エーリキア・カニス(Ehrlichiacanis)のDIVA(ワクチン接種した動物から感染した動物を区別する)
本発明は、動物がE.canisのワクチン接種を受けているか否かにかかわらず、E.canisに感染した動物を検出するために用いられ得るエーリキア・カニス抗原を提供する。本発明はまた、E.canisの抗原および抗体の存在を確認するための組成物および方法も提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、2007年10月31日に出願され、その全体が参照によって本明細書に援用される、米国特許出願第60/984,019号の恩典を請求する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
エーリキア(Ehrlichia)は、哺乳動物宿主において循環中の白血球に感染する偏性細胞内病原体である。エーリキア・カニス(Ehrlichia canis)は、イヌおよびヒトに感染し得、それぞれ、イヌ単球エーリキア症(CME)およびヒト単球エーリキア症(HME)を生じ得る。このイヌの疾患は、発熱、リンパ節腫脹、体重減少および汎血球減少によって特徴付けられる。ヒトではこの疾患は、発熱、頭痛、筋肉痛および白血球減少によって特徴付けられる。初期の検出および治療はイヌおよびヒトの両方のエーリキア症を治療するために重要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
発明の要旨
一実施形態では、本発明は、(a)エーリキア・カニスに感染した動物と;(b)エーリキア・カニス(E.canis)に感染していない動物とを、この動物がE.canisに関してワクチン接種されているか否かにかかわらず識別する方法を提供する。この方法は、
(a)動物由来の生物学的サンプルと、E.canisワクチンに対するこの動物の免疫応答の成分である抗体に特異的に結合しない1つ以上の第一の精製されたポリペプチドとを接触させる工程であって;ここでこの1つ以上の第一の精製されたポリペプチドが配列番号22〜33に対して少なくとも95%の同一性を有しており、かつここでこの1つ以上の第一の精製されたE.canisポリペプチドがE.canisに特異的である抗体に特異的に結合する;および
(b)この生物学的サンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたE.canisポリペプチドに対して特異的に結合するか否かを検出する工程、を包含する。
生物学的サンプル中の抗体が、1つ以上の第一の精製されたポリペプチドに特異的に結合するならば、この動物はE.canisに感染している。この1つ以上の第一の精製されたポリペプチドは約15〜約75アミノ酸長であってもよい。この1つ以上の第一の精製されたポリペプチドは、異種のアミノ酸配列、指示薬、アミノ酸スペーサー、アミノ酸リンカー、シグナル配列、輸送停止配列、膜貫通ドメイン、タンパク質精製リガンドまたはそれらの組み合わせに結合され得る。この方法はさらに、E.canisワクチンの要素である1つ以上の第二の精製されたE.canisポリペプチドに対して、上記生物学的サンプル中の抗体が特異的に結合するか否かを決定する工程をさらに包含し得る。もし、この生物学的サンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合し、かつ1つ以上の第二の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合するならば、この動物はE.canisに感染しており、かつE.canisに関するワクチン接種状態が不明である。もし、このサンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合せず、かつ1つ以上の第二の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合するならば、この動物は、E.canisに感染しておらず、かつE.canisについてワクチン接種されている。もし、このサンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたポリペプチドに特異的に結合せず、かつ1つ以上の第二の精製されたポリペプチドに特異的に結合しないならば、この動物はE.canisについてワクチン接種されておらず、かつE.canisに感染していない。
【0004】
本発明の別の実施形態は、E.canisについて動物のワクチン接種および感染状態を判定する方法を提供する。この方法は:
(a)動物由来の生物学的サンプルと、E.canisワクチンに対する動物の免疫応答の成分である抗体に特異的に結合しない1つ以上の第一の精製されたポリペプチドであって、配列番号22〜33に対して少なくとも95%の同一性を有しており、E.canisに特異的である抗体に特異的に結合する、1つ以上の第一の精製されたポリペプチド、ならびにE.canisワクチンに対する動物の免疫応答の成分である抗体に特異的に結合する1つ以上の第二の精製されたポリペプチドとを接触させる工程と;
(b)この生物学的サンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたポリペプチドに対して、および1つ以上の第二の精製されたポリペプチドに対して特異的に結合するか否かを検出する工程と;を包含する。
この生物学的サンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合し、かつ1つ以上の第二の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合するならば、この動物は、E.canisに感染しており、かつE.canisについてワクチン接種状態が不明である。もしこのサンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合せず、かつ1つ以上の第二の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合するならば、この動物は、E.canisに感染しておらず、かつE.canisについてワクチン接種されている。もしこのサンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたポリペプチドに特異的に結合せず、かつ1つ以上の第二の精製されたポリペプチドに特異的に結合しないならば、この動物はE.canisについてワクチン接種されておらず、かつE.canisに感染していない。上記1つ以上の第一の精製されたポリペプチドは約15〜約75アミノ酸長であってもよい。この1つ以上の第一の精製されたポリペプチドは、異種のアミノ酸配列、指示薬、アミノ酸スペーサー、アミノ酸リンカー、シグナル配列、輸送停止配列、膜貫通ドメイン、タンパク質精製リガンドまたはそれらの組み合わせに結合されてもよい。
【0005】
本発明のさらに別の実施形態は、試験サンプル中でE.canisに特異的である抗体またはその抗原結合フラグメントの存在を判定する方法を提供する。この方法は:
(a)1つ以上の精製されたポリペプチドが抗体またはその抗原結合フラグメントに特異的に結合するのに適した条件下で、試験サンプルを、配列番号22〜33に対して少なくとも95%の同一性を有する1つ以上の精製されたポリペプチドと接触させる工程であって、ここで、1つ以上の精製されたポリペプチドは約15〜約75アミノ酸長であり、1つ以上の第一の精製されたポリペプチドは、E.canisに特異的である抗体に特異的に結合する;および
(b)該1つ以上の精製されたポリペプチドの、該抗体またはその抗原結合フラグメントへの特異的な結合の存在を検出する工程;
を包含する。
この1つ以上の精製されたポリペプチドの該抗体または抗原結合フラグメントへの特異的な結合の存在は、この試験サンプル中のE.canisに特異的な抗体またはその抗原結合フラグメントの存在を示す。上記1つ以上の精製されたポリペプチドは、異種のアミノ酸配列、指示薬、アミノ酸スペーサー、アミノ酸リンカー、シグナル配列、輸送停止配列、膜貫通ドメイン、タンパク質精製リガンドまたはそれらの組み合わせに結合され得る。この方法はさらに、特異的な結合の量を検出する工程を包含し得る。この1つ以上の精製ポリペプチドは固相支持体に固定されてもよい。
【0006】
本発明のさらに別の実施形態では以下:
(a)配列番号22〜33からなる1つ以上の精製されたポリペプチド;あるいは
(b)配列番号22〜33に対して少なくとも95%の同一性を有しており、約15〜約75アミノ酸長であり、E.canisに特異的である抗体に特異的に結合する、1つ以上の精製されたポリペプチド;
(c)1位のXが存在しないかまたはCであり、4位のXがHまたはQであり、25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGである、配列番号33;
(d)1位のXがCであり、4位のXがHであり、25位のXがDまたはGである、配列番号33のアミノ酸1〜27;
(e)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり;かつCが任意にアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸13〜41;
(f)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが任意にアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸24〜49;
(g)1位のXがCであるかまたは存在せず、かつここで25位のXがDまたはGである、配列番号33のアミノ酸1〜27;
(h)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが任意にアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸13〜41;
(i)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが任意にアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸24〜49;
(j)25位のXがDまたはGであり、かつCが任意にアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸13〜27;
(k)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが任意にアミノ末端に存在している配列番号33のアミノ酸24〜41;
(l)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが任意にアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸13〜41;
(m)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが任意にアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸24〜49;
(n)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが任意にアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸24〜41;あるいは
(o)(a)〜(n)の組み合わせ、
を含んでいる、組成物を提供する。
上記1つ以上の精製されたポリペプチドは多量体型であってもよい。この1つ以上の精製されたポリペプチドは、異種のタンパク質、指示薬、アミノ酸スペーサー、アミノ酸リンカー、シグナル配列、輸送停止配列、膜貫通ドメイン、タンパク質精製リガンドまたはそれらの組み合わせに結合されてもよい。
【0007】
本発明の別の実施形態は、動物において免疫応答を生じさせる方法であって:この動物に対して、配列番号22〜33に対して少なくとも95%の同一性を有している1つ以上の精製されたポリペプチドまたはそれらの組み合わせを投与する工程を包含し、この1つ以上の精製されたポリペプチドがこの動物において免疫応答を生じる方法を提供する。この1つ以上の精製されたポリペプチドは約15〜約75アミノ酸長であってもよい。この1つ以上の精製されたポリペプチドは多量体型であってもよい。この1つ以上の精製されたポリペプチドは、異種のタンパク質、指示薬、アミノ酸スペーサー、アミノ酸リンカー、シグナル配列、輸送停止配列、膜貫通ドメイン、タンパク質精製リガンドまたはそれらの組み合わせに結合されてもよい。
【0008】
本発明のさらに別の実施形態は、動物におけるエーリキア・カニス感染の予防、治療または回復のための方法を提供し、この方法は、この動物に対して:
(a)配列番号22〜33に対して少なくとも95%の配列同一性を有している1つ以上の精製されたポリペプチド、またはそれらの組み合わせ;あるいは
(b)配列番号22〜33を含んでいる1つ以上の精製されたポリペプチドをコードする1つ以上の核酸、またはそれらの組み合わせ;あるいは
(c)配列番号22〜33を含んでいる1つ以上の精製されたポリペプチドに特異的に結合する1つ以上の抗体、またはそれらの組み合わせ;
を投与する工程を包含し、これによってE.canis感染が予防、回復または治療される。
【0009】
本発明のさらに別の実施形態は、患者においてE.canis感染の治療をモニタリングする方法であって:(a)請求項10の方法によるE.canis感染のための治療の前または初期段階において、患者由来の第一のサンプル中の抗E.canis抗体のレベルを測定する工程と;(b)請求項10の方法によって治療がなされた後の該患者由来の第二のサンプル中の抗E.canis抗体のレベルを測定する工程と;(c)この第一のサンプル中の抗E.canis抗体の量と、第二のサンプル中の抗E.canis抗体の量とを比較して、変化を評価し、それによって処置をモニタリングする工程と;を包含する、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実験用ビーグル犬のSNAP(登録商標)3Dx(登録商標)アッセイ評価を示す。SNAP(登録商標)デバイスは、製造業者によって記載されるとおりに用いた。「プレ、前(Pre)」サンプルは、0日目由来である。「ポスト、後(Post)」サンプルは42日目由来である。E.canis陽性のスポットは、42日目のサンプルについて4匹全てのイヌで陽性になった。同様の結果が70日目のサンプルについて観察された。
【図2】図2は、2Dゲル電気泳動を用いて分離したE.canisのタンパク質のゲルを示す。BIOSAFE(登録商標)クマシーブルー(Bio−Rad Inc.)で染色した。
【図3】図3は、0日目に収集したイヌ血清を用いたE.canisのタンパク質のウエスタンブロットを示す。血漿希釈1:100である。これらのイヌは、E.canisの抗原との反応性について陰性であった。
【図4】図4は、4匹のワクチン接種した動物のプール由来のイヌ血清を用いたE.canisのタンパク質のウエスタンブロットを示す。血清希釈は1:100である。
【図5】図5は、感染した動物のプール由来のイヌ血漿を用いたE.canisのタンパク質のウエスタンブロットを示す。血清希釈は1:1000である。
【図6】図6は、E.coliで発現されて、4匹の感染した動物のプール由来のイヌ血清(A)、または4匹のワクチン接種した動物由来のプールしたイヌ血清(B)のいずれかを用いてプローブされた6つの異なるE.canisのDIVA抗原のウエスタンブロットを示す。血清希釈は、ワクチン接種した動物については1:100であり、感染した動物については1:500であった。提示されるDIVA抗原としては以下が挙げられる:(1)200kDaの抗原、(2)リボソームタンパク質L1、(3aおよび3b)「ATPアーゼ」−2つの異なるセグメント、(4)120kDa抗原、(5)熱ショックタンパク質/p16抗原。
【図7】図7は、クローニングされたp16抗原が、E.canisに感染したイヌ由来の血清によって認識されるが、ワクチン接種されたイヌ由来の血清(「攻撃した(challenged)血清」として示す)では認識されないことを示す。p16抗原またはもとのゲノムフラグメント(+C)を発現するベクターで形質転換された、未誘導(U)または誘導された(I)細菌由来の溶解物を、SDS−PAGEによって分離して、ウエスタンブロット分析のためにニトロセルロースに転写した。
【図8】図8は、イヌにおいて配列番号23に示されるポリペプチドを用いたE.canisに特異的な抗体の検出を、感染、治療および回復を含めて、経時的に示す。
【図9A】図9Aは、E.canisについてワクチン接種されていないイヌにおいて、配列番号10に示されるポリペプチドを用いるE.canisに特異的な抗体の検出を、感染の時間経過にわたって示す。
【図9B】図9Bは、E.canisについてワクチン接種されていないイヌにおいて、配列番号10に示されるポリペプチドを用いるE.canisに特異的な抗体の検出を、感染の時間経過にわたって示す。
【図10A】図10Aは、E.canisについてワクチン接種された(RIBIアジュバント)イヌにおいて、配列番号10に示されるポリペプチドを用いるE.canisに特異的な抗体の検出を、感染の時間経過にわたって示す。
【図10B】図10Bは、E.canisについてワクチン接種された(RIBIアジュバント)イヌにおいて、配列番号10に示されるポリペプチドを用いるE.canisに特異的な抗体の検出を、感染の時間経過にわたって示す。
【図10C】図10Cは、E.canisについてワクチン接種された(RIBIアジュバント)イヌにおいて、配列番号10に示されるポリペプチドを用いるE.canisに特異的な抗体の検出を、感染の時間経過にわたって示す。
【図11A】図11Aは、E.canisについてワクチン接種された(RIBI+BCGアジュバント)イヌにおいて、配列番号10に示されるポリペプチドを用いるE.canisに特異的な抗体の検出を、感染の時間経過にわたって示す。
【図11B】図11Bは、E.canisについてワクチン接種された(RIBI+BCGアジュバント)イヌにおいて、配列番号10に示されるポリペプチドを用いるE.canisに特異的な抗体の検出を、感染の時間経過にわたって示す。
【図11C】図11Cは、E.canisについてワクチン接種された(RIBI+BCGアジュバント)イヌにおいて、配列番号10に示されるポリペプチドを用いるE.canisに特異的な抗体の検出を、感染の時間経過にわたって示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
エーリキア・カニス抗原であって、これを用いて、E.canisに対してワクチン接種されている動物からE.canisに自然感染した動物を識別することができる抗原が開示されている。「ワクチン接種された」とは、病原体に対する免疫を確立または恒常させることによってこの病原体による感染の影響を予防または回復し得るワクチン組成物の投与を意味する。ワクチン組成物は死んだ、不活性化されたもしくは減弱された病原体、またはその病原体の精製された産物もしくは部分を含んでもよい。ワクチン接種は100%有効性である必要はない。
【0012】
本発明を詳細に記載する前に、多数の用語を規定する。本明細書において用いる場合、単数形「1つの、ある(a、an:不定冠詞)」、および「この、その(the:定冠詞)」は、文脈上明確に違ったふうに指示しない限り複数の言及を包含する。
【0013】
本明細書において用いる場合、「ポリペプチド」という用語は、単鎖の化合物またはペプチド結合によって連結されたアミノ酸残基の2つ以上の鎖の複合体を指す。この鎖(単数または複数)は任意の長さであってもよく、融合タンパク質を含んでもよい。「タンパク質」は比較的大きいポリペプチドについて言及する場合に用いられることが多く、「ペプチド」は、小型のポリペプチドに関して用いられることが多いが、当該分野でのこれらの用語の使用は、重複しており、かつ変化する。従って、本明細書において用いる場合、「ポリペプチド」という用語は、他に注記しない限り、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、または融合タンパク質を交換可能に言及する。「アミノ酸」という用語は、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質のモノマー単位を指す。「ポリペプチド」という用語は、1つのタイプのポリペプチド(1セットのポリペプチド)の1つ以上を指すこともできる。「ポリペプチド」とはまた、2つ以上の異なるタイプのポリペプチドの混合物(ポリペプチドの混合物)を指すこともできる。「ポリペプチド(複数)」または「ポリペプチド(単数)」という用語は各々がまた、「1つ以上のポリペプチド」を意味する場合がある。
【0014】
本発明のポリペプチドは、「単離され」てもよい。単離されたポリペプチドとは、天然には会合しているアミノおよびカルボキシ隣接アミノ酸配列の一方または両方と直接には近接していないポリペプチドである。詳細には、「配列番号22〜33に示される単離されたポリペプチド」とは、このポリペプチドがE.canisのタンパク質分子中に天然に会合するアミノおよびカルボキシ隣接アミノ酸配列の一方または両方と直接には隣接しないことを意味する(ここでこのポリペプチドは天然に存在するポリペプチドである)。
【0015】
本明細書において用いる場合、「抗原」とは、それに対して被験体が体液性および/または細胞性免疫応答を開始し得る分子を指す。抗原は、任意のタイプの生物学的分子であってもよく、これには、例えば、単純な中間代謝物、糖、脂質およびホルモン、ならびに高分子(例えば、複雑な炭水化物、リン脂質、核酸およびタンパク質)が挙げられる。本発明の組成物および方法では、抗原はポリペプチド、例えば、少なくとも6つ以上のアミノ酸を含んでいるものであってもよい。
【0016】
本明細書において用いる場合、E.canis抗原のポリペプチドの「誘導体」、またはE.canisの抗原もしくはポリペプチド「に由来する」抗原もしくはポリペプチドとは、天然の型が精製、修飾または改変されている抗原またはポリペプチドを指す。このような修飾としては限定するものではないが以下が挙げられる:アミノ酸の置換、修飾、付加または欠失;脂質化、グリコシル化もしくはリン酸化のパターンの変更;このポリペプチドに存在するアミノ酸残基の遊離のアミノ側鎖、カルボキシル側鎖もしくはヒドロキシル側鎖と他の有機および非有機の分子との反応;ならびに他の修飾であって、そのいずれかが一次、二次または三次構造中の変化を生じ得る修飾。
【0017】
「生物学的サンプル」とは、免疫グロブリンを含んでいると予想される動物由来の任意のサンプルである。例えば、生物学的サンプルとは、血漿であっても、血液であっても、血清であっても、唾液であっても、尿であっても、糞便であっても、創傷浸出液であっても、脳脊髄液(CSF)であっても、精液であっても、痰であっても、組織抽出液であっても、細胞抽出液であってもよい。本発明の一実施形態では、試験サンプルは、ウマ、イヌ、ウシ、ラマ、ヒツジ、ヤギ、シカ、ヘラジカ(エルク)、げっ歯類または任意の他の動物などの動物から得ることができる。ヒトは本明細書では動物であるとみなされる。これらの例は、本発明に適用可能なサンプルの種類または動物を限定すると解釈されるべきではない。
【0018】
「感染」とは、例えば、E.canis感染では、ある動物が、E.canisの臨床症状を示すか否かにかかわらず、E.canisに曝されていることを意味する。自然感染とは、ダニによる伝播などの、E.canisの天然の伝播方法の1つの結果として生じる曝露を指す。感染にはワクチン接種を通じたE.canisに対する曝露は含まない。
【0019】
「E.canisのワクチンの要素ではないポリペプチドまたは抗原」とは、特定のE.canisのワクチン(単数または複数)に存在しない任意のE.canisのポリペプチドまたは抗原である。「E.canisのワクチンの要素ではないポリペプチドまたは抗原」とは、E.canisワクチンの免疫原として活性な部分ではない任意のE.canisのポリペプチドまたは抗原でもある。すなわち、このポリペプチドまたは抗原はワクチン中に存在し得るが、ポリペプチドまたは抗原に対する免疫応答(例えば、ポリペプチドまたは抗原に特異的に結合する抗体の生成)は、E.canisのワクチンの投与に応答して生じることはない。ワクチン(単数または複数)の成分は、細菌全体ではないサブユニットワクチンの一部であってもよく;これらの部分はワクチンの一部となる前に、化学的に合成されても、または組み換え発現されてもよく、これらの部分は、インビボの免疫原性組成物を発現する1つ以上のベクターによってコードされてもよい。
【0020】
「E.canisワクチンに対する動物の免疫応答の成分である抗体」とは、E.canisのワクチンでのワクチン接種の結果として惹起される抗体を指す。これらの抗体は、天然のE.canis感染の結果として惹起された抗体と同一であっても、または類似であってもよい。これらの抗体は、十分な力価で維持され、それによって、この細菌に対する防御効果および中和効果を得ることができる。十分なワクチン接種によって、E.canisワクチンの成分によって惹起される抗体(単数または複数)の測定可能なレベルが生じる。E.canisワクチンに対する動物の免疫応答の成分であり得る抗体を惹起するE.canis抗原の例は、p28−1、p28−2、p28−3、p28−4、p28−5、p28−6、p28−7、p28−8、p28−9(米国特許第6660269号;同第6,458,942号;同第6,403,780号;同第6,392,023号を参照のこと)、proA、ProB、mmpA、チトクロームオキシダーゼ(米国特許出願公開第20040170972号を参照のこと)、p153のN末端部分であるp43(米国特許第6,355,777号を参照のこと)、糖タンパク質(米国特許出願公開第2004/0121433号を参照のこと)、p153、ならびにp30−1、p30−2、p30−3、p30−4、p30−5、p30−6、p30−7、p30−8、p30−9、p30−10、p30−11、p30−12、p30−13、p30−14、p30−15、p30−16、p30−17、p30−18、p30−19、p30−20(Ohashi et al.2001、Infection and Immunity 69(4):2083〜91)である。
【0021】
免疫応答とは、ポリペプチドなどの抗原に対する細胞性および/または抗体媒介性の免疫応答の生物における発達である。通常、このような応答は、限定するものではないが、以下のうちの1つ以上を包含する:抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞および/または細胞傷害性T細胞の産生。免疫応答は、当業者に公知の任意のいくつかのアッセイを用いて検出され得る。
【0022】
本発明のポリペプチド
E.canisに対してワクチン接種されている動物由来の生物学的サンプルは、ワクチンに対する応答において産生された抗体の存在に起因して、E.canisの感染についての試験で陽性の結果を生じる能力を有する。一態様では、本発明は、E.canisについて動物がワクチン接種されているか否かにかかわらず、E.canisに感染している動物とE.canisに感染していない動物とを識別する方法を提供する。この方法は、動物由来の生物学的サンプルと、特定のE.canisワクチンに対するこの動物の抗体応答の成分である抗体に特異的に結合しないが、E.canisの感染に対する応答で生成される抗体に特異的に結合する、E.canis由来の抗原とを接触させる工程を包含する。
【0023】
ワクチンに対する動物でのE.canis抗体の発生は、この動物をワクチン接種するために用いた特定のワクチンに依存する。E.canisに対してワクチン接種されている動物と、E.canisに自然感染したまたは実験的に感染させた動物との間の免疫応答の相違によって、動物がE.canisについてワクチン接種されているか否かにかかわらず、この動物がE.canisで自然に感染したまたは実験的に感染しているか否かを判定するための手段を提供する。従って、本発明の方法を用いて、E.canisに感染している動物は、E.canisに感染していない動物、および/またはE.canisに対してワクチン接種されている動物から識別され得る。本発明の抗原、それらの免疫優性領域、およびエピトープを本発明の方法において用いてもよい。これらの組成物は、E.canisのDIVA抗原(Differentiate Infected from Vaccinated Animals(ワクチン接種した動物から感染した動物を区別する))と呼ばれる場合がある。E.canisのDIVA抗原は、特定のE.canisワクチンによって動物において誘導される免疫応答とは区別される、動物における免疫応答、例えば、特定の抗体の産生を誘導する。
【0024】
従って、E.canisのDIVA抗原と、特定のワクチンに対する動物の免疫応答の成分ではない抗体との間の特異的な結合の検出は、自然のまたは実験的なE.canis感染を示し得る。このような結合がなければ、E.canis感染がないことが示され得る。さらに、第二の、別の抗原、例えば、特定のE.canisワクチンに対する動物の免疫応答の成分である抗体に特異的に結合するE.canis抗原を用いて、ワクチン接種に対する応答で生じた抗体を検出してもよい(本明細書では「E.canisのワクチン抗原」と呼ばれる)。E.canisワクチンの抗原は、特定のE.canisワクチンに対する動物の免疫応答の成分である抗体に特異的に結合するだけでなく、またE.canisの感染に対する動物の免疫応答の成分である抗体にも特異的に結合し得る。もしE.canisワクチンの抗原に特異的な抗体が検出されるならば、この動物はワクチン接種されているか、および/または感染している。いずれの抗体の検出もなければ感染もワクチン接種もないことを示す。そのようなものとして、別々の捕獲試薬の種々の組み合わせで、試験被験体におけるワクチン接種および/または感染の状態の判定を行うことができる。
【0025】
一局面では、本発明の方法は、動物由来の生物学的サンプルと、E.canis菌の一部であるが、特定のE.canisワクチンの構成要素ではない抗原とを接触させる工程を包含する。別の局面では、本発明の方法は、動物由来の生物学的サンプルと、E.canis菌およびE.canisのワクチンに存在するかまたはそれらの一部である抗原とを接触させる工程を包含し、ここでこの抗原に対する免疫応答(例えば、この抗原に特異的に結合する抗体の産生)は、E.canis菌の感染に応答して生じるが、E.canisワクチンの投与に応答しては生じない。別の局面では、動物由来の生物学的サンプルを分析して、E.canisのDIVA抗原に特異的な抗体の有無、ならびにE.canisワクチンの抗原に特異的な抗体の有無を検出する。次いで、このような抗体がないことを判定することによって、動物が感染しておらず、かつワクチン接種されていないかワクチン接種されていることを判定する。
【0026】
本発明の一局面では、DIVA抗原はE.canisのワクチンの要素ではない。本発明の別の局面では、DIVA抗原は、E.canisのワクチンの一部であるが、免疫応答(例えば、DIVA抗原に特異的に結合する抗体の産生)は、E.canisのワクチンの投与に応答しては生じない。動物のワクチン接種または感染の状況は、サンプル中の抗体が1つ以上のE.canisワクチンの抗原に特異的に結合するか否か、およびサンプル中の抗体が1つ以上のDIVA抗原に特異的に結合するか否かを検出することによって判定され得る。サンプル中の抗体が、1つ以上のワクチンの抗原に特異的に結合し、かつ1つ以上のDIVA抗原に特異的に結合するならば、その動物は、E.canisに感染しており、かつその動物のワクチン接種の状態は不明である。サンプル中の抗体が1つ以上のE.canisワクチンの抗原に特異的に結合し、かつ1つ以上のDIVA抗原に特異的に結合しないならば、その動物はE.canisについてワクチン接種されており、かつE.canisに感染していない。サンプル中の抗体が1つ以上のE.canisワクチンの抗原に特異的に結合せず、かつ1つ以上のDIVA抗原に特異的に結合しないならば、その動物は、E.canisに感染しておらず、かつE.canisに関してワクチン接種されていない。
【0027】
本発明の一局面では、(a)エーリキア・カニスに感染している動物と;(b)E.canisに感染していない動物とを、それらの動物のE.canisワクチンの状態にかかわらず識別する方法を提供する。この方法は、動物由来の生物学的サンプルと、E.canisワクチンに対するこの動物の免疫応答の成分である抗体に実質的に特異的に結合しない第一の精製されたE.canisポリペプチドとを接触させる工程であって;ここでこの第一の精製されたE.canisポリペプチドが配列番号22〜33またはその組み合わせを含んでいる工程と、このサンプル中の抗体が第一の精製されたE.canisポリペプチドに対して特異的に結合するか否かを検出する工程と、を包含する。このサンプル中の抗体が、第一の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合するならば、この動物はE.canisに感染しており;このサンプル中の抗体が、第一の精製されたE.canisポリペプチドに実質的に特異的に結合しないならば、この動物はE.canisに感染していない。
【0028】
この方法はさらに、E.canisワクチン抗原を含む第二の精製されたE.canisポリペプチドに対して、上記サンプル中の抗体が特異的に結合するか否かを判定する工程を包含し得る。もし、このサンプル中の抗体が1つ以上のE.canisワクチンの抗原に特異的に結合し、かつ1つ以上のDIVA抗原に特異的に結合するならば、この動物はE.canisに感染しており、かつこの動物のワクチン接種状態が不明である。もし、このサンプル中の抗体が1つ以上のE.canisワクチン抗原に特異的に結合し、かつ1つ以上のDIVA抗原に特異的に結合しないならば、この動物は、E.canisについてワクチン接種されており、かつE.canisに感染していない。もし、このサンプル中の抗体が1つ以上のE.canisワクチンの抗原に特異的に結合せず、かつ1つ以上のDIVA抗原に特異的に結合しないならば、この動物はE.canisに感染しておらず、かつE.canisについてワクチン接種されていない。本発明の一実施形態では、試験サンプル中の抗体は、DIVA抗原および/またはE.canisワクチンの抗原に対して実質的に特異的に結合しない。実質的に、非特異的な結合とは、当業者によって陰性の結果とみなされる結合の量である。
【0029】
本発明の一局面では、E.canisに関する動物のワクチン接種および感染状態を判定する方法が得られる。この方法は:
(a)動物由来の生物学的サンプルと、E.canisワクチンに対する動物の免疫応答の成分である抗体に実質的に特異的に結合しない第一の精製されたポリペプチドであって、配列番号22〜33またはその組み合わせを含んでいるポリペプチド、ならびにE.canisワクチンに対する動物の免疫応答の成分である抗体に特異的に結合する第二のポリペプチドとを接触させる工程と;
(b)このサンプル中の抗体が第一および第二の精製されたポリペプチドに特異的に結合するか否かを検出する工程と;を包含し、
ここでこの生物学的サンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合し、かつ1つ以上の第二の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合するならば、この動物は、E.canisに感染しており、かつE.canisについてワクチン接種状態が不明であり;ここでこのサンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合せず、かつ1つ以上の第二の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合するならば、この動物は、E.canisに感染しておらず、かつE.canisについてワクチン接種されており;もしこのサンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたポリペプチドに特異的に結合せず、かつ1つ以上の第二の精製されたポリペプチドに特異的に結合しないならば、この動物はE.canisについてワクチン接種されておらず、かつE.canisに感染していない。
【0030】
表1は、E.canisのDIVA抗原およびE.canisワクチン抗原を用いて判定できる、動物の感染および/またはワクチン接種の状態を示す。表1の「行わず(Not Done)」とは、特定の試験を完了しておらず、従って結果が利用できないことを意味する。例えば、動物由来の生物学的サンプルをE.canisのDIVA抗原を用いて試験し、かつその結果が陽性であって、E.canisのワクチン抗原では試験が完了していないならば、その動物の状態は感染であるが、ワクチン接種の状態は不明である。
【0031】
【表1】
【0032】
本発明の別の局面は、試験サンプル中の抗体またはその抗原結合フラグメントの有無を判定するための方法を提供し、ここでこの抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号10、22〜33またはそれらの組み合わせからなる精製されたポリペプチドに特異的に結合する。この方法は、試験サンプルと、配列番号10、22〜33またはそれらの組み合わせを含んでいる精製されたポリペプチドとを、抗体またはその抗原結合フラグメントに、精製されたポリペプチドが特異的に結合するのに適した条件下で接触させる工程と;特異的な結合の有無を検出する工程とを包含する。この特異的な結合の存在によって、この抗体またはその抗原結合フラグメントの存在が示され、この特異的な結合が無いことによって、この抗体またはその抗原結合フラグメントが無いことが示される。
【0033】
ワクチンは、感染を予防または回復するのに完全に有効ではない場合がある。従って、ワクチン接種された動物がワクチン接種にかかわらず、感染したか否かを判定するための方法があることが望ましい。配列番号10、22〜33は、E.canisに関してワクチン接種されており、かつE.canisに感染していないイヌにおいて、抗E.canis抗体を検出しない。配列番号10、22〜33は、E.canisのワクチンを投与されているか、または投与されていないイヌにおいて、E.canis感染を検出するために用いられ得る。本発明の一実施形態では、この動物は、E.canisのワクチン接種を受けて、E.canisの検出がすでに可能になった後、E.canisに感染する。
【0034】
本発明の別の局面は、配列番号10、22〜33を含むかまたはそれらからなる1つ以上の精製されたポリペプチド、またはそれらの組み合わせを含んでいるかまたはそれらからなる組成物を含む。本発明のポリペプチドは、翻訳後に修飾されてもよい。精製されたポリペプチドとは、細胞性物質、他の種類のポリペプチド、化学的前駆体、ポリペプチドの合成に用いられる化学物質、またはそれらの組み合わせを実質的に含まないポリペプチド調製物である。細胞性物質、培地、化学的前駆体、ポリペプチドの合成に用いられる化学物質などを実質的に含まないポリペプチド調製物とは、他のポリペプチド、培地、化学的前駆体、および/または合成に用いられる他の化学物質が約30%、20%、10%、5%、1%またはそれよりも少ない。従って精製されたポリペプチドとは約70%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上純粋である。精製されたポリペプチドは、未精製の細胞抽出物も半精製の細胞抽出物も、または純度が70%未満であるポリペプチドの混合物も含まない。
【0035】
本発明の一実施形態は、配列番号22〜33を含んでいる精製されたポリペプチドを提供し、このポリペプチドは、約50、45、40、35、30、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6またはそれ未満(または50と6との間の任意の範囲)の連続する天然に存在するエーリキア・カニスのアミノ酸からなる(すなわち、この精製されたポリペプチドは、完全な天然に存在するエーリキア・カニスのポリペプチドを包含しない)。天然に存在するエーリキア・カニスのアミノ酸は、エーリキア・カニスの生物体によって通常産生される任意のポリペプチドである。本発明の一実施形態では、精製されたポリペプチドは配列番号22〜33を含み、このポリペプチドは、約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、30、35、40、50、60、70、80、90、100、またはそれ以上連続する天然に存在するエーリキア・カニスのアミノ酸(または約6〜100個の任意の範囲のアミノ酸)を含む。
【0036】
配列番号22〜33のポリペプチドは、全長のエーリキア・カニスのポリペプチドよりも小さいという事実は重要である。なぜなら、ポリペプチドが小さいほど、検出アッセイで全長ポリペプチドよりも大きい特異性および/または感度を有し得るからである。さらに、これらのポリペプチドが小さいほど、製造は安価になり得、そして全長ポリペプチドよりも高い純度を得ることができる。
【0037】
本発明の一実施形態は、約50、45、40、35、30、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7または6の連続する天然のエーリキア・カニスのアミノ酸よりも少なく、かつ配列番号22〜23の約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、30、35、40、50、60、70、80、90、または100の連続するアミノ酸よりも大きい(または6〜100アミノ酸の任意の範囲)、精製されたポリペプチドを提供する。従って、本発明のポリペプチドは、例えば、約15〜約30;約15〜約50;または約15〜約100アミノ酸長であってもよい。
【0038】
変異ポリペプチドは、配列番号22〜33に示されるポリペプチド配列に対して少なくとも約79%、80%、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%またはそれ以上同一であり、また本発明のポリペプチドでもある。変異ポリペプチドは、1つ以上の保存的アミノ酸変異または他のマイナーな修飾を有し、かつ生物学的活性を保持し、すなわち、生物学的に機能的な等価物である。生物学的に活性な等価物は、対応する野性型ポリペプチドに比較した場合実質的に等価な機能を有する。本発明の一実施形態では、ポリペプチドは約1、2、3、4、5、10、20またはそれより少ない保存的アミノ酸置換を有する。
【0039】
これらのポリペプチドは、配列番号22〜33のアミノ酸残基を超える追加のアミノ酸残基を有してもよい。すなわち、このポリペプチドは、このポリペプチドの5’末端または3’末端に追加された追加のアミノ酸残基を有してもよく、一方で配列番号22〜33の15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、または48の連続するアミノ酸(特定の配列番号の長さに依存する)にそった配列同一性は少なくとも約95%である。ポリペプチドの5’末端または3’末端上に付加された追加のアミノ酸は、配列同一性のパーセンテージに影響するとはみなされない。この追加のアミノ酸は、天然に存在するアミノ酸であってもよいし、または天然には存在しないアミノ酸であってもよい。このポリペプチドは、例えば、約15〜約50アミノ酸長であっても、または約75アミノ酸長であってもよい。
【0040】
変異ポリペプチドは、1つ以上の保存的アミノ酸の置換、欠失、付加または他のマイナーな修飾を有し、かつ生物学的活性を保持している、すなわち、生物学的に機能的な等価物である。生物学的に活性な等価物は、対応する野性型のポリペプチドに比較した場合、実質的に等価な機能を有する。
【0041】
配列同一性パーセントは、意味を認識する技術を有し、2つのポリペプチド配列の間またはポリヌクレオチド配列の間で同一性を測定するには多数の方法がある。例えば、Lesk,Ed.,Computational Molecular Biology,Oxford University Press,New York,(1988);Smith,Ed.,Biocomputing: Informatics And Genome Projects,Academic Press,New York,(1993);Griffin & Griffin,Eds.,Computer Analysis Of Sequence Data,Part I,Humana Press,New Jersey,(1994);von Heinje, Sequence Analysis In Molecular Biology,Academic Press,(1987);ならびにGribskov & Devereux,Eds.,Sequence Analysis Primer,M Stockton Press,New York,(1991)を参照のこと。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドをアラインメントさせるための方法は、コンピュータープログラムにコードされており、このプログラムとしては、GCGプログラムパッケージ(Devereux et al.,Nuc.Acids Res.12:387(1984))、BLASTP、BLASTN、FASTA(Atschul et al.,J.Molec.Biol.215:403(1990))、およびBestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8 for Unix,Genetics Computer Group,University Research Park,575 Science Drive,Madison,WI 53711)(SmithおよびWatermanの局所相同性アルゴリズムを用いる(Adv.App.Math.,2:482−489(1981)))が挙げられる。例えば、FASTAアルゴリズムを使用するコンピュータープログラムALIGNを、−12のギャップ・オープン・ペナルティーおよび−2のギャップ・伸長・ペナルティーを用いるアフィン・ギャップ・サーチ(affine gap search)で用いてもよい。
【0042】
特定の配列が参照配列と例えば約95%の相同性を有するか否かを決定するために任意の配列アラインメントプログラムを用いるとき、参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの全長にわたって同一性のパーセンテージが計算され、かつ同一性におけるギャップが参照ポリヌクレオチドのヌクレオチドまたはアミノ酸の総数の最大5%まで許容されるように、パラメーターを設定する。
【0043】
変異ポリペプチドは一般に、本発明のポリペプチド配列の1つを修飾すること、および修飾したポリペプチドの特性を評価して生物学的に等価であるか否かを決定することによって同定され得る。変異体は、例えば、免疫組織化学アッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫酵素アッセイ、またはウエスタンブロットアッセイなどのアッセイにおいて本発明のポリペプチドと実質的に同じように反応し、例えばもとのポリペプチドの90〜110%の活性を有する場合、生物学的に等価である。一実施形態において、アッセイは競合アッセイであって、ここでは生物学的に等価なポリペプチドは、対応する反応性の抗原または抗体への本発明のポリペプチドの結合を、約80、95、99、または100%まで減少させることができる。対応する野生型ポリペプチドに特異的に結合する抗体はまた、変異体ポリペプチドにも特異的に結合する。
【0044】
保存的置換とは、あるアミノ酸が、ペプチド化学の当業者がポリペプチドの二次構造および疎水性親水性指標の性質が実質的に変化しないだろうと予測するような、同様の性質を有する別のアミノ酸に置換された置換である。一般に、以下のアミノ酸のグループは保存的変化を示す:(1)ala、pro、gly、glu、asp、gln、asn、ser、thr;(2)cys、ser、tyr、thr;(3)val、ile、leu、met、ala、phe;(4)lys、arg、his;および(5)phe、tyr、trp、his。
