説明

エンボス付き光学ポリマフィルムおよびその製造方法

【課題】光学的性質を劣化させることなく、しかもより速い速度で、光学ポリマフィルムを熱的にエンボス加工する方法、およびこの方法により作製されるエンボス付き光学ポリマフィルムを提供する。
【解決手段】第1の主要面および第2の主要面を有する光学ポリマフィルムを提供するステップと、第1の主要面および第2の主要面のうちの少なくとも1つを軟化させて軟化面を形成するステップと、軟化面にエンボス加工を施してエンボス付き光学ポリマフィルムを作製するステップと、エンボス付き光学ポリマフィルムを冷却するステップとを含むことを特徴とするエンボス付き光学ポリマフィルムの製造方法、ならびにこの製造方法により作製されるエンボス付き光学フィルムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ポリマフィルムに関する。特に、本発明は、エンボス付き光学ポリマフィルムの製造方法およびこの製造方法により作製されるフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的には、異なる屈折率を有する材料を選択することと、フィルムが光と相互作用したときに所望の光学効果を生じる空間的位置関係で材料を配置することとを組合せることによって、光学フィルムに光学的性質が付与される。
【0003】
光学ポリマフィルムとは、特定の所望の光学効果を呈するフィルムである。具体的には、これらのフィルムとしては、特定の帯域の電磁エネルギーに暴露したときに、光の反射、透過、吸収、または屈折を起こすようにデザインされたポリマフィルムが挙げられる。様々な性質を有するこうした光学ポリマフィルムを作製することが可能である。あるクラスの光学フィルムは、過剰の熱に暴露した場合、有効な光学的性能を失うであろう。このクラスでは、その光学的性質の多くは、異なる屈折率を有する少なくとも2種の異なるポリマの多層構成またはブレンド構成によって付与される。この屈折率の差は、少なくとも1種のポリマ材料が応力誘導複屈折を起こすことが可能である場合には、配向または延伸プロセスにより増強させてもよい。このようなプロセスによって、関連したポリマ領域は、仕様通りに所望の波長範囲で相互作用を起こすことのできる厚さまで薄層化される。こうした領域は、異なるフィルムの薄層の形態または第2のポリママトリックス内の薄い不連続なポリマ領域の形態であってもよい。過剰の熱に暴露されると、離散したポリマ層の混合が誘発される可能性があり、配向させた多層フィルムまたはブレンドフィルムの場合には、配向により付与された秩序特性が緩和される傾向を示す。
【0004】
このクラスの配向フィルムとしては、多層フィルムおよび2種以上のポリマ材料のブレンドからなるフィルムが挙げられる。多層フィルムでは、各層が光の波長に相当する距離の何分の1かの厚さを有する多数の層によって、反射および透過特性が付与される。多層フィルムは、反射用途に有用である。このタイプのフィルムには、例えば、偏光子、可視および赤外ミラー、および着色フィルムが含まれ、具体的には、特許文献1、特許文献2、および特許文献3、ならびに特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献18、および特許文献19、ならびに特許文献20および特許文献21に記載のフィルムが挙げられる。ブレンド構成では、主要軸に垂直で光の波長に相当する距離の何分の1かの横断面直径を有する不連続ポリマ領域を存在させることによって、反射および透過特性が付与される。また、配向処理によって、このようなフィルムに所望の光学的性質を付与することも可能である。このようなフィルムとしては、例えば、特許文献22(米国特許出願第09/006455号として出願されたもの)および特許文献23に記載のブレンドミラーおよび偏光子が挙げられる。
【0005】
第2のクラスの光学フィルムは、過剰の熱の影響を比較的受けにくい。このクラスでは、その光学的性質の多くは、可撓性ポリマ層の表面上の硬質な複製プリズム形状によって付与される。これらの秩序形状は、フィルムの反射光学特性のほとんどを提供する。通常、これらの形状を硬化させ、支持ポリマ層よりも耐熱性が高くなるように設定される。硬化形状の光学特性は、熱によって簡単に変化することはない。これらのフィルムは、用途にもよるが、透過モード、反射モード、または屈折モードで使用可能である。このクラスのフィルムとしては、例えば、特許文献24、特許文献25、特許文献26、および特許文献27に記載されているような秩序形状の反射コーナキューブシートが挙げられる。
【0006】
光学フィルムの表面にエンボス加工を施すことにより、光学的または機械的性質を調節することができる。物理的なエンボス加工を施すと、すなわち、機械工作された表面に光学フィルムの表面を押圧して輪郭面を形成すると、使用される典型的なポリマ材料の硬度に起因して、一般的には、浅い輪郭が得られる。熱的なエンボス加工を施すと、すなわち、機械工作された表面を加熱し、この加熱表面に光学フィルムの表面を加圧接触させる処理にかけると、より深い輪郭すなわち窪みを有するパターンが得られる。しかしながら、加熱表面と接触フィルムとの間の熱移動の効率が高いため、典型的には、接触時間の大半にわたって、フィルムはその融点付近まで加熱される。その結果、しばしば、フィルム内の空間的位置関係は損なわれ、フィルムの光学的性質は悪影響を受ける。配向フィルム層の制御厚さは、無秩序になる可能性があり、繊維質不連続領域の秩序整列は、不整列になる可能性がある。硬化させた反射フィルムの光学的性質の劣化に対する関心は、一般的にはより低く、これらのフィルムの場合にも、熱い機械工作表面を用いて簡単にエンボス加工を施すことはできない。硬化させた反射フィルムは大きな放熱能力を有するため、このようなフィルムの製造に使用される生産速度は制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際特許公開WO 95/17303号公報
【特許文献2】国際特許公開WO 96/19347号公報
【特許文献3】国際特許公開WO 97/01440号公報
【特許文献4】米国特許第5,103,337号明細書(Schrenk)
【特許文献5】米国特許第第5,122,905号明細書(Wheatleyら)
【特許文献6】米国特許第第5,122,906号明細書(Wheatley)
【特許文献7】米国特許第第5,126,880号明細書(Wheatley)
【特許文献8】米国特許第第5,217,794号明細書(Schrenk)
【特許文献9】米国特許第第5,233,465号明細書(Schrenk)
【特許文献10】米国特許第第5,262,894号明細書(Wheatley)
【特許文献11】米国特許第第5,278,694号明細書(Wheatley)
【特許文献12】米国特許第第5,339,198号明細書(Wheatley)
【特許文献13】米国特許第第5,360,659号明細書(Arends)
【特許文献14】米国特許第第5,448,404号明細書(Schrenk)
【特許文献15】米国特許第第5,486,949号明細書(Schrenk)
【特許文献16】米国特許第第4,162,343号明細書(Wilcox)
【特許文献17】米国特許第第5,089,318号明細書(Shetty)
【特許文献18】米国特許第第5,154,765号明細書(Armanini)
【特許文献19】米国特許第第3,711,176号明細書(Alfrey, Jrら)
【特許文献20】再発行米国特許RE 31,780号明細書(Cooper)
【特許文献21】再発行米国特許RE 34,605号明細書(Schrenk)
【特許文献22】国際特許公開WO 97/32224号公報
【特許文献23】米国特許第5,751,388号明細書(Larson)
【特許文献24】米国特許第5,450,235号明細書(Smithら)
【特許文献25】米国特許第第5,691,846号明細書(Bensonら)
【特許文献26】米国特許第第5,614,286号明細書(Baconら)
【特許文献27】米国特許第第5,763,049号明細書(Freyら)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、光学的性質を劣化させることなく、しかもより速い速度で、光学ポリマフィルムを熱的にエンボス加工する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
