくとも1以上の行先階呼びが登録されていることが検出され、かつ、下かご戸位置検出手段33bにより下かご1bの戸が全閉位置にあることが検出された状態において、下かご操作盤12bの下かご戸閉指令手段からの上かご戸閉指令を検出した場合に、上かご戸閉指令検出手段23aへと上かご戸閉指令を送信する。
【0046】
上かご戸閉報知手段34aは、下かごからの上かご戸閉指令検出手段31aから上かご戸閉指令検出手段23aへと上かご戸閉指令が送信される状態となったときに、上かご1aでの操作により下かご1bの戸が戸閉されることを下かご1bの利用者へと報知するためのものである。
【0047】
この報知には、上かご停止階の乗場音声案内装置10a(上かご停止階の乗場操作盤7aの乗場音声案内装置10)、上かご停止階の乗場案内表示装置11a(上かご停止階の乗場操作盤7aの乗場案内表示装置11)、上かご音声案内装置17a(上かご操作盤12aのかご音声案内装置17)及び上かご案内表示装置18a(上かご操作盤12aのかご案内表示装置18)のうち、全て又はいずれか1以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
また、同様に、下かご戸閉報知手段34bは、上かごからの下かご戸閉指令検出手段31bから下かご戸閉指令検出手段23bへと下かご戸閉指令が送信される状態となったときに、下かご1bでの操作により上かご1aの戸が戸閉されることを上かご1aの利用者へと報知するためのものである。
【0049】
そして、この報知には、下かご停止階の乗場音声案内装置10b(下かご停止階の乗場操作盤7bの乗場音声案内装置10)、下かご停止階の乗場案内表示装置11b(下かご停止階の乗場操作盤7bの乗場案内表示装置11)、下かご音声案内装置17b(下かご操作盤12bのかご音声案内装置17)及び下かご案内表示装置18b(下かご操作盤12bのかご案内表示装置18)のうち、全て又はいずれか1以上を組み合わせて用いることができる点も、上かご戸閉報知手段34aの場合と同様である。
【0050】
ここで、以上における上かご戸閉報知手段34aや下かご戸閉報知手段34bによる具体的な報知内容としては、音声案内装置(乗場音声案内装置10やかご音声案内装置17)からから報知を行う場合には、例えばブザー音や「ドアが閉まります」といった音声メッセージを流すことが考えられる。また、案内表示装置(乗場案内表示装置11やかご案内表示装置18)により報知を行う場合には、例えば「ドアが閉まります」といったメッセージやドアが閉まる様子のアニメーション等を表示することが考えられる。
【0051】
なお、以上のようなドアが閉まる旨の報知は、下かごからの上かご戸閉指令検出手段31aや上かごからの下かご戸閉指令検出手段31bから、戸閉指令(すなわち、かご戸閉指令手段由来の戸閉指令)が送信される場合のみ行うようにしてもよいし、例えば戸閉ボタン14が通常操作されたことにより上かご戸閉指令検出手段23aや下かご戸閉指令検出手段23bにおいて直接入力された戸閉指令が検出された場合(すなわち、かご戸閉指令手段由来でない戸閉指令が検出された場合)にも行うようにしてもよい。
【0052】
そして、後者の場合には、かご戸閉指令手段由来の戸閉指令によって行われる報知の内容と、かご戸閉指令手段由来でない戸閉指令によって行われる報知の内容とを、区別可能な異なる態様としてもよい。このようにすることで、利用者に対してより効果的に戸閉の注意喚起を行うことができる。
【0053】
他の構成については、前述した図3の構成と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0054】
図5のフロー図は、この実施の形態における図4に示す構成を有するエレベータの制御装置の動作を示すものである。
この図5に示すフローは、例えば乗合自動運転等の通常運転(逆に言えば、非常運転等の特殊運転でない)時にかご1が乗場6に停止している状態から開始する。そして、図5に向かって右側に示すステップS1a〜S9aのフローと、同左側に示すステップS1b〜S9bのフローとは、並行して処理される。
