説明

オイルキャッチ装置

【課題】オイルキャッチ部で一時的に捕捉された不純物質を、オイルキャッチタンクを通過させることで不純物質から分離されて吐出エアだけを大気へ排気させる。
【解決手段】オイルキャッチ部に、オイルキャッチ部から噴出された不純物質および吐出エアとの混合体を流入させるオイルキャッチタンク10を連設し、オイルキャッチタンク10に流入した混合体を不純物質と吐出エアとに分離し、不純物質はオイルキャッチタンク10に蓄積し、不純物質から分離された吐出エアをオイルキャッチタンク10から大気へ排気させる。オイルキャッチタンク10に圧力緩和手段27を内蔵し、流入部25から流入する混合体を圧力緩和手段27に流動させ、混合体の流れの勢いを緩和させて、不純物質と吐出エアとに分離させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジンで駆動されるエアコンプッレッサで惹起された高圧エア(高圧空気)を各種のエア作動装置へ供給するエア供給ラインの途中の配管内に、高圧エアに混じる水や、エンジンオイル、燃料カスであるスラッジやカーボン等が液化した不純物質をキャッチして蓄積する一方で、不純物質を吐き出すときに使用した吐出エアを不純物質から分別分離して大気中へ排気するオイルキャッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば図7(a)および同(b)に示す後輪が一軸である後一軸タイプのトラクタ1の車台フレーム5にはエアドライヤーを有するエア処理装置(以下「従来技術」という。)3が搭載されている。係るエア処理装置3におけるエアドライヤーによって水分やエンジンオイル、スラッジ、カーボン等の不純物質を予め除去してからブレーキ用あるいはエアサスペンション用のエアシステム回路に設けたエアタンクへ圧縮エアを供給するようにしている。そして、エア処理装置3により、エアタンクのエア圧を制御したり、あるいは上記不純物質を大気へ放出したりする。なお、符号6は車台フレーム5に搭載されたカプラ装置を示す。
【0003】
より具体的には、上記エアドライヤーはエアチャンバ一体型のものであって、エアコンプッレッサとエアタンクとを繋ぐエアシステム回路を形成するエア配管の途中に設けられる。エアドライヤーはエアコンプッレッサで圧縮されたエア中に含まれる水分を除去する機能を有する。通常、エアコンプッレッサはエンジン潤滑油と同じ潤滑油系統の潤滑油が共用されてエンジンにより駆動される。このため、エアコンプッレッサで圧縮されたエアには、エンジンオイル、スラッジ、カーボン等のオイルミストが含まれることとなるが、これらオイルミスト等の不純物質はエアドライヤーに内蔵される乾燥剤やオイルフィルタといった除去手段により取り除かれ、取り除かれた不純物質は一時的にオイルキャッチ部に蓄積されるようになっている。
【0004】
他方、エアドライヤーにはエアタンク4のエア圧を制御するエアプレッシャーガバナ部が内蔵されていて、エアタンク4の内圧に応じてエアコンプッレッサで圧縮されたエアを大気中へ放出することで、エアタンク4の内圧を制御している。エア放出はエアドライヤーから吐出エアを噴出して行われる。オイルキャッチ部で一時的に捕捉して蓄積されている不純物質は、上記吐出エアが噴出されるときに、吐出エアと共に外部、例えば、路面に向けて噴射される。係る噴射動作はエンジンが運転される状況下では、車両の走行状態に関係なく頻々に自動的に実行される。こうしてエア処理装置により、不純物質がエアタンクや上記各種のシステムへ供給されるのを阻止し、ブレーキ機器やエアサスペンション用機器等のエア機器を保護している。
【0005】
なお、不純物質を捕捉する技術としては、非特許文献1に示すような構造を有するものがある。すなわち、モータースポーツ車両のエンジン吸気系に、排気を再循環させるいわゆるブローバイガスシステムを設け、エンジンのクランク室に漏れ出たブローバイガスを吸気系に再循環させる。このブローバイガスを再循環させる配管途中には、いわゆるオイルキャッチタンクが設けられ、エンジンのクランク室内へ漏れ出たブローバイガス、エンジンオイルが固化したスラッジ、カーボン等の不純物質を除去する。これにより、エンジンの出力効率の向上を図るようにしている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】http://www.carbing.co.jp/japan/products/tank/oil.shtml
