説明

エレベータ乗りかご装置

【課題】
車椅子利用者が操作盤を操作し易く、一般の利用者との衝突も確実に防止できる手摺を備えたエレベータ乗りかご装置を提供する。
【解決手段】
乗りかご11の出入り口13から見て側方の壁面11bの、車椅子利用者が操作可能な高さ位置に設けたる操作盤15の、行き先階ボタンを設けた操作面16が、壁面11bより所定高さ乗りかご内に向って突出している。また、この操作面16の両側方の壁面11b上に、この操作盤15の両側辺に沿って縦向きに一対の手摺17を設け、その長さ方向に沿う上辺の、壁面11bからの高さが、操作面16より高く位置するように形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、車椅子利用者用の操作盤を設けたエレベータ乗りかご装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータ乗りかごには、車椅子利用者が操作可能なように、通常の操作盤とは別に、乗りかご内側壁面の比較的低い位置に、車椅子利用者用の操作盤を設けているものがある。このようなエレベータ乗りかごでは、車椅子利用者用の操作盤は、これまで、その操作面が乗りかごの壁面と同一面上に設けられていた。このため、車椅子に乗った利用者が操作面に設けられた行き先階ボタン等を操作する場合、操作盤との間に車椅子の一部が介在することから、操作し難い面があった。
【0003】
また、低い位置に設けた操作盤の操作面が若干上向きとなるように、壁面に対して傾斜させ、一般のエレベータ利用者にも操作しやすいように構成したものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−280389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記構成のエレベータ乗りかごでは、操作面が若干上向きとなるように傾斜しているため、操作面の下部が壁面より乗りかごの内側に突出することとなり、一般の利用者がこの突出部分に衝突するなどの問題が生じる。これを防ぐため、操作盤の一部に一体的に手摺を設けて、操作盤との衝突を防ぐことも考えられているが、充分なものではなかった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、車椅子利用者が操作盤を操作し易く、一般の利用者との衝突も確実に防止できる手摺を備えたエレベータ乗りかご装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施の形態によるエレベータ乗りかご装置は、乗りかごの出入り口から見て側方の壁面の、車椅子利用者が操作可能な高さ位置に設けられ、行き先階ボタンを設けた操作面が、前記壁面より所定高さ乗りかご内に向って突出している操作盤と、この操作盤の両側方の前記壁面上に、この操作盤の両側辺に沿って縦向きに設けられ、その長さ方向に沿う上辺の、前記壁面からの高さが、前記操作面より高く位置するように形成された一対の手摺とを備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施の形態に係るエレベータ乗りかご装置を示す平面の図である。
【図2】本発明の一実施の形態における操作盤部分を、手摺と共に示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態における操作盤部分を、他の手摺形状と共に示す斜視図である。
【図4】本発明の一実施の形態における操作盤部分を、さらに他の手摺形状と共に示す斜視図である。
【図5】本発明の他の実施の形態に係るエレベータ乗りかご装置を示す平面の図である。
【図6】本発明の他の実施の形態における操作盤部分を、手摺と共に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
図1はこの実施の形態によるエレベータ乗りかご装置の平面図であり、図2はその操作盤部分を取り出して示す斜視図である。
【0011】
これらの図において、乗りかご11は、図示しない建物の昇降路内に設けられ、図示しないモータなどにより昇降駆動される。この乗りかご11の一面には開閉扉12を有する乗客の出入り口13が設けられている。また、その内部には、その出入り口13に隣接する壁面11aの、一般乗客が操作可能な高さ位置に、一般乗客用の操作盤14が設けられている。この他、出入り口13から見て側方の壁面11bには、車椅子に乗った利用者が操作可能な比較的低い高さ位置に、車椅子利用者用の操作盤15が設けられている。この操作盤15の操作面16には、行き先階ボタンや階床表示器などが設けられている。この操作盤15は、その操作面16が、壁面より乗りかご11内に向って所定高さ(例えば、200mm程度)突出した形状で壁面に取り付けられている。
