説明

エレベータの煙感知器点検装置

【課題】エレベータ保守要員の手を煩わすことなく、電気設備検査要員が単独で昇降路内頂部に設置されている煙感知器の点検を行えるエレベータの煙感知器点検装置を得る。
【解決手段】昇降路内頂部に設置されている煙感知器を定期的に煙感知器動作確認装置によって点検するものにおいて、昇降路の最上階防火壁2に設けられた開口部と、開口部に開閉自在に設けられ、通常は開口部を閉塞しかつ点検時には開口部を開放するように移動する煙感知器取付板兼用の蓋体15と、蓋体に取り付けられ、通常状態では昇降路内頂部に配置されかつ点検時には最上階の乗場出入口の上方部に位置する煙感知器17と、最上階の乗場出入口上部に開閉自在に設けられ、常時は施錠して閉鎖されており、煙感知器の点検時に解錠して開かれる点検扉10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、昇降路内頂部に設置されている煙感知器を容易に点検できるエレベータの煙感知器点検装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータの昇降路内頂部には、電気設備業者によって煙感知器を設置することが義務付けられており、その点検インターバルも定期的に行うことが規定されている。
図5は従来のエレベータの煙感知器の取付状況とその点検作業時の動作確認方法を示すエレベータの最上階乗場付近の断面図である。図5において、1は昇降路、2は昇降路防火壁、3はエレベータのかご室、4はかごの戸、5はかご室3の上部に設けられたドア装置、6は乗場の戸、7は最上階の乗場床、8はエレベータの乗場出入口の上面枠、9は最上階乗場の内装壁、30は昇降路内頂部に設置された煙感知器、31はかご室3内に設けられたエレベータ運転操作パネルで、保守運転操作機能31aを備えている。32はエレベータのかご室3の天井面上に登った電気設備検査要員、33はかご室3内に居て運転操作パネル731の保守運転操作機能31aを操作しているエレベータ保守運転要員、34はかご室3の天井面上の電気設備検査要員32が手に持っている煙感知器動作確認装置である。
そして、昇降路内頂部に設置された煙感知器30の点検作業は、エレベータ保守会社の保守運転要員33の同行のもとでエレベータを保守運転モードとし、電気設備検査要員32がエレベータのかご室3の天井面上に登って点検作業を実施しなければならない。
また、従来技術として、かご室天井に設けられた煙感知器点検用点検口を開くとともに、かご上に設けられた照明装置により煙感知器を照明し、かご内より煙感知器点検器具によって点検するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−212931号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のエレベータの煙感知器の取付状況とその点検作業時の動作確認方法では、煙感知器の設置位置が昇降路頂部であるため、その点検作業をエレベータのかご室の天井面上に乗って行うことは、転落などの危険を伴う高所作業となり、エレベータ保守の専門家のような訓練と認定を受けたものでなければ困難である。また、電気設備検査要員とエレベータ保守要員が一対のペアとなって作業しなければならないため、両者の時間調整などが必要になるとともに、点検コストも高いものになる。
また、特許文献1記載の従来技術では、かご室の天井面上でなくかご内より煙感知器の点検ができるが、煙感知器の点検のための電気設備検査要員とエレベータの保守運転要員が一対のペアとなって作業しなければならないことには変わりがなく、両者の時間調整などが必要になるとともに、点検コストも高いものになる。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、エレベータ保守要員の手を煩わすことなく、電気設備検査要員が単独で昇降路内頂部に設置されている煙感知器の点検を行えるようにしたエレベータの煙感知器点検装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエレベータの煙感知器点検装置においては、昇降路内頂部に設置されている煙感知器を定期的に煙感知器動作確認装置によって点検するものにおいて、昇降路の最上階防火壁に設けられた開口部と、開口部に開閉自在に設けられ、通常は開口部を閉塞しかつ点検時には開口部を開放するように移動する煙感知器取付板兼用の蓋体と、蓋体に取り付けられ、通常状態では昇降路内頂部に配置されかつ点検時には最上階の乗場出入口の上方部に位置する煙感知器と、最上階の乗場出入口上部に開閉自在に設けられ、常時は施錠して閉鎖されており、煙感知器の点検時に解錠して開かれる点検扉とを備えたものである。
【0007】
また、昇降路の最上階防火壁に設けられた開口部と、開口部に開閉自在に設けられ、通常は開口部を閉塞する煙感知器取付板兼用の蓋体と、蓋体に取り付けられ、通常状態では昇降路内頂部に配置される煙感知器と、蓋体と昇降路防火壁との間に設けられ、蓋体を常時昇降路防火壁に密着させる引きバネ機構と、最上階の乗場出入口上部に開閉自在に設けられ、常時は施錠して閉鎖されており、煙感知器の点検時に解錠して開かれる点検扉と、点検扉と蓋体との間に設けられ、点検扉が開かれた時に連動して蓋体を回転させ、煙感知器を点検扉が開かれた開口部から点検できる位置に移動させる連動機構とを備えたたものである。