【0055】
まず、ステップS1aにおいて、上かご戸開指令検出手段22aにより上かご戸開指令が検出されたか否かが確認される。そして、上かご戸開指令が上かご戸開指令検出手段22aにおいて検出された場合には、ステップS2aへと進む。このステップS2aにおいては、上かご戸開閉制御手段21aにより、上かご1aの戸が戸開される。ステップS2aの後はステップS9aへと移行する。なお、この上かご戸開指令は、主に上かご操作盤12aの戸開ボタン13が操作されたり、上かご挟まれ防止センサ30aが検出動作した場合に上かご戸開指令検出手段22aへと送信されることは前述した通りである。
【0056】
一方、ステップS1aで、上かご戸開指令が上かご戸開指令検出手段22aにおいて検出されなかった場合には、ステップS3aへと進む。このステップS3aにおいては、下かご戸位置検出手段33bにより下かご1bの戸閉完了が検出されたか否かが確認される。この確認において、下かご戸位置検出手段33bにより下かご1bの戸閉完了が検出された場合には、ステップS4aへと進む。
【0057】
ステップS4aにおいては、下かご呼び検出手段32bにより下かご1bについて少なくとも1以上の行先階呼び登録が検出されたか否かが確認される。この確認において、下かご呼び検出手段32bにより下かご1bについて少なくとも1以上の行先階呼び登録が検出された場合には、ステップS5aへと進む。
【0058】
そして、このようにステップS3a及びS4aでの確認を経た上で、ステップS5aにおいて、下かごからの上かご戸閉指令検出手段31aにより、下かご操作盤12bの上かご戸閉指令手段からの上かご戸閉指令が検出されると、下かごからの上かご戸閉指令検出手段31aから上かご戸閉指令検出手段23aへと上かご戸閉指令が送信される。そして、この上かご戸閉指令を上かご戸閉指令検出手段23aが検出すると、上かご戸開閉制御手段21aにより上かご1aの戸閉が開始される。
【0059】
ステップS5aの後、あるいは、ステップS3aで下かご戸位置検出手段33bにより下かご1bの戸閉完了が検出されない場合や、ステップS4aで下かご呼び検出手段32bにより下かご1bについて少なくとも1以上の行先階呼び登録が検出されない場合には、処理はステップS6aへと進む。
【0060】
このステップS6aにおいては、上かご戸開指令検出手段22aにより上かご戸開指令が検出されたか否かが確認される。上かご戸開指令が検出された場合には、まず、ステップS7aにおいて、上かご戸閉報知手段34aは、上かご1aの利用者に対して、上かご1aが戸閉する旨の注意喚起の報知を上かご音声案内装置17a等を用いて一定時間の間行う。
【0061】
そして、この報知と同時に、上かご戸開閉制御手段21aは上かご1aの戸閉動作を前記一定時間の間中断する。そして、前記一定時間の間の戸閉中断及び報知の後、ステップS8aへと進み、上かご戸開閉制御手段21aは上かご1aの戸を戸閉する。
【0062】
ステップS2a及びS8aの後は、ステップS9aへと進む。また ステップS6aで上かご戸開指令が検出されない場合にも、ステップS7a及びS8aを飛ばしてステップS9aへと進む。このステップS9aにおいては、上かご戸位置検出手段33aにより上かご1aの戸閉が完了したか否かが確認される。そして、上かご1aの戸閉が完了してなければステップS1aへと戻る一方、上かご1aの戸閉が完了していればステップS10と移行する。
【0063】
なお、ステップS1b〜S9bは、以上で説明したステップS1a〜S9aにおいて上かごと下かごの関係を交換したものであり、上かごと下かごの関係を交換した以外の点はステップS1a〜S9aと同様であるため、その詳細説明は省略する。
【0064】
ステップS10に至ると、ステップS1a〜S9a及びステップS1b〜S9bでの並行処理は終了し、上かご1a及び下かご1bの両方において戸閉が完了した状態である。このステップS10においては、エレベータ制御装置本体20は、現在停止している階床とは他の階床へとかご1(上かご1a及び下かご1b)を走行させるべき呼びがあるか否かを確認する。
【0065】