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術に係るエア処理装置にあっては、どす黒く、どろどろした状態の有害な不純物質が、オイルキャッチ装置で捕捉されて蓄積されるのではなく、その都度、オイルキャッチ装置から走行路面や工場構内の道路に向けて頻々に噴出して捨てられる。そのため、道路等をどす黒い色で汚す虞がある。
【0008】
また、上記の非特許文献1に記載の技術は、オイルキャッチタンクをエンジンの吸気系に設けることで、エンジンへの吸気に不純物質が混入するのを回避した技術であり、上記従来技術のようにエアコンプッレッサで発生したエアの中に含有する水と不純物質とを、オイルキャッチ部で捕捉してから吐出エアで外部環境へ一掃除去するものとは異なり、関係がないものである。
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、オイルキャッチ部で捕捉された水分と不純物質との混合体をそのまま外部へ捨てるのでなく、一旦オイルキャッチ部で捕捉した後、その下流に設けたオイルキャッチタンクに吐出エアと共に導いた後に、吐出エアと不純物質とに分離し、不純物質をオイルキャッチタンクに捕捉して貯蔵する一方で、吐出エアはオイルキャッチタンクから大気へ排気(放出)する。これにより、不純物質の不用意な廃棄処理を回避して環境に優しいオイルキャッチ装置を提供することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、エンジンにより駆動されるエアコンプッレッサと、エアタンクとを連通するエア配管にエアドライヤーを設けると共に、前記エアドライヤーに水分、エンジンオイル、スラッジ、カーボン等の不純物質を一時的に捕捉するオイルキャッチ部を付設し、前記エアドライヤーから噴出される吐出エアにより前記不純物質を一掃するものにおいて、前記オイルキャッチ部に、前記オイルキャッチ部から噴出された不純物質および吐出エアとの混合体を流入させるオイルキャッチタンクを連設し、前記オイルキャッチタンクに流入した前記混合体を不純物質と吐出エアとに分離し、前記不純物質はオイルキャッチタンクに蓄積する一方で、不純物質から分離された吐出エアをオイルキャッチタンクから大気へ排気させることを特徴とするオイルキャッチ装置である。
【0011】
本発明によれば、オイルキャッチ部で一時的に滞溜する液体状の不純物質を、エアドライヤーから噴射される吐出エアと共に混合体として噴出させる。オイルキャッチ部の下流側に配置したオイルキャッチタンクへ、オイルキャッチ部を一掃された混合体が流入してくる。水、エンジンオイル、燃料カスであるスラッジやカーボン等の液体状の不純物質は、オイルキャッチタンクでキャッチ(捕捉)して蓄積される。他方、噴出に用いられた吐出エアは不純物質から分離されてオイルキャッチタンクから大気中へ排気される。このように、オイルキャッチタンクから分別された吐出エアだけが大気へ放出されるので、外部環境を良好な状態に保持できるようになる。
【0012】
(2)本発明はまた、前記オイルキャッチタンクは、ケーシングと、ケーシングの上方に設けられ前記オイルキャッチ部に連通する流入部と、前記ケーシングの上方に設けた排気部と、前記ケーシング内に収納され、前記流入部から流入する前記混合体を流通させることにより混合体の流れの勢いを緩和させる圧力緩和部材とを具備したことを特徴とする前記(1)記載のオイルキャッチ装置である。
【0013】
本発明によれば、混合体を圧力緩和手段に流通させるため、不純物質や吐出エアの流れの勢いを緩和することができる。これにより、混合体が不純物質と吐出エアとに分離され、分離された一方の不純物質はオイルキャッチタンク内に蓄積される。他方の吐出エアだけが分別されて排気部を経由して大気へ自然排気される。
【0014】