簡単に述べると、本発明の1態様において、第1の主要面および第2の主要面を有する光学ポリマフィルムを提供するステップと、それに続いて、別々のステップで、第1の主要面および第2の主要面のうちの少なくとも1つを軟化させて軟化面を形成するステップと、軟化面にエンボス加工を施してエンボス付き光学ポリマフィルムを作製するステップと、エンボス付き光学ポリマフィルムを冷却するステップとを含むことを特徴とするエンボス付き光学ポリマフィルムの製造方法を提供する。好ましい実施形態において、過剰の熱で光学的劣化を生じる光学フィルムに対して、軟化ステップ、エンボス加工ステップ、および冷却ステップを合わせた時間を1秒未満とする。
【0010】
好ましい実施形態において、光学ポリマフィルムの少なくとも1つの主要面に火炎バーナまたは無炎放射バーナのいずれかにより熱流束を供給することによって軟化面を形成する。次に、少なくとも1つのエンボス面を有するニップの間にフィルムを通してフィルムの軟化面上にエンボスを形成する。その後、こうして得られたエンボス面を冷却してエンボスの構造を固定する。エンボス付き光学ポリマフィルムを作製するための加熱、エンボス加工、および冷却に要する時間は、過剰の熱で光学的劣化を生じる光学フィルムに対して、約0.05秒〜約1秒である。
【0011】
もう1つの態様において、本発明は、上述の方法により作製される光学ポリマフィルムを提供する。このようなフィルムは、浅い輪郭〜深い輪郭のエンボスを具備することが可能である。深いエンボスを有する多層カラーシフトフィルムは、サテン様外観を呈する。一方の偏光面に対しては正透過を示し、他方の偏光面に対しては正反射を示すエンボス付き反射偏光フィルムでは、表面摩擦特性が低減したため、取扱適性が改良され、望ましからぬ表面損傷を生じることはなくなった。一方の偏光面に対しては正透過を示し、他方の偏光面に対しては拡散反射を示す反射偏光フィルムを、拡散透過特性をもたせて作製することが可能である。輝きまたはきらめきを呈する反射コーナキューブフィルムをより速い生産速度で作製することができる。
【0012】
更にもう1つの態様において、本発明は、上述の方法により作製される層状構成体を提供する。層状構成体としては、多数の層をもつことが可能であり、第1の主要面および第2の主要面を有し、更に、主要面のうちの少なくとも1つに接合された少なくとも1層の表面エンボス付き保護層を有する、光学的性質を備えたフィルムが挙げられる。このような保護層は、本発明のエンボス加工方法の実施中、光学フィルム層の光学的性質を保護するのに十分な厚さをもっていなくてもよい。従って、保護層には、腐食防止などの特定の他の特徴をもたせるべく、高価な材料の薄い層が含まれていてもよい。このほか、光学的性質を呈する下層を保護するのに十分な厚さの保護層を含んでなるフィルムに、他の方法で実施可能な速度よりも速い速度でエンボス加工を施すことが可能である。
【0013】
更にもう1つの態様において、本発明は、主要面を有する光学ポリマフィルムを含んでなる層状構成体を提供するステップと、主要面を軟化させて軟化面を形成するステップと、軟化面にエンボス加工を施してエンボス付き層状構成体を作製するステップと、エンボス付き層状構成体を冷却するステップとによって光学ポリマ物品を製造する方法であって、バルクの光学的性質が、エンボス加工を施す前の層状構成体中の光学ポリマフィルムのものと実質的に変わらない方法を提供する。
【0014】
本発明のエンボス付き光学ポリマフィルムは、透過光に対する反射光の量および波長に関して、エンボス加工を施す前の光学ポリマフィルムが呈するものと実質的に同じ光学的性質を有する。しかしながら、本発明の方法を用いて光学ポリマフィルムに様々な表面形状を付与することによって、拡散反射、拡散透過、選択的角度散乱(きらめき)、表面摩擦などの特性を変化させることができる。更に、火炎処理により軟化ステップを実施する場合、本発明によって、改良された湿潤性および後続のコーティングへの改良された化学的接着性のような他の表面特性が付与される。
【0015】
本発明の方法によってエンボス加工の施されたカラーシフトフィルムは、他の方法によって処理されたフィルムと比較した場合、同じ反射率でより緻密なパターンを有し、しかもより速い速度で加工することができる。エンボス加工により装飾用光輝外観の付与される反射コーナキューブフィルムは、本発明の方法によれば毎分45メートルまでの速度でエンボス加工を施すことが可能であり、一方、ホットカン(hot-can)法によりエンボス加工の施されるこうしたフィルムは、典型的には、毎分3メートル未満の速度で製造される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の方法の1実施形態を示す概略図である。
【図2】本発明の方法のもう1つの実施形態を示す概略図である。
【図3】実施例8に対する350ナノメートル(nm)〜1050nmの帯域幅にわたる反射スペクトルを表すグラフである。
【図4】実施例10に対する350ナノメートル(nm)〜1050nmの帯域幅にわたる反射スペクトルを表すグラフである。
【図5】比較例C3に対する350ナノメートル(nm)〜1050nmの帯域幅にわたる反射スペクトルを表すグラフである。
【図6】実施例11に対する350ナノメートル(nm)〜1050nmの帯域幅にわたる反射スペクトルを表すグラフである。
【図7】実施例12に対する350ナノメートル(nm)〜1050nmの帯域幅にわたる反射スペクトルを表すグラフである。
【図8】比較例C4に対する350ナノメートル(nm)〜1050nmの帯域幅にわたる反射スペクトルを表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、エンボス付き光学ポリマフィルムの製造方法、ならびにこの方法によって製造されるフィルムおよび物品を提供する。広範にわたる光学ポリマフィルムを用いて本発明を適切に実施することができる。「フィルム」という用語は、自立性をもたせるのに十分な厚さであるが、亀裂を生じることなく、屈曲、折畳、整合、または折目形成を行うのに十分な程度に薄い平面状プラスチックを表すために使用される。フィルムの厚さは、所望の用途および製造方法に依存する。「ポリマ」という用語は、有機ポリマ材料を意味する。こうした挙動を呈する天然物質としては、生ゴムおよび多数のワックスが挙げられる。しかしながら、この用語は、一般的には、合成ポリマを表すために使用される。
【0018】
「光学フィルム」という用語は、特定の波長帯域の電磁エネルギーに暴露したときに、望み通りに光の反射、透過、吸収、または屈折を起こすようにデザインされた任意の反射または部分反射ポリマフィルムを表すために使用される。従って、ポリエステルやポリプロピレンのような従来型の普通の透過ポリマフィルムは、いくつかの角度から見た場合に、ある程度の反射またはグレアを呈する可能性はあるが、本発明の目的からみて「光学フィルム」とはみなされない。しかしながら、反射性および透過性の両方を呈するフィルム、例えば、部分透過性を呈するフィルムは、本発明の範囲内にあるとみなされる。本発明に使用するための好ましい光学ポリマフィルムは、一般的には、フィルムの表面に入射した放射エネルギーの25パーセント未満を吸収する。しかしながら、着色剤をフィルム中に導入することによって光学ポリマフィルムが着色されている場合、より多くの放射エネルギーが着色物質により吸収される可能性がある。吸収される放射エネルギーは、好ましくは10パーセント未満、より好ましくは5パーセント未満である。放射エネルギー(典型的には、所定の波長域のエネルギーとして表される)は、正反射されても拡散反射されてもよい。反射率は、等方性を有するものであってもよいし(すなわち、フィルムは、両方の面内軸に沿って同じ反射性を有する)、異方性を有するものであってもよい(すなわち、フィルムは、直行する面内軸に沿って異なる反射性を有する)。それぞれの面内軸に沿って各成分材料の屈折率の関係を制御することにより、面内軸に沿った屈折率の差を変化させることができる。
【0019】
本発明のエンボス付き光学フィルムが、バルク相中において、エンボス加工を施す前にエンボスのない光学フィルムが呈するものと実質的に同じ反射、透過、吸収、または屈折特性を呈することは理解されるであろう。このことは、異なる屈折率を有する離散物質の空間的特性が、反射、透過、吸収、または屈折される光の量または波長に悪影響を及ぼすほど変化しなかったことを意味する。正反射または正透過に対する拡散反射または拡散透過の割合のような他の光学的性質は、エンボス付きフィルムの場合には変化する可能性がある。もちろん、こうした特性は、光学フィルムの性質および所望の用途に依存するであろう。
【0020】
