説明

エレベータシャフト内のアスベスト処理工法

【課題】エレベータシャフト内のアスベスト面に薬液を噴霧してアスベストの粉塵化を防止するアスベスト封じ込め処理を短時間に行い得る、エレベータシャフト内のアスベスト処理工法を提供すること。
【解決手段】エレベータカゴ11より上方に立ち上がるノズル支持部材16を設置し、このノズル支持部材16の高さ方向に間隔を隔てて基端を支持されアスベスト構造体に向けて伸びる複数の水平棹17を設置し、各水平棹17の張出端に薬液と高圧空気を供給されて薬液を噴霧し得るノズル15を設置し、ノズル15に薬液を供給するための薬液供給手段18及び高圧空気を供給するための高圧空気供給手段19を設置し、エレベータカゴ11とエレベータシャフト12を密閉状態にして、ノズル15から薬液を噴霧しアスベスト構造体に吹き付け、続いて他の階にエレベータカゴ11を移動させて、アスベスト構造体に薬液の吹き付けを繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータシャフト内のアスベスト構造体に薬液を吹き付けてアスベスト構造体の粉塵化を防止するエレベータシャフト内のアスベスト処理工法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築構造物の断熱、耐火、防火および結露防止等を目的としてアスベスト繊維を含有する吹き付け材を建築構造物の内部の鉄骨材や壁面に吹き付けることにより、該鉄骨材や壁面がアスベスト構造体で被覆された建築構造物が今までに多数建設されてきた。しかし、その後、アスベスト繊維が老朽化すると、粉塵化して空気中に飛散し、この粉塵化し飛散したアスベスト繊維を人体、特に呼吸器が吸収した場合、中皮腫や肺ガンの発生原因となり極めて危険であることが分かり、アスベストの人体への害は深刻な社会問題となっており、アスベストの除去が緊急の課題となっている。アスベスト構造体は、除去するのが最良であるが完全に除去することは不可能または困難である。例えば、建築構造物の内部の人の手が入らない場所や足場や養生が組めない場所にも存在する。
【0003】
そこで、立地条件、周辺環境及び経済性等の事情から、アスベスト構造体の粉塵化を防止し得る薬液を吹き付けてアスベスト構造体の粉塵化を防止するハイスペック・アスベスト封じ込め工法が開発され、アスベスト封じ込め処理が行われている。この場合、エレベータカゴ上に1台の噴霧ノズルを立て噴霧しているが、適切と思われる時間噴霧して、アスベストに含浸する量を均一にするために、ノズルを移動する必要があり、エレベータを移動することが行われている。
【0004】
アスベスト繊維が鉄骨材や壁面に被覆され状態に多数建設された建築構造物の1つとしてエレベータがある。エレベータは、エレベータカゴが昇降する空間であるエレベータシャフトを形成している鉄骨および壁面材がアスベスト構造体で被覆されているので、アスベスト構造体に対しアスベストの粉塵化を防止する薬液を吹き付けてアスベストを固定化し封じ込める処理が要望されている。しかし、今のところ、短時間に処置ができ、かつ安全にアスベスト封じ込め処理を行える工法は提案されていない。
【0005】
建築構造物に付設されたエレベータでは、エレベータシャフト内のアスベスト構造体に対するアスベスト処理工法が提案されている(特許文献1参照)。このアスベスト処理工法は、エレベータカゴの上面に三脚等の台を固定設置し、その先端に1台の薬剤噴霧機を取付けて、エレベータカゴを間欠的に移動させ、エレベータ停止時にアスベスト構造体に対しアスベストを封じ込める薬液を吹き付ける作業を行う工法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特願2009-132611
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の工法によれば、エレベータの昇降が6〜10階のエレベータであっても12〜20回行わなければならず、工事が完了するまでの長期間にわたってエレベータの稼働を中断しなければならず、経済的損失が大きくなる。近時、50〜100階の高層エレベータの場合、約6カ月間もエレベータの稼働を中断しなければならなかった。
【0008】
上述のハイスペック・アスベスト封じ込め工法において、作業者は、ノズルの向き等を変えるため、エレベータカゴの上に上がって調整する必要があった。また、噴霧の均一性を目視で確認するため、作業者はエレベータカゴの上に上がって確認する作業を何回も繰り返して行う必要があった。これら作業は作業者の健康被害防止のため防塵マスク、保護メガネ及び保護衣を着用して作業をするにしても、労働環境・作業内容のいわゆる3Kの作業となり、その作業をできるだけ作業時間を短縮することと、工事の安全についての改善の要望が強かった。また、薬液の含浸も均一に保つ必要があったが、単に過去の経験や勘で判断することが多く、計測等の合理的な品質管理が望まれていた。
【0009】
