説明

エレメント再生用自動ストレーナ

【課題】濾過用エレメントの内外周面に付着して成長し易いスラッジにより、濾過用エレメントに目詰まりが発生した場合に、ストレーナを使用したままで自動的に濾過用エレメントの内外周面の双方に付着したスラッジを除去することができるとともに、構造が簡単で安価なエレメント再生用自動ストレーナを提供すること。
【解決手段】原水用流入口と浄水用流出口を有するストレーナ本体内に、円筒型の濾過用エレメントを配置し、このエレメントの内方から外方へ又は外方から内方へ原水を濾過するストレーナにおいて、前記エレメントの内外周に付着したスラッジを掻き取るためのブラシ又はスクレーパからなる掻き取り機構を当該エレメントの内外周に回転駆動機構を介して回転させたことを特徴とするエレメント再生用自動ストレーナである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の異物(以下、スラッジという。)を含んだ液体中からスラッジを除去するストレーナに関し、更に詳細には、濾過用エレメントの内外周面に付着して成長し易いスラッジを、濾過用エレメントの内外周面の表面に設けた破砕突部と、濾過用エレメントの内外周に設けた回転掻き取り機構とにより、濾過用エレメントの両面から除去するエレメント再生用自動ストレーナに関する。
【背景技術】
【0002】
ストレーナとしては、円筒型の濾過用エレメントに液体を通過させ、濾過してその液体が含有するスラッジを除去するものが広く使用されている。ストレーナの使用中に、濾過用エレメントにスラッジが付着して目詰まりを生じた際には、ストレーナ本体から濾過用エレメントを取り出し、付着したスラッジを除去して目詰まりを解消させる必要があり、この間、当該ストレーナを使用した装置が非稼動となるため、効率性、経済性の面で問題がある。
【0003】
上記の問題を解決するため、濾過用エレメントの外側又は内側の周面にスクレーパ等の掻き取り部を当接させ、駆動用モータにより両者を相対移動させることにより、当該ストレーナの使用を中断することなく、濾過用エレメントに付着したスラッジを掻き取り、排出できるようにした自動洗浄式ストレーナも使用されている。
【0004】
しかしながら、液体中に繊維質のゴミや埃が多く含まれる液体を取り扱うプラントや、藻等が含まれる海水を取水する火力発電所の冷却水取水配管に使用されるストレーナでは、繊維質のスラッジが濾過用エレメントの濾過穴を貫通し、近くの繊維と互いに絡まって強固に結び付いて濾過用エレメントの内外周面に成長するため、従来の自動洗浄式ストレーナでは付着したスラッジを効果的に掻き取ることができない。
【0005】
また、氷蓄熱式冷却システムの過冷却製氷装置では、過冷却生成冷却器に水又は低濃度ブライン中の氷粒子や微細なゴミ等のスラッジが流れ込み、過冷却生成冷却器が凍結したり、閉塞したりして破損することを防止するため、過冷却生成冷却器の上流側にストレーナを使用している。過冷却製氷装置内の氷蓄熱槽から過冷却生成冷却器へと流れる水又は低濃度ブラインの温度が氷点以下の場合には、ストレーナの濾過用エレメントに捕捉された氷粒子が成長し、濾過用エレメントの内外周面を覆って目詰まりを発生させる。このような場合に、従来の自動洗浄式ストレーナでは、濾過用エレメント表面に成長した氷を掻き取る際に、掻き取り部が氷の表面で滑ってしまうため、氷を効果的に除去することができない。
【0006】
濾過用エレメントに付着した繊維質のスラッジを除去するストレーナとしては、特許文献1に、流体流路内に配置した濾過用エレメントの上流側の面に沿って移動する逆洗ノズルと、前記濾過用エレメントの上流側の面を摺動しながら前記逆洗ノズルと共に移動する刃部材を有するスクレーパを設け、濾過用エレメントの濾過穴を貫通して近くの繊維と絡まり、取れにくくなったスラッジを前記スクレーパの鋭利な刃部材と前記濾過用エレメントとで挟んで切断し、切断されて濾過用エレメントへの絡みつきが解かれたスラッジを逆洗ノズルで吸引して排出する自動逆洗式ストレーナが記載されている。
【0007】
一方、濾過用エレメント表面に付着した氷を除去することができるストレーナとしては、特許文型2に、濾過用エレメントの外周面に摺接しながら変位するように一対の掻き取り具としてのスクレーパが設けられ、両スクレーパを一体的に連結する連結プレートが電動モータによって駆動回転される回転軸に連接され、濾過用エレメントの外周面に付着した氷を掻き取り除去するストレーナが記載されている。
