説明

エレベータ装置

【課題】セーフティシューに特別なカムを設けることを要さずに、開扉制御、又は閉扉阻止制御を行うと共に、不要な開扉制御、又は閉扉阻止制御を阻止することのできるエレベータ装置の提供。
【解決手段】ドア1全開位置近傍で、ドア1の開動作に連動してセーフティシュー10に設けられるローラ13をドア1と独立して設置された傾斜部を走行させることでセーフティシュー10を強制後退させるエレベータ装置にあって、ローラ13が摺接可能な所定距離の傾斜面16aを有すると共に、ローラ13の摺接に連動して一定量変位可能な傾斜付きレバー16を設け、この傾斜付きレバー16は、ローラ13が傾斜面16aに位置しているときにセーフティシュー10の強制後退を検出する第2の検出器(18)を検出状態とする共に、ローラ13が傾斜面16aから離間すると第2の検出器(18)を非検出状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアの前縁より突出可能に配設されるセーフティシューを備えたエレベータ装置に係り、特に、ドア全開位置近傍でセーフティシューを強制的に後退させるエレベータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータのドアには安全装置の1つとして、ドアの前縁より突出可能に配設されるセーフティシューが設けられており、このセーフティシューと乗客との接触等によりセーフティシューが後退すると、開扉制御、又は閉扉阻止制御することがよく知られている。このようなセーフティシューは、一般にエレベータのドアが全開位置の際に、ドアの前縁より突出した状態となっていることから、荷物等の搬入、搬出の際に、荷物等がセーフティシューに接触し、セーフティシューが変形して故障する虞があった。
【0003】
このため、従来、エレベータのドア全開位置近傍で、セーフティシューを強制的に後退させるエレベータ装置が提案されている。すなわち、セーフティシューに設けられるローラと、エレベータのドアと独立して設置され、ローラが摺接可能な傾斜面を有するブラケットと、傾斜面と並行して配設されたカムにより動作し、セーフティシューの強制後退を検出するセーフティシューの強制後退を検出する第2の検出器とを設け、ブラケットの傾斜面を利用してセーフティシューの強制後退動作を行わせるとともに、カムの傾斜面を利用してセーフティシューの強制後退を検出する第2の検出器の検出動作を行わせるものである。
【0004】
また、このように構成される従来のエレベータ装置には、セーフティシューの外的要因による後退を検出する第1の検出器と、ドア全開位置近傍でのセーフティシューの強制後退を検出する第2の検出器とを備え、第1の検出器の検出に連動して開扉制御、又は閉扉阻止制御するとともに、セーフティシューの強制後退を検出する第2の検出器の検出に連動して不要な開扉制御、又は閉扉阻止制御を防ぐようになっていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−15801(段落番号0017〜0023、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した従来のエレベータ装置では、セーフティシューに、ローラと共に、カムを設ける必要があり、安全装置として軽微な外力によっても弾性変位する必要があるセーフティシューの重量増加を招き、円滑な弾性変位に支障を来すという問題があった。また、セーフティシューに取り付けられるカムと、ドア全開位置近傍に配置されカムによって動作される第2の検出器とがそれぞれ独立して設置されるため、現地据付後にカムと第2の検出器との相互位置関係を確かめ、適切に動作するように微調整する必要があった。