光学フィルムは様々な形態をとり、所望の用途に従って選択される。本発明に有用な第1のクラスの光学フィルムは、大ざっぱに言えば、過剰の熱に暴露した場合にバルクの光学的性質がかなり損なわれるフィルムとして定義付けることが可能である。この第1のクラスのフィルムには、例えば、多層フィルム、および異なる屈折率を有する不混和性物質のブレンドを含有したフィルムが含まれる。このタイプのフィルムには、例えば、多層偏光子、可視および赤外ミラー、ならびに着色フィルムが含まれ、具体的には、国際特許公開WO 95/17303号、同WO 96/19347号、および同WO 97/01440号、ならびに米国特許出願第09/006086号および同第09/006591号、ならびに米国特許第5,103,337号(Schrenk)、同第5,122,905号(Wheatleyら)、同第5,122,906号(Wheatley)、同第5,126,880号(Wheatley)、同第5,217,794号(Schrenk)、同第5,233,465号(Schrenk)、同第5,262,894号(Wheatley)、同第5,278,694号(Wheatley)、同第5,339,198号(Wheatley)、同第5,360,659号(Arends)、同第5,448,404号(Schrenk)、同第5,486,949号(Schrenk)、同第4,162,343号(Wilcox)、同第5,089,318号(Shetty)、同第5,154,765号(Armanini)、および同第3,711,176号(Alfrey, Jrら)、ならびに再発行米国特許RE 31,780号(Cooper)および同RE 34,605号(Schrenk)に記載のフィルムが挙げられる。これらの特許の内容はすべて、参照により本明細書に組み入れる。2種以上のポリマ材料の不混和性ブレンドを含んでなる光学フィルムとしては、例えば、主要軸に垂直で光の波長に相当する距離の何分の1かの横断面直径を有する不連続ポリマ領域を存在させることによって反射および透過特性が付与されるブレンド構成体が挙げられる(配向処理によって所望の光学的性質を付与することも可能である)。具体的には、国際特許公開WO 97/32224号(米国特許出願第09/006455号として出願されたもの)および米国特許第5,751,388号(Larson)に記載のブレンドミラーおよび偏光子が挙げられる。これらの特許の内容はすべて、参照により本明細書に組み入れる。このほかに、拡散反射フィルム、例えば、Kaytorらの米国特許出願第08/957,558号に記載の「拡散反射物品」が挙げられる。この特許の内容は、参照により本明細書に組み入れる。
【0021】
先に記載したカラーシフトフィルムおよび反射偏光フィルムは、薄いポリマ成分を配向させることによって所望の光学的性質をもたせることが可能である。過剰の熱を作用させると、配向によって生じた歪み(これによって複屈折を示すようになる)が緩和され、バルクの光学的性質に悪影響を及ぼす無秩序な様相を呈するようになる。不混和性のポリマブレンドから作製される光学フィルムは、延伸および/または洗浄処理によって形成されるランダムな秩序を有する多数の空気/ポリマ界面によって、その光学的性質の多くが付与される。加圧しながら過剰の熱を作用させると、空気が押し出され、放射線によって認識される空気/ポリマ界面の数が減少する。
【0022】
本発明に有用な第2のクラスの光学ポリマフィルムは、過剰の熱を作用させても簡単にその光学的性質を失うことはない。このクラスのフィルムとしては、米国特許第5,450,235号(Smithら)、同第5,691,846号(Bensonら)、同第5,614,286号(Baconら)、および同第5,763,049号(Freyら)に記載されている反射コーナキューブシートなどの反射フィルムが挙げられる。これらの特許の記載内容はすべて、参照により本明細書に組み入れる。これらのフィルムは、例えば、3M社から3M Scotchlite(登録商標)Reflective Material - Series 6200 High Gloss FilmおよびScotchlite(登録商標)Diamond Grade Ultraflexible Conspicuity Sheeting Series 960として市販されている。これらの光学フィルムは、ポリマフィルム構成体の一方の面上に硬化させたコーナキューブ構造を存在させることによって光学的性質が付与される。
【0023】
本発明の1実施形態において、インプットフィルムとして層状構成体を使用する。このようなフィルムとしては、例えば、少なくとも1つの光学ポリマフィルムの少なくとも1つの面上に形成される、少なくとも1種のポリマの少なくとも1つの層が挙げられる。この追加される層は、光学層と共に同時押出してもよいし、あるいは押出コーティング、ラミネーション、またはそれ以外の方法により光学ポリマ層に接着させてもよい。追加される1層または複数の層は、一般的には、腐食、屋外暴露、スクラッチなどによる光学ポリマ層の劣化を防止するために使用される。このような層は、所望の効果を示す任意のポリマの層であってよい。
【0024】
本発明の方法の1実施形態において、第1の主要面および第2の主要面を有する光学ポリマフィルムまたは層状光学ポリマフィルムを提供する。光学フィルムは、フィルム張力を制御する働きをするローラなどの間またはその上を移動させることができる。フィルムの第1の主要面および第2の主要面のうちの少なくとも一方を、火炎、プラズマトーチなどの熱源からの熱流束に暴露する。所望の時間にわたり火炎にあてて、すなわち、バルクフィルムの光学的性質に有意な変化を生じることなくフィルム表面を軟化させることができるように十分に短い時間で、インプットフィルムの表面を軟化させる。好ましい熱源としては、火炎バーナおよび無炎放射バーナが挙げられる。
【0025】
フィルムは、熱源に暴露しながら、バッキングロールなどの支持体上を移動させてもよい。フィルムを支持することにより、加熱中のフィルムの変形を最小限に抑えることができる。エンボス加工の必要な表面を軟化させるのに十分な熱を熱源から光学フィルムの表面に供給する。エンボス加工は、当技術分野で周知の任意の手段により行うことができる。好ましいエンボス加工方法は、エンボス面を有するニップの間を通るように、軟化させたフィルムを移動させる方法である。「ニップ」という用語は、フィルムが間を通るときにフィルムを加圧する近接した2本のロールを意味する。エンボス面は、フィルムの軟化面にエンボスを形成するのに十分な力でフィルムと接触する。圧力を増大させると、一般的には、より深くかつより輪郭のはっきりしたエンボスが得られる。次に、多数の方法のうちのいずれかを用いてエンボスフィルムを冷却し、軟化させたフィルムが、エンボスのない光学フィルムのバルクの光学的性質に関して有意な変化を生じる前に、軟化面の温度をその軟化温度よりも低い温度まで低下させる。このような方法には、1本以上のチルドロール上を通るようにフィルムを移動させるステップと、フィルムを水浴に浸漬するステップと、空気または他の気体を用いて(例えば、エアナイフを用いて)冷却するステップとが含まれる。
【0026】
本出願において、「滞留時間」という用語は、フィルムに対する軟化ステップ、エンボス加工ステップ、および冷却ステップを合わせた所要時間として定義付けられる。滞留時間は、フィルムの加熱、エンボス加工、および冷却のために使用されるシステムの構成(例えば、装置のサイズおよびフィルムの速度)に依存して変化するであろう。熱に暴露する時間は、エンボスロールと接触させる前に光学フィルムの表面を軟化させるのに十分な時間でなければならなず、滞留時間は、フィルムの光学的性質が損なわれるほど長い時間であってはならない。従って、好ましい実施形態において、滞留時間はできるかぎり短くする。
【0027】
本発明の方法の1実施形態が、図1に示されている。主要面9および11を有する光学ポリマフィルム10はバッキングロール14に送られる。フィルム10の主要面9は、リボンバーナ18により供給される火炎16上を移動する。このほか、無炎放射バーナなどの他の熱源を使用することも可能である。主要面9の迅速な加熱を行う。バッキングロール14と雄型パターンの金属板エンボスロール20との間にフィルム10を通し、エンボスロール20中に機械工作されたパターンの反転パターンを有するエンボス面をフィルム10に形成する。平滑層を用いてバッキングロール14を被覆し、ロール14および20とフィルム10とを確実に密着させることも可能である。バッキングロール用の好適な被覆層としては、ネオプロピレン、ニトリルゴム、シリコーンゴム、ポリエーテルウレタンゴム、クロロスルホン化ゴム、ポリテトラフロオロエチレン(PTFE)などのエラストマが挙げられる。水再循環系を用いて、一方または両方のロールの温度を制御することができる。
【0028】
当技術分野で周知の空気圧または油圧シリンダおよびレバー機構を用いて、エンボスロール20をバッキングロール14に圧接させる。エンボスロール20に加える力は、シリンダに加える圧力を変化させることによって、またエンボスロール20とバッキングロール14との接触幅を変化させることによって制御する。典型的には、エンボスロール20に加える力は、約17.5〜約1050 N/線cm(10〜約600ポンド/線インチ)の間である。加える力は、光学フィルムに所望のパターンのエンボスを形成するのに十分な大きさでなければならない。
