説明

エンドセリン−2/VICに対する特異的な抗体、作製方法、およびその用途

【課題】エンドセリン-2/VICの簡便、かつ正確に検出、定量しうる手段を提供し、エンドセリン-2/VIC関与するとされる、本態性高血圧症、心不全、腸疾患等の各種疾患の解明あるいはこれら疾患の診断法、治療法の発展に資する。
【解決手段】エンドセリン類縁体を識別し、エンドセリン−2およびVICを特異的に認識しうる抗体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンドセリン-2及び/又はVICに結合特異性を有する新規な抗体、その製法、該抗体を用いたエンドセリン-2及び/又はVICの定量試薬、同定量用担体、並びにこれらを用いたエンドセリン-2及び/又はVICの定量方法に関する。特に、医薬や獣医畜産における、臨床検査薬の開発あるいは病態生理学の研究に利用可能である。
【背景技術】
【0002】
内皮依存性の血管拡張反応とならんで、種々の刺激に対する内皮依存性の血管収縮反応が報告されている。アンジオテンシン(Angiotensin)が内皮細胞から得られ(サーキュレーション・リサーチ(Circulation Research),60,4221(1987))、その後、哺乳類の血管内皮細胞培養上清より、強力な血管平滑筋収縮作用を有する、アミノ酸21個からなるペプチド(エンドセリン-1)が発見された。
一方、本発明者等は、マウスのゲノムの解析から、血管・腸管平滑筋収縮ペプチドVICを発見し、エンドセリンには3種類のペプチドが存在する事(エンドセリン遺伝子ファミリー)を初めて示した(特許文献1、非特許文献1参照)。またヒトにおいては、エンドセリン-2が相当するペプチドである事が報告された(特許文献2、非特許文献2参照)。
【0003】
以下に、これらのアミノ酸配列を示す。
マウスVIC
CysSerCysAsnSerTrpLeuAspLysGluCysValTyrPheCysHisLeuAspIleIleTrp
ヒトET-2
CysSerCysSerSerTrpLeuAspLysGluCysValTyrPheCysHisLeuAspIleIleTrp
さらに、エンドセリン-2あるいはVICの前駆体としてアミノ酸約40個からなるペプチド(以後、これらをそれぞれビッグ-エンドセリン-2、ビッグ-VICと表わす)および約200個からなるペプチド(以後、エンドセリン-2前駆体/VIC前駆体と表す)も得られている。本明細書においてはエンドセリン-2/VIC、ビッグ-エンドセリン-2/ビッグ-VICおよびエンドセリン-2前駆体/VIC前駆体をあわせて、エンドセリン-2/VICと総称する。
ビッグ-エンドセリン-2/ビッグ-VICとしては、たとえば以下のアミノ酸配列(a)、(b)で示されるアミノ酸配列のマウスやラットビッグ-VICや、アミノ酸配列(c)で示されるアミノ酸配列のヒトビッグ-エンドセリン-2などが挙げられる。
(a)マウスビッグVIC
CysSerCysAsnSerTrpLeuAspLysGluCysValTyrPheCysHisLeuAspIleIleTrpValAsnThrAlaGlyGlnThrAlaProTyrGlyLeuGlyAsnProProArgArgArgArgArg
(b)ラットビッグVIC
CysSerCysAsnSerTrpLeuAspLysGluCysValTyrPheCysHisLeuAspIleIleTrpValAsnThrAlaGlyGlnThrAlaProTyrGlyLeuGlyAsnProProGlnArgArgArgArg
(c)ヒトビッグET-2
CysSerCysSerSerTrpLeuAspLysGluCysValTyrPheCysHisLeuAspIleIleTrpValAsnThrProGluGlnThrAlaProTyrGlyLeuGlyAsnProProArgArgArgArgArg
エンドセリン-2前駆体/VIC前駆体としては、たとえば、アミノ酸配列1−203のマウスやラットVIC前駆体やアミノ酸配列1−212のヒトエンドセリン-2前駆体などが挙げられる。
【0004】
【特許文献1】特許2807471号
【特許文献1】特許2795346号
【非特許文献1】Saida K, Mitsui Y, Ishida N. A novel peptide, vasoactive intestinal contractor, of a new (endothelin) peptide family. Molecular cloning, expression, and biological activity. J Biol Chem 1989; 264: 14613-14616.
【非特許文献2】Inoue A, Yanagisawa M, Kimura S, Kasuya Y, Miyauchi T, Goto K, Masaki T. The endothelin family: three structurally and pharmacologically distinct isopeptides predicted by three separate genes. Proc Natl Acad Sci U S A 1989; 86: 28633-2867.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
該エンドセリン-2/VICは、その強力な血管・腸管平滑筋収縮作用の点から、例えば本態性高血圧症、心不全、腸疾患等の各種疾患と因果的に、または症候的に関連する可能性が考えられている。これらを解明するためには、エンドセリン-2/VICの研究、特に代謝経路、分泌機構、リセプター等に関する研究を総合的に行なう必要がある。イムノアッセイ等の免疫学的手法は、そのための最も有効な手段の一つと考えられ、エンドセリン-2/VICに特異的な抗体を作製することが極めて重要視されている。しかしながら、これまで、エンドセリン-2/VICは他のエンドセリン類縁体、特にエンドセリン-1とアミノ酸配列が酷似(21個のアミノ酸のうち、両者は、2/3個、配列が異なる)し、特異的な抗体が得られなかった。
【0006】
そこで、エンドセリン-2/VICの検出法としては遺伝子発現に基づく方法しか知られていなかった。今後の研究には、特異的抗体を利用した、より迅速、簡便かつ高感度な検出法の開発が必須であり、本発明の課題は、エンドセリン-2/VICに特異的な抗体を作製し、簡便かつ高感度にエンドセリン-2及び/又はVICを検出することを可能にしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究の結果、使用する抗原あるいは動物に対する免疫法等を種々検討し、エンドセリン-2および/又はVICに結合特異性を有するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を得ることに成功した。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(13)に関するものである。
【0008】
(1) エンドセリン−2及びVICに対して特異的反応性を有するポリクローナル抗体。
(2) キャリアタンパク質を結合せしめた、エンドセリン−2あるいはエンドセリン−2の部分ペプチド、及び/又はキャリアタンパク質を結合せしめた、VICあるいはVICの部分ペプチドを動物に免疫し、得られた血液から、エンドセリン−2及び/又はVICに対して特異的に反応する、上記(1)に記載のポリクローナル抗体を採取することを特徴とする、抗体の製造方法。