【0008】
また、特許文献3には、濾過用エレメントの内部に洗浄ブラシ、又は濾過用エレメントの内部に洗浄ブラシと外部に氷除去装置を取り付け、駆動モータにより濾過用エレメントを回転させ、濾過用エレメントに付着した氷を除去するストレーナが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−257892号公報
【特許文献2】特開平3−199895号公報
【特許文献3】特開2001−153406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載されたストレーナは、刃部材を持ったスクレーパが濾過用エレメントの一次側にしか設けられていないため、濾過用エレメントの二次側にも成長して目詰まりを生じさせるスラッジを十分に剥離させて除去することができない。また、逆洗ノズルは、濾過用エレメントの二次側から一次側に流れを生じさせ、濾過用エレメントの濾過穴を目詰まりさせているスラッジを洗い流す仕組みであるため、逆洗ノズルでも濾過用エレメントの二次側に付着しているスラッジを十分に洗い流すことができない。
【0011】
加えて、逆洗ノズル系の配管を設けているために構造が複雑であり、さらに、カッテングスクレパーに取り付けられた刃部材の切れ味を維持するためには定期的なメンテナンスが不可欠であり、その間、当該ストレーナを使用する装置が非稼動となる。
【0012】
特許文献2に記載されたストレーナは、掻き取り部としてのスクレーパが濾過用エレメントの二次側にしか設けられていないため、濾過用エレメントの一次側に付着した氷を掻き取って除去することができない。このため、濾過用エレメントの一次側に氷が付着して目詰まりが生じた場合には、濾過用エレメントをストレーナ本体から取り出し、一次側に付着している氷を取り除く必要があり、その間、当該ストレーナを使用した装置が非稼動となる。
【0013】
特許文献3に記載されたストレーナは、回転濾過用エレメントの二次側に氷が付着して成長した場合に備え、その氷を除去するための逆洗用配管及び逆洗用ポンプを設けているため、ストレーナ装置の構造が複雑になり、価格も高くなる。また、水又は低濃度ブラインの温度が氷点以下の場合には常にストレーナを運転状態にしておく必要があるため、運転コストが嵩むという問題もある。
【0014】
本発明は、上記の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、濾過用エレメントの内外周面に付着して成長し易いスラッジにより濾過用エレメントに目詰まりが発生した場合に、ストレーナを使用したままで自動的に濾過用エレメントの内外周面の双方に付着したスラッジを除去することができるとともに、構造が簡単で安価なエレメント再生用自動ストレーナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、原水用流入口と浄水用流出口を有するストレーナ本体内に、円筒型の濾過用エレメントを配置し、このエレメントの内方から外方へ又は外方から内方へ原水を濾過するストレーナにおいて、前記エレメントの内外周に付着したスラッジを掻き取るためのブラシ又はスクレーパからなる掻き取り機構を当該エレメントの内外周面に回転駆動機構を介して回転させたことを特徴とするエレメント再生用自動ストレーナである。
【0016】
請求項2に係る発明は、ストレーナ本体に搭載した電動モータ又はギア手動機構の回転駆動機構に回動軸を設けると共に、前記エレメントの内外周双方の掻き取り機構にそれぞれ前記回動軸に連接する連動杆を設け、双方の掻き取り機構を同時に回転させたエレメント再生用自動ストレーナである。
【0017】
請求項3に係る発明は、原水用流入口をストレーナ本体の上方側面の偏心位置に設け、流出口をストレーナ本体下部に配置し、濾過用エレメントの上部を密閉し、下方の開口部を前記流出口に連通させ、エレメントの下部外周に配置した遮蔽用壁を介して旋回用の原水スペースと浄水スペースを設け、原水スペースで濾過した浄水を流出口より流出させたエレメント再生用自動ストレーナである。
【0018】
請求項4に係る発明は、内外双方の掻き取り機構をエレメントの内外周の同位置に対応配置したエレメント再生用自動ストレーナである。
【0019】
