エンジンの吸気装置
【課題】スワール方向への吸気の乱れを効率的に発生されることができるエンジンの吸気装置を提供する。
【解決手段】分岐ポート23のうちの少なくとも何れか一方の内面において螺旋状をなして延在する第1のガイド部38と、この第1のガイド部38に連続する螺旋状をなし、分岐前の吸気ポート22の内面に延在する第2のガイド部39とを設ける。これにより、スワール方向への吸気の乱れを効率的に発生させることができる。すなわち、例えば、分岐ポート23のポート長が短く形成された吸気ポート22においても、吸気にスワール成分を発生させるためのガイド部の長さを十分に確保することができ、吸気にスワール成分を効率よく発生させることができる。
【解決手段】分岐ポート23のうちの少なくとも何れか一方の内面において螺旋状をなして延在する第1のガイド部38と、この第1のガイド部38に連続する螺旋状をなし、分岐前の吸気ポート22の内面に延在する第2のガイド部39とを設ける。これにより、スワール方向への吸気の乱れを効率的に発生させることができる。すなわち、例えば、分岐ポート23のポート長が短く形成された吸気ポート22においても、吸気にスワール成分を発生させるためのガイド部の長さを十分に確保することができ、吸気にスワール成分を効率よく発生させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気ポートの下流側が二股の分岐ポートに分岐して気筒に連通するエンジンの吸気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、4サイクルエンジンでは、シリンダボア内に吸入した混合気流にタンブル(縦渦)流を発生させることで、燃焼性を改善できることが知られている。
【0003】
この種のエンジンの吸気装置として、例えば、特許文献1には、1つの気筒に対して2つの吸気ポート(分岐ポート)を備えたエンジンの吸気装置において、燃焼室内に発生する逆タンブル流が正タンブル流と衝突することを防止するため、各分岐ポートの内周面に、排気側から遠ざかると共に2つの吸気ポートの間の領域に向けて流れる空気を案内して変向させる整流突起(ガイド部材)を設けた技術が開示されている。
【0004】
ところで、エンジンのノッキングを効果的に抑制するためには、吸気にスワール方向の成分を付加し、未燃ガスを気筒内で円周方向にも撹拌する等の対策を行うことが望ましい。このような要望に対し、例えば、上述の特許文献1に開示された技術においては、各分岐ポートに設けたガイド部材によって所望のスワール成分を発生させることも期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−113694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された技術のように、各分岐ポートにガイド部材を設けただけの構成では、未燃ガスを円周方向に撹拌するに十分なスワール成分を発生させることが困難な場合がある。特に、ポート噴射式のエンジン等においては、インジェクタを可能な限り燃焼室に近づけて噴射燃料の気化を促進するため、分岐ポートの長さを短縮する傾向にあり、このような場合、スワール成分を発生させるに十分なガイド部材を分岐通路内に形成することが困難となる虞がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、スワール方向への吸気の乱れを効率的に発生されることができるエンジンの吸気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によるエンジンの吸気装置は、1つの気筒に2つの吸気ポート開口部を備え、吸気ポートの下流側が二股の分岐ポートに分岐して前記各吸気ポート開口部を形成するエンジンの吸気装置において、前記分岐ポートのうちの少なくとも何れか一方の内面において螺旋状をなして延在する第1のガイド部と、前記第1のガイド部に連続する螺旋状をなし、分岐前の前記吸気ポートの内面に延在する第2のガイド部と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエンジンの吸気装置によれば、スワール方向への吸気の乱れを効率的に発生されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】エンジンの要部断面図
【図2】吸気ポートの内面形状を立体表示した斜視図
【図3】吸気ポートの内面形状を示す側面図
【図4】吸気ポートの内面形状を示す上面図
【図5】シリンダヘッド側から見た吸気ポートの内面形状を示す平面図
【図6】吸気ポートの内面形状を示す底面図
【図7】ガイド部によって生成されるスワール流の方向を示す説明図
【図8】スワール比についてのシミュレーション結果を示す図表
