エンドレススリングの製造方法
【課題】 ワイヤロープで形成したエンドレススリングの製造方法に関するものであって、複雑な治具を要することなく、内周長の長い場合や太径の場合であっても、短時間で容易に形成することができるエンドドレススリングの製造方法を提供する。
【解決手段】 連結部にて環状を保持した仮心綱に、解き分けを要しないワイヤロープの略中央部を仮止めし、両端部における第1撚り合わせ部と第2撚り合わせ部を両方向へ延出させる工程、一端部を仮心綱の周りであって、撚り合せ方向に対して仮心綱に巻き付くよう回転を加えながら螺旋状に撚り合わせる第1撚り合わせ工程、他端部を仮心綱の周りであって、撚り合せ方向に対して仮心綱に巻き付くよう回転を加えながら螺旋状に撚り合わせる第2撚り合わせ工程、両端部を交差させ、連結を解除して抜き出しながら、仮心綱の代わりにロープ心として入れ込む工程とを具備することを特徴とするエンドレススリングの製造方法。
【解決手段】 連結部にて環状を保持した仮心綱に、解き分けを要しないワイヤロープの略中央部を仮止めし、両端部における第1撚り合わせ部と第2撚り合わせ部を両方向へ延出させる工程、一端部を仮心綱の周りであって、撚り合せ方向に対して仮心綱に巻き付くよう回転を加えながら螺旋状に撚り合わせる第1撚り合わせ工程、他端部を仮心綱の周りであって、撚り合せ方向に対して仮心綱に巻き付くよう回転を加えながら螺旋状に撚り合わせる第2撚り合わせ工程、両端部を交差させ、連結を解除して抜き出しながら、仮心綱の代わりにロープ心として入れ込む工程とを具備することを特徴とするエンドレススリングの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤロープで形成したエンドレススリングの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンドレススリングは荷吊り作業等に使用されている輪状のスリングであり、当該加工方法の一つにグロメット加工がある。グロメット加工は以下のような手順で行われる。
【0003】
第1工程として、6本撚りのエンドレススリングを形成する場合は、所望のエンドレススリングと同じ太さの6ストランドロープで、所望のエンドレススリングの内周長の約7.5倍の長さのワイヤロープを用意する。このワイヤロープを6本のストランドに一旦解き分けて、そのうちの1本を使用する。
【0004】
第2工程として、所望のエンドレススリングの大きさの基準となるようにストランドの略中央部を組み合わせて輪状にする。
【0005】
第3工程として、ストランドの中央部から延出する右側と左側のストランドを前記輪状にした部分に撚り合わせていく。右側と左側のストランドをそれぞれ周回させ、最初の輪状の部分を含めて合計6回の周回による撚り合わせを終了する。撚り合わせずに残ったストランドは、ハンマーで叩いて撚りクセを直す。
【0006】
第4工程として、前記プレフォームを直したストランドをスパイキによって心ストランドとして入れ込んでいく。このグロメット加工によれば、6ストランドロープを構成する6本のストランドのうちの1本を用いて、心ストランドの周りに6回周回させて撚り合わせた構造となり、元のワイヤロープの径と略同径のエンドレススリングが得られるものである(例えば、非特許文献1)。
【0007】
しかし、従来のグロメット加工においては、ワイヤロープをストランドに解き分ける作業が必要となり、当該作業に長時間を要するとともに手数が掛かる問題があった。
【0008】
そこで、本願発明における出願人は、このストランドへの解き分け作業の煩雑さを改善すべく、エンドレススリングの製造方法について、すでに特許出願を行っている(例えば、特許文献1)。
当該製造方法においては、所望のエンドレススリングの内周長にエンドレススリングにおける撚り合わせ回数の倍の個数の支持体が円周上に立設してなる治具に、ストランドへの解き分けを要しないワイヤロープを略中央部から交互に絡ませ1周の輪状とした後、ワイヤロープの両端部を両方向へ延出させ、一端部を当該輪状としたワイヤロープの周りであって当該支持体の外側若しくは内側に交互に撚り合わせる第1撚り合わせ工程の後、他端部を当該輪状としたワイヤロープの周りであって当該支持体の外側若しくは内側に交互に撚り合わせる第2撚り合わせ工程を行い、その後、ワイヤロープの両端部を交差させロープ心として入れ込むものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【非特許文献1】山口芳男著「ワイヤロープ加工図解(第4版)」ワイヤロープ加工組合連合会、平成3年11月1日、p.65−69
【特許文献1】特開2007−63677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1に係る製造方法では、エンドレススリングの形成にあたり、ストランドへの解き分け作業を省略することができるものの、巻き易くする為に、所望のエンドレススリングの内周長にエンドレススリングにおける撚り合わせ回数の倍の個数の支持体を円周上に立設させた治具を設けなければならず、エンドレススリングの内周長が異なる度に、新たな治具が必要となり、コストが増大するという問題がある。
【0011】
そこで、本発明はこのような問題点を解決するものであって、ワイヤロープで形成したエンドレススリングの製造方法に関するものであって、複雑な治具を要することなく、内周長の長い場合や太径の場合であっても、短時間で容易に形成することができるエンドドレススリングの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記問題点を解決するために、本発明の請求項1に記載の発明のエンドレススリングの製造方法は、ストランドへの解き分けを要しないワイヤロープを使用したエンドレススリングの製造方法において、連結部にて環状を保持した仮心綱に、ストランドへの解き分けを要しないワイヤロープの略中央部を仮止めし、両端部における第1撚り合わせ部及び第2撚り合わせ部を両方向へ延出させる工程、一端部を仮心綱の周りであって、撚り合せ方向に対してワイヤロープが仮心綱に巻き付くよう回転を加えながら螺旋状に撚り合わせる第1撚り合わせ工程、第1撚り合わせ工程後に、他