説明

エンジンの稼働時間表示装置

【課題】 エンジンの稼働時間を正確に計測可能にし、発光ダイオードを用いて表示手段をシンプルかつ安価に構成可能にする。
【解決手段】 発電コイル11が誘起するパルスをパルス感知手段18により感知し、パルス感知手段18によるパルス感知出力に基づきエンジンの稼働時間をエンジン稼働時間計測手段19によって計測し、エンジン稼働時間計測手段19によって計測されたエンジン稼動時間が設定時間に達するごとに、点灯出力手段20がタイマー設定された一定時間内において発光ダイオード17aを点灯させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、草刈機、チェンソー、車両などのエンジンの稼動時間表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーシングカーなどには、エンジンの稼働時間を積算して表示するエンジンアワーメータと呼ばれるエンジン稼働時間積算計が設置される。該エンジン稼働時間積算計は、エンジンの稼働時間を稼働時間積算手段において積算し、積算した結果を表示装置に表示させるというものである。前記エンジン稼働時間積算計はエンジンの稼働状態を知る上で利用価値が大である。
また、前記エンジン稼働時間積算計によれば、計測したエンジンの稼働時間の積算値をそのエンジンのメンテナンス、オイル交換、排ガス測定などを実施するタイミングの目安として用いることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のエンジンの稼働時間積算計は、エンジンが稼動した時間を積算するための専用の計測器であり、計測結果を液晶表示器などによって表示するものであるため、物理的にある程度以上の小型化(縮小化)が困難であるほか、高価になるという不都合があった。
【0004】
本発明は前記のような従来の問題点に着目してなされたもので、エンジンの稼働時間情報をエンジンのストップ回路から得ることで、エンジンの稼働時間を正確に計測できるとともに、表示手段をシンプルかつ安価に構成できるエンジンの稼働時間表示装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的達成のため、本発明にかかるエンジンの稼働時間計数装置は、エンジンの点火装置用電源を構成する発電コイルと該発電コイルの誘起電圧を接地または短絡する失火操作用のストップスイッチとの間に接続されるエンジンの稼動時間表示装置であって、前記発電コイルが磁石を持つロータの回転によって誘起するパルスを感知するパルス感知手段と、該パルス感知手段によるパルス感知出力に基づきエンジンの稼働時間を計測するエンジン稼働時間計測手段と、エンジン稼働時間計測手段によって計測されたエンジン稼動時間が設定時間に達するごとに点灯信号を出力し、発光ダイオードをタイマー設定された一定時間点灯させる点灯出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
前記構成により、発電コイルから得られた発電パルスによりエンジンの稼働時間を計測し、設定時間ごとに一定時間内で作業者や運転者等に対し計測したエンジンの稼働時間を発光ダイオードの点灯や点滅によって報知し、これによりエンジンのメンテナンス、エンジンオイルの交換、排ガス測定などのタイミングであることを作業者や運転者等に認知させることができる。
【0007】
また、本発明にかかるエンジンの稼働時間計数装置は、前記点灯出力手段が、前記発光ダイオードを一定時間点灯保持させるタイマーと、該タイマーをリセットするリセットスイッチとを有することを特徴とする。
【0008】
前記構成により、作業者や運転者等がエンジンの稼働時間を発光ダイオードによる表示によって確認した後も、この発光ダイオードが引き続き点灯することを、前記スイッチによるタイマーのリセットによって中止できる。
【0009】
また、本発明にかかるエンジンの稼働時間計数装置は、前記稼働時間の表示を指示する際スイッチの長押し操作によって前記発光ダイオードを点灯させ、該点灯後に前記スイッチを設定回数短押しすることによって前記発光ダイオードをある回数分点灯させることで表示の受付けを確認し、この確認のための点灯に続いてエンジン稼働時間を100桁、10桁、1桁ごとに1つの発光ダイオードの点灯回数によって表示させることを特徴とする。
【0010】