(3) 動物に対する免疫が、キャリアタンパク質を結合せしめた、エンドセリンあるいはエンドセリン−2の部分ペプチド、及び/又はキャリアタンパク質を結合せしめた、VICあるいはVICの部分ペプチドを、動物に対して交互に免役させることを特徴とする、上記(2)に記載の抗体の製造方法。
(4) 動物に対する免疫が、キャリアタンパク質を結合せしめた、エンドセリン−2の部分ペプチド及び/又VICの部分ペプチドで免役してブーストの段階でさらにエンドセリン−2及び/又はVICにより免役することを特徴とする、上記(3)に記載の抗体の製造方法。
(5) 動物に対する免疫が、エンドセリン−1を動物に長期にわたり免役して、脱感作せしめた後、該動物に、さらにキャリアタンパク質を結合せしめた、エンドセリン−2あるいはエンドセリン−2の部分ペプチド、及び/又はキャリアタンパク質を結合せしめた、VICあるいはVICの部分ペプチドにより免疫することを特徴とする、上記(3)に記載の抗体の製造方法。
(6) エンドセリン−2の部分ペプチドが以下a)のアミノ酸配列を有する環状ペプチドであることを特徴とする上記(3)〜(5)のいずれかに記載の抗体の製造方法。
【化1】

(7) VICの部分ペプチドが以下b)のアミノ酸配列を有する環状ペプチドであることを特徴とする上記(3)〜(5)のいずれかに記載の抗体の製造方法。
【化2】

(8) 上記(6)又は(7)のいずれかに記載の環状ペプチドからなる、上記(1)に記載のエンドセリン−2及びVICに対する特異的抗体の製造用ハプテン。
(9) 上記(1)に記載の抗体あるいはこれらの標識化抗体を主成分として含有する、エンドセリン−2及び/又はVICの定量試薬。
(10) 上記(1)に記載の抗体と、被検液および標識化エンドセリン-2及び/又はVICとを競合的に反応させ、該抗体に結合した標識化エンドセリン-2及び/又はVICの割合を測定することを特徴とする、被検液中のエンドセリン-2及び/又はVICの定量法。
(11) 担体上に上記(1)に記載の抗体を結合して不溶化せしめたことを特徴とする、エンドセリン−2及び/又はVICの定量用担体。
(12) 担体上に不溶化した上記(1)に記載の抗体に被験液を接触せしめた後、標識化されたエンドセリン-2及び/又はVICに対する抗体を接触させ、不溶化担体上に結合する標識抗体の量を測定することを特徴とする、被検液中のエンドセリン-2及び/又はVICの定量法。
(13) 担体上に不溶化したエンドセリン-2/VICに対する抗体および標識化されたエンドセリン-2/VICに対する抗体の一方がエンドセリン-2/VICのN端ペプチドに結合性を有するポリクローナル抗体であり、他方がC端ペプチドに結合性を有するモノクローナル抗体である、上記(12)に記載の定量法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体はエンドセリン-2あるいはVICに対して高い結合能を有し、特に従来識別の分離が困難であった、エンドセリン−1を認識しない点で極めて有用なものである。したがって、本発明の上記抗体はエンドセリン-2及び/又はVICおよびその部分ペプチドの免疫学的測定法による検出や精製に有利に使用することができる。特にエンドセリン-2あるいはVICの一部領域との結合能を有する抗体およびその一部領域とは異なる領域との結合能を有する抗体を用いる、サンドイッチ法による免疫学的測定法により、エンドセリン-2及び/又はVICを極めて高感度に分別定量することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明をさらに詳細に説明するが、本明細書において、アミノ酸、ペプチド、保護基、活性基、その他に関し略号で表示する場合、それらはIUPAC−IUB Commission on Biological Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を次ぎに挙げる。また、アミノ酸などに関し光学異性体がありうる場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
【0011】
〔略号〕
Trp:トリプトファン
Ile:イソロイシン
Leu:ロイシン
Asp:アスパラギン酸
Pro:プロリン
Thr:スレオニン
Gly:グリシン
His:ヒスチジン
Cys:システイン
Arg:アルギニン
Ser:セリン
Met:メチオニン
Asn:アスパラギン
Lys:リジン
Glu:グルタミン酸
Gln:グルタミン
Val:バリン
Tyr:チロシン
Phe:フェニルアラニン
Boc:t−ブトキシカルボニル
Tos:トシル
OBzl:ベンジルエステル
MeBzl:4−メチルベンジル
Bzl:ベンジル
Cl−Z:2−クロロベンジルオキシカルボニル
Br−Z:2−ブロモベンジルオキシカルボニル
Acm:アセトアミドメチル
TFA:トリフルオロ酢酸
TEA:トリエチルアミン
PAM:4−(オキシメチル)フェニルアセトアミドメチル
pTs・OH:p−トルエンスルホン酸
HONB:N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド
ONB:N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド・エステル
DMF:N,N′−ジメチルホルムアミド
DCC:N,N′−シクロヘキシルカルボジイミド
WSCD・HCl:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド・塩酸塩
【0012】
本発明のモノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体は、エンドセリン類縁体、特にエンドセリン−3に加え、さらにエンドセリン−1をも有効に識別可能(=結合しない)なものである。したがって、本発明の抗体を用いることにより、エンドセリン-2/VICの免疫学的測定系が確立され、組織化学的知見を得ることも可能となる。また、該抗体を用いる免疫吸着クロマトグラフィーによりエンドセリン-2/VICを単離・精製することができる。これらのことは、エンドセリン-2/VICの生理学的意義、各種疾患との関連の説明、さらには、これらの診断薬、治療薬の研究開発を行なう上で非常に有用である。
【0013】
本発明のポリクローナル抗体の調製は極めて困難であった。なぜなら、一般に免疫抗原のエンドセリン-2/VICとキャリアー蛋白との複合体をつくり、このものを動物に接種して免疫を行い、該免疫動物から抗エンドセリン-2/VIC抗体含有物を採取、抗体の分離精製を行うと、エンドセリン-1も同様に認識してしまう抗体になる。そのために、特異的な免疫抗原ET-2(3-11)/VIC(3-11)請求項9や10を合成し、それを免疫する事で、エンドセリン-1は認識しないエンドセリン-2/VICにのみ特異的に結合する抗体を取得した。また本発明のモノクローナル抗体の調製に当っては、上記免疫動物から抗体価の高い個体を選び、最終免疫3−5日後に脾臓あるいはリンパ節を採取、それらに含まれる抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させ、安定的に力価の高い抗体を産生するハイブリドーマを選択し、モノクローナルなハイブリドーマを得ることによる。
【0014】
