説明

エロージョン・コロージョン低減用防食剤及び低減方法

【課題】25℃におけるpHで防食剤の添加量が管理されていても、130〜180℃の温度範囲でのpHを高く維持することができ、これにより酸化鉄皮膜の溶解度を低減して炭素鋼製配管の腐食・減肉の抑制を図ることができるエロージョン・コロージョン低減用防食剤及び低減方法を提供する。
【解決手段】メトキシプロピルアミン1重量部と、環状アミン、脂肪族環状アミン及びアルカノールアミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種のアミン0.1〜0.9重量部とを含んでなるエロージョン・コロージョン低減用防食剤。この防食剤を添加するボイラ設備の防食方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ設備におけるエロージョン・コロージョン(FACを含む。)を低減するための防食剤と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属表面は酸化物等の保護皮膜で覆われ、水と接触しても、皮膜のために金属と水との直接接触は防止される。しかし、この皮膜が、水の流速に基づく剪断力や水流の衝突効果により、部分的にも剥離すると、剥離部分では、金属と水とが直接接触し、急速に腐食する。
【0003】
このような腐食は、エロージョン・コロージョンと呼ばれる。
【0004】
近年、発電所における蒸気用大径管の減肉トラブルが突発し、原因を調べると、FAC(FLOW ACCELERATED CORROSION:流動誘起腐食、または流動加速腐食とも呼ばれる。)の発生による可能性が高いことが判明した。
【0005】
FACは、金属酸化物皮膜が存在している状態で発生する点で、エロージョン・コロージョンと厳密には異なるものとされる。すなわち、FACにあっては、酸化皮膜から溶解してきた鉄が水流やその乱れによって水側に運び去られる。流速が大きいほど、皮膜中の鉄が多く流れ去り、それを補うために皮膜の溶解が速まり、皮膜はどんどん薄くなる。それを補うために、金属自体が溶解して皮膜膜厚を補強するが、流速が大きいほど、酸素の供給も増え、酸素と金属との反応を助長する。金属の溶解は腐食そのものであり、こうして腐食が進行していく。実際には流速だけでなく、水力学的因子(流体性状、流速、配管形状、管内面の粗さ)、材料因子(鋼材質、Cr,Mo,Cu含有率)、環境因子(温度、pH、溶存酸素、ORP)も影響する。
【0006】
エロージョン・コロージョン及びFACは、いずれも外観上は波形模様や馬蹄形を呈し、区別しがたいものである。本発明では、FACはエロージョン・コロージョンの一種とする。
【0007】
従来、ボイラ鋼材用の防食剤としては、アンモニアやアミン類が周知である。FACに対してもアミン類の使用が検討された(「配管技術」2005年2月号11ページ左欄)。
【0008】
従来の純水給水用給復水系防食剤として使われてきたアミンは、アンモニア、モルフォリン、2−エタノールアミン、モノイソプロパノールアミン(MIPA)およびシクロヘキシルアミンなどの中和性アミンそれぞれ単品のみで構成されるか、混合配合したものとしてシクロヘキシルアミンと2−エタノールアミンなどを混合配合したものであった。
【0009】
これらの従来の給復水系防食剤の使用にあたっては、常温付近でのpH上昇能力を考慮して使用量の設計がなされている。pHの管理基準も25℃で設定され、その温度で測定・管理することとなっている。pHの管理基準があるということは、添加する薬剤の種類に応じて添加量の上限があるということである。
【0010】
ボイラ給水のpHは、一般的には、鉄製配管での腐食を抑制するためにアンモニアやアミンなどで25℃において9.6〜9.7程度と高めに管理すべきであるが、給水加熱器や復水器に銅製の配管などが使用されている場合には、その腐食を抑制するために銅に対する腐食性の低いアミン素剤を選択するとともに、使用する際のpHの上限も25℃で9.2〜9.3程度に抑える必要がある。
【0011】
アンモニアについては、少量で25℃でのpHを上昇させやすいが、上記のように給水加熱器や復水器の冷却管として銅製部材が使用されている場合には、それを腐食させやすく、減肉・貫通による水漏れや冷却水のボイラ給水への侵入による汚染トラブル(腐食・スケール付着障害)を起こしやすいので、産業用自家発電ボイラでは使用されている事例が比較的少ない。
また、アミンとしては、運転中の過熱蒸気条件での熱分解などでアンモニア、低分子有機酸や二酸化炭素の発生が少ない種類を選択する必要がある。
【0012】