前記構成により、スイッチの特別の操作に対する応答を発光ダイオードの点灯によって確認しながら1個の発光ダイオードの同一時間をおいての点灯回数に基づき直視的にエンジンの稼働時間を作業者や運転者等に認知させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エンジンの稼働時間情報をエンジンの点火装置を構成する発電コイルから得ることで、エンジンの稼働時間を正確に計測できるとともに、発光ダイオードを用いてエンジンの稼働時間表示装置をシンプルかつ安価に構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態によるエンジンの稼働時間表示装置を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態によるエンジンの稼働時間表示装置を備えたエンジンストップ回路を示すブロック図、図2は、図1におけるエンジンの稼働時間表示装置を示すブロック図、図3は、本発明におけるエンジン稼働時間の表示時間およびスイッチ入力を示すタイミングチャート、図4は、本発明におけるエンジン稼動時間表示のためのスイッチ入力および発光ダイオードによる点灯応答表示を示すタイミングチャート、図5は、図4に示す発光ダイオードによる点灯応答表示に続いて表示される稼働時間表示出力を示すタイミングチャート、図6は、エンジン稼動時間表示終了時のスイッチ入力および発光ダイオードの表示出力を示すタイミングチャートである。
【0013】
エンジンストップ回路は、図1に示すように、発電コイル11に設けられたストップ端子12と、該ストップ端子12にリード接続されたストップスイッチ13を含む。発電コイル11はコア14に巻装されて、エンジンの回転により駆動される磁石付きのロータを近傍に有する。従って、磁石の回転によって発電コイル11には電圧が誘起され、誘起された電圧は制御された所定のタイミングでエンジンの点火装置に供給される。
【0014】
一方、ストップスイッチ13はオン操作時に発電コイル11が誘起した電圧を接地することによって、点火装置への点火エネルギの供給を阻止でき、エンジンを急速停止させることができる。
【0015】
ストップスイッチ13は、草刈機やチェンソーなどにおいて手元操作が容易となる握り部付近に設置される。
【0016】
前記エンジンストップ回路のストップ端子12とストップスイッチ13との間には表示装置15が接続されている。この表示装置15は、表示制御部16と表示部17とからなる。
【0017】
これらのうち前記表示制御部16は、磁石を持つロータの回転によって発電コイル11が誘起するパルスを感知する図2に示すようなパルス感知手段18と、パルス感知手段18によるパルスの感知出力に基づきエンジンの稼働時間を計測するエンジン稼働時間計測手段19と、該エンジン稼働時間計測手段19にて得られたエンジンの稼働時間信号を点灯出力として出力する点灯出力手段20と、を備えている。
【0018】
一方、表示部17は、1個の発光ダイオードを有する。また、点灯出力手段20には発光ダイオード17aの点灯(駆動)状態を保持するタイマーをリセットして途中で停止させることができるリセットスイッチ20aが設けられている。
【0019】
次に、動作を説明する。表示制御部16は発電コイル11を含むエンジン点火回路の途中に接続されており、発電コイル11の誘起電圧を直接受けて動作する。従って、表示制御部16のパルス感知手段18はエンジンの運転を知らせる。つまりエンジン稼働時間中に発生するパルスを感知する。なお、このパルスは他の雑音パルスから分離して得られ、かつ波形整形処理された矩形波パルスである。
【0020】
前記エンジン稼働時間計測手段19は、マイクロプロセッサ(CPU)からなり、前記パルスを感知することによってエンジンの稼働時間を計算し、例えばその稼働時間の積算値が設定時間となるごとに、1つの発光ダイオード17aを一定時間点灯させるように機能する。
【0021】
前記エンジン稼働時間計測手段19にはメモリ19aが接続されており、前記稼働時間の積算値データを記憶し、必要に応じて積算値データを読み出して表示部17に表示させることができる。
【0022】
また、前記エンジン稼働時間計測手段19には、前記設定時間および一定時間とともに前記計算等を実行するためのプログラムが格納されている。従って、草刈機や車両等の作動中や運搬中に作業者や運転者がエンジンの稼働時間を知りたい場合に、スイッチ21をオン操作する。
【0023】
前記により、前記CPUの制御下で、パルス感知手段18は発電コイル11の出力パルスを波形整形した矩形波パルスを感知する。この感知されたパルスに基づき、エンジン稼働時間計測手段19はエンジンの稼働時間を積算し、この積算値はメモリ19aに逐次記録されるとともに、点灯出力手段20へ入力される。