【0008】
さらに、蓋体が昇降路防火壁に密着していることを検出し、蓋体が密着している時のみエレベータの運転を可能とする密着検出スイッチを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、エレベータ保守要員の手を煩わすことなく、電気設備検査要員が単独で昇降路内頂部に設置されている煙感知器の点検を容易に行えるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの煙感知器点検装置の取付状況とその点検作業時の動作確認方法を示すエレベータの最上階乗場付近の断面図、図2は図1のA−A線に沿った断面図、図3はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの煙感知器点検装置の要部構造を示す拡大斜視図、図4は図3のB部の詳細を示す斜視図である。
【0011】
図において、1は昇降路、2は昇降路防火壁、3はエレベータのかご室、4はかごの戸、5はかご室3の上部に設けられたドア装置、6は乗場の戸、7は最上階の乗場床、8はエレベータの乗場出入口の上面枠、9は最上階乗場の内装壁、10はエレベータの乗場出入口の上面枠8にヒンジ11により開閉自在に設けられた点検扉で、常時は閉鎖して施錠できる。12はこの点検扉10に設けられた点検扉用キースイッチで、キー13により解錠操作される。14は昇降路頂部の最上階防火壁2に設けられた開口部、15はこの開口部14の乗場側周縁の一側部にヒンジ16により開閉自在に枢着され、通常は上記開口部14を閉塞する煙感知器取付板兼用の蓋体で、防火壁となり得る、例えば厚さ1.5t以上の鋼板からなる甲種防火戸相当のものである。17はこの蓋体15の昇降路側壁面に設けられた煙感知器取付台18の下面に取り付けられた煙感知器で、蓋体15が上記開口部14を閉塞している通常状態で昇降路内頂部に配置される。19は煙感知器取付板兼用の蓋体15と昇降路防火壁2に固定したバネ取付金20との間に設けられ、上記蓋体15を常時昇降路防火壁2に密着させるための引きバネ機構、21は煙感知器取付板兼用の蓋体15が昇降路防火壁2に密着していることを検出する密着検出スイッチで、煙感知器取付板兼用の蓋体15が昇降路防火壁2に密着している時のみエレベータの運転が可能となるような電気接点を有している。22は点検扉10と煙感知器取付板兼用の蓋体15を連結するワイヤーロープで、一端が点検扉10の開放端側に接続されており、途中は複数個(図示では3個)の滑車23に巻き掛けられ、かつ他端には煙感知器取付板兼用の蓋体15の蓋穴24に係合するロック装置25が連結されている。ワイヤーロープ22は、煙感知器取付板兼用の蓋体15が昇降路防火壁2に密着している時は、点検扉10が閉鎖状態になる長さに設定されており、乗場出入口の上面枠8の点検扉10が全開位置まで開くと、ワイヤーロープ22が引っ張られて複数個の滑車23を介してロック装置25が引っ張られ、ロック装置25が係合している煙感知器取付板兼用の蓋体15を、煙感知器17を点検できる位置まで回転させる。なお、ワイヤーロープ22は、上記条件を満たすために、ロープ長さ調整機能及び全開、全閉時でロープ長さが同等になるようにロープ反転具である滑車23は位置調整可能な構造とする。26はロック装置25のピン、27はピン26に設けられた戻し用ヒネリバネ、28は最上階の乗場床7に居る電気設備検査要員、29は最上階の乗場床7に居る電気設備検査要員28が手に持っている煙感知器動作確認装置で、乗場出入口の上面枠8に設けられた点検扉10を開くことにより、エレベータ保守要員の手を煩わすことなく、最上階の乗場床7から煙感知器17の点検を可能にすることができる。
【0012】
次に、エレベータの煙感知器点検装置の点検作業時の動作確認方法について説明する。
先ず、エレベータのかご室3内に乗客がいないことを確認する。次に、最上階の乗場において、点検扉10のキースイッチ11の施錠を解錠して、点検扉10を開く。点検扉10が開くと、ワイヤーロープ22に連動して煙感知器取付兼用の蓋体15が回転し、煙感知器取付板兼用の蓋体15が昇降路防火壁2に密着していることを検出する密着検出スイッチ21の電気接点が開き、エレベータの運転を不可能にする。点検扉10を全開にすると、煙感知器17が点検できる位置(点検扉が開かれた開口部の真上)まで煙感知器取付板兼用の蓋体15が回転する。次に、電気設備検査要員28が最上階の乗場床7から煙感知器動作確認装置29を点検扉10が開かれた開口部より挿入して煙感知器17に当て、煙感知器17の動作確認を点検する。点検後は、点検扉10を閉じてキースイッチ11を施錠する。点検扉10が全閉すると、引きバネ機構19で引き戻された煙感知器取付板兼用の蓋体15が昇降路防火壁2に密着し、密着検出スイッチ21の電気接点が閉じて、エレベータが正常運転動作に入る。
【0013】
