説明

オイルパン

【課題】開閉弁を開閉弁駆動手段によって駆動する場合に、両者をオイルパンの内部において離して配置しても開閉弁駆動手段の駆動力を開閉弁に確実に伝達するとともに、動作不良を起こすことなく開閉弁を開閉動作させる。
【解決手段】第1室(R1)と第2室(R2)とを連通させる連通孔(21)が形成された仕切部材(20)と、連通孔(21)を開閉する第1開閉弁(30)と、第1室(R1)のオイルの温度が所定温度以下のときに第1開閉弁(30)を閉状態にする一方、所定温度よりも高くなったときに第1開閉弁(30)を開状態にする開閉弁駆動装置(50)とを備えたオイルパン(1)において、開閉弁駆動装置(50)はバイメタルを有し、第1開閉弁(30)と開閉弁駆動装置(50)とを連結して開閉弁駆動装置(50)の駆動力を第1開閉弁(30)に伝達する第1連結部材(35)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば内燃機関等の内部を循環するオイルを貯留するためのオイルパンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンの下部にはオイルパンが設けられている。冷間時のエンジン始動直後は、オイルが低温であることから粘度の高いオイルがエンジンに吸い込まれることになり、燃費の悪化を招くことが考えられる。このことを極力抑制すべく、2層式のオイルパンが考案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1では、オイルパンの内部をオイルの吸入口が配置される副室と、吸入口が配置されない主室とに仕切るためのオイルパンセパレータが設けられている。このオイルパンセパレータには、主室と副室とを連通させる連通孔が形成され、この連通孔は、線膨張係数の異なる2種類の金属板を貼り合わせてなる板状のバイメタル弁によって開閉されるようになっている。
【0004】
従って、オイルパン内のオイルの温度が低温のときには、バイメタル弁によって連通孔を閉じて副室内のオイルをエンジンに循環させて早期に昇温させて燃費の低減を図り、副室内のオイルの温度が上昇し始めると、バイメタル弁が開き始めて副室内の昇温したオイルが主室に流れ込んで混合し、これによってオイルの部分的な劣化を抑制することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4239933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、バイメタル弁が連通孔を覆う平板状となっており、バイメタル弁の形状やバイメタル弁を構成する金属の組み合わせを工夫したとしても、連通孔の開度を大きくすることはできない。このため、主室のオイルをスムーズに副室に流入させることが困難であり、例えば、暖機終了後にエンジンが高回転域まで回されたときにオイルの温度が上昇し続けることになる。これにより、オイルの劣化が早まり、ひいては、エンジンの燃費効率を低下させることに繋がるだけでなく、エンジンの寿命低下を招く恐れがある。
【0007】
このことに対し、例えば電動モーター等を利用したアクチュエータを用いて開閉弁を動作させることが考えられる。
【0008】
しかしながら、オイルパンの内部には上記した仕切部材の他、オイルストレーナ等も配設されているので、アクチュエータの配設が可能なスペースは限られている。このため、アクチュエータを開閉弁と一体的にオイルパンの内部に配設することができずに、例えば本願出願人が特願2011−018897号として先に出願しているように、オイルパンの外部に取り付けて外部から開閉弁を動作させるように互いに離さなければならない場合がほとんどである。
【0009】
また、仮に、オイルパンの内部に電動モーター等を利用したアクチュエータを配設すると、アクチュエータを配設するスペースを確保できたとしても、アクチュエータがオイルに浸かってしまい、動作不良を起こす懸念があるので、オイルに浸からないようにしなければならず、配設位置の設定が困難である。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、オイルパンの第1室と第2室との連通孔を開閉する開閉弁を開閉弁駆動手段によって駆動する場合に、両者をオイルパンの内部において離して配置しても開閉弁駆動手段の駆動力を開閉弁に確実に伝達するとともに、動作不良を起こすことなく開閉弁を開閉動作させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明では、開閉弁駆動手段をバイメタルで構成し、しかも、開閉弁駆動手段と開閉弁とを連結部材で連結することによって駆動力を開閉弁に伝達するようにした。
