説明

オイルシール用金型

【課題】ねじ溝を容易に形成することのできるオイルシール用金型を提供する。
【解決手段】 シールリップ61のシール面66にポンプ作用を発揮する複数のねじ突起71を具備するオイルシール50を成型するためのオイルシール用金型1において、少なくともシール面66を形成するためのシール面形成領域82を含むテーパ状のねじ形成面3に、転造ダイス10に設けられた複数のねじ溝形成用突起11の押し付けによる転造加工により形成したねじ突起71を形成するためのねじ溝4を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールリップのシール面にポンプ作用を発揮するねじ突起を具備するオイルシールを成型するのに好適なオイルシール用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、相対回転自在に組み付けられる2部材としてのハウジングと軸との間の環状隙間に装着されて、その環状隙間を密封し密封流体としての潤滑油などの漏れ防止にゴム様弾性体などからなるオイルシールが多用されている。このようなオイルシールの一種として、シールリップのシール面に、ポンプ作用を発揮する複数の螺旋状のねじを形成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6は、従来のねじ突起を具備するオイルシールの一例を示すものであり、従来のオイルシール50は、軸としての回転軸51とハウジング52との間に装着されるようにされている。そして、オイルシール50は、断面略L字形状に形成された環状の補強環54に、ゴム様弾性体で形成されたシール本体55が一体に焼き付けられて形成されている。
【0004】
前記シール本体55には、補強環54の内周部から図示しない潤滑油などの密封流体が位置する密封側OSに向かって徐々に縮径するように形成された環状のシールリップ61と、補強環54の内周部から大気側ASに向かって徐々に縮径するように形成された環状のダストリップ62とが形成されており、シールリップ61は、回転軸51と適宜な締代を有し、回転軸51と接触するリップ先端64を有している。そして、シールリップ61には、リップ先端64から密封側OSに向けて拡径された所定の油面角を有する油面65と、リップ先端64から大気側ASに向けて拡径された所定のシール角を有するシール面66とを有しており、シール面66のリップ先端側の所望の領域が、装着状態において回転軸51の表面に適宜な締代をもって当接するようにされている。また、シールリップ61のリップ先端64の径方向外側の背面には、シールリップ61と回転軸51との間のラジアル方向の緊迫力を保持するためのガータースプリング56が配設されている。
【0005】
さらに、装着状態において回転軸51と当接するシール面66には、密封側OSから大気側ASに向かって漏洩しようとする図示しない潤滑油などの密封流体を、常に密封側OSに位置させるポンプ作用を具備する複数のねじ突起71が突設されている。このねじ突起71は、図7および図8に示す形状をなし、傾斜角度θ1の角度が20〜30度程度、頂角θ2の角度が80〜120度程度、シール面66から頂点までの高さ寸法hが0.015〜0.08mm程度の断面略三角山形とされており、ねじ突起71のリップ先端側に位置する先端部71aは、リップ先端64に接続されている。また、リップ先端64は、図示しないオイルシール仕上げ用メスを用いたメスカットによる仕上げ加工により形成されている。
【0006】
一般に、オイルシール50は、図9に示すように、オイルシール用金型80のキャビティ81に補強環54を装着するとともに、図示しない未加硫のゴム生地を入れて加硫成型した後、オイルシール用金型80から図示しない成形品を取り出し、その後、メスにて成型品のリップ先端64より軸線方向外側に位置する図9の破線斜線領域にて示す不要部分85をカットした後に、ガータースプリング56を装着することにより製作されている。
【0007】
したがって、シールリップ61のシール面66にねじ突起71を設けるためには、図9に示すように、あらかじめオイルシール用金型80(一部のみ図示)のキャビティ81の一部を構成するテーパ状のねじ形成面86に、ねじ突起71を形成するためのねじ溝83(図9に誇張して示す)、すなわちねじ突起71の形状に合わせた窪みを形成する必要がある。なお、ねじ形成面86は、シール面66を形成するためのシール面形成領域82と、このシール面形成領域82の密封側OSに連なる不要部分85の一部を含むものである。
【0008】
従来、ねじ溝83の形成には、彫刻による切削加工が用いられ(例えば、特許文献1参照)、さらにねじ溝83の加工手段としては、カッターを用いたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平08−178082号公報