【0024】
前記点灯出力手段20は、エンジンの稼動時間Aがタイマー20bにて設定された例えば100時間に達するごとに、時間Bの、例えば3時間だけ発光ダイオード17aを点灯させる。図3(a)はこの状況を示す。この図3(a)に示すようなタイミングによる発光ダイオード17aの点灯によって、エンジンのメンテナンス、オイル交換、排ガス測定などのタイミングまたは指示を、作業者や運転者に知らしめることができる。
【0025】
前記の場合において、作業者や運転者等がエンジンのメンテナンス等のタイミングであることを確認した後も、時間B内で発光ダイオード17aが点灯を続ける。このため、この点灯状態が煩わしいい場合がある。そこで、このようなエンジンのメンテナンス等のタイミングを確認した後は、作業者はリセットスイッチ20aをオン操作することにより消灯させることができる。
【0026】
図3(b)はリセットスイッチ20aのオン状態を示し、該リセットスイッチ20aのオンによれば発光ダイオード17aの点灯状態は直ちに消灯状態にリセットされ、結果として点灯時間は図3(c)に示すようにBからB1に短縮される。
【0027】
前記実施の形態では、前述のように100時間ごとに発光ダイオード17aが3時間以内で点灯するため、前回のエンジン稼働時間(100時間)後再び100時間を経過したことを作業者や運転者に認識させることができる。なお、図3(b)に示すように、発光ダイオード17aの点灯時以外の期間でのスイッチ操作によっては、時間Bに変化を生じさせることはない。
【0028】
一方、エンジンの稼働時間の積算値を知りたい場合には、スイッチ21を長押し、つまりスイッチ21を図4(a)に示すように時間C以上の間オン操作する。前記長押しを受け、図4(b)に示すように時間Dの間点灯によって応答表示が行われる。
【0029】
続いて、作業者や運転者は図4(a)に示すように、スイッチ21を3回短押しする。該短押しが正しく行われた場合には、発光ダイオード17aは図4(b)に示すように再び3回の点灯(点滅)を行うことによって、続く稼働時間表示を了解する旨の応答を作業者や運転者に返す。
【0030】
前記応答に続いて、エンジン稼動時間計測手段19は、これまでのエンジン稼働時間の積算値をメモリ19aから読み出して、点火出力手段20から1個の発光ダイオード17aに転送する。この場合においては、エンジン稼働時間計測手段19は、一定時間内に得られる発光ダイオード17aの点灯回数(パルス数)に基づき、例えば100桁、10桁、1桁ごとにエンジン稼働時間を作業者や運転者に認知させることができる。
【0031】
前記エンジン稼働時間計測手段19が点灯出力手段20を通して実施するダイオード17aによる稼働時間の表示例を、図5(a)、(b)に示す。図5(a)では、稼働時間の234時間を、発光ダイオード17aが2回点灯することによって最初の100桁の数字「2」と、所定時間をおいて3回点灯することによって次の10桁の数字数字「3」と、さらに所定時間をおいて4回点灯することによって次の1桁の数字「4」によって表す。
【0032】
同様にして、図5(b)に示すように、稼働時間の30時間を、最初の100桁の数字「0」と、所定時間をおいて次の10桁の数字「3」と、所定時間をおいて次の1桁の数字「0」とによって表すことができる。なお、ここで100桁および1桁の「0」と無信号時のゼロレベル(消灯)とを差別化するために、「0」は出力パルス幅を長く設定している。
【0033】
前記ようにして、発光ダイオード17aを一定期間ごとに繰り返し点滅(オン/オフ)させることにより、各桁(3桁以上も含む)の数値(稼働時間)を1個の発光ダイオード17aで表示することができる。
【0034】
また、稼動時間をリセットしたい場合は、例えば作業者や運転者等は、図6(a)に示すように、スイッチ21を3回短押しする。これにより、発光ダイオード17aは図6(b)に示すように、時間Eの間連続的に点灯する。そこで作業者や運転者等がその時間E内にスイッチ21を5回短押しする。
【0035】
その結果、発光ダイオード17aは、図6(a)に示すように、5回点滅し、前記稼働時間の表示がリセットされる。このように複雑な処理とするのは簡単に稼働時間をリセットできないようにするためである。
【0036】