【0029】
次に、水冷式チルロール22上を移動させることにより、フィルム10を冷却する。他の冷却手段も利用可能であることは、当業者には分かるであろう。例えば、エアナイフ、蒸発液体窒素、または水浴を用いて、光学ポリマフィルムがエンボスロールから離れるときにエンボス付き光学ポリマフィルムの表面を冷却することも可能である。
【0030】
表面9上の点を、火炎16上を通って移動するときに軟化させ、バッキングロール14とエンボスロール20との間に通し、チルロール22上を通って移動するときに軟化点よりも低い温度まで冷却させるのに要する時間が、「滞留時間」である。滞留時間は、典型的には約0.05秒〜約1秒、好ましくは約0.1秒〜約0.3秒の間である。火炎からの熱に暴露する時間は、エンボスロールと接触させる前に光学ポリマフィルムの表面を軟化されるのに十分な時間でなければならなず、滞留時間は、フィルムの光学的性質が損なわれるほど長い時間であってはならない。
【0031】
火炎バーナ18は、通常、予備混合火炎(この中で、燃料と酸化剤とが燃焼前に完全に混合される)を安定化させ、燃焼速度は、火炎中で起こる化学反応の速度によってコントロールされる。予備混合火炎中の発光領域は、温度上昇が最大で、反応および熱放出の大半が行われる火炎の部分である。ポリマフィルムを高温まで急速に加熱するために、予備混合火炎および拡散火炎の両方を使用することができる。拡散火炎中では、別々の燃料流と酸化剤流とが、分子拡散および乱流拡散によって合流する。拡散火炎中の燃焼速度は、反応体の混合速度によってコントロールされる。予備混合火炎は、典型的には、幅1〜2mmの狭い反応ゾーンを有するが、これとは異なり、拡散火炎は、化学組成が変化し化学反応が起こる、より幅広い領域を有する。予備混合火炎および拡散火炎はいずれも、層流または乱流の性質を有するものであってよい。
【0032】
火炎は、通常、2つの特性、すなわち、火炎力、および酸化剤と燃料とのモル比によって表される。火炎力とは、単位時間あたりに燃焼する燃料の体積と燃料の熱含量との積である。火炎力の典型的な単位は、WまたはBtu/hrである。火炎処理における火炎力は、バーナの寸法を用いて規格化することにより、W/cm2またはBtu/hr-in2のような単位で表すことができる。完全燃焼させるのに必要となる、酸化剤と燃料との正確なモル比は、理論比により表される。例えば、メタンの完全燃焼に必要な乾燥空気の正確な量は、メタンの体積の9.55倍の体積である。従って、空気:メタンの火炎に対する理論比は、9.55:1である。当量比は、酸化剤:燃料の理論比を、酸化剤:燃料の実際比で割った値として定義付けられる。燃料不足の火炎の場合には、理論量よりも多くの酸化剤が存在するため、当量比は1.00未満になる。理論比を有する酸化剤:燃料の混合物の場合には、当量比は正確に1.00になる。燃料過剰の系の場合には、当量比は1.00を超える。
【0033】
本発明に有用な火炎処理装置としては、ポリマ表面に近接して火炎を配置可能な任意の装置が挙げられる。一般的には、フィルムの変形を防止するために、冷却ロールなどの冷却支持体上を通ってフィルムが移動するときに、フィルム表面を火炎処理する。火炎処理装置としては、例えば、英国AltonのAerogen Company, Ltd.および英国ThameのSherman Treaters Ltd.で製造されている市販の装置が挙げられる。好ましくは、こうした装置は、酸化剤と燃料とを混合するためのミキサを具備する。リボンバーナは、ポリマフィルムの火炎処理に最も適しているが、他のタイプのバーナを使用することも可能である。
【0034】
火炎は、ポリマ基材表面から最適の距離に置かれ、酸化剤と燃料との混合物によって保持される。火炎の円錐形発光部分の先端とポリマの表面との距離は、約30mmから約-2mm(すなわち、フィルムは火炎と接触し、火炎の先端の2mmの部分に相当する空間を占有する)の間である。好ましくは、この距離は0mmから10mmの間である。燃料は、酸化剤よりも低い電気陰性を有する。好適な燃料としては、例えば、天然ガス、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、液化石油ガス、アセチレン、一酸化炭素、ジメチルエーテル、アンモニア、およびこれらの混合物が挙げられる。好適な酸化剤としては、空気、酸素富化空気、および亜酸化窒素富化空気が挙げられる。酸化剤は、燃料と反応して、熱可塑性フィルムの表面と作用しうる化学種を形成する。
【0035】
光学フィルムの表面を加熱するこのほかの好ましい方法は、無炎放射バーナを用いる方法である。この場合、予備混合された酸化剤/燃料流は、鋼製ハウジング上に配置された固体の多孔触媒要素に暴露される。触媒表面は、不均一表面反応において、反応体流から生成物への変換を助ける。燃焼反応は触媒の表面上で起こるので、ガス相中には励起種がほとんど生成しない。従って、加熱ステップ時には、ポリマフィルムの表面処理は仮に行われたとしてごくわずかである。次に、熱い燃焼生成物は、表面から脱離および/または拡散してバーナから出る。不均一反応において放出された熱は、触媒の温度を上昇させ、その結果、触媒は赤熱し、赤外線を放出する。従って、このタイプのバーナを用いた場合、熱は、対流モードおよび放射モードの両方でフィルムに供給される。先に定義した火炎力が同じ場合には、このタイプのバーナからフィルムへ送られる熱流束は、リボンフレームバーナからフィルムへ送られる熱流束とほぼ等しい。このタイプの放射バーナは、例えば、ニューヨーク州New RochelleのFlynn Burner社から入手可能である。
【0036】
次に、図2について説明する。この図には、本発明の方法のもう1つの実施形態が示されている。この実施形態において、光学ポリマフィルムの主要面は両方とも、軟化およびエンボス加工処理が施される。主要面41および43を有する光学ポリマフィルム42は、フィルム張力を制御する働きをするアイドラロール45上を移動する。フィルム42は、バッキングロール48へ搬送される。フィルム42の主要面43は、熱源46上を移動する。好適な熱源としては、プラズマトーチ、火炎、例えば、リボンバーナから供給される火炎、および無炎放射バーナが挙げられる。主要面43の迅速な加熱を行う。バッキングロール48と雄型パターンのエンボスロール50との間にフィルム42を通し、主要面43上にエンボスを形成する。主要面41が第2の熱源54に近接して移動するように配置された第2のバッキングロール52へフィルム42を搬送する。熱源54は、熱源46と同じタイプであってもよいし、異なるタイプの熱源であってもよい。主要面41の迅速な加熱を行う。バッキングロール52とエンボスロール56との間にフィルム42を通し、主要面41上にエンボスを形成する。フィルム42をアイドラローラ57および58に送る。これらのアイドラローラは、フィルム42が水浴60を通り抜ける間、フィルムの張りを保持する。エアナイフもまた、好適な冷却手段となり、水浴の代わりに使用可能である。
【0037】
次に、本発明の方法について説明する。エンボス加工とは、物品の表面にパターンを型押するプロセスを意味する。エンボス加工は、典型的には、図1の20で示されるように、エンボスロール上の金属層のような硬質材料上に形成された雄型パターンを用いて行われる。機械工作された連続ベルトまたはスリーブを用いる方法など、いくつかの方法によってエンボス加工を施すことができることは、当業者には分かるであろう。好ましい金属層としては、ニッケル、銅、鋼、およびステンレス鋼を含有する金属層が挙げられる。パターンは、典型的には、金属層中に機械加工され、様々なサイズおよび形状を有することが可能である。金属表面にけがくことのできる任意のパターンを使用して本発明を実施することが可能である。「パターン」という用語は、必ずしも、規則的な繰返し配列を意味するものではなく、同じかまたは異なるサイズを有する構造体のランダムな配列を意味するものであってもよい。本発明の実施に好適なパターンとしては、四側面を有する四角錐、四側面を有する四角錐を切頭したもの、三側面を有する三角錐、円錐、直線、波線などが挙げられる。こうしたパターンは、エンボスロールの少なくとも一部分中に機械加工される。パターンの個々の構造体は、エンボスと呼ばれる。エンボスの数および間隔、ならびに個々のエンボスの性質、例えば、エンボスの深さ、鋭い反射エッジの角度、および形状は、望み通りに変化させることができる。
【0038】