【図9】タンブル比についてのシミュレーション結果を示す図表
【図10】吸気のタンブル方向の挙動についてのシミュレーション結果を示す説明図
【図11】図10のXI−XI線に沿う断面における吸気のスワール方向の挙動についてのシミュレーション結果を示す説明図
【図12】吸気ポートの変形例の内面形状を立体表示した斜視図
【図13】ガイド部を持たない吸気ポートからの吸気のタンブル方向の挙動についてのシミュレーション結果を示す説明図
【図14】ガイド部を持たない吸気ポートからの吸気のスワール方向の挙動についてのシミュレーション結果を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図面は本発明の一実施形態に係わり、図1はエンジンの要部断面図、図2は吸気ポートの内面形状を立体表示した斜視図、図3は吸気ポートの内面形状を示す側面図、図4は吸気ポートの内面形状を示す上面図、図5はシリンダヘッド側から見た吸気ポートの内面形状を示す平面図、図6は吸気ポートの内面形状を示す底面図、図7はガイド部によって生成されるスワール流の方向を示す説明図、図8はスワール比についてのシミュレーション結果を示す図表、図9はタンブル比についてのシミュレーション結果を示す図表、図10は吸気のタンブル方向の挙動についてのシミュレーション結果を示す説明図、図11は図10のXI−XI線に沿う断面における吸気のスワール方向の挙動についてのシミュレーション結果を示す説明図、図12は吸気ポートの変形例の内面形状を立体表示した斜視図、図13はガイド部を持たない吸気ポートからの吸気のタンブル方向の挙動についてのシミュレーション結果を示す説明図、図14はガイド部を持たない吸気ポートからの吸気のスワール方向の挙動についてのシミュレーション結果を示す説明図である。
【0012】
図1に示すエンジン1は、例えば、火花点火式のエンジンを示し、本実施形態においては、水平対向4気筒ガソリンエンジンを示す。このエンジン1のシリンダブロック10に開口する各気筒11にはピストン15が摺動自在に嵌挿され、このピストン15とシリンダヘッド20との間には燃焼室12が画成されている。
【0013】
各気筒11に対応する領域において、シリンダヘッド20の底面には凹面21が形成され、この凹面21の一側には、シリンダヘッド20内に形成された吸気ポート22の下流端が開口されている。また、凹面21の他側には、シリンダヘッド20内に形成された排気ポート25の上流端が開口されている。ここで、本実施形態のエンジン1は、4バルブ式のエンジンであり、凹面21には、吸気ポート22の下流端によって一対の吸気ポート開口部23aが開口されるとともに、排気ポート25の下流端によって一対の排気ポート開口部26aが開口される。
【0014】
具体的に説明すると、シリンダヘッド20内には、気筒11毎にそれぞれ対応する吸気ポート22と排気ポート25とが設けられている。吸気ポート22の下流側は二股の分岐ポート23に分岐され、各分岐ポート23の下流端には燃焼室12に開口する吸気ポート開口部23aが形成されている。同様に、排気ポート25の上流側は二股の分岐ポート26に分岐され、各分岐ポート26の上流端には燃焼室12に開口する排気ポート開口部26aが形成されている。
【0015】
また、吸気ポート22及び排気ポート25の各分岐ポート23,26には、吸気ポート開口部23a及び排気ポート開口部26aをそれぞれ開閉する吸気弁27及び排気弁28が設けられている。さらに、シリンダヘッド20には点火プラグ30が保持され、この点火プラグ30の先端部に形成された点火部30aが、吸気ポート開口部23aと排気ポート開口部26aとの間において、気筒11内に臨まされている。
【0016】
一方、分岐ポート23よりも上流側(分岐前)において、吸気ポート22内には、インジェクタ31の噴射口31aが臨まされていると共に、当該吸気ポート22の上流側の内部を面積の狭い副通路22aと通路面積の広い主通路22bとに区画する隔壁32が配設されている。また、吸気ポート22の上流端には、タンブルジェネレータバルブ(TGV)ユニット35を介して、吸気通路36が接続されている。TGVユニット35内には、主通路22b側を開閉するためのタンブルジェネレータバルブ(TGV)35aが収容され、このTGV35aは、例えば、エンジン1の低・中負荷運転時に閉方向に制御される。これにより、副通路22a内を流通する吸気の流速が速められ、燃焼室12内にタンブル流が発生する。
【0017】
さらに、このような構成のエンジン1において、例えば、図2乃至図7に示すように、吸気ポート22の内面には、吸気を螺旋状にガイドするためのガイド部37が設けられている。
【0018】
具体的に説明すると、ガイド部37は、例えば、各分岐ポート23の内面にそれぞれ設けられた第1のガイド部38と、各分岐ポート23よりも上流側(分岐前)において吸気ポート22の内面に設けられた第2のガイド部39とを有して構成されている。