免疫抗原としては、ET-2(3-11)/VIC(3-11)以外に、それを含むペプチドが相当する。例えば、エンドセリン-2/VIC、ビッグ-エンドセリン-2/ビッグ-VIC、エンドセリン-2前駆体/VIC前駆体およびそれらの一部分がこの中に含まれる。しかし、現実問題として、ET-2(3-11)/VIC(3-11)以上の長いペプチドでは、ET-1との共通部分が増加するため、特異性が激減してしまう。本発明で用いられる種々のペプチドは、ペプチド合成の公知の常套手段で製造しうる。固相合成法、液相合成法のいずれによってもよい。
固相法によりET-2(3-11)/VIC(3-11)やそれを含むペプチドを合成する場合、メリーフィールドの固相ペプチド合成方法〔ジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサィエティ(J.Am.Chem.Soc.),85,2149(1963)〕を用いるのが好ましい。不溶性樹脂として当該技術分野で知られたもののいずれであってもよく、例えばクロロメチル化されたスチレン−ジビニルベンゼン共重合体、フェナシルアセティックメチル化されたスチレン−ジビニルベンゼン共重合体のようなポリスチレン型樹脂、ポリジメチルアクリルアミド樹脂のようなポリアミド型樹脂が挙げられる。
【0015】
C末端のN−保護アミノ酸を不溶性樹脂に結合させた後、ET-2(3-11)/VIC(3-11)やそれを含むペプチドのC末端側から保護アミノ酸を常法に従って順次結合し、次いでフッ化水素で処理した後、ジスルフィド結合を形成させ目的とするET-2(3-11)/VIC(3-11)やそれを含むペプチドを合成することができる。N−保護アミノ酸としては、α−アミノ基はすべてBoc基で保護し、セリンおよびスレオニンの水酸基はBzl基で、グルタミン酸、アスパラギン酸のω−カルボン酸はOBzl基、リジンのε−アミノ基はCl−Z基、システインのチオール基はAcm基、MeBzl基、チロシンの水酸基はBr−Z基、ヒスチジンのイミダゾール基およびアルギニンのグアニド基はTos基、トリプトファンのインドール基はCHO基で保護するのが好ましい。
【0016】
液相法による合成の手段としては、たとえば「ザ ペプチズ(The Peptides)」、第1巻(1966年)、Schroder and Lubke著、Academic Press, New York, U.S.A.あるいは“ペプチド合成”、泉屋ら著、丸善株式会社(1975年)に記載された方法、たとえばアジド法、クロライド法、酸無水物法、混合無水物法、DCC法、活性エステル法、ウッドワード試薬Kを用いる方法、カルボジイミダゾール法、酸化還元法、DCC/アディテイブ(例、HONB, HOBt, HOSu)法などがあげられる。
【0017】
哺乳動物を免疫するために用いられるET-2(3-11)/VIC(3-11)やそれを含むペプチドとキャリアー蛋白との蛋白複合体に関し、キャリアー蛋白の種類およびキャリアーとハプテン(この場合ペプチド)との混合比は、キャリアーにカプリングさせて免疫したハプテンに対して抗体が効率よく出来れば、どの様なものをどの様な比率でカプリングさせてもよいが、例えば、牛血清アルブミンや牛サイログロブリン、ヘモシアニン等を重量比でハプテン1対し0.1−20、好ましくは1−5の割合でカプルさせる方法が用いられる。
また、ハプテンとキャリアーのカプリングには、種々の縮合剤を用いることが出来るが、グルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミド活性エステル等が好都合に用いられる。
【0018】
縮合生成物は温血動物に対して投与により抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与されるが、なかでも皮下注射が好ましい。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は通常2−6週毎に1回ずつ、計3−6回程度行われる。
用いられる温血動物としては、たとえばサル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ニワトリがあげられる。
抗体は上記の方法で免疫された温血動物の血液、腹水(好ましくは血液)などから採取される。抗血清中の抗エンドセリン-2/VIC抗体価の測定は、例えば後記の標識化エンドセリン-2/VICと抗血清とを反応させたのち、抗体に結合した標識剤の活性を測定することによりなされる。抗体の分離精製は免疫グロブリンの分離精製法〔例、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原抗体結合物あるいは活性吸着剤により特異抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法〕に従って行われる。
【0019】
このようにして作製された抗体は、IgGを主たる成分とし、IgM, IgA等、他の免疫グロブリンも含む。また、このものはエンドセリン-2/VICと特異的に結合し、エンドセリン-1には結合しない。
一方、上記のポリクローナル抗体の調製法と同様に免疫された温血動物、たとえばマウスから抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の2−5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させることにより、抗エンドセリン-2/VIC抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。融合操作は既知の方法、たとえばケーラーとミルスタインの方法〔ネーチャー(Nature)、256、495(1975)〕に従い実施できる。融合促進剤としてはポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどが挙げられるが、好ましくはPEGが用いられる。
【0020】
骨髄腫細胞としてはたとえばNS−1、P3U1、SP2/0などがあげられるが、特にP3U1が好ましく用いられる。用いられる抗体産生細胞(脾臓細胞)数の骨髄細胞数との好ましい比率は1:1−20:1程度であり、PEG(好ましくはPEG1000−PEG6000)が10−80%程度の濃度で添加され、20−40℃、好ましくは30−37℃で1−10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。
抗エンドセリン-2/VIC抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングには種々の方法が使用できるが、たとえばエンドセリン-2/VICを吸着させた固相(例、マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合した抗エンドセリン-2/VICモノクローナル抗体を検出するEIA法、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、HRPで標識したエンドセリン-2/VICを加え、固相に結合した抗エンドセリン-2/VICモノクローナル抗体を検出するEIA法などがあげられる。抗エンドセリン-2/VICモノクローナル抗体の選別、育種は通常HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加して、10−20%牛胎児血清を含む動物細胞用培地(例、RPMI1640)で行われる。
【0021】
ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清中の抗エンドセリン-2/VIC抗体価の測定と同様にして測定できる。
抗エンドセリン-2/VICモノクローナル抗体の分離精製は上記のポリクローナル抗体の分離精製と同様に免疫グロブリンの分離精製法に従って行われる。