【特許文献2】特開2003−254439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前述した従来のオイルシール用金型80においては、ねじ溝83が彫刻による切削加工やカッターを用いた加工により形成されているため、ねじ溝83を容易に形成することができないという問題点があった。
【0011】
すなわち、従来のオイルシール用金型80においては、複数のねじ溝83を1つ1つ形成しなければならず、加工工程の複雑化・煩雑化を招くとともに、高い加工精度を必要とし、しかも加工に多大な時間がかかるものであった。
【0012】
そこで、ねじ溝を容易に形成することのできるオイルシール用金型が求められている。
【0013】
本発明はこの点に鑑みてなされたものであり、ねじ溝を容易に形成することのできるオイルシール用金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述した目的を達成するため、特許請求の範囲の請求項1に記載の本発明のオイルシール用金型の特徴は、シールリップのシール面にポンプ作用を発揮するねじ突起を具備するねじ付オイルシールを成型するためのオイルシール用金型において、少なくとも前記シール面を形成するためのシール面形成領域を含むテーパ状のねじ形成面に、前記ねじ突起を形成するためのねじ溝が、転造ダイスに設けられた複数のねじ溝形成用突起の押し付けによる転造加工により形成されている点にある。そして、このような構成を採用したことにより、転造ダイスに設けられた複数のねじ溝形成用突起をねじ形成面に押し付けて少なくとも一方を回転させるという簡便な方法で複数のねじ溝を確実かつ容易に形成することができる。
【0015】
請求項2に記載の本発明のオイルシール用金型の特徴は、請求項1において、前記ねじ形成面のうちのリップ先端の形成予定位置を含む部分に、前記ねじ溝形成用突起の高さ寸法より小さい深さ寸法の凹部が設けられている点にある。そして、このような構成を採用したことにより、転造ダイスによってねじ形成面に転写されるねじ溝の深さは、凹部の深さ寸法だけ、凹部が形成されていない部分より浅くできる。すなわち、ねじ形成面に凹部を形成するという簡便な方法で、1つのねじ溝の深さを、凹部の形成されているリップ先端側部分において浅く、凹部の形成されていないリップ先端とは反対側部分において深くすることができる。つまり、1つのねじ溝の深さを、浅い部分と深い部分とに区分することができる。その結果、オイルシールのシール面に転写形成される1つのねじ突起の高さを、リップ先端側部分において低く、リップ先端とは反対側部分において高くすることができる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の本発明のオイルシール用金型によれば、転造ダイスに設けられた複数のねじ溝形成用突起をねじ形成面に押し付けて少なくとも一方を回転させるという簡便な方法で複数のねじ溝を確実かつ容易に形成することができるなどの優れた効果を奏する。
【0017】
請求項2に記載の本発明のオイルシール用金型によれば、ねじ形成面のうちのリップ先端の形成予定位置を含む部分に、凹部を形成するという簡便な方法で、1つのねじ溝の深さを、凹部の形成されているリップ先端側部分において浅く、凹部の形成されていないリップ先端とは反対側部分において深くすることができる。つまり、1つのねじ溝の深さを、浅い部分と深い部分とに区分することができるなどの優れた効果を奏する。その結果、オイルシールのシール面に転写形成される1つのねじ突起の高さを、リップ先端側部分において低く、リップ先端とは反対側部分において高くすることができるなどの優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るオイルシール用金型の第1実施形態の要部を示す断面図
【図2】図1のオイルシール用金型におけるねじ溝の形成方法を示す模式図であり、(a)はねじ溝形成直前状態、(b)はねじ溝形成状態
【図3】本発明に係るオイルシール用金型の第2実施形態の要部を示す図1と同様の図
【図4】図3のオイルシール用金型におけるねじ溝の形成方法を示す図2と同様の図であり、(a)はねじ溝形成直前状態、(b)はねじ溝形成状態
【図5】図3のオイルシール用金型により成型されたオイルシールのシール面に転写形成される1つのねじ突起を誇張して示す模式図
【図6】従来のオイルシールの一例を示す半断面図
【図7】図6のオイルシールのねじ突起の拡大図
【図8】図7のY−Y線に沿った拡大断面図
【図9】従来のオイルシール用金型の要部を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を図面に示す実施形態により説明する。
【0020】