【0007】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、セーフティシューに特別なカムを設けることを要さずに、開扉制御、又は閉扉阻止制御を行うと共に、不要な開扉制御、又は閉扉阻止制御を阻止することのできるエレベータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、エレベータのドアの前縁より突出可能に配設されるセーフティシューを備え、ドア全開位置近傍でドアの開動作に連動して前記セーフティシューを強制後退させる機構と、前記セーフティシューに設けられるローラと、前記セーフティシューの外的要因による後退を検出する第1の検出器と、前記セーフティシューの強制後退を検出する第2の検出器とを備えたエレベータ装置において、前記ドアと独立して設置され、前記ローラが摺接可能な所定距離の傾斜面を有すると共に、前記ローラの摺接に連動して一定量変位可能な傾斜付きレバーを設け、この傾斜付きレバーは、前記ローラが前記傾斜面に位置しているときに前記第2の検出器を検出状態とする共に、前記ローラが前記傾斜面から離間すると前記第2の検出器を非検出状態とすることを特徴としている。
【0009】
このように構成した本発明では、ドアが全開位置付近になり、ローラが斜面付レバーの傾斜面に摺接すると第2の検出器を検出状態とし、不要な開扉制御、又は閉扉阻止制御を阻止する。この後、さらにドアが開き、全開状態となってもローラは所定距離ある傾斜面に位置し、第2の検出器の検出状態は維持され、継続して不要な開扉制御、又は閉扉阻止制御が阻止される。一方、ドア全開状態にあるときセーフティシューが外的要因により後退し、ローラが傾斜面から離間すると、これに応じて第2の検出器は非検出状態となり、ドア開制御又はドア閉阻止制御が実行される。これによって、セーフティシューに特別なカムを設けることを要さずに、開扉制御、又は閉扉阻止制御を行うと共に、不要な開扉制御、又は閉扉阻止制御を阻止することができる。また、第2の検出器の動作具合を現地据付前に調整することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、セーフティシューに特別なカムを設けることを要さずに、開扉制御、又は閉扉阻止制御を行うと共に、不要な開扉制御、又は閉扉阻止制御を阻止することができ、これによって、セーフティシューの重量増加を低減し、弾性変位への影響を最小限に抑えることができる。また、第2の検出器である検出スイッチ18、及びこの検出スイッチ18を動作する斜面付レバー16をあらかじめ一体物としてモジュール化することが可能となり、これによって、据付現場における検出スイッチ18の調整作業を省くことができる。即ち、第2の検出器の動作具合を現地据付前に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施例におけるドア装置の一実施例を示す全体概略図である。
【図2】本実施例におけるドア全開手前位置での要部状態を示す拡大図である。
【図3】本実施例におけるドア全開位置での要部状態を示す拡大図である。
【図4】本実施例におけるドア全開位置でセーフティシューが後退した状態を示す拡大図である
【図5】本発明のエレベータ装置の一実施例を示す全体概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るエレベータ装置の実施例を図に基づき説明する。
【0013】
図5は、本発明のエレベータ装置の一実施例を示す全体概略図である。同図に示すエレベータ装置100は、昇降路101内を昇降する乗りかご102及びつり合いおもり103と、乗りかご102及びつり合いおもり103を吊持する主ロープ104と、主ロープ104を駆動して乗りかご102及びつり合いおもり103を互いに反対の方向に昇降させる巻上機105とを備えている。巻上機105は主ロープ104が巻き掛けられるシーブを有し、シーブに巻かれたロープはそらせ車106に巻き掛けることで、乗りかご102とつり合いおもりの間の距離を適切なものに調整している。本実施例では巻上機105とそらせ車106は昇降路101上に設けられた機械室107内に配置されている。しかし、本発明は機械室107を設けずに巻上機105等を昇降路101内に配置した機械室エレベータであっても適用することが可能である。また図5では模式的に最下階108と最上階109のみを示しているが、本発明において階床は2つであってもよいし、2階床より多い複数の階床を有するエレベータであってもよい。
【0014】
エレベータ装置100は乗りかご102が各階床に停止すると、乗り場に備えられた乗場ドア110と図2等に記載された乗りかごに備えられたドア1を開いて乗客の乗降を行い、再び乗りかご102のドア1と乗場ドア110を閉じて乗りかご102の昇降を行うものである。