上記で得られた抗エンドセリン-2/VICポリクローナル抗体、該抗体を含む抗血清あるいは抗エンドセリン-2/VICモノクローナル抗体を用いて、通常の免疫測定法等に従い、エンドセリン-2/VICの測定乃至、組織染色等を行ない得る。エンドセリン-2/VICの免疫測定法には、次に述べる競合法あるいはサンドイッチ法を用いるのが好ましい。
【0022】
競合法においては、本発明で得られた抗エンドセリン-2/VIC抗体と、被検液および標識化エンドセリン-2/VICとを競合的に反応させたのち、抗体に結合した標識化エンドセリン-2/VICの割合を測定することにより、被検液中のエンドセリン-2/VICを定量する。
該エンドセリン-2/VICの標識剤あるいは後記の抗体の標識剤としては、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが挙げられる。放射性同位元素としては、例えば125I,131I, 3H,14Cなどが、上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えばβ−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスァターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素等が、蛍光物質としては、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが、発光物質としては、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどがそれぞれ挙げられる。さらに、抗体あるいはエンドセリン-2/VICと標識剤との結合にビオチン−アビジン系を用いることもできる。
【0023】
上記の標識剤の活性の測定に当っては、抗体に結合した標識化エンドセリン-2/VICと遊離の標識化エンドセリン-2/VICとを分離(以後B/F分離と略す)する必要があるが、標識剤として酵素を用いた場合には、このための試薬に不溶化した抗エンドセリン-2/VIC抗体に対する抗体あるいは不溶化したプロテインA等の活性吸着剤が有利に用いられる。例えば、抗IgG抗体(抗エンドセリン-2/VIC抗体に対する抗体に相当)を固相として用い、これと反応性のある上記抗体を介して標識化エンドセリン-2/VICを固相にある抗IgG抗体に結合させ、該固相上の標識剤を測定することによって行なうことができる。標識剤として酵素を用いた場合には、不溶化担体上の酵素活性の測定には通常の比色法あるいは蛍光法が用いられる。標識剤にラジオアイソトープ等、非蛋白性物質を用いた場合には、B/F分離に上記の試薬以外にも不溶化しない抗エンドセリン-2/VICに対する抗体、硫酸ナトリウム、デキストラン炭末、ポリエチレングリコール等の試薬が用いられる。いずれの方法においても上清中あるいは沈降物中の標識剤の活性を測定する。
【0024】
上記の不溶化に当っては、物理吸着を用いてもよく、また通常蛋白質あるいは酵素等を不溶化、固定化するのに用いられる化学結合を用いる方法でもよい。担体としては、アガロース、デキストラン、セルロースなどの不溶性多糖類、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコン等の合成樹脂、あるいはガラス等が挙げられる。
【0025】
競合法においては、抗エンドセリン-2/VIC抗体、被検液、標識化エンドセリン-2/VIC、およびB/F分離用試薬は、どのような順序に反応させることも可能であり、また全部あるいは一部を同時に反応させてもよいが、少なくとも標識化エンドセリン-2/VICは、被検液と抗エンドセリン-2/VIC抗体との反応と同時に、あるいは反応液に遅れて反応系に加えられることが好ましい。ただし硫酸ナトリウム、デキストラン炭末、ポリエチレングリコール等のB/F分離試薬は主として反応系の最後に用いられる。
【0026】
サンドイッチ法においては、不溶化した抗エンドセリン-2/VIC抗体に被検液を接触(反応)させ(1次反応)、さらに標識化抗エンドセリン-2/VIC抗体を反応させ(2次反応)たのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することにより被検液中のエンドセリン-2/VIC量を定量することができる。1次反応と2次反応は同時に行なってもよいし時間をずらして行なってもよい。標識化剤および不溶化の方法は前記のそれらに準じることができる。
【0027】
2次反応に用いられる抗エンドセリン-2/VIC抗体としては、1次反応に用いられる抗エンドセリン-2/VIC抗体とはエンドセリン-2/VICの該抗体と結合する部位が相異なる抗体が好ましく用いられる。たとえば1次反応で用いられる抗体がエンドセリン-2/VICのC端部との結合能を有する場合、2次反応では、好ましくはC端部以外(例、N端部)と結合する抗エンドセリン-2/VIC抗体が用いられ、また1次反応で用いられる抗体がエンドセリン-2/VICのN端部との結合能を有する場合、2次反応では、好ましくはN端部以外(例、C端部)と結合する抗エンドセリン-2/VIC抗体が用いられる。1次反応および2次反応に用いられる抗体はそれぞれポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であってもよいが、好ましくはその一方がエンドセリン-2/VICとは反応するが、エンドセリン-2/VICのC端部とは反応しない抗エンドセリン-2/VICモノクローナル抗体であって、他方がエンドセリン-2/VICのC端部と反応する抗エンドセリン-2/VICポリクローナルもしくはモノクローナル抗体が用いられる。
【0028】
サンドイッチ法によるエンドセリン-2/VICの免疫学的測定法において特に好ましくは、エンドセリン-2/VICのC端ペプチド、すなわちCys−His−Leu−Asp−Ile−Ile−Trp、と反応する抗エンドセリン-2/VICポリクローナル抗体および、エンドセリン-2/VICとは反応するが、上記エンドセリン-2/VICのC端ペプチドとは反応しない抗エンドセリン-2/VICモノクローナル抗体が用いられる。
また、サンドイッチ法によるビッグ-エンドセリン-2/ビッグ-VICの免疫学的測定法においても同様である。
【0029】
さらに、本発明で得られた抗体を用いるイムノアッセイは心疾患、腸疾患あるいは腎疾患等の診断および予後管理に使用し得る。被検試料としては、血漿、血清、尿、脳脊髄液、腹水、胸水、羊水等の体液や、痰、便などが使用し得る。これらの試料は、そのまま、あるいは各種緩衝液で希釈あるいは抽出後濃縮し、イムノアッセイの試料とし得る。試料の希釈あるいは抽出に用いられる溶媒としてはどのような緩衝液あるいは有機溶媒を用いてもよいが、好ましくはイムノアッセイ用緩衝液、水、生理食塩水、酢酸緩衝液、アセトン、クロロホルム−メタノールあるいは、界面活性剤を含むこれらの溶液が用いられる。また、濃縮は、試料を直接減圧下、あるいは常圧、窒素気流下濃縮してもよいし、また試料をイオン交換あるいは逆相クロマトグラフィー用担体あるいは抗エンドセリン-2/VIC抗体結合担体に添加したのち、適当な溶出液で溶出後、減圧下あるいは常圧、窒素気流下濃縮しても良い。
【0030】
濃縮用担体として特に好ましくは、逆相クロマトグラフィー用担体のODSカートリッジが用いられる。濃縮物はイムノアッセイ用緩衝液に溶解後、イムノアッセイの試料とする。