端部を仮心綱の周りであって、撚り合せ方向に対してワイヤロープが仮心綱に巻き付くよう回転を加えながら螺旋状に撚り合わせる第2撚り合わせ工程、第2撚り合わせ工程後に、ワイヤロープの両端部を交差させ、連結部における連結を解除して抜き出しながら、仮心綱の代わりに第1撚り合わせ部及び第2撚り合わせ部をロープ心として入れ込む工程、とを具備することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の請求項2に記載の発明のエンドレススリングの製造方法は、請求項1に記載のエンドレススリングの製造方法において、仮心綱に対する第1撚り合わせ工程及び第2撚り合わせ工程の撚り合わせは、ワイヤロープを仮心綱に摺接させながら行うことを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の請求項3に記載の発明のエンドレススリングの製造方法は、請求項1又は請求項2に記載のエンドレススリングの製造方法において、第1撚り合わせ部及び第2撚り合わせ部を所望のエンドレススリングの内径より小さい環状に形成したことを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の請求項4に記載の発明のエンドレススリングの製造方法は、請求項1、請求項2又は請求項3に記載のエンドレススリングの製造方法において、環状を保持した仮心綱は周上に複数の連結部を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るエンドレススリングの製造方法では、ワイヤロープを用いて形成されており、エンドレススリングを形成する場合にワイヤロープを解き分けてストランドにする必要がない。よって、内周長の長いエンドレススリングや直径(太さ)の大きいエンドレススリングを形成する場合であっても、長いワイヤロープや太径のワイヤロープをストランドに解き分ける必要がなく、ワイヤロープをそのまま使用してエンドレススリングを形成することができる。従って、ストランドに解き分ける作業時間が省略でき、エンドレススリングを形成する作業の手数を大幅に削減することができる。
また、ワイヤロープにおける第1撚り合わせ部及び第2撚り合わせ部を、撚り合せ方向に対して仮心綱に巻き付くよう回転を加えながら螺旋状に撚り合わせるので、従来におけるグロメット加工法のように、いわゆる撚りグセを有していなくても容易に撚り合わせることができる。
更に、仮心綱は連結部にて連結して保持しているので、仮心綱の代わりに第1撚り合わせ部及び第2撚り合わせ部をロープ心として入れ込む際には、連結部における連結を解除させるのみでよく、仮心綱の一部を切断していた従来と比較して、再利用が可能になるとともに、コストを削減することもできる。
【0017】
また、ストランドへの解き分けを要しないワイヤロープを使用したので、グロメット加工法における同径のエンドレススリングと比較して、極めて細い直径の素線が多数集合したものとなる。そのため、グロメット加工によるエンドレススリングより柔軟性に優れており、作業者による荷吊り作業が行いやすく、荷吊り作業の作業性を良好とすることができる。よって、重量物を荷吊りした場合であってもクセがつきにくく、僅かにクセが付いた場合であっても、手で簡単に修正でき、クセを取って元の形に戻すことができる。エンドレススリングにクセがつきにくいため、エンドレススリングの強度の低下が少なく、寿命も従来のものより長くすることができる。
【0018】
本発明の請求項2に記載の発明のエンドレススリングの製造方法では、仮心綱に対する第1撚り合わせ工程及び第2撚り合わせ工程の撚り合わせは、ワイヤロープを仮心綱に摺接させながら行うので、ワイヤロープの回転方向に作用する力はワイヤロープと仮心綱の当接箇所においては、すべりに対する力として作用する。これにより、ワイヤロープを仮心綱に締着することができるので、請求項1における製造方法よりも、更に容易に撚り合わせることができる。
【0019】
本発明の請求項3に記載の発明のエンドレススリングの製造方法では、第1撚り合わせ部及び第2撚り合わせ部を所望のエンドレススリングの内径より小さい環状に形成するので、エンドレススリングの内周長が長い場合であっても、環状に形成した第1撚り合わせ部及び第2撚り合わせ部を仮心綱の内側(外側)から外側(内側)へ容易に挿通させることができる。これにより、作業時間を短縮することができる。
【0020】
本発明の請求項4に記載の発明のエンドレススリングの製造方法では、環状を保持した仮心綱の周上に複数の連結部を有するので、隣接する連結部間の間隙を小さくすることができ、わざわざ、第1撚り合わせ部及び第2撚り合わせ部をX状にした口元付近に連結部を設けるという工程を省略することができる。これは、エンドレススリングの内周長の大きさに比例して有効的なものとなる。
更に、隣接する連結部の間に位置する仮心綱を取り除く若しくは増やすことで、内周長を調整することができるので、一つの仮心綱で多数の内周長のエンドレススリングを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るエンドレススリングの正面図である。
【図2】図1におけるP―P線の断面図である。
【図3】本発明に係るエンドレススリングの仮心綱を(a)環状にした状態の正面図、(b)連結部にて連結させる前の一部拡大正面図である。
【図4】ワイヤロープの略中心部を仮心綱に仮止部材にて固定した状態の正面図である。
【図5】本発明に係るエンドレススリングの仮心綱の周りにワイヤロープを撚り合わせた状態を示す拡大説明図である。
【図6】本発明に係るエンドレススリングの仮心綱の周りにワイヤロープを撚り合わせた状態を示す図5における(a)Q―Q線の端面簡略図、(b)R−R線の端面簡略図、(c)S−S線の端面簡略図である。
【図7】本発明に係るエンドレススリングの仮心綱の周りにワイヤロープを1周撚り合わせた状態の正面図である。
【図8】本発明に係るエンドレススリングの仮心綱の周りにワイヤロープを2周撚り合わせた状態の正面図である。
【図9】本発明に係るエンドレススリングの仮心綱の周りにワイヤロープを3周撚り合わせた状態の正面図である。