本発明は、上述した点に鑑み案出されたもので、エレベータシャフト内における既設のアスベスト面に薬液を噴霧してアスベストの粉塵化を防止するアスベスト封じ込め処理を短時間に安全かつ高品質で工事し得る、エレベータシャフト内のアスベスト処理工法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、エレベータカゴを昇降する空間であるエレベータシャフトを形成している鉄骨および壁面材を被覆しているアスベスト構造体に薬液を吹き付けてアスベスト構造体の粉塵化を防止するための、エレベータシャフト内のアスベスト処理工法であって、薬液を貯留する薬液タンクと、この薬液タンク内の薬液を供給されかつ高圧空気を供給されて薬液を噴霧し得る複数のノズルと、を含んで構成される噴霧装置を設置し、エレベータカゴの天井パネルの上面より上方に立ち上がるノズル支持部材を設置し、このノズル支持部材の高さ方向に間隔を隔てて基端を支持されアスベスト構造体に向けて伸びる複数の水平部材を設置し、各水平部材の一部にノズルを設置し、ノズルに薬液タンク内の薬液を供給するための薬液供給手段及び高圧空気を供給するための高圧空気供給手段を設置し、エレベータシャフトを密閉状態にして、ノズルから薬液を噴霧しアスベスト構造体に吹き付け、続いて他の階にエレベータカゴを移動させて、ノズルから薬液を噴霧しアスベスト構造体に吹き付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高さ方向に適宜間隔離れた複数のノズルから薬液を噴霧しアスベスト構造体に吹き付けることをエレベータカゴを移動させて繰り返す構成であるので、エレベータシャフト内における既設のアスベスト面に薬液を噴霧してアスベストの粉塵化を防止するアスベスト封じ込め処理を短時間で安全にかつ高品質で工事し得るエレベータシャフト内のアスベスト処理工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態のエレベータシャフト内のアスベスト処理工法にかかる概略説明図である。
【図2】本発明の第2の実施形態のエレベータシャフト内のアスベスト処理工法にかかる概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のエレベータシャフト内のアスベスト処理工法に係る実施形態を図面に基づいて説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係るエレベータシャフト内のアスベスト処理工法を示す。
まず、エレベータの構成を若干説明する。このエレベータは、高層建築物に設備される例を示している。図1において、符号11はエレベータカゴであり、12はエレベータシャフトであってエレベータカゴ11が昇降する空間である。エレベータカゴ11は、エレベータシャフト12の壁面より固定された複数の上下方向ガイド(図示しない)により係合案内される。そして、エレベータカゴ11は、カゴ上端部がエレベータシャフト12の上端に設けられた上側リール(図示しない)に巻掛けられて該上側リールから垂下する吊ワイヤ13の一端に吊られると共に、カゴ下端部がエレベータシャフト12の下端に設けられた下側リール(図示しない)に巻掛けられ該下側リールから上方に案内される吊ワイヤ13の他端に係留され、吊ワイヤ13の所要位置にエレベータカゴ11の重量とバランスさせるバランスウエイト(図示しない)が付設され、下側リール(又は上側リール)を回転駆動する電動機を所望に駆動することにより、吊ワイヤ13を走行してエレベータカゴ11を所望階に昇降停止する。そして、エレベータカゴ11に備えるエレベータドア(図示しない)と、各階のエレベータ昇降口に備えるドア(図示しない)のうち、エレベータカゴ11が停止した階のドアとが同期して開閉することで、人がエレベータカゴ11に対して昇降できる。
【0014】
建築時、エレベータシャフト12にエレベータカゴ11及びエレベータカゴ11を昇降させる上述した一切の昇降手段を設備する前に、エレベータシャフト12を形成している鉄骨および壁面材に対し、断熱、耐火、防火および結露防止等を目的としてアスベスト繊維を含有する吹き付け材の吹き付けが行われて、該鉄骨材や壁面がアスベスト構造体で被覆されている。そこで、本実施形態は、このアスベスト構造体に対し、薬液を吹き付けてアスベスト構造体の粉塵化を防止することを短時間に行い得るアスベスト処理工法を提供するものである。
【0015】
本実施形態のエレベータシャフト内のアスベスト処理工法は、薬液を貯留する薬液タンク14と、この薬液タンク14内の薬液を供給されかつ高圧空気を供給されて薬液を噴霧し得る複数のノズル15と、を含んで構成される噴霧装置を設置し、エレベータカゴ11の天井パネルの上面より上方に複数階の高さとなるように立ち上がるノズル支持部材16を設置し、このノズル支持部材16の高さ方向に例えば階高に略等しい間隔を隔てて基端を支持されアスベスト構造体に向けて伸びる複数の水平棹17を設置し、各水平棹17の張出端に前記ノズル15を設置し、このノズル15に薬液タンク14内の薬液を供給するための薬液供給手段18及び高圧空気を供給するための高圧空気供給手段19をエレベータカゴ11内に設置し、エレベータカゴ11を密閉状態にすると共に、エレベータシャフト12を密閉状態にして、ノズル15から薬液を噴霧しアスベスト構造体に吹き付け、エレベータシャフト12の内壁面に支持されるように先行して設置した湿潤度センサ20によってアスベスト構造体への薬液の含浸量を検出しエレベータカゴ11内に設置したモニタ21で確認してから、他の階にエレベータカゴ11を移動させて、ノズル15から薬液を噴霧し前記アスベスト構造体に吹き付けること繰り返す。以下、工程順に説明する。