さらに、本発明で得られた抗エンドセリン-2/VIC抗体はエンドセリン-2/VICの免疫組織染色法等にも用いる事ができる。その方法は、例えば標識化抗エンドセリン-2/VIC抗体を用いる直接法、抗エンドセリン-2/VIC抗体および抗エンドセリン-2/VIC抗体に対する抗体の標識化されたものを用いる間接法等に順ずることができる。
【0031】
また、さらに本発明で得られた抗エンドセリン-2/VIC抗体のうちエンドセリン-2/VICの血管・腸管収縮能を中和し得る抗体は、エンドセリン-2/VICの特異的アンタゴニストとして使用し得る。
本発明の抗体は、免疫組織染色で使われる他、ELISAやRIAキットとして診断キットとして使用できる。本発明は、抗原として、特に、エンドセリン−1と異なるアミノ酸を強調し得る配列を選んだ点、及びこれに加えVIC(3-11)とVICを交互に免疫する事で、双方で共通のアミノ酸が相互にブーストする効果を生じて、結果として違いを認識する特異性の高い抗体が作れた。特異性は、(RIAと)ELISAで測定した。図の実施例で解る。免疫染色の実際は図4−図9で示した。
【実施例】
【0032】
以下に実施例を示して本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれを限定されるべきものではない。
【0033】
実施例(1)合成ペプタイドの製造
i)ET-2(3-11)/VIC(3-11)やそれを含むペプチドの合成
市販のBoc−Trp(CHO)−PAM樹脂、(アプライド・バイオシステムズ社製)を用い、ペプチド合成機(アプライド・バイオシステムズ社製・モデル430A)を使用し、通常の方法により合成した。縮合方法は、樹脂上のBoc基を塩化メチレン中50%トリフルオロ酢酸で処理し、末端アミノ基を遊離させ、この遊離のアミノ基にBoc−Ile,Boc−Asp(OBzl),Boc−Leu,Boc−His(Tos),Boc−Cys(Acm),Boc−Tyr(Br−z),Boc−Val,Boc−Phe,Boc−Glu(OBzl),Boc−Lys(Cl−Z),Boc−Met,Boc−Ser(Bzl)をC末端側よりエンドセリン-2/VICやその一部(ET-2(3-11)/VIC(3-11)を含む)のアミノ酸配列通りに、DCCの存在下に縮合させる反応をくり返した。
【0034】
この様にして得られた保護ET-2(3-11)/VIC(3-11)やそれを含むペプチド樹脂の一部をアニソール1ml、1,2−エタンジオチール1mlで膨潤させ、0℃でフッ化水素10mlと60分間処理した後、過剰のフッ化水素を減圧留去した。残査を酢酸エチル5mlで洗った後、50%−酢酸水に抽出し、デキストランゲル(セファデックスLH−20)カラム(2×90cm)に付し、同溶媒で溶出した主分画を集め凍結乾燥し、白色粉末を得た。これの一部を80%−酢酸水20mlに溶解し、トリフルオロ酢酸第二水銀を加え、室温で60分間攪拌したのち、同溶媒で希釈し、硫化水素ガスを通じ、析出物をろ去し、凍結乾燥した。これを希酢酸に溶解し、重炭酸アンモニウムでpH8に調節したのち6時間空気酸化に付し、酢酸を加えpH3としたのち、凍結乾燥した。これを30%−酢酸で充填したセファデックスLH−20のカラム(2×90cm)に付し、主要分画を集め、さらにHPLC(カラム:YMC,溶媒:0.1%−トリフルオロ酢酸水と0.1%−トリフルオロ酢酸含有アセトニトリルの直線型濃度勾配溶出)で分取し目的物を得た。
【0035】
測定条件
カラム:ケムコ社製ヌクレオシル50DS−H(4.6mmφ×250mm)
溶離液:A液(0.1%−トリフルオロ酢酸水)
B液(0.1%−トリフルオロ酢酸含有−50%含水アセトニトリル)
を用いA液からB液へ直線型濃度勾配溶出(20分)
流 速:1.0ml/分
測定条件
カラム:東洋ソーダ製 DEAE−2SW(4.6mmφ×250mm)
溶離液:A液(10mM トリス・塩酸pH7.5)
B液(1M NaCl含有A液)
を用いA液からB液へ直線型濃度勾配溶出(40分)
流 速:1.0ml/分
【0036】
(2)免疫原の製造
(i)免疫原(I)
ET-2(3-11)/VIC(3-11)やそれを含むペプチド〔上記(1)で得られたもの〕とKLHとをグルタルアルデヒドを用いて結合させた。即ち、当該ポリペプチド4.5mgとTG13.5mgとを4.5mlの0.2Mリン酸緩衝液pH7.0に溶解させたのち、最終濃度0.2%のグルタルアルデヒドを加え、室温3時間反応させた。反応後、生理食塩水に対し4℃、2日間透析した。
上記合成したハプテンVIC(3-11)、免疫源として用いたハプテンVIC(3-11)−KLHのアミノ酸配列及びその構造を、VIC、ET-2及びET−1及びET−3とともに図1に示す。
【0037】
(ii)免疫
上記(2)で得た免疫原(I)400μgを含む生理食塩水450μlに550μlの完全フロイントアジュバント(Freund complete adjuvant)を加えてよく混和し乳剤を作成し、ウサギの皮下約20ヶ所に接種した。6週間後に、不完全フロイントアジュバントを用い、同様の操作で乳剤を作りウサギの皮下に接種した。この操作を以後1ヶ月おきに3回〔免疫原(I)〕4回〔免疫原(II)〕または4回〔免疫原(III)〕行ない、追加免疫の7日後、ウサギから血液を部分採取し常法により抗血清を得た。同様に6−8週令のBALB/C雌マウスに免疫原(I)70μg/匹をアジュバントとともに皮下免疫した。以後3週間おきに2−3回追加免疫し、免疫7日後に部分採血し、抗血清を得た。
【0038】
(4)酵素標識化抗原の作製
i)ペルオキシダーゼ標識化エンドセリン-2/VICの作製
エンドセリン-2/VIC 210n moleを450μlの0.1Mリン酸緩衝液、pH7.0に溶解させ、GMBS295μg(1.05μmole)を含むDMF溶液50μlと混合し、室温で30分反応させた。反応後、セファデックスG−15カラムで分画を行ないマレイミド基の導入されたポリペプチド100n moleを得た。一方、西洋ワサビペルオキシダーゼ10mg(250n mole)を0.15M食塩を含む0.02Mリン酸緩衝液、pH6.8、1.4mlに溶解させ、SPDP1.17mg(3.75μmole)を含むDMF溶液100μlを混合したのち室温40分間反応させた。反応後、ジチオスレイトール12.4mg(80μmole)を含む0.1M酢酸緩衝液、pH4.5、0.5mlを加え、室温20分反応させたのち、セファデックスG−25カラムで分画を行ない、SH基の導入された酵素6mg(150n mole)を得た。次に、マレイミド基導入エンドセリン-2/VICI 50n moleとSH基導入ペルオキシダーゼ10n moleとを混合し、4℃、16時間反応させた。反応後、ウルトロゲルAcA44(LKB−ファルマシア社製)カラムで分画し、ペルオキシダーゼ標識化エンドセリン-2/VICを得た。
【0039】
(5)抗体価の測定
免疫原(I)に対するウサギ抗血清中の抗体価を以下の方法により測定した。即ち、抗ウサギIgG抗体(IgG画分、カッペル社製)を20μg/ml含む0.1M炭酸緩衝液、pH9.6溶液を96ウェルマイクロプレートに100μlずつ分注し、4℃で24時間放置した。プレートをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄したのち、ウェルの余剰の結合部位をふさぐため1%BSA含有PBSを300μlずつ分注し、少なくとも4℃で24時間処理した。以上のように調製したプレートにバッファーA(0.02Mリン酸緩衝液、1%BSA、pH7.0)で希釈したウサギ抗血清50μl(6羽、No.1a−No.6a)および上述したペルオキシダーゼ標識化エンドセリン-2/VIC(I)(バッファーAで100倍に希釈)50μlを加え4℃で16時間反応させた。反応後PBSでよく洗浄したのち、固相上の酵素活性を測定するため0.2%オルソフェニレンジアミン、0.02%過酸化水素を含む0.1Mクエン酸緩衝液、pH5.5を100μlずつ分注し、室温で10分間反応させた。4規定硫酸100μlを加え、反応の停止させたのち492nmの吸収をプレートリーダー(MTP−32,コロナ社製)で測定し、抗体の活性を判定した。