【図10】本発明に係るエンドレススリングの仮心綱の周りにワイヤロープを4周撚り合わせた状態の正面図である。
【図11】本発明に係るエンドレススリングの仮心綱の周りにワイヤロープを5周撚り合わせた状態の正面図である。
【図12】本発明に係るエンドレススリングの仮心綱の周りにワイヤロープを6周撚り合わせた状態の正面図である。
【図13】本発明に係るエンドレススリングの仮心綱を抜き出しながら、仮心綱の代わりに第1撚り合わせ部をロープ心として入れ込んでいる状態の正面図である。
【図14】本発明に係るエンドレススリングの第1撚り合わせ部に隙間を開け、その隙間に第2撚り合わせ部を貫通させた状態の正面図である。
【図15】本発明に係るエンドレススリングの別仕様の仮心綱を環状にした状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態におけるエンドレススリングの製造方法を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0023】
本発明に係るエンドレススリング1について、エンドレススリング1を形成する工程を図1から図15に従って説明する。本発明の実施の形態に係るエンドレススリング1は、図1及び図2に示すように、ワイヤロープ2が6本撚り合わされて形成される。
【0024】
図3に示すように、エンドレススリング1の形成にはワイヤロープ2と略同径とされる仮心綱3が使用される。当該仮心綱3は、図3(b)に示すように、両端部を連結部3aとし、一端部には凸部3bが形成され、他端部には凹部3cが形成されている。当該連結部3aにおける凸部3b及び凹部3cを連結させることで、仮心綱3は所望のエンドレススリング1の大きさの基準となるように環状に形成される。また、仮心綱3の全周にビニルテープを巻き付けるなどして仮心綱3であることを識別できるようにすることが望ましい。
【0025】
また、仮心綱3における連結手段は、凸部3b及び凹部3cに限られることなく、連結解除作業を容易とするものであればよい趣旨で、例えば、連結部3aの端部に永久磁石等を設けてもよい。
【0026】
エンドレススリング1を形成するワイヤロープ2は、所望のエンドレススリング1の直径(太さ)Dの1/3の直径dとし、所望のエンドレススリング1の内周長Lの約7.5倍の長さとされる。図2に示すように、6本撚りのエンドレススリング1の場合、直径(太さ)Dは元のワイヤロープ2の3倍となる。
【0027】
図4に示すようにして、ワイヤロープ2は、一端部を第1撚り合わせ部2gとし、他端部を第2撚り合わせ部2hとされる。また、エンドレススリング1への加工を容易にする為に、第1撚り合わせ部2g及び第2撚り合わせ部2hを環状に形成し、当該環状を保持すべく針金、紐等の仮止部材4にて束ねる。環状に形成された第1撚り合わせ部2g及び第2撚り合わせ部2hは、仮心綱3の内径よりも小さく形成されてあればよい。これにより、エンドレススリング1の内周長が長い場合であっても、環状に形成した第1撚り合わせ部2g及び第2撚り合わせ部2hを仮心綱3の内側(外側)から外側(内側)へ容易に挿通させることができる。
【0028】
同図に示すように、仮心綱3への撚り合わせは、まずワイヤロープ2の略中央部を仮心綱3に仮止部材4で固定して、ワイヤロープ2の略中央部分からワイヤロープ2の第1撚り合わせ部2gと第2撚り合わせ部2hが両方向に延出した状態とする。第1周目2aから第3周目2cまでの撚り合わせを第1撚り合わせ部2g又は第2撚り合わせ部2hのいずれか一方で行い、第4周目2dから第6周目2fまでの撚り合わせをいずれか他方で行う。本実施例では、第1周目2aから第3周目2cまでは第1撚り合わせ部2gで行い、第4周目2dから第6周目2fまでは第2撚り合わせ部2hで行う。尚、内周長Lの小さいエンドレススリング1の場合はワイヤロープ2の端から撚り合わせを行うこともできる。
【0029】
第1周目2aは、第1撚り合わせ部2gを用いて仮心綱3の周りに撚り合わせる。第1周目2aにおける撚り合わせの回数は、内周長L/(ワイヤロープ直径d×3×7)=回数(小数点以下切捨て)となるようにして決定する。
【0030】
このとき、本発明におけるワイヤロープ2の第1撚り合わせ部2gを仮心綱3へ捩じり合わせるようにして撚りを掛けていく。言い換えれば、図5に示すように、仮心綱3への撚り合わせ方向Xに対してワイヤロープ2が仮心綱3に巻き付くように回転を加え(図6(a)乃至(c)参照)、つる巻き螺旋状に摺接させながら巻き付けることで、ワイヤロープ2は仮心綱3に締着するようにして撚られる。
【0031】
ここで、グロメット加工法におけるワイヤロープを解き分けた1本のストランドの場合では、仮心綱に対して解き分けたストランドを回転させながら巻き付ける必要がなく、いわゆる撚りグセ同士を絡めていけば、自然と撚り合わされるものである。
【0032】
一方、本願発明においては、解き分けを有しない複数のストランドから形成されているワイヤロープ2を使用するので、グロメット加工法のように、いわゆる撚りグセ同士が絡むということはない。そこで、本願発明では撚りグセに相当するよう、仮心綱3に対してワイヤロープ2を回転させ、摺接させながら巻き付けることが必要となる。すなわち、複数のストランドから形成されることで弾性に富んだワイヤロープ2を使用し、仮心綱3に対して回転させ、且つ、摺接させながら巻き付けることで、ワイヤロープ2の回転方向に作用する力はワイヤロープ2と仮心綱3の当接箇所においては、すべりに対する力として作用する。これにより、ワイヤロープ2を仮心綱3に締着することができるので、いわゆる撚りグセを有していなくても容易に撚り合わせることができる。
【0033】
また、撚りの長さ(ピッチ)については、撚り合わせの回数に誤りがなければ、複数のストランドから形成され弾性に富むワイヤロープ2を使用しているので、後述するように小さいハンマー等で軽く叩いて形を整えるだけで、撚りの長さは容易に調整することができる。
【0034】
このようにして、図7に示すように第1周目2aの撚り合わせを行った後、図8及び図9に示すようにして、同様の方法で、引き続き第2周目2b、第3周目2cを撚り合わせる。第2周目2b、第3周目2cは、第1周目2aにおけるワイヤロープ2の撚り合わせ方向に対して前に沿わせるか、後に沿わせるかを決めて撚り合わせる。本実施例では撚り合わせ方向に対して前に沿うようにして撚り合わせている。それぞれ重ならないように沿わせて、同じ回数だけ巻き付ける。
