説明

エレベーターつり合い重り枠構造

【課題】縦枠の長さ寸法を抑えかつ特殊な重りを要することなくつり合い重りとしての質量を可能な限り大きくできるエレベーターつり合い重り枠構造の提供。
【解決手段】対となる縦枠2a、2bと、これらの縦枠の上部に架設される上側板4と、縦枠の下部に架設される下側板5とを有して成り、対向する縦枠間に重りWの格納部6が形成されるエレベーターつり合い重り枠構造において、縦枠を鋼板の曲げ加工で作成するとともに、上側板は、縦枠に延設するように配置される脚部4a、4b、及びこれらの脚部と一体的に設けられ、かつ脚部間に架設される水平部4cから成り、格納部上に、脚部及び水平部によりその三方が囲われる設置用スペース9を形成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦枠、縦枠の上部に架設される上側板、及び縦枠の下部に架設される下側板を有して成るエレベーターつり合い重り枠構造に関する。
【背景技術】
【0002】
つるべ式のエレベーターはその構造上、乗りかごとつり合い重りとの質量バランスをとる必要があり、乗りかごの質量が大きなエレベーターにあっては、必然的につり合い重りの質量も大きくする必要があり、この場合、重りの格納スペースを拡大するためにつり合い重り枠の高さ寸法、即ち、つり合い重り枠の主要構成部品の1つである縦枠の長さ寸法を大きくすることが求められる。また、縦枠は製作性に優れた鋼板の曲げ加工で作成することが望ましいが、縦枠の材料となる鋼板には定尺サイズによる制限がある。このため、つり合い重りの質量を大きくすることに伴い、定尺サイズより長い縦枠長さが必要となる場合、縦枠の使用材料として鋼板より定尺サイズの長いU型鋼やH型鋼等を使用することになる。しかし、U型鋼やH型鋼は穴あけ作業等の自動化が難しく、製作性を低下させることになり、つり合い重りに要するコストの向上を招く要因となっている。このため、従来提案されているような特殊な形状の重りを既存のつり合い重りの格納スペース上部に配置することで、縦枠の長さ寸法を抑えつつ、つり合い重りとしての必要質量を確保することが考えられる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−290496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述した特許文献1に開示されているものは、特殊な形状の重りを用いるものであり、このような製作員数の少ないものは制作費が掛かかるという問題がある。即ち、特殊な形状の重りを用い縦枠長さを抑えることで縦枠のみに関して言えばコストの低減を図れるが、つり合い重り全体としてみるとコストの低減を図ることが難しかった。
【0004】
また、重りの格納部は対向する縦枠間に形成され、この格納部に重りは水平に積載される。そして、一般的な形状の重りを格納部に設置したり、逆に格納部から取り出したりする場合、重りを傾けることで円滑に作業を行うことが可能となる。しかし、縦枠の上部に架設される上側板との兼ね合いから、重りを傾けるためのスペースを確保するため、縦枠の長さ寸法すべてを格納部とすることができず、いわゆるデッドスペースができるという問題があった。
【0005】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、縦枠の長さ寸法を抑え、かつ、特殊な重りを要することなくつり合い重りとしての質量を可能な限り大きくすることのできるエレベーターつり合い重り枠構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る発明は、対となる縦枠と、これらの縦枠の上部に架設される上側板と、前記縦枠の下部に架設される下側板とを有して成り、対向する前記縦枠間に重りの格納部が形成されるエレベーターつり合い重り枠構造において、前記縦枠を鋼板の曲げ加工で作成するとともに、前記上側板は、前記縦枠に延設するように配置される脚部、及びこれらの脚部と一体的に設けられ、かつ前記脚部間に架設される水平部から成り、前記格納部上に、前記脚部及び前記水平部によりその三方が囲われる設置用スペースを形成したことを特徴としている。
【0007】
このように構成した本発明の請求項1に係る発明は、上側板の脚部及び水平部によりその三方が囲われる設置用スペースを介して重りの設置、或いは取り出しを行うようにすることで、縦枠の長さ寸法を最大限活用し格納部とすることが可能となる。これによって、縦枠の長さ寸法を抑え、かつ、特殊な重りを要することなくつり合い重りとしての質量を可能な限り大きくすることができる。
【0008】
本発明の請求項2に係る発明は、前記脚部と前記水平部とは曲線部を介して形成されることを特徴としている。
【0009】