【0045】
本発明のポリペプチドは、タンパク質輸送を翻訳と同時または翻訳後に指示するシグナル(またはリーダー)配列をさらに含んでもよい。ポリペプチドは、このポリペプチドの合成、精製、または同定を容易にするため(例えばポリ−His)、または固相支持体へのポリペプチドの結合を強化するために、リンカーまたは他の配列を含んでもよい。例えば、ポリペプチドは、免疫グロブリンのFc領域またはウシ血清アルブミンとコンジュゲートさせてもよい。
【0046】
ポリペプチドは、このポリペプチドが天然において通常会合していないアミノ酸配列、すなわち異種のアミノ酸配列と共有結合されていてもまたは非共有結合されていてもよい。異種のアミノ酸配列は、非E.canis生物体由来であっても、合成配列であっても、または天然には本発明のポリペプチドのカルボキシ末端もしくはアミノ末端に位置しないE.canis配列であってもよい。さらに、ポリペプチドはアミノ酸以外の化合物または分子、例えば、指示薬に、共有結合されてもまたは非共有結合されてもよい。ポリペプチドは、指示薬、アミノ酸スペーサー、アミノ酸リンカー、シグナル配列、輸送停止配列、膜貫通ドメイン、タンパク質精製リガンド、またはそれらの組み合わせと共有結合されても、または非共有結合されてもよい。ポリペプチドはまた、免疫応答(例えば、IL−2などのサイトカイン)を増強する部分(すなわち、ポリペプチドであっても他の化合物であってもよい官能基)、精製を容易にする部分(例えば、アフィニティータグ(例えば、6ヒスチジンタグ、trpE、グルタチオン、マルトース結合タンパク質))、またはポリペプチド安定性を促進する部分(例えば、ポリエチレングリコール;アミノ末端保護基、例えば、アセチル、プロピル、スクシニル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニルまたはt−ブチルオキシカルボニル;カルボキシル末端保護基、例えば、アミド、メチルアミドおよびエチルアミド)に連結されてもよい。本発明の一実施形態では、タンパク質精製リガンドは、例えば、本発明のポリペプチドのアミノ末端もしくはC末端、またはその両方の末端における1つ以上のCアミノ酸残基であってもよい。アミノ酸スペーサーとは、天然において本発明のポリペプチドと会合していないアミノ酸の配列である。アミノ酸スペーサーは約1、5、10、20、100、または1000のアミノ酸を含んでもよい。
【0047】
必要に応じて、本発明のポリペプチドは融合タンパク質の一部であってもよく、ここでは、例えばアミノ酸リンカー、アミノ酸スペーサー、シグナル配列、TMR輸送停止配列、膜貫通ドメイン、ならびにグルタチオン−S−トランスフェラーゼ、ヒスチジンタグ、およびブドウ球菌プロテインAまたはそれらの組み合わせなどのタンパク質精製に有用なリガンドなどの他のアミノ酸配列を含んでもよい。本発明の2つ以上のポリペプチドは、融合タンパク質で存在してもよい。本発明のポリペプチドフラグメントは、本発明の融合タンパク質の状態で存在してもよい。本発明のポリペプチドを、非エーリキア・カニスタンパク質または非エーリキア・カニス p16タンパク質に作動可能に連結して、融合タンパク質を形成してもよい。本発明の融合タンパク質は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33に示される1つ以上のポリペプチドもしくはそれらのフラグメント、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。融合タンパク質は、天然には生じない。「作動可能に連結された」という用語は、本発明のポリペプチドまたは他のポリペプチドが、本発明のポリペプチドのN末端またはC末端のいずれかに対してお互いにインフレームで融合されていることを意味する。
【0048】
本発明のポリペプチドは多量体型であってもよい。すなわち、ポリペプチドは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33のうちの1つ以上のコピーまたはそれらの組み合わせを含んでもよい。多量体のポリペプチドは、多重抗原タンパク質(MAP)であってもよい。例えば、Tam,J.Immunol.Methods,196:17〜32(1996)を参照のこと。
【0049】
本発明のポリペプチドは、E.canisに特異的な抗体により認識される抗原を含んでもよい。この抗原は1つ以上のエピトープ(すなわち、抗原決定基)を含んでもよい。エピトープは、直線状エピトープ、連続(sequential)エピトープ、またはコンフォメーショナル(conformatial)エピトープであってもよい。本発明のポリペプチド内のエピトープは、いくつかの方法で同定され得る。例えば、米国特許第4,554,101号;Jameson & Wolf,CABIOS 4:181〜186(1988)を参照のこと。例えば、本発明のポリペプチドは単離され、スクリーニングされてもよい。合わせると完全なポリペプチド配列となるような一連の短いペプチドは、タンパク質切断により調製することができる。例えば30マー(またはそれより短い)ポリペプチドフラグメントから始めることによって、各々のフラグメントはELISAにおいて認識されるエピトープの存在について試験することができる。例えば、ELISAアッセイにおいては、30マーのポリペプチドフラグメントなどのE.canisポリペプチドを、プラスチックのマルチウェルプレートの壁などの固相支持体に結合させる。抗体の集団を標識し、固相支持体に加え、非特異的な吸収がブロックされる条件下で非標識の抗原に結合させ、そして結合していない抗体および他のタンパク質を洗い流す。抗体の結合は、例えば、無色の基質を有色の反応物に変換する反応によって検出する。次に、同定した30マーから漸減的に小さくかつ重複しているフラグメントを試験して、目的とするエピトープをマッピングしてもよい。
【0050】
本発明の一実施形態では、DIVA抗原は、免疫優性エピトープまたは領域を含む。それは、他のエピトープに比較した場合、その集団中でさらに高頻度に抗体を惹起し、かつ抗体に結合するエピトープまたは領域である。抗原は、1つ以上の免疫優性エピトープを有し得る。免疫優性エピトープは、ポリペプチドが動物に投与された後、またはそのような投与の前に、例えば、ポリペプチド上にマッピングされてもよい。例えば、米国特許出願公開第2004/0209324号を参照のこと。
【0051】
本発明のポリペプチドは、組み換えで作成することができる。本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、組換え発現ベクターに導入されてもよく、このベクターは当該技術分野において周知の技術を用いて、適切な発現宿主細胞系において発現され得る。種々の細菌、酵母、植物、哺乳動物、および昆虫の発現系が当該技術分野において利用可能であり、任意のこのような発現系を用いてもよい。任意に、ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドが、無細胞の翻訳系において翻訳され得る。ポリペプチドは化学的に合成しても、またはE.canis細胞から得てもよい。
【0052】
本発明の免疫原性ポリペプチドは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33に示されるアミノ酸配列、またはそのフラグメントを含んでもよい。免疫原性ポリペプチドは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、または33を有するポリペプチドのエピトープを認識する抗体または他の免疫応答(例えば免疫系のT細胞反応)を誘発することができる。本発明の免疫原性ポリペプチドはまた、配列番号2、4、6、8、10、12、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、または33に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドのフラグメントであってもよい。本発明の免疫原性ポリペプチドフラグメントは、約50、45、40、35、30、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6またはそれ以下(または約50〜約6の間の任意の範囲)のアミノ酸長であってもよい。本発明の免疫原性ポリペプチドフラグメントは、約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、30、35、40、50、60、70、80、90、100またはそれ以上のアミノ酸長(または約6〜約100の間の任意の範囲のアミノ酸)であってもよい。
【0053】
E.canisに特異的な抗体は、本発明のポリペプチドを用いて当該分野で公知の任意の方法によって生体液または組織中で検出され得る。最も簡易な方法は一般にはイムノアッセイ法である。このような方法の1つは、競合ベースの方法であって、ここでは血清サンプルを、E.canisのワクチンの要素ではないE.canis抗原(例えば、E.canisのDIVA抗原)とともにプレインキュベートし、次いでE.canisのDIVA抗原に特異的な固定されたモノクローナル抗体を有する、マイクロタイタープレートのような固相に加える。サンプル中のE.canisのDIVA抗原に特異的な抗体は、E.canisのDIVA抗原が固定された抗体に対して結合することを妨げるであろう。固定された抗体に対するE.canisのDIVA抗原のなんらかの結合の検出は、直接標識されているか、または標識を有する別の結合パートナーに対する結合を通じて標識され得る、E.canis抗原についての第二の結合パートナーを加えることによって確認できる。陽性のサンプル、すなわち、E.canisのDIVA抗原に特異的な抗体を有しているサンプルは、標識由来のシグナルにおける減少に関連している。
【0054】
1つの特定の実施形態では、生物学的サンプル中のE.canisのDIVA抗原に対する抗体は、このサンプルとE.canisのDIVA抗原とを接触させること、およびこのサンプルを抗DIVA抗原モノクローナル抗体でコーティングされたマイクロタイタープレートに添加することによって検出され得る。マイクロタイタープレートへのDIVA抗原の結合は、DIVA抗原に対してウサギポリクローナル抗体を添加すること、およびHRP−コンジュゲートされたロバ抗ウサギポリクローナル抗体を添加することによって検出され得る。サンプル中の抗体は固定された抗体に対するDIVA抗原の結合を妨げ、それによってシグナルの減少を生じる。
【0055】
E.canisのDIVA抗原に特異的である抗体を検出するための別の方法は、サンドイッチアッセイであって、ここでは、E.canisのDIVA抗原に特異的な抗体を含んでいると疑われる生物学的サンプルを、固定されたE.canisのDIVA抗原と接触させ、免疫学的複合体を形成させる。E.canisのDIVA抗原に特異的な抗体の存在は、二次抗体などのE.canis抗体についての標識された結合パートナーの結合の検出によって決定される。
【0056】
本発明の一局面では、E.canisのDIVA抗原を適切な固相支持体に固定してもよい。生物学的サンプルを、E.canisのDIVA抗原と接触させて、抗E.canis抗体がこのサンプル中に存在する場合、ここに結合する。この結合は、任意の適切な方法、例えば、酵素、放射性核種、微粒子または蛍光標識によって検出され得る。適切な実施形態では、検出試薬は、抗E.canis抗体(存在する場合)を捕獲するために用いられるタンパク質と同じかまたは類似しているタンパク質に会合され得る。1つの特定の実施形態では、E.canisに対する抗体は、固相支持体上のE.canis抗原に対する固定によって検出され得る。生物学的サンプルを固相支持体と接触させもよく、未結合のサンプルの除去後に、抗原に対するE.canis抗体の結合を、例えば、標識されたIgG抗体で達成してもよい。
【0057】
本発明のDIVA抗原はまた、本発明のDIVA抗原のミミトープを含んでもよい。ミミトープはエピトープ提示の間、天然の抗原性エピトープを模倣するランダムなペプチドエピトープである。ランダムなペプチドエピトープは、ランダムなペプチドエピトープのライブラリーを作製することまたは選択することによって同定され得る。このライブラリーを抗体に接触させる。抗体と特異的に免疫応答性であるミミトープを同定する。ランダムなペプチドライブラリーは、例えば、ファージ上に提示してもよく、コンビナトリアルライブラリーとして作製してもよい。
【0058】
E.canisのDIVA抗原、例えば、ポリペプチドは、天然であってもよく、すなわち天然の供給源から単離されてもよいし、または合成であってもよい(すなわち、化学的に合成されるか、または遺伝子操作技術を用いて組み換え産生される)。天然のタンパク質は、アフィニティクロマトグラフィーなどの従来の技術によって丸ごとの細菌から単離されてもよい。ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を用いて、周知の技術によって適切なアフィニティカラムを調製してもよい。
【0059】
天然のE.canisのタンパク質と免疫学的に交差反応性であるタンパク質を化学的に合成してもよい。例えば、約100アミノ酸より少なく、通常は約80アミノ酸よりも少なく、典型的には約50アミノ酸よりも少ないポリペプチドを、成長中の鎖にアミノ酸が連続的に添加される周知のMerrifield固相合成法によって合成してもよい(Merrifield,1963,J.Am.Chem.Soc.,85:2149〜2156)。組み換えタンパク質も用いてもよい。これらのタンパク質は、E.canisのゲノムの所望の部分をコードする組み換えDNA分子の、培養細胞における発現によって産生されてもよい。E.canisのゲノムの部分は、それ自体天然であっても合成であってもよく、これには、従来の技術によって単離された細菌から獲得できる天然の遺伝子を伴う。
【0060】
E.canisのポリヌクレオチド
本発明のポリヌクレオチドは、完全な微生物のゲノムより少なく、一本鎖または二本鎖の核酸であってもよい。ポリヌクレオチドは、RNA、DNA、cDNA、ゲノムDNA、化学的に合成したRNAもしくはDNA、またはそれらの組み合わせであってもよい。ポリヌクレオチドは、タンパク質、脂質、他のポリヌクレオチドなどの他の成分を含まないほどに精製することができる。例えば、ポリヌクレオチドは50%、75%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%精製することができる。例えば、cDNAライブラリーもしくはゲノムライブラリー内の数百から数百万の他の核酸分子、またはゲノムDNAの制限酵素消化物を含んでいるゲルスライスの中に存在する核酸分子は、単離されたポリヌクレオチドとみなすべきではない。本発明のポリヌクレオチドは、上記の本発明のポリペプチドをコードする。本発明の一実施形態では、このポリヌクレオチドは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33に示されるポリペプチド、そのフラグメントまたはそれらの組み合わせをコードする。本発明のポリヌクレオチドは、約200、120、100、90、75、60、57、54、45未満(または200〜45の間の任意の範囲)連続の、天然に存在するエーリキア・カニスのポリヌクレオチドからなってもよい。本発明のポリヌクレオチドは、約45、54、57、60、75、90、100、120、150、200より大きい、(または45〜200の間の任意の範囲)、またはさらに多い連続の、天然に存在するエーリキア・カニスのポリヌクレオチドから構成され得る。この精製されたポリヌクレオチドは、追加の異種ヌクレオチド(すなわち、エーリキア・カニス由来ではないヌクレオチド)、さらに追加のエーリキア・カニスのアミノ酸を、それらが本発明のエーリキア・カニスのp16ポリヌクレオチドまたは本発明の他のポリヌクレオチドと天然には連続して存在しない限り含んでもよい。本発明のポリヌクレオチドは、他のヌクレオチド配列、例えば、リンカー、シグナル配列、TMR輸送停止配列、膜貫通ドメイン、またはグルタチオン−S−トランスフェラーゼ、ヒスチジンタグ、およびブドウ球菌プロテインAなどのタンパク質精製に有用なリガンドをコードする配列を含んでもよい。
【0061】
本発明のポリヌクレオチドは単離され得る。単離されたポリヌクレオチドとは、天然では結合している5’および3’の隣接するゲノム配列の一方または両方と直接には連続していない、天然に生じるポリヌクレオチドである。単離されたポリヌクレオチドは、例えば、任意の長さの組み換えDNA分子であってもよいが、ただし、天然に生じるゲノムにおいて、組換えDNA分子に直接隣接して天然に見出される核酸配列が取り除かれているかまたは欠けている。単離されたポリヌクレオチドはまた、天然には存在しない核酸分子も含む。例えばcDNAもしくはゲノムライブラリー、またはゲノムDNAの制限酵素消化物を含むゲルのスライス内の数百から数百万の、他の核酸分子中に存在している核酸分子は、単離したポリヌクレオチドであるとみなすべきではない。E.canisの完全なヌクレオチド配列は、例えば、GenBankアクセッション番号NCBI:NZ_AAEJ01000001から入手可能である。
【0062】
本発明のポリヌクレオチドはまた、免疫原性ポリペプチドをコードするフラグメントを含んでもよい。本発明のポリヌクレオチドは、全長ポリペプチド、ポリペプチドフラグメント、および変異体または融合ポリペプチドをコードし得る。
【0063】
本発明のポリペプチドをコードしている縮重ヌクレオチド配列、ならびに本発明のポリヌクレオチド配列およびそれらの相補鎖と少なくとも約80%、または約90、96、98、もしくは99%同一である相同のヌクレオチド配列も、本発明のポリヌクレオチドである。配列同一性のパーセントは、「ポリペプチド」の節に記載されるとおり、計算することができる。縮重ヌクレオチド配列とは、本発明のポリペプチドまたはそれらのフラグメントをコードするが、遺伝コードの縮重に起因して野生型ポリヌクレオチド配列とは核酸配列が異なるポリヌクレオチドである。相補DNA(cDNA)分子、種のホモログ、および生物学的に機能的なE.canisポリペプチドをコードするE.canisポリヌクレオチドの変異体も、E.canisポリヌクレオチドである。本発明のポリヌクレオチドは、例えば感染した個体由来の血液、血清、唾液、または組織などの生物学的サンプル中に存在する核酸配列から単離することができる。ポリヌクレオチドはまた、例えば自動合成機を用いて、研究室において合成することもできる。PCR等の増幅法を用いて、ポリペプチドをコードしているゲノムDNAまたはcDNAからポリヌクレオチドを増幅してもよい。
【0064】
本発明のポリヌクレオチドは、天然に存在するポリペプチドのコード配列を含んでもよいし、または天然には存在しない変更された配列をコードしてもよい。必要に応じて、ポリヌクレオチドは発現制御エレメント、例えば複製起点、プロモーター、エンハンサー、または宿主細胞において本発明のポリヌクレオチドの発現を駆動する他の調節エレメントなどを含んでいる発現ベクターにクローニングされてもよい。発現ベクターは、例えば、pBR322、pUC、もしくはColElなどのプラスミド、またはアデノウイルス2型ベクターもしくは5型ベクターなどのアデノウイルスベクターであってもよい。任意に、限定するものではないがシンドビスウイルス、サルウイルス40、アルファウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ならびにサイトメガロウイルスおよびレトロウイルスベクター、例えば、マウス肉腫ウイルス、マウス乳癌ウイルス、モロニーマウス白血病ウイルス、およびラウス肉腫ウイルスを含めて、他のベクターも使用され得る。MCおよびMC1、バクテリオファージ、ファージミド、酵母人工染色体、細菌人工染色体、ウイルス粒子、ウイルス様粒子、コスミド(λファージcos部位に挿入したプラスミド)およびレプリコン(細胞において自らの制御のもと、複製することができる遺伝因子)などのミニ染色体も用いてもよい。
【0065】
発現制御配列に作動可能に連結されているポリヌクレオチドを調製し、それらを宿主細胞中で発現させるための方法は、当該技術分野において周知である。例えば、米国特許第4,366,246号を参照のこと。本発明のポリヌクレオチドは、1つ以上の発現制御エレメントの付近にまたは近接して位置する時、作動可能に連結されており、これがポリヌクレオチドの転写および/または翻訳を指示する。
【0066】
本発明のポリヌクレオチドは、例えばプローブまたはプライマー、例えばPCRプライマーとして、生物学的サンプルなどの試験サンプル中のE.canisのポリヌクレオチドの存在を検出するために用いてもよい。プローブとは、例えば、ハイブリダイゼーションを通じて、典型的には配列特異的な方式で標的核酸と相互作用し得る分子である。プライマーとは、酵素的操作を支持し得、かつ酵素的操作が生じるように標的核酸とハイブリダイズし得る1サブセットのプローブである。プライマーは、酵素的操作を邪魔しない当該分野で利用可能なヌクレオチドまたはヌクレオチドの誘導体もしくはアナログの任意の組み合わせから作製され得る。
【0067】
プローブまたはプライマーは、例えば、配列番号22〜33に示されるポリペプチドをコードする約10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100またはそれ以上連続するヌクレオチドであってもよい。
【0068】
核酸のハイブリダイゼーションは、当該分野で周知である。典型的には、プローブは当該分野で利用可能なヌクレオチドまたはヌクレオチドの誘導体もしくはアナログの任意の組み合わせから作製され得る。このようなプローブおよびプライマーが有するE.canisのポリヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズする能力を、所定の試験サンプル中における相補配列の存在を検出するために利用することができる。本発明のポリヌクレオチドプローブおよびプライマーは、唾液、痰、血液、血漿、血清、尿、糞便、脳脊髄液、羊水、傷からの浸出液、または組織を含めた生物学的サンプルなどの試験サンプル中で相補配列とハイブリダイズできる。サンプル由来のポリヌクレオチドは、例えば、ゲル電気泳動もしくは他のサイズ分離技術に供してもよいし、またはサイズ分離なしで固定化してもよい。ポリヌクレオチドプローブまたはプライマーを標識してもよい。適した標識、ならびにプローブおよびプライマーを標識するための方法は、当該技術分野において公知であり、これらとしては、例えば、ニックトランスレーションまたはキナーゼにより取り込まれた放射性の標識、ビオチン標識、蛍光標識、化学発光標識、生物発光標識、金属キレート標識、および酵素標識が挙げられる。サンプル由来のポリヌクレオチドを、適切なストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下で、プローブまたはプライマーと接触させる。
【0069】
適用次第で、多様なハイブリダイゼーション条件を用いて、標的配列に対するプローブまたはプライマーの選択性の様々の程度を得ることができる。高選択性が要求される適用のためには、低塩濃度および/または高温条件など、例えば約50℃〜約70℃の温度で約0.02M〜約0.15Mの塩濃度により提供されるような、比較的高いストリンジェンシーの条件を用いてもよい。低選択性が要求される適用のためには、低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件を用いてもよい。例えば約20℃〜約55℃にわたる温度で約0.14M〜約0.9Mの塩濃度。プローブまたはプライマーと試験サンプル由来の相補的なポリヌクレオチドとを含んでいるハイブリダイズした複合体の存在によって、このサンプル中にE.canisまたはE.canisのポリヌクレオチドが存在することが示される。
【0070】
抗体
本発明の抗体は、本発明のE.canisポリペプチドに特異的に結合する抗体分子、本発明の変異体ポリペプチド、またはそのフラグメントである。本発明の抗体は、エーリキア・カニスポリペプチドに特異的、例えば、配列番号10、22〜33の1つ以上に特異的な抗体であり得る。本発明の抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体(scFV)、または抗体の抗原結合フラグメントであってもよい。抗体の抗原結合フラグメントは、インタクトな抗体の抗原結合部位または可変領域を含んでいる、インタクトな抗体の抗原結合部分であって、この部分はインタクトな抗体のFc領域の定常重鎖ドメインを含まない。抗原結合フラグメントの例としては、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)2、およびFvフラグメントが挙げられる。
【0071】
本発明の抗体は、任意の抗体クラス、例えばIgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEであってもよい。抗体またはそれらのフラグメントは、本発明のポリペプチドのエピトープに結合する。抗体は、適切な実験動物においてインビボで、または組換えDNA技術を用いてインビトロで作製され得る。抗体を調製し特徴付けるための方法は、当該技術分野において周知である。例えば、Dean,Methods Mol.Biol.80:23〜37(1998),Dean,Methods Mol.Biol.32:361〜79(1994),Baileg,Methods Mol.Biol.32:381〜88(1994),Gullick,Methods Mol.Biol.32:389〜99(1994),Drenckhahn et al.Methods Cell.Biol.37:7〜56(1993),Morrison,Ann.Rev.Immunol.10:239〜65(1992),Wright et al.Crit.Rev.Immunol.12:125〜68(1992)を参照のこと。例えば、ポリクローナル抗体は、本発明のポリペプチドをヒトまたは他の霊長類、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヤギ、ブタ、イヌ、ウシ、ヒツジ、ロバもしくはウマなどの動物に投与することにより作製される。免疫された動物から血清が集められ、抗体は、例えば、硫酸アンモニウムを用いた沈降に続いてアフィニティクロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーによって血漿から精製される。ポリクローナル抗体を作製、加工するための技術は、当該技術分野において公知である。
【0072】
「特異的に結合」または「特異的な」とは、第1の抗原、例えば、E.canisのポリペプチドが本発明の抗体を認識し、他の非特異的な分子に対してよりも大きい親和性でもって結合することを意味する。「特異的に結合」または「特異的な」とはまた、第1の抗体、例えば、配列番号22〜33に対して産生された抗体が配列番号22〜33を認識し、他の非特異的な分子に対してよりも大きい親和性でもって結合することを意味する。非特異的な分子とは、第1の抗原と共通のエピトープを共有しない抗原である。本発明の好ましい実施形態では、非特異的な分子は、Ehrlichia sp.由来ではなく、詳細にいえばエーリキア・シャフェンシス(Ehrlichia chaffeensis)由来でも、またはエーリキア・カニス由来でもない。「Ehrlichia sp.」とは、Ehrlichia属の全ての種をいう。例えば第一の抗原(例えば、ポリペプチド)に対して産生された抗体であって非特異的な抗原に対してよりも効率的に結合する抗体は、第一の抗原に対して特異的に結合すると記載することができる。一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合部分は、107l/molまたはそれ以上の結合親和性Kaをもって結合する場合、配列番号2、4、6、8、10、12、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29のポリペプチドまたはそのフラグメントに特異的に結合する。特異的な結合は、当該技術分野において周知の方法論を用いて、例えば、酵素結合免疫測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、またはウエスタンブロットアッセイを用いて試験することができる。
【0073】
本発明の抗体は、(a)配列番号22〜33またはそれらの抗原結合フラグメントに対する結合について参照抗体と競合するか;(b)配列番号22〜33またはその抗原結合フラグメントが、参照抗体と同じエピトープに対して結合するか;(c)配列番号22〜33またはその抗原結合フラグメントに対して、参照抗体と実質的に同じKdでもって結合するか;および/または(d)配列番号22〜33またはそのフラグメントと、参照抗体と実質的に同じ解離速度(off rate)で結合する抗体およびその抗原結合フラグメントを包含し、ここでこの参照抗体は、配列番号22〜23のポリペプチドまたはそれらの抗原結合フラグメントに対して、107l/モル以上の結合親和性Kaでもって特異的に結合する抗体または抗原結合フラグメントである。
【0074】
さらに、本発明のポリペプチド上に存在するエピトープに対するモノクローナル抗体も容易に作製され得る。例えば、本発明のポリペプチドで免疫されたマウスなどの哺乳動物由来の正常なB細胞を、例えばハイブリドーマを作製するためにHAT感受性マウスミエローマ細胞と融合してもよい。E.canis特異的な抗体を作製するハイブリドーマは、RIAまたはELISAを用いて同定することができ、半流動性の寒天でのクローニング、または限界希釈法により単離することができる。E.canis特異的な抗体を産生するクローンは、さらに1回のスクリーニングにより単離される。モノクローナル抗体は、標準的な技術を用いて、例えば、本発明のポリペプチドのマイクロタイタープレートへの結合、およびELISAアッセイによるモノクローナル抗体の結合の測定によって、特異性についてスクリーニングされ得る。モノクローナル抗体を作製し、加工する技術は、当該技術分野において公知である。例えば、Kohler & Milstein,Nature,256:495(1975)を参照のこと。モノクローナル抗体の特定のアイソタイプは、最初の融合からの選択によって直接的に調製してもよいし、またはクラススイッチ変異体を単離するための同胞選択技術を用いることによって、異なるアイソタイプのモノクローナル抗体を分泌する親のハイブリドーマから二次的に調製してもよい。Steplewski et al.,P.N.A.S. U.S.A. 82:8653 1985,Spria et al.,J.Immunolog.Meth.74:307,1984を参照のこと。本発明のモノクローナル抗体は、組換えモノクローナル抗体であってもよい。例えば、米国特許第4,474,893号、米国特許第4,816,567号を参照のこと。本発明の抗体はまた、化学的に作成することもできる。例えば、米国特許第4,676,980号を参照のこと。
【0075】
本発明の抗体は、キメラ(例えば、米国特許第5,482,856号を参照のこと)、ヒト化抗体(例えば、Jones et al.,Nature 321:522(1986);Reichmann et al.,Nature 332:323(1988);Presta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593(1992)を参照のこと)であっても、またはヒト抗体であってもよい。ヒト抗体は、例えば、直接の不死化、ファージディスプレイ、トランスジェニックマウス、またはトリメラ(Trimera)の方法論(例えば、Reisener et al.,Trends Biotechnol.16:242〜246(1998)を参照のこと)によって作製され得る。
【0076】
E.canis抗原(例えば、配列番号2、4、6、8、10、12、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33に示されるE.canisポリペプチド)に特異的に結合する抗体は、ヒトまたはイヌなどのE.canisに感染した動物由来のサンプル、例えば、血清、血液、血漿、糞便、細胞、組織、尿、または唾液サンプルなどのサンプル中のE.canisまたはE.canis抗原の存在を検出するために特に有用である。E.canisまたはE.canis抗原のイムノアッセイは、1つの抗体を利用してもよいし、またはいくつかの抗体を利用してもよい。E.canisまたはE.canis抗原のイムノアッセイは、例えば、E.canisエピトープに特異的なモノクローナル抗体、1つのE.canisポリペプチドのエピトープに特異的なモノクローナル抗体、異なるE.canisポリペプチドのエピトープに特異的なモノクローナル抗体、同じE.canis抗原に特異的なポリクローナル抗体、異なるE.canis抗原に特異的なポリクローナル抗体の組み合わせ、またはモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体の組み合わせを用いてもよい。イムノアッセイのプロトコールは、例えば、標識した抗体を用いる、例えば、競合、直接反応、またはサンドイッチ型アッセイに基づいてもよい。本発明の抗体は、例えば蛍光、化学発光、放射活性、酵素、コロイド金属、放射性同位体、および生物発光の標識などの、当該技術分野において公知の任意の型の標識で標識され得る。
【0077】
本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントを支持体に結合させて、E.canisまたはE.canis抗原、例えば、E.canisのDIVA抗原またはE.canisのワクチン抗原の存在を検出するために用いてもよい。支持体としては、例えばガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然のおよび修飾したセルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、およびマグネタイト(magletite)が挙げられる。
【0078】
本発明の抗体は、さらにE.canis生物体、またはE.canis抗原をイムノアフィニティカラムにより単離するために用いることができる。この抗体は、この抗体が免疫選択活性を保持するように、例えば、吸収によりまたは共有結合により固相支持体に固定できる。必要に応じて、抗体の抗原結合部位がアクセス可能なままであるように、スペーサー基を含めてもよい。固定化された抗体は、唾液、血清、痰、血液、尿、糞便、脳脊髄液、羊水、創傷浸出液、または組織を含む生物学的サンプルなどのサンプル由来のE.canis生物体、またはE.canis抗原に結合するために用いてもよい。結合したE.canis生物体、またはE.canis抗原は、例えばpHの変化によりカラムのマトリクスから回収される。
【0079】
本発明の抗体は、免疫局在性の研究において、多様な細胞事象または生理的条件の間に本発明のポリペプチドの存在および分布を分析するために、用いることができる。抗体はまた、受動免疫に関与する分子を同定するため、および非タンパク抗原の生合成に関与する分子を同定するためにも用いられ得る。このような分子の同定は、ワクチン開発において有用であり得る。例えばモノクローナル抗体および単鎖抗体を含めて本発明の抗体は、E.canisにより引き起こされる疾患の回復の経過をモニターするために用いることができる。動物からの試験サンプル中のE.canis抗原に特異的なE.canis抗体の増加または減少を測定することによって、疾患の回復を目的とした特定の治療計画が有効か否かを判定することができる。抗体は、例えばRIA、ELISA、またはウエスタンブロットアッセイなどの直接結合アッセイを用いて、検出および/または定量できる。
【0080】
検出
本発明の方法は、生物学的サンプル、環境的サンプル、または実験室サンプルなどの試験サンプル中のエーリキア・カニスの抗原またはエーリキア・カニスのポリヌクレオチドに特異的な抗体または抗原結合する抗体フラグメントを検出するために用いられ得る。試験サンプルは可能性として、Ehrlichia sp.のポリヌクレオチド、エーリキア・カニスのポリヌクレオチド、Ehrlichia sp.のポリペプチド、エーリキア・カニスのポリペプチド、Ehrlichia sp.に特異的な抗体および/またはエーリキア・カニスに特異的な抗体、無関係のポリヌクレオチドおよびポリペプチド、それらの組み合わせを含んでもよいし、上記を何も含まなくてもよい。生物学的サンプルは、例えばウマ、ネコ、イヌ、またはヒトなどの哺乳類由来の血清、血液、細胞、血漿、唾液、尿、糞便または組織を含んでもよい。試験サンプルは未処理であっても、沈殿させても、分画しても、分離しても、希釈しても、濃縮しても、または精製してもよい。
【0081】
一実施形態では、本発明の方法は、本発明の1つ以上のポリペプチドを、ポリペプチド/抗体の複合体、すなわち免疫複合体を形成できる条件下で、試験サンプルと接触させる工程を包含する。すなわち、本発明のポリペプチドは、サンプル中にあるE.canis抗原に特異的な抗体に特異的に結合する。本発明の一実施形態では、本発明の1つ以上のポリペプチドは、エーリキア・カニス抗原に特異的である抗体に特異的に結合し、かつ他の病原体由来の抗原、例えばエーリキア・シャフェンシスの抗原には特異的に結合しない。当業者は、抗体/ポリペプチドの複合体結合を検出するために用いられるアッセイおよび条件には詳しい。サンプル中のポリペプチドと抗体との間の複合体の形成が検出される。抗体/ポリペプチド複合体の形成によって、サンプル中にエーリキア・カニスのポリペプチドが存在することが示される。ポリペプチド/抗体の複合体の検出がなければ、エーリキア・カニスのポリペプチドはサンプル中に存在しないことが示される。
【0082】
本発明の抗体は、例えば、エーリキア・カニスの感染が疑われるヒトまたは動物から試験サンプルを得ることにより、エーリキア・カニス抗原の検出の方法に用いることができる。試験サンプルを、抗体−抗原複合体(すなわち、免疫複合体)を形成できる条件下で本発明の抗体と接触させる。当業者は、抗原/抗体複合体の形成を可能にし、かつ適切である条件を承知している。抗体−抗原複合体の量は、当該技術分野において公知である方法論により決定できる。陰性コントロールのサンプル中で形成されるよりも高レベルであれば、エーリキア・カニス抗原の存在を示している。陰性コントロールサンプルとは、なんらエーリキア・カニスのポリペプチドを含まないサンプルである。本発明の一実施形態では、陰性コントロールは、Ehrlichia sp.のポリペプチドを含まない。本発明の一実施形態では、抗体は、エーリキア・カニスの抗原に特異的であって、他の病原体由来の抗原、例えば、エーリキア・シャフェンシスの抗原などには特異的ではない。あるいは、本発明のポリペプチドを、試験サンプルと接触させてもよい。陽性の試験サンプル中のエーリキア・カニスに特異的な抗体は、適した条件化で抗体−抗原複合体を形成するであろう。抗体−抗原複合体の量は、当該技術分野において公知の方法により決定され得る。
【0083】
本発明の一実施形態において、エーリキア・カニスの感染は、被験体中で検出され得る。生物学的サンプルは、この被験体から得られる。配列番号22〜33を含んでいる1つ以上の精製されたポリペプチド、または本発明の他のポリペプチドを、ポリペプチド/抗体複合体の形成を可能にする条件下で生物学的サンプルと接触させる。このポリペプチド/抗体複合体が検出される。このポリペプチド/抗体複合体の検出によって、エーリキア・カニスに特異的な抗体が存在することが示される。ポリペプチド/抗体複合体の検出がなければ、この哺乳動物は、エーリキア・カニスに特異的な抗体を有していないことが示される。
【0084】
本発明の一実施形態では、本発明のイムノアッセイによって検出されるエーリキア・カニス抗体はIgG、IgM、IgA、IgDまたはIgEである。本発明の別の実施形態では、エーリキア・カニス抗原を検出するために用いられる抗体は、IgG、IgM、IgA、IgDまたはIgEである。
【0085】
本発明の一実施形態では、エーリキア・カニスの感染は、被験体がエーリキア・カニスに感染した約5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日以上後でその被験体において検出できる。本発明の一実施形態では、エーリキア・カニス感染は、被験体がエーリキア・カニス感染した後約21日、20日、19日、18日、17日、16日、15日、14日、13日、12日、11日、10日、9日、8日、7日、6日、5日未満で検出できる。
【0086】
本発明の一実施形態では、抗体に結合している酵素複合体などの指示薬が検出可能な反応を触媒する場合、ポリペプチド/抗体の複合体が検出される。必要に応じて、シグナル生成化合物を含む指示薬を、ポリペプチド/抗体/指示薬の複合体を形成できる条件下で、ポリペプチド/抗体の複合体に適用することができる。このポリペプチド/抗体/指示薬の複合体が検出される。必要に応じて、ポリペプチドまたは抗体は、ポリペプチド/抗体の複合体が形成される前に指示薬で標識してもよい。この方法は、必要に応じて陽性コントロールまたは陰性コントロールを含んでもよい。
【0087】
本発明の一実施形態において、本発明の1つ以上の抗体を、固相または基板に結合させる。本発明のポリペプチドを含んでいるタンパク質を潜在的に含む試験サンプルを、基板に加える。本発明のポリペプチドに特異的に結合する1つ以上の抗体を加える。この抗体は、固相で使用したものと同じ抗体であってもよく、または異なる供給源もしくは種由来の抗体であってもよく、さらに酵素複合体などの指示薬と結合させてもよい。洗浄の工程は、それぞれの添加の前に行ってもよい。発色団または酵素の基質を加え、発色させてもよい。呈色反応を停止し、例えば分光光度計を用いて色を定量してもよい。
【0088】
本発明の別の実施形態において、本発明の1つ以上の抗体を、固相または基板に結合させる。本発明のポリペプチドを含んでいるタンパク質を潜在的に含む試験サンプルを、基板に加える。本発明のポリペプチドに特異的に結合する二次抗−種抗体を加える。これらの二次抗体は、固相の抗体とは異なる種由来である。二次抗体に特異的に結合し、固相の抗体に特異的に結合しない三次抗−種抗体を加える。三次抗体は、酵素コンジュゲートなどの指示薬を含んでもよい。洗浄の工程は、それぞれの添加の前に行ってもよい。発色団または酵素の基質を添加し、発色させることができる。呈色反応を停止し、例えば分光光度計を用いて色を定量することができる。
【0089】
本発明のアッセイとしては、限定するものではないが、競合、直接反応、またはサンドイッチ型アッセイに基づくものを包含し、これには、限定するものではないが、酵素結合免疫測定法(ELISA)、ウエスタンブロット、IFA、ラジオイムノアッセイ(RIA)、赤血球凝集(HA)、蛍光偏光免疫測定法(FPIA)、およびマイクロタイタープレートアッセイ(マイクロタイタープレートの1つ以上のウェルにおいて行われる任意のアッセイ)を包含する。本発明のアッセイの1つは、逆相クロマトグラフィー結合アッセイ、例えばSNAP(登録商標)アッセイを含む。例えば、米国特許5,726,010号を参照のこと。
【0090】
アッセイは固相もしくは基板を用いてもよく、または免疫沈降もしくは固相を利用しない任意の他の方法によって行ってもよい。固相または基板が用いられる場合には、本発明の1つ以上のポリペプチドを直接または間接的に、マイクロタイターウェル、磁性ビーズ、非磁性ビーズ、カラム、マトリックス、膜、合成もしくは天然の繊維からなる繊維性のマット(例えばガラス、またはセルロースを基にした材料、またはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどの熱可塑性ポリマー)、微粒子材料(例えばガラス、または多様な熱可塑性ポリマー)から構成される焼結構造、またはニトロセルロース、ナイロン、ポリスルホン等(一般に天然に合成される)から構成されるキャスト膜フィルムなどのような、固相支持体または基板に結合させる。本発明の一実施形態では、基板は、一般に多孔性ポリエチレンとして公知のポリエチレンの焼結した微粒子であり、これには、例えばChromex Corporation(Albuquerque,NM)の10〜15ミクロンの多孔性ポリエチレンがある。これらの基板材料のすべては、フィルム、シートもしくはプレートなどの適した形態で用いることが可能であり、または紙、ガラス、プラスチックフィルム、もしくは布などの適当な不活性支持体にコーティングされても、結合されても、ラミネート加工されてもよい。固相上にペプチドを固定化するために適した方法としては、イオン相互作用、疎水性相互作用、共有結合性相互作用などが挙げられる。分析物捕獲試薬がサンプル、希釈および/または洗浄の手順によって洗い流されないように、デバイスまたは固相支持体上へ、1つ以上の分析物捕獲試薬、例えば、E.canisポリペプチドの固定を行う。1つ以上の分析物捕獲試薬を物理的吸着によって(すなわち、化学的リンカーの使用なしに)、または化学的結合によって(すなわち、化学的リンカーの使用によって)表面に対して結合してもよい。化学的結合は、表面上の捕獲試薬のさらに強力な結合を生じ、かつ表面結合分子の規定された方向および高次構造を得ることができる。
【0091】
1種のアッセイ形式では、1つ以上のポリペプチドを固相または基板上にコーティングしてもよい。抗エーリキア・カニス抗体またはその抗原結合フラグメントを含んでいることが疑われる試験サンプルを、試験サンプル中の抗体と固相のポリペプチドとの、またはエーリキア・カニスに特異的な抗体とコンジュゲートさせた指示薬の化合物と固相のポリペプチドとの抗原/抗体複合体が形成されるのに十分な時間および条件の下で、エーリキア・カニスに特異的な抗体または抗体フラグメントとコンジュゲートさせたシグナル生成化合物を含んでいる指示薬とともにインキュベートする。抗エーリキア・カニス抗体とコンジュゲートさせた指示薬の固相への結合の減少は、定量的に測定することができる。例えば、確認済みのエーリキア・カニス陰性の試験サンプルから生じるシグナルに比較した、シグナルの測定可能な減少によって、この試験サンプル中に抗エーリキア・カニス抗体が存在することが示される。この種のアッセイで、試験サンプル中の抗エーリキア・カニス抗体の量を定量することができる。
【0092】
別の種のアッセイ形式において、本発明の1つ以上のポリペプチドは、支持体または基板上にコーティングされる。本発明のポリペプチドは、指示薬とコンジュゲートされて、試験サンプルに加えられる。この混合物は支持体または基板に適用される。もしもエーリキア・カニスに特異的な抗体が試験サンプル中に存在するならば、それらは指示薬とコンジュゲートされた1つ以上のポリペプチドおよび支持体上に固定された1つ以上のポリペプチドに結合するであろう。次に、ポリペプチド/抗体/指示薬の複合体が検出され得る。この種のアッセイは、試験サンプル中の抗エーリキア・カニス抗体の量を定量することができる。
【0093】
別の種のアッセイ形式において、本発明の1つ以上のポリペプチドを、支持体または基板上にコーティングする。試験サンプルを支持体または基板に適用して、インキュベートする。サンプル由来の結合していない成分を、洗浄液による固相支持体の洗浄によって洗い流す。もしもエーリキア・カニスに特異的な抗体が試験サンプル中に存在するならば、それらは固相上にコーティングされたポリペプチドに結合するであろう。このポリペプチド/抗体複合体は、指示薬とコンジュゲートされている二次種−特異的抗体を用いて検出され得る。次に、ポリペプチド/抗体/抗−種抗体指示薬の複合体が検出され得る。この種のアッセイは、試験サンプル中の抗エーリキア・カニス抗体の量を定量することができる。
【0094】