(3)本発明はまた、前記ケーシングに、ケーシング内のスペースを上層部と下層部とに仕切る仕切り板を設け、かつ、この仕切り板に前記吐出エアの通過を許容する通風孔を形成したことを特徴とする前記(2)記載のオイルキャッチ装置である。
本発明によれば、圧力緩和手段を流通した後の不純物質は勢いが緩和されて不純物質と吐出エアとに分散される。仕切り板の存在により、不純物質が下層部から上層部へ直接に逆流するのを抑制でき、吐出エアだけが通風孔を通して上層部へ抜けて流れる。これにより、混合体の分離が効率よく行われ、吐出エアに不純物質が混じるのを回避して、吐出エアだけを排気部から分別して放出でき、環境保全に好都合となる。
【0015】
(4)本発明はまた、前記仕切り板は、前記排気部から前記流入部に向かって水平状態から若干下降傾斜させて取り付けたことを特徴とする前記(3)記載のオイルキャッチ装置である。
本発明によれば、傾斜させた仕切り板の上下両面に不純物質が付着した場合であっても、不純物質は流入部の方向へ流れて、通風孔から下層部に滴下するようにし向けている。これにより、仕切り板に付着した不純物質が吐出エアの勢いで飛散されて排気部から大気へ放出されるのを阻止できるようになる。
【0016】
(5)本発明はまた、前記圧力緩和手段は、スチールやステンレス等の繊維状態の素材を圧縮して形成した金属ウール体であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載のオイルキャッチ装置である。
本発明によれば、圧力緩和手段を金属ウール体で形成しているので、混合体を不純物質と吐出エアとに分離するのを効率よく行えるようになる。
【0017】
(6)本発明はまた、前記仕切り板に切欠部を形成すると共に、前記金属ウール体を、前記流入部から前記切欠部を通過して前記下層部の底部にほぼ達する位置まで設けたことを特徴とする前記(5)記載のオイルキャッチ装置である。
本発明によれば、金属ウール体が仕切り板に形成した切欠部を介して保持させ、底部をケーシングに着座させているので、金属ウール体はケーシングに対して位置決め保持され、外部からの振動に対して金属ウール体がケーシング内で踊るような事態を回避できるようになる。
【0018】
(7)本発明はまた、前記通風孔および切欠部を、前記排気部から離れた前記流入部近傍の低部位に配置されたことを特徴とする前記(6)記載のオイルキャッチ装置である。
本発明によれば、通風孔および切欠部に保持される金属ウール体が排気部から離れた低部位に存在せしめることで、極力不純物質の飛散粒子が大気へ排出されるのを抑制できるようになる。
【0019】
(8)本発明はまた、前記ケーシングの下方に、ドレンコックを設けたことを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれかに記載のオイルキャッチ装置である。
本発明によれば、オイルキャッチタンクの下層部に、不純物質が所定量蓄積した場合には、ドレンコックを開操作するだけで、不純物質を適宜の容器で受け止めて取り出すことができ、保守点検作業を効率良く行えるようになる。
【0020】
(9)本発明はまた、前記ケーシングの側面に不純物質の蓄積量を外部から視認するための視認部が設けられたことを特徴とする前記(2)〜(8)のいずれかに記載のオイルキャッチ装置である。
本発明によれば、下層部に蓄積する不純物質の量を視認部を見ることで、外部から簡単に不純物質の蓄積量をチェックでき、オイルキャッチ装置の保守点検作業の効率化を図ることができるようになる。
【0021】
(10)本発明はまた、前記ケーシングの側面に、内部に蓄積した不純物質を取り出すための着脱自在な蓋部を設けたことを特徴とする前記(2)〜(9)のいずれかに記載のオイルキャッチ装置である。