【0012】
第1の発明は、オイルを貯留するオイルパン本体と、
上記オイルパン本体の内部に設けられ、該オイルパン本体の内部空間を、オイルの吸入口が位置する第1室とオイルの吸入口が位置しない第2室とに仕切るとともに、上記第1室と上記第2室とを連通させる連通孔が形成された仕切部材と、
上記連通孔を開閉する第1開閉弁と、
上記第1室のオイルの温度が所定温度以下のときに上記第1開閉弁を閉状態にする一方、所定温度よりも高くなったときに上記第1開閉弁を開状態にする開閉弁駆動手段とを備えたオイルパンにおいて、
上記開閉弁駆動手段は動力発生部材として長尺状バイメタルを有しており、
上記第1開閉弁と上記開閉弁駆動手段とは互いに離れて配置されており、
上記第1開閉弁と上記開閉弁駆動手段とを連結して該開閉弁駆動手段の駆動力を該第1開閉弁に伝達する第1連結部材を備えていることを特徴とするものである。
【0013】
この構成によれば、開閉弁駆動手段が長尺状バイメタルを有しているので、従来の平板状のバイメタルに比べて第1開閉弁の作動量を大きくすることが可能になる。また、電動モーターを有するアクチュエータとは異なり、オイルに浸かっても動作不良を起こすことはない。
【0014】
そして、開閉弁駆動手段と第1開閉弁とを第1連結部材で連結しているので、両者が離れて配置されていても、開閉弁駆動手段の駆動力を第1開閉弁に確実に伝達することが可能になる。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、
上記オイルパン本体には、第2開閉弁が設けられ、
上記第2開閉弁と上記開閉弁駆動手段とを連結する第2連結部材を備えていることを特徴とするものである。
【0016】
この構成によれば、仕切部材に第1開閉弁と第2開閉弁とを設けたので、第1室と第2室との間でのオイルの流通量を多く確保することが可能になり、オイルの温度が異常に上昇するのを抑制することが可能になる。
【0017】
この場合に、第1開閉弁と第2開閉弁とを単一の開閉弁駆動手段で駆動することが可能になるので、開閉動作を同期させることができる。また、部品点数が少なくて済む。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明によれば、長尺状バイメタルを有する開閉弁駆動手段と第1開閉弁とを第1連結部材で連結するようにしたので、開閉弁駆動手段と第1開閉弁とをオイルパンの内部において離して配置しても開閉弁駆動手段の駆動力を第1開閉弁に確実に伝達できるとともに、動作不良を起こすことなく第1開閉弁を開閉動作させることができる。
【0019】
第2の発明によれば、オイルパン本体に第1開閉弁と第2開閉弁とを設け、これら開閉弁を開閉弁駆動手段で駆動するようにしたので、第1室と第2室との間のオイルの流通量を多く確保しながら、部品点数の増加を抑制して低コスト化を図ることができる。また、第1開閉弁と第2開閉弁とを同期させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態1にかかるオイルパンの断面図である。
【図2】仕切部材の斜視図である。
【図3】仕切部材の開閉弁近傍を拡大した斜視図である。
【図4】開閉弁が閉状態にある仕切部材を後側から見た図である。
【図5】開閉弁が開状態にある仕切部材を後側から見た図である。
【図6】巻き形状バイメタルを組み付けた状態の仕切部材の斜視図である。
【図7】開閉弁の斜視図である。
【図8】開閉弁の側面図である。
【図9】開閉弁駆動装置を巻き形状バイメタル側から見た斜視図である。
【図10】伝達部材の斜視図である。
【図11】伝達部材の正面図である。
【図12】リンクの側面図である。
【図13】実施形態2にかかるオイルパンの断面図である。
【図14】実施形態2にかかる仕切部材を左後方から見た斜視図である。
【図15】実施形態2にかかる仕切部材の右後方から見た斜視図である。
【図16】実施形態2にかかる開閉弁が閉状態にある仕切部材の側面図である。
【図17】実施形態2にかかる開閉弁が開状態にある仕切部材の側面図である。
【図18】実施形態2にかかる開閉弁駆動装置を巻き形状バイメタル側から見た斜視図である。
【図19】実施形態2にかかる伝達部材の正面図である。
【図20】実施形態3にかかる仕切部材の側面図である。
【図21】実施形態3にかかる仕切部材の駆動装置配設用凹部近傍を第1室側から見た図である。
【図22】実施形態3にかかる伝達部材を巻き形状バイメタル側から見た斜視図である。
【図23】実施形態3にかかる伝達部材の斜視図である。