請求項5に係る発明は、エレメントの内外周面の双方の適宜位置に破砕突部を設けると共に、掻き取り機構の掻き取り部に破砕突部に対応した切欠き部を設けたエレメント再生用自動ストレーナである。
【0020】
請求項6に係る発明は、破砕突部を破砕翼とし、この破砕翼と掻き取り機構の切欠き部でエレメント内外周に付着成長したスラッジを破砕除去するようにしたエレメント再生用自動ストレーナである。
【0021】
請求項7に係る発明は、エレメントの内外周面に求心方向又は遠心方向に向けて、所定間隔に又はランダムに突設させた請求項1乃至6の何れか1項に記載のエレメント再生用自動ストレーナである。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に係る発明によると、原水用流入口からストレーナ本体内に流入する原水を、ストレーナ本体に配した濾過用エレメントの内方から外方へ、又は外方から内方へ濾過することができるとともに、濾過用エレメントにスラッジが付着して目詰まりが発生した場合には、ストレーナを使用状態のまま回転駆動機構を介してブラシ又はスクレーパから成る掻き取り機構をエレメントの内周又は外周で回転させることにより、エレメントの内周又は外周に付着成長したスラッジを掻き取り除去し、濾過用エレメントの濾過能力を再生することができる。従って、濾過用エレメントの内外周で付着成長し易い、氷粒子や繊維質のスラッジが含まれる原水を取り扱う装置に使用するストレーナとして使用価値が高い。
【0023】
請求項2に係る発明によると、連動杆により濾過用エレメントの内周及び外周の双方に配した掻き取り機構をそれぞれ一体に連結するとともに、回転駆動機構を介して濾過用エレメントの内外周で同時に回転させ、濾過用エレメントの内外周面に付着成長した氷や繊維質のスラッジを内外周面から同時に掻き取り、濾過用エレメントの濾過能力を効率的に再生することができる。
【0024】
請求項3に係る発明によると、濾過用エレメントに付着して一次側から二次側に侵入してエレメントの全周面に付着成長し易いスラッジについても、ストレーナを使用状態のまま濾過用エレメントの内外周面から回転駆動機構を介して同時に掻き取り除去し、濾過用エレメントの濾過能力を効率的に再生することができるので、氷粒子や繊維質のスラッジを含む原水を取り扱う装置に使用してもその装置の稼働率の低下させることがなく、ストレーナとしての使用価値は極めて大きい。
【0025】
請求項4に係る発明によると、濾過用エレメントの内外周双方に、掻き取り機構が内外周面の同位置に対応して配置され、内外双方の掻き取り機構が濾過用エレメントの内外周面の同位置を両面から同時に掻き取るので、濾過用エレメントの内外周面に付着成長したスラッジについても内外周の両面から効果的に掻き取り除去し、濾過用エレメントの濾過能力を再生することができる。
【0026】
請求項5に係る発明によると、濾過用エレメントの内外周面の双方に設けた破砕突部により濾過用エレメントの内外周面に付着成長したスラッジに不連続部が発生するため、当該破砕突部に対応した切欠き部を設けた掻き取り機構を濾過用エレメントの内外周で回転させると、掻き取り機構からスラッジに作用する掻き取り力により、スラッジにその不連続部を起点とする破壊が生じるので、濾過用エレメントの内外周面に強固に付着成長したスラッジであっても容易に掻き取り除去し、濾過用エレメントの濾過能力を再生することができる。
【0027】
請求項6に係る発明によると、濾過用エレメントの内外周面上を摺動する掻き取り機構により濾過用エレメントの表面から掻き取ってもストレーナ本体の底部に沈下せず、掻き取り機構に纏わり付くスラッジを、濾過用エレメントの内外周面に設けた破砕翼と掻き取り部の切り欠き部により破砕、小型化して掻き取り機構より除去し、掻き取り部の掻き取り能力の低下を防止することができる。
【0028】
請求項7に係る発明によると、液体に含まれるスラッジの性質に応じ、適宜な数の破砕突部をエレメントの内外周面に求心方向又は遠心方向に向けて所定間隔に又はランダムに突設させることにより、効果的に濾過用エレメントに付着成長したスラッジに不連続部を発生させるとともに、掻き取り機構に纏わり付くスラッジを破砕、小型化して掻き取り機構から除去し、掻き取り部の掻き取り能力の低下を防止することができるので、効率的に濾過用エレメントの内外周面に付着成長したスラッジを掻き取り除去し、濾過用エレメントの濾過能力を再生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明におけるエレメント再生用自動ストレーナの一実施形態を示す縦方向の摸式断面図である。