【0040】
免疫原(I)に対するマウス抗血清中の抗体価を以下の方法により測定した。即ち、抗マウスIgG抗体(IgG画分、H鎖、L鎖特異性カッペル社製)を20μg/ml含む0.1M炭酸緩衝液、ph9.6溶液を96ウェルマイクロプレートに100μlずつ分注し、4℃で24時間放置した。プレートをPBSで洗浄したのち、ウェルの余剰の結合部位をふさぐため1%BSA含有PBSを300μlずつ分注し、少なくとも4℃で24時間処理した。以上のように調製したプレートにバッファーAで希釈したマウス抗血清50μl(8匹、No.1a−No.8a)および上述したペルオキシダーゼ標識化エンドセリン-2/VIC(I)(バッファーAで100倍に希釈)50μlを加え4℃で16時間反応させた。反応後PBSでよく洗浄したのち、固相上の酵素活性を上述した方法で測定した。また、同様の方法により、ハイブリドーマ培養上清中の抗体価を測定することにより、抗エンドセリン-2/VIC抗体産生ハイブリドーマを選択した。
【0041】
(6)アフィニティ固相の作製
(i)アフィニティ固相(I)
ポリペプタイドCys His Leu Asp Ile Ile Trpとヒト血清アルブミン(以下HSAと略す)との縮合物をCNBr活性化セファロース4B(ファルマシア社製)に結合させ、アフィニティ固相(I)とした。即ち、上記(2)記載の方法により、HSA20mgと2.1mgのGMBSとを室温60分反応させたのち、セファデックスG−25カラムで分画した。次に、マレイミド基の導入されたHSA5mgを含む該溶出画分1mlと、90%ジメチルスルホキシドを含む水溶液1mlに溶解あるいは分散させたポリペプチドCys His Leu Asp Ile Ile Trp1mgとを4℃で3日間反応させた。反応後、0.5M食塩を含む0.1M炭酸水素ナトリウムに対し透析したのち、CNBr活性化セファロース4B1gと室温3時間反応させた。次ぎに、未反応の活性基を0.1Mトリス−塩酸緩衝液、pH8で処理し、洗浄したのち、1%BSAを含むPBSに分散させ、4℃で保存した。
【0042】
(7)抗エンドセリン-2/VICポリクローナル抗体の精製
i)陰イオン交換クロマトグラフィーによる精製
ウサギ抗エンドセリン-2/VIC抗血清を塩析後、DEAE−セルロースカラムクロマトグラィーで分画することにより、抗エンドセリン-2/VIC抗体をIgG画分にまで精製した。即ち、ウサギ抗エンドセリン-2/VIC抗血清No.1a10mlにPBS10mlを加え、さらに16.5mlの飽和硫安を除々に攪拌しながら加えた(最終45%),30分間放置したのち、12,000×gで20分間遠心し、沈殿をPBS10mlに溶解させた。次に、同様に飽和硫安を最終30%飽和になるように加えたのち遠心した。沈殿を、0.15M食塩を含む0.01Mホウ酸緩衝液、pH8(以下BBSと略す),10mlに溶解させたのち0.01M食塩を含む0.01Mリン酸緩衝液pH8(緩衝液B)に対し、4℃,2日間透析した。次に、あらかじめ緩衝液Bで平衡化したDEAE−セルロースカラム(ワットマン社製,DE−52,20mmφ×100mm)に上記の塩析および透析後の抗体画分を添加した。緩衝液Bでカラムを洗浄したのち、緩衝液B−緩衝液C(0.35M NaClを含む0.01Mリン酸緩衝液,pH8)の連続イオン強度勾配を用いて抗体を溶出した。溶出画分中の抗体価の測定は上記(5)に述べた方法に従った。
【0043】
ウサギ免疫グロブリンの検出は各免疫グロブリンに特異的な抗体を固相に用いて、(5)で述べた方法と同様に実施した。即ち、抗ウサギIgGFc成分、あるいは抗ウサギIgM(カッペル社製、ヤギ抗体、IgG分画)を(5)で述べた方法に従いマイクロプレートに固定した。次に、バッファーAで102−107倍希釈したDEAE−セルロース溶出抗エンドセリン-2/VIC抗体各画分を50μlおよびペルオキシダーゼ標識化エンドセリン-2/VIC(バッファーAで100倍に希釈)50μlを加え、4℃で16時間反応させた。反応後洗浄したのち、固相上の酵素活性を測定した。その結果、抗ウサギIgGFc成分を固相とするとき、最も強い反応が認められたが、抗ウサギIgMを固相としたときにも特異的反応が認められた。
【0044】
ii)アフィニティ固相による精製
免疫原(I)に対するウサギ抗血清から、硫安塩析法により抗体を部分精製した。抗体画分をBBSに透析した後、上記のアフィニティ固相(I)を充填したカラム(10mmφ×40mm)に付した。BBSで十分に洗浄したのち特異抗体を0.5M食塩を含む0.1M酢酸緩衝液、pH4.5で溶出し、さらに0.1M食塩を含む0.05Mグリシン−塩酸緩衝液、pH2.0で溶出した。溶出画分中の抗体価を上記(5)記載のE1A法により測定した結果、pH2で溶出された画分にのみ、強い抗体価が認められ、該画分から特異抗体が得られた。
【0045】
(8)細胞融合
比較的高い抗体価を示したマウスに対して240μgの免疫原(I)を生理食塩水0.25mlに溶解させたものを静脈内に接種することにより最終免疫を行なった。最終免疫3日後のマウスから脾臓を摘出し、ステンレスメツシュで圧迫、ろ過し、イーグルズ・ミニマム・エツセンシヤルメデイウム(MEM)に浮遊させ、脾臓細胞浮遊液を得た。細胞融合に用いる細胞として、BALB/Cマウス由来ミエローマ細胞P3−×63.Ag8.U1(P3U1)を用いた〔カレント トピツクス イン マイクロバイオロジー アンド イムノロジー、81、1(1978)〕。細胞融合は、原法〔ネイチャー、256、495(1975)〕に準じて行なった。即ち、脾臓細胞およびP3U1をそれぞれ血清を含有しないMEMで3度洗浄し、脾臓細胞とP3U1数の比率を5:1になるよう混合して、800回転で15分間遠心を行なって細胞を沈殿させた。上清を充分に除去した後、沈殿を軽くほぐし、45%ポリエチレングリコール(PEG)6000(コッホライト社製)を0.3ml加え、37℃温水槽中で7分間静置して融合を行なった。融合後細胞に毎分2mlの割合でMEMを添加し、合計12mlのMEMを加えた後600回15分間遠心して上清を除去した。
【0046】
この細胞沈殿物を10%牛胎児血清を含有するRPMI1640メデイウム(RPMI1640−10FCS)にP3U1が1ml当り2×106個になるように浮遊し、24穴マルチデイシユ(リンブロ社製)に1ウェル1mlずつ120ウェルに播種した。播種後、細胞を37℃で5%炭酸ガスフラン器中培養した。24時間後HAT(ヒポキサンチン1×10-4M、アミノブリテリン4×10-7M、チミジン1.6×10-3M)を含んだRPMI1640−10FCS培地(HAT培地)を1ウェル当り1mlずつ添加することにより、HTA選択培養を開始した。HAT選択培養は、培養開始3、6、9日後に旧液を1ml捨てたあと、1mlのHAT培地を添加することにより継続した。ハイブリドーマの増殖は、細胞融合後9−14日で認められ、培養液が黄変したとき(約1×106セル/ml)、上清を採取し、上記(5)で述べたEIA法で、抗体価を測定した。このようにして、ハイブリドーマの増殖が認められた全120ウェルの上清を調べたところ、強い抗体活性を認めた。
【0047】
(9)クローニング
