説明

エンボス調意匠仕上げ塗装の可能な光硬化性塗料組成物、エンボス調意匠仕上げ塗装された基材、および基材表面にエンボス調意匠仕上げを施す塗装方法

【解決手段】本発明のエンボス調意匠仕上げ塗装の可能な光硬化性塗料組成物は、(a)
光硬化性(メタ)アクリレート化合物および/または光重合性不飽和ポリエステル、(b)光
重合開始剤、および(c)該(a)成分に対して非相溶性のシリコーン系重合体を含有してなる。本発明のエンボス調意匠仕上げ塗装された基材は、(A)フラット基材表面に、上記組成
物を塗装して、凹凸エンボス模様塗布面を形成する工程、および(B)次いで、該塗布面に
、電子線または光を照射して凹凸エンボス模様の硬化塗膜を形成する工程を経て得られる。本発明の基材表面にエンボス調意匠仕上げを施す塗装方法は、上記工程(A)と(B)を経ることを特徴としている。
【効果】上記組成物は、フラット基材表面に複雑な凹凸エンボス模様を容易に形成できる。上記塗装された基材は、高級感のある凹凸エンボス模様を有する。上記塗装方法によれば、上記のような塗装された基材を効率よく生産できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンボス調意匠仕上げ塗装の可能な光硬化性塗料組成物、エンボス調意匠仕上げ塗装された基材特に無機質フラット基板、および基材表面にエンボス調意匠仕上げを施す塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機質フラット基板たとえばケイ酸カルシウム板、フレキシブルボード(石綿スレート)等のフラット基材表面に、基材表面へのアルカリ滲出を防止することを目的としてウレタンシーラーなどで下地処理を施した後、通常の塗料を用いてそのまま中塗り塗装、上塗り塗装を行なえば、通常フラットに塗装仕上げされた基材(化粧板)が得られる。
【0003】
これに対し、エンボス(凹凸)仕上げされた無機質基材(化粧板)を得る場合には、無機質基材の成型時にエンボス加工し、形成された無機質基材の凹凸表面に、ウレタンシーラーなどで下地処理を施し、次いで、着色下塗り塗料をそのままベタ塗りした後、または、そのベタ塗りした上にスクリーンもしくは転写等による印刷を施した後、その塗布面または印刷面を上塗り塗料として光硬化形クリヤー塗料で塗装する方法が一般に採用されている。
【0004】
しかしながら、この無機質基材の成型の際にエンボス加工する方法では、複雑なエンボス模様を形成することは困難である。そこで、本発明者らは、無機質基材そのものにエンボス加工を施すことなく、無機質フラット基板表面に、複雑なエンボス模様であっても塗料で簡単にそのエンボス模様を形成することができる塗料およびその塗装方法を鋭意研究し、光硬化性(メタ)アクリレート化合物、光重合開始剤、および光硬化性(メタ)アクリレート化合物に対して非相溶性のシリコーン系重合体を含有させた光硬化性塗料組成物を、無機質フラット基板表面に塗装したところ、この無機質フラット基板表面に、シリコーン系重合体による光硬化性(メタ)アクリレート化合物の分離はじき現象が生じて凹凸エンボス模様塗布面が形成され、この凹凸エンボス模様塗布面に電子線または光を照射することにより、立体感のある凹凸エンボス模様を有する硬化塗膜が形成されること、および上記光硬化性(メタ)アクリレート化合物の代わりに光重合性不飽和ポリエステルを用いても同様の結果が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
なお、特公昭64−4832号公報には、一分子中にエチレン性不飽和性結合を有する電子線硬化性化合物(たとえばウレタンアクリレートオリゴマー)と、一分子中に二個以上の官能基を有する有機ケイ素化合物(たとえばビニルトリエトキシシラン)を主成分とする電子線硬化性凹凸表面形成塗料を被塗装材に塗装し、その後、その塗布面に電子線を照射して該塗料を硬化せしめると同時に表面に凹凸を形成させることを特徴とする、凹凸表面を形成する塗装方法が開示されている。この塗装方法では、電子線照射前の塗膜は平滑であり、電子線を照射することによって凹凸表面が形成される。一方、本発明の塗装方法では、電子線または光の照射前に未硬化の凹凸塗膜が形成され、この凹凸塗膜は、電子線または光を照射することにより硬化する。