【0019】
各第1のガイド部38は、例えば、各分岐ポート23内に突出する突条で構成されている。これら第1のガイド部38は互いに同方向に巻回する螺旋状をなし、分岐ポート23の上流側から下流側へと延在されている。
【0020】
この場合において、各第1のガイド部38の巻回ピッチは、互いに同ピッチとすることも可能であるが、吸気ポート開口部23aが開口する燃焼室12の一側から見て各第1のガイド部38の巻回方向の外側に位置する一方の分岐ポート23側(すなわち、図7において左側に位置する分岐ポート23側)のピッチを他方の分岐ポート23側のピッチよりも相対的に小さくすることが好ましい。
【0021】
第2のガイド部39は、例えば、吸気ポート22内に突出する突条で構成されている。この第2のガイド部39は、各第1のガイド部38に連続して当該第1のガイド部38と同方向に巻回する螺旋状をなし、吸気ポート22の上流側から下流側(各分岐ポート23の直上流)へと延在されている。
【0022】
このような構成において、吸気通路36から吸気ポート22内に導入された吸気は、第2のガイド部39及び第1のガイド部38によって旋回方向の成分が付加された後、燃焼室12内に導入される。これにより、燃焼室12内に導入された吸気には、スワール方向の成分が付加される。この場合において、上述のように、一方の分岐ポート23側に設けられた第1のガイド部38の巻回ピッチを、他方の分岐ポート23側に設けられた第1のガイド部38の巻回ピッチよりも相対的に小さく設定(すなわち、密に設定)することにより、例えば、図7に示すように、一方の分岐ポート23からの吸気のスワール方向の成分を他方の吸気ポート22からの吸気のスワール方向の成分よりも相対的に大きくすることができ、燃焼室12内を効率的に撹拌することが可能となる。
【0023】
次に、上述の構成による吸気のシミュレーション結果について図8乃至図11を参照して説明する。なお、図8乃至図11に示すシミュレーション結果は、例えば、エンジン1の低・中負荷運転時のものであり、TGV35aは閉動作されている。
【0024】
図8中に実線で示すように、本実施形態におけるエンジン1では、分岐ポート23内に第1のガイド部38を設けると共に、これら分岐ポート23の分岐前の吸気ポート22内にも第1のガイド部38と連続する第2のガイド部39を設けることにより、燃焼室12内を撹拌するに十分なスワール成分(スワール比)が、吸気の略全行程において効率的に発生していることを確認できた。このことは、例えば、図11に示すように、燃焼室12内の各部における吸気の挙動からも明らかであり、燃焼室12内において吸気が十分に撹拌されていることが確認できる。なお、図8中の破線で示す特性は、比較例として第1,第2のガイド部38,39を持たないエンジンによるスワール比を示すものであり、図14は、図11との比較例として、第1,第2のガイド部38,39を持たないエンジンによる燃焼室内の各部における吸気の挙動を示すものである。
【0025】
一方、図9中に実線で示すように、本実施形態におけるエンジン1では、第1,第2のガイド部38,39を持たないエンジンの特性(図9中の破線を参照)に比べてタンブル比が低下しているものの、燃焼室12内に所定のタンブル比によるタンブル流を発生可能であることが確認できた。このことは、例えば、図10に示すように、燃焼室12内の各部における吸気の挙動からも明らかである。なお、図13は、図10との比較例として、第1,第2のガイド部38,39を持たないエンジンによる燃焼室内の各部における吸気の挙動を示すものである。
【0026】
ここで、例えば、ポート内における第1,第2のガイド部38,39の長さや巻回ピッチ等を適宜チューニングすることにより、スワール成分を重視した吸気特性或いはタンブル成分を重視した吸気特性を適宜設定できることは勿論である。
【0027】
また、例えば、図12に示すように、分岐ポート23のうちの一方にのみ第1のガイド部38を設けることにより、一方の分岐ポート23をスワール成分の発生を重視した分岐ポートとして機能させ、他方の分岐ポート23をタンブル成分の発生を重視した分岐ポートとして機能させることが可能となる。この場合において、スワール成分を燃焼室12内の略全域で効率よく発生させるため、吸気ポート開口部23aが開口する燃焼室12の一側から見て第2のガイド部39の巻回方向外側に位置する一方の分岐ポート23(図12中においては右側の分岐ポート23)に第1のガイド部38を設けることが望ましい。
【0028】
このような実施形態によれば、分岐ポート23のうちの少なくとも何れか一方の内面において螺旋状をなして延在する第1のガイド部38と、この第1のガイド部38に連続する螺旋状をなし、分岐前の吸気ポート22の内面に延在する第2のガイド部39とを設けたことにより、スワール方向への吸気の乱れを効率的に発生させることができる。すなわち、例えば、分岐ポート23のポート長が短く形成された吸気ポート22においても、吸気にスワール成分を発生させるためのガイド部の長さを十分に確保することができ、吸気にスワール成分を効率よく発生させることができる。