以下に具体的に示されるように、複数のエンボスを光学ポリマフィルム上に形成する。典型的には、1線センチメートルあたり約12〜約150個(1線インチあたり約30〜約400個)のエンボスが存在する。エンボスを形成した後でフィルムの光学的性質が実質的に保持されるかぎり、エンボスは任意の好適な深さを有していてもよい。エンボスの深さは、使用するフィルムのタイプにもよるが、ゼロより大きく、光学ポリマフィルムの厚さの約90パーセントまでの範囲に設定可能である。
【0039】
いずれの理論にも拘束されるものではないが、光学ポリマフィルムは高温下に短時間置かれるにすぎず、フィルム全体がポリマの融解温度を超えて加熱されることはないため、第1のクラスの光学フィルムのバルクの光学的性質は、実質的に変化しない。時間を考慮に入れることは重要である。ポリマの軟化温度またはそれよりも高い温度で長時間にわたりフィルムを加熱した場合、所望の光学的性質は有意に劣化する可能性がある。このような熱を加えると、配向応力が緩和されるかまたは空気が除去されて、構成材料の所望の空間的位置関係が失われる可能性がある。ポリマを融解させるのに十分な条件を回避することも有利である。なぜなら、融解したポリマはエンボスロールに付着するため、ポリマフィルムが有意な損傷を受けるからである。また、融解が起こると、いくつかのポリマフィルムの光学的性質は有意な変化を生じる。なぜなら、光学ポリマフィルムを構成するポリマ材料の移動度が増大し、ポリマ成分の凝集およびポリマ成分の厚さの局所的変化を引き起こすのに充分な時間が確保されるからである。
【0040】
過剰の熱に暴露されても簡単に光学的性質を失うことのない第2のクラスの光学フィルムの場合、本発明の方法の有用性としては、主に、生産速度の増大が挙げられる。機械工作されたエンボス面が、軟化したベース層上のキューブに接触すると、キューブはランダムに再整列される。キューブは、軟化したベース層上で傾けられるかまたは層中に押し込まれる。キューブが無秩序に存在すると、光を照射したときに、きらめきを有する外観が得られる。加熱ステップとエンボス加工ステップとを独立に制御することにより、生産速度を増大させることができる。
【0041】
光学ポリマフィルムを製造する際、光学ポリマフィルムの透過性および反射性は、光学ポリマフィルム全体の厚さ、2種の隣接する物質によって生じる界面の数および形状、界面を形成する異なる物質の相対屈折率の差などを考慮して、様々なポリマ成分のタイプおよび空間的位置関係によって決定される。界面を形成する物質のタイプならびに所定の波長の光線により認識される秩序空間配向および界面の数を適切に変更することにより、鏡、カラーシフトフィルム、または特定の波長域に対する偏光子のような特定の用途に好適な光学フィルムの作製が可能となる。
【0042】
光学フィルムの反射性は、一般的には、フィルムを構成する様々なポリマ成分の秩序空間配向によって決まる。長時間にわたり光学フィルムを軟化させておくかまたは融解させると、空間的関係は悪化し無秩序な状態になり易い。この結果、実質的に無秩序な状態になれば、反射性は実質的に失われる。しかしながら、使用する光学フィルムのタイプにもよるが、こうした性質のうちの1つだけの実質的な劣化が観測されることは珍しいことではない。
【0043】
エンボス付き光学フィルムは、熱源の性質にもよるが、本発明の方法の実施中に表面処理を施しても施さないでもよい。熱源が火炎の場合、本発明は、光学ポリマフィルムの表面のエンボス加工と処理の両方の手段を提供する。「処理」という用語は、ポリマの湿潤特性および接着特性を改良できることを意味する。これは、火炎が、熱源であると同時に活性化学種の供給源でもあるため、ポリマフィルムを加熱するだけでなく、フィルムの表面を酸化するからである。熱源が火炎でない場合、例えば、無炎放射バーナの場合、活性化学種は生成しないため、表面処理は行われない。
【0044】
本発明の方法はまた、種々の表面形状を提供する。所望の摩擦性または接着性を有する表面を作製するために、表面形状を変化させることが有用な場合がある。
【0045】
本発明の方法により、生産速度を増大させることも可能である。加熱ステップとエンボス加工ステップとが別々に行われるため、比較的大きい熱流束の熱源を使用することが可能である。また、加熱の開始から冷却の終了までの時間が短いため、更に多くの手段を利用して光学的性質に悪影響を及ぼすことなく加熱およびエンボス加工を行うことが可能である。エンボス加工装置は、フィルム表面を軟化させるための熱を供給する必要がないため、熱容量の大きい光学ポリマフィルム表面に長時間接触させる必要はなく、従って、エンボス加工の処理速度を増大させることが可能となる。
【0046】
本発明のエンボス付き光学ポリマフィルムは、単独フィルムもしくは自立フィルムとして使用してもよいし、他の層と併用して構成体にしてもよい。エンボス付き光学ポリマフィルムは、装飾用フィルムとして有用であり、特に、リボン、ボウ(bow)、包装用フィルム、贈物用バッグ、ガーランド、バナー、センタピース、装身具、三次元造形品などの装飾用物品を製造するのに、あるいは製品中の構成要素(例えば、糸)として、贈物用ボックス、贈物用バッグなどの物品中の挿入窓として、更には化粧品、食料品などの商品のための装飾包装として好適である。本発明のエンボス付き光学ポリマフィルムはまた、鏡面光沢もしくは表面摩擦またはこれらの両方を減少させる必要のある用途に使用してもよい。例えば、製造作業時のロール操作および光学モニタ上のオーバレイフィルムに使用してもよい。このほか、熱容量の大きい光学ポリマフィルムにエンボス加工を施して、米国特許第5,770,124号(Mareckiら)に記載されているものと類似の光輝外観を有するフィルムを、より速い速度で製造することもできる。
【実施例】
【0047】
以下の実施例を用いて本発明を更に説明するが、これらの実施例により本発明の範囲が限定されるものではない。実施例中において、部、比、およびパーセントはいずれも、特に記載のないかぎり、重量基準である。材料はいずれも、特に記載または説明のないかぎり、Aldrich Chemicals社から市販されているものである。
【0048】
(試験方法)
光学利得試験
光学利得とは、LCDパネルとバックライトとの間にフィルムを挿入した状態でバックライトからLCDパネルを透過して出てくる光の量と、フィルムを挿入しない状態でバックライトからLCDパネルを透過して出てくる光の量との比である。21.6cm(横方向)×22.9cm(縦方向)の大きさにサンプルを切断し、バックライト上に配置する。この際、エンボス面を上向きにし、縦方向を左から右の方向にとり、フィルムの左縁をバックライトの左縁に合わせる。プレキシグラスシートを上に置いてフィルムを所定の位置に保持し、この集成体をLCDパネルの後ろに配置する。日本のミノルタカメラ社から入手可能なLS-100輝度計をLCD面の法線方向に配置し、バックライトを点灯させてから3分後に、LCDパネルを透過した光の量を測定する。バックライトとプレキシグラスホルダとの間にフィルムを入れずに測定を繰り返す。フィルムを用いた場合の光透過量の測定値を、フィルムを用いない場合の光透過量の測定値で割った値として利得を計算する。
【0049】
鏡面光沢測定
鏡面光沢とは、鏡面角、すなわち、入射光源の角度と等しくかつ反対側の角度でフィルム表面から反射される光の尺度である。光沢は、ASTM 523-89, “Standard Test Method for Specular Gloss” に従って、光沢計を用いて20°および60°の両方の測定角で測定した(メリーランド州ColumbiaのBYK-Gardner USA社から商品名「Haze-Gloss Reflectometer」として市販されている光沢計を使用した)。サンプルはいずれも部分透過性であったので、測定前に各試験試料の下に艶消黒色面を配置した。各サンプルに対して各測定角および2つの異なる方向で5回の測定を行った。縦方向(MD)での測定は、サンプルのMDの向きを計測器の測定軸と一致させて行った。横方向(TD)での測定は、サンプルのTDの向きを計測器の測定軸と一致させて行った。各測定角および各方向での測定をそれぞれ5回行い、得られた測定値の平均を報告した。
【0050】
反射スペクトル
全反射スペクトルは、ASTM E 1164-94 “Standard Practice for Obtaining Spectrophotometric Data for Object-Color Evaluation” に従って、分光光度計を用いて350ナノメートル(nm)〜1050nmの波長域で測定した(Perkin Elmer社から商品名「Lambda 19 UV/VIS/NIR Spectrometer」として市販されている分光光度計を使用した)。サンプルが部分透過性であったため、反射測定を行う前に各試験試料の後ろに艶消黒色バッキング面を配置した。各フィルムサンプルの反射スペクトルを、フィルムに垂直な角度で2回ずつ測定した。1回目は、サンプルの縦方向の向きを計測器の垂直軸と一致させ(MD-V)、2回目は、サンプルの縦方向の向きを計測器の水平軸と一致させた(MD-H)。