25℃でのpHを9.2〜9.3程度に抑えた条件下でボイラを運転した場合、防食剤の添加量が少なすぎるために、130〜180℃の温度範囲で炭素鋼製配管接水面の溶解が起こりやすく、特に曲管部・絞り部・拡管部など、流速が急激に変化する部分で減肉が進行し、配管内圧に対する強度に耐える必要肉厚を下回るまで減肉すると、亀裂が生じて噴破し、高温水や再蒸発による蒸気が噴出する事故に至る場合もある。
従来、この現象はエロージョン・コロージョンと呼ばれてきたが、最近はより狭い条件でFACと分類され、水質条件による化学的な要素が強い現象との考え方もある。
【0013】
前述の如く、従来の給復水処理剤では、25℃でのpH上昇効果に主眼を置き、pHについても25℃で監視・評価していた。実際、JIS B 8223「ボイラの給水及びボイラ水の水質」やボイラメーカー・水処理メーカーの水質管理基準も25℃でのpH管理を標準としている。
【非特許文献1】「配管技術」2005年2月号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
中高圧の純水給水ボイラに装備された給水加熱器やコンバインドサイクルの多重圧式ガスタービン排熱回収ボイラの低圧系統で炭素鋼製材料の腐食減肉が生じたという事例が多く報告され、その対応が求められている。
【0015】
この腐食減肉が発生した部位は、通常運転中には130〜180℃付近の温度域にある。腐食減肉の発生機構は、水と接する炭素鋼の表面に生じた酸化鉄の溶解度の大小に関わっている。130〜180℃の温度領域では、pHが低くなると酸化鉄の溶解度が他の温度領域以上に大きくなり、炭素鋼の腐食・減肉が進行しやすくなると推定される。
【0016】
一方、給水pHを上昇させる薬剤としては、アンモニアの他に中和性アミンが使用されているが、ボイラを経由して蒸気に同伴し、蒸気過熱器で高温度(450〜550℃)に曝されると、アミンの一部がアンモニア、有機酸や二酸化炭素などに熱分解する。
アンモニアは25℃でのpHと比較して温度域130〜180℃の範囲でのpHの上昇は小さく、また蒸気復水器で銅製冷却管を使用している場合はその腐食を促進する懸念があり、また有機酸や二酸化炭素は給水やボイラ水のpHを低下させ、腐食を促進させる懸念がある。
【0017】
本発明は、特定のアミン類を併用することにより、130〜180℃の温度範囲でのpHを高く維持することができ、これにより酸化鉄皮膜の溶解度を低減して炭素鋼製配管の腐食・減肉の抑制を図ることができるエロージョン・コロージョン低減用防食剤及び低減方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、
・給水系での炭素鋼の減肉進行が問題となる温度域130〜180℃の範囲でpHを上昇させる効果を重視し、上述のような給水系統の炭素鋼管の腐食・減肉の抑制を図る。
・過熱蒸気温度条件でも熱安定性の高いアミンを配合することで、系内のアンモニア、有機酸や二酸化炭素などの発生を低減し、pHの安定上昇に加えて、腐食の発生を抑制する。
という視点のもとに達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0019】
[1] メトキシプロピルアミンを主成分とし、メトキシプロピルアミン以外のアミンを含むことを特徴とするエロージョン・コロージョン低減用防食剤。
【0020】
[2] [1]において、前記メトキシプロピルアミン以外のアミンが、環状アミン、脂肪族環状アミン及びアルカノールアミンよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とするエロージョン・コロージョン低減用防食剤。
【0021】
[3] [1]又は[2]において、メトキシプロピルアミン1重量部に対して、メトキシプロピルアミン以外のアミンを0.1〜0.9重量部含むことを特徴とするエロージョン・コロージョン低減用防食剤。
【0022】
[4] [2]又は[3]において、前記メトキシプロピルアミン以外のアミンがシクロヘキシルアミン、モルフォリン及びモノエタノールアミンよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とするエロージョン・コロージョン低減用防食剤。
【0023】
[5] ボイラ給水系に対し、[1]ないし[4]のいずれか1項に記載のエロージョン・コロージョン低減用防食剤を添加することを特徴とするボイラ設備におけるエロージョン・コロージョン低減方法。
【0024】
