説明

エンジンパッケージの始動システム、ガスタービンエンジンパワープラントシステムおよびこれを始動する方法

【課題】2つのエンジンを有する航空機用ガスタービンエンジンの始動を改善する。
【解決手段】2つのエンジンパッケージENG1,ENG2は、空気および補助電力の搭載ソースを提供する、補助動力装置(APU)、電気エアサイクルマシン(eACM)、あるいは他の動力源などの動力源60と流体的に連通している。代替的に或いはこれに加え、エンジン始動・クロスブリードエンジンバルブ66A,66B、外部ソースポート68などを介して空気を得ることができる。地上/空気切換弁80の位置によって、クロスブリードエンジンバルブ66A,66Bあるいは外部ソースポート68のいずれかが選択される。一方のエンジンパッケージENG1,ENG2が作動しているときにクロスブリードエンジンの始動が行われ、作動しているエンジンパッケージENG1,ENG2からのブリードエアを使って、他方のエンジンパッケージENG1,ENG2が始動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンエンジンに関し、詳しくは、ガスタービンエンジンの始動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンから動力を得る回転翼航空機などの航空機においては、補機ギアボックスを介して作動する空気式または電動式のスタータ・モータが利用されることが多い。エンジンハウジングに取り付けられているロータ補機ギアボックスは、一般に、一定の回転速度で作動する出力シャフトによって駆動される。回転翼航空機のような航空機においては、ロータ補機ギアボックスに一般に接続されている補機としては、オイル昇圧ポンプ、エンジン過速度調整器およびタコメータ・ジェネレータなどがある。ロータ補機ギアボックスは、一般に、エンジンハウジングに取り付けられており、シャフトおよび歯車列を介して段に接続されている。回転翼航空機などの航空機においては、ロータ補機ギアボックスに一般に接続されている補機としては、エンジンメインオイルポンプ、燃料制御装置、スタータ・ジェネレータおよびガスプロデューサ・ジェネレータなどがある。
【0003】
スタータ・モータが補機ギアボックスを駆動すると、この補機ギアボックスは、ガスタービンエンジンに動力を伝える。この補機ギアボックスは、さらに、エンジンオルタネータを回転させ、これによって、エンジン電気システムに電流が供給される。エンジン点火スイッチがOFFにされるか或いはスタータ・モータのドロップアウトが生じるまで、エンジンの点火が続けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような構成は、有効ではあるが、比較的大きなパッケージ空間を占有することがあり、また、複数のスタータ・モータおよび補機ギアボックス部品に一因して、重量が大きいという欠点がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一つの態様では、高圧スプールを有するエンジンパッケージの始動システムは、空気流を発生させる動力源を含む。この動力源と流体的に連通しているノズルシステムが、高圧スプールへ空気を導いて該高圧スプールを回転させるように作動する。
【0006】
本発明の一つの態様では、ガスタービンエンジンパワープラントは、高圧スプールおよび低圧スプールを有するエンジンパッケージを含む。空気を発生させる動力源と、この動力源と流体的に連通しているノズルシステムと、を備え、このノズルシステムは、高速スプールへ空気を導いて該高速スプールを回転させるように作動する。
【0007】
発明の一つの態様では、高圧スプールおよび低圧スプールを有するガスタービンエンジンパワープラントシステムを始動する方法は、エンジンパッケージのノズルシステムに空気を供給して高圧スプールを着火に至るまで回転させ、着火後は、低圧スプールのみを使って補機システムを駆動することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に使用される例示的な回転翼航空機の斜視図。
【図2】回転翼航空機の駆動システムの概略図。
【図3】始動システムの一実施例を概略的に示すブロック図。
【図4】圧縮機ケース区域内に配置され、高圧スプールを点火速度まで駆動するノズルシステムの概略図。
【図5】補機システムを概略的に示すブロック図。
【図6】始動システムの他の実施例の概略を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、メインロータシステム12を有する回転翼航空機10を概略的に示す。このような航空機10の機体14から延びているテール16にアンチトルクシステム18が取り付けられている。メインロータシステム12は、メインロータギアボックス(MGB)20を介して、マルチエンジンパワープラントシステム22(ここでは、2つのエンジンパッケージENG1,ENG2を有する(図2))によって、回転軸Aを中心として駆動される。マルチエンジンパワープラントシステム22は、航空機の飛行に利用可能な動力を発生させ、この動力を、MGB20を介して、メインロータシステム12およびアンチトルクシステム18に伝える。開示した実施例においては、特定のヘリコプタの構成を図示して説明しているが、固定翼航空機、補助並進推力システムを備える高速複式回転翼航空機、ターボプロップ航空機およびティルトロータ航空機の用途などの他の構成および/または機械にも、本発明は適用できる。