【特許文献1】特公昭64−4832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、フラット基材特に無機質フラット基板の表面に、複雑なエンボス模様であってもそのエンボス模
様を容易に形成することができる、エンボス調意匠仕上げ塗装が可能な塗料組成物、およびその塗料組成物を用いてエンボス調意匠仕上げ塗装された基材、ならびにその基材表面にエンボス調意匠仕上げを施す塗装方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエンボス調意匠仕上げ塗装の可能な光硬化性塗料組成物は、
(a)光硬化性(メタ)アクリレート化合物(a1)および/または光重合性不飽和ポリエステル(a2)、
(b)光重合開始剤、
(c)該(a)成分に対して非相溶性のシリコーン系重合体、および
パール顔料
を含有してなることを特徴としている。
【0008】
また、本発明に係るエンボス調意匠仕上げ塗装された基材は、
(A)フラット基材表面に、
(a)光硬化性(メタ)アクリレート化合物(a1)および/または光重合性不飽和ポリエステル(a2)、
(b)光重合開始剤、および
(c)該(a)成分に対して非相溶性のシリコーン系重合体
を含有してなるエンボス調意匠仕上げ塗装の可能な光硬化性塗料組成物を塗装して、シリコーン系重合体(c)による(a)成分の分離はじき現象により凹凸エンボス模様塗布面を形成する工程、および
(B)次いで、該凹凸エンボス模様塗布面に、電子線または光を照射して凹凸エンボス模様の硬化塗膜を形成する工程
を経て得られたことを特徴としている。
【0009】
さらに、本発明に係る基材表面にエンボス調意匠仕上げを施す塗装方法は、
(A)フラット基材表面に、
(a)光硬化性(メタ)アクリレート化合物(a1)および/または光重合性不飽和ポリエステル(a2)、
(b)光重合開始剤、および
(c)該(a)成分に対して非相溶性のシリコーン系重合体
を含有してなるエンボス調意匠仕上げ塗装の可能な光硬化性塗料組成物を塗装して、シリコーン系重合体(c)による(a)成分の分離はじき現象により凹凸エンボス模様塗布面を形成する工程、および
(B)次いで、該凹凸エンボス模様塗布面に、電子線または光を照射して凹凸エンボス模様の硬化塗膜を形成する工程
を経ることを特徴としている。
【0010】
これらの発明において、前記シリコーン系重合体(c)としては、通常次の式で表わされるシリコーン系液状重合体が用いられる。このシリコーン系重合体(c)は、通常、上記塗料組成物全体100重量部中に、0.01〜5.0重量部の量で配合されている。
【0011】
(R1−)3Si−(−OSi(−R22−)n−OSi(−R33[式中、R1、R2
よびR3は、それぞれ独立に、アルキル基または水素原子であり、nは、0または1〜1
000の整数である。]
前記光硬化性(メタ)アクリレート化合物(a1)としては、通常エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートまたはポリエステル(メタ)アクリレートが用いられる。
【0012】
また、前記(A)工程で用いられるフラット基材表面は、予め着色下塗り塗膜または目止め塗膜で被覆されていることが好ましい。前記(A)工程で用いられるフラット基材として、無機質フラット基板を用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るエンボス調意匠仕上げ塗装の可能な光硬化性塗料組成物は、エンボス加工装置を使用せずに、フラット基材特に無機質フラット基板の表面に、複雑なエンボス模様であっても、そのエンボス模様を容易に形成することができる。
【0014】
また、本発明に係るエンボス調意匠仕上げ塗装された基材は、高級感のある簡単な凹凸模様または複雑な凹凸模様を有する。特に着色顔料またはパール顔料等を配合した、本発明に係る光硬化性塗料組成物を用いて得られた本発明に係る基材は、立体感のある凹凸エンボス模様が得られる。また、光硬化性塗料組成物の凹凸エンボス模様の硬化塗膜の上に、光硬化性(メタ)アクリレート系塗料で上塗り塗装して得られた、本発明に係る基材は、肉持ち感のある凹凸エンボス模様を有する。さらに、フラット基材表面に前もって印刷模様(プリント印刷)を施せば、意匠性を向上させることができる。
