説明

エンボス印刷物の製造方法。

【課題】グラビア印刷機で原反に印刷する際に、印刷とインラインで原反に印刷された絵柄に見当を合わせた凹条ないしは凸条の模様からなるエンボス柄を簡単に形成できるエンボス印刷物の製造方法を提供する。
【解決手段】グラビア輪転印刷機を使用して、厚さが25〜150g/m2 の紙又は前記紙とアルミニウム箔との積層体からなる原反10に絵柄を印刷した後に、凹条模様を形成したエンボス版2と圧胴5を所定の硬度を有するエンボス圧胴3を備えた後続のエンボスユニットを使用して、印刷された原反10をエンボス版2とエンボス圧胴3間を通して加圧することにより、原反10に印刷された絵柄に見当を合わせてエンボスを行うことを特徴とするエンボス印刷物の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラビア輪転印刷機を使用して原反に印刷する工程とインラインで、印刷された絵柄に見当を合わせて凹条ないしは凸条の模様からなるエンボスを簡単に形成することができるエンボス印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、グラビア輪転印刷機等を使用して基材に印刷する工程とインラインでエンボスを行うエンボス印刷物の製造方法としては、紙とアルミニウム箔を貼り合わせた貼合紙のアルミニウム箔面にグラビア印刷機の印刷ユニットにて絵柄等の印刷を行い、続いてインラインでグラビアシリンダーの表面に微細な凸部を設けてなるエンボスロールを備えたエンボス加工ユニットにて貼合紙のアルミニウム箔面にエンボス加工を施す印刷及びエンボス加工ラベル紙の製造方法(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【特許文献1】特開平6−344649号公報
【0003】
しかしながら、上記の印刷及びエンボス加工ラベル紙の製造方法の場合、凸部の高さが100〜300μm程度となるように微細な凸部を設けたグラビアシリンダーからなるエンボスロールを使用して、紙とアルミニウム箔を貼り合わせた貼合紙のアルミニウム箔面にエンボスを形成するものであり、印刷された原反に微細凹凸のエンボスを形成できるが、印刷された原反の絵柄に見当を合わせて凸条ないしは凹条からなるエンボス模様をを形成することができないという欠点がある。また、表面に微細な凸部を設けたエンボスロールを作製するには機械的な加工が必要であり、グラビアエッチング方式では製造が困難であるという欠点を有している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、グラビア輪転印刷機で原反に印刷を行う際に、印刷された原反の絵柄に見当を合わせた凹条ないしは凸条の模様からなるエンボスを印刷とインラインで簡単に形成することができるエンボス印刷物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
グラビア輪転印刷機を使用して、厚さが25〜150g/m2 の紙又は前記紙とアルミニウム箔との積層体からなる原反に絵柄を印刷した後に、印刷版を凹条模様を形成したエンボス版に圧胴を所定の硬度を有するエンボス圧胴にそれぞれ置き換えた後続のエンボスユニットを使用して、印刷された原反をエンボス版とエンボス圧胴間を通して加圧することにより、原反に印刷された絵柄に見当を合わせてエンボスを行うことを特徴とするエンボス印刷物の製造方法である。
【0006】
上記のエンボス印刷物の製造方法において、絵柄が印刷された原反の表裏を反転させて原反の印刷面がエンボス圧胴面に接するようにエンボス版とエンボス圧胴間で加圧するものである。
【0007】
上記のエンボス印刷物の製造方法において、原反の印刷面に透明樹脂層が形成された構成とされているものである。
【0008】
上記のエンボス印刷物の製造方法において、前記エンボス版が、凹条の深さが0.4〜1.0mmであり、凹条の幅が1.0〜10.0mmとされているものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエンボス印刷物の製造方法では、原反の印刷工程とインラインで、原反に印刷された絵柄に見当を合わせた凸条のエンボスを印刷工程とインラインで簡単に形成することができるので、文字の部分ないしは特定の絵柄の部分を凸条ないしは凹条にエンボスしたラベル、包装紙等として使用できるエンボス印刷物を効率的に低コストで製造することができる。
【0010】
請求項2に係る発明では、原反に印刷された絵柄に見当を合わせた凹状のエンボスを印刷工程とインラインで簡単に形成することができる。
【0011】
請求項3に係る発明では、原反に形成された凸条ないしは凹条のエンボス形状の保形性をよくすることができる。
【0012】