【0029】
なお、本発明は、以上説明した各実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲内である。例えば、上述の実施形態においては、第1,第2のガイド部をぞれぞれ突条で構成した一例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、凹溝で構成することも可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 … エンジン
10 … シリンダブロック
11 … 気筒
12 … 燃焼室
15 … ピストン
20 … シリンダヘッド
21 … 凹面
22 … 吸気ポート
22a … 副通路
22b … 主通路
23 … 分岐ポート
23a … 吸気ポート開口部
25 … 排気ポート
26 … 分岐ポート
26a … 排気ポート開口部
27 … 吸気弁
28 … 排気弁
30 … 点火プラグ
30a … 点火部
31 … インジェクタ
31a … 噴射口
32 … 隔壁
35 … タンブルジェネレータバルブユニット
35a … タンブルジェネレータバルブ
36 … 吸気通路
37 … ガイド部
38 … 第1のガイド部
39 … 第2のガイド部
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気ポートの下流側が二股の分岐ポートに分岐して気筒に連通するエンジンの吸気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、4サイクルエンジンでは、シリンダボア内に吸入した混合気流にタンブル(縦渦)流を発生させることで、燃焼性を改善できることが知られている。
【0003】
この種のエンジンの吸気装置として、例えば、特許文献1には、1つの気筒に対して2つの吸気ポート(分岐ポート)を備えたエンジンの吸気装置において、燃焼室内に発生する逆タンブル流が正タンブル流と衝突することを防止するため、各分岐ポートの内周面に、排気側から遠ざかると共に2つの吸気ポートの間の領域に向けて流れる空気を案内して変向させる整流突起(ガイド部材)を設けた技術が開示されている。
【0004】
ところで、エンジンのノッキングを効果的に抑制するためには、吸気にスワール方向の成分を付加し、未燃ガスを気筒内で円周方向にも撹拌する等の対策を行うことが望ましい。このような要望に対し、例えば、上述の特許文献1に開示された技術においては、各分岐ポートに設けたガイド部材によって所望のスワール成分を発生させることも期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−113694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された技術のように、各分岐ポートにガイド部材を設けただけの構成では、未燃ガスを円周方向に撹拌するに十分なスワール成分を発生させることが困難な場合がある。特に、ポート噴射式のエンジン等においては、インジェクタを可能な限り燃焼室に近づけて噴射燃料の気化を促進するため、分岐ポートの長さを短縮する傾向にあり、このような場合、スワール成分を発生させるに十分なガイド部材を分岐通路内に形成することが困難となる虞がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、スワール方向への吸気の乱れを効率的に発生されることができるエンジンの吸気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によるエンジンの吸気装置は、1つの気筒に2つの吸気ポート開口部を備え、吸気ポートの下流側が二股の分岐ポートに分岐して前記各吸気ポート開口部を形成するエンジンの吸気装置において、前記分岐ポートのうちの少なくとも何れか一方の内面において螺旋状をなして延在する第1のガイド部と、前記第1のガイド部に連続する螺旋状をなし、分岐前の前記吸気ポートの内面に延在する第2のガイド部と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエンジンの吸気装置によれば、スワール方向への吸気の乱れを効率的に発生されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】エンジンの要部断面図
【図2】吸気ポートの内面形状を立体表示した斜視図
【図3】吸気ポートの内面形状を示す側面図
【図4】吸気ポートの内面形状を示す上面図