【0015】
本発明に係る塗装方法によれば、上記のような、本発明に係るエンボス調意匠仕上げ塗装された基材を効率よく生産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係るエンボス調意匠仕上げ塗装の可能な光硬化性塗料組成物、エンボス調意匠仕上げ塗装された基材、および基材表面にエンボス調意匠仕上げを施す塗装方法について具体的に説明する。
【0017】
まず、本発明に係るエンボス調意匠仕上げ塗装の可能な光硬化性塗料組成物について説明する。
本発明に係るエンボス調意匠仕上げ塗装の可能な光硬化性塗料組成物は、(a)光硬化性(メタ)アクリレート化合物(a1)および/または光重合性不飽和ポリエステル(a2)、(b)光重合開始剤、および(c)該(a)成分に対して非相溶性のシリコーン系重合体を含有している。
【0018】
光硬化性(メタ)アクリレート化合物(a1)
本発明で用いられる光硬化性(メタ)アクリレート化合物(a1)は、1分子中に2個以上のアクリロイル基(CH2=CH−CO−)またはメタクリロイル基(CH2 =C(
CH3)−CO−)を有する。具体的には、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(
メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0019】
エポキシ(メタ)アクリレートは、エピクロルヒドリン等のエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応により合成される。
エポキシ(メタ)アクリレートとしては、具体的には、
ビスフェノールAとエピクロルヒドリンと(メタ)アクリル酸との反応により合成されるビスフェノールA型エポキシアクリレート、
ビスフェノールSとエピクロルヒドリンと(メタ)アクリル酸との反応により合成されるビスフェノールS型エポキシアクリレート、
ビスフェノールFとエピクロルヒドリンと(メタ)アクリル酸との反応により合成されるビスフェノールF型エポキシアクリレート、
フェノールノボラックとエピクロルヒドリンと(メタ)アクリル酸との反応により合成されるフェノールノボラック型エポキシアクリレート
などが挙げられる。
【0020】
ウレタン(メタ)アクリレートは、たとえばジイソシアネート類とポリオール類とヒドロキシアクリレート類とを反応させることによって得られ、分子中に官能基としてアクリロイル基(CH2=CHCO−)またはメタクリロイル基(CH2=C(CH3)−CO−
)と、ウレタン結合(−NH−COO−)とを有する。
【0021】
ジイソシアネート類としては、具体的にはヘキサメチレンジイソシアネート[HDI]、イソホロンジイソシアネート[IPDI]、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)[HMDI]、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート[TMHMDI]、トリレンジイソシアネート[TDI]、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート[MDI]、キシリレンジイソシアネート[XDI]などが挙げられる。
【0022】
ポリオール類としては、具体的にはポリ(プロピレンオキサイド)ジオール、ポリ(プロピレンオキサイド)トリオール、ポリ(テトラメチレンオキサイド)ジオール、エトキシ化ビスフェノールAなどが挙げられる。
【0023】
ヒドロキシアクリレート類としては、具体的には2-ヒドロキシエチルアクリレート[HEA]、2-ヒドロキシエチルメタクリレート[HEMA]、2-ヒドロキシプロピルアクリレート[HPA]、グリシドールジメタクリレート[GDMA]、ペンタエリスリトールトリアクリレート[PETA]などが挙げられる。
【0024】
ポリエステル(メタ)アクリレートは、具体的には、無水フタル酸とプロピレンオキサイドと(メタ)アクリル酸とからなるポリエステル(メタ)アクリレート、アジピン酸と1,6-ヘキサンジオールと(メタ)アクリル酸とからなるポリエステル(メタ)アクリレート、トリメリット酸とジエチレングリコールと(メタ)アクリル酸とからなるポリエステル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0025】