本発明の別の実施形態では、側方流動アッセイに適切なデバイスが提供される。例えば、試験サンプルをフロー・マトリックスに最初の領域(サンプル適用ゾーン)で添加する。この試験サンプルはフロー・マトリックスの第二の領域へ毛細管現象によって流体流路中、運ばれ、ここで標識は、試験サンプル中の分析物と結合して第一の複合体を形成し得る。この第一の複合体は、フロー・マトリックスの第三領域に運ばれて、ここでE.canisのポリペプチドは離れた位置に固定される。第二の複合体が、固定されたポリペプチドと、サンプル由来の抗体を含んでいる第一の複合体との間で形成される。例えば、金ゾル粒子およびE.canis抗体に結合したE.canisポリペプチドを含んでいる第一の複合体は、第二の固定されたE.canisポリペプチドと、またはE.canis抗体に対する第二の抗体と、特異的に結合して第二の複合体を形成する。第二の複合体の一部である標識は、直接可視化され得る。
【0095】
別の局面では、本発明は、本発明のデバイスに適用する前に試験サンプルと混合され得る1つ以上の標識された結合試薬を含む。この場合、デバイス中で特定の結合試薬パッド上に沈着されて乾燥された、標識された特定の結合試薬を有している必要はない。標識された特定の結合試薬は、試験サンプルに加えられてもまたはデバイス上に事前に沈着されていても、例えば、E.canisの抗体に特異的に結合する標識された抗体であってよい。
【0096】
E.canisのDIVA抗原またはE.canisのワクチン抗原、例えば、ポリペプチドは、反応ゾーン(固相)中の固定された分析物捕獲試薬であってもよい。第二の分析物捕獲試薬、例えば、標識に結合されている抗IgGまたは抗IgM抗体は、サンプルがデバイスに付加される前にサンプルに添加されてもよいし、または第二の分析物捕獲試薬はデバイスに組み込まれてもよい。例えば、標識された特定の結合試薬は、サンプル適用ゾーンと固相との間の液体連絡をもたらす流体流路上に沈着し乾燥させてもよい。標識された特定の結合試薬と流体サンプルとの接触によって、標識された特定の結合試薬の溶解が生じる。
【0097】
このデバイスはまた、反応ゾーン(固相)から未結合の物質(例えば、未反応の流体サンプルおよび未結合の特異的結合試薬)を輸送する液体試薬を備えてもよい。液体試薬は、洗浄試薬であって、反応ゾーンから未結合の物質を取り除くようにのみ作用してもよいし、または検出試薬を含み、未結合の物質を取り除くようにかつ分析物検出を容易にするように機能してもよい。例えば、酵素にコンジュゲートされた特定の結合試薬の場合には、検出試薬としては、反応性ゾーンでの酵素−抗体コンジュゲートとの反応の際に検出可能なシグナルを生じる基質が挙げられる。放射性、蛍光または光吸収分子にコンジュゲートされた標識された特異的な結合試薬の場合、この検出試薬は、未結合の標識試薬を洗い流すことによって反応ゾーンでの複合体形成の検出を容易にする単なる洗浄溶液として機能する。
【0098】
2つ以上の液体試薬がデバイス中に存在してもよく、例えば、デバイスは、洗浄試薬として機能する液体試薬、および検出試薬として機能しかつ分析物検出を容易にする液体試薬を備えてもよい。
【0099】
液体試薬はさらに、限定量の「インヒビター」、すなわち、検出可能な最終生成物の発生をブロックする物質を含んでもよい。限定量とは、ほとんどまたは全ての過剰な未結合の物質が第二の領域から輸送され、その時点で検出可能な最終生成物が産生されるまで、最終生成物の発生をブロックするのに十分なインヒビターの量である。
【0100】
ポリペプチド/抗体の複合体またはポリペプチド/抗体/指示薬の複合体の形成は、例えば、放射測定、比色定量、蛍光定量、サイズ分離、または沈殿法により検出され得る。必要に応じて、ポリペプチド/抗体複合体の検出は、シグナル生成化合物を含んでいる指示薬とカップリングされている二次抗体の添加により行われる。ポリペプチド/抗体複合体と会合した、シグナル生成化合物(標識)を含んでいる指示薬は、上述の方法を用いて検出することが可能で、これには、発色剤、酵素コンジュゲートなどの触媒、フルオレセインおよびローダミンなどの蛍光化合物、ジオキセタン、アクリジニウム、フェナントリジニウム、ルテニウムおよびルミノールなどの化学発光化合物、放射活性元素、直接可視化する標識、ならびに補助因子、インヒビター、磁性粒子などが挙げられる。酵素コンジュゲートの例としては、アルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、βガラクトシダーゼなどが挙げられる。特定の標識の選択は決定的なものではないが、それ自体で、または1つ以上の追加の基質と組み合わせて、シグナルを生成することができるであろう。
【0101】
複合体の形成は、試験サンプル中に抗エーリキア・カニス抗体が存在することを示す。従って、本発明の方法は、動物におけるエーリキア・カニスの感染を診断するために用いられ得る。
【0102】
本発明の方法は、試験サンプル中の抗エーリキア・カニス抗体の量または分量も示すことができる。酵素コンジュゲートなどの多くの指示薬を用いると、存在する抗体の量は生成されるシグナルに比例する。試験サンプルの種類によって、適した緩衝液で希釈することができ、濃縮することができ、またはいかなる操作もなしで固相に接触させることができる。例えば、抗体の存在および/または存在する抗体の量を決定するために、通常、あらかじめ希釈されている血清もしくは血漿サンプル、または尿などの濃縮された試料を試験することが好ましい。
【0103】
本発明はさらに、サンプル中の抗エーリキア・カニス抗体もしくは抗原結合する抗体フラグメント、またはエーリキア・カニスのポリペプチドを検出するためのアッセイキット(例えば製品)を含む。キットは、本発明の1つ以上のポリペプチド、および試験サンプル中の抗エーリキア・カニス抗体または抗体フラグメントへのこのポリペプチドの結合を決定するための手段を備える。キットまたは製品はまた、本発明の1つ以上の抗体または抗体フラグメント、およびサンプル中のエーリキア・カニスのポリペプチドへのこの抗体または抗体フラグメントの結合を決定するための手段を備えてもよい。キットは、本発明の1つ以上のポリペプチドまたは抗体を含んでいるデバイス、および1つ以上のポリペプチドまたは抗体を、例えば哺乳動物におけるエーリキア・カニス感染の同定のために使用するための説明書を備えてもよい。このキットは、このキットの1つ以上のポリペプチドまたは抗体が、エーリキア・カニス感染の同定のために使用され得ることを示すラベルを含むパッケージング材料も備えてもよい。当業者に公知である、緩衝液、安定化剤、陽性コントロール、陰性コントロール、検出試薬などの他の構成要素が、このような試験キットに備えられてもよい。本発明のポリペプチド、抗体、アッセイ、およびキットは、例えば、患者のエーリキア・カニス感染の個々の症例の診断、ならびにエーリキア・カニスの発生の疫学的な調査において有用である。種々の試薬の相対的な量は、そのアッセイの感度を実質的に最適化する溶液中での試薬濃度が得られるように変化されてもよい。特にその試薬は、通常は凍結乾燥された乾燥粉末として提供されてもよく、この溶解の際に、サンプルと組み合わせるための適切な濃度を有する試薬溶液が得られる。
【0104】
本発明のポリペプチドおよびアッセイを他のポリペプチドやアッセイと組み合わせて、他の生物とともにエーリキア・カニスの存在を検出することができる。例えば、本発明のポリペプチドおよびアッセイは、イヌ糸状虫、および/またはボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)および/またはエーリキア・シャフェンシスおよび/またはアナプラズマ・プラチス(Anaplasma platys)および/またはアナプラズマ・ファゴサイトフィルム(Anaplasma phagocytophilum)を検出する試薬と組み合わせてもよい。
【0105】
本発明のポリヌクレオチドは、サンプル中のエーリキア・カニスのポリヌクレオチドの存在を検出するために用いられ得る。このポリヌクレオチドは、単純なハイブリダイゼーション反応によってサンプル中のエーリキア・カニスのポリヌクレオチドを検出するために用いてもよく、また例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、例えば、リアルタイムPCR反応で用いてもよい。本発明の方法および組成物はまた、エーリキア・シャフェンシスなどの他のEhrlichia sp.からエーリキア・カニスの存在を示差的に検出するために用いてもよい。
【0106】
PCRアッセイは、当該分野でかなり記載されており、これには例えば、米国特許第4,683,195号;米国特許第4,683,202号;米国特許第4,965,188号が挙げられる。一般には、ポリヌクレオチドプライマーは、標的核酸の変性された鎖にアニーリングされる。プライマー伸長産物が、ポリメラーゼによるデオキシヌクレオシド三リン酸の重合化によって形成される。次いでPCRは、反復性サイクルのテンプレート核酸変性、プライマーアニーリングおよび熱安定性ポリメラーゼの作用によるこのアニーリングされたプライマーの伸長を包含する。このプロセスは、試験サンプル中の標的エーリキア・カニス核酸の指数関数的な増幅を生じ、これによってサンプル中で極めて低濃度で存在する標的ポリヌクレオチドの検出が可能になる。
【0107】
リアルタイムPCRアッセイは、シグナル、例えば、蛍光レポーターシグナルの検出に基づく。このシグナルは、反応中のPCR産物の量に直接比例して増大する。リアルタイムPCRは、進行中の増幅反応の漸進的変化をモニター可能にさせる任意の増幅技術である。Quantitation of DNA/RNA Using Real−Time PCR Detection,Perkin Elmer Applied Biosystems(1999);PCR Protocols(Academic Press New York,1989)を参照のこと。各々のサイクルで蛍光発光の量を記録することによって、PCR産物の量の第一の有意な増大が、標的テンプレートの最初の量に関連する対数期の間のPCR反応をモニターすることが可能になる。核酸標的の最初のコピー数が多いほど、蛍光の有意な増大がより早く観察される。
【0108】
本発明の一実施形態では、試験サンプル中のエーリキア・カニスポリヌクレオチドを検出および/または定量するための方法が提供される。センスプライマーおよびアンチセンスプライマーを、ポリメラーゼ連鎖反応に適切な条件下で試験サンプルに添加してもよい。このプライマーは、エーリキア・カニスポリヌクレオチドとハイブリダイズして、その結果エーリキア・カニスポリヌクレオチドが試験サンプル中に存在する場合、増幅産物が形成される。増幅産物を検出して、エーリキア・カニスポリヌクレオチドの存在および/または量を決定する。増幅産物は、ポリメラーゼ連鎖反応に適切な条件下でエーリキア・カニスポリヌクレオチド配列とハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブを用いて検出できる。この増幅産物は、プローブ由来の検出シグナルを測定すること、およびこの検出シグナルを定量標準由来の第二のプローブ検出シグナルに対して比較することによって定量され得る。定量標準は、試験サンプルと平行して抽出できる。
【0109】
E.canisにより引き起こされる疾患の治療、回復、または予防の方法
本発明の一実施形態では、本発明のDIVAポリペプチド、ポリヌクレオチド、または抗体は、E.canisにより引き起こされる疾患の治療、回復、または予防のために用いられ得る。しかし、DIVAポリペプチドがE.canisにより引き起こされる疾患の治療、回復、または予防のために用いられるならば、その後には、これを感染動物、非ワクチン接種動物およびワクチン接種した動物の検出および識別のためのDIVAポリペプチドとして用いることはできない。なぜなら、ワクチン接種された動物の免疫系は、ワクチン接種のために用いられたDIVA抗原を認識し得るからである。しかし、E.canisにより引き起こされる疾患の治療、回復、または予防のために用いられるDIVAポリペプチドに対する抗体と交差反応しないDIVAポリペプチドは、E.canisのDIVA抗原としてやはり用いられ得る。
【0110】
例えば、配列番号2またはそのフラグメントをワクチンとして用いるならば、配列番号4、6、8、10、12、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33またはそれらの組み合わせを、それらが配列番号2に特異的な抗体とは交差反応しない場合に、DIVAポリペプチドとして用いてもよい。現在のところ、市販のサブユニットE.canisワクチンでは配列番号10、22〜33は使用されておらず、配列番号10、22〜33は、丸ごとの不活性化されたE.canis細胞でワクチン接種された動物中のE.canis特異的な抗体を検出しない。従って、DIVAポリペプチドの選択は、現在のところ問題ではない。しかし、当業者はE.canisのワクチンの組成を承知している。市販のE.canisサブユニットワクチンが配列番号10、22〜33を含んでいるならば、当業者は、ワクチン接種の状況を識別するために配列番号10、22〜33の使用を回避し(必要であれば配列番号10、22〜33に特異的なE.canis抗体の産生に起因する)、代わりに他のE.canisのDIVA抗原を用いるであろう。
【0111】
従って、DIVAのポリペプチド、ポリヌクレオチド、および抗体は、2つの異なる方法で用いられ得る:(1)E.canisにより引き起こされる疾患または感染の治療、回復、または予防のための組成物として;ならびに(2)E.canisでワクチン接種:非ワクチン接種;感染または感染していない動物の検出および識別のためのE.canisのDIVA抗原として。
【0112】
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドおよび抗体は、E.canisにより引き起こされる疾患の治療、回復、または予防のために用いられる。例えば、本発明のモノクローナル抗体などの抗体またはそのフラグメントは、ヒトなどの動物に投与され得る。本発明の一実施形態において、抗体またはそれらのフラグメントは、薬学的に受容可能な担体を含んでいる医薬組成物の状態で動物に投与される。医薬組成物は、治療上有効量の抗体またはそのフラグメントを含む。治療上有効量とは、E.canis感染の症状を緩和するのに、または被験体中のE.canis生物体の量を減少するのに効果的な量である。
【0113】
本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、免疫原性の組成物中に存在してもよく、宿主における免疫応答を誘発するために用いてもよい。免疫原性の組成物は、動物において免疫応答を誘導することができる。本発明の免疫原性のポリペプチドまたはポリヌクレオチド組成物は、1つの結果としてエーリキア・カニス感染の影響を回復または予防する免疫応答が生じるように、動物の免疫系を感作するのに特に有用である。動物モデルにおける免疫応答の誘発は、例えば、至適投与量や投与経路等を決定するために有用となり得る。免疫応答の誘発は、エーリキア・カニスにより引き起こされる病気または感染を治療、予防、または回復するためにも用いられ得る。免疫応答は、体液性免疫応答もしくは細胞性免疫応答、またはそれらの組み合わせを含む。免疫応答は、例えばデフェンシン類の産生を促進することによる、全身の宿主応答の促進を含んでもよい。
【0114】
動物によるE canisに対する抗体価の生成は、感染からの防御および感染の排除において重要となり得る。ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの送達後の抗体価の検出および/または定量化は、抗体価の誘発に特に効果的であるエピトープを同定するために使用され得る。E.canisに対する強い抗体応答を担うエピトープは、種々の長さのE.canisポリペプチドに対する抗体を誘発することにより同定され得る。次に、特定のポリペプチドエピトープにより誘導された抗体を、例えば、ELISAアッセイを用いて試験して、どのポリペプチドが強い応答の生成に最も効果的なエピトープを含んでいるかを決定することができる。次に、これらのエピトープまたはエピトープをコードするポリヌクレオチドを含んでいるポリペプチドまたは融合タンパク質を構築し、これを用いて、強い抗体反応を誘発することができる。
【0115】
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、または抗体は、インビボで抗体を誘発するため、マウス、ウサギ、モルモット、マカク、ヒヒ、チンパンジー、ヒト、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコなどの哺乳動物に、またはニワトリもしくはアヒルなどの動物に投与され得る。ポリヌクレオチドの注入には、構成および修飾の単純性という実践上の利点がある。さらに、ポリヌクレオチドの注入は、結果的に宿主においてポリペプチドの合成をもたらす。したがって、ポリペプチドは、自然の翻訳後修飾、構造、および高次構造で宿主の免疫系に提示される。ポリヌクレオチドは、「裸のDNA」として被験体に送達してもよい。
【0116】
ポリヌクレオチド、ポリペプチド、または抗体の投与は、当該技術分野において公知である任意の手段により、例えば、筋肉内、静脈内、肺内、筋肉内、皮内、腹腔内、または皮下注射、エアロゾル、鼻腔内、注入ポンプ、座剤、粘膜、局所、および経口、例えば、生物学的弾道銃(「遺伝子銃」)を用いる注入により行うことができる。ポリヌクレオチド、ポリペプチド、または抗体は、経口投与用にタンパク質担体を伴ってもよい。免疫応答を誘発するために、投与方法の組み合わせを用いることもできる。抗体は、約0.5mgから約200mgの1日投与量で投与することができる。本発明の一実施形態においては、抗体は、約20から約100mgの1日投与量で投与される。
【0117】
治療用途の薬学的に受容可能な担体および希釈剤は当該技術分野において周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.(A.R.Gennaro ed.(1985))に記載されている。担体はそれ自体で宿主に対して有害な抗体の産生を誘導してはならない。そのような担体としては、限定するものではないが、大きなゆっくり代謝される高分子、例えばタンパク質、多糖類、例えば、ラテックス官能化SEPHAROSE(登録商標)、アガロース、セルロース、セルロースビーズなど、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、多量体アミノ酸、例えばポリグルタミン酸、ポリリジンなど、アミノ酸コポリマー、ペプトイド、リピトイド、および不活性な無毒性のウイルス粒子または細菌細胞が挙げられる。リポソーム、ハイドロゲル、シクロデキストリン、生物分解性ナノカプセル、および生物接着性材料もまた、本発明の組成物のための担体として用いることができる。
【0118】
本発明の組成物においては、薬学的に受容可能な塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、または硫酸塩などの無機塩、ならびに酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、または安息香酸塩などの有機酸の塩を用いることもできる。特に有用なタンパク質基質は、血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、免疫グロブリン分子、チログロブリン、オボアルブミン、破傷風トキソイド、および当業者に周知の他のタンパク質である。本発明の組成物はまた、液体または賦形剤、例えば、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、リンゲル溶液、ハンクス溶液、グルコース、グリセロール、デキストロース、マロデキストリン、エタノール等を単独でまたは組み合わせて、ならびに湿潤剤、乳化剤、浸透圧調節剤、界面活性剤、またはpH緩衝剤などの物質を含んでもよい。追加の活性な薬剤、例えば殺菌剤を用いてもよい。
【0119】
所望の場合には、リンパ球への免疫原の提示を改善する共刺激(副刺激)分子、例えばB7−1またはB7−2、またはサイトカイン、例えばMIP1α、GM−CSF、IL−2、およびIL−12を本発明の組成物に含めてもよい。必要に応じて、アジュバントを組成物に含めてもよい。アジュバントとは、特異的免疫応答を非特異的に増強させるために用いることができる物質である。一般に、アジュバントおよび本発明のポリペプチドを免疫系に提示する前に混合するか、または別々に提示するが、動物の同じ部位に提示する。アジュバントとしては、例えば、油性アジュバント(例えば、フロイント完全および不完全アジュバント)、無機塩(例えば、Alk(SO4)2;AlNa(SO4)2、AlNH4(SO4)、シリカ、ミョウバン、Al(OH)3、およびCa3(PO4)2)、ポリヌクレオチド(すなわち、PolyicおよびポリAU酸)、およびある種の天然物(例えば、結核菌由来のワックスD、ならびにコリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)、百日咳菌およびブルセラ属のメンバーに見いだされる物質)を挙げることができる。使用することができるアジュバントとしては、限定されないが、MF59−0、水酸化アルミニウム、N−アセチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノル−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(CGP11637)、nor−MDPと称される)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(CGP19835A、MTP−PEと称される)、およびRIBI(細菌から抽出した3つの成分、すなわちモノホスホリルリピドA、トレハロースジミコレートおよび細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)を2%スクアレン/TWEEN(登録商標)80のエマルジョン中に含む)が挙げられる。
【0120】
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、口腔内錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハ、注射可能な処方物、口腔洗浄液、歯磨剤などに製剤することができる。そのような組成物および製剤中の本発明の1つ以上のポリペプチド、ポリヌクレオチド、または抗体のパーセンテージは、単位重量の0.1%から60%まで変化し得る。
【0121】
ポリペプチド、ポリヌクレオチド、または抗体の投与によって、動物において免疫応答を誘発することができ、これは少なくとも1週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年またはそれ以上持続する。必要に応じて、最初の注射の1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年またはそれ以上の後に、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、または抗体を1回またはそれ以上ブースター投与することにより、動物において免疫応答を維持することができる。所望の場合には、共刺激分子またはアジュバントを、組成物の前に、後に、または一緒に投与することができる。
【0122】
ポリペプチド、ポリヌクレオチド、抗体、またはそれらの組み合わせを含む本発明の組成物は、用いられる特定の組成物と適合した方法で、および、例えば、ELISAにより検出して免疫応答を誘発するのに有効な量で投与する。ポリヌクレオチドは、哺乳動物、例えばヒヒ、チンパンジー、イヌ、またはヒトの筋肉内に、1ng/kg、10ng/kg、100ng/kg、1000ng/kg、0.001mg/kg、0.1mg/kg、または0.5mg/kgの投与量で注入することができる。ポリペプチドまたは抗体は、哺乳動物の筋肉内に、0.01、0.05、0.5、0.75、1.0、1.5、2.0、2.5、5または10mg/kgの投与量で注入することができる。
【0123】
ポリペプチド、ポリヌクレオチド、もしくは抗体、またはそれらの組み合わせは、E.canisに感染していない動物に投与してもよく、E.canisに感染した動物に投与してもよい。組成物中のポリヌクレオチド、ポリペプチド、または抗体の特定の用量は、多くの要因、例えば、限定するものではないが、組成物を投与する哺乳動物の種、年齢、性別、併用薬物、一般的健康状態、およびその組成物の投与様式によって異なる。本発明の組成物の有効量は、慣用的な実験のみを用いて容易に決定することができる。
【0124】
患者においてE.canis感染をモニタリングする方法も提供される。この方法は、本発明のポリペプチドを用いて第一の時点でE.canis感染を被っているかまたはE.canis感染のリスクのある患者由来の生体液のサンプル中の抗E.canis抗体のレベルを決定する工程を包含する。抗E.canis抗体のレベルは、1つ以上の異なる時点で患者由来の生物学的液体の1つ以上のサンプル中で決定される。抗E.canis抗体のレベルは、E.canis感染がモニターされるように異なる時点で決定する。抗E.canis抗体のレベルまたは量によって、処置もしくは治療の成功の指標、または感染の進行の指標が得られる。
【0125】
本明細書のいずれかに言及される全ての特許、特許出願、および他の化学的または技術的な文書は、その全体が参照によって本明細書に援用される。本明細書に例示的に記載されている発明は、本明細書に具体的に開示されていないいかなる要素(単数または複数)、限定(単数または複数)なしでも適切に実施することができる。従って、例えば、本明細書における各例において、「〜を含む」、「〜本質的になる」および「〜からなる」といういずれかの用語は、そのもとの意味を維持したまま、他の2つの用語と置き換えることができる。使用されている用語および表現は、説明の用語として用いるものであり、限定ではなく、そのような用語および表現の使用においては、示されかつ記載されている特徴またはその一部の等価物を排除することを意図するものではなく、特許請求される本発明の範囲内で種々の変更が可能であることが理解される。従って、本発明を実施形態によって詳細に開示してきたが、本明細書に開示される概念の任意の特徴、改変および変化が、当業者には実現可能であること、ならびにそのような変更および変化も詳細な説明および特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内であると考えられることが理解されるべきである。
【0126】
さらに、発明の特徴および局面がマーカッシュグループまたは他の代替グループの用語で記載されている場合、当業者は、本発明が、マーカッシュグループまたは他のグループの任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループに関してもまた記載されていることを認識するであろう。
【実施例1】
【0127】
イヌへの免疫のためのホルマリン不活性化E.canisの調製
E.canisは、文献中に記載される方法を用いてイヌ細胞培養中で増殖した。例えば、Breitschwerdt,Antimicrobial Agents and Chemotherapy,1998,Vol 42:362〜368を参照のこと。光学顕微鏡を用いて、030細胞はE.canisによる感染が80%より大きいと見積もられた。E.canis感染した細胞培養物を2リットル収集して、遠心分離して、そのペレットを保持して、7.31グラムの物質(湿重量)を得た。1.462グラム(その物質の重量の20%)という推定の乾燥重量によって、水が物質の重量の80%までを構成していると推定される。その細胞ペレットを、73mlの総容積についてPBS中で20mg/ml(乾燥重量)に再懸濁した。
【0128】
この再懸濁した細胞ペレットに、0.04%という最終ホルムアルデヒド濃度になるよう、0.73mlのホルマリン溶液を添加した(Sigma Catalog HT50−1−2ホルマリン溶液10%、中性に緩衝化)。この溶液を4℃で一晩撹拌した。この不活性化混合物を遠心して、細胞ペレットを保持した。そのペレットを250mlのPBSへの再懸濁によって洗浄した。その物質を遠心分離によって回収して、洗浄を1回繰り返した。
【0129】
その洗浄した細胞ペレットを73mlのPBS中に再懸濁した。そのサンプルを73スクリューキャップバイアルに分注して、−80℃で凍結した。各々のバイアルは、動物への免疫のための適切なアジュバントと組み合わせるために適切な20mg(乾燥重量)のホルマリン不活性化E.canis細胞培養物を含む。
【実施例2】
【0130】
2つの異なるアジュバントを用いるホルマリン不活性化E.canisの調製、E.canis抗原を用いるビーグル犬の免疫、およびSNAP(登録商標)3Dx(登録商標)を用いる免疫されたビーグル犬由来の血清の試験のためのプロトコール。
水酸化アルミニウムアジュバントを用いる抗原の調製は、当業者に周知の技術である。例えば、「Antibodies,A Laboratory Manual」,Cold Spring Harbor Press,1988,pp 99を参照のこと。
【0131】
イヌ(実験用ビーグル犬)への免疫のために、2セットの用量を、上記にように調製した水酸化アルミニウムアジュバントを用いて調製し、製造業者によって記載されるプロトコールを用いてRibiアジュバント(Corixa Corp.,Seattle WA)を用いて調製した。各々の用量は、約20mgのホルマリン不活性化E.canis細胞培養物(乾燥重量)を含んでいた。
【0132】
犬小屋で飼っている実験用ビーグル犬をE.canisホルマリン不活性化抗原での免疫のために選択した。各々2匹のイヌの2つの群;異なるアジュバントを用いる各々の群に、ホルマリン不活性化E.canis調製物(酸化アルミニウムまたはRibi)を投与した。0日目に4匹のイヌ全てが、SNAP(登録商標)3Dx(登録商標)診断、およびE.canis生物体を用いるウエスタンブロット分析の両方を用いて血清陰性であることを見出した。
【0133】
Covance Research Products Inc.のIACUC委員会は、実験用ビーグル犬の免疫のためのプロトコールを承認した。イヌに0日目、28日目および56日目にワクチン接種し、毎週1mlを採血してSNAP(登録商標)3Dx(登録商標)を用いてモニターした。全てのイヌに、肩甲骨背側(dorsoscapular)の領域に適切な試験品を皮下投与した。4匹の全ての動物は42日までにSNAP(登録商標)3Dx(登録商標)E.canisの試験で、陽性に血清転換した。生成物の採血は42日目および70日目に採取した(約50mlの血液で約25mlの血清が得られた)。
【0134】
図1は、実験用ビーグル犬のSNAP(登録商標)3Dx(登録商標)アッセイ評価を示す。SNAP(登録商標)デバイスは、製造業者によって記載されるとおり用いた。「プレ(pre)」サンプルは0日目からである。「ポスト(post)」サンプルは42日目からである。E.canis陽性のスポットは、42日のサンプルについて4匹全てのイヌで陽性になる。同様の結果が70日のサンプルで観察された。
【0135】
第三のアジュバント、BCG、(Calbiochem of EMD Biosciences,Inc.San Diego,CA)を含んでいる第三のワクチンを用いた実験で、同様の結果が明らかになった。第三のワクチンの調製は、以下を除いて上記のRibiアジュバントワクチンについて記載された調製と同一であった:1)ホルマリン不活性化が4℃で24時間であった、2)1mgのBCGを添加した。ワクチン接種スケジュールは0日目、14日目であって、毎週採血をE.canisのタンパク質との反応性についてアッセイした。
【実施例3】
【0136】
PERCOLL(登録商標)勾配を用いる細胞培養物からのE.canisの濃縮
DNA単離およびウエスタンブロット分析のために、E.canisを、PERCOLL(登録商標)密度勾配を用いて細胞培養物から濃縮した。Ehrlichiaなどの細胞培養物から細胞内病原体を単離するプロセスは、当業者に周知の技術である。例えば、Akira et al.(1982)Purification of Rickettsia tsutsugamushi by PERCOLL(登録商標)density gradient centrifugation,Microbiol.Immunol.,26:321〜328を参照のこと。
【0137】
典型的なE.canis濃縮は、1.5リットルの感染した細胞培養物(上記を参照のこと)で開始した。その細胞を6,000xgで遠心分離して、細胞ペレットを保持して上清を廃棄した。細胞ペレットを20mlのPBS中に再懸濁して、その後に2回目の遠心分離をした。その上清を廃棄して、上清を保持した。次いでそのペレットを20mlのPBS中に再懸濁して、Branson超音波処理器を用いて20kHz、1.5のパワー設定で5秒間超音波処理した。次いでそのサンプルを500xgで5分間遠心分離して、大きい砕片をペレットにした。
【0138】
PERCOLL(登録商標)を32%という最終濃度まで上清に添加した(4.5mlのPERCOLL(登録商標)と10mlのサンプル)。このサンプルを、70.1Tiの超遠心分離ローターと適合したOak Ridgeチューブ中にロードして、63,000xgで30分間遠心分離した。不透明なバンドを、パスツールピペットを用いて収集した。不透明なバンドは、Ehrlichiaが高度に濃縮されている(収集したサンプルを光学顕微鏡を用いて確認した)。PBSで1:4希釈した後、サンプルをアリコートして12,000xgで遠心分離した。その上清を廃棄して、Ehrlichiaのペレットを−80℃で保管した。
【実施例4】
【0139】
ワクチン接種したおよび感染したイヌ由来の血清または血漿のウエスタンブロットによる試験
1次元のSDS−PAGEゲル分析および2次元のゲル分析(1次元の等電点電気泳動、2次元のSDS−PAGE)の使用は、当業者に周知である。例えば、Current Protocols in Molecular Biology,eds.F.M.Ausubel et al.,John Wiley & Sons Inc.,1997,10.2.2−10.3.11頁を参照のこと。これらの方法を用いて分離したタンパク質を分析するためのウエスタンブロットの使用は、当業者に周知である。例えば、Current Protocols in Molecular Biology,eds.F.M.Ausubel et al.,John Wiley & Sons Inc.,1997,10.8.1−10.8.116頁を参照のこと。
【0140】
最初の作業は、1Dゲルで分離したタンパク質のウエスタン分析を用いて行い(データ示さず)、続いて2Dゲルを用いて分離したタンパク質のウエスタン分析を用いて行った。細胞培養物から収集した丸ごとのE.canis由来のタンパク質を、2Dゲル電気泳動を用いて分析した(物質および試薬は製造業者によって記載されるように用いた;Bio−Rad Life Sciences Research,Hercules,CA 94547)。1ゲルあたりにロードするサンプルの量は、経験的に決定した(図2を参照のこと)。そのタンパク質をニトロセルロースにブロットして、ホルマリン不活性化E.canis抗原でワクチン接種した実験用ビーグル犬由来の0日目のイヌ血清(上記を参照のこと)、またはE.canisに感染した動物由来の血清を用いてプローブした(図3、図4および図5を参照のこと)。
【0141】
陽性のイヌの血清および血漿を、E.canisに感染したイヌから単離した。E.canis感染は、これらのイヌ由来の全血から回収したリンパ球のウエスタン分析によって確認し、IDEXX SNAP(登録商標)3Dx(登録商標)アッセイの使用によって、イヌの血清または血漿を用いて確認した(IDEXX Laboratories Inc.,から市販されており、製造業者によって記載されるとおり用いる)。
【0142】
ウエスタンブロット分析のために、タンパク質を1DのSDS−PAGEまたは2Dの等電点電気泳動/SDS−PAGEゲルを用いて、続いてゲルからニトロセルロースへのタンパク質の電気ブロッティングによって分離した。このニトロセルロースブロットを、Tris緩衝化生理食塩水(pH7.5)、0.05% TWEEN(登録商標)20に溶解した2.5%の脱脂粉乳のブロッキング溶液中でインキュベートした。イヌの血清または血漿を、30%正常仔牛血清で非特異的な結合をブロックするためにE.coli溶解液を含んでいる緩衝液中に記載されるような力価に希釈して、室温で2時間または4℃で一晩インキュベートした。TBS−TWEEN(登録商標)(0.05%)中で3回洗浄した後、そのブロットを50%のウシ胎仔血清、50%TBS−TWEEN(登録商標)−Kathon(それぞれ、0.05%および0.5%)を含んでいる緩衝液に移して、ホースラディッシュペルオキシダーゼにコンジュゲートされたウサギ抗イヌFcポリクローナル抗体(Jackson Immuno Research,West Grove,PA 19390)の非特異的な結合を妨げた。ウサギ抗イヌFcポリクローナル抗体コンジュゲートを1:5,000に希釈した。そのゲルをTBS TWEEN(登録商標)(0.05%)を用いて3回洗浄し、TBSを用いて1回洗浄して、ここでHRPの存在は、ECLウエスタンブロット検出試薬(Amersham Biosciences,Piscataway,NJ 08855−1327)を、製造業者によって記載されるとおりに用いて検出した。露光されたX線フィルムのデジタル画像は、GelDoc 2000(Bio−Rad Inc.)を用いて撮った。
【実施例5】
【0143】
E.canis由来のDNAの単離、およびλ発現ライブラリーの構築、およびDIVA活性を有しているクローンのためのE.canisλ発現ライブラリーのスクリーニング
λ発現ライブラリーの調製およびスクリーニングは、当業者に周知の技術である。例えば、Current Protocols in Molecular Biology,eds.F.M.Ausubel et al.,John Wiley & Sons Inc.,1997,第5.1頁〜5.8.6頁を参照のこと。発現ライブラリーの構築のために、ゲノムDNAを、PERCOLL(登録商標)勾配遠心分離(上記を参照のこと)によって細胞培地から単離されたE.canisから精製した。DNAは、Qiagen Sciences(Germantown,MD)から市販されているゲノムDNA精製キットを用いて精製した。λZAP(登録商標)IIプレ消化EcoRI/CIAPベクターキット(Stratagene Corp.,La Jolla,CA 92037)をライブラリーの構築について製造業者によって特定されたとおり用いた。E.canisのゲノムDNAをTSP509で部分的に消化して、2〜6kbにおよぶフラグメントを、アガロースゲル電気泳動を用いて単離し、λベクター中に連結した。ファージは、製造業者によって特定されたとおりパッケージして増殖させた。
【0144】
約120,000個の個々のλプラークを、E.canisの感染に陽性であるが、ホルマリン不活性化したE.canisでワクチン接種された動物由来の血清との反応性については陰性と同定されたイヌから単離された血清に対する結合についてスクリーニングした(上記を参照のこと)。最初のスクリーニングから84個の個々のプラークをこの活性を有しているものとして同定した。
【0145】
λプラークを2回のプラーク精製に供して、再試験して、E.canis感染動物由来の血清との陽性の反応性、ワクチン接種した動物由来の血清とスクリーニングした場合の陰性の反応性を確認した。
【0146】
単離されたλプラークを、アナプラズマ・ファゴサイトフィラ(Anaplasma phagocytophilia)、ボレリア・ブルグドルフェリ(ライム病の原因因子)、リケッチア・リケッチ(Rickettsia rickettsii)(ロッキー山紅斑熱の原因因子)、レプトスピラ・インテロガンス(Leptospira interrogans)およびイヌ糸状虫(フィラリアの原因因子)について血清陽性であると特定された動物由来の血清との交差反応性についてスクリーニングした。
【0147】
スクリーニングプロセスの終わりに、ワクチン接種したイヌ由来の血清とも、他のイヌ病原体で感染したイヌ由来の血清とも反応しない、E.canisに感染した動物由来の血清と反応する43個のλプラークを見出した(上記を参照のこと)。
【0148】
製造業者の指示に従ってクローニングベクターのZAP(登録商標)を用いて、λベクターへの挿入物をプラスミドに変換した。このプラスミドは、タンパク質発現およびウエスタンブロットによるコードされたタンパク質の分析のためにE.coli株XL−1ブルーに形質転換した。E.canis DNA挿入物の末端を、T7およびT3配列決定プライマーを用いてDNA配列分析に供した。
【0149】
全ての43個のクローンについてT7およびT3反応の両方からの配列情報は、BLAST分析のため、NCBIウェブサイトに提示した。結果をエクセルのフォーマットで表にした。クローンとE.canisについて利用可能なショットガンゲノム配列(NCBI:NZ_AAEJ01000001)との間の配列同一性に基づいて、各々のクローンのゲノムDNAのセグメントを同定した。共通の遺伝子を共有する個々のクローンを、感染したイヌおよびワクチン接種したイヌの血清のプールを用いるウエスタンブロットによってさらなる分析のために分類した。類似のバンド形成パターンに基づいて、重複したクローンを除去した。両方のセットの血清に対して反応性を示すいずれのクローンも除去した。この分析の結果として、23個のクローンをさらなる評価のために選択した。グループごとのクローンおよび共通抗原の分類を表2に示す。
【0150】
【表2】
【実施例6】
【0151】
個々のE.canis陽性のイヌ血清サンプルを用いたウエスタンブロット分析
23個の全てのクローンを個々のSDS−PAGEゲルで分析した。各々のゲルをニトロセルロースに移して、ELISA/SNAP(登録商標)試験によってE.canis感染についてのみ陽性であったイヌ由来のイヌ血清の個々のサンプルを用いてウエスタンブロットに供した。イヌ血清は、E.coliの溶解液を含有している実施例4に記載の同じ希釈液で1:500に希釈して、標準的な比色定量ホースラディッシュペルオキシダーゼ技術(Opti−4CN,Bio−Rad)を用いて反応性を検出した。全部で13個の個々のイヌ血清サンプルを評価した。ブロットはサンプルにまたがって比較して、優勢なバンドまたは1クローンあたりのバンドのセットに対する反応性を示しているイヌの番号を決定した。その結果を表3および図6にまとめる(太字で挙げたクローンを図に示す)。
【0152】
【表3】
【0153】
全ての23個のクローンを、他のベクター保有の感染性疾患について陽性と試験されたプールされたイヌ血清を用いてウエスタンブロットによって分析した。以下の単一の感染についてELISAまたはSNAP(登録商標)によって陽性と試験されたサンプルを評価した:イヌ糸状虫、ライム(Lyme)、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム,またはエーリキア・エウィンギ(E.ewingii)。上記の表で特定されたクローンのうち、これらの他のベクター保有感染について陽性のイヌ血清と交差反応性を示したものはない。
【実施例7】
【0154】
E.canisのDIVA抗原をコードする関連の遺伝子セグメントの特定
a.120kDaの抗原
この抗原は以前に、Yuらによって記載されており(J Clin Microbiol.2000 Jan;38(1):369〜74;また、McBrideら、2000 Infec.Immun.68:13)、イヌでのE.canis感染の診断に有用であることが示されている。この抗原は、「p120」および「p140」の両方のE.canis抗原として記載されている。同書を参照のこと。Yuらは、p120遺伝子によって発現される組み換えタンパク質がドデシル硫酸ナトリウムゲルで、予想されるタンパク質の分子量よりも大きい140kDaの分子サイズを有することを説明している。Yuらの第373頁を参照のこと。Walkerのグループ(Yuら、およびMcBrideら)は、タンパク質をE.canis p120およびp140の両方と言っている。従って、この開示は、p120およびp140の両方を交換可能に用いてこのタンパク質を記載する。E.canisのp120/140遺伝子についてのアクセッション番号は、AF112369であり、かつ関連のタンパク質はAAD34330である。また、アクセッション番号YP302666も参照のこと。クローン2、10、17および33は120kDaの抗原遺伝子の全長セグメントを含む。クローン35は、この遺伝子の短縮(trancation)を含む場合がある(配列番号1および2を参照のこと)。
【0155】
この遺伝子を、E.canisのゲノムDNAから増幅して、製造業者(Invitrogen)の指示に従って6−Hisタグを用いてpET発現系にサブクローニングした。このプラスミドの配列決定の結果は、配列番号2、アミノ酸58〜589に示されるタンパク質をコードする遺伝子配列に正確にマッチした。このタンパク質を発現するように誘導されたBL21細菌由来のタンパク質溶解液を、感染したイヌ血清を用いるウエスタンブロットによって分析して、ホルマリン不活性化E.canis細胞でワクチン接種された動物由来の血清でプローブしたウエスタンブロットと比較した。以前の知見と一致して、感染したイヌ由来の血清のみが、予想される分子量のこのタンパク質を認識した(データ示さず)。
【0156】
P120は、14回繰り返される36アミノ酸のモチーフを有する。配列番号15を参照のこと。この反復される部分(配列番号15の下線の領域は60kDaのペプチドである)。配列番号16は、アラインメントされた14リピートを示す。配列番号17は、14リピートのコンセンサス配列を示す。
【0157】
本発明の一実施形態は、以下を含むポリペプチドを提供する:
KEEX1TPEVX2AEDLQPAVDX3SX4EHSSSEVGX5KVSX6TS(配列番号17)。
ここでX1=SまたはN
X2=KまたはR
X3=G、D、またはS
X4=VまたはI
X5=EまたはK
X6=EまたはKである。
本発明の別の実施形態は、配列番号17が2回以上繰り返される多量体ポリペプチドを提供する。この多量体ポリペプチドはまた、1つ以上の異種ポリペプチドを含んでもよい。
【0158】
別の実施形態では、本発明は、配列番号21のポリペプチドであるXPEVKAEDLQPAVDGSVEHXを提供し、ここで各々のXは=0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15アミノ酸である。
【0159】
b.200kDaの抗原
この抗原は以前にMcBrideら(J Clin Microbiol.2001 Jan;39(1):315〜22)によって記載されており、エーリキア症の診断に有用であることが示された。この遺伝子のアクセッション番号はAF252298であり、関連のタンパク質はAAK01145である。このタンパク質配列の一部は、公開された特許と関連している(米国特許第6,355,777号の配列番号2、アクセッション番号AAE96254)。本発明者らは、エーリキア症の診断抗原およびDIVA試薬として機能するこのタンパク質の異なる領域を同定した。この遺伝子のこの部分は、AF252298のヌクレオチド1081から終わりのヌクレオチド4266にまたがる(配列番号3および4を参照のこと)。
【0160】
この遺伝子を、E.canisのゲノムDNAから増幅して、製造業者(Invitrogen)の指示に従って6−Hisタグを用いてpET発現系にサブクローニングした。このプラスミドの配列決定の結果は、配列番号4のアミノ酸1〜1061に示されるタンパク質をコードする遺伝子配列に正確にマッチした。このタンパク質を発現するように誘導されたBL21細菌由来のタンパク質溶解液を、感染したイヌ血清を用いるウエスタンブロットによって分析して、ホルマリン不活性化E.canisでワクチン接種された動物由来の血清でプローブしたウエスタンブロットと比較した。以前の知見と一致して、感染したイヌ由来の血清のみが、予想される分子量のこのタンパク質を認識した(データ示さず)。