【0010】
図3は、マルチエンジンパワープラントシステム22の始動システム26を概略的なブロック図で示している。この例示的な一実施例における各エンジンパッケージENG1、ENG2は、フリーパワー(free power type)ターボシャフトエンジンであり、各エンジンの運転には、2つの機械的に独立した内部の段が関係している。開示した一実施例においては、特定の2スプール式ターボシャフトエンジンパッケージを概略的に示しているが、この開示は、他のガスタービンエンジンの構成にも適用可能であることを理解されたい。
【0011】
各エンジンパッケージENG1、ENG2のエンジンケース28内に、エンジンの回転軸Xを中心として(一般に互いに反対方向に)回転する高圧スプール30および低圧スプール40が収容されている。一実施例においては、高圧スプール30には、軸流圧縮機ロータ32、遠心圧縮機ロータ34、および軸流高圧タービン36が含まれる。低圧スプール40には、出力タービンロータ42と、MGB20に接続された出力シャフト44と、が含まれる。燃焼器50は、一般に、遠心圧縮機ロータ34と軸流高圧タービン36との間に配置されている。
【0012】
2つのエンジンパッケージENG1,ENG2は、機上の空気源や補助電力源となる、補助動力装置(APU)、電気エアサイクルマシン(eACM)、あるいは他の動力源などの動力源60と流体的に連通している。代替的に或いはこれに加え、エンジン始動・クロスブリードエンジンバルブ66A,66B、外部ソースポート68などを介して空気を得ることもできる。地上/空気切換弁80の位置によって、クロスブリードエンジンバルブ66A,66Bあるいは外部ソースポート68のいずれかが選択される。一方のエンジンパッケージENG1,ENG2が作動しているときにクロスブリードエンジン始動がなされ、作動しているエンジンパッケージENG1,ENG2からのブリードエアを使って、他方のエンジンパッケージENG1,ENG2が始動される。外部ソースポート68は、高圧空気カートあるいは他の航空機などの外部ソースからのブリードエアラインの接続点を提供する。地上/空気切換弁80を使って、外部始動用高圧空気ポート68または動力源60のいずれかを選択することができる。
【0013】
外部始動用高圧空気ポート68あるいは動力源60は、遮断弁62を介して、エンジンケース構造体28内のノズルシステム64に空気を供給する。この遮断弁62は、クロスブリードエンジンバルブ66A,66Bの位置によってクロスエンジン始動を選択することによって、2つのエンジンパッケージENG1,ENG2のいずれかに選択的に空気流を供給することができる。この遮断弁62は、また、クロスブリードエンジン始動用の動力源60あるいは外部ソースポート68からの流れを遮断する。
【0014】
ノズルシステム64は、エンジンケース構造体28のケース区域28A内に配置され、この付近で、高圧スプール30を点火速度以上まで駆動するように構成されている。すなわち、ノズルシステム64は、回転軸Xの周りに配置され、高圧スプール30を回転させるように、軸流圧縮機ロータ32、遠心圧縮機ロータ34、軸流高圧タービン36またはこれらの組み合わせに対し、所望の回転方向へ向かって配送される(図4)。このノズルシステム64は、エンジンケースシステム区域28Aの周囲の全体あるいは一部のみに配置された複数のノズル66A,66Bを含み得ることを理解されたい。一実施例においては、ノズルシステム64は、1ppsにおいて40psiの始動用エアを供給することができる。
【0015】
補機システム70は、エンジンメインオイルポンプ、燃料制御装置、発電機、主点火システム、ガスプロデューサ・ジェネレータ、オイル昇圧ポンプ、エンジン過速度調整器、タコメータ・ジェネレータなどの複数の補機類72を含むが、これらに限定しない。これらの必要な補機類72のすべてが低圧スプール40によって駆動され、高圧スプール30に負荷がかからないようにされる(図5)。補機ギアボックス76は、シャフト74を介して低圧スプール40によって駆動されるように、回転軸Xから径方向へ離間してエンジンハウジング28上に配置することができる。代替的に、回転軸Xに沿って出力タービンロータ42の下流に設けられた補機ギアボックス76’によって補機類72が駆動され、この補機ギアボックス76’が出力シャフト44によって直接駆動されるようにしてもよい(図6)。
【0016】
始動時の燃料は、低圧スプール40が主燃料ポンプをサポートするようになるまで、電動始動ポンプ90を使って供給するようにしても良い(図5)。電流は、動力源60が直接駆動するオルタネータなどの電源によって点火装置へ供給することができる。なお、他の燃料供給装置や点火装置、例えば、低圧スプール40の回転速度が主燃料ポンプおよび主点火システムをサポートする速度に上昇するまで、機上で電力を供給するバッテリなどを、代替的に或いは追加的に備えていてもよい。
【0017】
動作を説明すると、動力源60は、エンジンパッケージENG1のノズルシステム64に空気を供給し、高圧スプール30を点火速度以上にまで駆動する。これと同時に、燃料は、動力源60が駆動する始動ポンプ90によって供給され、低圧スプール40が昇圧ポンプおよび主燃料ポンプをサポートするまで継続される。エンジンパッケージENG1が着火した後、このENG1からのクロスブリードによってエンジパッケージENG2を回転させるように、遮断弁62が位置決めされる。あるいは、エンジンパッケージENG2のノズルシステム64へ空気を直接供給し、エンジンパッケージENG2の高圧スプール30を点火速度まで駆動するように、遮断弁62が位置決めされる。