【0016】
<湿潤度センサの設置>
本発明では、アスベスト構造体に対する薬液の吹き付けを終えると、エレベータカゴ11を移動し、再び薬液の吹き付ける、ということを繰り返す。この場合、アスベスト構造体の粉塵化を防止し得る効果が得られるように、アスベスト構造体への薬液の吹き付けが確実に行われてから、エレベータカゴ11を移動する必要がある。そこで、従来の、エレベータカゴ11の上に上って行う目視による確認作業(3Kに属する作業)を廃するため、および作業時間を短縮するために、本実施形態においては、ノズル15に略対応する位置となるように、エレベータシャフト12の各階の内壁面近傍に湿潤度センサ20を設置すると共に、エレベータカゴ11内にモニタ21を設置し、アスベスト構造体に対して薬液の吹き付けが確実に行われたことか否かの確認として、湿潤度センサ20によってアスベスト構造体への薬液の含浸量を検出し、モニタ21により、各湿潤度センサ20から得られる電気量を湿潤度として数値表示及びグラフ表示し、アスベスト構造体への薬液の含浸量を確認する。
【0017】
湿潤度センサ20を設置する個所は、エレベータシャフト12の高さ方向に適宜間隔に異なる複数の位置、好ましくは各階に対応する高さ位置の周壁であって、各ノズルによる薬液の吹き付け個所付近を選択する。湿潤度センサ20は、抵抗式、画像式、光透過度式のいずれを採用しても良い。湿潤度センサ20は、その形式、構造に応じてエレベータシャフト12の内壁面に支持されるように設置する。
【0018】
各湿潤度センサ20は、個別の給電・給電・データ線(図示しない)を介してモニタ21と接続される。そして、給電・データ線は、エレベータシャフト12の内面に沿わせてエレベータカゴ11の天井パネルのマンホールMからエレベータカゴ11内に導いて、エレベータカゴ11内に設置するモニタ21に接続する。
【0019】
湿潤度センサ20の設置作業及び給電・データ線の配線作業は、上述したノズル15、ノズル支持部材16、水平棹17、薬液タンク14、薬液供給手段18、高圧空気供給手段19等の設置に先行して行う。好ましい具体的作業は、まず、エレベータカゴ11を最上階に位置させ、作業員がエレベータカゴ11の天井パネルのマンホールMからエレベータカゴ11の上面部に出て吊ワイヤ13に命綱を繋げて、湿潤度センサ20の設置作業及び給電・データ線の配線作業を行い、エレベータカゴ11を1階ずつ順次に下降停止させて行う。エレベータカゴ11が最下階に位置したら、各湿潤度センサ20毎の給電・データ線を一本に束ねて、この束ねた給電・データ線をエレベータシャフト12の下部へ垂らしてから、上述したように、エレベータカゴ11の天井パネルのマンホールMからエレベータカゴ11内に導いて、エレベータカゴ11内に設置するモニタ21に接続する。この場合、給電・データ線を束ねた長さ部分は、エレベータカゴ11を最上階に再度位置させたときに、引き続いて、エレベータシャフト12の下部へ若干の長さが垂れているように決める。これによって、エレベータカゴ11が給電・データ線による支障がなくエレベータシャフト12を昇降できる。モニタ21への給電線も、給電・データ線を束ねた長さ部分と同様にする。電源は、エレベータシャフト12の下部の壁面に設置する。なお、湿潤度センサは無線データ伝送装置を取り付けたものを用いてもよい。
【0020】
<ノズルの設置>
エレベータカゴ11を最下階に位置させ、エレベータカゴ11の天井パネルに備えたマンホールMを開けて以下の組み立て作業を行う。まず、天井パネルの上面にノズル支持部材持上げ装置22を中心に吊ワイヤ13が位置するように固定設置する。ノズル支持部材持上げ装置22は、エレベータカゴ11の天井パネルの上面に固定設置する筒状フレーム22aを有する。筒状フレーム22aは、中心に上下端及び一側が開いていて吊ワイヤ13を通すノズル支持部材取付用スペース22a'を有し、かつ外面下部にエレベータカゴ11の天井パネルの上面に安定して起立するための4つの脚部22a"を有する。ノズル支持部材持上げ装置22は、モータ22bの回転を歯車伝達機構22cを介してねじ軸22dに伝え、このねじ軸22dの回転により、このねじ軸22dに螺合されたナットランナを一体に含んでなる昇降爪22eを昇降自在に備えていると共に、他側の上端に手押し移動しかつ移動をロックし得る水平方向可動爪22fを備えて成る。
【0021】
そして、このノズル支持部材持上げ装置22のノズル支持部材取付用スペースに、一階分の階高にほぼ等しい長さを有する半割パイプ形状の一対のノズル支持部材16を挿入し、これら一対のノズル支持部材16を吊ワイヤ13を包むように重ね、かつ、上端同士、下端同士及び中途同士をボルト等の結合具で結合し、これにより、パイプ状とされたノズル支持部材16が中心孔に吊ワイヤ13を通してこの吊ワイヤ13に案内されて上昇可能な状態とし、このパイプ状とされたノズル支持部材16の上端に基端を支持されエレベータシャフト12の内面のアスベスト構造体に向けて伸びる複数の水平棹17を設置し、各水平棹17の張出端にノズル15を設置する。なお、水平棹17は、図4、図5に示すように、バンド形に設けるのが良い。