【0051】
浸潤試験
浸潤試験とは、フィルムの表面間湿潤レベルを等級分けする方法である。2つの平滑面を接触させると、表面接触に起因して、これらの平滑面は、互いに密着する傾向を示す。このタイプの表面湿潤の視覚的効果としては、あらかじめ水と接触させておいた表面を接触させたときに観測されるものと類似の溜まりを生じることが挙げられる。ライトボックスの清浄なガラス表面上にサンプルを置き、リントフリー綿手袋を用いて中程度の圧力を加えながら払拭する。15秒後、30〜40cm離れた所でフィルムを上から観察し、以下の表1に従って主観的な等級分けを行う。
【0052】
【表1】

【0053】
再帰反射輝度試験
再帰反射係数RAは、標準化試験ASTM E 810-94に従って測定した。RAは、再帰反射平面の光度係数と面積との比であり、カンデラ毎ルクス毎平方メートル(cd/lx/m2)で表される。ASTM E 810-94で使用される照射角は-4度であり、観測角は0.2度である。これ以降で「ASTM E 810-94」を参照する場合には、直前の文に規定されている照射角および観測角が使用されるASTM E 810-94を意味するものとする。
【0054】
(実施例1〜5および比較例C1)
これらの実施例により、表面摩擦特性が低減した種々のエンボス付き光学ポリマフィルムの作製方法について説明する。これらのフィルムは、一方の偏光面の光を正反射し、他方の偏光面の光を正透過する反射偏光子であった。
【0055】
実施例1において、除塵処理された圧縮空気を含む25℃の酸化剤(約10℃未満の露点を有する)を、ベンチュリミキサ(オハイオ州ClevelandのPyronics社から入手可能なFlowmixer Model 88-9)中で天然ガス燃料と混合することにより、可燃混合物を調製した。天然ガス燃料の比重は0.577、乾燥空気:天然ガスの理論比は9.6:1、熱含量は37.3kJ/Lであった。空気と天然ガスの流量は、流量計(Model 5812 (8〜400Lpm)およびModel 5811 (1〜50Lpm))(いずれもペンシルヴェニア州HatfieldのBrooks Instrument社から市販されている)を用いて測定した。これらの質量流量計は、変位方式で作動するインライン累積流量計(ペンシルヴェニア州PittsburghのRockwell Internationalから市販されている)を用いて校正した。天然ガスおよび空気の流れは、制御弁(オクラホマ州TulsaのBadger Meter社から入手可能である)を用いて制御した。火炎当量比が1.00、正規化(normalized)火炎力が600W/cm2となるように、すべての流れを調節した。長さ3メートルのパイプを介して可燃混合物をリボンバーナに送った。リボンバーナは、30.5cm×1cmのステンレス鋼リボンを黄銅ハウジング中に配置したものであった(このリボンバーナは、ニューヨーク州New RochelleのFlynn Burner社から入手可能である)。
【0056】
バーナは、直径25cm、歯幅40cmの鋼チルロール(オハイオ州StowのF. R. Gross社製)の真下に配置した。このチルロールは、クロロスルホン化エラストマ(ウィスコンシン州Union GroveのAmerican Roller社から入手可能で、ショアAジュロメータ硬度80〜90を有するNo. FH-57771)の厚さ2mmの被覆層を具備していた。バッキングロールは、水再循環系(ウィスコンシン州MilwaukeeのSterling社から商品名「STERLCO」として市販されている)を用いて、38℃に保持した。電気火花により可燃混合物を点火した。リボンバーナの最上面から2〜3mm上方に、尖った安定な円錐形火炎が形成された。インプット光学ポリマフィルムは、国際特許公開WO 98/04938号の実施例中の記載に従って作製された反射偏光フィルム(平均厚さ0.13mm、幅31.8cm)であった。フィルムは、80メートル/分で移動し、アイドラロールにより案内されてバッキングロールに送られる。安定な火炎の円錐形発光部分の先端と光学ポリマフィルムの表面との間の距離が6〜8mmに保持されるように、リボンバーナの最上面とバッキングロールとの距離を調節した。エラストマで被覆されたバッキングロールと接触させることにより光学フィルムの背面を冷却しながら、光学フィルムの前面を層流予備混合火炎に暴露した。
【0057】
火炎に暴露した後、バッキングロールの送出端の4時の位置に配置された直径10cm、歯幅40cmのエンボスニップロールと接触させることによって、光学ポリマフィルムにエンボス加工を施した。光学ポリマフィルムの加熱が行われたゾーンは、バッキングロールの円周の約40%であった。この値を加熱ゾーンの寸法として使用した場合、光学ポリマフィルムが火炎の熱に暴露される時間は、約0.23秒であった。滞留時間、すなわち、火炎によりフィルム表面を加熱するステップ、フィルムをエンボスロールと接触させてエンボス加工を施すステップ、およびフィルムの軟化温度より低い温度までフィルム表面を冷却するステップを合わせた時間は、約0.5秒であった。
【0058】
エンボスニップロールは、厚さ0.9mmの銅のコーティングで無電解メッキされた水冷スチールコアからなっていた。この銅は、雄型パターンが刻設されたものであった。雄型パターンは、ニップロールの中央に30.5cmの範囲で刻設されており、雄型パターンの両側のパターンのないニップロール面上の幅7.6cmの銅コーティングは、0.5mmの厚さに減少されていた。このため、エンボスニップロールのパターン部分だけが、ニップロールとバッキングロールとの間で接触領域を形成した。パターンは、底面寸法約0.71mm、上面寸法約0.20mmの切頭四角錐が歯幅1センチメートルあたり14個配置されたものであった。エンボスニップロールの温度は、水再循環系(「STERLCO」)により25℃に保持した。合計で約16,000ニュートンの力でバッキングロールを押圧する加圧空気シリンダを用いて、エンボスニップロールをフィルムおよびバッキングロールに圧接させることにより、雄型エンボスパターンを有する歯幅30.5cmの領域を約530ニュートン毎線センチメートルの力で押圧した。
【0059】
実施例2〜5のエンボス付き光学ポリマフィルムは、パターン面に対するニップ圧力を、それぞれ、570ニュートン毎線センチメートル、620ニュートン毎線センチメートル、700ニュートン毎線センチメートル、および1060ニュートン毎線センチメートルに増大させた以外は実施例1と同様にして作製した。
【0060】
比較例C1は、実施例1においてエンボス加工を施さない場合の光学フィルムであった。
【0061】
実施例1〜5および比較例C1の光学利得および浸潤を測定した。結果は表2に示されている。
【0062】
【表2】

【0063】
表2から分かるように、エンボス付きフィルムサンプルの光学利得への影響は最小限に抑えられた。実施例3、4、および5の場合、ガラス表面とフィルムとの間の浸潤傾向は、かなり低減した。浸潤傾向が低減したため、これらのフィルムをモニタスクリーン上に配置したときに、スクリーン表面への初期付着を回避することができる。このほかに、評価したすべてのフィルムにおいて、煩わしい鏡面光沢およびグレアの減少が観測された。
【0064】
(実施例6および7ならびに比較例C2)
これらの実施例により、異なる光学ポリマフィルムを用いてエンボス付き光学ポリマフィルムを作製する方法について説明する。
【0065】
実施例6および7のフィルムは、co-PENポリマ57.6重量%と、Questra(商標)MA405 (Dow Chemical社より入手可能である)40重量%と、Dylark(商標)332-80(Nova Chemical社より入手可能である)2.4重量%とのブレンドから作製された単層反射偏光フィルムであった。co-PENポリマは、ナフタレンジカルボキシレート70モルパーセントと、ジメチルテレフタレートおよびエチレングリコール30モルパーセントとをベースにしたポリマである。この配合物を押出し、次いで逐次、二軸配向させた。最初にレングスオリエンタ(LO:length-orienter)を用いてウェブを縦方向(MD)に延伸し、続いて、テンタを用いて横方向(TD)に延伸した。LO配向は、延伸比1.3:1 (MD:TD) で行った。延伸前の最終ロールの温度は120℃であり、延伸ゾーン上の赤外ランプのパワーは80%であった。TD延伸比は、テンタの入口および出口におけるレールの設定値に基づいて約1:5.9(MD:TD)であった。延伸温度は118℃であった。ヒートセット温度は163℃であった。フィルムの厚さは約106μmであった。
【0066】