【図5】シリンダヘッド側から見た吸気ポートの内面形状を示す平面図
【図6】吸気ポートの内面形状を示す底面図
【図7】ガイド部によって生成されるスワール流の方向を示す説明図
【図8】スワール比についてのシミュレーション結果を示す図表
【図9】タンブル比についてのシミュレーション結果を示す図表
【図10】吸気のタンブル方向の挙動についてのシミュレーション結果を示す説明図
【図11】図10のXI−XI線に沿う断面における吸気のスワール方向の挙動についてのシミュレーション結果を示す説明図
【図12】吸気ポートの変形例の内面形状を立体表示した斜視図
【図13】ガイド部を持たない吸気ポートからの吸気のタンブル方向の挙動についてのシミュレーション結果を示す説明図
【図14】ガイド部を持たない吸気ポートからの吸気のスワール方向の挙動についてのシミュレーション結果を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図面は本発明の一実施形態に係わり、図1はエンジンの要部断面図、図2は吸気ポートの内面形状を立体表示した斜視図、図3は吸気ポートの内面形状を示す側面図、図4は吸気ポートの内面形状を示す上面図、図5はシリンダヘッド側から見た吸気ポートの内面形状を示す平面図、図6は吸気ポートの内面形状を示す底面図、図7はガイド部によって生成されるスワール流の方向を示す説明図、図8はスワール比についてのシミュレーション結果を示す図表、図9はタンブル比についてのシミュレーション結果を示す図表、図10は吸気のタンブル方向の挙動についてのシミュレーション結果を示す説明図、図11は図10のXI−XI線に沿う断面における吸気のスワール方向の挙動についてのシミュレーション結果を示す説明図、図12は吸気ポートの変形例の内面形状を立体表示した斜視図、図13はガイド部を持たない吸気ポートからの吸気のタンブル方向の挙動についてのシミュレーション結果を示す説明図、図14はガイド部を持たない吸気ポートからの吸気のスワール方向の挙動についてのシミュレーション結果を示す説明図である。
【0012】
図1に示すエンジン1は、例えば、火花点火式のエンジンを示し、本実施形態においては、水平対向4気筒ガソリンエンジンを示す。このエンジン1のシリンダブロック10に開口する各気筒11にはピストン15が摺動自在に嵌挿され、このピストン15とシリンダヘッド20との間には燃焼室12が画成されている。
【0013】
各気筒11に対応する領域において、シリンダヘッド20の底面には凹面21が形成され、この凹面21の一側には、シリンダヘッド20内に形成された吸気ポート22の下流端が開口されている。また、凹面21の他側には、シリンダヘッド20内に形成された排気ポート25の上流端が開口されている。ここで、本実施形態のエンジン1は、4バルブ式のエンジンであり、凹面21には、吸気ポート22の下流端によって一対の吸気ポート開口部23aが開口されるとともに、排気ポート25の下流端によって一対の排気ポート開口部26aが開口される。
【0014】
具体的に説明すると、シリンダヘッド20内には、気筒11毎にそれぞれ対応する吸気ポート22と排気ポート25とが設けられている。吸気ポート22の下流側は二股の分岐ポート23に分岐され、各分岐ポート23の下流端には燃焼室12に開口する吸気ポート開口部23aが形成されている。同様に、排気ポート25の上流側は二股の分岐ポート26に分岐され、各分岐ポート26の上流端には燃焼室12に開口する排気ポート開口部26aが形成されている。
【0015】
また、吸気ポート22及び排気ポート25の各分岐ポート23,26には、吸気ポート開口部23a及び排気ポート開口部26aをそれぞれ開閉する吸気弁27及び排気弁28が設けられている。さらに、シリンダヘッド20には点火プラグ30が保持され、この点火プラグ30の先端部に形成された点火部30aが、吸気ポート開口部23aと排気ポート開口部26aとの間において、気筒11内に臨まされている。
【0016】
一方、分岐ポート23よりも上流側(分岐前)において、吸気ポート22内には、インジェクタ31の噴射口31aが臨まされていると共に、当該吸気ポート22の上流側の内部を面積の狭い副通路22aと通路面積の広い主通路22bとに区画する隔壁32が配設されている。また、吸気ポート22の上流端には、タンブルジェネレータバルブ(TGV)ユニット35を介して、吸気通路36が接続されている。TGVユニット35内には、主通路22b側を開閉するためのタンブルジェネレータバルブ(TGV)35aが収容され、このTGV35aは、例えば、エンジン1の低・中負荷運転時に閉方向に制御される。これにより、副通路22a内を流通する吸気の流速が速められ、燃焼室12内にタンブル流が発生する。
【0017】
さらに、このような構成のエンジン1において、例えば、図2乃至図7に示すように、吸気ポート22の内面には、吸気を螺旋状にガイドするためのガイド部37が設けられている。