このように構成した本発明の請求項2に係る発明は、脚部と水平部とが曲線部を介して形成されることにより、形状急変部の応力集中を緩和することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、長さ寸法に制限がある鋼板で縦枠を製作しても、比較的大きな重りの格納スペースを確保可能とすることでつり合い重りとしての質量を大きくすることができるとともに、特殊な重りを要することが無いことから、コストの低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係るエレベーターつり合い重り枠構造の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0012】
図1は本発明に係るエレベーターつり合い重り枠構造の一実施形態を示す全体正面図、図2は全体側面図、図3は要部拡大図、図4は図1のA−A視図、図5は図1のB−B視図である。
【0013】
エレベーターのつり合い重り枠1は図1、図2に示すように、対となる縦枠2a、2bと、これらの縦枠2a、2bの上部に架設されるとともに、図示しないロープが巻き掛けられるプーリ3を支持する対となる上側板4と、縦枠2a、2bの下部に架設される下側板5とを有して成り、対向する縦枠2a、2b間に重りWの格納部6が形成されている。
【0014】
縦枠2a、2bは、鋼板の曲げ加工で作成され、コの字状の断面を有している。なお、本実施形態のつり合い重り枠1は、対となる縦枠2a、2b間の、上部を水平部材7で固定するとともに、下部を下側板5で固定する。重りWは、対となる縦枠2a間に形成される格納部6aと、対となる縦枠2b間に形成される格納部6bとにそれぞれ収納積載されるようになっている。
【0015】
対となる上側板4は図3、図4に示すように、左右の縦枠2a、2bに延設するように配される脚部4a、4b、及びこれらの脚部4a、4bと一体的に設けられ、かつ脚部4a、4b間に架設される水平部4cから成っており、格納部6上に、脚部4a、4b及び水平部4cによりその三方が囲われる設置用スペース9を形成している。また、脚部4a、4bと水平部4cとは曲線部4dを介して形成されている。
【0016】
対となる下側板5は図1、図2に示すように、縦枠2a、2bを連結するように配され、縦枠2a、2bの下部に締結固定されている。
【0017】
本実施形態にあっては、重りWは、図5に示すように、対となる縦枠2a間に形成される格納部6aと、対となる縦枠2b間に形成される格納部6bとのそれぞれに積載される。そして、重りWの設置、或いは取り出しは、上側板4の脚部4a、4b及び水平部4cによりその三方が囲われる設置用スペース9を介して行なわれる。
【0018】
本実施形態によれば、縦枠2a、2bの長さ寸法を最大限活用し格納部6とすることが可能となり、これによって、縦枠2a、2bの長さ寸法を抑え、かつ、特殊な重りを要することなくつり合い重りとしての質量を可能な限り大きくすることができる。したがって、長さ寸法に制限がある鋼板で縦枠2a、2bを製作しても、比較的大きな重りWの格納スペース6を確保可能とすることでつり合い重りとしての質量を大きくすることができるとともに、特殊な重りを要することが無いことから、コストの低減を図ることができる。また、脚部4a、4bと水平部4cとが曲線部を介して形成されることにより、応力集中を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るエレベーターつり合い重り枠構造の一実施形態を示す全体正面図である。
【図2】全体側面図である。
【図3】要部拡大図である。
【図4】図1のA−A視図である。
【図5】図1のB−B視図である
【符号の説明】
【0020】
1 つり合い重り枠
2a、2b 縦枠
3 プーリ
4 上側板
4a、4b 脚部
4c 水平部
5 下側板
6 格納部
7 水平部材
8 柱部材
9 設置用スペース
W 重り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対となる縦枠と、これらの縦枠の上部に架設される上側板と、前記縦枠の下部に架設される下側板とを有して成り、対向する前記縦枠間に重りの格納部が形成されるエレベーターつり合い重り枠構造において、
前記縦枠を鋼板の曲げ加工で作成するとともに、前記上側板は、前記縦枠に延設するように配置される脚部、及びこれらの脚部と一体的に設けられ、かつ前記脚部間に架設される水平部から成り、前記格納部上に、前記脚部及び前記水平部によりその三方が囲われる設置用スペースを形成したことを特徴とするエレベーターつり合い重り枠構造。
【請求項2】
前記脚部と前記水平部とは曲線部を介して形成されることを特徴とする請求項1記載のエレベーターつり合い重り枠構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−215034(P2009−215034A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62643(P2008−62643)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000232944)日立水戸エンジニアリング株式会社 (227)
【Fターム(参考)】