説明

エンジン作業機

【課題】ダクトの通気断面積を十分に確保しながら防音効果を高めることができるエンジン作業機を提供する。
【解決手段】エンジン作業機11のケーシング内に、外気を吸引する吸気ダクト17と、ケーシング内の排風を排出する排風ダクト18とを設ける。吸気ダクト17及び排風ダクト18に設けた屈曲部17d,17e,18a,18cに、騒音を吸収する吸音材19,20を充填する。吸音材19,20のダクト内側面を、各ダクト内を流れる外気又は排風を屈曲部の上流側から下流側にガイドするガイド面19a,20aとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音構造のケーシングの内部に、発電機等の作業機と該作業機を駆動するエンジンとを収納したエンジン作業機に係り、詳しくは、ケーシングに吸気ダクトや排気ダクトを備えたエンジン作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
防音型のエンジン作業機,例えばエンジン発電機として、内部に発電機とエンジンとを収納した防音構造を有するケーシングの周壁部に、エンジン燃焼用及び機器冷却用の外気を吸引する吸気ダクトと、昇温した排風を外部に排出するための排風ダクトとを形成するとともに、発電機の騒音レベルを低減させるために各ダクトの内面に吸音材を貼り付けることが行われていた(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、図4に示されるようなエンジン作業機31では、ケーシング32の側壁部に設けた吸気ダクト33や天井部に設けた排風ダクト34に複数の屈曲部33a,34aを形成するとともに、各屈曲部33a,34aの隅角部に、ケーシングの外部から吸入した外気A1やケーシングの内部から排出される排風A2の流れをガイドするための整風部材である整流板35,36をそれぞれ設け、さらに、排風ダクト34に設けた整流板36の内面に、排風音を低減するための吸音材37を貼り付けるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−121244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、防音効果を持たせるために十分な厚さの吸音材を整流板などに貼り付けると、ダクトの通気断面積が小さくなって風量が低下する問題があった。一方、通気断面積を確保するために吸音材の厚さを薄くしすぎると、例えば図4に示すように、騒音B1が吸音材37を通過して整流板36で反射し、吸音効果を十分に得られずに騒音B1が排風ダクト34の排風口から外部に漏れてしまうという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、ダクトの通気断面積を十分に確保しながら防音効果を高めることができるエンジン作業機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のエンジン作業機は、作業機と該作業機を駆動するエンジンとを収納したケーシング内に外気を吸引する吸気ダクトと、ケーシング内の排風を排出する排風ダクトとを備え、前記吸気ダクト及び前記排風ダクトの少なくとも1箇所に屈曲部を形成したエンジン作業機において、前記屈曲部の隅角部に、騒音を吸収する吸音材を充填するとともに、該吸音材のダクト内側面を、各ダクト内を流れる外気又は排風を屈曲部の上流側から下流側にガイドするガイド面としたことを特徴としている。
【0008】
また、前記吸音材は、前記隅角部を頂点とした三角柱形状、あるいは、前記隅角部側に向かって凸となる湾曲面となっていることが好ましい。さらに、前記吸気ダクトは、前記ケーシングの下方でケーシングの外部に開口した吸気入口と、該吸気入口よりも上方でケーシングの内部に開口した吸気出口と、前記吸気入口からケーシングの一側方に向かって水平方向に設けられた下部通路と、該下部通路の端部から上方に向かって屈曲した下部屈曲部と、該下部屈曲部の上部から前記吸気出口の方向に向かって屈曲した上部屈曲部と、該上部屈曲部から前記吸気出口に向かって前記下部通路に平行な方向に設けられた上部通路とを有するとともに、前記下部屈曲部の隅角部に前記下部通路からの外気の流れを前記上部屈曲部に向けてガイドするガイド面を形成した下部吸音材を充填し、前記上部屈曲部の隅角部に前記下部屈曲部からの外気の流れを前記上部通路に向けてガイドするガイド面を形成した上部吸音材を充填し、前記下部吸音材の上端部に下部吸音材のガイド面に沿って流れる外気に同伴された水を外気の流れから分離する水切部材をダクト内部に向けて突設することが好ましい。また、前記吸音材は、軟質ポリウレタンフォームの成形品であると好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエンジン作業機によれば、吸気ダクトや排風ダクトの設けられた屈曲部の隅角部に騒音を吸収する吸音材を充填し、該吸音材のダクト内面側をガイド面としたので、吸音材によって騒音を十分に吸収することができるとともに、ダクトの通気断面積を十分に確保することができる。
【0010】
