説明

エレベーター巻上機用パルス検出装置

【課題】耐久性に優れたエレベーター巻上機のパルス検出装置を提供する。
【解決手段】回転するドラムと、ドラムに押し付けられ、ドラムの回転をパルス検出するためのゴムローラーと、ゴムローラーで検出したパルスに応じてエレベーターの位置検出情報を出力するエンコーダーとを備えて成るエレベーター巻上機用パルス検出装置であって、ゴムローラーのゴム部分は、エチレン・ポリプロピレン系ゴムで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーター巻上機用パルス検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターの位置検出装置として、一端部が回動自在にかご側に軸支された腕と、その腕の自由端側に取り付けられ、案内レールに接触して転動するローラと、そのローラの回転軸に連結されてローラ外周の移動量に比例したパルスを発生するパルス発生器とを備えたエレベーターの位置検出装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、パルス発生器からのパルス数を予め計測した各階床間のパルス数と比較することにより、乗りかごの着床異常を検出することが行われている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
また、電動機に繋がれて回転するドラムにパルス検出用ゴムローラーを押し付け、ドラムが回転するとドラムとの摩擦によりゴムローラーが回転し発生する動力をゴムローラーに繋いでいるエンコーダーに伝え、エンコーダーが検出したアドレスによってエレベーターの位置を検出することも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−319717号公報
【特許文献2】特開平6−115837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した位置検出装置におけるゴムローラーは交換部品であり、定期点検時に交換の要否を判断するか、着床エラー等の不具合が発生してからゴムローラーの交換が行われる。
【0007】
しかしながら、ゴムローラーの交換の判断基準には保守要員による主観的な差異が生じ、また、着床エラー等の不具合が発生してからの交換は、エレベーターの利用者に不便をきたすだけでなく、ゴムローラーが摩擦熱に弱いという問題があった。
【0008】
そこで、本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、耐久性に優れたエレベーター巻上機用パルス検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、回転するドラムと、前記ドラムに押し付けられ、前記ドラムの回転をパルス検出するためのゴムローラーと、前記ゴムローラーで検出したパルスに応じてエレベーターの位置検出情報を出力するエンコーダーとを備えて成るエレベーター巻上機用パルス検出装置であって、前記ゴムローラーのゴム部分は、エチレン・ポリプロピレン系ゴムで構成されていることを特徴とするエレベーター巻上機用パルス検出装置が提供される。
【0010】
エレベーター巻上機用パルス検出装置は、前記ゴムローラーのゴム部分は、炭化ケイ素(Si C)又は窒化アルミニウムを充填材として充填していることを特徴とする。
【0011】
エレベーター巻上機用パルス検出装置は、前記ゴムローラーのゴム部分は、その内部に空洞部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
エレベーター巻上機用パルス検出装置は、前記ゴムローラーは、アルミナ(Al)又は窒化アルミニウムから成る軸部分を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐久性に優れたエレベーター巻上機のパルス検出装置を得ることができる。また、主要部品の経年変化が抑制出来るので、ブレーキ保持力低下の傾向を的確に推測することができ、ブレーキのメンテナンス時期の予測が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】エレベーターの位置検出装置の要部を示す正面図である。
【図2】エレベーター巻上機用パルス検知装置のパルス検出用ゴムローラーの構成を示す構成図である。
【図3】エレベーター巻上機用パルス検出用ゴムローラーのゴム部分の空洞を示す図である。
【図4】エレベーター巻上機用パルス検出用ゴムローラーの軸部分の冷却フィン形状を示す模式図である。
【図5】エレベーター巻上機用パルス検出用ゴムローラーのゴム部分及び軸部分の形状を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0016】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るエレベーターの位置検出装置の要部を示す正面図である。図1に示すように、エレベーターの位置検出装置は、ドラム1、パルス検出用ゴムローラー2、エンコーダー3、巻上機本体4で構成されている。このように構成したエレベーターの位置検出装置は、電動機(図示しない)に繋がれて回転するドラム1にパルス検出用ゴムローラー2を押し付け、ドラム1との摩擦によって発生するゴムローラー2の回転をゴムローラー2に繋いだエンコーダー3に伝え、エンコーダー3が検出したアドレスによってエレベーターの位置検出情報を出力する。ゴムローラー2の押し付け量としては、例えば、直径が約1mm、変形する程度とする。押し付け量が大き過ぎると、耐久性を悪くし、押し付け量が小さすぎると、スリップの虞があるからである。
【0017】
図2は、エレベーター巻上機用パルス検知装置のパルス検出用ゴムローラー2の構成を示す構成図である。ゴムローラー2のゴム部分には、エチレン・ポリプロピレン系ゴム(以下、EP系ゴムという。)を適用するのが好適である。EP系ゴムは、エチレンとポリプロピレンにある種のジエンを加えた三元共重合体である。
【0018】
このEP系ゴムは、ポリエステル・ポリウレタン系ゴムに比べて、はるかに耐候性に優れ、寿命延長やポリエステル・ポリウレタン系ゴムに特有の加水分解の防止、耐摩耗性、耐圧縮永久歪が良好なものとなる。ゴムローラー2のゴム部分は、例えば、3年程度の使用期間に耐えられるよう、硬度を70とするのが好適である。硬度が低すぎると、耐久性が劣るからである。