抗体活性が陽性を示したウェルの各ハイブリドーマを限界希釈法によるクローニングに付した。即ちハイブリドーマが1.5個/mlになるようにRPMI1640−20FCSに浮遊させ、96穴マイクロプレート(ヌンク社製)に1ウェル当り0.2mlずつ分注した。分注する際、フィーダー細胞としてBALB/Cマウスの胸腺細胞をウェル当り5×105個になるように加えた。約1週間後には細胞の増殖が認められるようになり、上清中の抗体価をEIA法で調べた。その結果、抗体活性を認めた。これらのクローンおよびその産生するモノクローナル抗体に注目し、以下の実験を実施した。
【0048】
(10)大量のモノクローナル抗体の調製
ミネラルオイル0.5mlを腹腔内投与されたマウス、あるいは未処置マウス(BALB/C)にハイブリドーマAwETN40 1−3×106セル/匹を腹腔内注射したのち、10−30日後に抗体含有腹水を採取した。
【0049】
(11)モノクローナル抗体の精製
前記(10)記載の腹水を上記(7)記載の方法に従って塩析後、DEAE−セルロースカラムクロマトグラフィーで分画することにより、モノクローナル抗体を精製した。即ち腹水7mlにPBS7mlを加え、さらに11.5mlの飽和硫安(最終45%)を徐々に攪拌しながら加えた。沈殿をBBSに溶解させ、0.01M食塩を含む0.01Mリン酸緩衝液pH8に透析したのちDEAE−セルロースカラム(20mmφ×100mm)に供した。抗体を0.01M−0.35M食塩濃度勾配により溶出しすることにより、腹水7mlから70mgのモノクローナル抗体を精製標品として得た。
【0050】
(13)モノクローナル抗体の中和活性能の検討
ラット子宮筋より摘出した約2cmのらせん状条片を、混合ガス(95%O2+5%CO2)通気下にクレブス−ヘンゼライト液(以下栄養液と略す)で満たされたマグヌス管内に懸垂した。37℃で3時間放置したのち、腸管平滑筋の収縮により発生する張力をアイソメトリックトランスデューサー(ポリグラフ、NEC三栄社製)により測定した。試料と4℃、3時間反応させたエンドセリン-2/VIC溶液(最終エンドセリン-2/VICI濃度1×10-8M)を添加しても発生する張力は、60mMのKClにより惹起される張力の8%(n=4)であるのに対し、対照として、エンドセリン-2/VIC溶液(最終1×10-8M)を添加した場合には60mMのKClとほぼ同程度の収縮による張力が観測された。
以上のことから、エンドセリン-2/VICの腸管平滑筋収縮活性を中和することが明らかとなった。
【0051】
(14)競合法−EIA
1)免疫原(I)に対するポリクローナル抗体を用いるEIA
抗ウサギIgG結合マイクロプレートに、バッファーAで最終20万倍に希釈した免疫原(I)に対するウサギ抗エンドセリン-2/VIC血清(第1図参照)50μl、およびエンドセリン-2/VIC標準液50μl、ポリペプタイドCys His Len Asp Ile Ile Trp標準液50μlあるいはエンドセリン−1(株式会社ペプチド研究所より購入)標準液50μlを加え、4℃で16時間反応させた。そののち、ペルオキシダーゼ標識化エンドセリン-2/VIC(バッファーAで300倍に希釈)50μlを加え、室温で4時間反応させた。反応後、PBSでよく洗浄したのち固相上の酵素活性を上述した方法により測定した。結果を第5図に示す。
図中、−●−がエンドセリン-2/VICの標準曲線を、−▲−がポリペプタイドCys His Leu Asp Ile Ile Trpの標準曲線を、又−○−がエンドセリン−1の標準曲線を示す。なお縦軸におけるBはエンドセリン-2/VIC、エンドセリン−1等の抗原存在下における固相上の酵素活性を、また、B0は、抗非存在下での固相上の酵素活性を示す。従来の生物活性を指標とする測定法では、エンドセリン−1等、他の血管収縮物質の影響を受けるものと予想されるが、上記の結果は、本発明の抗エンドセリン-2/VIC抗体を用いる免疫測定法においては、エンドセリン−1の影響を受けずエンドセリン-2/VICを特異的に測定し得ることを示している。
【0052】
(15)サンドイッチ法−EIA(その1)
以下にエンドセリン-2/VIC測定用サンドイッチ法−EIAについて述べる。
i)酵素標識化抗体の作製
上記(7)ii)記載のアフィニティ精製抗Cys His Leu Asp Ile Ile Trp抗体より石川らの方法〔ジャーナル オブ アプライド バイオケミストリィー(J.Appl.Biochem).,6:56−63(1984)〕に従ってFab′−ペルオキダーゼ標識体を作製した。即ち、0.1M酢酸緩衝液、pH4.5に溶解した特異抗体6.4mgにペプシン(シグマ社、2回結晶)160μgを加え、37℃、16時間反応させたのち、BBSで平衡化したスーパーロース12カラムを用いるFPLC(ファルマシア社製)でF(ab′)2画分を精製した。該画分を0.1M酢酸緩衝液、pH5で透析したのち、最終20mMのβ−メルカプトエチルアミンを加え、37℃で90分放置した。反応液を2.5mM EDTAを含む0.1Mリン酸緩衝液、pH6.0で平衡化したスーパーロース12カラムを用いるFPLCで分離し、Fab′画分を得た。一方、西洋ワサビペルオキシダーゼ5mgを0.9mlの0.1Mリン酸緩衝液、pH7に溶解させ、50μlのDMFに溶解させたGMBS1.05mgを加えて室温40分反応させた。反応液をセファデックスG−25カラム(溶離液0.1Mリン酸緩衝液、pH6.8)で分離し、得られたマレイミド化ペルオキシダーゼ3.5mgと上記Fab′画分0.8mgとを混合し、コロジオンパック(エムエス機器社)で約0.3mlにまで濃縮したのち、4℃で16時間放置した。反応液を溶離液に0.1Mリン酸緩衝液、pH6.5を用いるウルトロゲルAcA44カラム(10mmφ×40mm)に供し、Fab′−ペルオキシダーゼ複合体画分を精製した。
【0053】
ii)サンドイッチ法−EIA(比色法)
精製したモノクローナル抗体AwETN40aを20μg/mlを含む0.1M炭酸緩衝液、pH9.6溶液を96ウェルマイクロプレートに100μlずつ分注し、4℃で24時間放置した。ウェルの余剰の結合部位をPBSで4倍希釈したブロックエース(雪印乳業社製、大日本製薬社販売)300μlを加え不活化した。以上のように調製したプレートにバッファーAで希釈したエンドセリン-2/VIC標準液100μlを加え、室温で5時間反応させた。プレートをPBSで洗浄したのち、抗Cys His Leu Asp Ile Ile Trp抗体Fab′−ペルオキシダーゼ標識体(バッファーAで300倍に希釈)100μlを加え、室温で3時間反応させた。プレートをPBSで洗浄したのち、固相上の酵素活性を上記(5)記載の方法により測定した。結果を第9図に示す。以上の結果から、エンドセリン-2/VICのC端部以外を認識する抗エンドセリン-2/VICモノクローナル抗体を固相に、また、エンドセリン-2/VICのC端部を認識するポリクローナル抗体Fab′を標識体に用いるサンドイッチ法−EIA(比色法)により100pg/ml、50fmole/wellのエンドセリン-2/VICを測定し得ることが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明のハプテン、免疫源のアミノ酸配列及びその構造をエンドセリン−2、VIC、エンドセリン−1及びエンドセリン−3のアミノ酸配列、構造とともに示した図である。
【図2】RIA(ラジオイムノアッセイ)によるET−2/VIC抗血清の特異性を示すグラフ、およびELISA(エライザ)によるET−2/VIC精製抗体の特異性を示すグラフである。