【0161】
c.ATPアーゼ
この遺伝子(Locusタグ「Ecan02000699」)は、E.canisのショットガンゲノム配列の自動化コンピューター分析によって予測された。これは、4000個を超えるアミノ酸のタンパク質をコードする(ZP_00210575)。このE.canisのDIVAスクリーニングによって、この遺伝子の2つの別の領域およびその関連するタンパク質を、潜在的な免疫優性抗原およびDIVA試薬として同定した。クローン84および7において同定されるタンパク質のセグメントは、アクセッション番号46308382のそれぞれアミノ酸1984〜2774および2980〜3740である(配列番号5、6、7、8を参照のこと)。
【0162】
この遺伝子の両方のフラグメントをE.canisのゲノムDNAから増幅して、製造業者(Invitrogen)の指示に従って6−HisタグとともにpET発現系に別々にサブクローニングした。このプラスミドの配列決定の結果は、配列番号6および配列番号8のそれぞれアミノ酸1〜782および1〜746に示されるタンパク質に関連する遺伝子配列に正確にマッチした。これらのタンパク質を発現するように誘導されたBL21細菌由来のタンパク質溶解液を、感染したイヌ血清を用いるウエスタンブロットによって分析して、ホルマリン不活性化E.canisでワクチン接種された動物由来の血清でプローブしたウエスタンブロットと比較した。以前の知見と一致して、感染したイヌ由来の血清のみが、予想される分子量のこれらのタンパク質を認識した(データ示さず)。
【0163】
d.熱ショックタンパク質
このクローンは熱ショックタンパク質の遺伝子GrpEを含むが、免疫優性抗原をコードする遺伝子配列は、このゲノムの自動的なコンピューター分析によって予測される仮定的なタンパク質配列から生じる。タンパク質の分子量およびpIに基づいて、クローン9中の目的の遺伝子は、遺伝子座番号「Ecan02000495」であって、その関連するタンパク質は46308954である。
【0164】
このタンパク質は、ゲノムのコンピューターアノテーションから予測されるだけで、E.canis生物体から免疫優性タンパク質として以前に同定された訳ではないので、これは、この遺伝子がE.canisで発現されて、感染したイヌ宿主の免疫応答を刺激するという最初の証拠である。このタンパク質は、p16抗原として同定される(配列番号9および10を参照のこと)。
【0165】
この遺伝子を、目的のゲノムDNAを含んでいるpBlueScriptベクターから増幅して、製造業者(Invitrogen)の指示に従って6−Hisタグを用いてpET発現系にサブクローニングした。このプラスミドの配列決定の結果は、遺伝子座番号「Ecan02000495」に関連する遺伝子配列に正確にマッチした。このタンパク質を発現するように誘導されたBL21細菌由来のタンパク質溶解液を、感染したイヌ血清を用いるウエスタンブロットによって分析して、ホルマリン不活性化E.canisでワクチン接種された動物由来の血清でプローブしたウエスタンブロットと比較した。以前の知見と一致して、感染したイヌ由来の血清のみが、予想される分子量のこのタンパク質を認識した(図7を参照のこと)。
【0166】
e.リボソームタンパク質L1
この遺伝子は、E.canisのゲノムから遺伝子座タグ「Ecan02000476」によって同定される。この関連のタンパク質は、アクセッション番号ZP_00211130を有する(配列番号11および12を参照のこと)。このタンパク質の同定は、このゲノムの自動化コンピューター分析に基づいて推測される。このタンパク質のBLAST分析は、この配列が、E.chaffeensisの表面タンパク質(アクセッション番号4894576)と約70%同一であることを明らかにする。E.chaffeensisタンパク質の免疫応答性は、Yuらによって以前に報告されている(J Clin Microbiol.1999 Aug;37(8):2568〜75)。E.chaffeensisのタンパク質(アクセッション番号4894576)は106kDaのタンパク質前駆体と呼ばれる。
【0167】
f.可能な非120kDaの抗原
120kDaの抗原の遺伝子を含んでいるゲノムフラグメント内に、免疫優性であってかつDIVA試薬でもあり得る他の遺伝子が存在する。例えば、クローン10は、120kDaの抗原のみを含んでいるクローンに比較して、感染された血清でプローブされたウエスタンブロット上に異なるバンドパターンを生じる。クローン10は、IV型分泌経路のVirD4成分の遺伝子情報を含み、この遺伝子配列は、遺伝子座タグ「Ecan02000624」で同定される。この遺伝子は、723個のアミノ酸のタンパク質(ZP_00211244)をコードするが、ゲル上で同定したタンパク質の分子量によって判定すると合、このタンパク質の一部のみがクローン10によって発現されるものと考えられる(配列番号13および14を参照のこと)。
【実施例8】
【0168】
E.canisのP140ペプチドの評価
ホルマリン不活性化E.canis(ワクチンサンプル)で免疫したビーグル犬由来の血清を、E.canisのp140タンパク質(p120としても公知、実施例7を参照のこと)由来の合成ペプチドを用いて調製したマイクロタイタープレートに基づくイムノアッセイを用いて試験した。
【0169】
ホルマリン不活性化E.canisの調製およびビーグル犬の免疫を、実施例1および2に記載した。免疫したビーグル犬由来のサンプルは、間接的および直接的なアッセイ方式で合成ペプチド(配列番号18、配列番号19および配列番号20)を用いて調製したマイクロタイタープレートに基づくイムノアッセイを用いて試験した。
【0170】
間接的なアッセイ形式
サンプルを、合成ペプチド(配列番号18、配列番号19および配列番号20)を用いて調製したマイクロタイタープレートに基づくイムノアッセイを用いて試験した。個々のペプチドを直接吸着によってマイクロタイターウェル上に固定した。試験サンプルの希釈(1:100)をこのマイクロタイターウェルに添加して、洗浄することによって未結合の抗体を取り除いた。固定されたペプチドに結合した抗体を、抗−種、この場合イヌ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)コンジュゲート(1:2000希釈)との反応、洗浄およびHRPO基質の添加によって検出した。個々のマイクロタイターウェルの吸光度(A650)を、マイクロタイター・プレート・リーダーを用いて測定した。
【0171】
直接的なアッセイ形式
個々のペプチド(配列番号18、配列番号19および配列番号20)をウシ血清アルブミンにコンジュゲートして、直接吸着によってマイクロタイターウェル上に固定した。合成ペプチド(配列番号18、配列番号19および配列番号20)を、指示薬であるホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)にコンジュゲートした。試験サンプルおよびイムノアッセイ・ペプチド/指標を、対応するペプチドでコーティングされたマイクロタイターウェルに加えて、これをインキュベートして洗浄した。固定されたペプチドに結合した抗体およびペプチド/指示薬を、HRPO基質試薬の添加によって検出した。個々のマイクロタイターウェルの吸光度(A650)を、マイクロタイター・プレート・リーダーを用いて測定した。
【0172】
アッセイの結果を表4に示す。陽性コントロール(PC,ID 1049:16E)および陰性コントロール(NC,3818:57B)は、それぞれ公知のE.canis陽性および陰性の血清サンプルであった。全てのサンプルを、E.canis抗体について市販のSNAP(登録商標)4Dx(登録商標)試験を用いて試験した。異なるアジュバントを用いて処方したホルマリン不活性化E.canis抗原を投与された6匹のイヌ(CVYDEH、CWMBDC、CVXCSM、CWMAXK、CVSCVAおよびCVXCAP)由来の連続的な時間的なサンプルの結果を、免疫後0日〜42日の間示す。SNAP(登録商標)4Dx(登録商標)試験の結果、ワクチン接種した動物では抗体応答が誘導されたことが実証される。ワクチン接種した動物由来の血清サンプルのうち、直接アッセイ方式で反応性のものはなかった。いくつかのサンプル(例えば、CWMAXKのイヌ由来のサンプル)は、間接的なアッセイ形式ではバックグラウンド反応が高かった。
【0173】
この結果、ホルマリン不活性化ワクチンを用いた免疫の結果として誘導された抗体は、E.canisのp140タンパク質由来の合成ペプチドに対して有意に反応性ではなかったことが示される(配列番号18、配列番号19および配列番号20)。
【0174】
【表4】
【実施例9】
【0175】
E.canis陽性および陰性であることが知られたイヌ由来の血清を、E.canisのタンパク質p140タンパク質(p120としても公知、実施例7を参照のこと)から得た合成ペプチドを用いて調製したマイクロタイタープレートに基づくイムノアッセイを用いて試験した。
【0176】
E.canis陽性および陰性の野外サンプルを入手して、E.canisに対する抗体についてSNAP(登録商標)4Dx(登録商標)試験を用いて試験した。次いで、サンプルを、E.canisのp140タンパク質に由来する合成ペプチド(配列番号18、配列番号19および配列番号20)を用いて作成した間接的および直接的なマイクロタイタープレート形式のアッセイを用いて試験した。
【0177】
間接的なアッセイ形式
サンプルは、合成ペプチド(配列番号18、配列番号19および配列番号20)を用いて調製したマイクロタイタープレートに基づくイムノアッセイを用いて試験した。個々のペプチドを直接吸着によってマイクロタイターウェル上に固定した。試験サンプルの希釈(1:100)を、マイクロタイターウェルに添加して、未結合の抗体を洗浄によって除去した。固定されたペプチドに結合された抗体を、抗−種、この場合イヌ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)コンジュゲート(1:2000希釈)との反応、洗浄およびHRPO基質の添加によって検出した。個々のマイクロタイターウェルの吸光度(A650)を、マイクロタイター・プレート・リーダーを用いて測定した。
【0178】
直接的なアッセイ形式
個々のペプチド(配列番号18、配列番号19および配列番号20)をウシ血清アルブミンにコンジュゲートして、直接吸着によってマイクロタイターウェル上に固定した。合成ペプチド(配列番号18、配列番号19および配列番号20)を、指示薬であるホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)にコンジュゲートした。試験サンプルおよびイムノアッセイ・ペプチド/指標を、対応するペプチドでコーティングされたマイクロタイターウェルに加えて、これをインキュベートして洗浄した。固定されたペプチドに結合した抗体およびペプチド/指示薬を、HRPO基質試薬の添加によって検出した。個々のマイクロタイターウェルの吸光度(A650)を、マイクロタイター・プレート・リーダーを用いて測定した。
【0179】
表4は、間接的アッセイ形式を用いて試験したE.canis陽性および陰性の野外サンプルについての結果を示す。陽性コントロール(PC,ID 1049:16E)および陰性コントロール(NC,3818:57B)は、それぞれE.canis陽性および陰性が既知の血清サンプルであった。サンプルは、SNAP(登録商標)4Dx(登録商標)試験を用いてE.canisの抗体陽性または陰性であることを判定した。アッセイの結果は、ペプチド試薬(配列番号18,配列番号19および配列番号20)を用いて作製したマイクロタイタープレート形式のアッセイについて示す。
【0180】
表5は、直接的なアッセイ形式を用いて試験したE.canis陽性および陰性の野外サンプルについての結果を示す。陽性コントロール(PC,ID 1049:16E)および陰性コントロール(NC,3818:57B)はそれぞれ、E.canis陽性および陰性であることが既知の血清サンプルであった。サンプルは、SNAP(登録商標)4Dx(登録商標)試験を用いてE.canis抗体陽性または陰性であることを判定した。アッセイ結果は、ペプチド試薬(配列番号18、配列番号19および配列番号20)を用いて行ったマイクロタイタープレート形式のアッセイについて示す。
【0181】
【表5】
【0182】
【表6】
【0183】
この結果、自然感染の結果として誘導された抗体は、E.canisのp140タンパク質(配列番号18、配列番号19および配列番号20)由来の合成ペプチドと反応性であったことが示される。
【実施例10】
【0184】
E.canisのタンパク質であるp16タンパク質から得た合成ペプチド(配列番号22、配列番号23および配列番号24)を用いて調製したマイクロタイタープレートに基づくイムノアッセイを用いるE.canis陽性および陰性が既知のイヌ由来の血清の試験。指標として抗イヌHRPOコンジュゲートを利用する間接的アッセイ形式を用いてアッセイを行った。
6匹のE.canis−抗体陽性および3匹のE.canis−抗体陰性のイヌ由来の血清をSinclair Research(Columbia,MO)から入手した。血清サンプルは、E.canis抗体について、ライセンスを受けた可逆性のフロー・クロマトグラフィック結合アッセイIDEXX SNAP(登録商標)4Dx(登録商標)試験を用いて試験することによって、陽性または陰性であることを見出した。可逆性のフロー・クロマトグラフィックSNAP(登録商標)アッセイの結果を表7に示す。
【0185】
サンプルは、E.canisのp16表面タンパク質由来の合成ペプチド(配列番号22、配列番号23および配列番号24)を用いて調製したマイクロタイタープレートに基づくイムノアッセイを用いて試験した。合成ペプチドを、Immulonマイクロタイターウェル中に0.25μg/mlで固定した(配列番号22および23、または0.5μg/ml(配列番号24))。試験サンプルの希釈物(1:100)をこのマイクロタイターウェルに添加して、洗浄することによって未結合の抗体を取り除いた。固定されたペプチドに結合した抗体を、抗−種、この場合イヌ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)コンジュゲート(1:2000希釈)との反応、洗浄およびHRPO基質の添加によって検出した。個々のマイクロタイターウェル中の650nmでの流体の吸光度(A650)を、マイクロタイター・プレート・リーダーを用いて測定した。
【0186】
結果:
陽性および陰性のサンプルについての結果を表7に示す。陽性のサンプルHP−319、HP−322、HP−326、HP−342、HP−354、HP−358は、配列番号22、配列番号23および配列番号24に示されるペプチド配列と反応性であった。陰性のサンプルHP−302、HP−303およびHP−306は、配列番号22、配列番号23および配列番号24に示されるペプチド配列に対して反応性ではなかった。
【0187】
結論:
この結果、自然感染の結果として誘導された抗体は、上記の間接的なアッセイ形式でE.canisのp16タンパク質(配列番号22、配列番号23および配列番号24)由来の合成ペプチドと反応性であったことが示される。
【0188】
【表7】
【実施例11】
【0189】
E.canisのp16タンパク質配列由来の合成ペプチド(配列番号22、配列番号23および配列番号24)を用いて調製したマイクロタイタープレートに基づくイムノアッセイを用いるE.canis陽性および陰性が既知のイヌ由来の血清の試験。アッセイは、指標としてHRPO標識したペプチドを利用して直接的なアッセイ形式を用いて行った。
7匹のE.canis−抗体陽性および3匹のE.canis−抗体陰性のイヌ由来の血清を野外のイヌから得た。血清サンプルは、E.canis抗体について、ライセンスを受けた可逆性のフロー・クロマトグラフィックIDEXX SNAP(登録商標)3Dx(登録商標)試験を用いて試験することによって、陽性または陰性であることを見出した。アッセイの結果を表8に示す。
【0190】
サンプルは、E.canisのp16表面タンパク質由来の合成ペプチド(配列番号22、配列番号23および配列番号24)を用いて調製した、マイクロタイタープレートに基づくイムノアッセイを用いて試験した。合成ペプチドは、マイクロタイターウェル上に1μg/mlで固定した。別々の量の合成ペプチドを、指示薬ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)にコンジュゲートした。その試験サンプルおよびペプチド:HRPOコンジュゲート(1μg/ml)を、ペプチドでコーティングしたマイクロタイターウェルに加えて、これをインキュベートして洗浄した。固定されたペプチドおよびペプチド::HRPOコンジュゲートに結合したサンプル抗体をマイクロタイターウェル中に固定した。この複合体をHRPO基質試薬の添加によって検出した。個々のマイクロタイターウェルの吸光度を、マイクロタイター・プレート・リーダーを用いて測定した。
【0191】
結果:
陽性および陰性のサンプルについての結果を表8に示す。陽性のサンプル813:91I、1049:16A、1049:16U、1061:03I、1177:21G、1177:21Kおよび1177:63Oは、配列番号22、配列番号23および配列番号24に示されるペプチド配列と反応性であった。陰性のサンプル3818:57A、3818:57Cおよび3818:57Dは、配列番号22、配列番号23および配列番号24に示されるペプチド配列に対して反応性ではなかった。
【0192】
結論:
この結果、自然感染の結果として誘導された抗体は、上記の直接アッセイ形式で、E.canisのp16タンパク質(配列番号22、配列番号23および配列番号24)由来の合成ペプチドと反応性であったことが示される。
【0193】
【表8】
【実施例12】
【0194】
合成ペプチド(配列番号23)でコーティングしたマイクロタイタープレートと抗イヌコンジュゲートを指標として用いるE.canisに実験的に感染させた6匹のイヌ由来の血清のアッセイ結果
6匹のナイーブなイヌを、E.canisのルイジアナ分離株を用いて実験的に感染させた。血清サンプルは、感染後3、7、10、13、17、21、24、28および35日で入手した。サンプルは、E.canis p16表面タンパク質由来のp16−2合成ペプチド(配列番号23)を用いて調製したマイクロタイタープレートに基づくイムノアッセイを用いて試験した。合成ペプチドは、マイクロタイターウェル中に固定し、試験サンプルの希釈物(1:100)をこのマイクロタイターウェルに添加して、洗浄することによって未結合の抗体を取り除いた。固定されたペプチドに結合した抗体を、抗−イヌ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)コンジュゲート(1:2000希釈)との反応、洗浄およびHRPO基質の添加によって検出した。個々のマイクロタイターウェル中の吸光度を、マイクロタイター・プレート・リーダーを用いて測定した。
【0195】
結果:
アッセイの結果を表9に示す。6匹のイヌ全ては、市販の可逆性フロー・クロマトグラフィックSNAP(登録商標)4Dx(登録商標)アッセイによって測定した場合、実験的感染後に、陰性の状態から陽性の状態に変化した。全てのイヌ由来の血清が、感染後種々の時点で配列番号23に示されるE.canisのp16ペプチドと反応した。実験的感染と配列番号23のペプチドに対する最初の反応との間の時間は以下のとおりであった:Dog 108532、感染後17日;Dog 115853,感染後13日;Dog 265006、感染後17日;Dog 268830、感染後13日;Dog 285307、感染後13日、およびDog 533573、感染後13日。
【0196】
結論:
この結果、実験的な感染の結果として誘導された抗体は、E.canisのp16タンパク質(配列番号23)由来の合成ペプチドと反応性であったことが示される。
【0197】
【表9】
【表10】
【実施例13】
【0198】
イヌへの免疫のためのホルマリン不活性化E.canisの調製
E.canisは文献に記載されている方法を用いてイヌ細胞培養物中で増殖させた。Breitschwerdt,Antimicrobial Agents and Chemotherapy,1998,Vol 42:362〜368を参照のこと。光学顕微鏡を用いて、030細胞は、E.canisに80%より多くが感染していると見積もられた。2リットルのE.canisに感染した細胞培養物を収集し、遠心分離して、保持されたペレットで7.31グラムの物質(湿重量)を得た。1.462グラム(その物質の重量のうち20%)という推定の乾燥重量とすれば、水がその物質の重量のうち80%を構成すると推定される。その細胞ペレットを総容積73mlとしてPBS中に20mg/ml(乾燥重量)まで再懸濁した。
【0199】
この再懸濁された細胞ペレットに、0.04%という最終ホルムアルデヒド濃度になるよう、0.73mlのホルマリン溶液を添加した(Sigma Catalog HT50−1−2ホルマリン溶液10%、中性緩衝化)。その溶液を4℃で12〜24時間攪拌した。その不活性化された混合物を遠心分離して、細胞ペレットを保持した。そのペレットを250mlのPBS中へ再懸濁することによって洗浄した。その物質を遠心分離によって収集し、その洗浄を1回繰り返した。
【0200】
そのサンプルを73個のスクリューキャップバイアルに分注して、−80℃で凍結した。各々のバイアルは、動物への免疫のための適切なアジュバントとの組み合わせに適切な、20ミリグラム(乾燥重量)のホルマリン不活性化E.canis細胞培養物を含む。
【実施例14】
【0201】
2つの異なるアジュバントを用いるホルマリン不活性化E.canisの調製、およびE.canis抗原を用いるビーグル犬の免疫のためのプロトコール
犬小屋で飼育しているイヌ(実験用ビーグル犬)への免疫のため、ホルマリン不活性化E.canis抗原を、3つの異なるアジュバントを用いて処方した。ホルマリン不活性化E.canis抗原を、製造業者に記載されるプロトコールを用いてRibiアジュバント(Corixa Corp.,Seattle WA)で調製した。各々の用量は、約20mgのホルマリン不活性化E.canis細胞培養物(乾燥重量)を含んだ。免疫原の追加の調製物を、Ribiアジュバント(上記)およびアジュバントBCG(1用量あたり1mg)(Calbiochem of EMD Biosciences,Inc.,San Diego,CA)の組み合わせを用いて調製した。各々3匹のイヌからなる2つの群を、Ribiアジュバント単独、またはRibiアジュバントとBCGアジュバントとを組み合わせて含んでいる不活性化E.canisのいずれかを用いて170日にわたって4回(0日、14日、156日、170日)投与した。ワクチン誘導性の高度免疫状態を生成する目的で、全てのイヌは、アジュバント TiterMax(登録商標)(CytRx Corp.,Norcross,GA)を用いるか、またはアジュバント TiterMax(登録商標)とアジュバントBCGとを組み合わせて製造業者の指示を用いて処方したホルマリン不活性化E.canisの単回用量を投与された(247日)。イヌには、以下のスケジュールに従ってワクチンを投与した:
【0202】
【表11】
【0203】
Covance Research Products Inc.のIACUC委員会が実験用ビーグル犬の免疫についてのプロトコールを承認した。全てのイヌに、肩甲骨背側(dorsoscapular)の領域に適切な試験品を皮下投与した。0日に6匹の全てのイヌは、可逆性フロー・クロマトグラフィックSNAP(登録商標)3Dx(登録商標)診断、およびE.canis生物体を用いるウエスタンブロット分析の両方を用いて血清陰性であることが見出された。6匹の動物の全てが42日までに可逆性フロー・クロマトグラフィックSNAP(登録商標)3Dx(登録商標)E.canisアッセイで、陽性に血清転換した。生成物の採血は226、261、268および282日目に採取した(約50mlの血液で約25mlの血清が得られた)。
【実施例15】
【0204】
E.canisのタンパク質であるp16タンパク質から得た合成ペプチド(配列番号22、配列番号23および配列番号24)を用いて調製したマイクロタイタープレートに基づくイムノアッセイを用いるホルマリン不活性化E.canis(ワクチンサンプル)を用いて免疫したビーグル犬由来の血清の試験
ホルマリン不活性化E.canisの調製およびビーグル犬の免疫は、実施例13および14に記載された。免疫したビーグル犬由来のサンプルを、合成ペプチド(配列番号22、配列番号23および配列番号24)を用いて調製した直接のマイクロタイタープレートに基づくイムノアッセイを用いて試験した。
【0205】
直接的なアッセイ形式
サンプルは、合成ペプチド(配列番号22、配列番号23および配列番号24)を用いて調製した、マイクロタイタープレートに基づくイムノアッセイを用いて試験した。合成ペプチドは、マイクロタイターウェル上に1.0μg/mlで固定した。別々の量の合成ペプチドを、指示薬ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)にコンジュゲートした。その試験サンプルおよびイムノアッセイ・ペプチド/指標を、ペプチドでコーティングしたマイクロタイターウェルに加えて、これをインキュベートして洗浄した。固定されたペプチドおよびペプチド/指示薬に結合した抗体をマイクロタイターウェル中に固定した。この複合体をHRPO基質試薬の添加によって検出した。個々のマイクロタイターウェルの吸光度を、マイクロタイター・プレート・リーダーを用いて判定した。
【0206】
結果
アッセイの結果を表10に示す。陽性コントロール(PC,ID 1049:16E)および陰性コントロール(NC,3818:57B)は、それぞれ、E.canis陽性および陰性が既知の血清サンプルであった。全てのサンプルを、E.canis抗体について市販の可逆性フロー・クロマトグラフィックSNAP(登録商標)4Dx(登録商標)試験を用いて試験した。異なるアジュバントを用いて処方したホルマリン不活性化E.canis抗原を投与された6匹のイヌ(CVYDEH、CWMBDC、CVXCSM、CWMAXK、CVSCVAおよびCVXCAP)由来の連続的な時間的なサンプルの結果を、免疫後226日、261日、268日および282日について示す。可逆性のフロー・クロマトグラフィックSNAP(登録商標)4Dx(登録商標)試験の結果、ワクチン接種した動物では抗体応答が誘導されたことが実証される。ワクチン接種した動物由来の血清サンプルのうち、ペプチド(配列番号22、配列番号23および配列番号24)マイクロタイタープレート形式のアッセイで反応性のものはなかった。
【0207】
【表12】
【0208】
結論
この結果によって、ホルマリン不活性化E.canis抗原を用いる免疫の結果として誘導された抗体が可逆性のフロー・クロマトグラフィックSNAP(登録商標)4Dx(登録商標)試験で反応性であり、抗E.canis抗体応答が開始されたことが示される。これらの同じサンプルは、E.canis P16タンパク質(配列番号22、配列番号23、配列番号24)由来の合成ペプチドに対して非反応性であった。
【0209】
ホルマリン不活性化E.canis抗原で免疫したイヌ由来の血清は、E.canisのP16タンパク質(配列番号22、配列番号23、配列番号24)由来のペプチドに非反応性であった。合成ペプチド(配列番号22、配列番号23、配列番号24)は、ワクチン接種の結果として誘導された抗体に対して非反応性であった。
【実施例16】
【0210】
E.canis感染の治療のモニタリング
6匹のイヌを実験的にE.canisに感染させた。ドキシサイクリンを感染後28日で投与した。E.canisに特異的な抗体を、間接的アッセイプロトコールを用いて配列番号23を用いて検出した。配列番号23に示されるポリペプチドを直接吸着によってマイクロタイターウェル上に固定した。試験サンプルの希釈物(1:100)をこのマイクロタイターウェルに添加して、洗浄することによって未結合の抗体を取り除いた。固定されたペプチドに結合した抗体を、抗−種、この場合ウサギ抗−イヌホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)コンジュゲート(1:1000希釈)との反応によって検出した。個々のマイクロタイターウェルの吸光度(A650)を、マイクロタイター・プレート・リーダーを用いて測定した。陰性のカットフは2xの陰性のコントロールO.D.値であった。
【0211】
結果を図8に示す。E−1、E−2、E−3、E−4、E−5、およびE−6のイヌをE.canisに実験的に感染させたが、感染については治療しなかった。図8によって、配列番号23に結合する抗体のレベルは、実験的な感染の後にはかなり増大し、実験の時間経過の間には減少しなかったことが示される。EDTx−1、EDTx−2、EDTx−3、EDTx−4、EDTx−5、およびEDTx−6のイヌをE.canisで実験的に感染させ、次いで感染後28日でドキシサイクリンを用いて処置した。図8によって、配列番号23に結合する抗体のレベルは、実験的な感染の後にはかなり増大し、ドキシサイクリンの投与後には減少したことが示される。従って、配列番号23は、進行、治療に対する応答、またはE.canis感染の治療の有効性をモニターするために用いることができる。
【実施例17】
【0212】
E.canisに関してワクチン接種されたイヌ、およびE.canisに関してワクチン接種されたが、E.canisに感染したイヌの識別
ワクチンは、感染予防に完全に有効ではない場合もある。従って、ワクチン接種した動物がワクチン接種にかかわらず感染したか否かを決定する方法があることが望ましい。検出因子としてp16を用いるイムノアッセイでは、E.canisに関してワクチン接種されており、E.canisに感染していないイヌにおける抗E.canis抗体を検出しない。ここで、E.canisのp16タンパク質(配列番号10)がE.canisワクチンを投与されたイヌでのE.canis感染を検出するために用いることができることが発見された。
【0213】
E.canisに関してワクチン接種された6匹のイヌおよび2匹のワクチン接種されていないイヌを、10%のDMSO中でE.canis感染したK9細胞を用いて攻撃した(challenged)。各々のイヌを、配列番号10を含んでいるイムノアッセイを用いて抗E.canis抗体について経時的に試験した。ワクチン接種したイヌおよび2匹のコントロールのイヌの全てがE.canisに感染した。E.canis感染は、2つの独立した感染マーカーで確認した。イムノアッセイは、ワクチン接種されたイヌおよびワクチン接種されていないイヌにおいてE.canis感染を検出できた。全てのイムノアッセイシグナルは、バックグラウンドのシグナルを有意に上回った。図9A−B、10A−C、および11A−Cを参照のこと。
【0214】
配列:
【化1】
【0215】
【化2】
【0216】
【化3】
【0217】
【化4】
【0218】
【化5】
【0219】
【化6】
【0220】
【化7】
【0221】
【化8】
【0222】
【化9】
【0223】
【化10】
【0224】
【化11】
【0225】
【化12】
【0226】
【化13】
【0227】
【化14】
【0228】
【化15】
【0229】
【化16】
【0230】
【化17】
【0231】
【化18】
【0232】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【0233】
本発明の他の実施形態によって以下のポリペプチドが得られる:
(a)1位のXが存在しないかまたはCであり、4位のXがHまたはQであり、25位のXがDまたはGであり、かつ36位のXがEまたはGである、配列番号33;
(b)1位のXがCであり、4位のXがHであり、25位のXがDまたはGである、配列番号33のアミノ酸1〜27;
(c)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり;かつCが必要に応じてアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸13〜41;
(d)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが必要に応じてアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸24〜49;
(e)1位のXがCであるかまたは存在せず、かつ25位のXがDまたはGである、配列番号33のアミノ酸1〜27;
(f)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが必要に応じてアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸13〜41;
(g)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが必要に応じてアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸24〜49;
(h)25位のXがDまたはGであり、かつCが必要に応じてアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸13〜27;
(i)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが必要に応じてアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸24〜41;
(j)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが必要に応じてアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸13〜41;
(k)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが必要に応じてアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸24〜49;
(l)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが必要に応じてアミノ末端に存在する、配列番号33のアミノ酸24〜41。
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、2007年10月31日に出願され、その全体が参照によって本明細書に援用される、米国特許出願第60/984,019号の恩典を請求する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
エーリキア(Ehrlichia)は、哺乳動物宿主において循環中の白血球に感染する偏性細胞内病原体である。エーリキア・カニス(Ehrlichia canis)は、イヌおよびヒトに感染し得、それぞれ、イヌ単球エーリキア症(CME)およびヒト単球エーリキア症(HME)を生じ得る。このイヌの疾患は、発熱、リンパ節腫脹、体重減少および汎血球減少によって特徴付けられる。ヒトではこの疾患は、発熱、頭痛、筋肉痛および白血球減少によって特徴付けられる。初期の検出および治療はイヌおよびヒトの両方のエーリキア症を治療するために重要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
発明の要旨
一実施形態では、本発明は、(a)エーリキア・カニスに感染した動物と;(b)エーリキア・カニス(E.canis)に感染していない動物とを、この動物がE.canisに関してワクチン接種されているか否かにかかわらず識別する方法を提供する。この方法は、
(a)動物由来の生物学的サンプルと、E.canisワクチンに対するこの動物の免疫応答の成分である抗体に特異的に結合しない1つ以上の第一の精製されたポリペプチドとを接触させる工程であって;ここでこの1つ以上の第一の精製されたポリペプチドが配列番号22〜33に対して少なくとも95%の同一性を有しており、かつここでこの1つ以上の第一の精製されたE.canisポリペプチドがE.canisに特異的である抗体に特異的に結合する;および
(b)この生物学的サンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたE.canisポリペプチドに対して特異的に結合するか否かを検出する工程、を包含する。
生物学的サンプル中の抗体が、1つ以上の第一の精製されたポリペプチドに特異的に結合するならば、この動物はE.canisに感染している。この1つ以上の第一の精製されたポリペプチドは約15〜約75アミノ酸長であってもよい。この1つ以上の第一の精製されたポリペプチドは、異種のアミノ酸配列、指示薬、アミノ酸スペーサー、アミノ酸リンカー、シグナル配列、輸送停止配列、膜貫通ドメイン、タンパク質精製リガンドまたはそれらの組み合わせに結合され得る。この方法はさらに、E.canisワクチンの要素である1つ以上の第二の精製されたE.canisポリペプチドに対して、上記生物学的サンプル中の抗体が特異的に結合するか否かを決定する工程をさらに包含し得る。もし、この生物学的サンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合し、かつ1つ以上の第二の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合するならば、この動物はE.canisに感染しており、かつE.canisに関するワクチン接種状態が不明である。もし、このサンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合せず、かつ1つ以上の第二の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合するならば、この動物は、E.canisに感染しておらず、かつE.canisについてワクチン接種されている。もし、このサンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたポリペプチドに特異的に結合せず、かつ1つ以上の第二の精製されたポリペプチドに特異的に結合しないならば、この動物はE.canisについてワクチン接種されておらず、かつE.canisに感染していない。
【0004】
本発明の別の実施形態は、E.canisについて動物のワクチン接種および感染状態を判定する方法を提供する。この方法は:
(a)動物由来の生物学的サンプルと、E.canisワクチンに対する動物の免疫応答の成分である抗体に特異的に結合しない1つ以上の第一の精製されたポリペプチドであって、配列番号22〜33に対して少なくとも95%の同一性を有しており、E.canisに特異的である抗体に特異的に結合する、1つ以上の第一の精製されたポリペプチド、ならびにE.canisワクチンに対する動物の免疫応答の成分である抗体に特異的に結合する1つ以上の第二の精製されたポリペプチドとを接触させる工程と;
(b)この生物学的サンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたポリペプチドに対して、および1つ以上の第二の精製されたポリペプチドに対して特異的に結合するか否かを検出する工程と;を包含する。
この生物学的サンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合し、かつ1つ以上の第二の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合するならば、この動物は、E.canisに感染しており、かつE.canisについてワクチン接種状態が不明である。もしこのサンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合せず、かつ1つ以上の第二の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合するならば、この動物は、E.canisに感染しておらず、かつE.canisについてワクチン接種されている。もしこのサンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたポリペプチドに特異的に結合せず、かつ1つ以上の第二の精製されたポリペプチドに特異的に結合しないならば、この動物はE.canisについてワクチン接種されておらず、かつE.canisに感染していない。上記1つ以上の第一の精製されたポリペプチドは約15〜約75アミノ酸長であってもよい。この1つ以上の第一の精製されたポリペプチドは、異種のアミノ酸配列、指示薬、アミノ酸スペーサー、アミノ酸リンカー、シグナル配列、輸送停止配列、膜貫通ドメイン、タンパク質精製リガンドまたはそれらの組み合わせに結合されてもよい。
【0005】
本発明のさらに別の実施形態は、試験サンプル中でE.canisに特異的である抗体またはその抗原結合フラグメントの存在を判定する方法を提供する。この方法は:
(a)1つ以上の精製されたポリペプチドが抗体またはその抗原結合フラグメントに特異的に結合するのに適した条件下で、試験サンプルを、配列番号22〜33に対して少なくとも95%の同一性を有する1つ以上の精製されたポリペプチドと接触させる工程であって、ここで、1つ以上の精製されたポリペプチドは約15〜約75アミノ酸長であり、1つ以上の第一の精製されたポリペプチドは、E.canisに特異的である抗体に特異的に結合する;および
(b)該1つ以上の精製されたポリペプチドの、該抗体またはその抗原結合フラグメントへの特異的な結合の存在を検出する工程;
を包含する。
この1つ以上の精製されたポリペプチドの該抗体または抗原結合フラグメントへの特異的な結合の存在は、この試験サンプル中のE.canisに特異的な抗体またはその抗原結合フラグメントの存在を示す。上記1つ以上の精製されたポリペプチドは、異種のアミノ酸配列、指示薬、アミノ酸スペーサー、アミノ酸リンカー、シグナル配列、輸送停止配列、膜貫通ドメイン、タンパク質精製リガンドまたはそれらの組み合わせに結合され得る。この方法はさらに、特異的な結合の量を検出する工程を包含し得る。この1つ以上の精製ポリペプチドは固相支持体に固定されてもよい。
【0006】
本発明のさらに別の実施形態では以下:
(a)配列番号22〜33からなる1つ以上の精製されたポリペプチド;あるいは
(b)配列番号22〜33に対して少なくとも95%の同一性を有しており、約15〜約75アミノ酸長であり、E.canisに特異的である抗体に特異的に結合する、1つ以上の精製されたポリペプチド;
(c)1位のXが存在しないかまたはCであり、4位のXがHまたはQであり、25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGである、配列番号33;
(d)1位のXがCであり、4位のXがHであり、25位のXがDまたはGである、配列番号33のアミノ酸1〜27;
(e)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり;かつCが任意にアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸13〜41;
(f)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが任意にアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸24〜49;
(g)1位のXがCであるかまたは存在せず、かつここで25位のXがDまたはGである、配列番号33のアミノ酸1〜27;
(h)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが任意にアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸13〜41;
(i)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが任意にアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸24〜49;
(j)25位のXがDまたはGであり、かつCが任意にアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸13〜27;
(k)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが任意にアミノ末端に存在している配列番号33のアミノ酸24〜41;
(l)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが任意にアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸13〜41;
(m)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが任意にアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸24〜49;
(n)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが任意にアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸24〜41;あるいは
(o)(a)〜(n)の組み合わせ、
を含んでいる、組成物を提供する。
上記1つ以上の精製されたポリペプチドは多量体型であってもよい。この1つ以上の精製されたポリペプチドは、異種のタンパク質、指示薬、アミノ酸スペーサー、アミノ酸リンカー、シグナル配列、輸送停止配列、膜貫通ドメイン、タンパク質精製リガンドまたはそれらの組み合わせに結合されてもよい。
【0007】
本発明の別の実施形態は、動物において免疫応答を生じさせる方法であって:この動物に対して、配列番号22〜33に対して少なくとも95%の同一性を有している1つ以上の精製されたポリペプチドまたはそれらの組み合わせを投与する工程を包含し、この1つ以上の精製されたポリペプチドがこの動物において免疫応答を生じる方法を提供する。この1つ以上の精製されたポリペプチドは約15〜約75アミノ酸長であってもよい。この1つ以上の精製されたポリペプチドは多量体型であってもよい。この1つ以上の精製されたポリペプチドは、異種のタンパク質、指示薬、アミノ酸スペーサー、アミノ酸リンカー、シグナル配列、輸送停止配列、膜貫通ドメイン、タンパク質精製リガンドまたはそれらの組み合わせに結合されてもよい。
【0008】
本発明のさらに別の実施形態は、動物におけるエーリキア・カニス感染の予防、治療または回復のための方法を提供し、この方法は、この動物に対して:
(a)配列番号22〜33に対して少なくとも95%の配列同一性を有している1つ以上の精製されたポリペプチド、またはそれらの組み合わせ;あるいは
(b)配列番号22〜33を含んでいる1つ以上の精製されたポリペプチドをコードする1つ以上の核酸、またはそれらの組み合わせ;あるいは
(c)配列番号22〜33を含んでいる1つ以上の精製されたポリペプチドに特異的に結合する1つ以上の抗体、またはそれらの組み合わせ;
を投与する工程を包含し、これによってE.canis感染が予防、回復または治療される。
【0009】
本発明のさらに別の実施形態は、患者においてE.canis感染の治療をモニタリングする方法であって:(a)請求項10の方法によるE.canis感染のための治療の前または初期段階において、患者由来の第一のサンプル中の抗E.canis抗体のレベルを測定する工程と;(b)請求項10の方法によって治療がなされた後の該患者由来の第二のサンプル中の抗E.canis抗体のレベルを測定する工程と;(c)この第一のサンプル中の抗E.canis抗体の量と、第二のサンプル中の抗E.canis抗体の量とを比較して、変化を評価し、それによって処置をモニタリングする工程と;を包含する、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実験用ビーグル犬のSNAP(登録商標)3Dx(登録商標)アッセイ評価を示す。SNAP(登録商標)デバイスは、製造業者によって記載されるとおりに用いた。「プレ、前(Pre)」サンプルは、0日目由来である。「ポスト、後(Post)」サンプルは42日目由来である。E.canis陽性のスポットは、42日目のサンプルについて4匹全てのイヌで陽性になった。同様の結果が70日目のサンプルについて観察された。