請求項4に係る発明では、原反に凸状ないしは凹状のシャープなエンボスを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を引用して本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明のエンボス印刷物の製造方法にて使用するエンボス版を示す斜視図、図2は図1のI−I線表面部拡大断面図、図3は本発明のエンボス印刷物の製造方法の第1実施形態の概略を示す図、図4は第1実施形態の方法にて印刷された原反にエンボスを行った断面図、図5は本発明のエンボス印刷物の製造方法の第2実施形態の概略を示す図、図6は第2実施形態の方法にて印刷された原反にエンボスを行った断面図、図7は第2実施形態のエンボス印刷物の製造方法の他の工程の概略を示す図であって、2はエンボス版、21は凹条、3はエンボス圧胴、4は印刷版、5は圧胴、6はドクターブレード、7はファニッシャーロール、8はインキ、9は原反反転装置、10は原反、11は印刷層、12は透明樹脂層、13はエンボス凸部、14はエンボス凹部、Lは凹条の幅、Dは凹条の深さを表す。
【0014】
本発明のエンボス印刷物の製造方法にて使用するエンボス版は斜視図が図1に、I−I線表面部拡大断面図が図2にそれぞれ示されているとおりである。実施形態のエンボス版2では、DNPの模様からなる凹条21が形成されている構成である。印刷された原反にシャープなエンボスを形成するために、エンボス版2に形成される凹条21は、深さDが0.4〜1.0mmで且つ幅Lが1.0〜10.0mmとされている。凹条21の深さDが0.4mmより小さいとシャープな凸条ないしは凹条のエンボスが形成できないし、逆に1.0mmより大きいと原反が破れるおそれがある。また、凹条21の幅が1.0mmより小さい場合及び10.0mmより大きい場合にはシャープな凸条ないしは凹条が形成し難くなる。エンボス版2に形成される凹条21の模様は任意であり、原反に印刷される絵柄の所定箇所に対応するように形成されるものである。エンボス版2の凹条21はグラビアエッチング方式により形成されるものである。グラビアエッチング方式の場合は凸状模様を有するエンボス版を作製するのは困難であるが、凹条模様を有するエンボス版を作製するのは比較的に容易である。
【0015】
本発明のエンボス印刷物の製造方法にて使用する原反としては、厚さが25〜150g/m2 の紙又は25〜150g/m2 の紙とアルミニウム箔との積層体が使用される。原反の厚さが25g/m2 以下の場合はエンボスを形成してもエンボスされた形状を保持することができないし、150g/m2 より厚い場合は本発明のエンボス印刷物の製造方法ではシャープなエンボスを行うことが不可能となる。また、アルミニウム箔を積層した原反を使用した場合は、エンボスが形成し易くなるとともに形成されたエンボスの形状が保持されるのでシャープな凸条ないしは凹条を形成することができる。
【0016】
本発明のエンボス印刷物の製造方法の第1実施形態の概略は図3に示すとおりである。印刷版胴4と圧胴5とファニッシャーロール7とドクターブレード6とインキパン9を備えた印刷ユニットにて、インキパン9内のインキをファニッシャーロール7にて印刷版胴4面に供給し余分なインキをドクターブレード6にて掻き取り、原反10を印刷版胴4と圧胴5間でプレスすることにより原反10に所定の絵柄を印刷し、更に印刷面にオーバープリントにより透明樹脂層を形成した後に、印刷版胴4に替えてエンボス版2を取り付けるとともに圧胴5に替えて所定のゴム硬度を有するエンボス圧胴3を取り付けた後続の印刷ユニットをエンボスユニットとして使用し、絵柄が印刷され透明樹脂層が形成された原反10を、印刷された面がエンボス版2に接するようにエンボス版2とエンボス圧胴3間を通過させて加圧することにより、絵柄を印刷した原反10の印刷絵柄に見当を合わせて凸条のDNP模様からなるエンボス凸部を形成することができる。
【0017】
本発明のエンボス印刷物の製造方法の第1実施形態にてエンボスされた原反は、図4に示すとおりであって、DNPからなる印刷層11が形成されるとともに印刷層11を覆ってオーバープリントにより透明樹脂層12が形成された原反10のDNPからなる印刷層11に対応させて、DNPの凹条21が形成されたエンボス版2によりエンボスされることにより、原反10のDNPの印刷層11に対応したDNPの凸部13が形成される。第1実施形態のエンボス印刷物の製造方法では、所定の印刷版4とエンボス版2を使用することにより、印刷絵柄に対応した箇所に正確に見当を合わせて凸状のエンボスを形成することができる。
【0018】
本発明のエンボス印刷物の製造方法の第2実施形態の概略は図5に示すとおりである。印刷機の印刷ユニットとエンボスユニットの構成は第1実施形態を同じであるが、印刷ユニットとエンボスユニット間を原反10が移動するパス内において原反10の表裏を反転するための原反反転装置9が取り付けられている点において異なる構成となっている。第2実施形態の場合は、印刷層11が形成されるとともに印刷層11を覆ってオーバープリントにより透明樹脂層12が形成された原反10の印刷面がエンボス圧胴3面に接するようにエンボス版2とエンボス圧胴3間を通過させて加圧することにより、印刷層を形成した原反10の印刷面に印刷層に見当を合わせて凹条のエンボスを形成することができる。