【図24】実施形態3の変形例にかかる図21相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0022】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1にかかるオイルパン1の斜視図である。このオイルパン1は、例えば自動車のエンジンの下部に設けられるものであり、エンジンの内部を循環するオイルを貯留しておくためのものである。
【0023】
オイルパン1は、オイルパン本体10と、オイルパン本体10の内部に配設されて該オイルパン本体10の内部を第1室R1と第2室R2とに仕切るための仕切部材20とを備えている。仕切部材20には、第1室R1と第2室R2とを連通させるための連通孔21が形成されており、この連通孔21は、開閉弁(第1開閉弁)30によって開閉されるようになっている。また、開閉弁30は、開閉弁駆動装置(開閉弁駆動手段)50によって駆動されるようになっている。
【0024】
尚、本実施形態の説明では、説明の便宜を図るため、例えば、車両への搭載状態で車両前側となる側の「前」といい、車両後側となる側を「後」といい、車両左側となる側を「左」といい、車両右側となる側を「右」というものとする。
【0025】
オイルパン本体10は、上方に開放する凹状の樹脂製部材であり、エンジンブロックE(図1に仮想線で示す)の下部を覆うように形成されている。オイルパン本体10の上端部にはフランジ11が形成されている。このフランジ11がエンジンブロックEに固定されている。また、図示しないが、オイルパン本体10の底壁部にはドレン部が設けられている。
【0026】
仕切部材20も上方に開放する凹状の樹脂製部材である。図2に示すように、仕切部材20の上端部には、エンジンブロックEに締結固定するためのボルト等が挿通する複数の挿通孔20a,20aが形成されている。図1に示すように、仕切部材20の内部空間は、オイルの吸入口41が位置する第1室R1であり、オイルパン本体10の内部空間で、かつ、仕切部材20の外部は、オイルの吸入口41が位置しない第2室R2である。
【0027】
オイルの吸入口41は、オイルストレーナ40によって形成されている。すなわち、エンジンのオイルポンプ(図示せず)の吸い込み口には、オイルストレーナ40の下流側が接続されている。オイルストレーナ40は、内部にフィルタ42を備えたものである。オイルストレーナ40の吸入口41は、仕切部材20の底壁部近傍に位置している。
【0028】
尚、オイルストレーナ40は、仕切部材20と一体化してもよいし、別体にしてもよい。
【0029】
仕切部材20の底壁部は、オイルパン本体10の底壁部近傍に位置している。また、仕切部材20の上端部には、弾性部材からなるシール部材(ガスケット部材)Sが周方向に設けられている。オイルパン本体10及び仕切部材20をエンジンブロックEに取り付けると、シール部材Sがオイルパン本体10の内周面と仕切部材20の上端部との間をシールするように位置することになる。尚、通常時のオイルレベルは図1に仮想線Lで示す。
【0030】
仕切部材20の左側壁部20bの下部は略上下方向に延びている。上記連通孔21は左側壁部20bの下部に形成されている。左側壁部20bの連通孔21が形成されている部位よりも上側は、上端に近づくほど左に位置するように大きく湾曲形成されている。
【0031】
図3に破線で示すように、連通孔21は、前後方向の寸法が上下方向の寸法よりも長く設定された略矩形状である。
【0032】
仕切部材20の左側壁部20bの上下方向中間部には、開閉弁30を支持するための後側及び前側支持部25,26が設けられている。前側支持部26は、左側壁部20bの連通孔21よりも前側から左側へ向かって突出して上下方向に延びる板状に形成されている。また、後側支持部25は、左側壁部20bの連通孔21よりも後側から左側へ向かって突出して上下方向に延びる板状に形成されている。
【0033】
図3に示すように、前側支持部26には、開閉弁30が有する前側回動軸32の軸部32b(図7に破線で示す)を受ける軸受孔26aが厚み方向(前後方向)に貫通するように形成されている。また、前側支持部26には、開閉弁30の前側回動軸32の軸部32bを軸受孔26aに導くための切欠部26bが軸受孔26aに連なるように形成されている。
【0034】
後側支持部25には、開閉弁30が有する後側回動軸33の軸部33b(図7に示す)を受ける軸受孔25aと、軸受孔25aに連なる切欠部25bとが形成されている。軸受孔25a,26aは同心上に位置している。
【0035】
図6等に示すように、仕切部材20の後壁部20cの左右方向略中央部には、開閉弁駆動装置50を配設するための駆動装置配設用凹部27が形成されている。駆動装置配設用凹部27は、後壁部20cの上下方向中間部から下端部に亘って形成されている。駆動装置配設用凹部27の略中央部には、円筒部27aが略水平に後方へ突出するように形成されている。駆動装置配設用凹部27における円筒部27a内の領域には、貫通孔27rが形成されている。