【図2】濾過用エレメントの内外周に配置された掻き取り機構の配置状況の一例を示す模式図である。
【図3】濾過用エレメント内外周面に設けた破砕突部と掻き取り機構に設けた切欠き部の関係を示す摸式図である。
【図4】濾過用エレメント内外周面に設けた破砕突部と掻き取り機構に設けた切欠き部の効果を説明する摸式図である。
【図5】濾過用エレメント内外周面の破砕突部の配置状況の一例を示す模式図である
【図6】濾過用エレメント内外周面の破砕突部の配置状況の他の例を示す模式図である。
【図7】本発明におけるエレメント再生用自動ストレーナの他の実施形態を示す縦方向の摸式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明におけるエレメント再生用自動ストレーナの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明におけるエレメント再生用自動ストレーナの一実施形態を示す縦方向の摸式断面図である。
【0031】
図1によると、エレメント再生用自動ストレーナ1は、ストレーナ本体2は縦型円筒状であり、下部は底板3で閉じられ、上部の開口部は取り外し自在の蓋板4により閉じられる。ストレーナ本体2の上方側面の偏心位置に原水用流入口5を設けるとともに、底板3に浄水用流出口6を設けている。また、蓋板4には、図示しないベントバルブへのベント管7が設けられ、ストレーナ本体2の下部にはドレンバルブ8へのドレン管9が設けられている。
【0032】
また、ストレーナ本体2の下部内面には、中央に円形穴10を形成した環状の区画板11を求心方向に突出して設けるとともに、この区画板11の上面に、円形穴10の直径と同一の内径を有する短円筒状の遮蔽壁12を円形穴10と連通させて突設している。
【0033】
ストレーナ本体2の内部には、原水からスラッジを除去して濾過する濾過用エレメント13と、濾過用エレメント13の内外周面に付着成長したスラッジを除去する回転掻き取り機構14が配置されている。
【0034】
濾過用エレメント13は、上部は板材15により閉鎖され、下部は開放されており、遮蔽壁12の上部16に下端部17を係合させてストレーナ本体2内に載置される。このため、濾過用エレメント13の外周側が一次側、内周側が二次側となり、スラッジを含んだ原水は、外周側から内周側へと濾過用エレメント13を通過して濾過される。濾過用エレメント13のフィルタスクリーン18として、本例ではパンチングプレートを使用したが、原水に含まれるスラッジに対応し、その他、ウェッジワイヤ、ワイヤーメッシュ等の適宜の部材を選定して使用することができる。
【0035】
回転掻き取り機構14は、濾過用エレメント13の内周に配置した掻き取り機構19a、19aと、濾過用エレメント13の外周に配置した掻き取り機構19b、19bと、濾過用エレメント13の内周に配置された掻き取り機構19a、19aを一体として連結している連動杆20aと、外周に配置された掻き取り機構19b、19bを連結している連動杆20bと、連動杆20a、20bと接続し、掻き取り機構19a、19bが濾過用エレメント13の内外周を回転可能とする機構回転軸21と、内外周に配置された掻き取り機構19a、19bの相対的な位置関係を調整する調整金具22とから構成されている。
【0036】
また、機構回転軸21の下部23は、ストレーナ本体2の下部内面の遮蔽壁12の上部に配置されている支持部材24の軸受25により回転自在に支持されている。このため、回転掻き取り機構14の掻き取り機構19a、19bは、濾過用エレメント13の内外周を自在に回転することができる。
【0037】
掻き取り機構19a、19bには、濾過用エレメント13の内周面26及び外周面27に付着したスラッジを掻き取るために、掻き取り部28を取り付けている。掻き取り部28としては、ブラシ又はスクレーパを用いることができる。掻き取り機構19a、19bに取り付ける掻き取り部28の構成は、内外周の双方共にブラシ又はスクレーパで同一としても良いし、例えば、外周側はブラシ、内周側はスクレーパとしても良い。更には、原水に含まれるスラッジの種類、量に応じ、適宜ランダムにブラシとスクレーパを組み合わせて使用することもできる。
【0038】