そして、かご1を走行させるべき呼びがある場合には、ステップS11へと進み、当該呼びに応答すべくエレベータ制御装置本体20はかご1の走行を開始する。一方、かご1を走行させるべき呼びがない場合には、ステップS12へと進み、エレベータ制御装置本体20はかご1の停止を継続する。
【0066】
なお、かご戸閉指令手段について、一方のかごから他方のかごへの戸閉を指令するための専用のボタンを設けなくとも、通常の目的においてはなされることのない所定のかご戸閉指令操作が行われた時に、他方のかごへの戸閉指令を出力するようにしてもよいことは前述した通りである。
【0067】
ここで、一方のかごからの戸閉指令により他方のかごを戸閉することができるのは、一方のかごが戸閉しかつ一方のかごについて行先階呼びが登録されている状態であるとした場合には、前記所定のかご戸閉指令操作としては、一方のかごの戸が全閉している状況では機能しないボタンに対する操作(すなわち、一方のかごの戸が全閉している状況では意味をなさない操作)とすることが好ましい。この一方のかごの戸が全閉している状況では意味をなさない操作の具体例としては、開延長ボタン15の操作や、現在当該一方のかごが停止している階床のかご行先階呼びボタン16の操作、戸閉ボタン14の長押し等が挙げられる。
【0068】
また、以上において、乗場音声案内装置10、乗場案内表示装置11、開延長ボタン15、かご音声案内装置17、かご案内表示装置18、上かご挟まれ防止センサ30a及び下かご挟まれ防止センサ30bについては、必要に応じて設置すればよく、適宜設置を省略するようにしてもよい。
【0069】
以上のように構成されたエレベータの制御装置は、上かご及び下かごの両者の一方のかごのかご操作盤に所定の操作がなされると、前記両者の他方のかごへの戸閉指令を出力するかご戸閉指令手段と、エレベータの通常運転時に、かご戸閉指令手段から出力された他方のかごへの戸閉指令を受けた場合に、他方のかごを戸閉するかご戸開閉制御手段と、を備えている。
【0070】
このため、ダブルデッキエレベータの通常運転時において、上かご及び下かごの一方のかごは走行開始可能な状態にあるのにも関わらず他方のかごが戸開しているために走行開始できない場合の待機時間を短縮することができ、エレベータの運行効率を向上させるとともに、利用者の不快感を軽減することが可能である。
【0071】
また、さらに、戸閉状態にあることを上かご及び下かごの両者のそれぞれについて検出するかご戸位置検出手段と、かご操作盤になされた操作により少なくとも1以上の行先階呼びが登録されていることを前記両者のそれぞれについて検出するかご呼び検出手段と、を備え、かご戸開閉制御手段は、かご戸位置検出手段により一方のかごが戸閉状態にあることが検出され、かつ、かご呼び検出手段により一方のかごについて少なくとも1以上の行先階呼びが登録されていることが検出されている状態において、かご戸閉指令手段から出力された他方のかごへの戸閉指令を受けた場合に、他方のかごを戸閉するものである。
【0072】
このため、上かご及び下かごの一方のかごが走行開始可能な状態にあることがより確実な場合に、一方のかごから他方のかごの戸閉指令を可能としたため、不用意な戸閉を抑制してより的確な戸開閉制御が可能となり、さらなる運転効率向上等を望むことができる。
【符号の説明】
【0073】
1 かご
1a 上かご
1b 下かご
2 かご枠
3 主ロープ
4 巻上機
5 カウンターウェイト
6 乗場
6a 上かご停止階の乗場
6b 下かご停止階の乗場
7a 上かご停止階の乗場操作盤
7b 下かご停止階の乗場操作盤
8 上方向乗場呼びボタン
9 下方向乗場呼びボタン
10 乗場音声案内装置
10a 上かご停止階の乗場音声案内装置
10b 下かご停止階の乗場音声案内装置
11 乗場案内表示装置
11a 上かご停止階の乗場案内表示装置
11b 下かご停止階の乗場案内表示装置
12a 上かご操作盤
12b 下かご操作盤
13 戸開ボタン
14 戸閉ボタン
15 開延長ボタン
16 かご行先階呼びボタン
17 かご音声案内装置
17a 上かご音声案内装置
17b 下かご音声案内装置