【0018】
このような構成によって、各エンジンパッケージについて空気式または電気式のスタータを設ける必要がなくなり、高圧スプール30の寸法および重量が低減される。従来のシステムと比較して、20%の重量が低減するとともに、コストと信頼性が向上する。
【0019】
特定のステップの手順を示して説明し、特許請求の範囲に記載しているが、これらのステップは、特に示さない限り、別々にされ或いは組み合わされた種々の順序で実行することができ、その場合にも本発明は適用可能である。
【0020】
上記の説明は、範囲を限定するものではなく例示するためのものである。本明細書中に様々な非制限的な実施例を開示したが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく、上記の教示に照らして、本発明の様々な変更や変形がなされ得ることを理解されよう。
【符号の説明】
【0021】
22…マルチエンジンパワープラントシステム
30…高圧スプール
40…低圧スプール
50…燃焼器
60…動力源
68…外部ソースポート
80…地上/空気切換弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧スプールを有するエンジンパッケージの始動システムであって、
空気を発生させる動力源と、
上記動力源と流体的に連通し、上記高圧スプールへ空気を導いて上記高圧スプールを回転させるように作動可能なノズルシステムと、
を備える始動システム。
【請求項2】
上記動力源は、補助動力装置であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
上記動力源は、電気エアサイクルマシンであることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
高圧スプールおよび低圧スプールを有するエンジンパッケージと、
空気を発生させる動力源と、
上記動力源と流体的に連通し、上記高圧スプールへ空気を導いて上記高圧スプールを回転させるように作動可能なノズルシステムと、
を備えるガスタービンエンジンパワープラントシステム。
【請求項5】
上記高圧スプールに軸流圧縮機ロータが含まれ、上記ノズルシステムは、該軸流圧縮機ロータへ上記空気を導くことを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
上記高圧スプールに遠心圧縮機ロータが含まれ、上記ノズルシステムは、該遠心圧縮機ロータへ上記空気を導くことを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
上記高圧スプールに軸流高圧タービンが含まれ、上記ノズルシステムは、該軸流高圧タービンへ上記空気を導くことを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項8】
上記低圧スプールに出力タービンロータが含まれることを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項9】
上記出力タービンロータは、出力シャフトを駆動することを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
上記低圧スプールによって駆動される補機システムをさらに備えることを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
上記低圧スプールによって駆動される補機システムをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
上記ノズルシステムは、エンジンケース構造体内に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
上記ノズルシステムは、少なくとも一部がエンジン回転軸の周囲に配置されていることを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
高圧スプールおよび低圧スプールを有するガスタービンエンジンパワープラントシステムを始動する方法であって、
エンジンパッケージのノズルシステムへ空気を供給して上記高圧スプールを着火まで回転させ、
着火後は、上記低圧スプールのみを使って補機システムを駆動すること、
を含む方法。
【請求項15】
上記エンジンパッケージの始動が完了した後、上記エンジンパッケージからのクロスブリードを使って第2のエンジンパッケージを始動させることをさらに含む請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−7183(P2011−7183A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141141(P2010−141141)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(500107762)ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション (165)
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
【住所又は居所原語表記】One Hamilton Road, Windsor Locks, CT 06096−1010, U.S.A.