【0035】
次に、図10に示すように、第2撚り合わせ部2hを用いて、同様の方法で、仮心綱3に対してワイヤロープ2を回転させ、摺接させながら巻き付けて、第4周目2dを撚り合わせる。第4周目2dは、第1周目2aに沿わせるようにして撚り合わせる。
【0036】
第4周目34の撚り合わせを行った後、図11及び図12に示すようにして、引き続き第5周目2e、第6周目2fを撚り合わせる。本実施例では第2周目2b、第3周目2cは、第1周目2aのワイヤロープ2の撚り合わせ方向に対して前に沿うようにして撚り合わせているため、第5周目2e、第6周目2fについても、第4周目2dのワイヤロープ2の撚り合わせ方向に対して前に沿うように撚り合わせる。それぞれ重ならないように沿わせて、同じ回数だけ巻き付ける。
【0037】
第5周目2eの撚り合わせが終わった時点で、第6周目2fのワイヤロープ2が入る間隙があるか確認する。第6周目2fのワイヤロープ2は、1回転撚り合わせる毎に小さいハンマーで軽く叩いて形を整えることが望ましい。
【0038】
図12に示すように、第1周目2aから第6周目2fまでの撚り合わせが完了した時点で、第1撚り合わせ部2gと第2撚り合わせ部2hとが向かい合わせで同じ位置に出ているか確認する。正しく撚り合わせられていることを確認した後、第1撚り合わせ部2gと、第2撚り合わせ部2hをX状に交差させる。
【0039】
交差させた後、ワイヤロープ2のストランド間に隙間を開け、その隙間に他のワイヤロープを差し込む専用器具(「じょうご」あるいは「ラッパ」という)を使用して、初めに口入したワイヤロープ2である第1撚り合わせ部2gに隙間を開け、その隙間に第2撚り合わせ部2hを貫通させる(図14参照)。これにより、第1撚り合わせ部2g及び第2撚り合わせ部2hは、X状になった口元2iにて仮止め状態となる。このとき、仮心綱3における連結部3aの連結解除作業を容易に行う為に、仮心綱3における連結部3aは、口元2i付近であることが望ましい。
【0040】
図13に示すように、X状になった口元2iからスパイキ5を用いて、仮心綱3を外に出し、連結部3の連結を解除する。そして、仮心綱3をスパイキ5で抜き出しながら、仮心綱3の代わりに第1撚り合わせ部2g又は第2撚り合わせ部2hのいずれかを、別のスパイキ5を用いてロープ心として入れ込んでいく。本実施例では第1撚り合わせ部2gを初めにロープ心として入れ込んでいる。
【0041】
その後、貫通させた第2撚り合わせ部2hを第1撚り合わせ部2gと同様にして、仮心綱3を抜き出しながら代わりにロープ心として入れ込んでいく。仮心綱3とワイヤロープ2を固定していた仮止部材4は除去する。
【0042】
ロープ心は、X状になった口元2iから略対向する位置近くまで入れ込む。ロープ心の両端はエンドレススリング1の直径(太さ)Dと同じ程度間隔を空けることとし、ロープ心の端部はバラけないように繊維の紐を巻くことが望ましい。ロープ心を中に納めてからエンドレススリング1をハンマーで軽く叩いて全体をなじませてエンドレススリング1の形成を完了する。尚、エンドレススリング1には吊り荷やフックに当たる部分または全体に、磨耗、損傷を防ぐため、強度を保つためにマニラロープ、合繊ロープ、ワイヤロープ、シージング(針金)等を巻き付けて保護(サービング)してもよい。
【0043】
本実施例における仮心綱3は、連結部3aを1箇所のみとしたが、図15に示すように、環状における仮心綱3の周上に等間隔に複数の連結部3aを設けることもできる。連結部3aは、可能な限り多く設けることが望ましい。これにより、隣接する連結部3a間の間隙を小さくすることができ、わざわざ、第1撚り合わせ部2g及び第2撚り合わせ部2hをX状にした口元2i付近に連結部3aを設けるという工程を省略することができる。これは、エンドレススリング1の内周長の大きさに比例して有効的なものとなる。
【0044】
更に、複数の連結部3aを設けた場合であって、隣接する連結部3aの間に位置する仮心綱6を取り除く若しくは増やすことで、内周長を調整することができるので、一つの仮心綱6で多数の内周長のエンドレススリングを形成することができる。これらの仮心綱3、6には、連結式のフレキシブルパイプ、合成樹脂製のパイプ等を採用することもできる。
【符号の説明】
【0045】
1 エンドレススリング
2 ワイヤロープ
2a 第1周目
2b 第2周目
2c 第3周目
2d 第4周目
2e 第5周目
2f 第6周目
2g 第1撚り合わせ部
2h 第2撚り合わせ部
2i 口元
3、6 仮心綱
3a 連結部
3b 凸部
3c 凹部
4 仮止部材
5 スパイキ
D エンドレススリングの直径
d ワイヤロープの直径
L 内周長
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤロープで形成したエンドレススリングの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンドレススリングは荷吊り作業等に使用されている輪状のスリングであり、当該加工方法の一つにグロメット加工がある。グロメット加工は以下のような手順で行われる。
【0003】
第1工程として、6本撚りのエンドレススリングを形成する場合は、所望のエンドレススリングと同じ太さの6ストランドロープで、所望のエンドレススリングの内周長の約7.5倍の長さのワイヤロープを用意する。このワイヤロープを6本のストランドに一旦解き分けて、そのうちの1本を使用する。
【0004】
第2工程として、所望のエンドレススリングの大きさの基準となるようにストランドの略中央部を組み合わせて輪状にする。
【0005】
第3工程として、ストランドの中央部から延出する右側と左側のストランドを前記輪状にした部分に撚り合わせていく。右側と左側のストランドをそれぞれ周回させ、最初の輪状の部分を含めて合計6回の周回による撚り合わせを終了する。撚り合わせずに残ったストランドは、ハンマーで叩いて撚りクセを直す。
【0006】