前記の本実施の形態では、発電コイル11が磁石を持つロータの回転によって誘起するパルスをパルス感知手段18により感知し、該パルス感知手段18によるパルス感知出力に基づきエンジンの稼働時間をエンジン稼働時間計測手段19によって計測し、エンジン稼働時間計測手段19によって計測されたエンジン稼動時間が設定時間に達するごとにタイマー設定された一定時間内において発光ダイオード17aを点灯させる構成とした。
【0037】
従って、発電コイル11から得られた発電パルスのパルス数からエンジンの稼働時間を求め、設定時間になると一定時間内で作業者や運転者等に対し求めたエンジンの前記稼働時間を発光ダイオード17aの点灯によって報知し、エンジンのメンテナンス、エンジンオイルの交換、排ガス測定などのタイミングであることを作業者や運転者等に認知させることができる。また、高価な液晶パネルなどを用いずに、表示部17を単一の発光ダイオード17aによって構成することで、稼働時間表示装置をシンプルかつ安価に構成できる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、単一の発光ダイオードを用いて表示手段をシンプルかつ安価に構成できるという効果を有し、草刈機、チェンソー、車両などのエンジンの稼動時間表示装置等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態によるエンジンの稼働時間表示装置を備えたエンジンストップ回路を示すブロック図である。
【図2】図1におけるエンジンの稼働時間表示装置を示すブロック図である。
【図3】本発明におけるエンジン稼働時間の表示時間およびスイッチ入力を示すタイミングチャートである。
【図4】本発明におけるエンジン稼動時間表示のためのスイッチ入力および発光ダイオードによる点灯応答表示を示すタイミングチャートである。
【図5】図4に示す発光ダイオードによる点灯応答表示に続いて表示される稼働時間表示出力を示すタイミングチャートである。
【図6】エンジン稼動時間表示終了時のスイッチ入力および発光ダイオードの表示出力を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0040】
11 発電コイル
12 ストップ端子
13 ストップスイッチ
14 コアー
15 表示装置
16 表示制御部
17 表示部
17a 発光ダイオード
18 パルス感知手段
19 エンジン稼動時間計測手段
19a メモリ
20 点灯出力手段
20a リセットスイッチ
21 スイッチ
20b タイマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの点火装置用電源を構成する発電コイルと該発電コイルの誘起電圧を接地または短絡する失火操作用のストップスイッチとの間に接続されるエンジンの稼動時間表示装置であって、前記発電コイルが磁石を持つロータの回転によって誘起するパルスを感知するパルス感知手段と、該パルス感知手段によるパルス感知出力に基づきエンジンの稼働時間を計測するエンジン稼働時間計測手段と、エンジン稼働時間計測手段によって計測されたエンジン稼動時間が設定時間に達するごとに点灯信号を出力し、発光ダイオードをタイマー設定された一定時間点灯させる点灯出力手段と、を備えることを特徴とするエンジンの稼働時間表示装置。
【請求項2】
前記点灯出力手段が、前記発光ダイオードを一定時間点灯保持させるタイマーと、該タイマーをリセットするリセットスイッチとを有することを特徴とする請求項1に記載のエンジンの稼働時間表示装置。
【請求項3】
前記稼働時間の表示を指示する際スイッチの長押し操作によって前記発光ダイオードを点灯させ、該点灯後に前記スイッチを設定回数短押しすることによって前記発光ダイオードをその短押し回数分点灯させることで表示の受付けを確認し、この確認のための点灯に続いてエンジン稼働時間を100桁、10桁、1桁ごとに1つの発光ダイオードの点灯回数によって表示させることを特徴とする請求項1に記載のエンジンの稼働時間表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−107350(P2010−107350A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279467(P2008−279467)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000215187)追浜工業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】