【図2】図2は、2Dゲル電気泳動を用いて分離したE.canisのタンパク質のゲルを示す。BIOSAFE(登録商標)クマシーブルー(Bio−Rad Inc.)で染色した。
【図3】図3は、0日目に収集したイヌ血清を用いたE.canisのタンパク質のウエスタンブロットを示す。血漿希釈1:100である。これらのイヌは、E.canisの抗原との反応性について陰性であった。
【図4】図4は、4匹のワクチン接種した動物のプール由来のイヌ血清を用いたE.canisのタンパク質のウエスタンブロットを示す。血清希釈は1:100である。
【図5】図5は、感染した動物のプール由来のイヌ血漿を用いたE.canisのタンパク質のウエスタンブロットを示す。血清希釈は1:1000である。
【図6】図6は、E.coliで発現されて、4匹の感染した動物のプール由来のイヌ血清(A)、または4匹のワクチン接種した動物由来のプールしたイヌ血清(B)のいずれかを用いてプローブされた6つの異なるE.canisのDIVA抗原のウエスタンブロットを示す。血清希釈は、ワクチン接種した動物については1:100であり、感染した動物については1:500であった。提示されるDIVA抗原としては以下が挙げられる:(1)200kDaの抗原、(2)リボソームタンパク質L1、(3aおよび3b)「ATPアーゼ」−2つの異なるセグメント、(4)120kDa抗原、(5)熱ショックタンパク質/p16抗原。
【図7】図7は、クローニングされたp16抗原が、E.canisに感染したイヌ由来の血清によって認識されるが、ワクチン接種されたイヌ由来の血清(「攻撃した(challenged)血清」として示す)では認識されないことを示す。p16抗原またはもとのゲノムフラグメント(+C)を発現するベクターで形質転換された、未誘導(U)または誘導された(I)細菌由来の溶解物を、SDS−PAGEによって分離して、ウエスタンブロット分析のためにニトロセルロースに転写した。
【図8】図8は、イヌにおいて配列番号23に示されるポリペプチドを用いたE.canisに特異的な抗体の検出を、感染、治療および回復を含めて、経時的に示す。
【図9A】図9Aは、E.canisについてワクチン接種されていないイヌにおいて、配列番号10に示されるポリペプチドを用いるE.canisに特異的な抗体の検出を、感染の時間経過にわたって示す。
【図9B】図9Bは、E.canisについてワクチン接種されていないイヌにおいて、配列番号10に示されるポリペプチドを用いるE.canisに特異的な抗体の検出を、感染の時間経過にわたって示す。
【図10A】図10Aは、E.canisについてワクチン接種された(RIBIアジュバント)イヌにおいて、配列番号10に示されるポリペプチドを用いるE.canisに特異的な抗体の検出を、感染の時間経過にわたって示す。
【図10B】図10Bは、E.canisについてワクチン接種された(RIBIアジュバント)イヌにおいて、配列番号10に示されるポリペプチドを用いるE.canisに特異的な抗体の検出を、感染の時間経過にわたって示す。
【図10C】図10Cは、E.canisについてワクチン接種された(RIBIアジュバント)イヌにおいて、配列番号10に示されるポリペプチドを用いるE.canisに特異的な抗体の検出を、感染の時間経過にわたって示す。
【図11A】図11Aは、E.canisについてワクチン接種された(RIBI+BCGアジュバント)イヌにおいて、配列番号10に示されるポリペプチドを用いるE.canisに特異的な抗体の検出を、感染の時間経過にわたって示す。
【図11B】図11Bは、E.canisについてワクチン接種された(RIBI+BCGアジュバント)イヌにおいて、配列番号10に示されるポリペプチドを用いるE.canisに特異的な抗体の検出を、感染の時間経過にわたって示す。
【図11C】図11Cは、E.canisについてワクチン接種された(RIBI+BCGアジュバント)イヌにおいて、配列番号10に示されるポリペプチドを用いるE.canisに特異的な抗体の検出を、感染の時間経過にわたって示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
エーリキア・カニス抗原であって、これを用いて、E.canisに対してワクチン接種されている動物からE.canisに自然感染した動物を識別することができる抗原が開示されている。「ワクチン接種された」とは、病原体に対する免疫を確立または恒常させることによってこの病原体による感染の影響を予防または回復し得るワクチン組成物の投与を意味する。ワクチン組成物は死んだ、不活性化されたもしくは減弱された病原体、またはその病原体の精製された産物もしくは部分を含んでもよい。ワクチン接種は100%有効性である必要はない。
【0012】
本発明を詳細に記載する前に、多数の用語を規定する。本明細書において用いる場合、単数形「1つの、ある(a、an:不定冠詞)」、および「この、その(the:定冠詞)」は、文脈上明確に違ったふうに指示しない限り複数の言及を包含する。
【0013】
本明細書において用いる場合、「ポリペプチド」という用語は、単鎖の化合物またはペプチド結合によって連結されたアミノ酸残基の2つ以上の鎖の複合体を指す。この鎖(単数または複数)は任意の長さであってもよく、融合タンパク質を含んでもよい。「タンパク質」は比較的大きいポリペプチドについて言及する場合に用いられることが多く、「ペプチド」は、小型のポリペプチドに関して用いられることが多いが、当該分野でのこれらの用語の使用は、重複しており、かつ変化する。従って、本明細書において用いる場合、「ポリペプチド」という用語は、他に注記しない限り、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、または融合タンパク質を交換可能に言及する。「アミノ酸」という用語は、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質のモノマー単位を指す。「ポリペプチド」という用語は、1つのタイプのポリペプチド(1セットのポリペプチド)の1つ以上を指すこともできる。「ポリペプチド」とはまた、2つ以上の異なるタイプのポリペプチドの混合物(ポリペプチドの混合物)を指すこともできる。「ポリペプチド(複数)」または「ポリペプチド(単数)」という用語は各々がまた、「1つ以上のポリペプチド」を意味する場合がある。
【0014】
本発明のポリペプチドは、「単離され」てもよい。単離されたポリペプチドとは、天然には会合しているアミノおよびカルボキシ隣接アミノ酸配列の一方または両方と直接には近接していないポリペプチドである。詳細には、「配列番号22〜33に示される単離されたポリペプチド」とは、このポリペプチドがE.canisのタンパク質分子中に天然に会合するアミノおよびカルボキシ隣接アミノ酸配列の一方または両方と直接には隣接しないことを意味する(ここでこのポリペプチドは天然に存在するポリペプチドである)。
【0015】
本明細書において用いる場合、「抗原」とは、それに対して被験体が体液性および/または細胞性免疫応答を開始し得る分子を指す。抗原は、任意のタイプの生物学的分子であってもよく、これには、例えば、単純な中間代謝物、糖、脂質およびホルモン、ならびに高分子(例えば、複雑な炭水化物、リン脂質、核酸およびタンパク質)が挙げられる。本発明の組成物および方法では、抗原はポリペプチド、例えば、少なくとも6つ以上のアミノ酸を含んでいるものであってもよい。
【0016】
本明細書において用いる場合、E.canis抗原のポリペプチドの「誘導体」、またはE.canisの抗原もしくはポリペプチド「に由来する」抗原もしくはポリペプチドとは、天然の型が精製、修飾または改変されている抗原またはポリペプチドを指す。このような修飾としては限定するものではないが以下が挙げられる:アミノ酸の置換、修飾、付加または欠失;脂質化、グリコシル化もしくはリン酸化のパターンの変更;このポリペプチドに存在するアミノ酸残基の遊離のアミノ側鎖、カルボキシル側鎖もしくはヒドロキシル側鎖と他の有機および非有機の分子との反応;ならびに他の修飾であって、そのいずれかが一次、二次または三次構造中の変化を生じ得る修飾。
【0017】
「生物学的サンプル」とは、免疫グロブリンを含んでいると予想される動物由来の任意のサンプルである。例えば、生物学的サンプルとは、血漿であっても、血液であっても、血清であっても、唾液であっても、尿であっても、糞便であっても、創傷浸出液であっても、脳脊髄液(CSF)であっても、精液であっても、痰であっても、組織抽出液であっても、細胞抽出液であってもよい。本発明の一実施形態では、試験サンプルは、ウマ、イヌ、ウシ、ラマ、ヒツジ、ヤギ、シカ、ヘラジカ(エルク)、げっ歯類または任意の他の動物などの動物から得ることができる。ヒトは本明細書では動物であるとみなされる。これらの例は、本発明に適用可能なサンプルの種類または動物を限定すると解釈されるべきではない。
【0018】
「感染」とは、例えば、E.canis感染では、ある動物が、E.canisの臨床症状を示すか否かにかかわらず、E.canisに曝されていることを意味する。自然感染とは、ダニによる伝播などの、E.canisの天然の伝播方法の1つの結果として生じる曝露を指す。感染にはワクチン接種を通じたE.canisに対する曝露は含まない。
【0019】
「E.canisのワクチンの要素ではないポリペプチドまたは抗原」とは、特定のE.canisのワクチン(単数または複数)に存在しない任意のE.canisのポリペプチドまたは抗原である。「E.canisのワクチンの要素ではないポリペプチドまたは抗原」とは、E.canisワクチンの免疫原として活性な部分ではない任意のE.canisのポリペプチドまたは抗原でもある。すなわち、このポリペプチドまたは抗原はワクチン中に存在し得るが、ポリペプチドまたは抗原に対する免疫応答(例えば、ポリペプチドまたは抗原に特異的に結合する抗体の生成)は、E.canisのワクチンの投与に応答して生じることはない。ワクチン(単数または複数)の成分は、細菌全体ではないサブユニットワクチンの一部であってもよく;これらの部分はワクチンの一部となる前に、化学的に合成されても、または組み換え発現されてもよく、これらの部分は、インビボの免疫原性組成物を発現する1つ以上のベクターによってコードされてもよい。
【0020】
「E.canisワクチンに対する動物の免疫応答の成分である抗体」とは、E.canisのワクチンでのワクチン接種の結果として惹起される抗体を指す。これらの抗体は、天然のE.canis感染の結果として惹起された抗体と同一であっても、または類似であってもよい。これらの抗体は、十分な力価で維持され、それによって、この細菌に対する防御効果および中和効果を得ることができる。十分なワクチン接種によって、E.canisワクチンの成分によって惹起される抗体(単数または複数)の測定可能なレベルが生じる。E.canisワクチンに対する動物の免疫応答の成分であり得る抗体を惹起するE.canis抗原の例は、p28−1、p28−2、p28−3、p28−4、p28−5、p28−6、p28−7、p28−8、p28−9(米国特許第6660269号;同第6,458,942号;同第6,403,780号;同第6,392,023号を参照のこと)、proA、ProB、mmpA、チトクロームオキシダーゼ(米国特許出願公開第20040170972号を参照のこと)、p153のN末端部分であるp43(米国特許第6,355,777号を参照のこと)、糖タンパク質(米国特許出願公開第2004/0121433号を参照のこと)、p153、ならびにp30−1、p30−2、p30−3、p30−4、p30−5、p30−6、p30−7、p30−8、p30−9、p30−10、p30−11、p30−12、p30−13、p30−14、p30−15、p30−16、p30−17、p30−18、p30−19、p30−20(Ohashi et al.2001、Infection and Immunity 69(4):2083〜91)である。
【0021】
免疫応答とは、ポリペプチドなどの抗原に対する細胞性および/または抗体媒介性の免疫応答の生物における発達である。通常、このような応答は、限定するものではないが、以下のうちの1つ以上を包含する:抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞および/または細胞傷害性T細胞の産生。免疫応答は、当業者に公知の任意のいくつかのアッセイを用いて検出され得る。
【0022】
本発明のポリペプチド
E.canisに対してワクチン接種されている動物由来の生物学的サンプルは、ワクチンに対する応答において産生された抗体の存在に起因して、E.canisの感染についての試験で陽性の結果を生じる能力を有する。一態様では、本発明は、E.canisについて動物がワクチン接種されているか否かにかかわらず、E.canisに感染している動物とE.canisに感染していない動物とを識別する方法を提供する。この方法は、動物由来の生物学的サンプルと、特定のE.canisワクチンに対するこの動物の抗体応答の成分である抗体に特異的に結合しないが、E.canisの感染に対する応答で生成される抗体に特異的に結合する、E.canis由来の抗原とを接触させる工程を包含する。
【0023】
ワクチンに対する動物でのE.canis抗体の発生は、この動物をワクチン接種するために用いた特定のワクチンに依存する。E.canisに対してワクチン接種されている動物と、E.canisに自然感染したまたは実験的に感染させた動物との間の免疫応答の相違によって、動物がE.canisについてワクチン接種されているか否かにかかわらず、この動物がE.canisで自然に感染したまたは実験的に感染しているか否かを判定するための手段を提供する。従って、本発明の方法を用いて、E.canisに感染している動物は、E.canisに感染していない動物、および/またはE.canisに対してワクチン接種されている動物から識別され得る。本発明の抗原、それらの免疫優性領域、およびエピトープを本発明の方法において用いてもよい。これらの組成物は、E.canisのDIVA抗原(Differentiate Infected from Vaccinated Animals(ワクチン接種した動物から感染した動物を区別する))と呼ばれる場合がある。E.canisのDIVA抗原は、特定のE.canisワクチンによって動物において誘導される免疫応答とは区別される、動物における免疫応答、例えば、特定の抗体の産生を誘導する。
【0024】
従って、E.canisのDIVA抗原と、特定のワクチンに対する動物の免疫応答の成分ではない抗体との間の特異的な結合の検出は、自然のまたは実験的なE.canis感染を示し得る。このような結合がなければ、E.canis感染がないことが示され得る。さらに、第二の、別の抗原、例えば、特定のE.canisワクチンに対する動物の免疫応答の成分である抗体に特異的に結合するE.canis抗原を用いて、ワクチン接種に対する応答で生じた抗体を検出してもよい(本明細書では「E.canisのワクチン抗原」と呼ばれる)。E.canisワクチンの抗原は、特定のE.canisワクチンに対する動物の免疫応答の成分である抗体に特異的に結合するだけでなく、またE.canisの感染に対する動物の免疫応答の成分である抗体にも特異的に結合し得る。もしE.canisワクチンの抗原に特異的な抗体が検出されるならば、この動物はワクチン接種されているか、および/または感染している。いずれの抗体の検出もなければ感染もワクチン接種もないことを示す。そのようなものとして、別々の捕獲試薬の種々の組み合わせで、試験被験体におけるワクチン接種および/または感染の状態の判定を行うことができる。
【0025】
一局面では、本発明の方法は、動物由来の生物学的サンプルと、E.canis菌の一部であるが、特定のE.canisワクチンの構成要素ではない抗原とを接触させる工程を包含する。別の局面では、本発明の方法は、動物由来の生物学的サンプルと、E.canis菌およびE.canisのワクチンに存在するかまたはそれらの一部である抗原とを接触させる工程を包含し、ここでこの抗原に対する免疫応答(例えば、この抗原に特異的に結合する抗体の産生)は、E.canis菌の感染に応答して生じるが、E.canisワクチンの投与に応答しては生じない。別の局面では、動物由来の生物学的サンプルを分析して、E.canisのDIVA抗原に特異的な抗体の有無、ならびにE.canisワクチンの抗原に特異的な抗体の有無を検出する。次いで、このような抗体がないことを判定することによって、動物が感染しておらず、かつワクチン接種されていないかワクチン接種されていることを判定する。
【0026】
本発明の一局面では、DIVA抗原はE.canisのワクチンの要素ではない。本発明の別の局面では、DIVA抗原は、E.canisのワクチンの一部であるが、免疫応答(例えば、DIVA抗原に特異的に結合する抗体の産生)は、E.canisのワクチンの投与に応答しては生じない。動物のワクチン接種または感染の状況は、サンプル中の抗体が1つ以上のE.canisワクチンの抗原に特異的に結合するか否か、およびサンプル中の抗体が1つ以上のDIVA抗原に特異的に結合するか否かを検出することによって判定され得る。サンプル中の抗体が、1つ以上のワクチンの抗原に特異的に結合し、かつ1つ以上のDIVA抗原に特異的に結合するならば、その動物は、E.canisに感染しており、かつその動物のワクチン接種の状態は不明である。サンプル中の抗体が1つ以上のE.canisワクチンの抗原に特異的に結合し、かつ1つ以上のDIVA抗原に特異的に結合しないならば、その動物はE.canisについてワクチン接種されており、かつE.canisに感染していない。サンプル中の抗体が1つ以上のE.canisワクチンの抗原に特異的に結合せず、かつ1つ以上のDIVA抗原に特異的に結合しないならば、その動物は、E.canisに感染しておらず、かつE.canisに関してワクチン接種されていない。
【0027】
本発明の一局面では、(a)エーリキア・カニスに感染している動物と;(b)E.canisに感染していない動物とを、それらの動物のE.canisワクチンの状態にかかわらず識別する方法を提供する。この方法は、動物由来の生物学的サンプルと、E.canisワクチンに対するこの動物の免疫応答の成分である抗体に実質的に特異的に結合しない第一の精製されたE.canisポリペプチドとを接触させる工程であって;ここでこの第一の精製されたE.canisポリペプチドが配列番号22〜33またはその組み合わせを含んでいる工程と、このサンプル中の抗体が第一の精製されたE.canisポリペプチドに対して特異的に結合するか否かを検出する工程と、を包含する。このサンプル中の抗体が、第一の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合するならば、この動物はE.canisに感染しており;このサンプル中の抗体が、第一の精製されたE.canisポリペプチドに実質的に特異的に結合しないならば、この動物はE.canisに感染していない。
【0028】
この方法はさらに、E.canisワクチン抗原を含む第二の精製されたE.canisポリペプチドに対して、上記サンプル中の抗体が特異的に結合するか否かを判定する工程を包含し得る。もし、このサンプル中の抗体が1つ以上のE.canisワクチンの抗原に特異的に結合し、かつ1つ以上のDIVA抗原に特異的に結合するならば、この動物はE.canisに感染しており、かつこの動物のワクチン接種状態が不明である。もし、このサンプル中の抗体が1つ以上のE.canisワクチン抗原に特異的に結合し、かつ1つ以上のDIVA抗原に特異的に結合しないならば、この動物は、E.canisについてワクチン接種されており、かつE.canisに感染していない。もし、このサンプル中の抗体が1つ以上のE.canisワクチンの抗原に特異的に結合せず、かつ1つ以上のDIVA抗原に特異的に結合しないならば、この動物はE.canisに感染しておらず、かつE.canisについてワクチン接種されていない。本発明の一実施形態では、試験サンプル中の抗体は、DIVA抗原および/またはE.canisワクチンの抗原に対して実質的に特異的に結合しない。実質的に、非特異的な結合とは、当業者によって陰性の結果とみなされる結合の量である。
【0029】
本発明の一局面では、E.canisに関する動物のワクチン接種および感染状態を判定する方法が得られる。この方法は:
(a)動物由来の生物学的サンプルと、E.canisワクチンに対する動物の免疫応答の成分である抗体に実質的に特異的に結合しない第一の精製されたポリペプチドであって、配列番号22〜33またはその組み合わせを含んでいるポリペプチド、ならびにE.canisワクチンに対する動物の免疫応答の成分である抗体に特異的に結合する第二のポリペプチドとを接触させる工程と;
(b)このサンプル中の抗体が第一および第二の精製されたポリペプチドに特異的に結合するか否かを検出する工程と;を包含し、
ここでこの生物学的サンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合し、かつ1つ以上の第二の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合するならば、この動物は、E.canisに感染しており、かつE.canisについてワクチン接種状態が不明であり;ここでこのサンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合せず、かつ1つ以上の第二の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合するならば、この動物は、E.canisに感染しておらず、かつE.canisについてワクチン接種されており;もしこのサンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたポリペプチドに特異的に結合せず、かつ1つ以上の第二の精製されたポリペプチドに特異的に結合しないならば、この動物はE.canisについてワクチン接種されておらず、かつE.canisに感染していない。
【0030】
表1は、E.canisのDIVA抗原およびE.canisワクチン抗原を用いて判定できる、動物の感染および/またはワクチン接種の状態を示す。表1の「行わず(Not Done)」とは、特定の試験を完了しておらず、従って結果が利用できないことを意味する。例えば、動物由来の生物学的サンプルをE.canisのDIVA抗原を用いて試験し、かつその結果が陽性であって、E.canisのワクチン抗原では試験が完了していないならば、その動物の状態は感染であるが、ワクチン接種の状態は不明である。
【0031】
【表1】
【0032】
本発明の別の局面は、試験サンプル中の抗体またはその抗原結合フラグメントの有無を判定するための方法を提供し、ここでこの抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号10、22〜33またはそれらの組み合わせからなる精製されたポリペプチドに特異的に結合する。この方法は、試験サンプルと、配列番号10、22〜33またはそれらの組み合わせを含んでいる精製されたポリペプチドとを、抗体またはその抗原結合フラグメントに、精製されたポリペプチドが特異的に結合するのに適した条件下で接触させる工程と;特異的な結合の有無を検出する工程とを包含する。この特異的な結合の存在によって、この抗体またはその抗原結合フラグメントの存在が示され、この特異的な結合が無いことによって、この抗体またはその抗原結合フラグメントが無いことが示される。
【0033】
ワクチンは、感染を予防または回復するのに完全に有効ではない場合がある。従って、ワクチン接種された動物がワクチン接種にかかわらず、感染したか否かを判定するための方法があることが望ましい。配列番号10、22〜33は、E.canisに関してワクチン接種されており、かつE.canisに感染していないイヌにおいて、抗E.canis抗体を検出しない。配列番号10、22〜33は、E.canisのワクチンを投与されているか、または投与されていないイヌにおいて、E.canis感染を検出するために用いられ得る。本発明の一実施形態では、この動物は、E.canisのワクチン接種を受けて、E.canisの検出がすでに可能になった後、E.canisに感染する。
【0034】
本発明の別の局面は、配列番号10、22〜33を含むかまたはそれらからなる1つ以上の精製されたポリペプチド、またはそれらの組み合わせを含んでいるかまたはそれらからなる組成物を含む。本発明のポリペプチドは、翻訳後に修飾されてもよい。精製されたポリペプチドとは、細胞性物質、他の種類のポリペプチド、化学的前駆体、ポリペプチドの合成に用いられる化学物質、またはそれらの組み合わせを実質的に含まないポリペプチド調製物である。細胞性物質、培地、化学的前駆体、ポリペプチドの合成に用いられる化学物質などを実質的に含まないポリペプチド調製物とは、他のポリペプチド、培地、化学的前駆体、および/または合成に用いられる他の化学物質が約30%、20%、10%、5%、1%またはそれよりも少ない。従って精製されたポリペプチドとは約70%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上純粋である。精製されたポリペプチドは、未精製の細胞抽出物も半精製の細胞抽出物も、または純度が70%未満であるポリペプチドの混合物も含まない。
【0035】
本発明の一実施形態は、配列番号22〜33を含んでいる精製されたポリペプチドを提供し、このポリペプチドは、約50、45、40、35、30、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6またはそれ未満(または50と6との間の任意の範囲)の連続する天然に存在するエーリキア・カニスのアミノ酸からなる(すなわち、この精製されたポリペプチドは、完全な天然に存在するエーリキア・カニスのポリペプチドを包含しない)。天然に存在するエーリキア・カニスのアミノ酸は、エーリキア・カニスの生物体によって通常産生される任意のポリペプチドである。本発明の一実施形態では、精製されたポリペプチドは配列番号22〜33を含み、このポリペプチドは、約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、30、35、40、50、60、70、80、90、100、またはそれ以上連続する天然に存在するエーリキア・カニスのアミノ酸(または約6〜100個の任意の範囲のアミノ酸)を含む。
【0036】
配列番号22〜33のポリペプチドは、全長のエーリキア・カニスのポリペプチドよりも小さいという事実は重要である。なぜなら、ポリペプチドが小さいほど、検出アッセイで全長ポリペプチドよりも大きい特異性および/または感度を有し得るからである。さらに、これらのポリペプチドが小さいほど、製造は安価になり得、そして全長ポリペプチドよりも高い純度を得ることができる。
【0037】
本発明の一実施形態は、約50、45、40、35、30、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7または6の連続する天然のエーリキア・カニスのアミノ酸よりも少なく、かつ配列番号22〜23の約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、30、35、40、50、60、70、80、90、または100の連続するアミノ酸よりも大きい(または6〜100アミノ酸の任意の範囲)、精製されたポリペプチドを提供する。従って、本発明のポリペプチドは、例えば、約15〜約30;約15〜約50;または約15〜約100アミノ酸長であってもよい。
【0038】
変異ポリペプチドは、配列番号22〜33に示されるポリペプチド配列に対して少なくとも約79%、80%、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%またはそれ以上同一であり、また本発明のポリペプチドでもある。変異ポリペプチドは、1つ以上の保存的アミノ酸変異または他のマイナーな修飾を有し、かつ生物学的活性を保持し、すなわち、生物学的に機能的な等価物である。生物学的に活性な等価物は、対応する野性型ポリペプチドに比較した場合実質的に等価な機能を有する。本発明の一実施形態では、ポリペプチドは約1、2、3、4、5、10、20またはそれより少ない保存的アミノ酸置換を有する。
【0039】
これらのポリペプチドは、配列番号22〜33のアミノ酸残基を超える追加のアミノ酸残基を有してもよい。すなわち、このポリペプチドは、このポリペプチドの5’末端または3’末端に追加された追加のアミノ酸残基を有してもよく、一方で配列番号22〜33の15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、または48の連続するアミノ酸(特定の配列番号の長さに依存する)にそった配列同一性は少なくとも約95%である。ポリペプチドの5’末端または3’末端上に付加された追加のアミノ酸は、配列同一性のパーセンテージに影響するとはみなされない。この追加のアミノ酸は、天然に存在するアミノ酸であってもよいし、または天然には存在しないアミノ酸であってもよい。このポリペプチドは、例えば、約15〜約50アミノ酸長であっても、または約75アミノ酸長であってもよい。
【0040】
変異ポリペプチドは、1つ以上の保存的アミノ酸の置換、欠失、付加または他のマイナーな修飾を有し、かつ生物学的活性を保持している、すなわち、生物学的に機能的な等価物である。生物学的に活性な等価物は、対応する野性型のポリペプチドに比較した場合、実質的に等価な機能を有する。
【0041】
配列同一性パーセントは、意味を認識する技術を有し、2つのポリペプチド配列の間またはポリヌクレオチド配列の間で同一性を測定するには多数の方法がある。例えば、Lesk,Ed.,Computational Molecular Biology,Oxford University Press,New York,(1988);Smith,Ed.,Biocomputing: Informatics And Genome Projects,Academic Press,New York,(1993);Griffin & Griffin,Eds.,Computer Analysis Of Sequence Data,Part I,Humana Press,New Jersey,(1994);von Heinje, Sequence Analysis In Molecular Biology,Academic Press,(1987);ならびにGribskov & Devereux,Eds.,Sequence Analysis Primer,M Stockton Press,New York,(1991)を参照のこと。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドをアラインメントさせるための方法は、コンピュータープログラムにコードされており、このプログラムとしては、GCGプログラムパッケージ(Devereux et al.,Nuc.Acids Res.12:387(1984))、BLASTP、BLASTN、FASTA(Atschul et al.,J.Molec.Biol.215:403(1990))、およびBestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8 for Unix,Genetics Computer Group,University Research Park,575 Science Drive,Madison,WI 53711)(SmithおよびWatermanの局所相同性アルゴリズムを用いる(Adv.App.Math.,2:482−489(1981)))が挙げられる。例えば、FASTAアルゴリズムを使用するコンピュータープログラムALIGNを、−12のギャップ・オープン・ペナルティーおよび−2のギャップ・伸長・ペナルティーを用いるアフィン・ギャップ・サーチ(affine gap search)で用いてもよい。
【0042】
特定の配列が参照配列と例えば約95%の相同性を有するか否かを決定するために任意の配列アラインメントプログラムを用いるとき、参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの全長にわたって同一性のパーセンテージが計算され、かつ同一性におけるギャップが参照ポリヌクレオチドのヌクレオチドまたはアミノ酸の総数の最大5%まで許容されるように、パラメーターを設定する。
【0043】
変異ポリペプチドは一般に、本発明のポリペプチド配列の1つを修飾すること、および修飾したポリペプチドの特性を評価して生物学的に等価であるか否かを決定することによって同定され得る。変異体は、例えば、免疫組織化学アッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫酵素アッセイ、またはウエスタンブロットアッセイなどのアッセイにおいて本発明のポリペプチドと実質的に同じように反応し、例えばもとのポリペプチドの90〜110%の活性を有する場合、生物学的に等価である。一実施形態において、アッセイは競合アッセイであって、ここでは生物学的に等価なポリペプチドは、対応する反応性の抗原または抗体への本発明のポリペプチドの結合を、約80、95、99、または100%まで減少させることができる。対応する野生型ポリペプチドに特異的に結合する抗体はまた、変異体ポリペプチドにも特異的に結合する。
【0044】
保存的置換とは、あるアミノ酸が、ペプチド化学の当業者がポリペプチドの二次構造および疎水性親水性指標の性質が実質的に変化しないだろうと予測するような、同様の性質を有する別のアミノ酸に置換された置換である。一般に、以下のアミノ酸のグループは保存的変化を示す:(1)ala、pro、gly、glu、asp、gln、asn、ser、thr;(2)cys、ser、tyr、thr;(3)val、ile、leu、met、ala、phe;(4)lys、arg、his;および(5)phe、tyr、trp、his。
【0045】
本発明のポリペプチドは、タンパク質輸送を翻訳と同時または翻訳後に指示するシグナル(またはリーダー)配列をさらに含んでもよい。ポリペプチドは、このポリペプチドの合成、精製、または同定を容易にするため(例えばポリ−His)、または固相支持体へのポリペプチドの結合を強化するために、リンカーまたは他の配列を含んでもよい。例えば、ポリペプチドは、免疫グロブリンのFc領域またはウシ血清アルブミンとコンジュゲートさせてもよい。
【0046】
ポリペプチドは、このポリペプチドが天然において通常会合していないアミノ酸配列、すなわち異種のアミノ酸配列と共有結合されていてもまたは非共有結合されていてもよい。異種のアミノ酸配列は、非E.canis生物体由来であっても、合成配列であっても、または天然には本発明のポリペプチドのカルボキシ末端もしくはアミノ末端に位置しないE.canis配列であってもよい。さらに、ポリペプチドはアミノ酸以外の化合物または分子、例えば、指示薬に、共有結合されてもまたは非共有結合されてもよい。ポリペプチドは、指示薬、アミノ酸スペーサー、アミノ酸リンカー、シグナル配列、輸送停止配列、膜貫通ドメイン、タンパク質精製リガンド、またはそれらの組み合わせと共有結合されても、または非共有結合されてもよい。ポリペプチドはまた、免疫応答(例えば、IL−2などのサイトカイン)を増強する部分(すなわち、ポリペプチドであっても他の化合物であってもよい官能基)、精製を容易にする部分(例えば、アフィニティータグ(例えば、6ヒスチジンタグ、trpE、グルタチオン、マルトース結合タンパク質))、またはポリペプチド安定性を促進する部分(例えば、ポリエチレングリコール;アミノ末端保護基、例えば、アセチル、プロピル、スクシニル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニルまたはt−ブチルオキシカルボニル;カルボキシル末端保護基、例えば、アミド、メチルアミドおよびエチルアミド)に連結されてもよい。本発明の一実施形態では、タンパク質精製リガンドは、例えば、本発明のポリペプチドのアミノ末端もしくはC末端、またはその両方の末端における1つ以上のCアミノ酸残基であってもよい。アミノ酸スペーサーとは、天然において本発明のポリペプチドと会合していないアミノ酸の配列である。アミノ酸スペーサーは約1、5、10、20、100、または1000のアミノ酸を含んでもよい。
【0047】
必要に応じて、本発明のポリペプチドは融合タンパク質の一部であってもよく、ここでは、例えばアミノ酸リンカー、アミノ酸スペーサー、シグナル配列、TMR輸送停止配列、膜貫通ドメイン、ならびにグルタチオン−S−トランスフェラーゼ、ヒスチジンタグ、およびブドウ球菌プロテインAまたはそれらの組み合わせなどのタンパク質精製に有用なリガンドなどの他のアミノ酸配列を含んでもよい。本発明の2つ以上のポリペプチドは、融合タンパク質で存在してもよい。本発明のポリペプチドフラグメントは、本発明の融合タンパク質の状態で存在してもよい。本発明のポリペプチドを、非エーリキア・カニスタンパク質または非エーリキア・カニス p16タンパク質に作動可能に連結して、融合タンパク質を形成してもよい。本発明の融合タンパク質は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33に示される1つ以上のポリペプチドもしくはそれらのフラグメント、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。融合タンパク質は、天然には生じない。「作動可能に連結された」という用語は、本発明のポリペプチドまたは他のポリペプチドが、本発明のポリペプチドのN末端またはC末端のいずれかに対してお互いにインフレームで融合されていることを意味する。
【0048】
本発明のポリペプチドは多量体型であってもよい。すなわち、ポリペプチドは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33のうちの1つ以上のコピーまたはそれらの組み合わせを含んでもよい。多量体のポリペプチドは、多重抗原タンパク質(MAP)であってもよい。例えば、Tam,J.Immunol.Methods,196:17〜32(1996)を参照のこと。
【0049】
本発明のポリペプチドは、E.canisに特異的な抗体により認識される抗原を含んでもよい。この抗原は1つ以上のエピトープ(すなわち、抗原決定基)を含んでもよい。エピトープは、直線状エピトープ、連続(sequential)エピトープ、またはコンフォメーショナル(conformatial)エピトープであってもよい。本発明のポリペプチド内のエピトープは、いくつかの方法で同定され得る。例えば、米国特許第4,554,101号;Jameson & Wolf,CABIOS 4:181〜186(1988)を参照のこと。例えば、本発明のポリペプチドは単離され、スクリーニングされてもよい。合わせると完全なポリペプチド配列となるような一連の短いペプチドは、タンパク質切断により調製することができる。例えば30マー(またはそれより短い)ポリペプチドフラグメントから始めることによって、各々のフラグメントはELISAにおいて認識されるエピトープの存在について試験することができる。例えば、ELISAアッセイにおいては、30マーのポリペプチドフラグメントなどのE.canisポリペプチドを、プラスチックのマルチウェルプレートの壁などの固相支持体に結合させる。抗体の集団を標識し、固相支持体に加え、非特異的な吸収がブロックされる条件下で非標識の抗原に結合させ、そして結合していない抗体および他のタンパク質を洗い流す。抗体の結合は、例えば、無色の基質を有色の反応物に変換する反応によって検出する。次に、同定した30マーから漸減的に小さくかつ重複しているフラグメントを試験して、目的とするエピトープをマッピングしてもよい。
【0050】
本発明の一実施形態では、DIVA抗原は、免疫優性エピトープまたは領域を含む。それは、他のエピトープに比較した場合、その集団中でさらに高頻度に抗体を惹起し、かつ抗体に結合するエピトープまたは領域である。抗原は、1つ以上の免疫優性エピトープを有し得る。免疫優性エピトープは、ポリペプチドが動物に投与された後、またはそのような投与の前に、例えば、ポリペプチド上にマッピングされてもよい。例えば、米国特許出願公開第2004/0209324号を参照のこと。
【0051】
本発明のポリペプチドは、組み換えで作成することができる。本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、組換え発現ベクターに導入されてもよく、このベクターは当該技術分野において周知の技術を用いて、適切な発現宿主細胞系において発現され得る。種々の細菌、酵母、植物、哺乳動物、および昆虫の発現系が当該技術分野において利用可能であり、任意のこのような発現系を用いてもよい。任意に、ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドが、無細胞の翻訳系において翻訳され得る。ポリペプチドは化学的に合成しても、またはE.canis細胞から得てもよい。
【0052】
本発明の免疫原性ポリペプチドは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33に示されるアミノ酸配列、またはそのフラグメントを含んでもよい。免疫原性ポリペプチドは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、または33を有するポリペプチドのエピトープを認識する抗体または他の免疫応答(例えば免疫系のT細胞反応)を誘発することができる。本発明の免疫原性ポリペプチドはまた、配列番号2、4、6、8、10、12、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、または33に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドのフラグメントであってもよい。本発明の免疫原性ポリペプチドフラグメントは、約50、45、40、35、30、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6またはそれ以下(または約50〜約6の間の任意の範囲)のアミノ酸長であってもよい。本発明の免疫原性ポリペプチドフラグメントは、約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、30、35、40、50、60、70、80、90、100またはそれ以上のアミノ酸長(または約6〜約100の間の任意の範囲のアミノ酸)であってもよい。
【0053】
E.canisに特異的な抗体は、本発明のポリペプチドを用いて当該分野で公知の任意の方法によって生体液または組織中で検出され得る。最も簡易な方法は一般にはイムノアッセイ法である。このような方法の1つは、競合ベースの方法であって、ここでは血清サンプルを、E.canisのワクチンの要素ではないE.canis抗原(例えば、E.canisのDIVA抗原)とともにプレインキュベートし、次いでE.canisのDIVA抗原に特異的な固定されたモノクローナル抗体を有する、マイクロタイタープレートのような固相に加える。サンプル中のE.canisのDIVA抗原に特異的な抗体は、E.canisのDIVA抗原が固定された抗体に対して結合することを妨げるであろう。固定された抗体に対するE.canisのDIVA抗原のなんらかの結合の検出は、直接標識されているか、または標識を有する別の結合パートナーに対する結合を通じて標識され得る、E.canis抗原についての第二の結合パートナーを加えることによって確認できる。陽性のサンプル、すなわち、E.canisのDIVA抗原に特異的な抗体を有しているサンプルは、標識由来のシグナルにおける減少に関連している。
【0054】
1つの特定の実施形態では、生物学的サンプル中のE.canisのDIVA抗原に対する抗体は、このサンプルとE.canisのDIVA抗原とを接触させること、およびこのサンプルを抗DIVA抗原モノクローナル抗体でコーティングされたマイクロタイタープレートに添加することによって検出され得る。マイクロタイタープレートへのDIVA抗原の結合は、DIVA抗原に対してウサギポリクローナル抗体を添加すること、およびHRP−コンジュゲートされたロバ抗ウサギポリクローナル抗体を添加することによって検出され得る。サンプル中の抗体は固定された抗体に対するDIVA抗原の結合を妨げ、それによってシグナルの減少を生じる。
【0055】
E.canisのDIVA抗原に特異的である抗体を検出するための別の方法は、サンドイッチアッセイであって、ここでは、E.canisのDIVA抗原に特異的な抗体を含んでいると疑われる生物学的サンプルを、固定されたE.canisのDIVA抗原と接触させ、免疫学的複合体を形成させる。E.canisのDIVA抗原に特異的な抗体の存在は、二次抗体などのE.canis抗体についての標識された結合パートナーの結合の検出によって決定される。
【0056】
本発明の一局面では、E.canisのDIVA抗原を適切な固相支持体に固定してもよい。生物学的サンプルを、E.canisのDIVA抗原と接触させて、抗E.canis抗体がこのサンプル中に存在する場合、ここに結合する。この結合は、任意の適切な方法、例えば、酵素、放射性核種、微粒子または蛍光標識によって検出され得る。適切な実施形態では、検出試薬は、抗E.canis抗体(存在する場合)を捕獲するために用いられるタンパク質と同じかまたは類似しているタンパク質に会合され得る。1つの特定の実施形態では、E.canisに対する抗体は、固相支持体上のE.canis抗原に対する固定によって検出され得る。生物学的サンプルを固相支持体と接触させもよく、未結合のサンプルの除去後に、抗原に対するE.canis抗体の結合を、例えば、標識されたIgG抗体で達成してもよい。
【0057】
本発明のDIVA抗原はまた、本発明のDIVA抗原のミミトープを含んでもよい。ミミトープはエピトープ提示の間、天然の抗原性エピトープを模倣するランダムなペプチドエピトープである。ランダムなペプチドエピトープは、ランダムなペプチドエピトープのライブラリーを作製することまたは選択することによって同定され得る。このライブラリーを抗体に接触させる。抗体と特異的に免疫応答性であるミミトープを同定する。ランダムなペプチドライブラリーは、例えば、ファージ上に提示してもよく、コンビナトリアルライブラリーとして作製してもよい。
【0058】
E.canisのDIVA抗原、例えば、ポリペプチドは、天然であってもよく、すなわち天然の供給源から単離されてもよいし、または合成であってもよい(すなわち、化学的に合成されるか、または遺伝子操作技術を用いて組み換え産生される)。天然のタンパク質は、アフィニティクロマトグラフィーなどの従来の技術によって丸ごとの細菌から単離されてもよい。ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を用いて、周知の技術によって適切なアフィニティカラムを調製してもよい。
【0059】
天然のE.canisのタンパク質と免疫学的に交差反応性であるタンパク質を化学的に合成してもよい。例えば、約100アミノ酸より少なく、通常は約80アミノ酸よりも少なく、典型的には約50アミノ酸よりも少ないポリペプチドを、成長中の鎖にアミノ酸が連続的に添加される周知のMerrifield固相合成法によって合成してもよい(Merrifield,1963,J.Am.Chem.Soc.,85:2149〜2156)。組み換えタンパク質も用いてもよい。これらのタンパク質は、E.canisのゲノムの所望の部分をコードする組み換えDNA分子の、培養細胞における発現によって産生されてもよい。E.canisのゲノムの部分は、それ自体天然であっても合成であってもよく、これには、従来の技術によって単離された細菌から獲得できる天然の遺伝子を伴う。
【0060】
E.canisのポリヌクレオチド