図1および図2は本発明に係るオイルシール用金型の第1実施形態を示すものであり、図1は要部を示す断面図、図2は図1のオイルシール用金型におけるねじ溝の形成方法を示す模式図である。
【0021】
本実施形態のオイルシール用金型1は、前述した従来の複数のねじ突起71を具備するオイルシール50の成型に用いるものを例示している(図6−図8参照)。なお、前述した従来のオイルシール50と同一の構成については図面中に同一の符号を付しその説明は省略する。
【0022】
図1に示すように、本実施形態のオイルシール用金型1(以下、単に、金型と記す。)は、少なくとも図1の上方に示す上型1Aおよび図1の下方に示す下型1Bからなる開閉自在な上下1対の金型1を組み合わせてキャビティ2を形成し、このキャビティ2に補強環54(図6−図8参照)を装着するとともに、未加硫のゴム生地を入れて加硫成型することにより、成型品を得ることができるようになっている。
【0023】
一方の金型1である下型1Bには、キャビティ2の一部を構成するねじ形成面3が設けられている。このねじ形成面3は、オイルシール50の密封側OSとされる図1の上方が細いテーパ状に形成されており、このねじ形成面3には、ねじ突起71(図6−図8参照)を形成するための複数のねじ溝4が設けられている。
【0024】
すなわち、本実施形態における金型1のねじ形成面3とは、シール面66(図6−図8参照)を形成するためのシール面形成領域82と、このシール面形成領域82の密封側OSに連なる成型後にメスカットされるリップ先端64(図6、図7参照)の不要部分85(図9参照)の一部を含むものとされている。
【0025】
本実施形態のねじ溝4は、転造ダイス10を用いた転造加工によって形成される。ここで用いられる転造ダイス10は、円柱状に形成され、その周面に複数のねじ溝形成用突起11が設けられてなるものである。そして、図2(a)に示すねじ溝形成直前状態において、転造ダイス10の周面に設けられたねじ溝形成用突起11を、ねじ形成面3に対向させ、その後、図2(a)の太矢印にて示すように、ねじ溝形成用突起11をねじ形成面3に所定の圧力Fで押し付けるとともに、金型1、本実施形態においては下型1Bあるいは転造ダイス10の少なくとも一方、本実施形態においては、転造ダイス10を回転させる転造加工により形成される。この転造加工により形成されたねじ溝4のねじ溝形成状態を図2(b)に示す。
【0026】
ここで、転造ダイス10のねじ溝形成用突起11の高さ寸法Hと、ねじ形成面3に形成されるねじ溝4の深さ寸法HAはほぼ同一となるとともに、ねじ溝4の深さ寸法HAとオイルシール50に形成されるねじ突起71の高さ寸法hはほぼ同一となる。
【0027】
なお、ねじ溝4の加工に使用する転造ダイス10の数は1つでよい。勿論、設計コンセプトなどの必要に応じて転造ダイス10の数を複数とすることができる。また、転造ダイス10は金型1よりも硬い材料で形成することが、ねじ溝4を転造加工により形成するうえで肝要である。この場合、金型1は一般に構造用合金鋼鋼材を材料として形成されているのに対し、転造ダイス10の材料としては、構造用合金鋼鋼材よりも硬い工具鋼鋼材が用いられる。
【0028】
その他の構成については従来の金型と同様とされているので、その詳しい説明については省略する。
【0029】
つぎに、前述した構成からなる本実施形態の作用について説明する。
【0030】
本実施形態の金型1によれば、ねじ形成面3に、ねじ突起71を形成するためのねじ溝4が、転造ダイス10に設けられた複数のねじ溝形成用突起11の押し付けによる転造加工により形成されているから、転造ダイス10に設けられたねじ溝形成用突起11をねじ形成面3に押し付けて少なくとも一方を回転させるという簡便な方法で複数のねじ溝4を確実かつ容易に形成することができる。
【0031】
また、本実施形態の金型1によれば、転造ダイス10に設けられた複数のねじ溝形成用突起11をねじ形成面に押し付けて転造ダイス10を回転させるという簡便な方法で複数のねじ溝4を形成することができるから、複数のねじ溝4を1つの連続した工程で容易に形成することができるので、従来に比べて加工に手間がかからない。
【0032】
図3は本発明に係るオイルシール用金型の第2実施形態の要部を示す断面図である。
【0033】
本実施形態の金型21は、前述した第1実施形態の金型1におけるねじ形成面3のうちのリップ先端64の形成予定位置26を含む部分に、転造ダイス10のねじ溝形成用突起11の高さ寸法より小さい深さ寸法の凹部25を周方向に沿って設けたものである。
【0034】
すなわち、図3に示すように、本実施形態の金型21は、少なくとも図3の上方に示す上型21Aおよび図3の下方に示す下型21Bからなる開閉自在な上下1対の金型21を組み合わせてキャビティ22を形成し、このキャビティ22に補強環54(図6−図8参照)を装着するとともに、未加硫のゴム生地を入れて加硫成型することにより、成型品を得ることができるようになっている。