【0022】
そして、各ノズル15にそれぞれ一端を接続する薬液供給ホース23及び高圧空気供給ホース24を対応する水平棹17に沿わせて支持しさらにノズル支持部材16に沿わせて支持しエレベータカゴ11のマンホールMに通してエレベータカゴ11内に垂らす。この実施形態では、水平棹17を四方に伸ばして平面視において十字形に設けているが、これに限定されず、水平棹17を四方以外の放射状に複数設けてもよい。これらノズル支持部材16と水平棹17とノズル15は、組み立て後は最上段となる。なお、ノズル支持部材持上げ装置22並びにノズル支持部材16は、金属製、好ましくはステンレスまたは黄銅製である。
【0023】
<2段目以降のノズルの設置>
次いで、ノズル支持部材持上げ装置22に一側に備えたモータ22bを電源に接続し、昇降爪22eの上に上記パイプ状とされたノズル支持部材16を載せ、モータ22bを駆動して昇降爪22eを上昇させてノズル支持部材16をその長さよりも若干大きいストロークとなるように持ち上げて、ノズル支持部材持上げ装置22に他側の上端に備えた水平方向可動爪22fを上記持ち上げたノズル支持部材16の下側に位置させ、しかる後に、モータ22bを反転駆動して昇降爪22eを元位置まで下降させ、水平方向可動爪22fでノズル支持部材16を持ち上げた位置に支持する。
続いて、上記と同様に、上から2段目となる一対のノズル支持部材16をノズル支持部材持上げ装置22のノズル支持部材取付用スペースに挿入し吊ワイヤ13を包むように重ね、かつボルト等の結合具で結合し、これにより、中心孔に吊ワイヤ13を通したこのパイプ状とされた上から2段目となるノズル支持部材16の上端に基端を支持されエレベータシャフト12の内面のアスベスト構造体に向けて近接した位置まで伸びる上から2段目となる複数の水平棹17を設置し、各水平棹17の張出端に上から2段目となるノズル15を設置する。そして、各ノズル15にそれぞれ一端を接続する薬液供給ホース23及び高圧空気供給ホース24を対応する水平棹17に沿わせて支持しさらにノズル支持部材16に沿わせて支持しエレベータカゴ11のマンホールMに通してエレベータカゴ11内に垂らす。
続いて、3段目以降のノズルの設置は、上述した2段目のノズルの設置と同様に行い、5段ないし10段となるまで繰り返す。
【0024】
<エレベータカゴの下側のノズルの設置>
半割パイプ状の一対のノズル支持部材16をエレベータカゴ11の下面にも、一階分の階高にほぼ等しい長さを有する半割パイプ形状の一対のノズル支持部材16を吊ワイヤ13を包むように重ね、かつ、上端同士、下端同士及び中途同士をボルト等の結合具で結合し、かつ、これにより、パイプ状とされたノズル支持部材16が中心孔に吊ワイヤ13を通してこの吊ワイヤ13を挟持し固定する。そして、このパイプ状とされたノズル支持部材16の下端に基端を支持されエレベータシャフト12の内面のアスベスト構造体に向けて近接した位置まで伸びる複数の水平棹17を設置し、各水平棹17の張出端にノズル15を設置する。そして、上側のノズル15と同様に、各ノズル15にそれぞれ一端を接続する薬液供給ホース及び高圧空気供給ホースを対応する水平棹17に沿わせて支持しさらにノズル支持部材16に沿わせて支持しエレベータカゴ11のマンホールMに通してエレベータカゴ11内に垂らす。この実施形態では、水平棹17を四方に伸ばして平面視において十字形に設けているが、これに限定されず、水平棹17を四方以外の放射状に複数設けてもよい。
【0025】
<薬液タンク、薬液供給手段、高圧空気供給手段及びモニタの設置>
エレベータカゴ11内に薬液を貯留する薬液タンク14と、薬液タンク14内の薬液をノズル15に供給する薬液供給手段としてのポンプ18と、高圧空気供給手段としてのエアコンプレッサ19と、上記モニタ21とを設置する。ポンプ18の吐出口に、多数の薬液分配口を有しかつ各薬液分配口に流量を調整する絞り弁を備えた薬液供給ヘッダ
(図示しない)を接続し、各絞り弁に、上述した各ノズル15に上端を接続されかつエレベータカゴ11内に垂らした薬液供給ホース23の下端を接続する。また、エアコンプレッサ19の高圧空気吐出口に、多数の高圧空気分配口を有する高圧空気供給ヘッダ(図示しない)を接続し、各高圧空気分配口に、上述した各ノズル15に上端を接続されかつエレベータカゴ11内に垂らした高圧空気供給ホース24の下端を接続する。
【0026】
<各段のノズルからの薬液噴霧量の調整>
そして、エレベータシャフト12の下部の仮設電源に接続した電源ケーブルをポンプ駆動用モータ及びエアコンプレッサ駆動用モータへの電源端子に接続し、ポンプ18及びエアコンプレッサ19を仮駆動し、全ての絞り弁を開弁して全てのノズル15から薬液噴霧を行い、マンホールMを通して双眼鏡で全てのノズル15からの噴霧状態を観測し、絞り弁の開度を調整することにより、全てのノズル15からの噴霧量が略均等になるように設定し、仮駆動を停止し、マンホールMを閉じてエレベータカゴ11を密閉状態にする。