【0018】
具体的に説明すると、ガイド部37は、例えば、各分岐ポート23の内面にそれぞれ設けられた第1のガイド部38と、各分岐ポート23よりも上流側(分岐前)において吸気ポート22の内面に設けられた第2のガイド部39とを有して構成されている。
【0019】
各第1のガイド部38は、例えば、各分岐ポート23内に突出する突条で構成されている。これら第1のガイド部38は互いに同方向に巻回する螺旋状をなし、分岐ポート23の上流側から下流側へと延在されている。
【0020】
この場合において、各第1のガイド部38の巻回ピッチは、互いに同ピッチとすることも可能であるが、吸気ポート開口部23aが開口する燃焼室12の一側から見て各第1のガイド部38の巻回方向の外側に位置する一方の分岐ポート23側(すなわち、図7において左側に位置する分岐ポート23側)のピッチを他方の分岐ポート23側のピッチよりも相対的に小さくすることが好ましい。
【0021】
第2のガイド部39は、例えば、吸気ポート22内に突出する突条で構成されている。この第2のガイド部39は、各第1のガイド部38に連続して当該第1のガイド部38と同方向に巻回する螺旋状をなし、吸気ポート22の上流側から下流側(各分岐ポート23の直上流)へと延在されている。
【0022】
このような構成において、吸気通路36から吸気ポート22内に導入された吸気は、第2のガイド部39及び第1のガイド部38によって旋回方向の成分が付加された後、燃焼室12内に導入される。これにより、燃焼室12内に導入された吸気には、スワール方向の成分が付加される。この場合において、上述のように、一方の分岐ポート23側に設けられた第1のガイド部38の巻回ピッチを、他方の分岐ポート23側に設けられた第1のガイド部38の巻回ピッチよりも相対的に小さく設定(すなわち、密に設定)することにより、例えば、図7に示すように、一方の分岐ポート23からの吸気のスワール方向の成分を他方の吸気ポート22からの吸気のスワール方向の成分よりも相対的に大きくすることができ、燃焼室12内を効率的に撹拌することが可能となる。
【0023】
次に、上述の構成による吸気のシミュレーション結果について図8乃至図11を参照して説明する。なお、図8乃至図11に示すシミュレーション結果は、例えば、エンジン1の低・中負荷運転時のものであり、TGV35aは閉動作されている。
【0024】
図8中に実線で示すように、本実施形態におけるエンジン1では、分岐ポート23内に第1のガイド部38を設けると共に、これら分岐ポート23の分岐前の吸気ポート22内にも第1のガイド部38と連続する第2のガイド部39を設けることにより、燃焼室12内を撹拌するに十分なスワール成分(スワール比)が、吸気の略全行程において効率的に発生していることを確認できた。このことは、例えば、図11に示すように、燃焼室12内の各部における吸気の挙動からも明らかであり、燃焼室12内において吸気が十分に撹拌されていることが確認できる。なお、図8中の破線で示す特性は、比較例として第1,第2のガイド部38,39を持たないエンジンによるスワール比を示すものであり、図14は、図11との比較例として、第1,第2のガイド部38,39を持たないエンジンによる燃焼室内の各部における吸気の挙動を示すものである。
【0025】
一方、図9中に実線で示すように、本実施形態におけるエンジン1では、第1,第2のガイド部38,39を持たないエンジンの特性(図9中の破線を参照)に比べてタンブル比が低下しているものの、燃焼室12内に所定のタンブル比によるタンブル流を発生可能であることが確認できた。このことは、例えば、図10に示すように、燃焼室12内の各部における吸気の挙動からも明らかである。なお、図13は、図10との比較例として、第1,第2のガイド部38,39を持たないエンジンによる燃焼室内の各部における吸気の挙動を示すものである。
【0026】
ここで、例えば、ポート内における第1,第2のガイド部38,39の長さや巻回ピッチ等を適宜チューニングすることにより、スワール成分を重視した吸気特性或いはタンブル成分を重視した吸気特性を適宜設定できることは勿論である。
【0027】
また、例えば、図12に示すように、分岐ポート23のうちの一方にのみ第1のガイド部38を設けることにより、一方の分岐ポート23をスワール成分の発生を重視した分岐ポートとして機能させ、他方の分岐ポート23をタンブル成分の発生を重視した分岐ポートとして機能させることが可能となる。この場合において、スワール成分を燃焼室12内の略全域で効率よく発生させるため、吸気ポート開口部23aが開口する燃焼室12の一側から見て第2のガイド部39の巻回方向外側に位置する一方の分岐ポート23(図12中においては右側の分岐ポート23)に第1のガイド部38を設けることが望ましい。
【0028】