本発明においては、光硬化性(メタ)アクリレート化合物(a1)は、光硬化性塗料組成物全体100重量部に対して、20〜90重量部、好ましくは30〜60重量部、さらに好ましくは40〜50重量部の割合で用いられる。
【0026】
光重合性不飽和ポリエステル(a2)
本発明で用いられる光重合性不飽和ポリエステル(a2)として、従来公知の不飽和ポリエステルを光重合性不飽和ポリエステルとして用いることができる。
【0027】
具体的には、1,2-プロピレングリコールと無水フタール酸と無水マレイン酸とからなる不飽和ポリエステル;
トリメチロールプロパンジアリルエーテル(TMPDA)、トリメチロールプロパントリアリルエーテル(TMPTAE)、トリアリルイソシアネート、ジアリルフタレートなどのアリル基含有化合物とスチレンとが配合された不飽和ポリエステルなどが挙げられる。また、光硬化性(メタ)アクリレート化合物(a1)として挙げたポリエステル(メタ)アクリレートは、光重合性不飽和ポリエステル(a2)でもある。
【0028】
光重合性不飽和ポリエステル(a2)は、光硬化性塗料組成物全体100重量部に対して、20〜90重量部、好ましくは30〜60重量部、さらに好ましくは40〜50重量部の割合で用いられる。
【0029】
光重合開始剤(b)
本発明で用いられる光重合開始剤(b)としては、具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベン
ゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系光重合開始剤;
ベンジルジメチルケタール(別名、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン)、ジ
エトキシアセトフェノン、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-ジクロロ
アセトフェノン、4-t-ブチル-トリクロロアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フ
ェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパ
ン-1-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1等のアセトフェノン系光重合開始剤;
ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4'-メチルジフェニルサルファイド、3,3'-ジメチル-4- メトキシベンゾフェノン等のベンゾフ
ェノン系光重合開始剤;
チオキサンソン、2-クロルチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2,4-ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4-ジクロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサントン系光重合開始剤などが挙げられる。中でも、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが好ましく用いられる。
【0030】
上記のような光重合開始剤(b)は、光硬化性塗料組成物全体100重量部に対して、1〜10重量部、好ましくは2〜6重量部、さらに好ましくは3〜4重量部の割合で用いられる。
【0031】
シリコーン系重合体(c)
本発明で用いられるシリコーン系重合体(c)は、上述した光硬化性(メタ)アクリレート化合物(a1)および光重合性不飽和ポリエステル(a2)に対して非相溶性である。
【0032】
このようなシリコーン系重合体(c)としては、通常、次の式で表わされるシリコーン系液状重合体が用いられる。
(R1−)3Si−(−OSi(−R22−)n−OSi(−R33
式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、アルキル基または水素原子であり、n