ドアを閉めてエレベータシャフト12を密閉状態にする。
【0027】
<エレベータカゴ11に乗り降りする隔離ルームの設置>
そして、エレベータカゴ11に乗り降りする階の建屋に、通常服と作業服との着替えを行う第1の隔離ルームと、建屋のドアと第1の隔離ルームR1との間に位置する第2の隔離ルームR2とを設置する。第2の隔離ルームR2は、アスベスト処理を終えてエレベータカゴ11から降りる作業員の作業服に付着したアスベスト粉塵を掃除機で除去し作業服を脱ぐ部屋である。エレベータカゴ11は、エレベータシャフト12から隔離された第3の隔離ルームであり、作業者がアスベスト処理を行うための部屋である。
【0028】
<養生と吹き上げファンの設置>
薬液の超微細粒径の霧状粒子は、全量がアスベスト構造体に含浸されるものではなく、エレベータシャフト12内をゆるやかに浮遊拡散し重力作用により沈降していきアスベスト構造体以外にも付着するので、エレベータカゴ11の上面パネルの上面及びエレベータシャフト12の底面部に付着防止用シート(図示しない)を被せて養生する。この付着防止用シートは薬液の回収が可能な構成のものを用いる。エレベータシャフト12の下部に吹き上げファン25を設置する(図1)。
以上により、アスベスト処理を行うための設備の設置が完了する。
【0029】
<薬液の吹き付け作業>
上述のように、最上段のノズル15が最上階に対応するようにエレベータカゴ11を上昇させて、ポンプ18及びエアコンプレッサ19を駆動し、アスベスト処理を開始する。すると、エアコンプレッサ19によって高圧空気が各ノズル15に供給されると共に、薬液タンク14に貯留された薬液がポンプ18によって各ノズル15に供給され、各ノズル15は、薬液を超微細粒径の霧状にして噴射しアスベスト構造体に向かって吹き付ける。これにより、ノズル15が設けられた階高だけ一度にアスベスト処理ができる。
【0030】
霧状薬液のアスベスト構造体への含浸量は、ノズル15が霧状薬液を噴射する正面高さの領域で高くなり、ノズル15の噴射領域から離れた側方や異なる高さ領域では低くなる。この含浸量の高低は、便宜的に湿潤度センサ20の湿潤度として換算できるので、エレベータカゴ11内のモニタ21を見て霧状薬液のアスベスト構造体への必要量の含浸が行われたことを確認したら、ノズル15が設けられた階高だけエレベータカゴ11を下降させて停止し、薬液の霧状噴射を継続する。
新たな高さ位置で所要時間だけ薬液微細噴霧を行い、モニタ21でアスベスト構造体の目標位置の湿潤度の上昇を確認したら、上記と同様に、ノズル15が設けられた階高だけエレベータカゴ11を下降させて停止し、薬液の霧状噴射を継続する、という処理作業を繰り返す。
すなわち、高さ方向に適宜間隔離れた複数の高さ位置に設置した各ノズル15から薬液を噴霧しアスベスト構造体に吹き付けることにより、これら複数のノズル15に対応した範囲のアスベスト構造体に薬液を含浸させたら、これら複数階に位置するノズル15を薬液噴霧を行っていない高さとなるようにエレベータカゴ11を移動させ、アスベスト構造体に薬液を吹き付けることを繰り返す。
エレベータカゴ11の下側のノズル15は、エレベータカゴ11が停止する最下階及びその下側の範囲のアスベスト構造体に対して薬液を吹き付けアスベスト処理を行う。
以上により、超高層ビルのエレベータシャフト内のアスベスト処理作業を短時間にかつ確実に完了させることができる。
【0031】
霧状の薬液は、エレベータシャフト12の内部空気に拡散していき、ミスト粒子が細かいためブラウン運動が起こり、すみずみまで薬剤が行き渡っていく。ノズル15からの噴射が継続するので、次第に内部空気に占める薬液濃度が高まっていく。ノズル15から噴霧される薬液は、ミクロンオーダーの超微細粒径の霧状であるので、雨のように落ちることはないが、エレベータシャフト12の内部空間を漂いながら時間の経過とともに重力作用で次第に沈降していき、エレベータシャフト12の下部が、内部空間の上部に比較して薬液濃度が高くなる。このため、エレベータシャフト12の下部に設置した吹き上げファン25が、濃度が高い霧状薬液を上方へ吹き上げて対流させ、エレベータシャフト12の内部空間の霧状薬液の濃度が、上部から下部に渡り均一化する。
【0032】
アスベスト処理作業が完了したら、エレベータカゴ11を最上階に上昇させて停止し扉を開き、エレベータシャフト12の下部の吹き上げファン25を一定時間駆動してエレベータシャフト12の内部空間から霧状の薬剤を排出し、その後に、アスベスト処理作業のために設置した処理設備を撤去する。
【0033】
<第2の実施形態>
図2は、本発明の第2の実施形態に係るエレベータシャフト内のアスベスト処理工法を示す。
この実施形態のエレベータシャフト内のアスベスト処理工法は、エレベータカゴ11の天井パネルの上面に組立足場形のノズル支持部材16Aを組立てて立ち上げる。このノズル支持部材16Aは、例えば四つの梯子状のラック材を吊ワイヤ13を囲んで角筒状に組み合わせ、倒れずかつ水平に動かないように、上端を吊ワイヤ13に係止し下端をエレベータカゴ11の天井パネルに設置する。