【0035】
一方の金型21、本実施形態における下型21Bには、前述した第1実施形態の金型1と同様に、キャビティ22の一部を構成するねじ形成面23が設けられている。このねじ形成面23は、オイルシール50の密封側OSとされる図3の上方が細いテーパ状に形成されている。このねじ形成面23には、ねじ突起71(図6−図8参照)を形成するための複数のねじ溝24が設けられているとともに、ねじ形成面23のうちのリップ先端64の形成予定位置26を含む部分には、後述する転造ダイス30のねじ溝形成用突起31の高さ寸法H(図4参照)より小さい深さ寸法Dの凹部25が周方向に沿って設けられている。
【0036】
すなわち、本実施形態における金型21のねじ形成面23とは、前述した第1実施形態の金型1と同様に、シール面66(図6−図8参照)を形成するためのシール面形成領域82と、このシール面形成領域82の密封側OSに連なる成型後にメスカットされるリップ先端64(図6、図7参照)の不要部分85(図9参照)の一部を含むものとされている。
【0037】
本実施形態のねじ溝24は、前述した第1実施形態と同様に、図4(a)に示すねじ溝形成直前状態において、円柱状の転造ダイス30の周面に設けられた複数のねじ溝形成用突起31を、ねじ形成面23に対向させ、その後、図4(a)の太矢印にて示すように、ねじ溝形成用突起31をねじ形成面23に所定の圧力Fで押し付けるとともに、金型21、本実施形態においては下型21Bあるいは転造ダイス30の少なくとも一方、本実施形態においては、転造ダイス30を回転させる転造加工により形成される。この転造加工により形成されたねじ溝24のねじ溝形成状態を図4(b)に示す。
【0038】
ここで、本実施形態においては、ねじ溝形成用突起31の高さ寸法Hが0.05mm程度とされており、凹部25の深さ寸法Dは、0.025mm程度とされている。勿論、凹部25の深さ寸法Dは、転造ダイス30のねじ溝形成用突起31の高さ寸法Hより小さければよい。
【0039】
密封側OSに形成されるねじ形成面23と凹部25との境界部分は、成型品における不要部分85に形成されている(図3)。
【0040】
よって、ねじ形成面23のうちのリップ先端64の形成予定位置26を含む部分に、ねじ溝形成用突起31の高さ寸法より小さい深さ寸法の凹部25が周方向に沿って設けられていることになる。
【0041】
本実施形態のねじ溝24は、前述した第1実施形態の金型1のねじ溝4と同様に、図4(a)に示すねじ溝形成直前状態において、転造ダイス30の周面に設けられた複数のねじ溝形成用突起31を、凹部25が形成されているねじ形成面23に対向させ、その後、図4(a)の太矢印にて示すように、ねじ溝形成用突起31をねじ形成面23に所定の圧力Fで押し付けるとともに、金型21、本実施形態においては下型21Bあるいは転造ダイス30の少なくとも一方、本実施形態においては、転造ダイス30を回転させる転造加工により形成される。この転造加工により形成されたねじ溝24は、凹部25の形成されている部分において浅く、凹部25の形成されていない部分において深くすることができる。つまり、1つのねじ溝24の深さを、図4(b)に示すように、深さ寸法が0.025mm程度の浅い部分24aと深さ寸法が0.05mm程度の深い部分24bとに区分することができる。そして、ねじ溝24の浅い部分24aが、シール面66のリップ先端側に設けられ、ねじ溝24の深い部分24bが、不要部分85およびシール面66のリップ先端側とは反対側に設けられる。
【0042】
すなわち、転造ダイス30のねじ溝形成用突起31の高さ寸法Hと、ねじ形成面23に形成されるねじ溝24の深い部分24bの深さ寸法HAと、図5に示すオイルシール50Aに形成される高さの高いねじ突起71Abの高さ寸法hbとは、ほぼ同一となる。
【0043】
また、ねじ形成面23に形成されるねじ溝24の浅い部分24aの深さ寸法HBは、ねじ溝24の深い部分24bの深さ寸法HAから凹部25の深さ寸法Dを減算したものと同じになるとともに、図5に示すオイルシール50Aに形成される高さの低いねじ突起71Aaの高さ寸法haと、ほぼ同じになる。
【0044】
なお、オイルシール50Aに形成される高さの低いねじ突起71Aaの高さ寸法haは、オイルシール50Aに形成される高さの高いねじ突起71Abの高さ寸法hbから凹部25の深さ寸法Dを減算したものともほぼ同じになる。
【0045】