18 かご案内表示装置
18a 上かご案内表示装置
18b 下かご案内表示装置
19a 下かご戸閉ボタン
19b 上かご戸閉ボタン
20 エレベータ制御装置本体
21a 上かご戸開閉制御手段
21b 下かご戸開閉制御手段
22a 上かご戸開指令検出手段
22b 下かご戸開指令検出手段
23a 上かご戸閉指令検出手段
23b 下かご戸閉指令検出手段
30a 上かご挟まれ防止センサ
30b 下かご挟まれ防止センサ
31a 下かごからの上かご戸閉指令検出手段
31b 上かごからの下かご戸閉指令検出手段
32a 上かご呼び検出手段
32b 下かご呼び検出手段
33a 上かご戸位置検出手段
33b 下かご戸位置検出手段
34a 上かご戸閉報知手段
34b 下かご戸閉報知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの昇降路内において昇降方向に連結された上かご及び下かごの両者を有するダブルデッキエレベータであって、
前記両者のかご内にそれぞれ設けられたかご操作盤と、
前記両者のかごの戸開閉をそれぞれ制御するかご戸開閉制御手段と、
前記両者の一方のかごの前記かご操作盤に所定の操作がなされると、前記両者の他方のかごへの戸閉指令を出力するかご戸閉指令手段と、を備え、
前記かご戸開閉制御手段は、前記エレベータの通常運転時に、前記かご戸閉指令手段から出力された前記他方のかごへの戸閉指令を受けた場合に、前記他方のかごを戸閉することを特徴とするエレベータの制御装置。
【請求項2】
戸閉状態にあることを前記両者のそれぞれについて検出するかご戸位置検出手段と、
前記かご操作盤になされた操作により少なくとも1以上の行先階呼びが登録されていることを前記両者のそれぞれについて検出するかご呼び検出手段と、を備え、
前記かご戸開閉制御手段は、前記かご戸位置検出手段により前記一方のかごが戸閉状態にあることが検出され、かつ、前記かご呼び検出手段により前記一方のかごについて少なくとも1以上の行先階呼びが登録されていることが検出されている状態において、前記かご戸閉指令手段から出力された前記他方のかごへの戸閉指令を受けた場合に、前記他方のかごを戸閉することを特徴とする請求項1に記載のエレベータの制御装置。
【請求項3】
前記所定の操作は、前記かご戸位置検出手段により前記一方のかごが戸閉状態にあることが検出された後に行われた、前記一方のかごが戸閉状態では意味をなさない操作であることを特徴とする請求項2に記載のエレベータの制御装置。
【請求項4】
前記かご戸開閉制御手段が前記かご戸閉指令手段から出力された前記他方のかごへの戸閉指令を受けて前記他方のかごを戸閉する際に、前記他方のかごが戸閉する旨を前記他方のかごの利用者に報知する戸閉報知手段を備えたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のエレベータの制御装置。
【請求項5】
前記戸閉報知手段は、前記かご戸閉指令手段から出力された前記他方のかごへの戸閉指令を受けて前記他方のかごを戸閉する際の報知の態様を、前記他方のかごの前記かご操作盤への操作による前記他方のかごの戸閉の際の報知の態様とは、異なるものとすることを特徴とする請求項4に記載のエレベータの制御装置。
【請求項6】
前記かご戸開閉制御手段は、前記かご戸閉指令手段から出力された前記他方のかごへの戸閉指令を受けて前記他方のかごを戸閉する際に、前記他方のかごへの戸開指令を受けると、前記他方のかごの戸閉を一定時間の間中断し、
前記戸閉報知手段は、前記中断中は前記他方のかごが戸閉する旨の報知を継続することを特徴とする請求項4又は請求項5のいずれかに記載のエレベータの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−100157(P2013−100157A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244178(P2011−244178)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】