[6] [5]において、水系へのメトキシプロピルアミンの添加量が1〜15mg/Lとなるように前記エロージョン・コロージョン低減用防食剤を添加することを特徴とするボイラ設備におけるエロージョン・コロージョン低減方法。
【0025】
[7] [5]又は[6]において、水のみの単相流が流れるボイラ給水系に対して、前記メトキシプロピルアミン以外のアミンとしてシクロヘキシルアミン、モルフォリン及びアルカノールアミンよりなる群から選ばれる1種又は2種以上を添加することを特徴とするボイラ設備におけるエロージョン・コロージョン低減方法。
【0026】
[8] [5]又は[6]において、系内で蒸気が発生し、蒸気/水の二相状態の水が流れるボイラ給水系に対して、メトキシプロピルアミン以外のアミンとしてモルフォリン及び/又はアルカノールアミンを添加することを特徴とするボイラ設備におけるエロージョン・コロージョン低減方法。
【発明の効果】
【0027】
メトキシプロピルアミンを主成分とし、メトキシプロピルアミン以外のアミンを配合した本発明のエロージョン・コロージョン低減用防食剤であれば、ボイラの給水温度条件:130〜180℃の範囲での解離度が増加し、pHを上昇させやすい特性を持つとともに、熱安定性が高く、ボイラの主蒸気温度条件(450〜550℃)でも特に熱分解によるアンモニアや有機酸の発生が少なく、蒸気復水器での銅製冷却管のアンモニアアタック腐食やボイラ給水やボイラ水のpH低下による炭素鋼管の減肉進行を低く抑えることができる。
【0028】
即ち、主成分であるメトキシプロピルアミンは、25〜180℃の温度域の水中での解離度が大きく、これに次いで解離度が大きいシクロヘキシルアミンやアルカノールアミン、または温度上昇に対して解離度が上昇するモルフォリンなどの他のアミンを配合することで、150〜180℃の給水の温度領域でのpHが高く維持され、給水系統配管である炭素鋼管接水面の酸化鉄の溶解度が小さくなり、鉄の溶出が小さくなることで、腐食減肉の進行が抑制される。
【0029】
また、主成分のメトキシプロピルアミンに対して、アルカノールアミンやモルフォリン等の他のアミンの配合比が少ないことから、蒸気・水二相状態の場合での水側のpHを高く維持でき、接水面の腐食が抑制される。
【0030】
また、過熱蒸気の温度域での熱安定性が高いメトキシプロピルアミンと共に、同様に熱安定性の高い他のアミンを用いることにより、熱分解生成物であるアンモニア、有機酸や二酸化炭素の発生量が、他のアミンを使用した場合と比較して低く抑えられ、その作用による銅系材質のアンモニアアタック腐食や炭素鋼の酸による腐食も軽減できる。
【0031】
従って、本発明によれば、次のような優れた効果が奏される。
(1)純水給水ボイラの高圧給水加熱器管の減肉速度が低減し、その機器寿命が延長されるとともに、不意の配管噴破などによる事故や操業停止を防止することができる。
(2)給水中の鉄濃度の低減が容易となり、ボイラ内の蒸発管のスケール付着速度とスラッジ堆積量の低減が達成でき、ボイラの効率を高く維持することができる。
(3)従来のアミン使用の場合に見られた、高温条件の蒸気過熱器を通過する際にアミンの分解でアンモニアや低分子の有機酸、二酸化炭素が生じ、蒸気凝縮水を給水として循環使用する場合に系統内にそれらが濃縮することにより生じていた、アンモニアによる銅系材料の腐食、有機酸や二酸化炭素による給水のpH低下による炭素鋼管の腐食が回避できる。
【0032】
本発明によれば、産業用自家発電設備に多く採用されている純水給水ボイラの炭素鋼製給水配管・給水加熱器配管および最近設置されるようになったコンバインドサイクル自家発電設備の多重圧式ガスタービン排熱回収ボイラの低圧系統の炭素鋼製配管や機器で発生しやすい、エロージョン・コロージョンによるとされる減肉現象を、アミン分解生成物による銅系材料の腐食や炭素鋼管の腐食を引き起こすことなく、該当する温度領域における給水のpHを上昇させて酸化鉄皮膜の溶解度を減少させて鉄の溶出を抑えることで、抑制することができ、その産業上の利用価値は極めて大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に、本発明のエロージョン・コロージョン低減用防食剤及び低減方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0034】
本発明のエロージョン・コロージョン低減用防食剤は、メトキシプロピルアミン(CHOCNH)を主成分とし、メトキシプロピルアミン以外のアミンを含むものである。
本発明で主成分とするメトキシプロピルアミンは、過熱蒸気の温度条件で熱安定性が高く、熱分解生成物としてアンモニアや有機酸を発生し難い点において、極めて有効である。
【0035】