図1及び図2に示すように、濾過用エレメント13の内外周の同一位置を両面から同時に掻き取る様に内外周の掻き取り機構19a、19bを同一位置に対応させて配置すると、濾過用エレメント13の内外周面26、27に付着成長したスラッジに対して内外周双方の掻き取り部材28からの掻き取り力が同時に作用し、内外双方からの掻き取り力の合力で強くスラッジを掻き取るので、従来の自動洗浄ストレーナでは対応が困難であった濾過用エレメント13の内外周面に付着成長する氷や繊維質のスラッジであっても、効果的に掻き取り除去することができる。
【0039】
ストレーナ本体2の上部を閉じている蓋板4の上面には回転駆動機構29を搭載している。回転駆動機構29の回動軸30は、下部に設けた下向きコ字状金具31を介して回転掻き取り機構14の外周側連動杆20bと連接し、回動軸30の回転を回転掻き取り機構14に伝達して回転掻き取り機構14を回転させている。なお、本例では、回転駆動機構29を駆動する手段として電動モータ32を使用したが、手動ギア機構を用いて駆動させることもできる。
【0040】
次に一実施形態の作用を説明する。
原水用流入口5からエレメント再生用自動ストレーナ1に流入したスラッジを含む原水は、図2に示すように、原水用流入口5が偏心してストレーナ本体2に設けられているため、ストレーナ本体2の内面に案内され旋回流となり、濾過用エレメント13外周の原水スペース33を旋回する。
【0041】
また、濾過用エレメント13の外周を旋回流となって流れる原水は、濾過用エレメント13の外周面27を洗浄するので、外周面27にスラッジを付着しにくくするとともに、付着したスラッジの成長を妨げる。
【0042】
原水スペース33の原水は、濾過用エレメント13を外周面27側から内周面26側へ通過することにより濾過され、浄水となる。濾過用エレメント13の内周側の浄水スペース34の浄水は、ストレーナ本体2の下部に設けた浄水用流出口6から、エレメント再生用自動ストレーナ1の外部へ流出する。
【0043】
濾過用エレメント13の外周面27は原水の旋回流により常時洗浄されているので、スラッジが外周面27に付着して成長し難い状況ではあるが、それでもスラッジが付着して成長することを完全に防止することはできない。特に、原水に含まれるスラッジが繊維質である場合には、濾過用エレメントの13の濾過穴35にスラッジが入り込み、互いに絡み付いて成長することを完全に防止することはできない。また、原水が水又は低濃度ブラインであり、原水の温度が氷点以下で過冷却状態にある場合にも、濾過用エレメント13の内外周面26、27が結氷し、結氷状態が成長することを防止することはできない。
【0044】
原水に含まれるスラッジが濾過用エレメント13の内外周面26、27に付着成長し、濾過用エレメント13の濾過能力が低下すると、原水用流入口5と浄水用流出口6とに各々設置した圧力計(図示せず)の差圧が大きくなり、例えば、0.06MPaとなったときに、濾過用エレメント13の清掃作業が必要となる。
【0045】
濾過用エレメント13に付着成長したスラッジを除去する清掃を行うためには、電動モータ32の図示しないスイッチをONにし、回転駆動機構29を作動させ、濾過用エレメント13の内外周に配置した掻き取り機構19a、19bを同時に回転させて、濾過用エレメント13の内周面26及び外周面27に付着成長したスラッジを掻き取る。
このとき、濾過用エレメント13の同一位置を内外周から同時に掻き取り部28が掻き取るので、濾過用エレメント13に付着し、濾過用穴35を貫通して成長しているスラッジであっても、内外周から同時に掻き取り部28からの掻き取り力が作用し、それらの合力が大きな掻き取り力となるため、効果的に掻き取り除去することができる。
【0046】
濾過用エレメント13の外周面27から掻き取り除去したスラッジは、原水スペース33の下部に沈殿するので、ドレンバルブ8を開けると、旋回流効果により原水から分離されて沈殿していたスラッジと共に、ドレン管9を通じてエレメント再生用自動ストレーナ1の外部へ排出することができる。
【0047】
原水用流入口5と浄水用流出口6との差圧が規定値以下になれば、濾過用エレメント13の内周面26及び外周面27に付着していたスラッジは除去され、濾過用エレメント13濾過能力は回復したと判断することができるので、電動モータ32のスイッチをOFFにし、濾過用エレメント13の清掃作業を終了する。
【0048】