本発明のポリヌクレオチドは、完全な微生物のゲノムより少なく、一本鎖または二本鎖の核酸であってもよい。ポリヌクレオチドは、RNA、DNA、cDNA、ゲノムDNA、化学的に合成したRNAもしくはDNA、またはそれらの組み合わせであってもよい。ポリヌクレオチドは、タンパク質、脂質、他のポリヌクレオチドなどの他の成分を含まないほどに精製することができる。例えば、ポリヌクレオチドは50%、75%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%精製することができる。例えば、cDNAライブラリーもしくはゲノムライブラリー内の数百から数百万の他の核酸分子、またはゲノムDNAの制限酵素消化物を含んでいるゲルスライスの中に存在する核酸分子は、単離されたポリヌクレオチドとみなすべきではない。本発明のポリヌクレオチドは、上記の本発明のポリペプチドをコードする。本発明の一実施形態では、このポリヌクレオチドは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33に示されるポリペプチド、そのフラグメントまたはそれらの組み合わせをコードする。本発明のポリヌクレオチドは、約200、120、100、90、75、60、57、54、45未満(または200〜45の間の任意の範囲)連続の、天然に存在するエーリキア・カニスのポリヌクレオチドからなってもよい。本発明のポリヌクレオチドは、約45、54、57、60、75、90、100、120、150、200より大きい、(または45〜200の間の任意の範囲)、またはさらに多い連続の、天然に存在するエーリキア・カニスのポリヌクレオチドから構成され得る。この精製されたポリヌクレオチドは、追加の異種ヌクレオチド(すなわち、エーリキア・カニス由来ではないヌクレオチド)、さらに追加のエーリキア・カニスのアミノ酸を、それらが本発明のエーリキア・カニスのp16ポリヌクレオチドまたは本発明の他のポリヌクレオチドと天然には連続して存在しない限り含んでもよい。本発明のポリヌクレオチドは、他のヌクレオチド配列、例えば、リンカー、シグナル配列、TMR輸送停止配列、膜貫通ドメイン、またはグルタチオン−S−トランスフェラーゼ、ヒスチジンタグ、およびブドウ球菌プロテインAなどのタンパク質精製に有用なリガンドをコードする配列を含んでもよい。
【0061】
本発明のポリヌクレオチドは単離され得る。単離されたポリヌクレオチドとは、天然では結合している5’および3’の隣接するゲノム配列の一方または両方と直接には連続していない、天然に生じるポリヌクレオチドである。単離されたポリヌクレオチドは、例えば、任意の長さの組み換えDNA分子であってもよいが、ただし、天然に生じるゲノムにおいて、組換えDNA分子に直接隣接して天然に見出される核酸配列が取り除かれているかまたは欠けている。単離されたポリヌクレオチドはまた、天然には存在しない核酸分子も含む。例えばcDNAもしくはゲノムライブラリー、またはゲノムDNAの制限酵素消化物を含むゲルのスライス内の数百から数百万の、他の核酸分子中に存在している核酸分子は、単離したポリヌクレオチドであるとみなすべきではない。E.canisの完全なヌクレオチド配列は、例えば、GenBankアクセッション番号NCBI:NZ_AAEJ01000001から入手可能である。
【0062】
本発明のポリヌクレオチドはまた、免疫原性ポリペプチドをコードするフラグメントを含んでもよい。本発明のポリヌクレオチドは、全長ポリペプチド、ポリペプチドフラグメント、および変異体または融合ポリペプチドをコードし得る。
【0063】
本発明のポリペプチドをコードしている縮重ヌクレオチド配列、ならびに本発明のポリヌクレオチド配列およびそれらの相補鎖と少なくとも約80%、または約90、96、98、もしくは99%同一である相同のヌクレオチド配列も、本発明のポリヌクレオチドである。配列同一性のパーセントは、「ポリペプチド」の節に記載されるとおり、計算することができる。縮重ヌクレオチド配列とは、本発明のポリペプチドまたはそれらのフラグメントをコードするが、遺伝コードの縮重に起因して野生型ポリヌクレオチド配列とは核酸配列が異なるポリヌクレオチドである。相補DNA(cDNA)分子、種のホモログ、および生物学的に機能的なE.canisポリペプチドをコードするE.canisポリヌクレオチドの変異体も、E.canisポリヌクレオチドである。本発明のポリヌクレオチドは、例えば感染した個体由来の血液、血清、唾液、または組織などの生物学的サンプル中に存在する核酸配列から単離することができる。ポリヌクレオチドはまた、例えば自動合成機を用いて、研究室において合成することもできる。PCR等の増幅法を用いて、ポリペプチドをコードしているゲノムDNAまたはcDNAからポリヌクレオチドを増幅してもよい。
【0064】
本発明のポリヌクレオチドは、天然に存在するポリペプチドのコード配列を含んでもよいし、または天然には存在しない変更された配列をコードしてもよい。必要に応じて、ポリヌクレオチドは発現制御エレメント、例えば複製起点、プロモーター、エンハンサー、または宿主細胞において本発明のポリヌクレオチドの発現を駆動する他の調節エレメントなどを含んでいる発現ベクターにクローニングされてもよい。発現ベクターは、例えば、pBR322、pUC、もしくはColElなどのプラスミド、またはアデノウイルス2型ベクターもしくは5型ベクターなどのアデノウイルスベクターであってもよい。任意に、限定するものではないがシンドビスウイルス、サルウイルス40、アルファウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ならびにサイトメガロウイルスおよびレトロウイルスベクター、例えば、マウス肉腫ウイルス、マウス乳癌ウイルス、モロニーマウス白血病ウイルス、およびラウス肉腫ウイルスを含めて、他のベクターも使用され得る。MCおよびMC1、バクテリオファージ、ファージミド、酵母人工染色体、細菌人工染色体、ウイルス粒子、ウイルス様粒子、コスミド(λファージcos部位に挿入したプラスミド)およびレプリコン(細胞において自らの制御のもと、複製することができる遺伝因子)などのミニ染色体も用いてもよい。
【0065】
発現制御配列に作動可能に連結されているポリヌクレオチドを調製し、それらを宿主細胞中で発現させるための方法は、当該技術分野において周知である。例えば、米国特許第4,366,246号を参照のこと。本発明のポリヌクレオチドは、1つ以上の発現制御エレメントの付近にまたは近接して位置する時、作動可能に連結されており、これがポリヌクレオチドの転写および/または翻訳を指示する。
【0066】
本発明のポリヌクレオチドは、例えばプローブまたはプライマー、例えばPCRプライマーとして、生物学的サンプルなどの試験サンプル中のE.canisのポリヌクレオチドの存在を検出するために用いてもよい。プローブとは、例えば、ハイブリダイゼーションを通じて、典型的には配列特異的な方式で標的核酸と相互作用し得る分子である。プライマーとは、酵素的操作を支持し得、かつ酵素的操作が生じるように標的核酸とハイブリダイズし得る1サブセットのプローブである。プライマーは、酵素的操作を邪魔しない当該分野で利用可能なヌクレオチドまたはヌクレオチドの誘導体もしくはアナログの任意の組み合わせから作製され得る。
【0067】
プローブまたはプライマーは、例えば、配列番号22〜33に示されるポリペプチドをコードする約10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100またはそれ以上連続するヌクレオチドであってもよい。
【0068】
核酸のハイブリダイゼーションは、当該分野で周知である。典型的には、プローブは当該分野で利用可能なヌクレオチドまたはヌクレオチドの誘導体もしくはアナログの任意の組み合わせから作製され得る。このようなプローブおよびプライマーが有するE.canisのポリヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズする能力を、所定の試験サンプル中における相補配列の存在を検出するために利用することができる。本発明のポリヌクレオチドプローブおよびプライマーは、唾液、痰、血液、血漿、血清、尿、糞便、脳脊髄液、羊水、傷からの浸出液、または組織を含めた生物学的サンプルなどの試験サンプル中で相補配列とハイブリダイズできる。サンプル由来のポリヌクレオチドは、例えば、ゲル電気泳動もしくは他のサイズ分離技術に供してもよいし、またはサイズ分離なしで固定化してもよい。ポリヌクレオチドプローブまたはプライマーを標識してもよい。適した標識、ならびにプローブおよびプライマーを標識するための方法は、当該技術分野において公知であり、これらとしては、例えば、ニックトランスレーションまたはキナーゼにより取り込まれた放射性の標識、ビオチン標識、蛍光標識、化学発光標識、生物発光標識、金属キレート標識、および酵素標識が挙げられる。サンプル由来のポリヌクレオチドを、適切なストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下で、プローブまたはプライマーと接触させる。
【0069】
適用次第で、多様なハイブリダイゼーション条件を用いて、標的配列に対するプローブまたはプライマーの選択性の様々の程度を得ることができる。高選択性が要求される適用のためには、低塩濃度および/または高温条件など、例えば約50℃〜約70℃の温度で約0.02M〜約0.15Mの塩濃度により提供されるような、比較的高いストリンジェンシーの条件を用いてもよい。低選択性が要求される適用のためには、低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件を用いてもよい。例えば約20℃〜約55℃にわたる温度で約0.14M〜約0.9Mの塩濃度。プローブまたはプライマーと試験サンプル由来の相補的なポリヌクレオチドとを含んでいるハイブリダイズした複合体の存在によって、このサンプル中にE.canisまたはE.canisのポリヌクレオチドが存在することが示される。
【0070】
抗体
本発明の抗体は、本発明のE.canisポリペプチドに特異的に結合する抗体分子、本発明の変異体ポリペプチド、またはそのフラグメントである。本発明の抗体は、エーリキア・カニスポリペプチドに特異的、例えば、配列番号10、22〜33の1つ以上に特異的な抗体であり得る。本発明の抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体(scFV)、または抗体の抗原結合フラグメントであってもよい。抗体の抗原結合フラグメントは、インタクトな抗体の抗原結合部位または可変領域を含んでいる、インタクトな抗体の抗原結合部分であって、この部分はインタクトな抗体のFc領域の定常重鎖ドメインを含まない。抗原結合フラグメントの例としては、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)2、およびFvフラグメントが挙げられる。
【0071】
本発明の抗体は、任意の抗体クラス、例えばIgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEであってもよい。抗体またはそれらのフラグメントは、本発明のポリペプチドのエピトープに結合する。抗体は、適切な実験動物においてインビボで、または組換えDNA技術を用いてインビトロで作製され得る。抗体を調製し特徴付けるための方法は、当該技術分野において周知である。例えば、Dean,Methods Mol.Biol.80:23〜37(1998),Dean,Methods Mol.Biol.32:361〜79(1994),Baileg,Methods Mol.Biol.32:381〜88(1994),Gullick,Methods Mol.Biol.32:389〜99(1994),Drenckhahn et al.Methods Cell.Biol.37:7〜56(1993),Morrison,Ann.Rev.Immunol.10:239〜65(1992),Wright et al.Crit.Rev.Immunol.12:125〜68(1992)を参照のこと。例えば、ポリクローナル抗体は、本発明のポリペプチドをヒトまたは他の霊長類、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヤギ、ブタ、イヌ、ウシ、ヒツジ、ロバもしくはウマなどの動物に投与することにより作製される。免疫された動物から血清が集められ、抗体は、例えば、硫酸アンモニウムを用いた沈降に続いてアフィニティクロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーによって血漿から精製される。ポリクローナル抗体を作製、加工するための技術は、当該技術分野において公知である。
【0072】
「特異的に結合」または「特異的な」とは、第1の抗原、例えば、E.canisのポリペプチドが本発明の抗体を認識し、他の非特異的な分子に対してよりも大きい親和性でもって結合することを意味する。「特異的に結合」または「特異的な」とはまた、第1の抗体、例えば、配列番号22〜33に対して産生された抗体が配列番号22〜33を認識し、他の非特異的な分子に対してよりも大きい親和性でもって結合することを意味する。非特異的な分子とは、第1の抗原と共通のエピトープを共有しない抗原である。本発明の好ましい実施形態では、非特異的な分子は、Ehrlichia sp.由来ではなく、詳細にいえばエーリキア・シャフェンシス(Ehrlichia chaffeensis)由来でも、またはエーリキア・カニス由来でもない。「Ehrlichia sp.」とは、Ehrlichia属の全ての種をいう。例えば第一の抗原(例えば、ポリペプチド)に対して産生された抗体であって非特異的な抗原に対してよりも効率的に結合する抗体は、第一の抗原に対して特異的に結合すると記載することができる。一実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合部分は、107l/molまたはそれ以上の結合親和性Kaをもって結合する場合、配列番号2、4、6、8、10、12、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29のポリペプチドまたはそのフラグメントに特異的に結合する。特異的な結合は、当該技術分野において周知の方法論を用いて、例えば、酵素結合免疫測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、またはウエスタンブロットアッセイを用いて試験することができる。
【0073】
本発明の抗体は、(a)配列番号22〜33またはそれらの抗原結合フラグメントに対する結合について参照抗体と競合するか;(b)配列番号22〜33またはその抗原結合フラグメントが、参照抗体と同じエピトープに対して結合するか;(c)配列番号22〜33またはその抗原結合フラグメントに対して、参照抗体と実質的に同じKdでもって結合するか;および/または(d)配列番号22〜33またはそのフラグメントと、参照抗体と実質的に同じ解離速度(off rate)で結合する抗体およびその抗原結合フラグメントを包含し、ここでこの参照抗体は、配列番号22〜23のポリペプチドまたはそれらの抗原結合フラグメントに対して、107l/モル以上の結合親和性Kaでもって特異的に結合する抗体または抗原結合フラグメントである。
【0074】
さらに、本発明のポリペプチド上に存在するエピトープに対するモノクローナル抗体も容易に作製され得る。例えば、本発明のポリペプチドで免疫されたマウスなどの哺乳動物由来の正常なB細胞を、例えばハイブリドーマを作製するためにHAT感受性マウスミエローマ細胞と融合してもよい。E.canis特異的な抗体を作製するハイブリドーマは、RIAまたはELISAを用いて同定することができ、半流動性の寒天でのクローニング、または限界希釈法により単離することができる。E.canis特異的な抗体を産生するクローンは、さらに1回のスクリーニングにより単離される。モノクローナル抗体は、標準的な技術を用いて、例えば、本発明のポリペプチドのマイクロタイタープレートへの結合、およびELISAアッセイによるモノクローナル抗体の結合の測定によって、特異性についてスクリーニングされ得る。モノクローナル抗体を作製し、加工する技術は、当該技術分野において公知である。例えば、Kohler & Milstein,Nature,256:495(1975)を参照のこと。モノクローナル抗体の特定のアイソタイプは、最初の融合からの選択によって直接的に調製してもよいし、またはクラススイッチ変異体を単離するための同胞選択技術を用いることによって、異なるアイソタイプのモノクローナル抗体を分泌する親のハイブリドーマから二次的に調製してもよい。Steplewski et al.,P.N.A.S. U.S.A. 82:8653 1985,Spria et al.,J.Immunolog.Meth.74:307,1984を参照のこと。本発明のモノクローナル抗体は、組換えモノクローナル抗体であってもよい。例えば、米国特許第4,474,893号、米国特許第4,816,567号を参照のこと。本発明の抗体はまた、化学的に作成することもできる。例えば、米国特許第4,676,980号を参照のこと。
【0075】
本発明の抗体は、キメラ(例えば、米国特許第5,482,856号を参照のこと)、ヒト化抗体(例えば、Jones et al.,Nature 321:522(1986);Reichmann et al.,Nature 332:323(1988);Presta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593(1992)を参照のこと)であっても、またはヒト抗体であってもよい。ヒト抗体は、例えば、直接の不死化、ファージディスプレイ、トランスジェニックマウス、またはトリメラ(Trimera)の方法論(例えば、Reisener et al.,Trends Biotechnol.16:242〜246(1998)を参照のこと)によって作製され得る。
【0076】
E.canis抗原(例えば、配列番号2、4、6、8、10、12、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33に示されるE.canisポリペプチド)に特異的に結合する抗体は、ヒトまたはイヌなどのE.canisに感染した動物由来のサンプル、例えば、血清、血液、血漿、糞便、細胞、組織、尿、または唾液サンプルなどのサンプル中のE.canisまたはE.canis抗原の存在を検出するために特に有用である。E.canisまたはE.canis抗原のイムノアッセイは、1つの抗体を利用してもよいし、またはいくつかの抗体を利用してもよい。E.canisまたはE.canis抗原のイムノアッセイは、例えば、E.canisエピトープに特異的なモノクローナル抗体、1つのE.canisポリペプチドのエピトープに特異的なモノクローナル抗体、異なるE.canisポリペプチドのエピトープに特異的なモノクローナル抗体、同じE.canis抗原に特異的なポリクローナル抗体、異なるE.canis抗原に特異的なポリクローナル抗体の組み合わせ、またはモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体の組み合わせを用いてもよい。イムノアッセイのプロトコールは、例えば、標識した抗体を用いる、例えば、競合、直接反応、またはサンドイッチ型アッセイに基づいてもよい。本発明の抗体は、例えば蛍光、化学発光、放射活性、酵素、コロイド金属、放射性同位体、および生物発光の標識などの、当該技術分野において公知の任意の型の標識で標識され得る。
【0077】
本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントを支持体に結合させて、E.canisまたはE.canis抗原、例えば、E.canisのDIVA抗原またはE.canisのワクチン抗原の存在を検出するために用いてもよい。支持体としては、例えばガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然のおよび修飾したセルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、およびマグネタイト(magletite)が挙げられる。
【0078】
本発明の抗体は、さらにE.canis生物体、またはE.canis抗原をイムノアフィニティカラムにより単離するために用いることができる。この抗体は、この抗体が免疫選択活性を保持するように、例えば、吸収によりまたは共有結合により固相支持体に固定できる。必要に応じて、抗体の抗原結合部位がアクセス可能なままであるように、スペーサー基を含めてもよい。固定化された抗体は、唾液、血清、痰、血液、尿、糞便、脳脊髄液、羊水、創傷浸出液、または組織を含む生物学的サンプルなどのサンプル由来のE.canis生物体、またはE.canis抗原に結合するために用いてもよい。結合したE.canis生物体、またはE.canis抗原は、例えばpHの変化によりカラムのマトリクスから回収される。
【0079】
本発明の抗体は、免疫局在性の研究において、多様な細胞事象または生理的条件の間に本発明のポリペプチドの存在および分布を分析するために、用いることができる。抗体はまた、受動免疫に関与する分子を同定するため、および非タンパク抗原の生合成に関与する分子を同定するためにも用いられ得る。このような分子の同定は、ワクチン開発において有用であり得る。例えばモノクローナル抗体および単鎖抗体を含めて本発明の抗体は、E.canisにより引き起こされる疾患の回復の経過をモニターするために用いることができる。動物からの試験サンプル中のE.canis抗原に特異的なE.canis抗体の増加または減少を測定することによって、疾患の回復を目的とした特定の治療計画が有効か否かを判定することができる。抗体は、例えばRIA、ELISA、またはウエスタンブロットアッセイなどの直接結合アッセイを用いて、検出および/または定量できる。
【0080】
検出
本発明の方法は、生物学的サンプル、環境的サンプル、または実験室サンプルなどの試験サンプル中のエーリキア・カニスの抗原またはエーリキア・カニスのポリヌクレオチドに特異的な抗体または抗原結合する抗体フラグメントを検出するために用いられ得る。試験サンプルは可能性として、Ehrlichia sp.のポリヌクレオチド、エーリキア・カニスのポリヌクレオチド、Ehrlichia sp.のポリペプチド、エーリキア・カニスのポリペプチド、Ehrlichia sp.に特異的な抗体および/またはエーリキア・カニスに特異的な抗体、無関係のポリヌクレオチドおよびポリペプチド、それらの組み合わせを含んでもよいし、上記を何も含まなくてもよい。生物学的サンプルは、例えばウマ、ネコ、イヌ、またはヒトなどの哺乳類由来の血清、血液、細胞、血漿、唾液、尿、糞便または組織を含んでもよい。試験サンプルは未処理であっても、沈殿させても、分画しても、分離しても、希釈しても、濃縮しても、または精製してもよい。
【0081】
一実施形態では、本発明の方法は、本発明の1つ以上のポリペプチドを、ポリペプチド/抗体の複合体、すなわち免疫複合体を形成できる条件下で、試験サンプルと接触させる工程を包含する。すなわち、本発明のポリペプチドは、サンプル中にあるE.canis抗原に特異的な抗体に特異的に結合する。本発明の一実施形態では、本発明の1つ以上のポリペプチドは、エーリキア・カニス抗原に特異的である抗体に特異的に結合し、かつ他の病原体由来の抗原、例えばエーリキア・シャフェンシスの抗原には特異的に結合しない。当業者は、抗体/ポリペプチドの複合体結合を検出するために用いられるアッセイおよび条件には詳しい。サンプル中のポリペプチドと抗体との間の複合体の形成が検出される。抗体/ポリペプチド複合体の形成によって、サンプル中にエーリキア・カニスのポリペプチドが存在することが示される。ポリペプチド/抗体の複合体の検出がなければ、エーリキア・カニスのポリペプチドはサンプル中に存在しないことが示される。
【0082】
本発明の抗体は、例えば、エーリキア・カニスの感染が疑われるヒトまたは動物から試験サンプルを得ることにより、エーリキア・カニス抗原の検出の方法に用いることができる。試験サンプルを、抗体−抗原複合体(すなわち、免疫複合体)を形成できる条件下で本発明の抗体と接触させる。当業者は、抗原/抗体複合体の形成を可能にし、かつ適切である条件を承知している。抗体−抗原複合体の量は、当該技術分野において公知である方法論により決定できる。陰性コントロールのサンプル中で形成されるよりも高レベルであれば、エーリキア・カニス抗原の存在を示している。陰性コントロールサンプルとは、なんらエーリキア・カニスのポリペプチドを含まないサンプルである。本発明の一実施形態では、陰性コントロールは、Ehrlichia sp.のポリペプチドを含まない。本発明の一実施形態では、抗体は、エーリキア・カニスの抗原に特異的であって、他の病原体由来の抗原、例えば、エーリキア・シャフェンシスの抗原などには特異的ではない。あるいは、本発明のポリペプチドを、試験サンプルと接触させてもよい。陽性の試験サンプル中のエーリキア・カニスに特異的な抗体は、適した条件化で抗体−抗原複合体を形成するであろう。抗体−抗原複合体の量は、当該技術分野において公知の方法により決定され得る。
【0083】
本発明の一実施形態において、エーリキア・カニスの感染は、被験体中で検出され得る。生物学的サンプルは、この被験体から得られる。配列番号22〜33を含んでいる1つ以上の精製されたポリペプチド、または本発明の他のポリペプチドを、ポリペプチド/抗体複合体の形成を可能にする条件下で生物学的サンプルと接触させる。このポリペプチド/抗体複合体が検出される。このポリペプチド/抗体複合体の検出によって、エーリキア・カニスに特異的な抗体が存在することが示される。ポリペプチド/抗体複合体の検出がなければ、この哺乳動物は、エーリキア・カニスに特異的な抗体を有していないことが示される。
【0084】
本発明の一実施形態では、本発明のイムノアッセイによって検出されるエーリキア・カニス抗体はIgG、IgM、IgA、IgDまたはIgEである。本発明の別の実施形態では、エーリキア・カニス抗原を検出するために用いられる抗体は、IgG、IgM、IgA、IgDまたはIgEである。
【0085】
本発明の一実施形態では、エーリキア・カニスの感染は、被験体がエーリキア・カニスに感染した約5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日以上後でその被験体において検出できる。本発明の一実施形態では、エーリキア・カニス感染は、被験体がエーリキア・カニス感染した後約21日、20日、19日、18日、17日、16日、15日、14日、13日、12日、11日、10日、9日、8日、7日、6日、5日未満で検出できる。
【0086】
本発明の一実施形態では、抗体に結合している酵素複合体などの指示薬が検出可能な反応を触媒する場合、ポリペプチド/抗体の複合体が検出される。必要に応じて、シグナル生成化合物を含む指示薬を、ポリペプチド/抗体/指示薬の複合体を形成できる条件下で、ポリペプチド/抗体の複合体に適用することができる。このポリペプチド/抗体/指示薬の複合体が検出される。必要に応じて、ポリペプチドまたは抗体は、ポリペプチド/抗体の複合体が形成される前に指示薬で標識してもよい。この方法は、必要に応じて陽性コントロールまたは陰性コントロールを含んでもよい。
【0087】
本発明の一実施形態において、本発明の1つ以上の抗体を、固相または基板に結合させる。本発明のポリペプチドを含んでいるタンパク質を潜在的に含む試験サンプルを、基板に加える。本発明のポリペプチドに特異的に結合する1つ以上の抗体を加える。この抗体は、固相で使用したものと同じ抗体であってもよく、または異なる供給源もしくは種由来の抗体であってもよく、さらに酵素複合体などの指示薬と結合させてもよい。洗浄の工程は、それぞれの添加の前に行ってもよい。発色団または酵素の基質を加え、発色させてもよい。呈色反応を停止し、例えば分光光度計を用いて色を定量してもよい。
【0088】
本発明の別の実施形態において、本発明の1つ以上の抗体を、固相または基板に結合させる。本発明のポリペプチドを含んでいるタンパク質を潜在的に含む試験サンプルを、基板に加える。本発明のポリペプチドに特異的に結合する二次抗−種抗体を加える。これらの二次抗体は、固相の抗体とは異なる種由来である。二次抗体に特異的に結合し、固相の抗体に特異的に結合しない三次抗−種抗体を加える。三次抗体は、酵素コンジュゲートなどの指示薬を含んでもよい。洗浄の工程は、それぞれの添加の前に行ってもよい。発色団または酵素の基質を添加し、発色させることができる。呈色反応を停止し、例えば分光光度計を用いて色を定量することができる。
【0089】
本発明のアッセイとしては、限定するものではないが、競合、直接反応、またはサンドイッチ型アッセイに基づくものを包含し、これには、限定するものではないが、酵素結合免疫測定法(ELISA)、ウエスタンブロット、IFA、ラジオイムノアッセイ(RIA)、赤血球凝集(HA)、蛍光偏光免疫測定法(FPIA)、およびマイクロタイタープレートアッセイ(マイクロタイタープレートの1つ以上のウェルにおいて行われる任意のアッセイ)を包含する。本発明のアッセイの1つは、逆相クロマトグラフィー結合アッセイ、例えばSNAP(登録商標)アッセイを含む。例えば、米国特許5,726,010号を参照のこと。
【0090】
アッセイは固相もしくは基板を用いてもよく、または免疫沈降もしくは固相を利用しない任意の他の方法によって行ってもよい。固相または基板が用いられる場合には、本発明の1つ以上のポリペプチドを直接または間接的に、マイクロタイターウェル、磁性ビーズ、非磁性ビーズ、カラム、マトリックス、膜、合成もしくは天然の繊維からなる繊維性のマット(例えばガラス、またはセルロースを基にした材料、またはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどの熱可塑性ポリマー)、微粒子材料(例えばガラス、または多様な熱可塑性ポリマー)から構成される焼結構造、またはニトロセルロース、ナイロン、ポリスルホン等(一般に天然に合成される)から構成されるキャスト膜フィルムなどのような、固相支持体または基板に結合させる。本発明の一実施形態では、基板は、一般に多孔性ポリエチレンとして公知のポリエチレンの焼結した微粒子であり、これには、例えばChromex Corporation(Albuquerque,NM)の10〜15ミクロンの多孔性ポリエチレンがある。これらの基板材料のすべては、フィルム、シートもしくはプレートなどの適した形態で用いることが可能であり、または紙、ガラス、プラスチックフィルム、もしくは布などの適当な不活性支持体にコーティングされても、結合されても、ラミネート加工されてもよい。固相上にペプチドを固定化するために適した方法としては、イオン相互作用、疎水性相互作用、共有結合性相互作用などが挙げられる。分析物捕獲試薬がサンプル、希釈および/または洗浄の手順によって洗い流されないように、デバイスまたは固相支持体上へ、1つ以上の分析物捕獲試薬、例えば、E.canisポリペプチドの固定を行う。1つ以上の分析物捕獲試薬を物理的吸着によって(すなわち、化学的リンカーの使用なしに)、または化学的結合によって(すなわち、化学的リンカーの使用によって)表面に対して結合してもよい。化学的結合は、表面上の捕獲試薬のさらに強力な結合を生じ、かつ表面結合分子の規定された方向および高次構造を得ることができる。
【0091】
1種のアッセイ形式では、1つ以上のポリペプチドを固相または基板上にコーティングしてもよい。抗エーリキア・カニス抗体またはその抗原結合フラグメントを含んでいることが疑われる試験サンプルを、試験サンプル中の抗体と固相のポリペプチドとの、またはエーリキア・カニスに特異的な抗体とコンジュゲートさせた指示薬の化合物と固相のポリペプチドとの抗原/抗体複合体が形成されるのに十分な時間および条件の下で、エーリキア・カニスに特異的な抗体または抗体フラグメントとコンジュゲートさせたシグナル生成化合物を含んでいる指示薬とともにインキュベートする。抗エーリキア・カニス抗体とコンジュゲートさせた指示薬の固相への結合の減少は、定量的に測定することができる。例えば、確認済みのエーリキア・カニス陰性の試験サンプルから生じるシグナルに比較した、シグナルの測定可能な減少によって、この試験サンプル中に抗エーリキア・カニス抗体が存在することが示される。この種のアッセイで、試験サンプル中の抗エーリキア・カニス抗体の量を定量することができる。
【0092】
別の種のアッセイ形式において、本発明の1つ以上のポリペプチドは、支持体または基板上にコーティングされる。本発明のポリペプチドは、指示薬とコンジュゲートされて、試験サンプルに加えられる。この混合物は支持体または基板に適用される。もしもエーリキア・カニスに特異的な抗体が試験サンプル中に存在するならば、それらは指示薬とコンジュゲートされた1つ以上のポリペプチドおよび支持体上に固定された1つ以上のポリペプチドに結合するであろう。次に、ポリペプチド/抗体/指示薬の複合体が検出され得る。この種のアッセイは、試験サンプル中の抗エーリキア・カニス抗体の量を定量することができる。
【0093】
別の種のアッセイ形式において、本発明の1つ以上のポリペプチドを、支持体または基板上にコーティングする。試験サンプルを支持体または基板に適用して、インキュベートする。サンプル由来の結合していない成分を、洗浄液による固相支持体の洗浄によって洗い流す。もしもエーリキア・カニスに特異的な抗体が試験サンプル中に存在するならば、それらは固相上にコーティングされたポリペプチドに結合するであろう。このポリペプチド/抗体複合体は、指示薬とコンジュゲートされている二次種−特異的抗体を用いて検出され得る。次に、ポリペプチド/抗体/抗−種抗体指示薬の複合体が検出され得る。この種のアッセイは、試験サンプル中の抗エーリキア・カニス抗体の量を定量することができる。
【0094】
本発明の別の実施形態では、側方流動アッセイに適切なデバイスが提供される。例えば、試験サンプルをフロー・マトリックスに最初の領域(サンプル適用ゾーン)で添加する。この試験サンプルはフロー・マトリックスの第二の領域へ毛細管現象によって流体流路中、運ばれ、ここで標識は、試験サンプル中の分析物と結合して第一の複合体を形成し得る。この第一の複合体は、フロー・マトリックスの第三領域に運ばれて、ここでE.canisのポリペプチドは離れた位置に固定される。第二の複合体が、固定されたポリペプチドと、サンプル由来の抗体を含んでいる第一の複合体との間で形成される。例えば、金ゾル粒子およびE.canis抗体に結合したE.canisポリペプチドを含んでいる第一の複合体は、第二の固定されたE.canisポリペプチドと、またはE.canis抗体に対する第二の抗体と、特異的に結合して第二の複合体を形成する。第二の複合体の一部である標識は、直接可視化され得る。
【0095】
別の局面では、本発明は、本発明のデバイスに適用する前に試験サンプルと混合され得る1つ以上の標識された結合試薬を含む。この場合、デバイス中で特定の結合試薬パッド上に沈着されて乾燥された、標識された特定の結合試薬を有している必要はない。標識された特定の結合試薬は、試験サンプルに加えられてもまたはデバイス上に事前に沈着されていても、例えば、E.canisの抗体に特異的に結合する標識された抗体であってよい。
【0096】
E.canisのDIVA抗原またはE.canisのワクチン抗原、例えば、ポリペプチドは、反応ゾーン(固相)中の固定された分析物捕獲試薬であってもよい。第二の分析物捕獲試薬、例えば、標識に結合されている抗IgGまたは抗IgM抗体は、サンプルがデバイスに付加される前にサンプルに添加されてもよいし、または第二の分析物捕獲試薬はデバイスに組み込まれてもよい。例えば、標識された特定の結合試薬は、サンプル適用ゾーンと固相との間の液体連絡をもたらす流体流路上に沈着し乾燥させてもよい。標識された特定の結合試薬と流体サンプルとの接触によって、標識された特定の結合試薬の溶解が生じる。
【0097】
このデバイスはまた、反応ゾーン(固相)から未結合の物質(例えば、未反応の流体サンプルおよび未結合の特異的結合試薬)を輸送する液体試薬を備えてもよい。液体試薬は、洗浄試薬であって、反応ゾーンから未結合の物質を取り除くようにのみ作用してもよいし、または検出試薬を含み、未結合の物質を取り除くようにかつ分析物検出を容易にするように機能してもよい。例えば、酵素にコンジュゲートされた特定の結合試薬の場合には、検出試薬としては、反応性ゾーンでの酵素−抗体コンジュゲートとの反応の際に検出可能なシグナルを生じる基質が挙げられる。放射性、蛍光または光吸収分子にコンジュゲートされた標識された特異的な結合試薬の場合、この検出試薬は、未結合の標識試薬を洗い流すことによって反応ゾーンでの複合体形成の検出を容易にする単なる洗浄溶液として機能する。
【0098】
2つ以上の液体試薬がデバイス中に存在してもよく、例えば、デバイスは、洗浄試薬として機能する液体試薬、および検出試薬として機能しかつ分析物検出を容易にする液体試薬を備えてもよい。
【0099】
液体試薬はさらに、限定量の「インヒビター」、すなわち、検出可能な最終生成物の発生をブロックする物質を含んでもよい。限定量とは、ほとんどまたは全ての過剰な未結合の物質が第二の領域から輸送され、その時点で検出可能な最終生成物が産生されるまで、最終生成物の発生をブロックするのに十分なインヒビターの量である。
【0100】
ポリペプチド/抗体の複合体またはポリペプチド/抗体/指示薬の複合体の形成は、例えば、放射測定、比色定量、蛍光定量、サイズ分離、または沈殿法により検出され得る。必要に応じて、ポリペプチド/抗体複合体の検出は、シグナル生成化合物を含んでいる指示薬とカップリングされている二次抗体の添加により行われる。ポリペプチド/抗体複合体と会合した、シグナル生成化合物(標識)を含んでいる指示薬は、上述の方法を用いて検出することが可能で、これには、発色剤、酵素コンジュゲートなどの触媒、フルオレセインおよびローダミンなどの蛍光化合物、ジオキセタン、アクリジニウム、フェナントリジニウム、ルテニウムおよびルミノールなどの化学発光化合物、放射活性元素、直接可視化する標識、ならびに補助因子、インヒビター、磁性粒子などが挙げられる。酵素コンジュゲートの例としては、アルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、βガラクトシダーゼなどが挙げられる。特定の標識の選択は決定的なものではないが、それ自体で、または1つ以上の追加の基質と組み合わせて、シグナルを生成することができるであろう。
【0101】
複合体の形成は、試験サンプル中に抗エーリキア・カニス抗体が存在することを示す。従って、本発明の方法は、動物におけるエーリキア・カニスの感染を診断するために用いられ得る。
【0102】
本発明の方法は、試験サンプル中の抗エーリキア・カニス抗体の量または分量も示すことができる。酵素コンジュゲートなどの多くの指示薬を用いると、存在する抗体の量は生成されるシグナルに比例する。試験サンプルの種類によって、適した緩衝液で希釈することができ、濃縮することができ、またはいかなる操作もなしで固相に接触させることができる。例えば、抗体の存在および/または存在する抗体の量を決定するために、通常、あらかじめ希釈されている血清もしくは血漿サンプル、または尿などの濃縮された試料を試験することが好ましい。
【0103】
本発明はさらに、サンプル中の抗エーリキア・カニス抗体もしくは抗原結合する抗体フラグメント、またはエーリキア・カニスのポリペプチドを検出するためのアッセイキット(例えば製品)を含む。キットは、本発明の1つ以上のポリペプチド、および試験サンプル中の抗エーリキア・カニス抗体または抗体フラグメントへのこのポリペプチドの結合を決定するための手段を備える。キットまたは製品はまた、本発明の1つ以上の抗体または抗体フラグメント、およびサンプル中のエーリキア・カニスのポリペプチドへのこの抗体または抗体フラグメントの結合を決定するための手段を備えてもよい。キットは、本発明の1つ以上のポリペプチドまたは抗体を含んでいるデバイス、および1つ以上のポリペプチドまたは抗体を、例えば哺乳動物におけるエーリキア・カニス感染の同定のために使用するための説明書を備えてもよい。このキットは、このキットの1つ以上のポリペプチドまたは抗体が、エーリキア・カニス感染の同定のために使用され得ることを示すラベルを含むパッケージング材料も備えてもよい。当業者に公知である、緩衝液、安定化剤、陽性コントロール、陰性コントロール、検出試薬などの他の構成要素が、このような試験キットに備えられてもよい。本発明のポリペプチド、抗体、アッセイ、およびキットは、例えば、患者のエーリキア・カニス感染の個々の症例の診断、ならびにエーリキア・カニスの発生の疫学的な調査において有用である。種々の試薬の相対的な量は、そのアッセイの感度を実質的に最適化する溶液中での試薬濃度が得られるように変化されてもよい。特にその試薬は、通常は凍結乾燥された乾燥粉末として提供されてもよく、この溶解の際に、サンプルと組み合わせるための適切な濃度を有する試薬溶液が得られる。
【0104】
本発明のポリペプチドおよびアッセイを他のポリペプチドやアッセイと組み合わせて、他の生物とともにエーリキア・カニスの存在を検出することができる。例えば、本発明のポリペプチドおよびアッセイは、イヌ糸状虫、および/またはボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)および/またはエーリキア・シャフェンシスおよび/またはアナプラズマ・プラチス(Anaplasma platys)および/またはアナプラズマ・ファゴサイトフィルム(Anaplasma phagocytophilum)を検出する試薬と組み合わせてもよい。
【0105】
本発明のポリヌクレオチドは、サンプル中のエーリキア・カニスのポリヌクレオチドの存在を検出するために用いられ得る。このポリヌクレオチドは、単純なハイブリダイゼーション反応によってサンプル中のエーリキア・カニスのポリヌクレオチドを検出するために用いてもよく、また例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、例えば、リアルタイムPCR反応で用いてもよい。本発明の方法および組成物はまた、エーリキア・シャフェンシスなどの他のEhrlichia sp.からエーリキア・カニスの存在を示差的に検出するために用いてもよい。
【0106】
PCRアッセイは、当該分野でかなり記載されており、これには例えば、米国特許第4,683,195号;米国特許第4,683,202号;米国特許第4,965,188号が挙げられる。一般には、ポリヌクレオチドプライマーは、標的核酸の変性された鎖にアニーリングされる。プライマー伸長産物が、ポリメラーゼによるデオキシヌクレオシド三リン酸の重合化によって形成される。次いでPCRは、反復性サイクルのテンプレート核酸変性、プライマーアニーリングおよび熱安定性ポリメラーゼの作用によるこのアニーリングされたプライマーの伸長を包含する。このプロセスは、試験サンプル中の標的エーリキア・カニス核酸の指数関数的な増幅を生じ、これによってサンプル中で極めて低濃度で存在する標的ポリヌクレオチドの検出が可能になる。
【0107】
リアルタイムPCRアッセイは、シグナル、例えば、蛍光レポーターシグナルの検出に基づく。このシグナルは、反応中のPCR産物の量に直接比例して増大する。リアルタイムPCRは、進行中の増幅反応の漸進的変化をモニター可能にさせる任意の増幅技術である。Quantitation of DNA/RNA Using Real−Time PCR Detection,Perkin Elmer Applied Biosystems(1999);PCR Protocols(Academic Press New York,1989)を参照のこと。各々のサイクルで蛍光発光の量を記録することによって、PCR産物の量の第一の有意な増大が、標的テンプレートの最初の量に関連する対数期の間のPCR反応をモニターすることが可能になる。核酸標的の最初のコピー数が多いほど、蛍光の有意な増大がより早く観察される。
【0108】
本発明の一実施形態では、試験サンプル中のエーリキア・カニスポリヌクレオチドを検出および/または定量するための方法が提供される。センスプライマーおよびアンチセンスプライマーを、ポリメラーゼ連鎖反応に適切な条件下で試験サンプルに添加してもよい。このプライマーは、エーリキア・カニスポリヌクレオチドとハイブリダイズして、その結果エーリキア・カニスポリヌクレオチドが試験サンプル中に存在する場合、増幅産物が形成される。増幅産物を検出して、エーリキア・カニスポリヌクレオチドの存在および/または量を決定する。増幅産物は、ポリメラーゼ連鎖反応に適切な条件下でエーリキア・カニスポリヌクレオチド配列とハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブを用いて検出できる。この増幅産物は、プローブ由来の検出シグナルを測定すること、およびこの検出シグナルを定量標準由来の第二のプローブ検出シグナルに対して比較することによって定量され得る。定量標準は、試験サンプルと平行して抽出できる。
【0109】
E.canisにより引き起こされる疾患の治療、回復、または予防の方法
本発明の一実施形態では、本発明のDIVAポリペプチド、ポリヌクレオチド、または抗体は、E.canisにより引き起こされる疾患の治療、回復、または予防のために用いられ得る。しかし、DIVAポリペプチドがE.canisにより引き起こされる疾患の治療、回復、または予防のために用いられるならば、その後には、これを感染動物、非ワクチン接種動物およびワクチン接種した動物の検出および識別のためのDIVAポリペプチドとして用いることはできない。なぜなら、ワクチン接種された動物の免疫系は、ワクチン接種のために用いられたDIVA抗原を認識し得るからである。しかし、E.canisにより引き起こされる疾患の治療、回復、または予防のために用いられるDIVAポリペプチドに対する抗体と交差反応しないDIVAポリペプチドは、E.canisのDIVA抗原としてやはり用いられ得る。
【0110】
例えば、配列番号2またはそのフラグメントをワクチンとして用いるならば、配列番号4、6、8、10、12、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33またはそれらの組み合わせを、それらが配列番号2に特異的な抗体とは交差反応しない場合に、DIVAポリペプチドとして用いてもよい。現在のところ、市販のサブユニットE.canisワクチンでは配列番号10、22〜33は使用されておらず、配列番号10、22〜33は、丸ごとの不活性化されたE.canis細胞でワクチン接種された動物中のE.canis特異的な抗体を検出しない。従って、DIVAポリペプチドの選択は、現在のところ問題ではない。しかし、当業者はE.canisのワクチンの組成を承知している。市販のE.canisサブユニットワクチンが配列番号10、22〜33を含んでいるならば、当業者は、ワクチン接種の状況を識別するために配列番号10、22〜33の使用を回避し(必要であれば配列番号10、22〜33に特異的なE.canis抗体の産生に起因する)、代わりに他のE.canisのDIVA抗原を用いるであろう。
【0111】
従って、DIVAのポリペプチド、ポリヌクレオチド、および抗体は、2つの異なる方法で用いられ得る:(1)E.canisにより引き起こされる疾患または感染の治療、回復、または予防のための組成物として;ならびに(2)E.canisでワクチン接種:非ワクチン接種;感染または感染していない動物の検出および識別のためのE.canisのDIVA抗原として。
【0112】
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドおよび抗体は、E.canisにより引き起こされる疾患の治療、回復、または予防のために用いられる。例えば、本発明のモノクローナル抗体などの抗体またはそのフラグメントは、ヒトなどの動物に投与され得る。本発明の一実施形態において、抗体またはそれらのフラグメントは、薬学的に受容可能な担体を含んでいる医薬組成物の状態で動物に投与される。医薬組成物は、治療上有効量の抗体またはそのフラグメントを含む。治療上有効量とは、E.canis感染の症状を緩和するのに、または被験体中のE.canis生物体の量を減少するのに効果的な量である。