実施例6および7のフィルムに対して、フィルムの速度を変化させることにより滞留時間を変化させたことならびに表3に記載されているエンボス加工圧力を使用したこと以外は、それぞれ実施例3および5と同じエンボス加工および試験を実施した。実施例6および7では、いずれも速度を80m/分から100m/分に増大させ、結果として、滞留時間を約0.5秒から約0.4秒に短縮した。
【0067】
比較例C2は、実施例6においてエンボス加工を施さない場合の光学フィルムであった。
【0068】
実施例6および7ならびに比較例C2の垂直入射利得を測定した。結果は表3に示されている。
【0069】
【表3】

a - 試験中、フィルムのエンボス面を光源と反対の方向に向けた。
b - 試験中、フィルムのエンボス面を光源の方向に向けた。
【0070】
表3から分かるように、偏光の選択的反射および透過に関する所望の光学的性質を光学利得により測定した場合、エンボス加工圧力が高い条件下でさえも、こうした光学利得への影響は最小限に抑えられた。
【0071】
(実施例8〜12ならびに比較例C3およびC4)
これらの実施例により、異なる光学ポリマフィルムを用いてエンボス付き光学ポリマフィルムを作製する方法について説明する。光学ポリマフィルムが種々のカラーシフトフィルムであったことおよびプロセス条件のいくつかを変更したこと以外は、実施例1と同様にしてエンボス付きフィルムの作製を行った。以下の記載に従って作製した2種のインプット光学フィルムを使用した。
【0072】
光学フィルムA
光学フィルムAは、平均厚さ54μmおよび幅20.3cmを有する光学ポリマフィルムであった。このフィルムは、次のようにして作製した。同時押出法により、連続フラットフィルム製造ライン上で224層を含む同時押出フィルムを作製した。この多層ポリマフィルムは、ジカルボキシレートとしてナフタレート90モル%およびテレフタレート10モル%ならびにジオールとしてエチレングリコール100%を含有した固有粘度0.48dl/gを有するコポリエチレンナフタレート(LMPP)と、ICI Acrylics社から商品名CP71として入手可能なポリメチルメタクリレート(PMMA)とから、LMPPが外層または「スキン」層を形成するように作製したフィルムであった。フィードブロック法(例えば、米国特許第3,801,429号に記載の方法)を用いて約224層を形成し、これらの層を、水冷キャスティングホイール上に同時に押出し、更に、従来型の連続レングスオリエンタ(LO)およびテンタ装置により連続的に配向させた。一方の押出機により46.0kg/時の流量でLMPPをフィードブロックに供給し、他方の押出機により35.9kg/時の流量でPMMAを供給した。これらの溶融流をフィードブロックに送り、LMPPおよびPMMAの光学層を形成した。フィードブロックは、LMPP層とPMMA層とが交互に現れる224層を形成した。この際、フィードブロックを介して、保護境界層(PBL)として機能するLMPPの2つの外層を設けた。PMMA溶融プロセス装置を約265℃に保持し、PEN溶融プロセス装置、フィードブロック、およびスキン層モジュールを約265℃に保持し、更に、ダイを約285℃に保持した。各材料の層の厚さに勾配を設け、最も厚い層と最も薄い層との厚さの比が約1.25となるように、フィードブロックをデザインした。米国特許出願第09/006288号に記載の軸方向ロッドを用いてバンドの幅を狭めた。
【0073】
フィードブロックを通過した後、第3の押出機を用いて、固有粘度0.48dl/gを有するLMPPを約93.2kg/時の流量でスキン層(光学層の流れの両側に同じ厚さで設けられる層)として供給した。このとき、この材料の流れをフィルムダイに通し、温度約18℃の供給水を用いて冷却されたキャスティングホイール上に送出した。高電圧ピニング方式を用いて、6.6メートル/分の速度で作動するキャスティングホイールに押出物を密着させた。ピニングワイヤの太さは約0.17mmであり、印加電圧は約5.6kVであった。キャスティングホイールとの接点において、オペレータが手動でピニングワイヤをウェブから約3〜5mm離して配置することにより、キャストウェブに平滑な外観を付与した。
【0074】
約120℃において延伸比約3.3:1で長手方向にキャストウェブを配向させた。テンタ中において、延伸前に約14秒間で約125℃までフィルムを予備加熱してから、約125℃において毎秒約20%の割合で延伸比約4.3:1まで横方向に延伸した。
【0075】
光学フィルムB
光学フィルムBは、平均厚さ37μmおよび幅20.3cmを有する光学ポリマフィルムであった。同時押出法により、連続フラットフィルム製造ライン上で約418層を含む多層フィルムを作製した。この多層ポリマフィルムは、ポリエチレンテレフタレートおよびECDEL 9967から作製した。ECDEL 9967は、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジメタノール、およびポリテトラメチレンエーテルグリコールをベースとしたコポリエステルであると考えられ、ニューヨーク州RochesterのEastman Chemicals社から市販されている。フィードブロック法(例えば、米国特許第3,801,429号に記載の方法)を用いて、押出物全体にわたり各層の厚さがほぼ直線的に変化するように約209層を形成した。
【0076】
押出機により、固有粘度(IV) 0.6dl/gを有するPETを約34.5kg/時の流量でフィードブロックに供給し、約32.8kg/時の流量でECDELを供給した。フィードブロックを通過した後、同じPET押出機を用いて、押出物の両側に保護境界層(PBL)として約7.1kg/時の合計流量でPETを供給した。次に、この材料の流れを、約1.40のマルチプライヤデザイン比に設定された非対称二重(two times)マルチプライヤ(米国特許第5,094,788号および同第5,094,793号)に通した。マルチプライヤデザイン比は、主導管中で形成される層の平均厚さを、副導管中で形成される層の平均厚さで割った値として定義付けられる。それぞれ209層からなる2組の重層によって形成される2つの反射帯域間にスペクトルギャップを生じるように、このマルチプライヤデザイン比を選択した。209層からなる2組の重層はそれぞれ、近似的に、フィードブロックにより形成される層の厚さのプロフィルを有するが、全体の厚さの倍率は、マルチプライヤおよびフィルムの押出速度によって決定される。
【0077】
ECDEL溶融プロセス装置を約265℃に保持し、PET(光学層)溶融プロセス装置を約265℃に保持し、更に、フィードブロック、マルチプライヤ、スキン層溶融流、およびダイを約274℃に保持した。
【0078】
この実施例のフィルムを作製するために使用したフィードブロックは、等温条件下において最も厚い層と最も薄い層との比が1.3:1となるように、かつ層の厚さが直線的に変化するようにデザインされたものであった。この実施例でより小さい比を得るために、熱プロフィルをフィードブロックに適用した。最も薄い層を形成するフィードブロック部分を285℃まで加熱し、最も厚い層を形成するフィードブロック部分を265℃まで加熱した。このようにすると、最も薄い層は、等温フィードブロック操作を行ったときよりも厚くなり、最も厚い層は、等温フィードブロック操作を行ったときよりも薄くなる。中間部分は、これらの2つの極値の間で直線的温度プロフィルが得られるように設定した。全体的な効果として、層の厚さの分布幅が狭くなり、その結果、より幅の狭い反射スペクトルが得られるようになる。マルチプライヤにより、いくつかの層の厚さに誤差を生じるため、各反射帯域のスペクトル特性がわずかに変化する。最終的なフィルムの厚さを正確に制御するために、従って、最終的な着色を正確に制御するために、キャスティングホイールの速度を調節した。
【0079】
マルチプライヤを通過した後、第3の押出機から約28.8kg/時(全体で)の流量で供給することにより、厚いPETスキン層を追加した。このとき、この材料の流れをフィルムダイに通し、水冷キャスティングホイール上に送出した。キャスティングホイール上の供給水の温度は、約5℃であった。高電圧ピニング方式を用いて、キャスティングホイールに押出物を密着させた。ピニングワイヤの太さは約0.17mmであり、印加電圧は約6.5kVであった。キャスティングホイールとの接点において、オペレータが手動でピニングワイヤをウェブから約3〜5mm離して配置することにより、キャストウェブに平滑な外観を付与した。従来型の連続レングスオリエンタ(LO)およびテンタ装置により、キャストウェブを連続的に配向させた。約100℃において延伸比約3.5:1で長手方向にウェブを配向させた。テンタ中において、延伸前に約12秒間で約110℃までフィルムを予備加熱してから、毎秒約15%の割合で延伸比約3.5:1まで横方向に延伸した。
【0080】