何回か上記の操作を行っても、差圧が規定値以下とならない場合には、ストレーナ本体2から濾過用エレメント13を外部に取出して、適宜清掃を行う。
【0049】
次に、本発明の他の特徴である濾過用エレメント13の内周面26及び外周面27に設けた破砕突部と、掻き取り機構19a、19bの掻き取り部28に設けた切欠き部の構成と作用について詳述する。
【0050】
従来のストレーナでは対処が困難であった濾過用エレメント13の内外周面26、27に付着成長するスラッジであっても、濾過用エレメント13の内外周に掻き取り機構19a、19bを配置するとともに、内外周双方の掻き取り機構19a、19bを同一位置に対応させて配置し、内外周双方の掻き取り機構を同時に回転する回転掻き取り機構14を設けることにより、スラッジを効果的に掻き取り除去し、濾過用エレメントの濾過能力を再生することができる。更には、回転掻き取り機構14と併せ、内周面26及び外周面27に破砕突部36を設けた濾過用エレメント13を用いることにより、濾過用エレメント13の内外周面26、27に強固に付着成長したスラッジであっても容易に掻き取り除去することができる。
【0051】
図1に示すように、濾過用エレメント13の内周面26及び外周面27には、求心方向又は遠心方向に向けて、破砕突部36が突設されている。本実施例の場合、濾過用エレメント13はパンチングメタルから製作し、破砕突部36をパンチングメタルの内外周面26,27上に溶接して取り付けている。
【0052】
図3によると、破砕突部36を濾過用エレメント13の内周面26、外周面27に突設しているため、掻き取り機構19a、19bに取り付けた掻き取り部28には、破砕突部36との干渉を避けるために、破砕突部36に対応した切欠き部37を設けている。掻き取り機構19a、19bに取り付けた掻き取り部28(本図の場合はブラシ)は、切欠き部37が存在することにより破砕突部36と干渉することなく、濾過用エレメント13の内周面26及び外周面27を摺動し、内外周面に付着成長したスラッジ38を掻き取ることができる。
【0053】
濾過用エレメント13の内外周面26、27には破砕突部36が突設されているため、濾過用エレメント13の内外周面26、27にスラッジが付着成長しても、破砕突部36が突設されている部分にはスラッジが付着成長することができないので、この部分にはスラッジの不連続部が生じる。このため、掻き取り部28が濾過用エレメント13の内外周面26、27から同時にスラッジを掻き取ると、両面からの掻き取り力の合力でスラッジが掻き取り部28の移動方向に引っ張られ、スラッジには不連続部を起点とする破壊が発生する。
濾過用エレメント13の内外周面26、27に強固に付着成長するスラッジであっても、回転掻き取り機構14と併せて内外周面26、27に破砕突部36を設けた濾過用エレメント13を使用することにより、容易に掻き取り除去し、濾過用エレメント13の濾過能力を確実に再生することができる。
【0054】
図4に示すように、濾過用エレメント13の内周面26及び外周面27から掻き取り機構19a、19bにより掻き取り除去しても、ストレーナ本体2の下部に沈殿せず、スラッジ38が融合して掻き取り部28に纏わり付き、掻き取り機構19a、19bの回転に伴って、濾過用エレメント13の内周面26及び外周面27上を移動する現象が発生する。この様に、掻き取り部28にスラッジ38が融合して纏わり付くと、掻き取り部28の掻き取り能力は大きく低下するので、掻き取り部28からスラッジ38を除去する必要がある。
【0055】
本発明では、掻き取り部28に纏わりついたスラッジ38を除去するため、破砕突部36を矩形板状の破砕翼40とした。図4に示すように、掻き取り除去された後、融合して掻き取り部28に纏わり付き、掻き取り機構19a、19bと共に濾過用エレメント13の内外周面26、27上を移動する融合したスラッジ38が、破砕突部36として破砕翼40が突設された部分を通過すると、掻き取り部28の切欠き部37にはみ出しているスラッジ38の部分41は、破砕翼40により塞き止められるのに対し、掻き取り部28に纏わり付いているスラッジ38の部分42は、掻き取り機構19a、19bと共に移動を継続する。その結果、スラッジ38の破砕翼40により塞き止められた部分41と、スラッジ38の掻き取り部28に纏わり付いている部分42の間には引っ張り力が生じ、最終的にはスラッジ38は切断、破壊される。このため、掻き取り部28への纏わり付きを解かれたスラッジ38の部分41は、ストレーナ本体2の下部に沈殿する。また、掻き取り部材28に纏わり付いて移動していたスラッジ38の部分42も、スラッジ38の切断時の引っ張り力により掻き取り部28から分離し易い状態となり、分離したものはストレーナ本体2の下部に沈殿する。