【0113】
本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、免疫原性の組成物中に存在してもよく、宿主における免疫応答を誘発するために用いてもよい。免疫原性の組成物は、動物において免疫応答を誘導することができる。本発明の免疫原性のポリペプチドまたはポリヌクレオチド組成物は、1つの結果としてエーリキア・カニス感染の影響を回復または予防する免疫応答が生じるように、動物の免疫系を感作するのに特に有用である。動物モデルにおける免疫応答の誘発は、例えば、至適投与量や投与経路等を決定するために有用となり得る。免疫応答の誘発は、エーリキア・カニスにより引き起こされる病気または感染を治療、予防、または回復するためにも用いられ得る。免疫応答は、体液性免疫応答もしくは細胞性免疫応答、またはそれらの組み合わせを含む。免疫応答は、例えばデフェンシン類の産生を促進することによる、全身の宿主応答の促進を含んでもよい。
【0114】
動物によるE canisに対する抗体価の生成は、感染からの防御および感染の排除において重要となり得る。ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの送達後の抗体価の検出および/または定量化は、抗体価の誘発に特に効果的であるエピトープを同定するために使用され得る。E.canisに対する強い抗体応答を担うエピトープは、種々の長さのE.canisポリペプチドに対する抗体を誘発することにより同定され得る。次に、特定のポリペプチドエピトープにより誘導された抗体を、例えば、ELISAアッセイを用いて試験して、どのポリペプチドが強い応答の生成に最も効果的なエピトープを含んでいるかを決定することができる。次に、これらのエピトープまたはエピトープをコードするポリヌクレオチドを含んでいるポリペプチドまたは融合タンパク質を構築し、これを用いて、強い抗体反応を誘発することができる。
【0115】
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、または抗体は、インビボで抗体を誘発するため、マウス、ウサギ、モルモット、マカク、ヒヒ、チンパンジー、ヒト、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコなどの哺乳動物に、またはニワトリもしくはアヒルなどの動物に投与され得る。ポリヌクレオチドの注入には、構成および修飾の単純性という実践上の利点がある。さらに、ポリヌクレオチドの注入は、結果的に宿主においてポリペプチドの合成をもたらす。したがって、ポリペプチドは、自然の翻訳後修飾、構造、および高次構造で宿主の免疫系に提示される。ポリヌクレオチドは、「裸のDNA」として被験体に送達してもよい。
【0116】
ポリヌクレオチド、ポリペプチド、または抗体の投与は、当該技術分野において公知である任意の手段により、例えば、筋肉内、静脈内、肺内、筋肉内、皮内、腹腔内、または皮下注射、エアロゾル、鼻腔内、注入ポンプ、座剤、粘膜、局所、および経口、例えば、生物学的弾道銃(「遺伝子銃」)を用いる注入により行うことができる。ポリヌクレオチド、ポリペプチド、または抗体は、経口投与用にタンパク質担体を伴ってもよい。免疫応答を誘発するために、投与方法の組み合わせを用いることもできる。抗体は、約0.5mgから約200mgの1日投与量で投与することができる。本発明の一実施形態においては、抗体は、約20から約100mgの1日投与量で投与される。
【0117】
治療用途の薬学的に受容可能な担体および希釈剤は当該技術分野において周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.(A.R.Gennaro ed.(1985))に記載されている。担体はそれ自体で宿主に対して有害な抗体の産生を誘導してはならない。そのような担体としては、限定するものではないが、大きなゆっくり代謝される高分子、例えばタンパク質、多糖類、例えば、ラテックス官能化SEPHAROSE(登録商標)、アガロース、セルロース、セルロースビーズなど、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、多量体アミノ酸、例えばポリグルタミン酸、ポリリジンなど、アミノ酸コポリマー、ペプトイド、リピトイド、および不活性な無毒性のウイルス粒子または細菌細胞が挙げられる。リポソーム、ハイドロゲル、シクロデキストリン、生物分解性ナノカプセル、および生物接着性材料もまた、本発明の組成物のための担体として用いることができる。
【0118】
本発明の組成物においては、薬学的に受容可能な塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、または硫酸塩などの無機塩、ならびに酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、または安息香酸塩などの有機酸の塩を用いることもできる。特に有用なタンパク質基質は、血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、免疫グロブリン分子、チログロブリン、オボアルブミン、破傷風トキソイド、および当業者に周知の他のタンパク質である。本発明の組成物はまた、液体または賦形剤、例えば、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、リンゲル溶液、ハンクス溶液、グルコース、グリセロール、デキストロース、マロデキストリン、エタノール等を単独でまたは組み合わせて、ならびに湿潤剤、乳化剤、浸透圧調節剤、界面活性剤、またはpH緩衝剤などの物質を含んでもよい。追加の活性な薬剤、例えば殺菌剤を用いてもよい。
【0119】
所望の場合には、リンパ球への免疫原の提示を改善する共刺激(副刺激)分子、例えばB7−1またはB7−2、またはサイトカイン、例えばMIP1α、GM−CSF、IL−2、およびIL−12を本発明の組成物に含めてもよい。必要に応じて、アジュバントを組成物に含めてもよい。アジュバントとは、特異的免疫応答を非特異的に増強させるために用いることができる物質である。一般に、アジュバントおよび本発明のポリペプチドを免疫系に提示する前に混合するか、または別々に提示するが、動物の同じ部位に提示する。アジュバントとしては、例えば、油性アジュバント(例えば、フロイント完全および不完全アジュバント)、無機塩(例えば、Alk(SO4)2;AlNa(SO4)2、AlNH4(SO4)、シリカ、ミョウバン、Al(OH)3、およびCa3(PO4)2)、ポリヌクレオチド(すなわち、PolyicおよびポリAU酸)、およびある種の天然物(例えば、結核菌由来のワックスD、ならびにコリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)、百日咳菌およびブルセラ属のメンバーに見いだされる物質)を挙げることができる。使用することができるアジュバントとしては、限定されないが、MF59−0、水酸化アルミニウム、N−アセチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノル−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(CGP11637)、nor−MDPと称される)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(CGP19835A、MTP−PEと称される)、およびRIBI(細菌から抽出した3つの成分、すなわちモノホスホリルリピドA、トレハロースジミコレートおよび細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)を2%スクアレン/TWEEN(登録商標)80のエマルジョン中に含む)が挙げられる。
【0120】
本発明の組成物は、摂取可能な錠剤、口腔内錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハ、注射可能な処方物、口腔洗浄液、歯磨剤などに製剤することができる。そのような組成物および製剤中の本発明の1つ以上のポリペプチド、ポリヌクレオチド、または抗体のパーセンテージは、単位重量の0.1%から60%まで変化し得る。
【0121】
ポリペプチド、ポリヌクレオチド、または抗体の投与によって、動物において免疫応答を誘発することができ、これは少なくとも1週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年またはそれ以上持続する。必要に応じて、最初の注射の1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年またはそれ以上の後に、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、または抗体を1回またはそれ以上ブースター投与することにより、動物において免疫応答を維持することができる。所望の場合には、共刺激分子またはアジュバントを、組成物の前に、後に、または一緒に投与することができる。
【0122】
ポリペプチド、ポリヌクレオチド、抗体、またはそれらの組み合わせを含む本発明の組成物は、用いられる特定の組成物と適合した方法で、および、例えば、ELISAにより検出して免疫応答を誘発するのに有効な量で投与する。ポリヌクレオチドは、哺乳動物、例えばヒヒ、チンパンジー、イヌ、またはヒトの筋肉内に、1ng/kg、10ng/kg、100ng/kg、1000ng/kg、0.001mg/kg、0.1mg/kg、または0.5mg/kgの投与量で注入することができる。ポリペプチドまたは抗体は、哺乳動物の筋肉内に、0.01、0.05、0.5、0.75、1.0、1.5、2.0、2.5、5または10mg/kgの投与量で注入することができる。
【0123】
ポリペプチド、ポリヌクレオチド、もしくは抗体、またはそれらの組み合わせは、E.canisに感染していない動物に投与してもよく、E.canisに感染した動物に投与してもよい。組成物中のポリヌクレオチド、ポリペプチド、または抗体の特定の用量は、多くの要因、例えば、限定するものではないが、組成物を投与する哺乳動物の種、年齢、性別、併用薬物、一般的健康状態、およびその組成物の投与様式によって異なる。本発明の組成物の有効量は、慣用的な実験のみを用いて容易に決定することができる。
【0124】
患者においてE.canis感染をモニタリングする方法も提供される。この方法は、本発明のポリペプチドを用いて第一の時点でE.canis感染を被っているかまたはE.canis感染のリスクのある患者由来の生体液のサンプル中の抗E.canis抗体のレベルを決定する工程を包含する。抗E.canis抗体のレベルは、1つ以上の異なる時点で患者由来の生物学的液体の1つ以上のサンプル中で決定される。抗E.canis抗体のレベルは、E.canis感染がモニターされるように異なる時点で決定する。抗E.canis抗体のレベルまたは量によって、処置もしくは治療の成功の指標、または感染の進行の指標が得られる。
【0125】
本明細書のいずれかに言及される全ての特許、特許出願、および他の化学的または技術的な文書は、その全体が参照によって本明細書に援用される。本明細書に例示的に記載されている発明は、本明細書に具体的に開示されていないいかなる要素(単数または複数)、限定(単数または複数)なしでも適切に実施することができる。従って、例えば、本明細書における各例において、「〜を含む」、「〜本質的になる」および「〜からなる」といういずれかの用語は、そのもとの意味を維持したまま、他の2つの用語と置き換えることができる。使用されている用語および表現は、説明の用語として用いるものであり、限定ではなく、そのような用語および表現の使用においては、示されかつ記載されている特徴またはその一部の等価物を排除することを意図するものではなく、特許請求される本発明の範囲内で種々の変更が可能であることが理解される。従って、本発明を実施形態によって詳細に開示してきたが、本明細書に開示される概念の任意の特徴、改変および変化が、当業者には実現可能であること、ならびにそのような変更および変化も詳細な説明および特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内であると考えられることが理解されるべきである。
【0126】
さらに、発明の特徴および局面がマーカッシュグループまたは他の代替グループの用語で記載されている場合、当業者は、本発明が、マーカッシュグループまたは他のグループの任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループに関してもまた記載されていることを認識するであろう。
【実施例1】
【0127】
イヌへの免疫のためのホルマリン不活性化E.canisの調製
E.canisは、文献中に記載される方法を用いてイヌ細胞培養中で増殖した。例えば、Breitschwerdt,Antimicrobial Agents and Chemotherapy,1998,Vol 42:362〜368を参照のこと。光学顕微鏡を用いて、030細胞はE.canisによる感染が80%より大きいと見積もられた。E.canis感染した細胞培養物を2リットル収集して、遠心分離して、そのペレットを保持して、7.31グラムの物質(湿重量)を得た。1.462グラム(その物質の重量の20%)という推定の乾燥重量によって、水が物質の重量の80%までを構成していると推定される。その細胞ペレットを、73mlの総容積についてPBS中で20mg/ml(乾燥重量)に再懸濁した。
【0128】
この再懸濁した細胞ペレットに、0.04%という最終ホルムアルデヒド濃度になるよう、0.73mlのホルマリン溶液を添加した(Sigma Catalog HT50−1−2ホルマリン溶液10%、中性に緩衝化)。この溶液を4℃で一晩撹拌した。この不活性化混合物を遠心して、細胞ペレットを保持した。そのペレットを250mlのPBSへの再懸濁によって洗浄した。その物質を遠心分離によって回収して、洗浄を1回繰り返した。
【0129】
その洗浄した細胞ペレットを73mlのPBS中に再懸濁した。そのサンプルを73スクリューキャップバイアルに分注して、−80℃で凍結した。各々のバイアルは、動物への免疫のための適切なアジュバントと組み合わせるために適切な20mg(乾燥重量)のホルマリン不活性化E.canis細胞培養物を含む。
【実施例2】
【0130】
2つの異なるアジュバントを用いるホルマリン不活性化E.canisの調製、E.canis抗原を用いるビーグル犬の免疫、およびSNAP(登録商標)3Dx(登録商標)を用いる免疫されたビーグル犬由来の血清の試験のためのプロトコール。
水酸化アルミニウムアジュバントを用いる抗原の調製は、当業者に周知の技術である。例えば、「Antibodies,A Laboratory Manual」,Cold Spring Harbor Press,1988,pp 99を参照のこと。
【0131】
イヌ(実験用ビーグル犬)への免疫のために、2セットの用量を、上記にように調製した水酸化アルミニウムアジュバントを用いて調製し、製造業者によって記載されるプロトコールを用いてRibiアジュバント(Corixa Corp.,Seattle WA)を用いて調製した。各々の用量は、約20mgのホルマリン不活性化E.canis細胞培養物(乾燥重量)を含んでいた。
【0132】
犬小屋で飼っている実験用ビーグル犬をE.canisホルマリン不活性化抗原での免疫のために選択した。各々2匹のイヌの2つの群;異なるアジュバントを用いる各々の群に、ホルマリン不活性化E.canis調製物(酸化アルミニウムまたはRibi)を投与した。0日目に4匹のイヌ全てが、SNAP(登録商標)3Dx(登録商標)診断、およびE.canis生物体を用いるウエスタンブロット分析の両方を用いて血清陰性であることを見出した。
【0133】
Covance Research Products Inc.のIACUC委員会は、実験用ビーグル犬の免疫のためのプロトコールを承認した。イヌに0日目、28日目および56日目にワクチン接種し、毎週1mlを採血してSNAP(登録商標)3Dx(登録商標)を用いてモニターした。全てのイヌに、肩甲骨背側(dorsoscapular)の領域に適切な試験品を皮下投与した。4匹の全ての動物は42日までにSNAP(登録商標)3Dx(登録商標)E.canisの試験で、陽性に血清転換した。生成物の採血は42日目および70日目に採取した(約50mlの血液で約25mlの血清が得られた)。
【0134】
図1は、実験用ビーグル犬のSNAP(登録商標)3Dx(登録商標)アッセイ評価を示す。SNAP(登録商標)デバイスは、製造業者によって記載されるとおり用いた。「プレ(pre)」サンプルは0日目からである。「ポスト(post)」サンプルは42日目からである。E.canis陽性のスポットは、42日のサンプルについて4匹全てのイヌで陽性になる。同様の結果が70日のサンプルで観察された。
【0135】
第三のアジュバント、BCG、(Calbiochem of EMD Biosciences,Inc.San Diego,CA)を含んでいる第三のワクチンを用いた実験で、同様の結果が明らかになった。第三のワクチンの調製は、以下を除いて上記のRibiアジュバントワクチンについて記載された調製と同一であった:1)ホルマリン不活性化が4℃で24時間であった、2)1mgのBCGを添加した。ワクチン接種スケジュールは0日目、14日目であって、毎週採血をE.canisのタンパク質との反応性についてアッセイした。
【実施例3】
【0136】
PERCOLL(登録商標)勾配を用いる細胞培養物からのE.canisの濃縮
DNA単離およびウエスタンブロット分析のために、E.canisを、PERCOLL(登録商標)密度勾配を用いて細胞培養物から濃縮した。Ehrlichiaなどの細胞培養物から細胞内病原体を単離するプロセスは、当業者に周知の技術である。例えば、Akira et al.(1982)Purification of Rickettsia tsutsugamushi by PERCOLL(登録商標)density gradient centrifugation,Microbiol.Immunol.,26:321〜328を参照のこと。
【0137】
典型的なE.canis濃縮は、1.5リットルの感染した細胞培養物(上記を参照のこと)で開始した。その細胞を6,000xgで遠心分離して、細胞ペレットを保持して上清を廃棄した。細胞ペレットを20mlのPBS中に再懸濁して、その後に2回目の遠心分離をした。その上清を廃棄して、上清を保持した。次いでそのペレットを20mlのPBS中に再懸濁して、Branson超音波処理器を用いて20kHz、1.5のパワー設定で5秒間超音波処理した。次いでそのサンプルを500xgで5分間遠心分離して、大きい砕片をペレットにした。
【0138】
PERCOLL(登録商標)を32%という最終濃度まで上清に添加した(4.5mlのPERCOLL(登録商標)と10mlのサンプル)。このサンプルを、70.1Tiの超遠心分離ローターと適合したOak Ridgeチューブ中にロードして、63,000xgで30分間遠心分離した。不透明なバンドを、パスツールピペットを用いて収集した。不透明なバンドは、Ehrlichiaが高度に濃縮されている(収集したサンプルを光学顕微鏡を用いて確認した)。PBSで1:4希釈した後、サンプルをアリコートして12,000xgで遠心分離した。その上清を廃棄して、Ehrlichiaのペレットを−80℃で保管した。
【実施例4】
【0139】
ワクチン接種したおよび感染したイヌ由来の血清または血漿のウエスタンブロットによる試験
1次元のSDS−PAGEゲル分析および2次元のゲル分析(1次元の等電点電気泳動、2次元のSDS−PAGE)の使用は、当業者に周知である。例えば、Current Protocols in Molecular Biology,eds.F.M.Ausubel et al.,John Wiley & Sons Inc.,1997,10.2.2−10.3.11頁を参照のこと。これらの方法を用いて分離したタンパク質を分析するためのウエスタンブロットの使用は、当業者に周知である。例えば、Current Protocols in Molecular Biology,eds.F.M.Ausubel et al.,John Wiley & Sons Inc.,1997,10.8.1−10.8.116頁を参照のこと。
【0140】
最初の作業は、1Dゲルで分離したタンパク質のウエスタン分析を用いて行い(データ示さず)、続いて2Dゲルを用いて分離したタンパク質のウエスタン分析を用いて行った。細胞培養物から収集した丸ごとのE.canis由来のタンパク質を、2Dゲル電気泳動を用いて分析した(物質および試薬は製造業者によって記載されるように用いた;Bio−Rad Life Sciences Research,Hercules,CA 94547)。1ゲルあたりにロードするサンプルの量は、経験的に決定した(図2を参照のこと)。そのタンパク質をニトロセルロースにブロットして、ホルマリン不活性化E.canis抗原でワクチン接種した実験用ビーグル犬由来の0日目のイヌ血清(上記を参照のこと)、またはE.canisに感染した動物由来の血清を用いてプローブした(図3、図4および図5を参照のこと)。
【0141】
陽性のイヌの血清および血漿を、E.canisに感染したイヌから単離した。E.canis感染は、これらのイヌ由来の全血から回収したリンパ球のウエスタン分析によって確認し、IDEXX SNAP(登録商標)3Dx(登録商標)アッセイの使用によって、イヌの血清または血漿を用いて確認した(IDEXX Laboratories Inc.,から市販されており、製造業者によって記載されるとおり用いる)。
【0142】
ウエスタンブロット分析のために、タンパク質を1DのSDS−PAGEまたは2Dの等電点電気泳動/SDS−PAGEゲルを用いて、続いてゲルからニトロセルロースへのタンパク質の電気ブロッティングによって分離した。このニトロセルロースブロットを、Tris緩衝化生理食塩水(pH7.5)、0.05% TWEEN(登録商標)20に溶解した2.5%の脱脂粉乳のブロッキング溶液中でインキュベートした。イヌの血清または血漿を、30%正常仔牛血清で非特異的な結合をブロックするためにE.coli溶解液を含んでいる緩衝液中に記載されるような力価に希釈して、室温で2時間または4℃で一晩インキュベートした。TBS−TWEEN(登録商標)(0.05%)中で3回洗浄した後、そのブロットを50%のウシ胎仔血清、50%TBS−TWEEN(登録商標)−Kathon(それぞれ、0.05%および0.5%)を含んでいる緩衝液に移して、ホースラディッシュペルオキシダーゼにコンジュゲートされたウサギ抗イヌFcポリクローナル抗体(Jackson Immuno Research,West Grove,PA 19390)の非特異的な結合を妨げた。ウサギ抗イヌFcポリクローナル抗体コンジュゲートを1:5,000に希釈した。そのゲルをTBS TWEEN(登録商標)(0.05%)を用いて3回洗浄し、TBSを用いて1回洗浄して、ここでHRPの存在は、ECLウエスタンブロット検出試薬(Amersham Biosciences,Piscataway,NJ 08855−1327)を、製造業者によって記載されるとおりに用いて検出した。露光されたX線フィルムのデジタル画像は、GelDoc 2000(Bio−Rad Inc.)を用いて撮った。
【実施例5】
【0143】
E.canis由来のDNAの単離、およびλ発現ライブラリーの構築、およびDIVA活性を有しているクローンのためのE.canisλ発現ライブラリーのスクリーニング
λ発現ライブラリーの調製およびスクリーニングは、当業者に周知の技術である。例えば、Current Protocols in Molecular Biology,eds.F.M.Ausubel et al.,John Wiley & Sons Inc.,1997,第5.1頁〜5.8.6頁を参照のこと。発現ライブラリーの構築のために、ゲノムDNAを、PERCOLL(登録商標)勾配遠心分離(上記を参照のこと)によって細胞培地から単離されたE.canisから精製した。DNAは、Qiagen Sciences(Germantown,MD)から市販されているゲノムDNA精製キットを用いて精製した。λZAP(登録商標)IIプレ消化EcoRI/CIAPベクターキット(Stratagene Corp.,La Jolla,CA 92037)をライブラリーの構築について製造業者によって特定されたとおり用いた。E.canisのゲノムDNAをTSP509で部分的に消化して、2〜6kbにおよぶフラグメントを、アガロースゲル電気泳動を用いて単離し、λベクター中に連結した。ファージは、製造業者によって特定されたとおりパッケージして増殖させた。
【0144】
約120,000個の個々のλプラークを、E.canisの感染に陽性であるが、ホルマリン不活性化したE.canisでワクチン接種された動物由来の血清との反応性については陰性と同定されたイヌから単離された血清に対する結合についてスクリーニングした(上記を参照のこと)。最初のスクリーニングから84個の個々のプラークをこの活性を有しているものとして同定した。
【0145】
λプラークを2回のプラーク精製に供して、再試験して、E.canis感染動物由来の血清との陽性の反応性、ワクチン接種した動物由来の血清とスクリーニングした場合の陰性の反応性を確認した。
【0146】
単離されたλプラークを、アナプラズマ・ファゴサイトフィラ(Anaplasma phagocytophilia)、ボレリア・ブルグドルフェリ(ライム病の原因因子)、リケッチア・リケッチ(Rickettsia rickettsii)(ロッキー山紅斑熱の原因因子)、レプトスピラ・インテロガンス(Leptospira interrogans)およびイヌ糸状虫(フィラリアの原因因子)について血清陽性であると特定された動物由来の血清との交差反応性についてスクリーニングした。
【0147】
スクリーニングプロセスの終わりに、ワクチン接種したイヌ由来の血清とも、他のイヌ病原体で感染したイヌ由来の血清とも反応しない、E.canisに感染した動物由来の血清と反応する43個のλプラークを見出した(上記を参照のこと)。
【0148】
製造業者の指示に従ってクローニングベクターのZAP(登録商標)を用いて、λベクターへの挿入物をプラスミドに変換した。このプラスミドは、タンパク質発現およびウエスタンブロットによるコードされたタンパク質の分析のためにE.coli株XL−1ブルーに形質転換した。E.canis DNA挿入物の末端を、T7およびT3配列決定プライマーを用いてDNA配列分析に供した。
【0149】
全ての43個のクローンについてT7およびT3反応の両方からの配列情報は、BLAST分析のため、NCBIウェブサイトに提示した。結果をエクセルのフォーマットで表にした。クローンとE.canisについて利用可能なショットガンゲノム配列(NCBI:NZ_AAEJ01000001)との間の配列同一性に基づいて、各々のクローンのゲノムDNAのセグメントを同定した。共通の遺伝子を共有する個々のクローンを、感染したイヌおよびワクチン接種したイヌの血清のプールを用いるウエスタンブロットによってさらなる分析のために分類した。類似のバンド形成パターンに基づいて、重複したクローンを除去した。両方のセットの血清に対して反応性を示すいずれのクローンも除去した。この分析の結果として、23個のクローンをさらなる評価のために選択した。グループごとのクローンおよび共通抗原の分類を表2に示す。
【0150】
【表2】
【実施例6】
【0151】
個々のE.canis陽性のイヌ血清サンプルを用いたウエスタンブロット分析
23個の全てのクローンを個々のSDS−PAGEゲルで分析した。各々のゲルをニトロセルロースに移して、ELISA/SNAP(登録商標)試験によってE.canis感染についてのみ陽性であったイヌ由来のイヌ血清の個々のサンプルを用いてウエスタンブロットに供した。イヌ血清は、E.coliの溶解液を含有している実施例4に記載の同じ希釈液で1:500に希釈して、標準的な比色定量ホースラディッシュペルオキシダーゼ技術(Opti−4CN,Bio−Rad)を用いて反応性を検出した。全部で13個の個々のイヌ血清サンプルを評価した。ブロットはサンプルにまたがって比較して、優勢なバンドまたは1クローンあたりのバンドのセットに対する反応性を示しているイヌの番号を決定した。その結果を表3および図6にまとめる(太字で挙げたクローンを図に示す)。
【0152】
【表3】
【0153】
全ての23個のクローンを、他のベクター保有の感染性疾患について陽性と試験されたプールされたイヌ血清を用いてウエスタンブロットによって分析した。以下の単一の感染についてELISAまたはSNAP(登録商標)によって陽性と試験されたサンプルを評価した:イヌ糸状虫、ライム(Lyme)、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム,またはエーリキア・エウィンギ(E.ewingii)。上記の表で特定されたクローンのうち、これらの他のベクター保有感染について陽性のイヌ血清と交差反応性を示したものはない。
【実施例7】
【0154】
E.canisのDIVA抗原をコードする関連の遺伝子セグメントの特定
a.120kDaの抗原
この抗原は以前に、Yuらによって記載されており(J Clin Microbiol.2000 Jan;38(1):369〜74;また、McBrideら、2000 Infec.Immun.68:13)、イヌでのE.canis感染の診断に有用であることが示されている。この抗原は、「p120」および「p140」の両方のE.canis抗原として記載されている。同書を参照のこと。Yuらは、p120遺伝子によって発現される組み換えタンパク質がドデシル硫酸ナトリウムゲルで、予想されるタンパク質の分子量よりも大きい140kDaの分子サイズを有することを説明している。Yuらの第373頁を参照のこと。Walkerのグループ(Yuら、およびMcBrideら)は、タンパク質をE.canis p120およびp140の両方と言っている。従って、この開示は、p120およびp140の両方を交換可能に用いてこのタンパク質を記載する。E.canisのp120/140遺伝子についてのアクセッション番号は、AF112369であり、かつ関連のタンパク質はAAD34330である。また、アクセッション番号YP302666も参照のこと。クローン2、10、17および33は120kDaの抗原遺伝子の全長セグメントを含む。クローン35は、この遺伝子の短縮(trancation)を含む場合がある(配列番号1および2を参照のこと)。
【0155】
この遺伝子を、E.canisのゲノムDNAから増幅して、製造業者(Invitrogen)の指示に従って6−Hisタグを用いてpET発現系にサブクローニングした。このプラスミドの配列決定の結果は、配列番号2、アミノ酸58〜589に示されるタンパク質をコードする遺伝子配列に正確にマッチした。このタンパク質を発現するように誘導されたBL21細菌由来のタンパク質溶解液を、感染したイヌ血清を用いるウエスタンブロットによって分析して、ホルマリン不活性化E.canis細胞でワクチン接種された動物由来の血清でプローブしたウエスタンブロットと比較した。以前の知見と一致して、感染したイヌ由来の血清のみが、予想される分子量のこのタンパク質を認識した(データ示さず)。
【0156】
P120は、14回繰り返される36アミノ酸のモチーフを有する。配列番号15を参照のこと。この反復される部分(配列番号15の下線の領域は60kDaのペプチドである)。配列番号16は、アラインメントされた14リピートを示す。配列番号17は、14リピートのコンセンサス配列を示す。
【0157】
本発明の一実施形態は、以下を含むポリペプチドを提供する:
KEEX1TPEVX2AEDLQPAVDX3SX4EHSSSEVGX5KVSX6TS(配列番号17)。
ここでX1=SまたはN
X2=KまたはR
X3=G、D、またはS
X4=VまたはI
X5=EまたはK
X6=EまたはKである。
本発明の別の実施形態は、配列番号17が2回以上繰り返される多量体ポリペプチドを提供する。この多量体ポリペプチドはまた、1つ以上の異種ポリペプチドを含んでもよい。
【0158】
別の実施形態では、本発明は、配列番号21のポリペプチドであるXPEVKAEDLQPAVDGSVEHXを提供し、ここで各々のXは=0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15アミノ酸である。
【0159】
b.200kDaの抗原
この抗原は以前にMcBrideら(J Clin Microbiol.2001 Jan;39(1):315〜22)によって記載されており、エーリキア症の診断に有用であることが示された。この遺伝子のアクセッション番号はAF252298であり、関連のタンパク質はAAK01145である。このタンパク質配列の一部は、公開された特許と関連している(米国特許第6,355,777号の配列番号2、アクセッション番号AAE96254)。本発明者らは、エーリキア症の診断抗原およびDIVA試薬として機能するこのタンパク質の異なる領域を同定した。この遺伝子のこの部分は、AF252298のヌクレオチド1081から終わりのヌクレオチド4266にまたがる(配列番号3および4を参照のこと)。
【0160】
この遺伝子を、E.canisのゲノムDNAから増幅して、製造業者(Invitrogen)の指示に従って6−Hisタグを用いてpET発現系にサブクローニングした。このプラスミドの配列決定の結果は、配列番号4のアミノ酸1〜1061に示されるタンパク質をコードする遺伝子配列に正確にマッチした。このタンパク質を発現するように誘導されたBL21細菌由来のタンパク質溶解液を、感染したイヌ血清を用いるウエスタンブロットによって分析して、ホルマリン不活性化E.canisでワクチン接種された動物由来の血清でプローブしたウエスタンブロットと比較した。以前の知見と一致して、感染したイヌ由来の血清のみが、予想される分子量のこのタンパク質を認識した(データ示さず)。
【0161】
c.ATPアーゼ
この遺伝子(Locusタグ「Ecan02000699」)は、E.canisのショットガンゲノム配列の自動化コンピューター分析によって予測された。これは、4000個を超えるアミノ酸のタンパク質をコードする(ZP_00210575)。このE.canisのDIVAスクリーニングによって、この遺伝子の2つの別の領域およびその関連するタンパク質を、潜在的な免疫優性抗原およびDIVA試薬として同定した。クローン84および7において同定されるタンパク質のセグメントは、アクセッション番号46308382のそれぞれアミノ酸1984〜2774および2980〜3740である(配列番号5、6、7、8を参照のこと)。
【0162】
この遺伝子の両方のフラグメントをE.canisのゲノムDNAから増幅して、製造業者(Invitrogen)の指示に従って6−HisタグとともにpET発現系に別々にサブクローニングした。このプラスミドの配列決定の結果は、配列番号6および配列番号8のそれぞれアミノ酸1〜782および1〜746に示されるタンパク質に関連する遺伝子配列に正確にマッチした。これらのタンパク質を発現するように誘導されたBL21細菌由来のタンパク質溶解液を、感染したイヌ血清を用いるウエスタンブロットによって分析して、ホルマリン不活性化E.canisでワクチン接種された動物由来の血清でプローブしたウエスタンブロットと比較した。以前の知見と一致して、感染したイヌ由来の血清のみが、予想される分子量のこれらのタンパク質を認識した(データ示さず)。
【0163】
d.熱ショックタンパク質
このクローンは熱ショックタンパク質の遺伝子GrpEを含むが、免疫優性抗原をコードする遺伝子配列は、このゲノムの自動的なコンピューター分析によって予測される仮定的なタンパク質配列から生じる。タンパク質の分子量およびpIに基づいて、クローン9中の目的の遺伝子は、遺伝子座番号「Ecan02000495」であって、その関連するタンパク質は46308954である。
【0164】
このタンパク質は、ゲノムのコンピューターアノテーションから予測されるだけで、E.canis生物体から免疫優性タンパク質として以前に同定された訳ではないので、これは、この遺伝子がE.canisで発現されて、感染したイヌ宿主の免疫応答を刺激するという最初の証拠である。このタンパク質は、p16抗原として同定される(配列番号9および10を参照のこと)。
【0165】
この遺伝子を、目的のゲノムDNAを含んでいるpBlueScriptベクターから増幅して、製造業者(Invitrogen)の指示に従って6−Hisタグを用いてpET発現系にサブクローニングした。このプラスミドの配列決定の結果は、遺伝子座番号「Ecan02000495」に関連する遺伝子配列に正確にマッチした。このタンパク質を発現するように誘導されたBL21細菌由来のタンパク質溶解液を、感染したイヌ血清を用いるウエスタンブロットによって分析して、ホルマリン不活性化E.canisでワクチン接種された動物由来の血清でプローブしたウエスタンブロットと比較した。以前の知見と一致して、感染したイヌ由来の血清のみが、予想される分子量のこのタンパク質を認識した(図7を参照のこと)。
【0166】
e.リボソームタンパク質L1
この遺伝子は、E.canisのゲノムから遺伝子座タグ「Ecan02000476」によって同定される。この関連のタンパク質は、アクセッション番号ZP_00211130を有する(配列番号11および12を参照のこと)。このタンパク質の同定は、このゲノムの自動化コンピューター分析に基づいて推測される。このタンパク質のBLAST分析は、この配列が、E.chaffeensisの表面タンパク質(アクセッション番号4894576)と約70%同一であることを明らかにする。E.chaffeensisタンパク質の免疫応答性は、Yuらによって以前に報告されている(J Clin Microbiol.1999 Aug;37(8):2568〜75)。E.chaffeensisのタンパク質(アクセッション番号4894576)は106kDaのタンパク質前駆体と呼ばれる。
【0167】
f.可能な非120kDaの抗原
120kDaの抗原の遺伝子を含んでいるゲノムフラグメント内に、免疫優性であってかつDIVA試薬でもあり得る他の遺伝子が存在する。例えば、クローン10は、120kDaの抗原のみを含んでいるクローンに比較して、感染された血清でプローブされたウエスタンブロット上に異なるバンドパターンを生じる。クローン10は、IV型分泌経路のVirD4成分の遺伝子情報を含み、この遺伝子配列は、遺伝子座タグ「Ecan02000624」で同定される。この遺伝子は、723個のアミノ酸のタンパク質(ZP_00211244)をコードするが、ゲル上で同定したタンパク質の分子量によって判定すると合、このタンパク質の一部のみがクローン10によって発現されるものと考えられる(配列番号13および14を参照のこと)。
【実施例8】
【0168】
E.canisのP140ペプチドの評価
ホルマリン不活性化E.canis(ワクチンサンプル)で免疫したビーグル犬由来の血清を、E.canisのp140タンパク質(p120としても公知、実施例7を参照のこと)由来の合成ペプチドを用いて調製したマイクロタイタープレートに基づくイムノアッセイを用いて試験した。
【0169】
ホルマリン不活性化E.canisの調製およびビーグル犬の免疫を、実施例1および2に記載した。免疫したビーグル犬由来のサンプルは、間接的および直接的なアッセイ方式で合成ペプチド(配列番号18、配列番号19および配列番号20)を用いて調製したマイクロタイタープレートに基づくイムノアッセイを用いて試験した。
【0170】
間接的なアッセイ形式
サンプルを、合成ペプチド(配列番号18、配列番号19および配列番号20)を用いて調製したマイクロタイタープレートに基づくイムノアッセイを用いて試験した。個々のペプチドを直接吸着によってマイクロタイターウェル上に固定した。試験サンプルの希釈(1:100)をこのマイクロタイターウェルに添加して、洗浄することによって未結合の抗体を取り除いた。固定されたペプチドに結合した抗体を、抗−種、この場合イヌ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)コンジュゲート(1:2000希釈)との反応、洗浄およびHRPO基質の添加によって検出した。個々のマイクロタイターウェルの吸光度(A650)を、マイクロタイター・プレート・リーダーを用いて測定した。
【0171】
直接的なアッセイ形式
個々のペプチド(配列番号18、配列番号19および配列番号20)をウシ血清アルブミンにコンジュゲートして、直接吸着によってマイクロタイターウェル上に固定した。合成ペプチド(配列番号18、配列番号19および配列番号20)を、指示薬であるホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)にコンジュゲートした。試験サンプルおよびイムノアッセイ・ペプチド/指標を、対応するペプチドでコーティングされたマイクロタイターウェルに加えて、これをインキュベートして洗浄した。固定されたペプチドに結合した抗体およびペプチド/指示薬を、HRPO基質試薬の添加によって検出した。個々のマイクロタイターウェルの吸光度(A650)を、マイクロタイター・プレート・リーダーを用いて測定した。
【0172】
アッセイの結果を表4に示す。陽性コントロール(PC,ID 1049:16E)および陰性コントロール(NC,3818:57B)は、それぞれ公知のE.canis陽性および陰性の血清サンプルであった。全てのサンプルを、E.canis抗体について市販のSNAP(登録商標)4Dx(登録商標)試験を用いて試験した。異なるアジュバントを用いて処方したホルマリン不活性化E.canis抗原を投与された6匹のイヌ(CVYDEH、CWMBDC、CVXCSM、CWMAXK、CVSCVAおよびCVXCAP)由来の連続的な時間的なサンプルの結果を、免疫後0日〜42日の間示す。SNAP(登録商標)4Dx(登録商標)試験の結果、ワクチン接種した動物では抗体応答が誘導されたことが実証される。ワクチン接種した動物由来の血清サンプルのうち、直接アッセイ方式で反応性のものはなかった。いくつかのサンプル(例えば、CWMAXKのイヌ由来のサンプル)は、間接的なアッセイ形式ではバックグラウンド反応が高かった。
【0173】
この結果、ホルマリン不活性化ワクチンを用いた免疫の結果として誘導された抗体は、E.canisのp140タンパク質由来の合成ペプチドに対して有意に反応性ではなかったことが示される(配列番号18、配列番号19および配列番号20)。
【0174】
【表4】
【実施例9】
【0175】
E.canis陽性および陰性であることが知られたイヌ由来の血清を、E.canisのタンパク質p140タンパク質(p120としても公知、実施例7を参照のこと)から得た合成ペプチドを用いて調製したマイクロタイタープレートに基づくイムノアッセイを用いて試験した。
【0176】
E.canis陽性および陰性の野外サンプルを入手して、E.canisに対する抗体についてSNAP(登録商標)4Dx(登録商標)試験を用いて試験した。次いで、サンプルを、E.canisのp140タンパク質に由来する合成ペプチド(配列番号18、配列番号19および配列番号20)を用いて作成した間接的および直接的なマイクロタイタープレート形式のアッセイを用いて試験した。
【0177】
間接的なアッセイ形式
サンプルは、合成ペプチド(配列番号18、配列番号19および配列番号20)を用いて調製したマイクロタイタープレートに基づくイムノアッセイを用いて試験した。個々のペプチドを直接吸着によってマイクロタイターウェル上に固定した。試験サンプルの希釈(1:100)を、マイクロタイターウェルに添加して、未結合の抗体を洗浄によって除去した。固定されたペプチドに結合された抗体を、抗−種、この場合イヌ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)コンジュゲート(1:2000希釈)との反応、洗浄およびHRPO基質の添加によって検出した。個々のマイクロタイターウェルの吸光度(A650)を、マイクロタイター・プレート・リーダーを用いて測定した。
【0178】
直接的なアッセイ形式
個々のペプチド(配列番号18、配列番号19および配列番号20)をウシ血清アルブミンにコンジュゲートして、直接吸着によってマイクロタイターウェル上に固定した。合成ペプチド(配列番号18、配列番号19および配列番号20)を、指示薬であるホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)にコンジュゲートした。試験サンプルおよびイムノアッセイ・ペプチド/指標を、対応するペプチドでコーティングされたマイクロタイターウェルに加えて、これをインキュベートして洗浄した。固定されたペプチドに結合した抗体およびペプチド/指示薬を、HRPO基質試薬の添加によって検出した。個々のマイクロタイターウェルの吸光度(A650)を、マイクロタイター・プレート・リーダーを用いて測定した。
【0179】
表4は、間接的アッセイ形式を用いて試験したE.canis陽性および陰性の野外サンプルについての結果を示す。陽性コントロール(PC,ID 1049:16E)および陰性コントロール(NC,3818:57B)は、それぞれE.canis陽性および陰性が既知の血清サンプルであった。サンプルは、SNAP(登録商標)4Dx(登録商標)試験を用いてE.canisの抗体陽性または陰性であることを判定した。アッセイの結果は、ペプチド試薬(配列番号18,配列番号19および配列番号20)を用いて作製したマイクロタイタープレート形式のアッセイについて示す。
【0180】
表5は、直接的なアッセイ形式を用いて試験したE.canis陽性および陰性の野外サンプルについての結果を示す。陽性コントロール(PC,ID 1049:16E)および陰性コントロール(NC,3818:57B)はそれぞれ、E.canis陽性および陰性であることが既知の血清サンプルであった。サンプルは、SNAP(登録商標)4Dx(登録商標)試験を用いてE.canis抗体陽性または陰性であることを判定した。アッセイ結果は、ペプチド試薬(配列番号18、配列番号19および配列番号20)を用いて行ったマイクロタイタープレート形式のアッセイについて示す。
【0181】
【表5】
【0182】
【表6】
【0183】
この結果、自然感染の結果として誘導された抗体は、E.canisのp140タンパク質(配列番号18、配列番号19および配列番号20)由来の合成ペプチドと反応性であったことが示される。
【実施例10】
【0184】
E.canisのタンパク質であるp16タンパク質から得た合成ペプチド(配列番号22、配列番号23および配列番号24)を用いて調製したマイクロタイタープレートに基づくイムノアッセイを用いるE.canis陽性および陰性が既知のイヌ由来の血清の試験。指標として抗イヌHRPOコンジュゲートを利用する間接的アッセイ形式を用いてアッセイを行った。
6匹のE.canis−抗体陽性および3匹のE.canis−抗体陰性のイヌ由来の血清をSinclair Research(Columbia,MO)から入手した。血清サンプルは、E.canis抗体について、ライセンスを受けた可逆性のフロー・クロマトグラフィック結合アッセイIDEXX SNAP(登録商標)4Dx(登録商標)試験を用いて試験することによって、陽性または陰性であることを見出した。可逆性のフロー・クロマトグラフィックSNAP(登録商標)アッセイの結果を表7に示す。
【0185】
サンプルは、E.canisのp16表面タンパク質由来の合成ペプチド(配列番号22、配列番号23および配列番号24)を用いて調製したマイクロタイタープレートに基づくイムノアッセイを用いて試験した。合成ペプチドを、Immulonマイクロタイターウェル中に0.25μg/mlで固定した(配列番号22および23、または0.5μg/ml(配列番号24))。試験サンプルの希釈物(1:100)をこのマイクロタイターウェルに添加して、洗浄することによって未結合の抗体を取り除いた。固定されたペプチドに結合した抗体を、抗−種、この場合イヌ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)コンジュゲート(1:2000希釈)との反応、洗浄およびHRPO基質の添加によって検出した。個々のマイクロタイターウェル中の650nmでの流体の吸光度(A650)を、マイクロタイター・プレート・リーダーを用いて測定した。