第4工程として、前記プレフォームを直したストランドをスパイキによって心ストランドとして入れ込んでいく。このグロメット加工によれば、6ストランドロープを構成する6本のストランドのうちの1本を用いて、心ストランドの周りに6回周回させて撚り合わせた構造となり、元のワイヤロープの径と略同径のエンドレススリングが得られるものである(例えば、非特許文献1)。
【0007】
しかし、従来のグロメット加工においては、ワイヤロープをストランドに解き分ける作業が必要となり、当該作業に長時間を要するとともに手数が掛かる問題があった。
【0008】
そこで、本願発明における出願人は、このストランドへの解き分け作業の煩雑さを改善すべく、エンドレススリングの製造方法について、すでに特許出願を行っている(例えば、特許文献1)。
当該製造方法においては、所望のエンドレススリングの内周長にエンドレススリングにおける撚り合わせ回数の倍の個数の支持体が円周上に立設してなる治具に、ストランドへの解き分けを要しないワイヤロープを略中央部から交互に絡ませ1周の輪状とした後、ワイヤロープの両端部を両方向へ延出させ、一端部を当該輪状としたワイヤロープの周りであって当該支持体の外側若しくは内側に交互に撚り合わせる第1撚り合わせ工程の後、他端部を当該輪状としたワイヤロープの周りであって当該支持体の外側若しくは内側に交互に撚り合わせる第2撚り合わせ工程を行い、その後、ワイヤロープの両端部を交差させロープ心として入れ込むものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【非特許文献1】山口芳男著「ワイヤロープ加工図解(第4版)」ワイヤロープ加工組合連合会、平成3年11月1日、p.65−69
【特許文献1】特開2007−63677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1に係る製造方法では、エンドレススリングの形成にあたり、ストランドへの解き分け作業を省略することができるものの、巻き易くする為に、所望のエンドレススリングの内周長にエンドレススリングにおける撚り合わせ回数の倍の個数の支持体を円周上に立設させた治具を設けなければならず、エンドレススリングの内周長が異なる度に、新たな治具が必要となり、コストが増大するという問題がある。
【0011】
そこで、本発明はこのような問題点を解決するものであって、ワイヤロープで形成したエンドレススリングの製造方法に関するものであって、複雑な治具を要することなく、内周長の長い場合や太径の場合であっても、短時間で容易に形成することができるエンドドレススリングの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記問題点を解決するために、本発明の請求項1に記載の発明のエンドレススリングの製造方法は、ストランドへの解き分けを要しないワイヤロープを使用したエンドレススリングの製造方法において、連結部にて環状を保持した仮心綱に、ストランドへの解き分けを要しないワイヤロープの略中央部を仮止めし、両端部における第1撚り合わせ部及び第2撚り合わせ部を両方向へ延出させる工程、一端部を仮心綱の周りであって、撚り合せ方向に対してワイヤロープが仮心綱に巻き付くよう回転を加えながら螺旋状に撚り合わせる第1撚り合わせ工程、第1撚り合わせ工程後に、他端部を仮心綱の周りであって、撚り合せ方向に対してワイヤロープが仮心綱に巻き付くよう回転を加えながら螺旋状に撚り合わせる第2撚り合わせ工程、第2撚り合わせ工程後に、ワイヤロープの両端部を交差させ、連結部における連結を解除して抜き出しながら、仮心綱の代わりに第1撚り合わせ部及び第2撚り合わせ部をロープ心として入れ込む工程、とを具備することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の請求項2に記載の発明のエンドレススリングの製造方法は、請求項1に記載のエンドレススリングの製造方法において、仮心綱に対する第1撚り合わせ工程及び第2撚り合わせ工程の撚り合わせは、ワイヤロープを仮心綱に摺接させながら行うことを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の請求項3に記載の発明のエンドレススリングの製造方法は、請求項1又は請求項2に記載のエンドレススリングの製造方法において、第1撚り合わせ部及び第2撚り合わせ部を所望のエンドレススリングの内径より小さい環状に形成したことを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の請求項4に記載の発明のエンドレススリングの製造方法は、請求項1、請求項2又は請求項3に記載のエンドレススリングの製造方法において、環状を保持した仮心綱は周上に複数の連結部を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るエンドレススリングの製造方法では、ワイヤロープを用いて形成されており、エンドレススリングを形成する場合にワイヤロープを解き分けてストランドにする必要がない。よって、内周長の長いエンドレススリングや直径(太さ)の大きいエンドレススリングを形成する場合であっても、長いワイヤロープや太径のワイヤロープをストランドに解き分ける必要がなく、ワイヤロープをそのまま使用してエンドレススリングを形成することができる。従って、ストランドに解き分ける作業時間が省略でき、エンドレススリングを形成する作業の手数を大幅に削減することができる。
また、ワイヤロープにおける第1撚り合わせ部及び第2撚り合わせ部を、撚り合せ方向に対して仮心綱に巻き付くよう回転を加えながら螺旋状に撚り合わせるので、従来におけるグロメット加工法のように、いわゆる撚りグセを有していなくても容易に撚り合わせることができる。
更に、仮心綱は連結部にて連結して保持しているので、仮心綱の代わりに第1撚り合わせ部及び第2撚り合わせ部をロープ心として入れ込む際には、連結部における連結を解除させるのみでよく、仮心綱の一部を切断していた従来と比較して、再利用が可能になるとともに、コストを削減することもできる。
【0017】