は、0または1〜1000の整数である。
【0033】
上記アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、2,3-ジメチルブチル基、イソヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、イソオクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、イソデシル基、n-ウンデシル基、イソウンデシル基、n-ドデシル基、イソドデシル基、n-トリデシル基、イソトリデシル基、n-テトラデシル基、イソテトラデシル基、n-ペンタデシル基、イソペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、イソヘプタデシル基、n-オクタデシル基、イソオクタデシル基、n-ノニルデシル基、イソノニルデシル基、n-アイコサニル基、イソアイコサニル基、2-エチルヘキシル基、2-(4-メチルペンチル)基などが挙げられる。
【0034】
上記のようなシリコーン系液状重合体としては、たとえば共栄社化学(株)より「フローレン AC901」という商品名で市販されている、アルキルビニルエーテルとアクリ
ル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合物にポリアルキル水素シロキサンを配合した混合物(22重量%)のミネラルスプリット(78重量%)溶液などが挙げられる。
【0035】
シリコーン系液状重合体としては、ウレタン変性シリコーン系液状重合体、たとえばシリコーン系液状重合体の一方または両方の分子末端に、ジイソシアネートまたはトリイソシアヌレート等を縮合させたウレタン結合含有シリコーン系液状重合体も好適に使用される。
【0036】
シリコーン系重合体(c)は、塗料組成物全体100重量部中に、0.01〜5.0重量部、好ましくは0.05〜1.0重量部、さらに好ましくは0.1〜0.3重量部の量で配合される。
【0037】
その他の成分
上述したように、本発明に係るエンボス調意匠仕上げ塗装の可能な光硬化性塗料組成物中には、光硬化性(メタ)アクリレート(a1)および/または光重合性不飽和ポリエステル(a2)、光重合開始剤(b)およびシリコーン系重合体(c)のほかに、必要に応じて、反応性希釈剤、重合禁止剤、非反応性希釈剤、艶消し剤、消泡剤、沈降防止剤、レベリング剤などを、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0038】
反応性希釈剤としては、通常のアクリルモノマーが一般に用いられる。具体的には、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、2(2- エトキシエトキシ)エチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートなどが挙げられる。中でも、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートが好ましい。
【0039】
上記のような反応希釈剤は、単独で、または2種以上組合わせて用いることができる。
本発明においては、反応性希釈剤は、光硬化性塗料組成物全体100重量部に対して、通常20〜80重量部、好ましくは30〜70重量部、さらに好ましくは40〜60重量部の割合で用いられる。
【0040】
また、本発明に係る光硬化性塗料組成物に、従来公知の着色顔料、着色珪砂、着色マイカ、着色ビーズ、またはパール顔料を配合すると、高級感、肉持ち感のあるエンボス調意匠の仕上がりが得られる。
【0041】
本発明に係るエンボス調意匠仕上げ塗装可能な光硬化性塗料組成物は、上述した光硬化性(メタ)アクリレート化合物(a1)および/または光重合性不飽和ポリエステル(a2)と、光重合開始剤(b)と、シリコーン系重合体(c)とを混合して得ることができる。
【0042】