【0056】
上記の作用により、掻き取り部28の掻き取り能力が回復し、濾過用エレメント13の内周面26及び外周面27に付着成長するスラッジ38を継続して効果的に掻き取り除去することができる。
【0057】
破砕翼40は、濾過用エレメント13の内外周面26、27に求心方向又は遠心方向に向けて突設しているが、その配列方式は、図5に例示するように、一列に整列させて配置しても良いし、図6に例示するように千鳥状に配置しても良い。また、破砕翼40を突設させる間隔は、一定でもランダムでも良い。
破砕翼40を突設する数が多いほど、濾過用エレメントに13の内外周面26、27に付着成長したスラッジ38に生じる不連続部39の数が増加し、掻き取り除去し易くなるとともに、掻き取り部28に纏わりついたスラッジ38を破壊、小型化し、掻き取り部28から分離させる効果も大きくなるが、破砕翼40の数をあまり多くすると、濾過用エレメント13の外周に突出した破砕翼40が抵抗となって旋回流効果を減殺してしまうので、原水に含まれるスラッジの性質に応じた適宜の数に止める必要がある。
【0058】
次に、本発明における他の実施形態を説明する。他の実施形態では、前記実施形態と異なる部分についてのみ説明する。なお、共通する構造、部品を示す番号については、前記実施形態と同じ番号を使用する。
【0059】
図7によると、他の実施形態のエレメント再生用自動ストレーナ101は、図1の実施形態と異なり、濾過用エレメントの内周側から外周側へ原水を通過させて濾過する方式のストレーナである。
【0060】
図7によると、エレメント再生用自動ストレーナ101は、ストレーナ本体102は縦型円筒状であり、下部は底板3で閉じられ、上部の開口部は取り外し自在の蓋板4により閉じられる。ストレーナ本体102の側面上方には原水用流入口105を設けるとともに、側面中程には浄水用流出口106を設けている。また、蓋板4には、図示しないベントバルブへのベント管7が設けられ、ストレーナ本体102の底板3にはドレンバルブ8へのドレン管109を設けている。
【0061】
また、ストレーナ本体102の中部内面には、中央に円形穴110を形成した環状の濾過用エレメント取り付け板111を求心方向に突出して設けている。また、ストレーナ本体102の下部内面には、中心回転軸121の支持部材125を設けている。
【0062】
濾過用エレメント113の上端部は開放され、下端部は板115により閉鎖されている。このため、濾過用エレメント113は、内周側が一次側に、外周側が二次側となり、原水は内周側から外周側へと濾過用エレメント113を通過して濾過される。
【0063】
濾過用エレメント113は、濾過用エレメント取り付け板111の円形穴110に挿入され、濾過用エレメント113の上端取り付け部116と濾過用エレメント取り付け板111を適宜な方法により固定して、ストレーナ本体102の内部に配置している。
【0064】
また、濾過用エレメント113の内外周双方に掻き取り機構19a、19bを配置し、その他の回転掻き取り機構114の構成も概ね図1の実施形態と同様であるが、濾過用エレメントの外周側に配置した掻き取り機構19b、19bを連結する連動杆20bが、濾過用エレメント113の下部に配置されている。
【0065】
回転掻き取り機構114を駆動する回転駆動機構29の構成も概ね図1の実施形態のものと同様であるが、回動軸30の下部に設けた下向きコ字状金具31と、中心回転軸121の上端に設けた連接棒133とを介して回動軸30を回転掻き取り機構114に連接し、回転掻き取り機構114を回転させている。
【0066】
次に上記実施形態の作用を説明する。
図7の実施形態において、原水用流入口105からエレメント再生用自動ストレーナ101に流入したスラッジを含む原水は、濾過用エレメント113を内周側から外周側へ通過することにより濾過され、浄水となる。濾過用エレメント113の外周側の浄水スペース34の浄水は、ストレーナ本体102の中部側面に設けた浄水用流出口106から、エレメント再生用自動ストレーナ101の外部へ流出する。
【0067】