本発明によれば、蓋部を取り外すことにより、オイルキャッチタンク内部の整備点検を容易に行えるようになる。なお、この場合、蓋部はパッキンによる気水密部材を介してケーシングに着脱自在に取り付けることで、不純物質が外部に漏洩するのを阻止できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、オイルキャッチ部で一時的に捕捉された不純物質を、エアドライヤーから噴出される吐出エアで一掃する。一掃されてオイルキャッチタンクに流入した混合体はオイルキャッチタンクで不純物質と吐出エアとに分別分離される。分離された不純物質はオイルキャッチタンクに蓄積される一方で、不純物質の混じらない吐出エアだけをオイルキャッチタンクから大気へ分別して排気できるので、環境を良好に保つことができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第一実施形態に係るオイルキャッチ装置の取り付け配置を模式的に示したシステム構成図である。
【図2】図1のオイルキャッチ装置の一部を破断して内部構造を示した外観図である。
【図3】上記オイルキャッチ装置の内部を流れる混合体、不純物質、吐出エアの流れを示したオイルキャッチ装置の正面図である。
【図4】(a)は図3の平面図、(b)は仕切り板の平面図である。
【図5】(a)は図3の左側面を部分的に示した側面図、同様に(b)は図3の排気部を部分的に示した側面図である。
【図6】上記実施形態の変形例に係るオイルキャッチタンクを分解して示した外観斜視図である。
【図7】(a)は後一軸型のトラクタを模式的に示した平面図、(b)は同じくその側面図、(c)は後二軸型のトラクタの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の靴に係る実施形態を図1〜図5に基づいて具体的に説明する。なお、本実施形態では、図7(a)の後一軸型ないしは図7(c)に示される後二軸型のトラクタに適用可能であり、これらに適用した場合を例に挙げて説明する。勿論バス、特装車、通常のトラック、乗用車、あるいは圧縮エアを発生させる一般産業機械の分野にも適宜に応用できるのは言うまでもない。
符号10はエア処理装置20に追加して設けられる本発明の必須要素としてのオイルキャッチタンクを示す。このオイルキャッチタンク10はエアチャンバ一体型の自体公知であって部分的に破断断面図で示したエアドライヤー11に付設したオイルキャッチ部18に連結パイプ13を介して接続されている。
そのエアドライヤー11はエア流入パイプ12を介して符号A/Cを付したエアコンプッレッサ14に接続される。符号A/Tを付したエアタンク15はエア流出パイプ16を介してエアドライヤー11に接続される。すなわち、エア流入パイプ12およびエア流出パイプ16を介してエアコンプレッサ14と、エアドライヤー11と、エアタンク15とを繋ぐことで、エアシステム回路19が形成される。
【0025】
以下の説明では、本発明に必須のオイルキャッチタンク10を説明する前に、エアシステム回路19に組み込まれたエアドライヤー11を中心としたエア処理装置20の概要を説明する。なお、係るエアドライヤー11は一例であって、これ以外の構造を備えたエアドライヤーであってもよい。
すなわち、上記エアコンプッレッサ14はエンジンオイル(潤滑油)が循環する潤滑油系統の潤滑油が共用して使用され、図示されないエンジンにより駆動される。また、図1では一個のエアタンク15を図示したが、エアシステム回路19に応じて適宜の数のタンクが設けられるのは言うまでもない。
【0026】
エアドライヤー11のエアチャンバ17の内部には、オイルキャッチ部18やドレンバルブ22、あるいは不図示の自体公知のエア圧を調圧するガバナ部や乾燥剤が内蔵される。このガバナ部はエアタンク15のエア圧に応じてエアコンプッレッサ14で圧縮されたエアを大気へ放出作動することで、各エアタンク15内のエア圧を制御する機能を有する。
なお、符合23は例えば様々な機能を有する多機能バルブでエアシステム回路19の1系統またはそれ以上の回路において、エア漏れ等が発生した場合に、他の正常な回路に必要最低限のエアを確保することで、最低限のブレーキ力が確保される機能を有するものである。
【0027】
こうしてエア処理装置20を構成するエアドライヤー11により、エアコンプッレッサ14の駆動時には、発生した圧縮エアは図1の矢印に示すように、エア流入パイプ12を通ってエアドライヤー11に流入する。オイルフィルタ18を通過することでオイルミスト等の不純物質が除去され、不図示の乾燥剤を通過することで水分が除去される。こうして、乾燥エアだけが白抜きの矢印で示すように、多機能バルブ23を経由してそれぞれ所定のエアタンク15に供給貯蔵される。