次に、本発明に係るエンボス調意匠仕上げ塗装された基材、および基材表面にエンボス調意匠仕上げを施す塗装方法について説明する。本発明に係る基材表面にエンボス調意匠仕上げを施す塗装方法は、(A)フラット基材表面に、上述した本発明に係る光硬化性塗料組成物を塗装して、シリコーン系重合体(c)による(a)成分の分離はじき現象により凹凸エンボス模様塗布面を形成する工程、および(B)次いで、該凹凸エンボス模様塗布面に、電子線または光を照射して凹凸エンボス模様の硬化塗膜を形成する工程を経ることを特徴としている。

上述した、本発明に係る光硬化性塗料組成物を、フラット基材表面に塗装すると、この塗料組成物中の(c)シリコーン系重合体が光硬化性(メタ)アクリレート化合物(a1)および/または光重合性不飽和ポリエステル(a2)に対して非相溶性であるため、光硬化性(メタ)アクリレート化合物(a1)および/または光重合性不飽和ポリエステル(a2)は、(c)シリコーン系重合体により分離はじき現象が生じてエンボス模様塗布面が形成される。
【0043】
本発明で用いられるフラット基材としては、具体的には、フレキシブルボード、ケイ酸カルシウム板、石膏ボード、石綿スレート板等の無機多孔質基板、合板、ハードボード、パーティクルボード等の木質系基板、鉄板、アルミ板等の金属板、塩化ビニル板、ABS板、PET板、アクリル板等のプラスチック板などが挙げられる。
【0044】
本発明に係る光硬化性塗料組成物の塗装に用いられるフラット基材は、予め目止め処理および/または下塗り塗装により目止め塗膜および/または着色下塗り塗膜を形成しておくことが望ましく、特にアルカリ性の無機多孔質基板の場合には、フラット基材表面へのアルカリ滲出防止を目的としたシーラー処理を予め施すことが望ましい。また、光硬化性塗料組成物の塗装前に、たとえば着色下塗り塗膜の上に、柄付けのために印刷を行なってもよい。
【0045】
光硬化性塗料組成物の塗装は、ゴムないしスポンジロールコーター、スプレー、バキュームコーターなどの塗装機を用いて行なわれる。これらの塗装機は、一種または二種以上組み合わせて用いることができる。
【0046】
光硬化性塗料組成物の塗布量は、使用するフラット基材の種類により異なるが、無機質多孔質基板の場合、ウェット状態で通常20〜100g/m2、好ましくは40〜50g
/m2であることが望ましい。
【0047】
この光硬化性塗料組成物の塗装回数は、特に制限はなく、一回または二回以上でもよい。
上記(A)工程で得られた凹凸エンボス模様塗布面に、電子線または光、好ましくは光を照射することにより、立体感のあるエンボス模様を有する硬化塗膜が得られる。
【0048】
この電子線照射は、従来公知の照射方法により行なうことができる。たとえば200kV、3〜10Mradの条件で電子線照射して凹凸エンボス模様塗膜を硬化させる。
また、光照射の光は、紫外線または可視光線であり、光照射は、従来公知の照射方法により行なうことができる。たとえば高圧水銀ランプは、80〜120W/cm1灯で、ベルトスピードは5〜20m/分であり、灯数を増すことにより、ベルトスピードを早くすることができる。また、W/cmの能力を増すことにより、ベルトスピードを早くすることができる。
【0049】
上記(B)工程で得られた凹凸エンボス模様の硬化塗膜の上に、さらにクリヤー塗料ないしカラークリヤー塗料による上塗り塗装してもしなくてもよいが、本発明においては、上塗り塗装することが望ましい。したがって、本発明に係るエンボス意匠仕上げ塗装された基材は、上塗り塗装されている場合と上塗り塗装されていない場合とがある。
【0050】
上塗り塗料としては、光硬化性(メタ)アクリレート系塗料が好ましく用いられる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これら実施例により何ら限定されるものではない。
[実施例1]
【0052】
厚み5mm、幅300mm、長さ600mmのフラットなフレキシブルボード(密度2.0g/cm3)の表面に、下記のシーラー塗装工程(1)、下塗り塗装工程(2)、第
一次上塗り塗装工程(3)および第二次上塗り塗装工程の各塗装を順次行ない、肉持ち感のある凹凸エンボス模様を有する基材(エンボス化粧板)を得た。
【0053】
シーラー塗装工程(1);
フラットなフレキシブルボードの表面に、1液型ウレタン塗料[製品名 アルカリシー
ラー NY−2、中国塗料(株)製]とシンナーとを1:1の重量比で混合したシーラー
を、スポンジロールコーターを用い、30〜40g/m2の塗布量(ウェット状態)にし