【0015】
図1は本実施例における乗りかご102を正面から、即ち乗場ドア110側から見た乗りかご102が備えるドア装置の一実施例を示す全体概略図である。通常時、すなわちドア全開位置付近以外のドア1付近の状態を示し、ドア1の上方にはハンガ2が固定され、このハンガ2に回転可能に取り付けられたハンガローラ3は、レール枠4に固定されたドアレール5上を水平方向に転動してドア1を開閉するように構成されている。
【0016】
ドア1の下端には案内シュー6が取り付けられ、この案内シュー6は、床に設けられたシル7の溝内を摺動している。レバー8aの中央部付近が回転支持部9a、レバー8bのドア開側の端部が回転支持部9bによりドア1に固定され、レバー8a、8bはこの回転支持部9a、9bを中心に回転できるようにドア1に固定されている。そして、このレバー8a、8bのドア閉側の上端部は、回転支持部9c、9dによって、セーフティシュー10と接続されている。セーフティシュー10は、レバー8a、8b、回転支持部9a、9bの構成により、通常時は、セーフティシュー10の自重によって、ドア前縁より突出していると共に、利用者の手で押されるといった外的要因によりドア開方向へ後退可能となっている。
【0017】
回転支持部9aの下方にはストッパ11aが設けられ、回転支持部9bの上方にはストッパ11bが設けられている。ストッパ11aはレバー8aのセーフティシュー10の突出方向への回動を制限することによって、セーフティシュー10の突出寸法を制限し、ストッパ11bはレバー8bのセーフティシュー10のドア開方向への回動を制限することによって、セーフティシュー10のドア開方向への後退量を制限している。
【0018】
回転支持部9aの左下方でレバー8aの左側には、セーフティシュー10の後退を検出する検出スイッチ12が設けられている。この検出スイッチ12は、通常時レバー8aと接触する位置に設けられ、ONとなっている。一方、セーフティシュー10が、利用者の手で押されるといった外的要因によりドア開方向に後退すると、レバー8a、8bが回転支持部9a、9bを中心に反時計方向に回転し、この回転によりレバー8aと検出スイッチ12との接触は開放され、検出スイッチ12はOFFとなる。これに応じて開扉制御、又は閉扉阻止制御が行なわれる。なお、前述したセーフティシューの外的要因による後退を検出する第1の検出器は、検出スイッチ12からなっている。
【0019】
そして、本実施例のエレベータ装置100は、前述した構成のほかに、セーフティシュー10下端部に設けられるローラ13と、シル7の一端に設置されるベース14と、ベース14に回転支持部15を介して軸支され、ローラ13が摺接可能な所定距離の傾斜面16aを有すると共に、ローラ13の摺接に連動して一定量変位可能な傾斜付きレバー16と、傾斜付レバー16の回転を制限するストッパ17a、17bと、傾斜レバー16の回転を検出する検出スイッチ18とを備えている。なお、前述したセーフティシューの強制後退を検出する第2の検出器は、検出スイッチ18からなっている。
【0020】
傾斜付レバー16は、回転支持部15よりも図中左側が重い設定となっており、通常、ストッパ17aにより水平が維持され、このときに検出スイッチ18はOFFとなる。一方、傾斜付レバー16はローラ13が傾斜面16aに当接すると傾き、検出スイッチ18はONとなる。なお、ローラ13が傾斜面16aに当接した時の傾斜付きレバー16の傾きはストッパ17bにより制限される。
【0021】
ドア1の開閉制御に関しては、検出スイッチ12、18が共にOFFのとき、開扉制御、又は閉扉阻止制御が行なわれる。つまり、いずれか一方の検出スイッチがONであれば、開扉制御、又は閉扉阻止制御は行なわれず、ドア閉制御が可能となる。通常時であれば、検出スイッチ12はレバー8aと接触しONとなっていると共に、検出スイッチ18は斜面付レバー16が水平となっているのでOFFとなっており、閉扉制御できる。
【0022】
次に、図1乃至図3に基づき本実施例のエレベータ装置のドア位置が通常状態、すなわちドア全開位置付近以外からドア全開状態になるときの一連の動作について説明する。
【0023】