実施例8では、正規化火炎力580W/cm2、ライン速度100m/分、およびエンボス加工圧力1060N/線cmの条件でフィルムAにエンボス加工を施した。エンボス工具は、歯幅1線cmあたり69個の切頭四角錐を具備していた。実施例9は、正規化火炎力が864W/cm2であったこと以外は実施例8と同様に作製した。実施例10は、正規化火炎力が720W/cm2であり、ライン速度が125m/分であり、エンボス工具が歯幅1線cmあたり14個の切頭四角錐を具備していたこと以外は実施例8と同様に作製した。
【0081】
実施例11では、ライン速度が150m/分であったこと以外は実施例8と同様に、フィルムBにエンボス加工を施した。実施例12は、ライン速度が125m/分であったこと以外は実施例11と同様に作製した。
【0082】
比較例C3およびC4は、それぞれ実施例8および11においてエンボス加工を施さない場合の光学ポリマフィルムであった。
【0083】
実施例8〜12および比較例C3〜C4において、60度および20度における鏡面光沢をMDおよびTDの両方の向きで測定し、更に、反射スペクトルを測定した。結果は、表4および図3〜8に示されている。
【0084】
【表4】

【0085】
表4から分かるように、本発明の方法によりエンボス加工を施すことによって、鏡面光沢が有意に減少した。更に、図3および4に示されている実施例8および10の反射スペクトルを、図5に示されている比較例C3の反射スペクトルと比較した場合、帯域幅のシフトが50ナノメートル未満であることから分かるように、本発明の方法が反射の光学的性質に及ぼす影響は最小限に抑えられている。図6および7に示されている実施例11および12の透過スペクトルを、図8に示されている比較例C4の透過スペクトルと比較することによって、透過の光学的性質に及ぼす影響も同様に最小限に抑えられていることが分かる。
【0086】
実施例8のエンボス付き光学フィルムおよび比較例C3のエンボスなしの光学フィルムを用いて、装飾用ボウを作製した。従来型のレザーブレードスリッタを用いて各サンプルをスリットし、幅1.27cmのロールにした。ミズーリ州にあるCambarloc Engineering社から入手可能なエレクトロニックボウマシン(electronic bow machine)を用いて、各ロールから、31個のループを有し全体の直径が約13cmであるコンフェティボウ(confetti bow)を作製した。
【0087】
エンボス付きフィルムから作製したボウAは、一般的には、エンボスなしのフィルムから作製したボウBよりも繊細な外観を呈した。ボウAの内部空隙中において、鏡面光沢レベルの減少が観測された。これにより、ボウAの繊細で金属光沢の少ない外観が強調されたが、両者の全体的な明るさおよび色の品質は同等であった。
【0088】
(実施例13および14ならびに比較例C5およびC6)
これらの実施例により、異なる光学ポリマフィルムを用いてエンボス付き光学ポリマフィルムを作製する方法について説明する。
【0089】
実施例13および14のエンボス付きフィルムは、実施例5と同様にして作製した。ただし、光学ポリマフィルムはいずれも、フィルムの厚さおよび幅が実施例5とは異なり、しかもライナ上に配置された再帰反射コーナキューブフィルムであった。また、プロセス条件が実施例5とは異なっていた。実施例13で使用したフィルムは、3M社から3M Scotchlite(商標)Reflective Material - 6260 White High Gloss Filmとして入手可能なフィルムであり、平均厚さが380μm、幅が15.2cmであった。正規化火炎力が1150W/cm2となるように火炎を調節した。フィルム速度は45m/分であり、従って、滞留時間は約0.9秒間であった。バックアップロールの温度は93℃であった。コーナキューブが機械工作面と接するようにフィルムを移動させた。実施例14は実施例13と同様にして作製したが、ただし、フィルムの平均厚さは230μmであり、バックアップロールの温度は66℃であった。
【0090】
米国特許第5,770,124号、カラム12、38〜58行目に記載の連続法を用い、実施例13で使用したものと同じ光学ポリマフィルムから比較例C5を作製した。テクスチャシリコーンゴムロールと平滑スチールロールとによって形成されるニップにフィルムを通した。スチールロールを191℃の温度に保持し、フィルムのキャリヤ面をスチールロールと接触させた。フィルムのコーナキューブ面をゴム被覆ロールと接触させた。光学フィルムの速度は毎分1.8メートルであった。
【0091】
比較例C6は、実施例13においてエンボス加工を施さない場合の光学フィルムであった。
【0092】
実施例13および14ならびに比較例C5およびC6の再帰反射係数を0度および90度の両方の向きで測定した。結果は表5に示されている。
【0093】
【表5】

【0094】
所望の光学的性質は、視覚的に観測される光輝効果である。表5中のフィルムはいずれも、満足な再帰反射率をもっていた。比較例C6(エンボスなしのフィルム)以外のすべてのフィルムは、透過モードで観察した場合、同程度の光輝を呈した。反射モードで観察した場合も同様の結果が得られた。
【0095】
本発明の範囲および精神から逸脱することなく、本発明の種々の修正および変更が可能であることは当業者には自明であろう。また、本発明は、本明細書中に記載の例示のための実施形態に限定されるものではないことを理解すべきである。
【符号の説明】
【0096】
9、11、41、43 主要面
10、42 光学ポリマフィルム
14、48、52 バッキングロール
16 火炎
18 リボンバーナ
20、50、56 エンボスロール
22 水冷式チルロール
45 アイドラロール
46、54 熱源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主要面および第2の主要面を有する光学ポリマフィルムを提供するステップと、
該第1の主要面および該第2の主要面のうちの少なくとも1つを軟化させて軟化面を形成するステップと、
該軟化面にエンボス加工を施してエンボス付き光学ポリマフィルムを作製するステップと、
該エンボス付き光学ポリマフィルムを冷却するステップと、
を含むことを特徴とするエンボス付き光学ポリマフィルムの製造方法。
【請求項2】
主要面を有する光学ポリマフィルムを含んでなる層状構成体を提供するステップと、
該主要面を軟化させて軟化面を形成するステップと、
該軟化面にエンボス加工を施してエンボス付き層状構成体を作製するステップと、
該エンボス付き層状構成体を冷却するステップと、
を含む光学ポリマ物品を製造する方法。
【請求項3】
前記軟化ステップと、前記エンボス加工ステップと、前記冷却ステップとを合わせて1秒未満の時間で実施することを特徴とする請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
所定の波長域において、前記光学ポリマフィルムの反射率が、エンボス加工を施す前の前記光学ポリマフィルムの反射率と実質的に同じであることを特徴とする請求項1または2記載の製造方法。
【請求項5】
所定の波長域において、前記光学ポリマフィルムの透過率が、エンボス加工を施す前の前記光学ポリマフィルムの透過率と実質的に同じであることを特徴とする請求項1または2記載の製造方法。
【請求項6】
火炎加熱により前記軟化ステップを実施することを特徴とする請求項1または2記載の製造方法。
【請求項7】
無炎放射加熱により前記軟化ステップを実施することを特徴とする請求項1または2記載の製造方法。
【請求項8】
前記光学ポリマフィルムが、カラーシフトフィルム、正透過正反射フィルム、正透過拡散反射フィルム、再帰反射コーナキューブフィルム、および拡散反射フィルムからなる群より選ばれることを特徴とする請求項1または2記載の製造方法。
【請求項9】
前記光学ポリマフィルムが歪誘導複屈折を呈することを特徴とする請求項1または2記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1記載の製造方法に従って作製された装飾用リボン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−201936(P2010−201936A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106116(P2010−106116)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【分割の表示】特願平11−200292の分割
【原出願日】平成11年7月14日(1999.7.14)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】