【0019】
本発明のエンボス印刷物の製造方法の第2実施形態にてエンボスされた原反は、図6に示すとおりであって、DNPからなる印刷層11が形成され印刷層11を覆って透明樹脂層12が形成された原反10のDNPからなる印刷層11に対応して、DNPの凹条模様がエッチングにより形成されたエンボス版2によりエンボスされて、原反10のDNPからなる印刷層11に対応したDNPの凹部14が形成される。第1実施形態のエンボス印刷物の製造方法では、所定の印刷版4とエンボス版2を使用することにより、印刷絵柄に対応した箇所に正確に見当を合わせて凹状のエンボスを形成することができる。
【0020】
第2実施形態のエンボス印刷物の製造方法において図7に示される工程により製造することもできる。印刷ユニットにより原反10に所定の絵柄を印刷するとともに透明樹脂層を形成した後に、エンボス版2とエンボス圧胴3を備え、エンボス版2が印刷ユニットにおけるのと逆方向に回転するようにされたエンボスユニットを使用して、印刷された原反10をエンボス版2の下側を通して通常の印刷と反対方向にエンボス版2とエンボス圧胴3間を通して原反を加圧することにより、第2実施形態と同様に、印刷絵柄に対応した箇所に正確に見当を合わせて凹状のエンボスを形成することができる。図7に示す工程の場合にはエンボス版2を通常の印刷と逆方向に回転させる装置が必要になる。
【0021】
本発明のエンボス印刷物の製造方法における使用するエンボス版は、凹条を有するエンボス版であればよく、凹条模様の形状は任意に設定することができる。絵柄の文字の部分のみにエンボスされた凹条ないしは凸条を形成する場合には、文字と同じ形状の凹条模様を形成したエンボス版を使用すればよく、絵柄に対応した所定の箇所にエンボス凹条ないうはエンボス凸条を形成したい場合には、エンボスしたい形状の凹条模様を備えたエンボス版を使用すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のエンボス印刷物の製造方法にて使用するエンボス版を示す斜視図。
【図2】図1のI−I線表面部拡大断面図。
【図3】本発明のエンボス印刷物の製造方法の第1実施形態の概略を示す図。
【図4】第1実施形態の方法にて印刷された原反にエンボスを行った断面図。
【図5】本発明のエンボス印刷物の製造方法の第2実施形態の概略を示す図。
【図6】第2実施形態の方法にて印刷された原反にエンボスを行った断面図。
【図7】第2実施形態のエンボス印刷物の製造方法の他の工程の概略を示す図。
【符号の説明】
【0023】
2 エンボス版
21 凹条
3 エンボス圧胴
4 印刷版
5 圧胴
6 ドクタープレード
7 ファニッシャーロール
8 インキ
9 原反反転装置
10 原反
11 印刷層
12 透明樹脂層
13 エンボス凸部
14 エンボス凹部
L 凹条の幅
D 凹条の深さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラビア輪転印刷機を使用して、厚さが25〜150g/m2 の紙又は前記紙とアルミニウム箔との積層体からなる原反に絵柄を印刷した後に、印刷版を凹条模様を形成したエンボス版に圧胴を所定の硬度を有するエンボス圧胴にそれぞれ置き換えた後続のエンボスユニットを使用して、印刷された原反をエンボス版とエンボス圧胴間を通して加圧することにより、原反に印刷された絵柄に見当を合わせてエンボスを行うことを特徴とするエンボス印刷物の製造方法。
【請求項2】
絵柄が印刷された原反の表裏を反転させて原反の印刷面がエンボス圧胴側に接するようにエンボス版とエンボス圧胴間を通しで加圧することを特徴とする請求項1記載のエンボス印刷物の製造方法。
【請求項3】
原反の印刷面に透明樹脂層が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のエンボス印刷物の製造方法。
【請求項4】
前記エンボス版が、凹条の深さが0.4〜1.0mmであり、凹条の幅が1.0〜10.0mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエンボス印刷物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−90670(P2007−90670A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−283323(P2005−283323)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】