原水に含まれるスラッジが濾過用エレメント113の内外周面26、27に付着成長して濾過能力が低下したことを原水用流入口105と浄水用流出口106との差圧の増加を圧力計(図示せず)により認知した場合には、図1の実施形態の場合と同様の操作を行うことにより、濾過用エレメント113の内外周面26、27に付着成長したスラッジを掻き取り除去することができる
【0068】
濾過用エレメント113の内周面26(一次側)から掻き取り除去したスラッジは、ストレーナ本体102の下部に沈殿するので、ドレンバルブ8を開けると、ドレン管109を通じてエレメント再生用自動ストレーナ101の外部へ排出することができる。
【0069】
以上の説明で明らかなように、本発明に係るストレーナでは、従来の自動洗浄ストレーナでは対応が困難であった濾過用エレメントに付着成長しやすいスラッジ、例えば繊維質の埃やゴミ、氷、が濾過用エレメントの内外周面に付着成長した場合であっても、原水の供給を停止することなく、ストレーナを稼動したままで濾過用エレメントの内外周面に付着成長したスラッジを除去するとともに、ストレーナの外部に排出することができるので、濾過用エレメントのメンテナンス作業の省力化、効率化を図れるだけではなく、当該ストレーナを使用した装置全体の稼働率、生産性を著しく向上させることができるので、その経済的な価値は極めて大きい。
【符号の説明】
【0070】
1、101 エレメント再生用自動ストレーナ
2、102 ストレーナ本体
3 蓋体
5、105 原水用流入口
6、106 浄水用流出口
13、113 濾過用エレメント
14 回転掻き取り機構
19a、19b 掻き取り機構
20a、20b 連動杆
28 掻き取り部(ブラシ又はスクレーパ)
29 回転駆動機構
36 破砕突部
37 切欠き部
38 スラッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水用流入口と浄水用流出口を有するストレーナ本体内に、円筒型の濾過用エレメントを配置し、このエレメントの内方から外方へ又は外方から内方へ原水を濾過するストレーナにおいて、前記エレメントの内外周に付着したスラッジを掻き取るためのブラシ又はスクレーパからなる掻き取り機構を当該エレメントの内外周面に回転駆動機構を介して回転させたことを特徴とするエレメント再生用自動ストレーナ。
【請求項2】
ストレーナ本体に搭載した電動モータ又はギア手動機構の回転駆動機構に回動軸を設けると共に、前記エレメントの内外周双方の掻き取り機構にそれぞれ前記回動軸に連接する連動杆を設け、双方の掻き取り機構を同時に回転させた請求項1に記載のエレメント再生用自動ストレーナ。
【請求項3】
前記原水用流入口をストレーナ本体の上方側面の偏心位置に設け、前記流出口をストレーナ本体下部に配置し、前記エレメントの上部を密閉し、下方の開口部を前記流出口に連通させ、エレメントの下部外周に配置した遮蔽用壁を介して旋回用の原水スペースと浄水スペースを設け、原水スペースで濾過した浄水を流出口より流出させた請求項1又は請求項2に記載のエレメント再生用自動ストレーナ。
【請求項4】
内外双方の掻き取り機構をエレメントの内外周の同位置に対応配置した請求項1乃至3の何れか1項に記載のエレメント再生用自動ストレーナ。
【請求項5】
前記エレメントの内外周面の双方の適宜位置に破砕突部を設けると共に、前記掻き取り機構の掻き取り部に破砕突部に対応した切欠き部を設けた請求項1乃至4の何れか1項に記載のエレメント再生用自動ストレーナ。
【請求項6】
前記破砕突部を破砕翼とし、この破砕翼と掻き取り機構の切欠き部でエレメント内外周に付着成長したスラッジを破砕除去するようにした請求項1乃至5の何れか1項に記載のエレメント再生用自動ストレーナ。
【請求項7】
前記破砕突部は、エレメントの内外周面に求心方向又は遠心方向に向けて、所定間隔に又はランダムに突設させた請求項1乃至6の何れか1項に記載のエレメント再生用自動ストレーナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−135729(P2012−135729A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290198(P2010−290198)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(594182993)大同工機株式会社 (4)
【Fターム(参考)】