【0012】
この操作盤15が設けられた壁面上には、この操作盤15の両側辺に沿って一対の手摺17が縦向きに設けられている。この一対の手摺17は、横断面が円形又は楕円形を成すもので、長さ方向に沿う上辺は、壁面からの高さが、操作面16より30mm程度高く位置するように形成され、操作面16を側方からの衝突物体からガードしている。また、この手摺17の長さ方向に沿う側辺と操作盤15の側辺との間隔は、手摺17の外周を掴める程度の間隔でよく、例えば20〜30mm程度の間隔を保つように構成する。さらに、この手摺17の長さは、操作盤の縦方向の寸法と同じか、或いは僅かに大きく設定する。なお、手摺17の材質は金属、樹脂、木材の何れでも構わず、その横断面は前述のように円形又は楕円形など、外周形状が曲面となる形状とする。
【0013】
ここで、操作盤15の壁面11bからの突出高さを200mm程度突出させたので、車椅子に乗車した利用者が操作する場合、乗りかご11の出入り口13からかご内に入った利用者は、側方壁面11bに設けられた操作盤15の操作面16と、図1で示すように斜めに対向することとなる。この場合、操作盤15の下方に、車椅子の前部と車椅子利用者のひざ部分が入り込むため、操作盤15の操作面16が車椅子利用者に対して接近して位置することとなり、行き先ボタンの操作などが格段に容易となる。
【0014】
また、この操作盤15の両側に、その両側辺に沿う一対の縦方向の手摺17を設け、その長さ方向に沿う上辺の、壁面11bからの高さを操作面16より高く設定したので、この手摺により一般のエレベータ使用者が、壁面11bより突出した操作盤15に側方から衝突することを有効に防止することができる。このため、一般のエレベータ使用者が操作盤15の側辺角部に当接することで負傷したり、反対に操作盤15が使用者との衝突により損傷することを防止できる。
【0015】
また、手摺17は操作盤15に近接して設けられているので、車椅子利用者が操作盤15を操作する際、片手でこの手摺17を掴むことにより、車椅子は操作盤15の近接位置に固定され、車椅子利用者は、安定した状態で他方の手により操作面16上の行き先階ボタンなどを操作することができる。
【0016】
上記実施の形態では、操作盤15に対して一対の縦向きの手摺17を設けたが、この一対の手摺17に代わって、図3で示すように、U字状の手摺21を設けてもよい。このU字状の手摺21は、操作盤15の両側辺、及び下辺に沿って設けられている。この手摺21も、長さ方向に沿う上辺は、壁面11bからの高さが、操作面16より30mm程度高く位置するように形成されている。また、この手摺21の長さ方向に沿う側辺と操作盤15の側辺との間隔は、手摺21の外周を掴める程度の間隔でよく、例えば20〜30mm程度の間隔を保つように構成する。
【0017】
このU字状の手摺21は、前述した一対の縦向きの手摺17に対して、操作盤15の下辺部をガードする水平部分を有することになる。ここで、車椅子利用者が乗りかご11内に乗車せず、一般使用者のなかに小児がいる場合、小児の頭部が操作盤15の下辺角部に当接するおそれがある。しかし、U字状の手摺21は、操作盤15の下辺部をガードする水平部分を有しているので、小児の頭部が操作盤15の下辺角部に当接して負傷するようなことを確実に防止できる。
【0018】
さらに、図4で示す実施形態では、操作盤15の両側方の壁面11b上に、L字及び逆L字状の手摺23R,23Lを設けている。すなわち、これらL字及び逆L字状の手摺23R,23Lは、操作盤15の両側辺に沿う縦部分、及びこれら縦部分の下端からそれぞれ操作盤15の外方(左右方向)に向って延在する横部分からなる。このL字及び逆L字状の手摺23R,23Lも、長さ方向に沿う上辺は、壁面からの高さが、操作面16より30mm程度高く位置するように形成されている。また、縦部分の長さ方向に沿う側辺と操作盤15の側辺との間隔は、縦部分の外周を掴める程度の間隔でよく、例えば20〜30mm程度の間隔を保つように構成する。
【0019】
これらL字及び逆L字状の手摺23R,23Lは、操作盤15の両側辺に沿う縦部分、及びこれら縦部分の下端から操作盤15の外方に向って延在する横部分を有するため、これら縦部分、及び横部分により、一般使用者の操作盤15への側方からの衝突を、より一層確実に防止できる。
【0020】
上記各実施の形態では、壁面11bと平行な操作面16を有する操作盤15を用いていたが、図5及び図6で示すように、操作面26が乗りかご11の出入り口13側に向くように傾斜させた操作盤25を用いてもよい。すなわち、操作盤25の壁面11bからの突出高さを、乗りかご11の出入り口13側(図示右側)より奥側(図示左側)の方を高くして操作面26を傾斜させている。
【0021】