また、ストランドへの解き分けを要しないワイヤロープを使用したので、グロメット加工法における同径のエンドレススリングと比較して、極めて細い直径の素線が多数集合したものとなる。そのため、グロメット加工によるエンドレススリングより柔軟性に優れており、作業者による荷吊り作業が行いやすく、荷吊り作業の作業性を良好とすることができる。よって、重量物を荷吊りした場合であってもクセがつきにくく、僅かにクセが付いた場合であっても、手で簡単に修正でき、クセを取って元の形に戻すことができる。エンドレススリングにクセがつきにくいため、エンドレススリングの強度の低下が少なく、寿命も従来のものより長くすることができる。
【0018】
本発明の請求項2に記載の発明のエンドレススリングの製造方法では、仮心綱に対する第1撚り合わせ工程及び第2撚り合わせ工程の撚り合わせは、ワイヤロープを仮心綱に摺接させながら行うので、ワイヤロープの回転方向に作用する力はワイヤロープと仮心綱の当接箇所においては、すべりに対する力として作用する。これにより、ワイヤロープを仮心綱に締着することができるので、請求項1における製造方法よりも、更に容易に撚り合わせることができる。
【0019】
本発明の請求項3に記載の発明のエンドレススリングの製造方法では、第1撚り合わせ部及び第2撚り合わせ部を所望のエンドレススリングの内径より小さい環状に形成するので、エンドレススリングの内周長が長い場合であっても、環状に形成した第1撚り合わせ部及び第2撚り合わせ部を仮心綱の内側(外側)から外側(内側)へ容易に挿通させることができる。これにより、作業時間を短縮することができる。
【0020】
本発明の請求項4に記載の発明のエンドレススリングの製造方法では、環状を保持した仮心綱の周上に複数の連結部を有するので、隣接する連結部間の間隙を小さくすることができ、わざわざ、第1撚り合わせ部及び第2撚り合わせ部をX状にした口元付近に連結部を設けるという工程を省略することができる。これは、エンドレススリングの内周長の大きさに比例して有効的なものとなる。
更に、隣接する連結部の間に位置する仮心綱を取り除く若しくは増やすことで、内周長を調整することができるので、一つの仮心綱で多数の内周長のエンドレススリングを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るエンドレススリングの正面図である。
【図2】図1におけるP―P線の断面図である。
【図3】本発明に係るエンドレススリングの仮心綱を(a)環状にした状態の正面図、(b)連結部にて連結させる前の一部拡大正面図である。
【図4】ワイヤロープの略中心部を仮心綱に仮止部材にて固定した状態の正面図である。
【図5】本発明に係るエンドレススリングの仮心綱の周りにワイヤロープを撚り合わせた状態を示す拡大説明図である。
【図6】本発明に係るエンドレススリングの仮心綱の周りにワイヤロープを撚り合わせた状態を示す図5における(a)Q―Q線の端面簡略図、(b)R−R線の端面簡略図、(c)S−S線の端面簡略図である。
【図7】本発明に係るエンドレススリングの仮心綱の周りにワイヤロープを1周撚り合わせた状態の正面図である。
【図8】本発明に係るエンドレススリングの仮心綱の周りにワイヤロープを2周撚り合わせた状態の正面図である。
【図9】本発明に係るエンドレススリングの仮心綱の周りにワイヤロープを3周撚り合わせた状態の正面図である。
【図10】本発明に係るエンドレススリングの仮心綱の周りにワイヤロープを4周撚り合わせた状態の正面図である。
【図11】本発明に係るエンドレススリングの仮心綱の周りにワイヤロープを5周撚り合わせた状態の正面図である。
【図12】本発明に係るエンドレススリングの仮心綱の周りにワイヤロープを6周撚り合わせた状態の正面図である。
【図13】本発明に係るエンドレススリングの仮心綱を抜き出しながら、仮心綱の代わりに第1撚り合わせ部をロープ心として入れ込んでいる状態の正面図である。
【図14】本発明に係るエンドレススリングの第1撚り合わせ部に隙間を開け、その隙間に第2撚り合わせ部を貫通させた状態の正面図である。
【図15】本発明に係るエンドレススリングの別仕様の仮心綱を環状にした状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態におけるエンドレススリングの製造方法を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0023】
本発明に係るエンドレススリング1について、エンドレススリング1を形成する工程を図1から図15に従って説明する。本発明の実施の形態に係るエンドレススリング1は、図1及び図2に示すように、ワイヤロープ2が6本撚り合わされて形成される。
【0024】
図3に示すように、エンドレススリング1の形成にはワイヤロープ2と略同径とされる仮心綱3が使用される。当該仮心綱3は、図3(b)に示すように、両端部を連結部3aとし、一端部には凸部3bが形成され、他端部には凹部3cが形成されている。当該連結部3aにおける凸部3b及び凹部3cを連結させることで、仮心綱3は所望のエンドレススリング1の大きさの基準となるように環状に形成される。また、仮心綱3の全周にビニルテープを巻き付けるなどして仮心綱3であることを識別できるようにすることが望ましい。
【0025】
また、仮心綱3における連結手段は、凸部3b及び凹部3cに限られることなく、連結解除作業を容易とするものであればよい趣旨で、例えば、連結部3aの端部に永久磁石等を設けてもよい。
【0026】
エンドレススリング1を形成するワイヤロープ2は、所望のエンドレススリング1の直径(太さ)Dの1/3の直径dとし、所望のエンドレススリング1の内周長Lの約7.5倍の長さとされる。図2に示すように、6本撚りのエンドレススリング1の場合、直径(太さ)Dは元のワイヤロープ2の3倍となる。
【0027】
図4に示すようにして、ワイヤロープ2は、一端部を第1撚り合わせ部2gとし、他端部を第2撚り合わせ部2hとされる。また、エンドレススリング1への加工を容易にする為に、第1撚り合わせ部2g及び第2撚り合わせ部2hを環状に形成し、当該環状を保持すべく針金、紐等の仮止部材4にて束ねる。環状に形成された第1撚り合わせ部2g及び第2撚り合わせ部2hは、仮心綱3の内径よりも小さく形成されてあればよい。これにより、エンドレススリング1の内周長が長い場合であっても、環状に形成した第1撚り合わせ部2g及び第2撚り合わせ部2hを仮心綱3の内側(外側)から外側(内側)へ容易に挿通させることができる。