そして、エアコンプッレッサ14駆動時に、エアシステム回路19ないしはエアタンク15のエア圧がガバナ部の高規定圧に達すると、ガバナ部の作動によりガバナ部が噴射される
【0028】
吐出エアの圧力によりドレンバルブ22が開弁し、エアチャンバ17内部がドレンバルブ22を介して大気と通じる。すると、エアドライヤー11内部のエアの流れ方向は図1に示した矢印と逆方向に流れるようになる。これにより、オイルキャッチ部18に一時的に捕捉されていた不純物質および水分が吐出エアと一体渾然となった混合体として下流の連結パイプ13へ流れるようなっている。
【0029】
次に、エア処理装置20に追加して設けられる本発明の特徴的な必須要素であるオイルキャッチタンク10を図2〜図5に基づいて具体的に説明する。すなわち、オイルキャッチタンク10はステンレスまたはスチール材を板金成型により形成した箱形を成すケーシング24と、ケーシング24の上方に設けられ、連結パイプ13と接続可能な流入部25と、ケーシング24の上方に設けられエアドライヤー11から噴出される吐出エアを大気へ自然排気する煙突状の排気部26と、ケーシング24に収納され、流入部25から流入する不純物質と吐出エアとの混合体を流通させることにより流れの勢いを緩和せしめる圧力緩和手段27と、ケーシング24に収納され、ケーシング24内部空間を上層部Uと下層部Dに仕切る板金成型による仕切り板28とを具備する。
【0030】
上記仕切り板28は好ましくは排気部26から流入部25に向かって下降傾斜するように設けられる。そして、仕切り板28には傾斜した下降側の角部を切り欠いた切欠部29と、切欠部29近傍に穿たれた複数の通風孔30が形成されている。この切欠部29は流入部25の下方に配置される。なお、通風孔30は切欠部29の近傍に設けたが、仕切り板28の残りの部分にも形成してもよいのは勿論である。
【0031】
圧力緩和手段27は、その下端をケーシング24の底部に着座させ、下層部Dから上層部Uに亘って縦置きするような状態で設置され、かつ、圧力緩和手段27の上層部は流入部25と不連続とならないように接続される。これにより、混合体が漏れることなく圧力緩和手段27の内部へ流入させることができる。
圧力緩和手段27は、スチール、銅、ステンレス、黄銅等の金属素材を繊維状にして綿のように弾力を持たせた金属ウール体である。具体的には図2に示すように、例えばスチールで成る繊維状の細線を圧縮して丸めることで微細な通気孔が形成される金属ウール体としてのスチールウールが好ましい(以下、「圧力緩和手段」を「スチールウール」ともいう。)。素材としては金属以外には、合成樹脂製素材で成る繊維状の素材を利用したウール構造体であってもよい。また、メッシュ構造を有するシート状の素材を積層して形成した積層体でもよい。さらには、ストレーナやスポンジ等のフィルターを使用する態様であってもよい。換言すると、高圧の混合体が流動するときに、その流れの勢いを緩和させることが可能な構造を有する手段であれば本実施形態に適用できる。
【0032】
また、ケーシング24の、スチールウール27が着座するその下方にドレンコック31が設けられ、下層部Dに蓄積した不純物質を保守点検時に開いて容器に受け取って処理することが可能となる。
また、ケーシング24の側面に不純物質の蓄積量を外部から視認するための視認窓32が設けられている。これにより、下層部Dで不純物質の蓄積量を視認して保守点検の時期を予測できるようになる。
なお、排気部26の上方には、図1,図3,図5に示すように屋根部21が設けられ、上方から排気部26が臨めないようにしている。これにより、吐出エアの自然排気を助成する一方で、外部から雨等が入り込むのを回避できるようになる。
【0033】
本実施形態は上記のように構成されるので、オイルキャッチ部18で一時的に捕捉された水、エンジンオイル、燃料カスであるスラッジやカーボン等の液体状に混じり合った不純物質は、上記ガバナ部の作動によりエアドライヤー11から噴出される吐出エアと共に混合体となって噴出されて、連結パイプ13、流入部25を経由してオイルキャッチタンク10の内部に入る。
【0034】