また、吸音材を三角柱形状に形成することによって成形性の向上が図れ、ガイド面を湾曲面とすることによってダクト内を流れる外気や排風の流れを円滑化することができるとともに、ガイド面での騒音の反射を少なくできる。さらに、下部通路からの外気の流れを上部屈曲部に向けてガイドするガイド面を形成した下部吸音材の上端部に水切部材を突設することにより、下部吸音材のガイド面に沿って流れる外気に同伴された水を外気の流れから効果的に分離することができ、雨水などがケーシング内に浸入することをより確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1形態例を示すエンジン作業機のダクトを示す説明図である。
【図2】図1のII-II断面図である。
【図3】本発明の第2形態例を示すエンジン作業機のダクトを示す説明図である。
【図4】従来のエンジン作業機のダクトを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1及び図2は本発明のエンジン作業機の第1形態例を示すもので、このエンジン作業機11は、ケーシング12内を仕切壁12aにより仕切って機器室13と排風室14とに区画し、機器室13内に発電機や油圧ポンプなどの作業機(図示せず)と、該作業機を駆動するエンジン15とを配置すると共に、仕切壁12aに冷却ファン16aを備えたラジエータ16を配置している。また、ケーシング側壁部には、燃焼用空気や冷却用空気を機器室13内に吸い込むための偏平角筒状の吸気ダクト17が設けられるとともに、ケーシング天井部には、ラジエータ16から排風室14に排出された空気(排風)をケーシング12の外部に排出するための偏平角筒状の排風ダクト18が設けられている。
【0013】
吸気ダクト17は、前記ケーシング12の側壁下方でケーシング12の外部に開口した吸気入口17aと、該吸気入口17aよりも上方で機器室13の内部に開口した吸気出口17bと、前記吸気入口17aからケーシング12の側壁に沿うように一側方に向かって水平方向に設けられた下部通路17cと、該下部通路17cの端部から上方に向かって屈曲した下部屈曲部17dと、該下部屈曲部17dの上部から前記吸気出口17bの方向に向かって屈曲した上部屈曲部17eと、該上部屈曲部17eから前記吸気出口17bに向かって前記下部通路17aに平行な方向に設けられた上部通路17fとを有している。
【0014】
排風ダクト18は、ケーシング天井部に沿って水平方向に設けられており、ケーシング端部側には、排風室14の上端部14aから排風ダクト18に向かって屈曲した第1屈曲部18aが設けられ、ケーシング中央部には、排風ダクト18からケーシング天板の幅方向中央部に開口した排気出口18bに向かって屈曲した第2屈曲部18cが設けられている。
【0015】
前記下部屈曲部17d、上部屈曲部17e、第1屈曲部18a及び第2屈曲部18cの隅角部(入隅部)には、騒音を吸収する機能を備えた吸音材19,20がそれぞれ充填されている。各吸音材19,20は、例えば軟質ポリウレタンフォーム製吸音材や、フォーム材料の表面に皮膜層を形成した皮膜付吸音材などからなるものであって、連続気泡を有する周知の合成樹脂多孔体を用いることができる。下部屈曲部17d、上部屈曲部17e、第1屈曲部18aに配置された吸音材19は、断面が各屈曲部の隅角部を頂点とする二等辺三角形の三角柱状に形成され、各二等辺三角形の底辺部となるダクト内側面は、各ダクト内を流れる外気又は排風を屈曲部の上流側から下流側に向けてガイドする傾斜ガイド面19aとなっている。また、第2屈曲部18cの隅角部に配置された吸音材20は、排風をガイドするダクト内側面が隅角部側に凸となる湾曲面からなる湾曲ガイド面20aとなっている。また、各ダクト17,18を構成するケーシング内面には、従来のように、シート状の吸音材21が貼着されている。
【0016】
このように、ダクトの内部に整流部材を兼ねる吸音材を備えたエンジン作業機11において、冷却ファン16aの作用によって吸気入口17aから吸気ダクト17の下部通路17cに吸引された外気A1は、下部屈曲部17dの底面17gから側面17hに向けて上昇した上向きの傾斜ガイド面19aにガイドされ、さらに、上部屈曲部17eの側面17hから上面17iに向けて上昇した下向きの傾斜ガイド面19aにガイドされ、上部通路17fを通って吸気出口17bからケーシング12の機器室13内に流入する。また、冷却ファン16aの作用によってラジエータ16から排風室14に排出された排風A2は、排風室14を上昇して第1屈曲部18aの外側面18dから排風ダクト18の上面18eに向かって上昇した下向きの傾斜ガイド面19aにガイドされて排風ダクト18を水平方向に流れ、第2屈曲部18cの下面18fから排気出口18bに向かって湾曲した湾曲ガイド面20aにガイドされて排気出口18bからケーシング12の外部に排出される。
【0017】
そして、各屈曲部17d,17e,18a,18cに配置された吸音材19,20に十分な厚みを持たせることができるので、エンジン15などの機器の運転音、吸気音や排気音といった騒音B1を、各吸音材19,20によって効果的に吸収することができるとともに、傾斜ガイド面19aで反射する騒音量も少なくでき、吸気入口17aや排気出口18bからケーシング12の外部に漏れる騒音のレベルを十分に下げることができる。特に、第2屈曲部18cに配置した吸音材20のガイド面を湾曲ガイド面20aとすることにより、湾曲ガイド面20aで騒音B1が反射したとしても、反射した騒音が排気出口18bから外部に漏れる量を少なくすることができる。
【0018】