【図3】マウス消化管におけるET-2/VICとET-1の遺伝子発現の定量的解析を行った結果を示すグラフである。
【図4−1】結腸におけるET-2/VICの特異的な分布を示す顕微鏡写真である。
【図4−2】結腸におけるET-2/VICの特異的な分布を示す顕微鏡写真である。
【図5−1】回腸におけるET-2/VICの特異的な分布を示す顕微鏡写真である。
【図5−2】回腸におけるET-2/VICの特異的な分布を示す顕微鏡写真である。
【図6】パイエル板におけるET-2/VICの特異的な分布を示す顕微鏡写真である。
【図7−1】十二指腸におけるET-2/VICの特異的な分布を示す顕微鏡写真である。
【図7−2】十二指腸におけるET-2/VICの特異的な分布を示す顕微鏡写真である。
【図8】胃におけるET-2/VICの特異的な分布を示す顕微鏡写真である。
【図9】ET-2/VIC産生細胞とマクロファ−ジ(CD-68陽性細胞)の局在を示すグラフである。
【符号の説明】
【0055】
図3中、
St胃、Du十二指腸、Je空腸、Il回腸 Co結腸、Re直腸
図4中、
(A, C, E) ET-2/VICの分布(ET-2/VIC抗体染色)
(A) 絨毛、 (C) 筋層、(E) 絨毛の断面図
(B, D, F) ET-1の分布(ET-1抗体染色)
(B) 絨毛、(D) 筋層、(F) 絨毛の断面図
(G-O) ET-2/VICはVIPと一部、共局在する:
(G, J, M) ET-2/VIC抗体染色、(H、K、N)VIP抗体染色、(I, L, O)両者の共染色(共局在)
図5中、
(A, C, E) ET-2/VICの分布(ET-2/VIC抗体染色)
(A) 絨毛、 (C) 筋層、(E) 絨毛の断面図
(B, D, F) ET-1の分布(ET-1抗体染色)
(B) 絨毛、(D) 筋層、(F) 絨毛の断面図
(G-O) ET-2/VICはVIPと一部、共局在する:
(G, J, M) ET-2/VIC抗体染色、(H、K、N)VIP抗体染色、(I, L, O)両者の共染色(共局在)
図6中、
(A, C, D) ET-2/VICの分布(ET-2/VIC抗体染色)(B) ET-1の分布(ET-1抗体染色)
(E) M 細胞におけるET-2/VICの局在(青色:ET-2/VIC抗体と赤色:UEA-Iレクチンの二重染色)
図7中、
(A) ET-2/VICの分布(ET-2/VIC抗体染色)、(B) ET-1の分布(ET-1抗体染色)、(C-F) in situ hybridization:(C)センスプローブ(コントロール)40倍、(D-E)アンチセンスプローブ(mRNAを検出する)、(D)40倍、(E)100倍、(F)200倍
図8中、
(A) ET-2/VICの分布(ET-2/VIC抗体染色)、(B) ET-1の分布(ET-1抗体染色)
図9中
(A) 結腸、(B) 回腸、ET-2/VIC抗体染色(緑色)、CD68抗体染色(赤色)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドセリン−2及びVICに対して特異的反応性を有するポリクローナル抗体。
【請求項2】
キャリアタンパク質を結合せしめた、エンドセリン−2あるいはエンドセリン−2の部分ペプチド、及び/又はキャリアタンパク質を結合せしめた、VICあるいはVICの部分ペプチドを動物に免疫し、得られた血液から、エンドセリン−2及び/又はVICに対して特異的に反応する、請求項1に記載のポリクローナル抗体を採取することを特徴とする、抗体の製造方法。
【請求項3】
動物に対する免疫が、キャリアタンパク質を結合せしめた、エンドセリン−2あるいはエンドセリン−2の部分ペプチド、及び/又はキャリアタンパク質を結合せしめた、VICあるいはVICの部分ペプチドを、動物に対して交互に免役させることを特徴とする、請求項2に記載の抗体の製造方法。
【請求項4】
動物に対する免疫が、キャリアタンパク質を結合せしめた、エンドセリン−2の部分ペプチド及び/又VICの部分ペプチドで免役してブーストの段階でさらにエンドセリン−2及び/又はVICにより免役することを特徴とする、請求項3に記載の抗体の製造方法。
【請求項5】
動物に対する免疫が、エンドセリン−1を動物に長期にわたり免役して、脱感作せしめた後、該動物に、さらにキャリアタンパク質を結合せしめた、エンドセリン−2あるいはエンドセリン−2の部分ペプチド、及び/又はキャリアタンパク質を結合せしめた、VICあるいはVICの部分ペプチドにより免疫することを特徴とする、請求項3に記載の抗体の製造方法。
【請求項6】
エンドセリン−2の部分ペプチドが以下a)のアミノ酸配列を有する環状ペプチドであることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の抗体の製造方法。
【化1】

【請求項7】
VICの部分ペプチドが以下b)のアミノ酸配列を有する環状ペプチドであることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の抗体の製造方法。
【化2】

【請求項8】
請求項6又は7のいずれかに記載の環状ペプチドからなる、請求項1に記載のエンドセリン−2及びVICに対する特異的抗体の製造用ハプテン。
【請求項9】
請求項1に記載の抗体あるいはこれらの標識化抗体を主成分として含有する、エンドセリン−2及び/又はVICの定量試薬。
【請求項10】
請求項1に記載の抗体と、被検液および標識化エンドセリン-2及び/又はVICとを競合的に反応させ、該抗体に結合した標識化エンドセリン-2及び/又はVICの割合を測定することを特徴とする、被検液中のエンドセリン-2及び/又はVICの定量法。
【請求項11】
担体上に請求項1に記載の抗体を結合して不溶化せしめたことを特徴とする、エンドセリン−2及び/又はVICの定量用担体。
【請求項12】
担体上に不溶化した請求項1に記載の抗体に被験液を接触せしめた後、標識化されたエンドセリン-2及び/又はVICに対する抗体を接触させ、不溶化担体上に結合する標識抗体の量を測定することを特徴とする、被検液中のエンドセリン-2及び/又はVICの定量法。
【請求項13】
担体上に不溶化したエンドセリン-2/VICに対する抗体および標識化されたエンドセリン-2/VICに対する抗体の一方がエンドセリン-2/VICのN端ペプチドに結合性を有するポリクローナル抗体であり、他方がC端ペプチドに結合性を有するモノクローナル抗体である、請求項12に記載の定量法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4−1】
image rotate

【図4−2】
image rotate

【図5−1】
image rotate

【図5−2】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7−1】
image rotate

【図7−2】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−291042(P2008−291042A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193340(P2008−193340)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【分割の表示】特願2003−394068(P2003−394068)の分割
【原出願日】平成15年11月25日(2003.11.25)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】