不純物質と吐出エアとの混合体は圧力緩和手段としてのスチールウール27を上から下へ流下すると、その勢いは減速され、吐出エアは不純物質から分離されて圧力緩和手段27の外に出る一方で、不純物質は比重が大きいので圧力緩和手段27の下方へ流下していく。こうして不純物質はオイルキャッチタンク10の下層部Dに蓄積されていく。
他方、噴出に用いられた吐出エアは図3に示す矢印のように、オイルキャッチタンク10の上層部Uを通って排気部26から大気中へ排気される。
このように、本実施形態によれば、オイルキャッチ部18から吐出エアと一体になって噴出されてくる不純物質がオイルキャッチタンク10内の圧力緩和手段27に流れ込むことで、吐出エアと不純物質とに円滑に分離する。これにより、不純物質はオイルキャッチタンク10の下層部Dに蓄積され、吐出エアは下層部Dから通風孔30を通って上層部U
に上昇して排気部26を介して大気へ排出されていく。
【0035】
一方、視認窓32を介して下層部Dに蓄積する不純物質の量を確認できるので、保守点検作業の予定を立てることが可能となる。そして、不純物質が所定量蓄積した場合には、ドレンコック31を開操作するだけで、流下する不純物質を例えばバケツ等の容器に受け止めて取り出すことができ、不純物質で路面などを汚すことを確実に防ぐことができる。
また、圧力緩和手段27は仕切り板の切欠部を利用して保持しているので、オイルキャッチ機能を維持でき、かつ、構造の簡単なオイルキャッチ装置を得ることができる。
また、仕切り板28に形成した通風孔30を、切欠部29近傍に配置しているので、仕切り板28に付着した不純物質が仕切り板の傾斜に沿って流れ易くなり、不純物質の蓄積を促進し、かつ、仕切り板に付着した不純物質が飛散粒子となって吐出エアに紛れて大気へ排気されるのを抑制できる。
【0036】
また、圧力緩和手段27は切欠部29を利用して係止させているので、圧力緩和手段27の位置決め保持力を増大でき、ひいてはオイルキャッチタンク10の耐久性を向上できるようになる。
さらに、吐出エアと不純物質を含んだ混合体をすべて圧力緩和手段27に導入させるので、吐出エアや不純物質の有する勢いをスムーズに低減でき、不純物質と吐出エアとの分離機能を高めることができる。
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0037】
上記の実施形態に係るオイルキャッチタンク10では、ドレンコック31の開閉操作により下層部Dに溜まった不純物質を取り出す構成としたが、これ以外に図6に示す変形例に係るオイルキャッチタンク33とすることも可能である。すなわち、ケーシング本体34の側面に形成した開口部の周縁にフランジ35を設け、そのフランジ35に対峙させて蓋部材36を着脱自在にケーシング本体34に取り付ける。そして、フランジ35および蓋部材36に不図示のボルト・ナットなどの締結具を挿通するためのボルト孔37,38が設けられる。
【0038】
こうして、本変形例において、通常使用時には蓋部材36を不図示のパッキンを介してフランジ35に取り付けることで、上記実施形態と同様に不純物質を捕捉できるオイルキャッチタンク33を形成できる。また、保守点検を行うときには、蓋部材36をケーシング本体34から取り外すことで、あたかもドレンコックを開けた状態と同じようになる。すなわち、予め容易したバケツなどの容器を配置し、オイルキャッチタンク33内部に蓄積した不純物質を受け止めることにより、不純物を周囲の環境を汚すことなく容易に取り出すことができる。
【0039】
さらに、エア供給ラインを有する装置なら、トラック、バス、特装車両、乗用車だけでなく、一般の産業機械分野にも適用可能である。
また、通風孔はその大きさを大小に適宜の大きさに形成した形態でよく、また、通風孔にメッシュ素材を貼り付けてもよい。
また、上記実施形態ではドレンコック31をオイルキャッチタンク10の下面に設けたが、勿論側面に設けた態様でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明はトラクタ、トラック、バス、特装車両、乗用車、一般産業機械の分野に採用されることで、自然環境を保持しうるオイルキャッチ装置に利用される。
【符号の説明】
【0041】