また、各吸音材19,20のダクト内側面をガイド面19a,20aとし、各吸音材19,20が、各ダクト17,18内を流れる外気又は排風を各屈曲部17d,17e,18a,18cの上流側から下流側にガイドする整流部材を兼ねるようにしているので、吸気ダクト17内を流れる外気や排風ダクト18内を流れる排風の流れを上流側から下流側へ効果的にガイドすることができる。さらに、各吸音材19,20におけるガイド面19a,20aの位置を、従来の整流板と同等の位置に設定することにより、十分な厚みを有する吸音材19,20を使用しても、ダクトの通気断面積を十分に確保することができる。
【0019】
さらに、吸気入口17aから吸引された外気A1に同伴され、下部屈曲部17dに充填した吸音材19の傾斜ガイド面19aに沿って外気と共に上昇する水(雨水)R1は、傾斜ガイド面19aから吸音材19の内部に浸入し、外気の流れから分離された状態で下方に流下し、下部通路17cの底面部の適宜な位置に設けた排水口(図示せず)からケーシング12の下方に排出される。
【0020】
図3は、本発明の第2形態例を示すもので、第1形態例と同様の構成要素を示すものには、同一の符号をそれぞれ付して、その詳細な説明は省略する。本形態例に示す吸気ダクト17では、下部屈曲部17dに配置した吸音材19の上端部に、吸気ダクト17の内部に向けて突出した水切部材22を設けている。
【0021】
このような水切部材22を設けることにより、吸気入口17aから吸引された外気A1に同伴され、下部屈曲部17dに充填した吸音材19の傾斜ガイド面19aに沿って外気と共に上昇する水(雨水)R1を水切部材22によって外気の流れから確実に分離することができ、上部通路17fを通って吸気出口17bから機器室13内に雨水が浸入することをより確実に防止できる。
【0022】
尚、本発明は、上述の各形態例に限るものではなく、ダクトの形状は任意であり、整流部材を兼ねる吸音材は、ダクトの形状、特に屈曲部の形状に応じて任意の位置に任意の形状で設けることが可能である。また、吸音材のガイド面(ダクト内側面)の形状を凹凸面とすることもできる。
【符号の説明】
【0023】
11…エンジン作業機、12…ケーシング、12a…仕切壁、13…機器室、14…排風室、14a…上端部、15…エンジン、16…ラジエータ、16a…冷却ファン、17…吸気ダクト、17a…吸気入口、17b…吸気出口、17c…下部通路、17d…下部屈曲部、17e…上部屈曲部、17f…上部通路、17g…底面、17h…側面、17i…上面、18…排風ダクト、18a…第1屈曲部、18b…排気出口、18c…第2屈曲部、18d…外側面、18e…上面、18f…下面、19,20,21…吸音材、19a…傾斜ガイド面、20a…湾曲ガイド面、22…水切部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機と該作業機を駆動するエンジンとを収納したケーシング内に外気を吸引する吸気ダクトと、ケーシング内の排風を排出する排風ダクトとを備え、前記吸気ダクト及び前記排風ダクトの少なくとも1箇所に屈曲部を形成したエンジン作業機において、前記屈曲部の隅角部に、騒音を吸収する吸音材を充填するとともに、該吸音材のダクト内側面を、各ダクト内を流れる外気又は排風を屈曲部の上流側から下流側にガイドするガイド面としたことを特徴とするエンジン作業機。
【請求項2】
前記吸音材は、前記隅角部を頂点とした三角柱形状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のエンジン作業機。
【請求項3】
前記ガイド面は、前記隅角部側に向かって凸となる湾曲面となっていることを特徴とする請求項1記載のエンジン作業機。
【請求項4】
前記吸気ダクトは、前記ケーシングの下方でケーシングの外部に開口した吸気入口と、該吸気入口よりも上方でケーシングの内部に開口した吸気出口と、前記吸気入口からケーシングの一側方に向かって水平方向に設けられた下部通路と、該下部通路の端部から上方に向かって屈曲した下部屈曲部と、該下部屈曲部の上部から前記吸気出口の方向に向かって屈曲した上部屈曲部と、該上部屈曲部から前記吸気出口に向かって前記下部通路に平行な方向に設けられた上部通路とを有するとともに、前記下部屈曲部の隅角部に前記下部通路からの外気の流れを前記上部屈曲部に向けてガイドするガイド面を形成した下部吸音材を充填し、前記上部屈曲部の隅角部に前記下部屈曲部からの外気の流れを前記上部通路に向けてガイドするガイド面を形成した上部吸音材を充填し、前記下部吸音材の上端部に下部吸音材のガイド面に沿って流れる外気に同伴された水を外気の流れから分離する水切部材をダクト内部に向けて突設したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のエンジン作業機。
【請求項5】
前記吸音材は、軟質ポリウレタンフォームの成形品であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のエンジン作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−241655(P2012−241655A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114358(P2011−114358)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)