したがって、本実施形態の金型21により成型されたオイルシール50Aのシール面66に転写形成される1つのねじ突起71は、その高さがリップ先端側部分において低く、リップ先端側とは反対側部分において高くなる。この本実施形態の金型21により成型されたオイルシール50Aのシール面66に転写形成される1つのねじ突起71を図5に誇張して示す。なお、図5における符号71Aaは密封側OSであるリップ先端側に形成された突起71の低い部分を示しており、符号71Abは大気側ASであるリップ先端側とは反対側部分に形成されたねじ突起71の高い部分を示している。ここで、オイルシール50Aのシール面66には、金型21のねじ形成面23と凹部25との境界部分に対応する段差部66aが形成され、この段差部66aを堺としてリップ先端側に高さの低いねじ突起71Aaが、その反対側に高さの高いねじ突起71Abがそれぞれ形成される。
【0046】
また、本実施形態の金型21においては、ねじ形成面23に、凹部25を形成した後に、ねじ溝24が形成されているが、ねじ溝24を形成した後に凹部25を形成してもよく、ねじ溝24および凹部25のどちらを先に形成してもよい。但し、本実施形態の如く、凹部25を形成した後にねじ溝24を形成することが、ねじ溝24を形成した後に凹部25を形成する場合に比較して、ねじ溝24の形状が安定するという意味で好ましい。
【0047】
その他の構成については従来した第1実施形態の金型1と同様とされているので、その詳しい説明については省略する。
【0048】
本実施形態の金型21によれば、前述した第1実施形態の金型1と同様の効果を奏することができるとともに、転造ダイス30のねじ溝形成用突起31によってねじ形成面23に転写されるねじ溝24の深さを、凹部25の深さ寸法だけ、凹部25が形成されていない部分より浅くできる。
【0049】
すなわち、本実施形態の金型21によれば、ねじ形成面23に凹部25を形成するという簡便な方法で、1つのねじ溝24の深さを、凹部25の形成されている部分において浅く、凹部25の形成されていない部分において深くすることができる。つまり、1つのねじ溝24の深さを、浅い部分24aと深い部分24bとに区分することができる(図3、図4参照)。
【0050】
その結果、本実施形態の金型21によれば、オイルシール50Aのシール面66に転写形成される1つのねじ突起71を、オイルシール50Aにおける密封側OSに位置するリップ先端側部分において高さの低いねじ突起71Aaと、オイルシール50Aにおける大気側ASに位置するリップ先端側とは反対側部分において高さの高いねじ突起71Abとの2種類にすることができる(図5参照)。さらに、本実施形態の金型21では、凹部25の深さを変えることにより、高さの低いねじ突起(リップ先端側のねじ突起)71Aaの高さhaを容易にコントロールすることができる。
【0051】
なお、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【0052】
例えば、転造ダイスのねじ溝形成用突起により形成されるオイルシールのねじ突起の形状としては、アンダーカットがない限り、舟底形状、テーパ形状などの種々の形状を用いることができる。さらに、凹部の深さを2種類とすることにより、1つのねじ突起71の高さを3種類とすることもできる。
【符号の説明】
【0053】
1、21 (オイルシール用)金型
1A、21A 上型
1B、21B 下型
2、22 キャビティ
3、23 ねじ形成面
4、24 ねじ溝
10、30 転造ダイス
11、31 溝形成用突起
24a 浅い部分
24b 深い部分
25 凹部
26 (リップ先端の)形成予定位置
50、50A オイルシール
54 補強環
55 シール本体
61 シールリップ
64 リップ先端
66 シール面
71 ねじ突起
71a 先端部
71Aa 低い部分
71Ab 高い部分
85 不要部分
D (凹部の)深さ寸法
H (ねじ溝形成用突起の)高さ寸法
HA (ねじ溝の深い部分の)深さ寸法
HB (ねじ溝の浅い部分の)深さ寸法
h (ねじ突起の)高さ寸法
ha (高さの低いねじ突起の)高さ寸法
hb (高さの高いねじ突起の)高さ寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールリップのシール面にポンプ作用を発揮する複数のねじ突起を具備するオイルシールを成型するためのオイルシール用金型において、
少なくとも前記シール面を形成するためのシール面形成領域を含むテーパ状のねじ形成面に、前記ねじ突起を形成するためのねじ溝が、転造ダイスに設けられた複数のねじ溝形成用突起の押し付けによる転造加工により形成されていることを特徴とするオイルシール用金型。
【請求項2】
前記ねじ形成面のうちのリップ先端の形成予定位置を含む部分に、前記ねじ溝形成用突起の高さ寸法より小さい深さ寸法の凹部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のオイルシール用金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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