【0028】
同図に示すように、仮心綱3への撚り合わせは、まずワイヤロープ2の略中央部を仮心綱3に仮止部材4で固定して、ワイヤロープ2の略中央部分からワイヤロープ2の第1撚り合わせ部2gと第2撚り合わせ部2hが両方向に延出した状態とする。第1周目2aから第3周目2cまでの撚り合わせを第1撚り合わせ部2g又は第2撚り合わせ部2hのいずれか一方で行い、第4周目2dから第6周目2fまでの撚り合わせをいずれか他方で行う。本実施例では、第1周目2aから第3周目2cまでは第1撚り合わせ部2gで行い、第4周目2dから第6周目2fまでは第2撚り合わせ部2hで行う。尚、内周長Lの小さいエンドレススリング1の場合はワイヤロープ2の端から撚り合わせを行うこともできる。
【0029】
第1周目2aは、第1撚り合わせ部2gを用いて仮心綱3の周りに撚り合わせる。第1周目2aにおける撚り合わせの回数は、内周長L/(ワイヤロープ直径d×3×7)=回数(小数点以下切捨て)となるようにして決定する。
【0030】
このとき、本発明におけるワイヤロープ2の第1撚り合わせ部2gを仮心綱3へ捩じり合わせるようにして撚りを掛けていく。言い換えれば、図5に示すように、仮心綱3への撚り合わせ方向Xに対してワイヤロープ2が仮心綱3に巻き付くように回転を加え(図6(a)乃至(c)参照)、つる巻き螺旋状に摺接させながら巻き付けることで、ワイヤロープ2は仮心綱3に締着するようにして撚られる。
【0031】
ここで、グロメット加工法におけるワイヤロープを解き分けた1本のストランドの場合では、仮心綱に対して解き分けたストランドを回転させながら巻き付ける必要がなく、いわゆる撚りグセ同士を絡めていけば、自然と撚り合わされるものである。
【0032】
一方、本願発明においては、解き分けを有しない複数のストランドから形成されているワイヤロープ2を使用するので、グロメット加工法のように、いわゆる撚りグセ同士が絡むということはない。そこで、本願発明では撚りグセに相当するよう、仮心綱3に対してワイヤロープ2を回転させ、摺接させながら巻き付けることが必要となる。すなわち、複数のストランドから形成されることで弾性に富んだワイヤロープ2を使用し、仮心綱3に対して回転させ、且つ、摺接させながら巻き付けることで、ワイヤロープ2の回転方向に作用する力はワイヤロープ2と仮心綱3の当接箇所においては、すべりに対する力として作用する。これにより、ワイヤロープ2を仮心綱3に締着することができるので、いわゆる撚りグセを有していなくても容易に撚り合わせることができる。
【0033】
また、撚りの長さ(ピッチ)については、撚り合わせの回数に誤りがなければ、複数のストランドから形成され弾性に富むワイヤロープ2を使用しているので、後述するように小さいハンマー等で軽く叩いて形を整えるだけで、撚りの長さは容易に調整することができる。
【0034】
このようにして、図7に示すように第1周目2aの撚り合わせを行った後、図8及び図9に示すようにして、同様の方法で、引き続き第2周目2b、第3周目2cを撚り合わせる。第2周目2b、第3周目2cは、第1周目2aにおけるワイヤロープ2の撚り合わせ方向に対して前に沿わせるか、後に沿わせるかを決めて撚り合わせる。本実施例では撚り合わせ方向に対して前に沿うようにして撚り合わせている。それぞれ重ならないように沿わせて、同じ回数だけ巻き付ける。
【0035】
次に、図10に示すように、第2撚り合わせ部2hを用いて、同様の方法で、仮心綱3に対してワイヤロープ2を回転させ、摺接させながら巻き付けて、第4周目2dを撚り合わせる。第4周目2dは、第1周目2aに沿わせるようにして撚り合わせる。
【0036】
第4周目34の撚り合わせを行った後、図11及び図12に示すようにして、引き続き第5周目2e、第6周目2fを撚り合わせる。本実施例では第2周目2b、第3周目2cは、第1周目2aのワイヤロープ2の撚り合わせ方向に対して前に沿うようにして撚り合わせているため、第5周目2e、第6周目2fについても、第4周目2dのワイヤロープ2の撚り合わせ方向に対して前に沿うように撚り合わせる。それぞれ重ならないように沿わせて、同じ回数だけ巻き付ける。
【0037】
第5周目2eの撚り合わせが終わった時点で、第6周目2fのワイヤロープ2が入る間隙があるか確認する。第6周目2fのワイヤロープ2は、1回転撚り合わせる毎に小さいハンマーで軽く叩いて形を整えることが望ましい。
【0038】
図12に示すように、第1周目2aから第6周目2fまでの撚り合わせが完了した時点で、第1撚り合わせ部2gと第2撚り合わせ部2hとが向かい合わせで同じ位置に出ているか確認する。正しく撚り合わせられていることを確認した後、第1撚り合わせ部2gと、第2撚り合わせ部2hをX状に交差させる。
【0039】
交差させた後、ワイヤロープ2のストランド間に隙間を開け、その隙間に他のワイヤロープを差し込む専用器具(「じょうご」あるいは「ラッパ」という)を使用して、初めに口入したワイヤロープ2である第1撚り合わせ部2gに隙間を開け、その隙間に第2撚り合わせ部2hを貫通させる(図14参照)。これにより、第1撚り合わせ部2g及び第2撚り合わせ部2hは、X状になった口元2iにて仮止め状態となる。このとき、仮心綱3における連結部3aの連結解除作業を容易に行う為に、仮心綱3における連結部3aは、口元2i付近であることが望ましい。
【0040】
図13に示すように、X状になった口元2iからスパイキ5を用いて、仮心綱3を外に出し、連結部3の連結を解除する。そして、仮心綱3をスパイキ5で抜き出しながら、仮心綱3の代わりに第1撚り合わせ部2g又は第2撚り合わせ部2hのいずれかを、別のスパイキ5を用いてロープ心として入れ込んでいく。本実施例では第1撚り合わせ部2gを初めにロープ心として入れ込んでいる。
【0041】
その後、貫通させた第2撚り合わせ部2hを第1撚り合わせ部2gと同様にして、仮心綱3を抜き出しながら代わりにロープ心として入れ込んでいく。仮心綱3とワイヤロープ2を固定していた仮止部材4は除去する。
【0042】