【0019】
ゴムローラー2の軸部分2bには、放熱のため熱伝導率の高い材質を適用する。軸部分2bは、例えば、アルミナ(Al)、窒化アルミニウム等のセラミックスで製作するのが好適である。アルミナの熱伝導率は、約30W/m・K、窒化アルミニウムの熱伝導率は、約200W/m・Kである。軸部分2bの熱伝導率を高くすることでゴム内部の熱を溜め込まないようにし、ゴム内部の温度上昇を抑制することができる。
【0020】
押し付けられたゴムローラー2が回転する際、ゴム内部の分子摩擦により、発熱する。この発熱が、ゴム内部に留まると、次第にゴム自体を溶融させ、異常変形を来すことになる。そこで、分子摩擦熱を効果的に放熱させることが、耐久性の観点からも必要である。例えば、ゴムローラー2のゴム部分2aにおいて、炭化ケイ素(Si C)あるいは窒化アルミニウム等の熱伝導性の良好な充填材を適用するのが好適である。充填材は、ゴムローラー2の硬度が70程度となるように選定し、炭化ケイ素(Si C)の熱伝導率は、約160W/m・Kである。また、充填材の含有率は、例えば、50%程度が好適である。
【0021】
図3は、パルス検出用ゴムローラー2のゴム部分2aの空洞を示す図である。ゴム部分2aの内部に空洞を設ける。この空洞は、ゴム部分2aの変形によりゴム内部で発生する分子摩擦に伴う温度上昇を低減させるためのものである。空洞の大きさは、例えば、ゴム部分2aの体積の50%程度とする。十分に、分子摩擦熱を逃がすためである。
【0022】
図4は、パルス検出用ゴムローラー2の冷却構造を示す図である。軸部分2bの先端に羽(フィン)6を付ける。ゴムローラー2の回転に伴い、羽(フィン)6周囲の空気が撹拌され、風を発生させる。風がゴムローラー2のゴム部分2aに吹き付けるようにあたるので、分子摩擦熱を効果的に放熱させることができる。尚、図4に示した羽(フィン)6では、エレベータが上昇する際に羽(フィン)6周囲の空気がゴムローラー2のゴム部分2aに吹き付け、エレベータが下降する際には、ゴムローラー2の回転方向は反時計周りとなるので、羽(フィン)6による空気流の向きは、一般的には、エレベータの上昇、下降は交互となる。
【0023】
図5は、パルス検出用ゴムローラー2のゴム部分2aおよび軸部分2bの形状を示す図である。軸部分2bの円周方向に突起7を形成している。この突起7は、軸部分2bからの放熱を円滑にするためのものである。突起7の形状としては、ゴム部分2aが押し付けられたときの応力集中を避けるために、適宜、丸み(アール)をつけている。突起7は、例えば、ゴム断面積の40%程度が好適である。突起7は、軸部分2bと一体的に形成しても、別体として形成したものを取り付けてもよい。例えば、図3に示した内部を空洞化したゴムをこの突起7に被せるような構造とすることも好適である。
【0024】
本実施形態によれば、ドラムとゴムローラー間およびゴム内部で発生する分子摩擦熱によるゴムの温度上昇を抑え、ゴムの劣化を遅らせることができるので、エレベーター巻上機のパルス検出装置として耐久性に優れたものとなる。
【0025】
なお、本発明は上記の実施形態のそのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1:ドラム
2:パルス検出用ゴムローラー
2a:パルス検出用ゴムローラーゴム部分
2b:パルス検出用ゴムローラー軸部分
3:エンコーダー
4:巻上機本体
5:空洞
6:冷却フィン
7:突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するドラムと、
前記ドラムに押し付けられ、前記ドラムの回転をパルス検出するためのゴムローラーと、
前記ゴムローラーで検出したパルスに応じてエレベーターの位置検出情報を出力するエンコーダーとを備えて成るエレベーター巻上機用パルス検出装置であって、
前記ゴムローラーのゴム部分は、エチレン・ポリプロピレン系ゴムで構成されていることを特徴とするエレベーター巻上機用パルス検出装置。
【請求項2】
前記ゴムローラーのゴム部分は、炭化ケイ素(Si C)又は窒化アルミニウムを充填材として充填していることを特徴とする請求項1記載のエレベーター巻上機用パルス検知装置。
【請求項3】
前記充填材を充填した前記ゴムローラーは、硬度が約70、充填材の含有率が約50%であることを特徴とする請求項2記載のエレベーター巻上機用パルス検知装置。
【請求項4】
前記ゴムローラーのゴム部分は、その内部に空洞部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のエレベーター巻上機用パルス検知装置。
【請求項5】
前記空洞部の大きさは、前記ゴム部分の体積の約50%であることを特徴とする請求項4記載のエレベーター巻上機用パルス検知装置。
【請求項6】
前記ゴムローラーは、アルミナ(Al)又は窒化アルミニウムから成る軸部分を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載エレベーター巻上機用パルス検知装置。
【請求項7】
前記ゴムローラーの軸部分に、前記ドラムの回転に伴い前記ゴムローラー近傍の空気を撹拌させる羽部材が取着されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載のエレベーター巻上機用パルス検知装置。
【請求項8】
前記ゴムローラーの軸部分の円周方向に突き出した突起が形成されていることを特徴とする請求項1記載のエレベーター巻上機用パルス検知装置。
【請求項9】
前記突起の形状は、前記ゴムローラーのゴム部分が前記ドラムに押し付けられた際、応力集中を避けた構造であることを特徴とする請求項8記載のエレベーター巻上機用パルス検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−190050(P2011−190050A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57548(P2010−57548)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】