【0034】
次いで、このノズル支持部材16Aに登って、該ノズル支持部材16Aの最上段位置(上端)に一段分の薬液吹付設備として、四つの縮小状態とした伸縮式の水平棹17A'を平面視において十字状配置としてユニットにしてなるマルチ型水平棹装置17A、各水平棹17A'の先端に支持されるノズル15、各ノズル15の上下又は左右に若干離れた位置して各水平棹17A'の先端に支持された一つ又は複数の湿潤度センサ20A、薬液タンク14A並びに薬液タンク14A内の薬液をノズル15に供給する薬液供給手段としてのポンプ18A、薬液供給ホース23等を該ノズル支持部材16Aに支持されるように設置する。次いで、最上段位置から1階の階高分下がった上から2段目位置に一段分の薬液吹付設備として、水平棹17A'を有するマルチ型水平棹装置17A、ノズル15、湿潤度センサ20A、薬液タンク14A並びに薬液供給手段としてのポンプ18A等を該ノズル支持部材16Aに支持されるように設置する。同様にして次々に、1階の階高分下がった位置に、一段分の薬液吹付設備として、水平棹17A'を有するマルチ型水平棹装置17A、ノズル15、湿潤度センサ20A、薬液タンク14A並びに薬液供給手段としてのポンプ18A等を該ノズル支持部材16Aに支持されるように、例えば3〜5段となるように薬液吹付設備を設置する。エレベータカゴ11の下面にも一段分の薬液供給設備を設置する。そして、エレベータカゴ11に、高圧空気供給手段としてのエアコンプレッサ19及びモニタ21を設置し、エアコンプレッサ19で生成される高圧空気を全てのノズル15に供給し得るように高圧空気供給ホースを設け、かつ各段のノズル15毎に高圧空気の供給量を調整し得る流量調整弁を設けると共に、モニタ21と各湿潤度センサ20Aとをデータ線で接続する。エレベータカゴ11に乗り降りする隔離ルームの設置並びに養生と吹き上げファンの設置は、第1の実施形態と同様に行う。エレベータカゴ11内に操作電源を設備し、この操作電源をONにすることにより、ポンプ18A及びエアコンプレッサ19が稼働するように設ける。
【0035】
本実施形態のエレベータシャフト内のアスベスト処理工法は、第1の実施形態に比べ、ノズル支持部材16Aが足場形であり、水平棹17A'が伸縮式でありさらにマルチ型水平棹装置17Aとしており、各段のノズル15に対応して薬液タンク14Aを分散して備え、湿潤度センサ20Aをエレベータシャフトの内壁面に支持するように設けず水平棹17A'に支持させて設けている点が相違している。ノズル15は、第1の実施形態と同一のものが採用される。ノズル15は、噴霧方向を変えられる構造のものを採用してもよい。薬液タンク14Aは貯留容量が一のエレベータシャフトに対してアスベスト処理するのに十分な大きさをする。薬液タンク14Aが大き過ぎてノズル支持部材16Aへの設置が不適である場合には、ノズル支持部材16Aへの設置が適切になるように貯留容量が小さい薬液タンク14Aを備えると共に、第1の実施形態と同様に、エレベータカゴ11にメインの薬液タンクを備え、各段の薬液タンク14Aにポンプアップする構成としてもよい。この場合には、薬液の溢流帰還用ホースを備える必要がある。また、各段の薬液タンク14Aを密閉型に設けてポンプ18Aは設けず、ポンプ18Aの代わりに、エアコンプレッサ19で生成される高圧空気を各段の薬液タンク14Aのタンク内上部空間に導入し、薬液の液面を加圧することで、薬液をノズル15に給送させるようにしてもよい。その他、第1の隔離ルームR1と第2の隔離ルームR2と吹き上げファン25と付着防止用シートを設置することについては、第1の実施形態と同一である。
【0036】
続いて、各一段の薬液供給設備の設置方法を詳細に説明する。
マルチ型水平棹装置17Aは、例えば四つの伸縮構造の水平棹17A'の基部を駆動ボックス17A"に支持し、駆動ボックス17A"には、水平棹伸縮手段(図示しない)を備え、これにより四つの伸縮構造の水平棹17A'がノズル支持部材16Aへ取付後に伸長状態とされる。水平棹伸縮手段は、モータ、エアシリンダ等のアクチュエータ、あるいはハンドルを用いることができる。伸縮構造の水平棹17A'は、例えば伸縮リンク構造、あるいは多重パイプ構造として構成されている。四つの水平棹17A'を縮小状態にてその各基端部がノズル支持部材16Aで支持されるように設置し、ノズル15を各水平棹17A'の先端部(張出端)に支持されるように設置してから、四つの水平棹17A'を四方の内壁に向かって伸長させる。この状態を上方から平面視すると、四つの水平棹17A'が組立足場形のノズル支持部材16Aに支持されかつエレベータシャフト内の四方の内壁面の近傍に十字状に延び、各水平棹17A'の張出端に備えたノズル15が噴霧方向をエレベータシャフトの内壁面に向けた状態になる。
【0037】