ロープ心は、X状になった口元2iから略対向する位置近くまで入れ込む。ロープ心の両端はエンドレススリング1の直径(太さ)Dと同じ程度間隔を空けることとし、ロープ心の端部はバラけないように繊維の紐を巻くことが望ましい。ロープ心を中に納めてからエンドレススリング1をハンマーで軽く叩いて全体をなじませてエンドレススリング1の形成を完了する。尚、エンドレススリング1には吊り荷やフックに当たる部分または全体に、磨耗、損傷を防ぐため、強度を保つためにマニラロープ、合繊ロープ、ワイヤロープ、シージング(針金)等を巻き付けて保護(サービング)してもよい。
【0043】
本実施例における仮心綱3は、連結部3aを1箇所のみとしたが、図15に示すように、環状における仮心綱3の周上に等間隔に複数の連結部3aを設けることもできる。連結部3aは、可能な限り多く設けることが望ましい。これにより、隣接する連結部3a間の間隙を小さくすることができ、わざわざ、第1撚り合わせ部2g及び第2撚り合わせ部2hをX状にした口元2i付近に連結部3aを設けるという工程を省略することができる。これは、エンドレススリング1の内周長の大きさに比例して有効的なものとなる。
【0044】
更に、複数の連結部3aを設けた場合であって、隣接する連結部3aの間に位置する仮心綱6を取り除く若しくは増やすことで、内周長を調整することができるので、一つの仮心綱6で多数の内周長のエンドレススリングを形成することができる。これらの仮心綱3、6には、連結式のフレキシブルパイプ、合成樹脂製のパイプ等を採用することもできる。
【符号の説明】
【0045】
1 エンドレススリング
2 ワイヤロープ
2a 第1周目
2b 第2周目
2c 第3周目
2d 第4周目
2e 第5周目
2f 第6周目
2g 第1撚り合わせ部
2h 第2撚り合わせ部
2i 口元
3、6 仮心綱
3a 連結部
3b 凸部
3c 凹部
4 仮止部材
5 スパイキ
D エンドレススリングの直径
d ワイヤロープの直径
L 内周長
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストランドへの解き分けを要しないワイヤロープを使用したエンドレススリングの製造方法において、
連結部にて環状を保持した仮心綱に、
ストランドへの解き分けを要しないワイヤロープの略中央部を仮止めし、両端部における第1撚り合わせ部及び第2撚り合わせ部を両方向へ延出させる工程、
一端部を仮心綱の周りであって、撚り合せ方向に対してワイヤロープが仮心綱に巻き付くよう回転を加えながら螺旋状に撚り合わせる第1撚り合わせ工程、
第1撚り合わせ工程後に、他端部を仮心綱の周りであって、撚り合せ方向に対してワイヤロープが仮心綱に巻き付くよう回転を加えながら螺旋状に撚り合わせる第2撚り合わせ工程、
第2撚り合わせ工程後に、ワイヤロープの両端部を交差させ、連結部における連結を解除して抜き出しながら、仮心綱の代わりに第1撚り合わせ部及び第2撚り合わせ部をロープ心として入れ込む工程、
とを具備することを特徴とするエンドレススリングの製造方法。
【請求項2】
仮心綱に対する第1撚り合わせ工程及び第2撚り合わせ工程の撚り合わせは、ワイヤロープを仮心綱に摺接させながら行うことを特徴とする請求項1に記載のエンドレススリングの製造方法。
【請求項3】
第1撚り合わせ部及び第2撚り合わせ部を所望のエンドレススリングの内径より小さい環状に形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエンドレススリングの製造方法。
【請求項4】
環状を保持した仮心綱は周上に複数の連結部を有することを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載のエンドレススリングの製造方法。
【請求項1】
ストランドへの解き分けを要しないワイヤロープを使用したエンドレススリングの製造方法において、
連結部にて環状を保持した仮心綱に、
ストランドへの解き分けを要しないワイヤロープの略中央部を仮止めし、両端部における第1撚り合わせ部及び第2撚り合わせ部を両方向へ延出させる工程、
一端部を仮心綱の周りであって、撚り合せ方向に対してワイヤロープが仮心綱に巻き付くよう回転を加えながら螺旋状に撚り合わせる第1撚り合わせ工程、
第1撚り合わせ工程後に、他端部を仮心綱の周りであって、撚り合せ方向に対してワイヤロープが仮心綱に巻き付くよう回転を加えながら螺旋状に撚り合わせる第2撚り合わせ工程、
第2撚り合わせ工程後に、ワイヤロープの両端部を交差させ、連結部における連結を解除して抜き出しながら、仮心綱の代わりに第1撚り合わせ部及び第2撚り合わせ部をロープ心として入れ込む工程、
とを具備することを特徴とするエンドレススリングの製造方法。
【請求項2】
仮心綱に対する第1撚り合わせ工程及び第2撚り合わせ工程の撚り合わせは、ワイヤロープを仮心綱に摺接させながら行うことを特徴とする請求項1に記載のエンドレススリングの製造方法。
【請求項3】
第1撚り合わせ部及び第2撚り合わせ部を所望のエンドレススリングの内径より小さい環状に形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエンドレススリングの製造方法。
【請求項4】
環状を保持した仮心綱は周上に複数の連結部を有することを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載のエンドレススリングの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−185150(P2010−185150A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29598(P2009−29598)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(304010570)大 綱 株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(304010570)大 綱 株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
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