て塗装した後、80℃の熱風で10分間乾燥させた。
【0054】
下塗り塗装工程(2);
上記工程(1)で得られた乾燥シーラー塗膜の上に、2液型ウレタン塗料[製品名 E
Pコート 100K−2、中国塗料(株)製]と硬化剤とシンナーとを16:1:8の重
量比で混合した下塗り塗料を、ロールコーターとフローコーターの順で併用して150g/m2(ウェット状態)の塗布量にして塗装した後、80℃の熱風で30分間乾燥させた

【0055】
中塗り塗装工程(3);
上記工程(2)で得られた下塗り塗膜の上に、光硬化型アクリレート重合体塗料組成物[製品名 オーレックス No.230−4、中国塗料(株)製]100重量部中に、特殊シリコーン系添加剤[製品名 フローレン AC−901、共栄社化学(株)製;アルキルビニルエーテル、アクリル酸アルキルエステルおよびメタクリル酸アルキルエステルの共重合物とポリアルキル水素シロキサンとの混合物が22%溶解しているミネラルスピリット(78%)溶液]1重量部を混合し、得られた光硬化性塗料組成物を、スポンジロールコーターを用い、40〜50g/m2の塗布量(ウェット状態)にして塗装し、得られた
凹凸エンボス模様塗布面に、能力80W/cmの高圧水銀ランプ1灯で紫外線を照射させて凹凸エンボス模様の硬化塗膜を得た。この紫外線照射の際における凹凸エンボス模様塗布面の移動速度は10m/分であった。
【0056】
上塗り塗装工程(4);
上記工程(3)で得られた凹凸エンボス模様の硬化塗膜の上に、光硬化型アクリレート重合体塗料組成物[製品名 オーレックス No.230−4、中国塗料(株)製]をフローコーターを用い、70〜80g/m2の塗布量(ウェット状態)にして塗装し、そのウ
ェット状態の塗膜に、能力80W/cmの高圧水銀ランプ2灯で紫外線を照射させてその塗膜を硬化させた。この紫外線照射の際におけるウェット状態の塗膜の移動速度は、5m/分であった。
【0057】
上記のようにして得られた化粧板のエンボス(凹凸)感の評価を第1表に示す。このエンボス感の評価基準は次の通りである。
<エンボス感の評価基準>
1:塗膜表面に全く凹凸なし(完全にフラット)。
2:塗膜表面に部分的に凹部がある。
3:塗膜表面に0.5〜1.0cm間隔で均一に小さな凹部がある。
4:塗膜の全面に0.5cm間隔で凹凸がある。
5:塗膜の全面に1cm間隔で大きな凹凸がある。
[実施例2、3]
【0058】
実施例1における中塗り塗装工程(3)において、特殊シリコーン系添加剤[製品名
フローレン AC−901、共栄社化学(株)製]の添加量を、0.5重量部、0.1重
量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてエンボス化粧板を作製した。得られた化粧板のエンボス(凹凸)感の評価を第1表に示す。
[実施例4]
【0059】
実施例1で用いたフレキシブルボードと同じフレキシブルボードの表面に、下記のシーラー塗装工程(1)、下塗り塗装工程(2)および上塗り塗装工程(3)の各塗装を順次行ない、立体感のある凹凸エンボス模様を有する基材(エンボス化粧板)を得た。
【0060】
シーラー塗装工程(1);
実施例1のシーラー工程(1)と同様にして、フラットなフレキシブルボード表面に、シーラー処理を行なった。
【0061】
下塗り塗装工程(2);
上記工程(1)で得られた乾燥シーラー塗膜の上に、実施例1の下塗り工程(2)と同様にして、下塗り塗膜を形成した。
【0062】
上塗り塗装工程(3);
上記下塗り塗装工程(2)で得られた下塗り塗膜の上に、実施例1の第一次上塗り塗装工程(3)で用いた光硬化性塗料組成物と同じ光硬化性塗料組成物100重量%に、さらにパール顔料[製品名 パールグレイズ ME−100R、日本光研工業(株)製]を2重量%配合した塗料組成物を用いた以外は、実施例1の第一次上塗り工程(3)と同様にして、凹凸エンボス模様の硬化塗膜を得た。上記のようにして得られた化粧板のエンボス(凹凸)感の評価を第1表に示す。
[実施例5,6]
【0063】
実施例1における中塗り塗装工程(3)において、特殊シリコーン系添加剤[製品名
フローレン AC−901、共栄社化学(株)製]1重量部の代わりに、ダウコーニング
社製のジメチルポリシロキサン[製品名 DC−200、粘度12500cPs]を0.