メトキシプロピルアミンと併用するメトキシプロピルアミン以外のアミンとしては特に制限はないが、メトキシプロピルアミンと同様に、過熱蒸気の温度条件で熱安定性が高く、熱分解生成物としてアンモニアや有機酸を発生し難いものが好ましく、環状アミン、脂肪族環状アミン(即ちシクロアルキルアミン)、アルカノールアミンなどの1種又は2種以上が挙げられる。特に、過熱蒸気の温度条件で熱安定性が高く、熱分解生成物としてアンモニアや有機酸を発生し難い点において、メトキシプロピルアミンと併用するメトキシプロピルアミン以外のアミンのうち、環状アミンとしてはモルフォリンが好適である。
【0036】
また、脂肪族環状アミンとしてはシクロヘキシルアミンが好適である。なお、シクロヘキシルアミンは100〜200℃の範囲で揮発度が高く、水/蒸気の二相状態では水側から蒸気側に移動しやすく、水側の濃度が低くなる。
【0037】
また、アルカノールアミンとしては、モノイソプロパノールアミン、エタノールアミン(2−アミノエタノール)、特にエタノールアミンが好適である。
【0038】
特に、常温でのpHに比較してボイラの給水温度条件:130〜180℃の範囲での解離度が増加し、pHを上昇させるアミンとしてシクロヘキシルアミンやモルフォリンがより適切である。
【0039】
本発明においては、メトキシプロピルアミン1重量部に対し、アルカノールアミン、シクロヘキシルアミン、モルフォリン等のメトキシプロピルアミン以外のアミンの少なくとも1種を0.01〜0.9重量部好ましくは0.1〜0.3重量部の割合で併用する。この配合比よりもメトキシプロピルアミンが少ないと、メトキシプロピルアミンを用いることによる熱分解を引き起こすことなく系内のpHを有効に上昇させる効果を十分に得ることができず、逆にメトキシプロピルアミンが多過ぎると他のアミンを併用することによるより広い温度範囲で水相のpHをより高く上昇させるという効果が得られ難い。
【0040】
本発明のエロージョン・コロージョン低減方法においては、ボイラ給水に対し、このような本発明のエロージョン・コロージョン低減用防食剤を添加する。メトキシプロピルアミンとメトキシプロピルアミン以外のアミンとをボイラ給水に添加する場合、これらを予め混合して一剤として添加してもよく、個別に添加してもよい。即ち、本発明のエロージョン・コロージョン低減用防食剤はメトキシプロピルアミンとメトキシプロピルアミン以外のアミンとが予め混合されて一剤とされたものであっても良く、メトキシプロピルアミンとメトキシプロピルアミン以外のアミンとが別々に提供されるものであっても良い。
【0041】
なお、水系へのメトキシプロピルアミンの添加量は、1〜15mg/L、好ましくは3〜10mg/Lであり、メトキシプロピルアミン以外のアミンの添加量はこのメトキシプロピルアミン1重量部に対して0.01〜0.9重量部、好ましくは0.1〜0.3重量部となるようにすることが好ましい。
【0042】
本発明において、特に水のみの単相流が流れるボイラ給水系に対しては、メトキシプロピルアミン以外のアミンとしてシクロヘキシルアミン、モルフォリン、エタノールアミン等のアルカノールアミンを添加することが、広範囲の温度域で水相のpHを高く維持する点で好ましい。
【0043】
また、系内で蒸気が発生し、蒸気/水の二相状態の水が流れるボイラ給水系に対しては、メトキシプロピルアミン以外のアミンとして蒸気相/水相間の分配比(濃度比)の小さいモルフォリンやエタノールアミン等のアルカノールアミンを添加することが好ましい。即ち、対象系統内で蒸気が発生し、蒸気/水の二相状態の水が流れる系では、蒸気相/水相間の分配比(濃度比)の大きい(分配比が1よりも大きい)アミンでは、蒸気相側に移行して水相中の濃度が低下し、当初のそのアミンの配合濃度が低下する可能性が高い。そのため、この場合は、分配比が1よりも小さいアミンを配合するのが適切である。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例について説明する。なお、以下の実施例及び比較例では図1に示す強制循環式テストボイラを用いた。
【0045】
図1において、集合ドラム部1にガスパージライン2、安全弁3、調圧弁4、試験液補充系統5、温調ヒータ6、水質調整用ブローライン7等が設けられると共に、減圧弁8を有した蒸気排気系9が接続されている。
【0046】
集合ドラム部1内の水は降水管10、高圧循環ポンプ11、流量調節弁12、タービン流量計13を介して直管状のパイプ14内に導入される。このパイプ14の入口側は助走・整流区間である。パイプ14の途中に腐食試験片取付部15が設けられており、ここに腐食試験片が取り付けられる。パイプ14の出口側に温調用温度計16が設けられている。