このような実施形態によれば、分岐ポート23のうちの少なくとも何れか一方の内面において螺旋状をなして延在する第1のガイド部38と、この第1のガイド部38に連続する螺旋状をなし、分岐前の吸気ポート22の内面に延在する第2のガイド部39とを設けたことにより、スワール方向への吸気の乱れを効率的に発生させることができる。すなわち、例えば、分岐ポート23のポート長が短く形成された吸気ポート22においても、吸気にスワール成分を発生させるためのガイド部の長さを十分に確保することができ、吸気にスワール成分を効率よく発生させることができる。
【0029】
なお、本発明は、以上説明した各実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲内である。例えば、上述の実施形態においては、第1,第2のガイド部をぞれぞれ突条で構成した一例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、凹溝で構成することも可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 … エンジン
10 … シリンダブロック
11 … 気筒
12 … 燃焼室
15 … ピストン
20 … シリンダヘッド
21 … 凹面
22 … 吸気ポート
22a … 副通路
22b … 主通路
23 … 分岐ポート
23a … 吸気ポート開口部
25 … 排気ポート
26 … 分岐ポート
26a … 排気ポート開口部
27 … 吸気弁
28 … 排気弁
30 … 点火プラグ
30a … 点火部
31 … インジェクタ
31a … 噴射口
32 … 隔壁
35 … タンブルジェネレータバルブユニット
35a … タンブルジェネレータバルブ
36 … 吸気通路
37 … ガイド部
38 … 第1のガイド部
39 … 第2のガイド部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの気筒に2つの吸気ポート開口部を備え、吸気ポートの下流側が二股の分岐ポートに分岐して前記各吸気ポート開口部を形成するエンジンの吸気装置において、
前記分岐ポートのうちの少なくとも何れか一方の内面において螺旋状をなして延在する第1のガイド部と、
前記第1のガイド部に連続する螺旋状をなし、分岐前の前記吸気ポートの内面に延在する第2のガイド部と、を備えたことを特徴とするエンジンの吸気装置。
【請求項2】
互いに同一方向の螺旋状に巻回する前記第1のガイド部が前記各分岐ポートに設けられ、
前記吸気ポート開口部が開口する燃焼室の一側から見て前記第1、第2のガイド部の巻回方向外側に位置する一方の前記分岐ポートに設けた前記第1のガイド部の巻回ピッチが、他方の前記分岐ポートに設けた前記第1のガイド部のピッチよりも相対的に小さく設定されていることを特徴とする請求項1記載のエンジンの吸気装置。
【請求項3】
前記吸気ポート開口部が開口する燃焼室の一側から見て前記第2のガイド部の巻回方向外側に位置する一方の前記分岐ポートにのみ前記第1のガイド部を設けたことを特徴とする請求項1記載のエンジンの吸気装置。
【請求項1】
1つの気筒に2つの吸気ポート開口部を備え、吸気ポートの下流側が二股の分岐ポートに分岐して前記各吸気ポート開口部を形成するエンジンの吸気装置において、
前記分岐ポートのうちの少なくとも何れか一方の内面において螺旋状をなして延在する第1のガイド部と、
前記第1のガイド部に連続する螺旋状をなし、分岐前の前記吸気ポートの内面に延在する第2のガイド部と、を備えたことを特徴とするエンジンの吸気装置。
【請求項2】
互いに同一方向の螺旋状に巻回する前記第1のガイド部が前記各分岐ポートに設けられ、
前記吸気ポート開口部が開口する燃焼室の一側から見て前記第1、第2のガイド部の巻回方向外側に位置する一方の前記分岐ポートに設けた前記第1のガイド部の巻回ピッチが、他方の前記分岐ポートに設けた前記第1のガイド部のピッチよりも相対的に小さく設定されていることを特徴とする請求項1記載のエンジンの吸気装置。
【請求項3】
前記吸気ポート開口部が開口する燃焼室の一側から見て前記第2のガイド部の巻回方向外側に位置する一方の前記分岐ポートにのみ前記第1のガイド部を設けたことを特徴とする請求項1記載のエンジンの吸気装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−36358(P2013−36358A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171156(P2011−171156)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
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