各段に設ける薬液タンク14A及び薬液供給手段としてのポンプ18Aはバラバラでなくマルチ型水平棹装置17Aと共にユニットになっている。ポンプ18Aは、吸入口が薬液タンク14A内の下部に連通接続されていると共に、吐出口に四つの薬液分配口を備えた薬液分配用ヘッダ26が接続されている。そこで、薬液タンク14Aとポンプ18A等からなるユニットを、ノズル支持部材16Aに支持されるように設置し、四本の薬液供給ホース23の各一端を薬液供給ヘッダ26の薬液分配口に接続し、該四本の薬液供給ホース23の他端を同じ段の四つのノズル15に接続する。四本の薬液供給ホース23の接続は、水平棹17A'を伸長させる前に行ってもよい。そして、四つのノズル15に高圧空気が供給されるように配管する。この配管は、作業の効率化のために下から上に向かって伸ばしていくのではなく、四本の小径高圧空気供給ホース24aの各一端を同じ段の四つのノズル15に接続し、中途を薬液供給ホース23と共に水平棹17A'に束ねて支持させ、四つの他端を薬液タンク14Aの付近に集めて、一つの入口と四つの出口を有して成る接続分岐管(符号なし)の四つの出口に接続し、そして、一本の大径高圧空気供給ホース24bの一端を接続分岐管の入口に接続し他端をノズル支持部材16Aに沿って垂らしてエレベータカゴ11の天井パネルのマンホールMを通してエレベータカゴ11内に導き、エアコンプレッサ19の吐出口に絞り弁を介して接続する。なお、予め、各一段の薬液供給設備を組み立てて、四つのノズル15からの薬液の噴霧量を略均一となるように流量調整弁により調整する。
【0038】
<薬液の吹き付け作業>
エレベータカゴ11のドア及び天井パネルのマンホールMの蓋を閉じてエレベータカゴ11を密閉状態にすると共に、建屋フロア側の全てのドアを閉じてエレベータシャフト12を密閉状態にして、エレベータカゴ11の上に設備した最上段のノズル15がエレベータシャフト12の最上部に対応するようにエレベータカゴ11を上昇し停止させ、エレベータカゴ11内に設備した操作電源を投入し、薬液の吹き付け作業を開始する。操作電源をONにすると、ポンプ18A及びエアコンプレッサ19が稼働し、すると、エアコンプレッサ19によって高圧空気が各ノズル15に供給されると共に、薬液タンク14Aに貯留された薬液がポンプ18Aによって各ノズル15に供給され、各ノズル15は、薬液を超微細粒径の霧状にして噴射しアスベスト構造体に向かって吹き付ける。これにより、ノズル15が設けられた階高だけ一度にアスベスト処理ができる。霧状薬液のアスベスト構造体への含浸量は、ノズル15が霧状薬液を噴射する正面高さの領域で高くなり、ノズル15の噴射領域から離れた側方や異なる高さ領域では低くなる。この含浸量の高低は、便宜的に湿潤度センサ20Aの湿潤度として換算できるので、エレベータカゴ11内のモニタ21を見て霧状薬液のアスベスト構造体への必要量の含浸が行われたことを確認したら、操作電源をOFFにして、エレベータシャフト12の薬液が吹き付けられていない隣接の下側エリアに最上段のノズル15が対応するようにノズル15が設けられた階高だけエレベータカゴ11を下降させて停止し、操作電源を再度ONにしてノズル15から薬液を噴霧し前記アスベスト構造体に吹き付けること繰り返す。
エレベータカゴ11の下側のノズル15は、エレベータカゴ11が停止する最下階及びその下側の範囲のアスベスト構造体に対して薬液を吹き付けアスベスト処理を行う。
以上により、超高層ビルのエレベータシャフト内のアスベスト処理作業を短時間にかつ確実に完了させることができる。
【0039】
<その他の実施形態>
本発明は、上記の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲の技術的範囲には、発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々、設計変更した形態が含まれる。
【0040】
<使用する薬液>
アスベスト構造体は、セメントモルタルを接着剤にしてアスベスト繊維を鉄骨や壁面材に吹き付けてフワフワ状態で固定したものであり、隙間の空気層によって耐火、結露防止などに効果を発揮するものであるので、薬液がアスベスト繊維に含浸した後も引き続いてアスベスト繊維にフワフワの隙間が確保されることが重要である。このため、使用する薬液を、アスベスト構造体の表面だけに塗膜を作ってしまう薬剤は不適であるので使用せず、(a)耐火性能を満足する無機物を主成分とすること、(b)アスベスト層内部への浸透性に優れること、(c)施工後の変質が無いか、極めて少ないこと、(d)アルカリ性を有し、セメントモルタルを痛めないか、強化するものであること、(e)有害物を含まないこと、の特性に有する薬剤を選択して使用するものとし、そして、薬液を圧縮空気の圧力で超微細粒径の霧状に噴射し得るノズルを採用し、薬剤をミクロンオーダーの超微細粒径の霧状にして噴霧すると、この霧状の薬剤が、アスベスト繊維の空隙を塞ぐことなくこの空隙の隅々に侵入してアスベスト繊維に含浸しアスベスト構造体の粉塵化を防止することができる。
【0041】
エアコンプレッサ19は、小型エアポンプ又は空気ボンベで代用してもよい。水平棹は平面方向に視てエレベータシャフトの略中心から四方向に延びるように設置することに限定されず、放射方向に複数延びるように設置し、各張出端に前記ノズルを設置してもよい。
【0042】
<蓄電池の使用>