【0047】
パイプ14の末端に冷却管・減圧器17、pH計18を有した排出ライン19が接続されている。また、パイプ14の末端に、ガスパージライン20と、バイパス循環ライン21とが接続されている。このバイパス循環ライン21は集合ドラム部1に接続されている。
【0048】
この試験装置の接液部はすべてSUS304製となっている。
【0049】
下記試験条件で比較評価した。
試験片:炭素鋼製試験片(SPCC、5.0cm×1.5cm×厚さ1.0mm、#400エメリー研磨)
温度条件:150℃
試験水:純水+表1,2に示す防食剤
なお、試験水のpH(25℃)は、給水復水系内に銅系材質がある場合を想定
した9.3、鉄系材質のみの場合を想定した9.6の2種を設定した。
試験水中溶存酸素濃度:10μg−O/L以下(給水の窒素パージ+加熱脱気)
流速:1.5m/sec
試験時間:240時間
蒸気発生:表1:蒸気発生なし(水単相流状態)
表2:蒸気発生(給水量の10%)[蒸気/水の2相流状態を作るため]
試験結果を表1,2に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
表1,2の通り、単品の防食剤では25℃で設定されるpHに基いて各防食剤の上限添加量が決まるため、高温部での防食効果は満足すべきものではない。一方、本発明によると、25℃で設定されるpH範囲内でも複数の特定のアミンを組み合わせることにより、少量の防食剤の使用で減肉速度を十分に小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】試験装置の系統図である。
【符号の説明】
【0054】
1 集合ドラム部
14 パイプ
15 腐食試験片取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メトキシプロピルアミンを主成分とし、メトキシプロピルアミン以外のアミンを含むことを特徴とするエロージョン・コロージョン低減用防食剤。
【請求項2】
請求項1において、前記メトキシプロピルアミン以外のアミンが、環状アミン、脂肪族環状アミン及びアルカノールアミンよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とするエロージョン・コロージョン低減用防食剤。
【請求項3】
請求項1又は2において、メトキシプロピルアミン1重量部に対して、メトキシプロピルアミン以外のアミンを0.1〜0.9重量部含むことを特徴とするエロージョン・コロージョン低減用防食剤。
【請求項4】
請求項2又は3において、前記メトキシプロピルアミン以外のアミンがシクロヘキシルアミン、モルフォリン及びモノエタノールアミンよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とするエロージョン・コロージョン低減用防食剤。
【請求項5】
ボイラ給水系に対し、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のエロージョン・コロージョン低減用防食剤を添加することを特徴とするボイラ設備におけるエロージョン・コロージョン低減方法。
【請求項6】
請求項5において、水系へのメトキシプロピルアミンの添加量が1〜15mg/Lとなるように前記エロージョン・コロージョン低減用防食剤を添加することを特徴とするボイラ設備におけるエロージョン・コロージョン低減方法。
【請求項7】
請求項5又は6において、水のみの単相流が流れるボイラ給水系に対して、前記メトキシプロピルアミン以外のアミンとしてシクロヘキシルアミン、モルフォリン及びアルカノールアミンよりなる群から選ばれる1種又は2種以上を添加することを特徴とするボイラ設備におけるエロージョン・コロージョン低減方法。
【請求項8】
請求項5又は6において、系内で蒸気が発生し、蒸気/水の二相状態の水が流れるボイラ給水系に対して、メトキシプロピルアミン以外のアミンとしてモルフォリン及び/又はアルカノールアミンを添加することを特徴とするボイラ設備におけるエロージョン・コロージョン低減方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−150684(P2008−150684A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−341457(P2006−341457)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】