【0186】
結果:
陽性および陰性のサンプルについての結果を表7に示す。陽性のサンプルHP−319、HP−322、HP−326、HP−342、HP−354、HP−358は、配列番号22、配列番号23および配列番号24に示されるペプチド配列と反応性であった。陰性のサンプルHP−302、HP−303およびHP−306は、配列番号22、配列番号23および配列番号24に示されるペプチド配列に対して反応性ではなかった。
【0187】
結論:
この結果、自然感染の結果として誘導された抗体は、上記の間接的なアッセイ形式でE.canisのp16タンパク質(配列番号22、配列番号23および配列番号24)由来の合成ペプチドと反応性であったことが示される。
【0188】
【表7】
【実施例11】
【0189】
E.canisのp16タンパク質配列由来の合成ペプチド(配列番号22、配列番号23および配列番号24)を用いて調製したマイクロタイタープレートに基づくイムノアッセイを用いるE.canis陽性および陰性が既知のイヌ由来の血清の試験。アッセイは、指標としてHRPO標識したペプチドを利用して直接的なアッセイ形式を用いて行った。
7匹のE.canis−抗体陽性および3匹のE.canis−抗体陰性のイヌ由来の血清を野外のイヌから得た。血清サンプルは、E.canis抗体について、ライセンスを受けた可逆性のフロー・クロマトグラフィックIDEXX SNAP(登録商標)3Dx(登録商標)試験を用いて試験することによって、陽性または陰性であることを見出した。アッセイの結果を表8に示す。
【0190】
サンプルは、E.canisのp16表面タンパク質由来の合成ペプチド(配列番号22、配列番号23および配列番号24)を用いて調製した、マイクロタイタープレートに基づくイムノアッセイを用いて試験した。合成ペプチドは、マイクロタイターウェル上に1μg/mlで固定した。別々の量の合成ペプチドを、指示薬ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)にコンジュゲートした。その試験サンプルおよびペプチド:HRPOコンジュゲート(1μg/ml)を、ペプチドでコーティングしたマイクロタイターウェルに加えて、これをインキュベートして洗浄した。固定されたペプチドおよびペプチド::HRPOコンジュゲートに結合したサンプル抗体をマイクロタイターウェル中に固定した。この複合体をHRPO基質試薬の添加によって検出した。個々のマイクロタイターウェルの吸光度を、マイクロタイター・プレート・リーダーを用いて測定した。
【0191】
結果:
陽性および陰性のサンプルについての結果を表8に示す。陽性のサンプル813:91I、1049:16A、1049:16U、1061:03I、1177:21G、1177:21Kおよび1177:63Oは、配列番号22、配列番号23および配列番号24に示されるペプチド配列と反応性であった。陰性のサンプル3818:57A、3818:57Cおよび3818:57Dは、配列番号22、配列番号23および配列番号24に示されるペプチド配列に対して反応性ではなかった。
【0192】
結論:
この結果、自然感染の結果として誘導された抗体は、上記の直接アッセイ形式で、E.canisのp16タンパク質(配列番号22、配列番号23および配列番号24)由来の合成ペプチドと反応性であったことが示される。
【0193】
【表8】
【実施例12】
【0194】
合成ペプチド(配列番号23)でコーティングしたマイクロタイタープレートと抗イヌコンジュゲートを指標として用いるE.canisに実験的に感染させた6匹のイヌ由来の血清のアッセイ結果
6匹のナイーブなイヌを、E.canisのルイジアナ分離株を用いて実験的に感染させた。血清サンプルは、感染後3、7、10、13、17、21、24、28および35日で入手した。サンプルは、E.canis p16表面タンパク質由来のp16−2合成ペプチド(配列番号23)を用いて調製したマイクロタイタープレートに基づくイムノアッセイを用いて試験した。合成ペプチドは、マイクロタイターウェル中に固定し、試験サンプルの希釈物(1:100)をこのマイクロタイターウェルに添加して、洗浄することによって未結合の抗体を取り除いた。固定されたペプチドに結合した抗体を、抗−イヌ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)コンジュゲート(1:2000希釈)との反応、洗浄およびHRPO基質の添加によって検出した。個々のマイクロタイターウェル中の吸光度を、マイクロタイター・プレート・リーダーを用いて測定した。
【0195】
結果:
アッセイの結果を表9に示す。6匹のイヌ全ては、市販の可逆性フロー・クロマトグラフィックSNAP(登録商標)4Dx(登録商標)アッセイによって測定した場合、実験的感染後に、陰性の状態から陽性の状態に変化した。全てのイヌ由来の血清が、感染後種々の時点で配列番号23に示されるE.canisのp16ペプチドと反応した。実験的感染と配列番号23のペプチドに対する最初の反応との間の時間は以下のとおりであった:Dog 108532、感染後17日;Dog 115853,感染後13日;Dog 265006、感染後17日;Dog 268830、感染後13日;Dog 285307、感染後13日、およびDog 533573、感染後13日。
【0196】
結論:
この結果、実験的な感染の結果として誘導された抗体は、E.canisのp16タンパク質(配列番号23)由来の合成ペプチドと反応性であったことが示される。
【0197】
【表9】
【表10】
【実施例13】
【0198】
イヌへの免疫のためのホルマリン不活性化E.canisの調製
E.canisは文献に記載されている方法を用いてイヌ細胞培養物中で増殖させた。Breitschwerdt,Antimicrobial Agents and Chemotherapy,1998,Vol 42:362〜368を参照のこと。光学顕微鏡を用いて、030細胞は、E.canisに80%より多くが感染していると見積もられた。2リットルのE.canisに感染した細胞培養物を収集し、遠心分離して、保持されたペレットで7.31グラムの物質(湿重量)を得た。1.462グラム(その物質の重量のうち20%)という推定の乾燥重量とすれば、水がその物質の重量のうち80%を構成すると推定される。その細胞ペレットを総容積73mlとしてPBS中に20mg/ml(乾燥重量)まで再懸濁した。
【0199】
この再懸濁された細胞ペレットに、0.04%という最終ホルムアルデヒド濃度になるよう、0.73mlのホルマリン溶液を添加した(Sigma Catalog HT50−1−2ホルマリン溶液10%、中性緩衝化)。その溶液を4℃で12〜24時間攪拌した。その不活性化された混合物を遠心分離して、細胞ペレットを保持した。そのペレットを250mlのPBS中へ再懸濁することによって洗浄した。その物質を遠心分離によって収集し、その洗浄を1回繰り返した。
【0200】
そのサンプルを73個のスクリューキャップバイアルに分注して、−80℃で凍結した。各々のバイアルは、動物への免疫のための適切なアジュバントとの組み合わせに適切な、20ミリグラム(乾燥重量)のホルマリン不活性化E.canis細胞培養物を含む。
【実施例14】
【0201】
2つの異なるアジュバントを用いるホルマリン不活性化E.canisの調製、およびE.canis抗原を用いるビーグル犬の免疫のためのプロトコール
犬小屋で飼育しているイヌ(実験用ビーグル犬)への免疫のため、ホルマリン不活性化E.canis抗原を、3つの異なるアジュバントを用いて処方した。ホルマリン不活性化E.canis抗原を、製造業者に記載されるプロトコールを用いてRibiアジュバント(Corixa Corp.,Seattle WA)で調製した。各々の用量は、約20mgのホルマリン不活性化E.canis細胞培養物(乾燥重量)を含んだ。免疫原の追加の調製物を、Ribiアジュバント(上記)およびアジュバントBCG(1用量あたり1mg)(Calbiochem of EMD Biosciences,Inc.,San Diego,CA)の組み合わせを用いて調製した。各々3匹のイヌからなる2つの群を、Ribiアジュバント単独、またはRibiアジュバントとBCGアジュバントとを組み合わせて含んでいる不活性化E.canisのいずれかを用いて170日にわたって4回(0日、14日、156日、170日)投与した。ワクチン誘導性の高度免疫状態を生成する目的で、全てのイヌは、アジュバント TiterMax(登録商標)(CytRx Corp.,Norcross,GA)を用いるか、またはアジュバント TiterMax(登録商標)とアジュバントBCGとを組み合わせて製造業者の指示を用いて処方したホルマリン不活性化E.canisの単回用量を投与された(247日)。イヌには、以下のスケジュールに従ってワクチンを投与した:
【0202】
【表11】
【0203】
Covance Research Products Inc.のIACUC委員会が実験用ビーグル犬の免疫についてのプロトコールを承認した。全てのイヌに、肩甲骨背側(dorsoscapular)の領域に適切な試験品を皮下投与した。0日に6匹の全てのイヌは、可逆性フロー・クロマトグラフィックSNAP(登録商標)3Dx(登録商標)診断、およびE.canis生物体を用いるウエスタンブロット分析の両方を用いて血清陰性であることが見出された。6匹の動物の全てが42日までに可逆性フロー・クロマトグラフィックSNAP(登録商標)3Dx(登録商標)E.canisアッセイで、陽性に血清転換した。生成物の採血は226、261、268および282日目に採取した(約50mlの血液で約25mlの血清が得られた)。
【実施例15】
【0204】
E.canisのタンパク質であるp16タンパク質から得た合成ペプチド(配列番号22、配列番号23および配列番号24)を用いて調製したマイクロタイタープレートに基づくイムノアッセイを用いるホルマリン不活性化E.canis(ワクチンサンプル)を用いて免疫したビーグル犬由来の血清の試験
ホルマリン不活性化E.canisの調製およびビーグル犬の免疫は、実施例13および14に記載された。免疫したビーグル犬由来のサンプルを、合成ペプチド(配列番号22、配列番号23および配列番号24)を用いて調製した直接のマイクロタイタープレートに基づくイムノアッセイを用いて試験した。
【0205】
直接的なアッセイ形式
サンプルは、合成ペプチド(配列番号22、配列番号23および配列番号24)を用いて調製した、マイクロタイタープレートに基づくイムノアッセイを用いて試験した。合成ペプチドは、マイクロタイターウェル上に1.0μg/mlで固定した。別々の量の合成ペプチドを、指示薬ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)にコンジュゲートした。その試験サンプルおよびイムノアッセイ・ペプチド/指標を、ペプチドでコーティングしたマイクロタイターウェルに加えて、これをインキュベートして洗浄した。固定されたペプチドおよびペプチド/指示薬に結合した抗体をマイクロタイターウェル中に固定した。この複合体をHRPO基質試薬の添加によって検出した。個々のマイクロタイターウェルの吸光度を、マイクロタイター・プレート・リーダーを用いて判定した。
【0206】
結果
アッセイの結果を表10に示す。陽性コントロール(PC,ID 1049:16E)および陰性コントロール(NC,3818:57B)は、それぞれ、E.canis陽性および陰性が既知の血清サンプルであった。全てのサンプルを、E.canis抗体について市販の可逆性フロー・クロマトグラフィックSNAP(登録商標)4Dx(登録商標)試験を用いて試験した。異なるアジュバントを用いて処方したホルマリン不活性化E.canis抗原を投与された6匹のイヌ(CVYDEH、CWMBDC、CVXCSM、CWMAXK、CVSCVAおよびCVXCAP)由来の連続的な時間的なサンプルの結果を、免疫後226日、261日、268日および282日について示す。可逆性のフロー・クロマトグラフィックSNAP(登録商標)4Dx(登録商標)試験の結果、ワクチン接種した動物では抗体応答が誘導されたことが実証される。ワクチン接種した動物由来の血清サンプルのうち、ペプチド(配列番号22、配列番号23および配列番号24)マイクロタイタープレート形式のアッセイで反応性のものはなかった。
【0207】
【表12】
【0208】
結論
この結果によって、ホルマリン不活性化E.canis抗原を用いる免疫の結果として誘導された抗体が可逆性のフロー・クロマトグラフィックSNAP(登録商標)4Dx(登録商標)試験で反応性であり、抗E.canis抗体応答が開始されたことが示される。これらの同じサンプルは、E.canis P16タンパク質(配列番号22、配列番号23、配列番号24)由来の合成ペプチドに対して非反応性であった。
【0209】
ホルマリン不活性化E.canis抗原で免疫したイヌ由来の血清は、E.canisのP16タンパク質(配列番号22、配列番号23、配列番号24)由来のペプチドに非反応性であった。合成ペプチド(配列番号22、配列番号23、配列番号24)は、ワクチン接種の結果として誘導された抗体に対して非反応性であった。
【実施例16】
【0210】
E.canis感染の治療のモニタリング
6匹のイヌを実験的にE.canisに感染させた。ドキシサイクリンを感染後28日で投与した。E.canisに特異的な抗体を、間接的アッセイプロトコールを用いて配列番号23を用いて検出した。配列番号23に示されるポリペプチドを直接吸着によってマイクロタイターウェル上に固定した。試験サンプルの希釈物(1:100)をこのマイクロタイターウェルに添加して、洗浄することによって未結合の抗体を取り除いた。固定されたペプチドに結合した抗体を、抗−種、この場合ウサギ抗−イヌホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)コンジュゲート(1:1000希釈)との反応によって検出した。個々のマイクロタイターウェルの吸光度(A650)を、マイクロタイター・プレート・リーダーを用いて測定した。陰性のカットフは2xの陰性のコントロールO.D.値であった。
【0211】
結果を図8に示す。E−1、E−2、E−3、E−4、E−5、およびE−6のイヌをE.canisに実験的に感染させたが、感染については治療しなかった。図8によって、配列番号23に結合する抗体のレベルは、実験的な感染の後にはかなり増大し、実験の時間経過の間には減少しなかったことが示される。EDTx−1、EDTx−2、EDTx−3、EDTx−4、EDTx−5、およびEDTx−6のイヌをE.canisで実験的に感染させ、次いで感染後28日でドキシサイクリンを用いて処置した。図8によって、配列番号23に結合する抗体のレベルは、実験的な感染の後にはかなり増大し、ドキシサイクリンの投与後には減少したことが示される。従って、配列番号23は、進行、治療に対する応答、またはE.canis感染の治療の有効性をモニターするために用いることができる。
【実施例17】
【0212】
E.canisに関してワクチン接種されたイヌ、およびE.canisに関してワクチン接種されたが、E.canisに感染したイヌの識別
ワクチンは、感染予防に完全に有効ではない場合もある。従って、ワクチン接種した動物がワクチン接種にかかわらず感染したか否かを決定する方法があることが望ましい。検出因子としてp16を用いるイムノアッセイでは、E.canisに関してワクチン接種されており、E.canisに感染していないイヌにおける抗E.canis抗体を検出しない。ここで、E.canisのp16タンパク質(配列番号10)がE.canisワクチンを投与されたイヌでのE.canis感染を検出するために用いることができることが発見された。
【0213】
E.canisに関してワクチン接種された6匹のイヌおよび2匹のワクチン接種されていないイヌを、10%のDMSO中でE.canis感染したK9細胞を用いて攻撃した(challenged)。各々のイヌを、配列番号10を含んでいるイムノアッセイを用いて抗E.canis抗体について経時的に試験した。ワクチン接種したイヌおよび2匹のコントロールのイヌの全てがE.canisに感染した。E.canis感染は、2つの独立した感染マーカーで確認した。イムノアッセイは、ワクチン接種されたイヌおよびワクチン接種されていないイヌにおいてE.canis感染を検出できた。全てのイムノアッセイシグナルは、バックグラウンドのシグナルを有意に上回った。図9A−B、10A−C、および11A−Cを参照のこと。
【0214】
配列:
【化1】
【0215】
【化2】
【0216】
【化3】
【0217】
【化4】
【0218】
【化5】
【0219】
【化6】
【0220】
【化7】
【0221】
【化8】
【0222】
【化9】
【0223】
【化10】
【0224】
【化11】
【0225】
【化12】
【0226】
【化13】
【0227】
【化14】
【0228】
【化15】
【0229】
【化16】
【0230】
【化17】
【0231】
【化18】
【0232】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【0233】
本発明の他の実施形態によって以下のポリペプチドが得られる:
(a)1位のXが存在しないかまたはCであり、4位のXがHまたはQであり、25位のXがDまたはGであり、かつ36位のXがEまたはGである、配列番号33;
(b)1位のXがCであり、4位のXがHであり、25位のXがDまたはGである、配列番号33のアミノ酸1〜27;
(c)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり;かつCが必要に応じてアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸13〜41;
(d)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが必要に応じてアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸24〜49;
(e)1位のXがCであるかまたは存在せず、かつ25位のXがDまたはGである、配列番号33のアミノ酸1〜27;
(f)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが必要に応じてアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸13〜41;
(g)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが必要に応じてアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸24〜49;
(h)25位のXがDまたはGであり、かつCが必要に応じてアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸13〜27;
(i)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが必要に応じてアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸24〜41;
(j)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが必要に応じてアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸13〜41;
(k)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが必要に応じてアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸24〜49;
(l)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが必要に応じてアミノ末端に存在する、配列番号33のアミノ酸24〜41。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エーリキア・カニスに感染した動物と;(b)E.canisに感染していない動物とを、該動物がE.canisに関してワクチン接種されているか否かにかかわらず識別する方法であって:
(a)動物由来の生物学的サンプルと、E.canisワクチンに対する該動物の免疫応答の成分である抗体に特異的に結合しない1つ以上の第一の精製されたポリペプチドとを接触させる工程であって;ここで該1つ以上の第一の精製されたポリペプチドが配列番号22〜33に対して少なくとも95%の同一性を有する工程と;
(b)該生物学的サンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたE.canisポリペプチドに対して特異的に結合するか否かを検出する工程と;
を包含し、
ここで該生物学的サンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたポリペプチドに特異的に結合するならば、該動物はE.canisに感染している、方法。
【請求項2】
前記1つ以上の第一の精製されたポリペプチドが約15〜約75アミノ酸長である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上の第一の精製されたポリペプチドが、異種のアミノ酸配列、指示薬、アミノ酸スペーサー、アミノ酸リンカー、シグナル配列、輸送停止配列、膜貫通ドメイン、タンパク質精製リガンドまたはそれらの組み合わせに結合される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、E.canisワクチン抗原である1つ以上の第二の精製されたE.canisポリペプチドに対して、前記生物学的サンプル中の抗体が特異的に結合するか否かを判定する工程をさらに包含し、
ここで該生物学的サンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合し、かつ1つ以上の第二の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合するならば、該動物はE.canisに感染しており、かつE.canisに関するワクチン接種状態が不明であり;
該サンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合せず、かつ1つ以上の第二の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合するならば、該動物は、E.canisに感染しておらず、かつE.canisについてワクチン接種されており;そして
該サンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたポリペプチドに特異的に結合せず、かつ1つ以上の第二の精製されたポリペプチドに特異的に結合しないならば、該動物はE.canisについてワクチン接種されておらず、かつE.canisに感染していない、方法。
【請求項5】
E.canisについて動物のワクチン接種および感染状態を判定する方法であって:
(a)動物由来の生物学的サンプルを、E.canisワクチンに対する動物の免疫応答の成分である抗体に特異的に結合しない1つ以上の第一の精製されたポリペプチドであって、該1つ以上の精製されたポリペプチドが配列番号22〜33に対して少なくとも95%の同一性を有しているポリペプチドと、およびE.canisワクチンに対する動物の免疫応答の成分である抗体に特異的に結合する1つ以上の第二の精製されたポリペプチドと接触させる工程と;
(b)該生物学的サンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたポリペプチドに対して、および1つ以上の第二の精製されたポリペプチドに対して特異的に結合するか否かを検出する工程と;
を包含し、
ここで該生物学的サンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合し、かつ1つ以上の第二の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合するならば、該動物は、E.canisに感染しており、かつE.canisについてワクチン接種状態が不明であり;ここで該サンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合せず、かつ1つ以上の第二の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合するならば、該動物は、E.canisに感染しておらず、かつE.canisについてワクチン接種されており;そしてここで該サンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたポリペプチドに特異的に結合せず、かつ1つ以上の第二の精製されたポリペプチドに特異的に結合しないならば、該動物はE.canisについてワクチン接種されておらず、かつE.canisに感染していない、方法。
【請求項6】
前記1つ以上の第一の精製されたポリペプチドが約15〜約75アミノ酸長である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ以上の第一の精製されたポリペプチドが、異種のアミノ酸配列、指示薬、アミノ酸スペーサー、アミノ酸リンカー、シグナル配列、輸送停止配列、膜貫通ドメイン、タンパク質精製リガンドまたはそれらの組み合わせに結合される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
試験サンプル中でE.canisに特異的である抗体またはその抗原結合フラグメントの存在を判定する方法であって:
(a)1つ以上の精製されたポリペプチドが抗体またはその抗原結合フラグメントに特異的に結合するのに適した条件下で、試験サンプルを、配列番号22〜33に対して少なくとも95%の同一性を有する1つ以上の精製されたポリペプチドと接触させる工程であって、ここで、1つ以上の精製されたポリペプチドは約15〜約75アミノ酸長であり、1つ以上の第一の精製されたポリペプチドは、E.canisに特異的である抗体に特異的に結合する;および
(b)該1つ以上の精製されたポリペプチドの、該抗体またはその抗原結合フラグメントへの特異的な結合の存在を検出する工程;
を包含し、
ここで、該1つ以上の精製されたポリペプチドの該抗体または抗原結合フラグメントへの特異的な結合の存在は、該試験サンプル中のE.canisに特異的な該抗体またはその抗原結合フラグメントの存在を示す、方法。
【請求項9】
前記1つ以上の精製されたポリペプチドが、異種のアミノ酸配列、指示薬、アミノ酸スペーサー、アミノ酸リンカー、シグナル配列、輸送停止配列、膜貫通ドメイン、タンパク質精製リガンドまたはそれらの組み合わせに結合される、請求項9に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が特異的結合の量を検出する工程をさらに包含する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ以上の精製ポリペプチドが固相支持体に固定される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
組成物であって:
(a)配列番号22〜33からなる1つ以上の精製されたポリペプチド;あるいは
(b)配列番号22〜33に対して少なくとも95%の同一性を有する1つ以上の精製されたポリペプチドであって、1つ以上の精製されたポリペプチドは約15〜約75アミノ酸長である;
(c)1位のXが存在しないかまたはCであり、4位のXがHまたはQであり、25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGである、配列番号33;
(d)1位のXがCであり、4位のXがHであり、25位のXがDまたはGである、配列番号33のアミノ酸1〜27;
(e)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり;かつCが任意にアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸13〜41;
(f)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが任意にアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸24〜49;
(g)1位のXがCであるかまたは存在せず、かつここで25位のXがDまたはGである、配列番号33のアミノ酸1〜27;
(h)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが任意にアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸13〜41;
(i)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが任意にアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸24〜49;
(j)25位のXがDまたはGであり、かつCが任意にアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸13〜27;
(k)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが任意にアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸24〜41;
(l)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが任意にアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸13〜41;
(m)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが任意にアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸24〜49;
(n)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが任意にアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸24〜41;あるいは
(o)(a)〜(n)の組み合わせ、
を含んでいる、組成物。
【請求項13】
前記1つ以上の精製されたポリペプチドが多量体型である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記1つ以上の精製されたポリペプチドが、異種のタンパク質、指示薬、アミノ酸スペーサー、アミノ酸リンカー、シグナル配列、輸送停止配列、膜貫通ドメイン、タンパク質精製リガンドまたはそれらの組み合わせに結合される、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
動物において免疫応答を生じさせる方法であって:該動物に対して配列番号22〜33に対して少なくとも95%の同一性を有している1つ以上の精製されたポリペプチドまたはそれらの組み合わせを投与する工程を包含し、該1つ以上の精製されたポリペプチドが該動物において免疫応答を生じる方法。
【請求項16】
前記1つ以上の精製されたポリペプチドが約15〜約75アミノ酸長である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記1つ以上の精製されたポリペプチドが多量体型である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記1つ以上の精製されたポリペプチドが、異種のタンパク質、指示薬、アミノ酸スペーサー、アミノ酸リンカー、シグナル配列、輸送停止配列、膜貫通ドメイン、タンパク質精製リガンドまたはそれらの組み合わせに結合される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
動物におけるエーリキア・カニス感染の予防、治療または回復のための方法であって、該動物に対して:
(a)配列番号22〜33に対して少なくとも95%の配列同一性を有している1つ以上の精製されたポリペプチド、またはそれらの組み合わせ;あるいは
(b)配列番号22〜33を含んでいる1つ以上の精製されたポリペプチドをコードする1つ以上の核酸、またはそれらの組み合わせ;あるいは
(c)配列番号22〜33を含んでいる1つ以上の精製されたポリペプチドに特異的に結合する1つ以上の抗体、またはそれらの組み合わせ;
を投与する工程を包含し、
これによってE.canis感染が予防、回復または治療される、方法。
【請求項20】
患者においてE.canis感染の治療をモニタリングする方法であって:(a)請求項10の方法によるE.canis感染のための治療の前または初期段階において、患者由来の第一のサンプル中の抗E.canis抗体のレベルを測定する工程と;(b)請求項10の方法によって治療がなされた後の該患者由来の第二のサンプル中の抗E.canis抗体のレベルを測定する工程と;(c)該第一のサンプル中の抗E.canis抗体の量と、該第二のサンプル中の抗E.canis抗体の量とを比較して、変化を評価し、それによって治療をモニタリングする工程と;を包含する、方法。
【請求項1】
(a)エーリキア・カニスに感染した動物と;(b)E.canisに感染していない動物とを、該動物がE.canisに関してワクチン接種されているか否かにかかわらず識別する方法であって:
(a)動物由来の生物学的サンプルと、E.canisワクチンに対する該動物の免疫応答の成分である抗体に特異的に結合しない1つ以上の第一の精製されたポリペプチドとを接触させる工程であって;ここで該1つ以上の第一の精製されたポリペプチドが配列番号22〜33に対して少なくとも95%の同一性を有する工程と;
(b)該生物学的サンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたE.canisポリペプチドに対して特異的に結合するか否かを検出する工程と;
を包含し、
ここで該生物学的サンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたポリペプチドに特異的に結合するならば、該動物はE.canisに感染している、方法。
【請求項2】
前記1つ以上の第一の精製されたポリペプチドが約15〜約75アミノ酸長である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上の第一の精製されたポリペプチドが、異種のアミノ酸配列、指示薬、アミノ酸スペーサー、アミノ酸リンカー、シグナル配列、輸送停止配列、膜貫通ドメイン、タンパク質精製リガンドまたはそれらの組み合わせに結合される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、E.canisワクチン抗原である1つ以上の第二の精製されたE.canisポリペプチドに対して、前記生物学的サンプル中の抗体が特異的に結合するか否かを判定する工程をさらに包含し、
ここで該生物学的サンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合し、かつ1つ以上の第二の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合するならば、該動物はE.canisに感染しており、かつE.canisに関するワクチン接種状態が不明であり;
該サンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合せず、かつ1つ以上の第二の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合するならば、該動物は、E.canisに感染しておらず、かつE.canisについてワクチン接種されており;そして
該サンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたポリペプチドに特異的に結合せず、かつ1つ以上の第二の精製されたポリペプチドに特異的に結合しないならば、該動物はE.canisについてワクチン接種されておらず、かつE.canisに感染していない、方法。
【請求項5】
E.canisについて動物のワクチン接種および感染状態を判定する方法であって:
(a)動物由来の生物学的サンプルを、E.canisワクチンに対する動物の免疫応答の成分である抗体に特異的に結合しない1つ以上の第一の精製されたポリペプチドであって、該1つ以上の精製されたポリペプチドが配列番号22〜33に対して少なくとも95%の同一性を有しているポリペプチドと、およびE.canisワクチンに対する動物の免疫応答の成分である抗体に特異的に結合する1つ以上の第二の精製されたポリペプチドと接触させる工程と;
(b)該生物学的サンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたポリペプチドに対して、および1つ以上の第二の精製されたポリペプチドに対して特異的に結合するか否かを検出する工程と;
を包含し、
ここで該生物学的サンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合し、かつ1つ以上の第二の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合するならば、該動物は、E.canisに感染しており、かつE.canisについてワクチン接種状態が不明であり;ここで該サンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合せず、かつ1つ以上の第二の精製されたE.canisポリペプチドに特異的に結合するならば、該動物は、E.canisに感染しておらず、かつE.canisについてワクチン接種されており;そしてここで該サンプル中の抗体が1つ以上の第一の精製されたポリペプチドに特異的に結合せず、かつ1つ以上の第二の精製されたポリペプチドに特異的に結合しないならば、該動物はE.canisについてワクチン接種されておらず、かつE.canisに感染していない、方法。
【請求項6】
前記1つ以上の第一の精製されたポリペプチドが約15〜約75アミノ酸長である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ以上の第一の精製されたポリペプチドが、異種のアミノ酸配列、指示薬、アミノ酸スペーサー、アミノ酸リンカー、シグナル配列、輸送停止配列、膜貫通ドメイン、タンパク質精製リガンドまたはそれらの組み合わせに結合される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
試験サンプル中でE.canisに特異的である抗体またはその抗原結合フラグメントの存在を判定する方法であって:
(a)1つ以上の精製されたポリペプチドが抗体またはその抗原結合フラグメントに特異的に結合するのに適した条件下で、試験サンプルを、配列番号22〜33に対して少なくとも95%の同一性を有する1つ以上の精製されたポリペプチドと接触させる工程であって、ここで、1つ以上の精製されたポリペプチドは約15〜約75アミノ酸長であり、1つ以上の第一の精製されたポリペプチドは、E.canisに特異的である抗体に特異的に結合する;および
(b)該1つ以上の精製されたポリペプチドの、該抗体またはその抗原結合フラグメントへの特異的な結合の存在を検出する工程;
を包含し、
ここで、該1つ以上の精製されたポリペプチドの該抗体または抗原結合フラグメントへの特異的な結合の存在は、該試験サンプル中のE.canisに特異的な該抗体またはその抗原結合フラグメントの存在を示す、方法。
【請求項9】
前記1つ以上の精製されたポリペプチドが、異種のアミノ酸配列、指示薬、アミノ酸スペーサー、アミノ酸リンカー、シグナル配列、輸送停止配列、膜貫通ドメイン、タンパク質精製リガンドまたはそれらの組み合わせに結合される、請求項9に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が特異的結合の量を検出する工程をさらに包含する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ以上の精製ポリペプチドが固相支持体に固定される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
組成物であって:
(a)配列番号22〜33からなる1つ以上の精製されたポリペプチド;あるいは
(b)配列番号22〜33に対して少なくとも95%の同一性を有する1つ以上の精製されたポリペプチドであって、1つ以上の精製されたポリペプチドは約15〜約75アミノ酸長である;
(c)1位のXが存在しないかまたはCであり、4位のXがHまたはQであり、25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGである、配列番号33;
(d)1位のXがCであり、4位のXがHであり、25位のXがDまたはGである、配列番号33のアミノ酸1〜27;
(e)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり;かつCが任意にアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸13〜41;
(f)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが任意にアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸24〜49;
(g)1位のXがCであるかまたは存在せず、かつここで25位のXがDまたはGである、配列番号33のアミノ酸1〜27;
(h)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが任意にアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸13〜41;
(i)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが任意にアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸24〜49;
(j)25位のXがDまたはGであり、かつCが任意にアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸13〜27;
(k)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが任意にアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸24〜41;
(l)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが任意にアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸13〜41;
(m)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが任意にアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸24〜49;
(n)25位のXがDまたはGであり、36位のXがEまたはGであり、かつCが任意にアミノ末端に存在している、配列番号33のアミノ酸24〜41;あるいは
(o)(a)〜(n)の組み合わせ、
を含んでいる、組成物。
【請求項13】
前記1つ以上の精製されたポリペプチドが多量体型である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記1つ以上の精製されたポリペプチドが、異種のタンパク質、指示薬、アミノ酸スペーサー、アミノ酸リンカー、シグナル配列、輸送停止配列、膜貫通ドメイン、タンパク質精製リガンドまたはそれらの組み合わせに結合される、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
動物において免疫応答を生じさせる方法であって:該動物に対して配列番号22〜33に対して少なくとも95%の同一性を有している1つ以上の精製されたポリペプチドまたはそれらの組み合わせを投与する工程を包含し、該1つ以上の精製されたポリペプチドが該動物において免疫応答を生じる方法。
【請求項16】
前記1つ以上の精製されたポリペプチドが約15〜約75アミノ酸長である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記1つ以上の精製されたポリペプチドが多量体型である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記1つ以上の精製されたポリペプチドが、異種のタンパク質、指示薬、アミノ酸スペーサー、アミノ酸リンカー、シグナル配列、輸送停止配列、膜貫通ドメイン、タンパク質精製リガンドまたはそれらの組み合わせに結合される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
動物におけるエーリキア・カニス感染の予防、治療または回復のための方法であって、該動物に対して:
(a)配列番号22〜33に対して少なくとも95%の配列同一性を有している1つ以上の精製されたポリペプチド、またはそれらの組み合わせ;あるいは
(b)配列番号22〜33を含んでいる1つ以上の精製されたポリペプチドをコードする1つ以上の核酸、またはそれらの組み合わせ;あるいは
(c)配列番号22〜33を含んでいる1つ以上の精製されたポリペプチドに特異的に結合する1つ以上の抗体、またはそれらの組み合わせ;
を投与する工程を包含し、
これによってE.canis感染が予防、回復または治療される、方法。
【請求項20】
患者においてE.canis感染の治療をモニタリングする方法であって:(a)請求項10の方法によるE.canis感染のための治療の前または初期段階において、患者由来の第一のサンプル中の抗E.canis抗体のレベルを測定する工程と;(b)請求項10の方法によって治療がなされた後の該患者由来の第二のサンプル中の抗E.canis抗体のレベルを測定する工程と;(c)該第一のサンプル中の抗E.canis抗体の量と、該第二のサンプル中の抗E.canis抗体の量とを比較して、変化を評価し、それによって治療をモニタリングする工程と;を包含する、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【公表番号】特表2011−504582(P2011−504582A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531339(P2010−531339)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/082038
【国際公開番号】WO2009/059170
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
【出願人】(300004500)アイデックス ラボラトリーズ インコーポレイテッド (30)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/082038
【国際公開番号】WO2009/059170
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
【出願人】(300004500)アイデックス ラボラトリーズ インコーポレイテッド (30)
【Fターム(参考)】
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