以上のように、この発明の実施の形態1によれば、エレベータ保守要員の手を煩わすことなく、電気設備検査要員が単独で最上階の乗場床から煙感知器動作確認装置を用いて点検扉10の開かれた開口部より挿入し、昇降路内頂部に設置されている煙感知器の点検を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの煙感知器点検装置の取付状況とその点検作業時の動作確認方法を示すエレベータの最上階乗場付近の断面図である。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図である。
【図3】この発明の実施の形態1におけるエレベータの煙感知器点検装置の要部構造を示す拡大斜視図である。
【図4】図3のB部の詳細を示す斜視図である。
【図5】従来のエレベータの煙感知器の取付状況とその点検作業時の動作確認方法を示すエレベータの最上階乗場付近の断面図である。
【符号の説明】
【0015】
1 昇降路
2 昇降路防火壁
3 エレベータのかご室
4 かごの戸
5 ドア装置
6 乗場の戸
7 最上階の乗場床
8 乗場出入口の上面枠
9 最上階乗場の内装壁
10 点検扉
11 ヒンジ
12 点検扉用キースイッチ
13 キー
14 開口部
15 煙感知器取付板兼用の蓋体
16 ヒンジ
17 煙感知器
18 煙感知器取付台
19 引きバネ機構
20 バネ取付金
21 密着検出スイッチ
22 ワイヤーロープ
23 滑車
24 蓋穴
25 ロック装置
26 ピン
27 戻し用ヒネリバネ
28 電気設備検査要員
29 煙感知器動作確認装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内頂部に設置されている煙感知器を定期的に煙感知器動作確認装置によって点検するエレベータの煙感知器点検装置において、
昇降路の最上階防火壁に設けられた開口部と、
前記開口部に開閉自在に設けられ、通常は前記開口部を閉塞しかつ点検時には前記開口部を開放するように移動する煙感知器取付板兼用の蓋体と、
前記蓋体に取り付けられ、通常状態では前記昇降路内頂部に配置されかつ点検時には最上階の乗場出入口の上方部に位置する煙感知器と、
最上階の乗場出入口上部に開閉自在に設けられ、常時は施錠して閉鎖されており、前記煙感知器の点検時に解錠して開かれる点検扉と、
を備えたことを特徴とするエレベータの煙感知器点検装置。
【請求項2】
昇降路内頂部に設置されている煙感知器を定期的に煙感知器動作確認装置によって点検するエレベータの煙感知器点検装置において、
昇降路の最上階防火壁に設けられた開口部と、
前記開口部に開閉自在に設けられ、通常は前記開口部を閉塞する煙感知器取付板兼用の蓋体と、
前記蓋体に取り付けられ、通常状態では前記昇降路内頂部に配置される煙感知器と、
前記蓋体と前記昇降路防火壁との間に設けられ、前記蓋体を常時前記昇降路防火壁に密着させる引きバネ機構と、
最上階の乗場出入口上部に開閉自在に設けられ、常時は施錠して閉鎖されており、前記煙感知器の点検時に解錠して開かれる点検扉と、
前記点検扉と前記蓋体との間に設けられ、前記点検扉が開かれた時に連動して前記蓋体を回転させ、前記煙感知器を前記点検扉が開かれた開口部から点検できる位置に移動させる連動機構と、
を備えたことを特徴とするエレベータの煙感知器点検装置。
【請求項3】
昇降路内頂部に設置されている煙感知器を定期的に煙感知器動作確認装置によって点検するエレベータの煙感知器点検装置において、
昇降路の最上階防火壁に設けられた開口部と、
前記開口部に開閉自在に設けられ、通常は前記開口部を閉塞する煙感知器取付板兼用の蓋体と、
前記蓋体に取り付けられ、通常状態では前記昇降路内頂部に配置される煙感知器と、
前記蓋体と前記昇降路防火壁との間に設けられ、前記蓋体を常時前記昇降路防火壁に密着させる引きバネ機構と、
前記蓋体が前記昇降路防火壁に密着していることを検出し、前記蓋体が密着している時のみエレベータの運転を可能とする密着検出スイッチと、
最上階の乗場出入口上部に開閉自在に設けられ、常時は施錠して閉鎖されており、前記煙感知器の点検時に解錠して開かれる点検扉と、
前記点検扉と前記蓋体との間に設けられ、前記点検扉が開かれた時に連動して前記蓋体を回転させ、前記煙感知器を前記点検扉が開かれた開口部から点検できる位置に移動させる連動機構と、
を備えたことを特徴とするエレベータの煙感知器点検装置。
【請求項4】
蓋体は水平方向に回転可能に構成されており、煙感知器は前記蓋体の昇降路壁面に設けられた煙感知器取付台の下面に下向きに取り付けられていることことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のエレベータの煙感知器点検装置。
【請求項5】
連動機構は、一端が点検扉の開放端側に連結され、かつ他端が蓋体に連結されたワイヤーロープと、このワイヤーロープが巻き掛けられた複数個の滑車とを備えることを特徴とする請求項2又は請求項3記載のエレベータの煙感知器点検装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−297156(P2007−297156A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125239(P2006−125239)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(301020536)三菱日立ホームエレベーター株式会社 (3)
【Fターム(参考)】