図1に示した状態からドア1が開動作し、ドア全開位置手前で図2に示した状態となる。このときの検出スイッチ12、18の状態は、図1に示した状態と同じで、検出スイッチ12はON、検出スイッチ18はOFFとなっている。ローラ13は、斜面付レバー16と接触寸前となっている。この状態からさらにドア1が開き、全開位置付近、つまりドア1がドア1から突出するセーフティシュー10の突出量分程度開くとドア1が全開となる程度の位置になると、ローラ13が斜面付レバー16の傾斜面16aに当接し、斜面付レバー16が傾き、これに応じて検出スイッチ18がONとなる。また、さらなるドア1の開扉動作により、ローラ13が傾斜面16aを走行し、これに応じてレバー8aが反時計方向に回転すると共に、セーフティシュー10が後退し、検出スイッチ12がOFFとなる。このとき検出スイッチ18はONとなっているので、セーフティシュー10の後退により、開扉制御、又は閉扉阻止制御が阻止されることはない。そして、ドア1が全開状態となると図3に示した状態となる。このときローラ13は傾斜面16aの最頂部に位置しており斜面付レバー16の傾きは維持され、検出スイッチ18はONとなっている。これにより、ドア1が全開状態で、かつ、セーフティシュー10が強制後退状態にあるが、検出スイッチ12がOFF、検出スイッチ18がONとなっているので、開扉制御、又は閉扉阻止制御が阻止されることはない。
【0024】
一方、ドア1が全開状態にあるときに、例えば、利用者が手によりセーフティシュー10をさらに後退させると、図4に示した状態となる。セーフティシュー10のさらなる後退に応じて、ローラ13は斜面付レバー16の傾斜面16aから離間し、これに応じて傾斜付きレバー16は水平状態となり、検出スイッチ18はOFFとなる。このとき、検出スイッチ12もOFFにあることから、開扉制御、又は閉扉阻止制御が実行される。
【0025】
本実施例によれば、セーフティシュー10に特別なカムを設けることを要さずに、開扉制御、又は閉扉阻止制御を行うと共に、不要な開扉制御、又は閉扉阻止制御を阻止することができ、これによって、セーフティシュー10の重量増加を低減し、弾性変位への影響を最小限に抑えることができる。また、第2の検出器である検出スイッチ18、及びこの検出スイッチ18を動作する斜面付レバー16をあらかじめ一体物としてモジュール化することが可能となり、これによって、据付現場における検出スイッチ18の調整作業を省くことができる。即ち、第2の検出器の動作具合を現地据付前に調整することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 ドア
2 ハンガ
3 ハンガローラ
4 レール枠
5 ドアレール
6 案内シュー
7 シル
8a、8b レバー
9a、9b 回転支持部
10 セーフティシュー
11a、11b ストッパ
12 検出スイッチ(第1の検出器)
13 ローラ
14 ベース
15 回転支持部
16 傾斜付レバー
16a 傾斜面
17a、17b ストッパ
18 検出スイッチ(第2の検出器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータのドアの前縁より突出可能に配設されるセーフティシューを備え、ドア全開位置近傍でドアの開動作に連動して前記セーフティシューを強制後退させる機構と、前記セーフティシューに設けられるローラと、前記セーフティシューの外的要因による後退を検出する第1の検出器と、前記セーフティシューの強制後退を検出する第2の検出器とを備えたエレベータ装置において、
前記ドアと独立して設置され、前記ローラが摺接可能な所定距離の傾斜面を有すると共に、前記ローラの摺接に連動して一定量変位可能な傾斜付きレバーを設け、この傾斜付きレバーは、前記ローラが前記傾斜面に位置しているときに前記第2の検出器を検出状態とする共に、前記ローラが前記傾斜面から離間すると前記第2の検出器を非検出状態とすることを特徴としたエレベータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−96900(P2012−96900A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246463(P2010−246463)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】