5重量部、0.1重量部用いた以外は、実施例1と同様にしてエンボス化粧板を作製した。得られた化粧板のエンボス(凹凸)感の評価を第1表に示す。
[実施例7〜9]
【0064】
実施例1における中塗り塗装工程(3)において、特殊シリコーン系添加剤[製品名
フローレン AC−901、共栄社化学(株)製]1重量部の代わりに、ポリジメチルシ
ロキサン系ウレタンアクリレート樹脂[不揮発分80.4%、粘度13930cPs(25℃)、GPCによる数平均分子量(Mn)2210、重量平均分子量(Mw)11740]を1重量部、0.5重量部、0.1重量部用いた以外は、実施例1と同様にしてエンボス化粧板を作製した。得られた化粧板のエンボス(凹凸)感の評価を第1表に示す。
[参考例1]
【0065】
実施例1における中塗り塗装工程(3)において、特殊シリコーン系添加剤を用いなかった以外は、実施例1と同様にして化粧板を作製した。得られた化粧板のエンボス(凹凸)感の評価を第1表に示す。
[参考例2]
【0066】
実施例1において、フラットなフレキシブルボードの代わりに全面に1cm間隔で大きな凹凸(エンボス)が形成されているフレキシブルボードを用い、実施例1における中塗り塗装工程(3)において、特殊シリコーン系添加剤を用いなかった以外は、実施例1と
同様にしてエンボス化粧板を作製した。得られた化粧板のエンボス(凹凸)感の評価を第1表に示す。
【0067】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)光硬化性(メタ)アクリレート化合物(a1)および/または光重合性不飽和ポリエステル(a2)、
(b)光重合開始剤、
(c)該(a)成分に対して非相溶性のシリコーン系重合体、および
パール顔料
を含有してなり、
前記シリコーン系重合体(c)が、一般式
(R1−)3Si−(−OSi(−R22−)n−OSi(−R33
[式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、アルキル基または水素原子であり、n
は、0または1〜1000の整数である。]で表わされるシリコーン系液状重合体またはウレタン変性シリコーン系液状重合体であり、塗料組成物全体100重量部中に、0.0
1〜5.0重量部の量で配合されていることを特徴とする、エンボス調意匠仕上げ塗装の
可能な光硬化性塗料組成物。
【請求項2】
前記光硬化性(メタ)アクリレート化合物(a1)が、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートまたはポリエステル(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項1に記載の光硬化性塗料組成物。
【請求項3】
(a)光硬化性(メタ)アクリレート化合物(a1)および/または光重合性不飽和ポリエステル(a2)、
(b)光重合開始剤、
(c)該(a)成分に対して非相溶性のシリコーン系重合体、および
パール顔料
を含有してなり、
前記シリコーン系重合体(c)が、一般式
(R1−)3Si−(−OSi(−R22−)n−OSi(−R33
[式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、アルキル基または水素原子であり、n
は、0または1〜1000の整数である。]で表わされるシリコーン系液状重合体またはウレタン変性シリコーン系液状重合体であり、塗料組成物全体100重量部中に、0.0
1〜5.0重量部の量で配合されていることを特徴とする、エンボス調意匠仕上げ塗装用
である光硬化性塗料組成物。
【請求項4】
前記光硬化性(メタ)アクリレート化合物(a1)が、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートまたはポリエステル(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項3に記載のエンボス調意匠仕上げ塗装用である光硬化性塗料組成物。

【公開番号】特開2008−189943(P2008−189943A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124530(P2008−124530)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【分割の表示】特願平10−227821の分割
【原出願日】平成10年8月12日(1998.8.12)
【出願人】(390033628)中国塗料株式会社 (57)
【Fターム(参考)】