各種対策を施しても、薬液供給用ホースと高圧空気供給用ホースと動力ケーブルとによじれや絡み等のトラブルが発生する可能性があるときには、エレベータカゴに蓄電池を載せてコード・ホースレスとし、よじれや絡み等のトラブルを防止してもよい。
【0043】
<蛍光剤入り薬液の使用>
湿潤度センサ20,20Aを使用しないで湿潤度を知る方法として、公知の蛍光剤入り薬液を使用する方法がある。この場合、適切な間隔でエレベーターカゴより紫外線ライト(ブラックライト)を照射し、その反射光を監視することで湿潤度を測定することができる。反射光は目視で監視してもよいし、照度計で測定してもよい。この場合、湿潤度センサ20,20Aは省略することができる。
【符号の説明】
【0044】
11 エレベータカゴ、
12 エレベータシャフト、
13 吊ワイヤ、
14,14A 薬液タンク、
15 ノズル、
16,16A ノズル支持部材、
17,17A 水平棹、
18,18A ポンプ(薬液供給手段)、
19 エアコンプレッサ(高圧空気供給手段)、
20,20A 湿潤度センサ、
21 モニタ、
23 薬液供給ホース、
24,24a,24b 高圧空気供給ホース、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータカゴを昇降する空間であるエレベータシャフトを形成している鉄骨および壁面材を被覆しているアスベスト構造体に薬液を吹き付けて該アスベスト構造体の粉塵化を防止するための、エレベータシャフト内のアスベスト処理工法であって、
薬液を貯留する薬液タンクと、この薬液タンク内の薬液を供給されかつ高圧空気を供給されて前記薬液を噴霧し得る複数のノズルと、を含んで構成される噴霧装置を設置し、
前記エレベータカゴの天井パネルの上面より上方に立ち上がるノズル支持部材を設置し、このノズル支持部材の高さ方向に間隔を隔てて基端を支持され前記アスベスト構造体に向けて伸びる複数の水平部材を設置し、各水平部材の一部に前記ノズルを設置し、
前記ノズルに前記薬液タンク内の薬液を供給するための薬液供給手段及び高圧空気を供給するための高圧空気供給手段を設置し、
前記エレベータシャフトを密閉状態にして、前記ノズルから薬液を噴霧し前記アスベスト構造体に吹き付け、
続いて他の階にエレベータカゴを移動させて、前記ノズルから薬液を噴霧し前記アスベスト構造体に吹き付けることを特徴とする、エレベータシャフト内のアスベスト処理工法。
【請求項2】
前記ノズル支持部材及び前記水平部材は、複数階の高さとなるように設置されることを特徴とする請求項1に記載のエレベータシャフト内のアスベスト処理工法。
【請求項3】
前記水平部材は平面方向に視てエレベータシャフトの略中心から放射方向に複数延びるように設置し、各水平部材に前記ノズルを設置することを特徴とする請求項1に記載のエレベータシャフト内のアスベスト処理工法。
【請求項4】
前記高圧空気供給手段としてのエアコンプレッサを前記エレベータカゴ内に設置し、この高圧空気供給手段から延びる高圧空気供給ホースを前記エレベータカゴの天井パネルのマンホールを通して前記ノズルに接続して、前記マンホールを閉じることを特徴とする請求項1又は2に記載のエレベータシャフト内のアスベスト処理工法。
【請求項5】
前記薬液タンク及び前記薬液供給手段としてのポンプを前記エレベータカゴ内に設置し、この薬液供給手段から延びる薬液供給ホースを前記エレベータカゴの天井パネルのマンホールを通して前記ノズルに接続して、前記マンホールを閉じることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のエレベータシャフト内のアスベスト処理工法。
【請求項6】
前記薬液タンク及び前記薬液供給手段としてのポンプを、前記各水平部材の基端付近に設置し、この薬液供給手段から延びる薬液供給ホースを前記ノズルに接続することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のエレベータシャフト内のアスベスト処理工法。
【請求項7】
前記薬液タンクを密閉形にしてこの薬液タンクの上部に、前記エレベータカゴ内に設置する前記高圧空気供給手段としてのエアコンプレッサで生成する高圧空気を導入して薬液の液面に圧力をかけることにより、このエアコンプレッサを前記薬液供給手段としても兼用して機能させることを特徴とする、請求項4又は5に記載のエレベータシャフト内のアスベスト処理工法。
【請求項8】
前記エレベータシャフトの高さ方向に適宜間隔離れた複数の高さ位置に湿潤度センサを備え、前記前記エレベータカゴに前記湿潤度センサに接続されたモニタを備え、前記湿潤度センサにより前記アスベスト構造体の表面に付着する薬液の量を検出し、前記モニタによりモニタ21リングすることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載のエレベータシャフト内のアスベスト処理工法。

【図1】
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【図2】
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