このように形状にすると、図5で示すように、出入り口13から乗りかご内に入った車椅子利用者は、出入り口13側に向いた操作面26を容易に目視確認することができ、操作性がより一層向上する。
【0022】
また、この出入り口13側に向いた状態で傾斜している操作面26を、さらに図示のように、若干上向きに傾斜させてもよい。すなわち、操作盤25の壁面11bからの突出高さを、上部より下部の方を高くして操作面26を若干上向きにも傾斜させている。
【0023】
このように操作面26を若干上向きにも傾斜させると、操作面26に設けられた行き先階ボタンに対する車椅子利用者の操作がより一層行い易くなることが確認されている。
【0024】
このような形状の操作盤25に対しても、図2乃至図4で示した一対の手摺17やU字状の手摺21、さらにはL字及び逆L字状の手摺23R,23Lを設けてもよい。
【0025】
図2乃至図4で示した各手摺17,21,23R,23Lは、壁面11bからの高さが一様であり、壁面11bに対して平行な形状であるが、図5及び図6で示すように、手摺の、操作面26の両側面に沿う縦部分の長さ方向上辺部が、操作面26に沿って傾斜している手摺31を用いてもよい。
【0026】
図5及び図6ではL字及び逆L字状の手摺31R,31Lの場合を示しており、それぞれ操作盤15の外方に向って延在する横部分を有する。このようなL字及び逆L字状の手摺31R,31Lの場合、図5で示すように、それらの横部分の先端部における壁面11bからの高さを、縦部分に接続された基端部の高さより低くして傾斜させてもよい。
【0027】
図5のようにL字及び逆L字状の手摺31R,31Lを形成すると、一般使用者との衝突の可能性が低い操作盤25から離れた位置における内壁11bからの高さが低くなるため、乗りかご11内の収容能力を大きく損なうことはない。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0029】
11…エレベータ乗りかご
11b…壁面
13…出入口
15,25…操作盤
16,26…操作面
17,21,23,31…手摺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごの出入り口から見て側方の壁面の、車椅子利用者が操作可能な高さ位置に設けられ、行き先階ボタンを設けた操作面が、前記壁面より所定高さ乗りかご内に向って突出している操作盤と、
この操作盤の両側方の前記壁面上に、この操作盤の両側辺に沿って縦向きに設けられ、その長さ方向に沿う上辺の、前記壁面からの高さが、前記操作面より高く位置するように形成された一対の手摺と、
を備えたことを特徴とするエレベータ乗りかご装置。
【請求項2】
乗りかごの出入り口から見て側方の壁面の、車椅子利用者が操作可能な高さ位置に設けられ、行き先階ボタンを設けた操作面が、前記壁面より所定高さ乗りかご内に向って突出している操作盤と、
この操作盤周囲の前記壁面上に、この操作盤の両側辺、及び下辺に沿ってU字状に設けられ、その長さ方向に沿う上辺の、前記壁面からの高さが、前記操作面より高く位置するように形成された手摺と、
を備えたことを特徴とするエレベータ乗りかご装置。
【請求項3】
乗りかごの出入り口から見て側方の壁面の、車椅子利用者が操作可能な高さ位置に設けられ、行き先階ボタンを設けた操作面が、前記壁面より所定高さ乗りかご内に向って突出している操作盤と、
この操作盤の両側方の前記壁面上に、この操作盤の両側辺に沿う縦部分、及びこれら縦部分の下端からそれぞれ操作盤の外方に向って延在する横部分からなり、前記縦部分の長さ方向に沿う上辺の、前記壁面からの高さが、前記操作面より高く位置するように形成されたL字及び逆L字状の手摺と、
を備えたことを特徴とするエレベータ乗りかご装置。
【請求項4】
前記操作面の前記壁面からの突出高さを、前記乗りかごの出入り口側より奥側の方を高くして操作面を傾斜させたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のエレベータ乗りかご装置。
【請求項5】
前記操作面の前記壁面からの突出高さを、前記操作盤の上部より下部の方を高くして操作面を傾斜させたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のエレベータ乗りかご装置。
【請求項6】
前記手摺の、前記操作面の両側面に沿う部分の長さ方向上辺部が、前記操作面に沿って傾斜していることを特徴とする請求項5に記載のエレベータ乗りかご装置。
【請求項7】
前記手摺の横部分を、その先端部における前記壁面からの高さを前記縦部分に接続された基端部の高さより低くして、前記横部分を傾斜させたことを特徴とする請求項3に記載のエレベータ乗りかご装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate