説明

エンジン発電装置とその運転方法

【課題】装置そのものを極端に大型化することなく、より大きな電力負荷の投入が可能なエンジン発電装置とその運転方法の提供。
【解決手段】動力源としてのエンジン1と、エンジン1に連動連結されて駆動される発電機2を備え、発電機2からの電力と商用電力を電力負荷7へ給電するように構成され、エンジン1の動力軸1aまたは発電機2の動力軸2aに対しクラッチ4を介して連動連結自在な回転体5を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源としてのエンジンと、そのエンジンに連動連結されて駆動される発電機を備え、その発電機からの電力と商用電力を電力負荷へ給電するように構成されているエンジン発電装置とその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなエンジン発電装置では、電力負荷投入時にエンジンの回転数が急激に低下し、場合によっては、エンジン停止にまで至る可能性がある。
そこで、従来、希薄ガスエンジンにおいて、電力負荷投入時に、通常の燃焼用空気に加えて補充空気を供給し、それによってエンジンの燃焼を安定させて、比較的大きな電力負荷を投入できるようにした技術が提案された(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−50113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献に開示の技術では、投入できる電力負荷に限りがあるため、より大きな電力負荷を投入しようとすると、例えば、エンジンのフライホイールや発電機の回転子の重量を増やして、慣性モーメントを大きくする必要がある。
しかし、単に、重量の増加により慣性モーメントを大きくするだけでは、エンジンの動力軸や発電機の動力軸により大きなねじり力が作用するため、当然、エンジンや発電機の動力軸を太くして強度アップを図る必要があり、それに伴って、動力軸を支持する軸受類も大きなものが必要となって、装置そのものが大型化するという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目したもので、その目的は、装置そのものを極端に大型化することなく、より大きな電力負荷の投入が可能なエンジン発電装置とその運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
その目的を達成するため、本発明において、動力源としてのエンジンと、そのエンジンに連動連結されて駆動される発電機を備え、その発電機からの電力と商用電力を電力負荷へ給電するように構成されているエンジン発電装置の特徴構成は、
前記エンジンの動力軸または前記発電機の動力軸に対しクラッチを介して連動連結自在な回転体を備えているところにある。
【0007】
上記構成によれば、クラッチを入れてエンジンまたは発電機の動力軸に対し回転体を連動連結することで、実質的に、エンジンのフライホイールや発電機の回転子の重量を増やしたのと同じ結果となり、慣性モーメントを大きくすることができる。したがって、より大きな電力負荷の投入が可能となり、また、慣性モーメントを大きくして電力負荷を投入するので、比較的短時間のうちにエンジンの回転数が安定する。
そして、電力負荷の投入後、例えば、エンジンの回転数がある程度安定するのを待って、クラッチを切ってエンジンまたは発電機の動力軸と回転体を切り離して運転することになり、エンジンや発電機の動力軸に対して大負荷が作用する時間を短時間に制限することができ、エンジンや発電機の動力軸を極端に太くして強度アップを図る必要もなく、したがって、装置そのものを極端に大型化することなく、より大きな電力負荷の投入が可能となる。
【0008】
上記構成を備えたエンジン発電装置において、前記回転体が、前記エンジンの動力軸に対し前記クラッチを介して直結されていることが好ましい。
このような構成によれば、たとえ動力軸を若干太くして強度アップを図る必要があっても、実質的にエンジンの動力軸だけで済み、装置の大型化を抑制することができるとともに、最も大型で重量のあるエンジンを中央にして、その両側に発電機と回転体を配置することが可能となり、装置全体として安定した回転を得ることができる。
【0009】
上記構成を備えたエンジン発電装置において、前記クラッチを入れてエンジンまたは発電機の動力軸に対し回転体を連動連結してエンジンを運転する第1運転状態と、前記クラッチを切ってエンジンまたは発電機の動力軸と回転体を切り離して運転する第2運転状態とに切り換える切り換え手段を備えていることが好ましい。
このような構成によれば、切り換え手段が、クラッチの入り切り操作を自動的に行って、第1運転状態と第2運転状態との切り換えを的確に実行することになり、エンジンや発電機の動力軸に対して大負荷が作用する時間を必要最小限に抑えることができ、その結果、装置の大型化を更に抑制することができる。
【0010】
そして、上記切り換え手段を備えたエンジン発電装置の運転方法の特徴構成は、
前記発電機からの電力のみを電力負荷へ給電する際、前記第1運転状態で運転し、その後、電力負荷への給電を開始して発電機の発電周波数が安定した後、前記第2運転状態で運転するところにある。
【0011】
上記運転方法によれば、発電機からの電力のみを給電する場合、第1運転状態で運転するので、つまり、エンジンまたは発電機の動力軸に回転体を連動連結して運転するので、慣性モーメントが大きくなって大きな電力負荷の投入が可能となり、また、比較的短時間のうちにエンジンの回転数の安定化を図ることができる。
そして、発電機の発電周波数が安定した後、第2運転状態で運転するので、つまり、エンジンまたは発電機の動力軸と回転体を切り離して運転するので、比較的小さな負荷状態となり、その結果、エンジンや発電機の動力軸に対して大負荷が作用する時間を短時間に制限することができる。
【0012】
上記エンジン発電装置の運転方法において、前記発電機からの電力と商用電力を電力負荷へ給電する際、前記第2運転状態で電力負荷への給電を開始するのが好ましい。
電力負荷に対し発電機からの電力に加えて商用電力も給電される場合、その商用電力が、投入される電力負荷の一部を負担するので、エンジン発電装置を第2運転状態で運転して給電を開始しても、エンジンが大きな影響を受けることはなく、エンジン回転数の低下が抑制され、その結果、エンジンまたは発電機の動力軸に不必要な負荷が作用するのを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態のエンジン発電装置を示す概略構成図
【図2】第2実施形態のエンジン発電装置を示す概略構成図
【図3】エンジン発電装置の運転方法を示すフローチャート図
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
本発明によるエンジン発電装置とその運転方法につき、その第1実施形態を図面に基づいて説明する。
第1実施形態によるエンジン発電装置は、図1に示すように、動力源としてのエンジンの一例であるガスエンジン1と、そのガスエンジン1により駆動される発電機2を備え、ガスエンジン1の動力軸1aと発電機2の動力軸2aが、カップリング3を介して直結状態で連動連結されている。
ガスエンジン1は、13Aなどの都市ガスを燃料として運転されるもので、そのガスエンジン1の動力軸1aには、クラッチ4を介して回転体5の回転軸5aが直結状態で連動連結され、最も大型で重量のあるガスエンジン1を中央にして、発電機2と回転体5が、そのガスエンジン1の両側に配置されている。
【0015】
回転体5は、ガスエンジン1および発電機2の慣性モーメントを増大させるもので、クラッチ4を入り操作することで、ガスエンジン1の動力軸1aと連動連結されて一体的に回転し、クラッチ4を切り操作することで、ガスエンジン1の動力軸1aと切り離されて連動が絶たれるように構成されている。
回転体5は、その慣性モーメントを種々の条件に対応して設定することになるが、一例を挙げると、ガスエンジン1の慣性モーメントの30%程度、発電機2の慣性モーメントの20〜30%程度に設定するのが好ましい。この程度の慣性モーメントに設定することにより、ガスエンジン1や発電機2の運転に大きな悪影響を及ぼすことなく、所望する慣性モーメントを得ることができる。
【0016】
発電機2により発電される電力は、商用電力系統6からの商用電力と一緒に電力負荷7へ給電されるように構成され、発電機2と電力負荷7が、第1遮断機8を介して接続されるとともに、商用電力系統6と電力負荷7が、第2遮断機9と第1遮断機8を介して接続されている。
このエンジン発電装置は、制御装置10による制御の基で運転され、クラッチ4を入れてガスエンジン1の動力軸1aに対し回転体5を連動連結してガスエンジン1を運転する第1運転状態と、クラッチ4を切ってガスエンジン1の動力軸1aと回転体5を切り離して運転する第2運転状態とに切り換えるように構成され、制御装置10が、そのための切り換え手段として機能する。
【0017】
(第2実施形態)
つぎに、第2実施形態について説明するが、重複説明を避けるため、第1実施形態で説明した構成については、同じ符号を付すことで説明を省略し、主として第1実施形態と異なる構成について説明する。
第2実施形態のエンジン発電装置は、図2に示すように、回転体5の回転軸5aが、ガスエンジン1の動力軸1aではなく、発電機2の動力軸2aにクラッチ4を介して直結状態で連動連結されている。そのため、発電機2を中央にして、ガスエンジン1と回転体5が、その発電機2の両側に配置されることになり、発電機2が大型で重量のある場合、このような配置にすることで、装置全体として安定した回転を得ることができる。
そして、この第2実施形態においては、切り換え手段としての制御装置10が、クラッチ4を入れて発電機2の動力軸2aに対し回転体5を連動連結してガスエンジン1を運転する第1運転状態と、クラッチ4を切って発電機2の動力軸2aと回転体5を切り離して運転する第2運転状態とに切り換えることになる。
【0018】
つぎに、第1と第2実施形態によるエンジン発電装置の運転方法に関し、商用電力系統からの給電を受けない場合と受ける場合について、その負荷電力投入時の運転方法について説明する。
【0019】
[商用電力系統からの給電を受けない場合の負荷電力投入]
電力負荷7に対して発電機2からの電力のみで給電を開始する際、例えば、商用電力系統6が停電した際には、エンジン発電装置を第1運転状態で運転する。
具体的には、図3に示すように、商用電力系統6からの信号情報に基づいて、制御装置10が、クラッチ4を入り操作し、第1実施形態ではガスエンジン1の動力軸1aと回転体5を連動連結し、第2実施形態では発電機2の動力軸2aと回転体5を連動連結して、ガスエンジン1を始動して運転し、それによって、発電機2が駆動される。
その後、第1遮断機8を入り操作して電力負荷を投入し、電力負荷7に対する発電機2からの電力供給が開始される。そして、発電機2において、その発電周波数が所定の周波数になって安定すると、制御装置10が、クラッチを切り操作し、第1運転状態を終了して、第2運転状態に切り換える。
【0020】
[商用電力系統からの給電を受ける場合の負荷電力投入]
それに対し、電力負荷7に対して発電機2からの電力と商用電力系統6からの商用電力との両電力で給電を開始する際には、当初から第2運転状態で運転する。
すなわち、制御装置10が、クラッチ4を切り操作し、第1実施形態ではガスエンジン1の動力軸1aと回転体5を切り離し、第2実施形態では発電機2の動力軸2aと回転体5を切り離してガスエンジン1を始動するとともに、電力負荷7に対して発電機2からの給電を開始し、かつ、続行することになる。
【0021】
〔別実施形態〕
(1)先の実施形態では、回転体5が、クラッチ4を介してガスエンジン1の動力軸1aまたは発電機2の動力軸2aに対して直結された構成を示したが、例えば、回転体5とガスエンジン1の動力軸1aまたは発電機2の動力軸2aとを複数のギヤや回転軸を介して連動連結し、その間にクラッチ4を設けて実施することもできる。
(2)先の実施形態では、切り換え手段としての制御装置10によって、第1運転状態と第2運転状態とに自動的に切り換える構成を示したが、人為操作によって第1運転状態と第2運転状態とに切り換えるように構成して実施することもできる。
また、エンジン1としては、特にガスエンジンに限るものではなく、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの各種のエンジンを使用して実施することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 エンジン
1a エンジンの動力軸
2 発電機
2a 発電機の動力軸
4 クラッチ
5 回転体
7 電力負荷
10 切り換え手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源としてのエンジンと、そのエンジンに連動連結されて駆動される発電機を備え、その発電機からの電力と商用電力を電力負荷へ給電するように構成されているエンジン発電装置であって、
前記エンジンの動力軸または前記発電機の動力軸に対しクラッチを介して連動連結自在な回転体を備えているエンジン発電装置。
【請求項2】
前記回転体が、前記エンジンの動力軸に対し前記クラッチを介して直結されている請求項1に記載のエンジン発電装置。
【請求項3】
前記クラッチを入れてエンジンまたは発電機の動力軸に対し回転体を連動連結してエンジンを運転する第1運転状態と、前記クラッチを切ってエンジンまたは発電機の動力軸と回転体を切り離して運転する第2運転状態とに切り換える切り換え手段を備えている請求項1または2に記載のエンジン発電装置。
【請求項4】
請求項3に記載のエンジン発電装置の運転方法であって、
前記発電機からの電力のみを電力負荷へ給電する際、前記第1運転状態で運転し、その後、電力負荷への給電を開始して発電機の発電周波数が安定した後、前記第2運転状態で運転するエンジン発電装置の運転方法。
【請求項5】
前記発電機からの電力と商用電力を電力負荷へ給電する際、前記第2運転状態で電力負荷への給電を開始する請求項4に記載のエンジン発電装置の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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