10 オイルキャッチタンク
11 エアドライヤー
12 エア流入パイプ
13 連結パイプ
14 エアコンプッレッサ
15 エアタンク
16 エア流出パイプ
17 エアチャンバ
18 オイルキャッチ部
19 エアシステム回路
20 エア処理装置
21 屋根部
22 ドレンバルブ
23 多機能バルブ
24 ケーシング
25 流入部
26 排気部
27 圧力緩和手段(スチールウール)
28 仕切り板
29 切欠部
30 通風孔
31 ドレンコック
32 視認窓
33 オイルキャッチタンク
34 ケーシング本体
35,フランジ
36 蓋部材
37,38 ボルト孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンにより駆動されるエアコンプッレッサと、エアタンクとを連通するエア配管にエアドライヤーを設け、前記エアドライヤーに水分、エンジンオイル、スラッジ、カーボン等の不純物質を一時的に捕捉するオイルキャッチ部を付設し、前記エアドライヤーから噴出される吐出エアにより前記不純物質を一掃するものにおいて、前記オイルキャッチ部に、前記オイルキャッチ部から噴出された不純物質および吐出エアとの混合体を流入させるオイルキャッチタンクを連設し、前記オイルキャッチタンクに流入した前記混合体を不純物質と吐出エアとに分離し、前記不純物質はオイルキャッチタンクに蓄積する一方で、不純物質から分離された吐出エアをオイルキャッチタンクから大気へ排気させることを特徴とするオイルキャッチ装置。
【請求項2】
前記オイルキャッチタンクは、ケーシングと、ケーシングの上方に設けられ前記オイルキャッチ部に連通する流入部と、前記ケーシングの上方に設けた排気部と、前記ケーシング内に収納され、前記流入部から流入する前記混合体を流通させることにより混合体の流れの勢いを緩和させる圧力緩和部材とを具備したことを特徴とする請求項1記載のオイルキャッチ装置。
【請求項3】
前記ケーシングに、ケーシング内のスペースを上層部と下層部とに仕切る仕切り板を設け、かつ、この仕切り板に前記吐出エアの通過を許容する通風孔を形成したことを特徴とする請求項2記載のオイルキャッチ装置。
【請求項4】
前記仕切り板は、前記排気部から前記流入部に向かって水平状態から若干下降傾斜させて取り付けたことを特徴とする請求項3記載のオイルキャッチ装置。
【請求項5】
前記圧力緩和手段は、スチールやステンレス等の繊維状態の素材を圧縮して形成した金属ウール体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のオイルキャッチ装置。
【請求項6】
前記仕切り板に切欠部を形成すると共に、前記金属ウール体を、前記流入部から前記切欠部を通過して前記下層部の底部にほぼ達する位置まで設けたことを特徴とする請求項5記載のオイルキャッチ装置。
【請求項7】
前記通風孔および切欠部を、前記排気部から離れた前記流入部近傍の低部位に配置されたことを特徴とする請求項6記載のオイルキャッチ装置。
【請求項8】
前記ケーシングの下方に、ドレンコックを設けたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のオイルキャッチ装置。
【請求項9】
前記ケーシングの側面に不純物質の蓄積量を外部から視認するための視認部が設けられたことを特徴とする請求項2〜8のいずれか一項に記載のオイルキャッチ装置。
【請求項10】
前記ケーシングの側面に、内部に蓄積した不純物質を取り出すための着脱自在な蓋部を設けたことを特徴とする請求項2〜9のいずれか一項に記載のオイルキャッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−68170(P2013−68170A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207585(P2011−207585)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(502287772)横浜車輌工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】