【0036】
駆動装置配設用凹部27の下側領域は、右側へ拡大しており、この右側部分27bには、バイメタル固定部27cが円筒部27aと同様に後方へ突出するように形成されている。バイメタル固定部27cは、略上下に長い角柱状をなしている。バイメタル固定部27cの上部には、上部溝27dが形成されている。上部溝27dは、左側へ開放するとともに、後側へも開放している。また、バイメタル固定部27cの上部溝27dよりも下側には、中間溝27eが形成され、中間溝27eよりも下側には下部溝27fが形成されている。中間溝27e及び下部溝27fは、上部溝27dと同様に左側及び後側に開放している。
【0037】
図7に示すように、開閉弁30は、連通孔21を閉塞する閉塞板部31と、閉塞板部31の上端の前縁部から前方へ突出する前側回動軸32と、閉塞板部31の上端の後縁部から後方へ突出する後側回動軸33と、アーム34とを備えている。開閉弁30は、樹脂の一体成形品である。尚、アーム34は、閉塞板部31や前側回動軸32、後側回動軸33と一体成形してもよいし、別部材として組み付けるようにしてもよい。
【0038】
閉塞板部31は、連通孔21よりも大きな矩形状とされており、仕切部材20の左側壁部20bの外側、即ち第2室R2内に配置される。閉塞板部31の両側縁部には、リブ31a,31aが形成されている。リブ31a,31aは省略することも可能である。
【0039】
図3に示すように、前側回動軸32の軸部32bは上記前側支持部26の切欠部26bから軸受孔26aに挿入されて該軸受孔26aにより回動可能に支持される。図7に示すように、前側回動軸32の端部には、軸受孔26aよりも大径の円板部32aが形成されている。円板部32aは軸受孔26aで支持された前側回動軸32の軸部32bが軸方向に移動するのを規制して抜けを防止するためのものである。
【0040】
後側回動軸33の軸部33bは上記後側支持部25の切欠部25bから軸受孔25aに挿入されて該軸受孔25aにより回動可能に支持される。後側回動軸33の軸部33bの閉塞板部31側の端部には、後側回動軸33が軸方向に移動するのを規制するため(抜けを防止するため)の円板部33aが形成されている。
【0041】
また、開閉弁30の後側の円板部33aの中心部には、軸方向に後側へ突出する棒状部33cが形成されている。棒状部33cの突出方向の端部は、開閉弁30を仕切部材20に取り付けた状態で、仕切部材20の後壁部20cよりも後側に位置するようになっている。
【0042】
図8にも示すように、棒状部33cの端部には、径方向に延びるアーム34が設けられている。アーム34の延びる方向は、開閉弁30が閉状態にあるときに(図4に示す)右斜め上方とされている。棒状部33cの周面とアーム34の側面とは補強用の連結板部34aによって連結されており、アーム34の変形が抑制されている。また、連結板部34aによって棒状部33cの変形も抑制される。
【0043】
アーム34の先端部には、後述のリンク(第1連結部材)35の第1取付軸35aが回動可能に取り付けられるリンク取付用軸受部34cに連なる切欠部34bが設けられている。
【0044】
開閉弁30は、前側及び後側回動軸32,33の軸心周りに回動し、図5に示すように、仕切部材20を後側から見たとき、開閉弁30が時計回りに回動すると連通孔21が開かれ、連通孔21を開いた状態から反時計回りに回動すると連通孔21が閉じられる。
【0045】
図9に示すように、開閉弁駆動装置50は、巻き形状バイメタル51と、巻き形状バイメタル51の熱変形力を後述のリンク35に伝達するための伝達部材52とを備えており、図2等に示すように上記駆動装置配設用凹部27内に配設されている。従って、開閉弁30と開閉弁駆動装置50とは、左右方向に互いに離れて配置されることになる。
【0046】
巻き形状バイメタル51は、開閉弁30を開閉するための動力を発生する動力発生部材であり、線膨張係数の異なる2種類の金属製板材を貼り合わせてなる長尺状バイメタルを、円を描くように渦巻き状に幾重にも巻いて成形したものである。巻き形状バイメタル51を展開すると、全長は約300mm〜500mm程度である。
【0047】
巻き形状バイメタル51の内周端部は長尺状バイメタルの一端側で構成された巻き始点部51aとされており、巻き形状バイメタル51の中心部に向かって直線状に延びる板状となっている。
【0048】
巻き形状バイメタル51の外周端部は、長尺状バイメタルの他端側で構成された巻き終点部51bとされている。巻き終点部51bは、径方向外方へ向かって延びる板状となっている。
【0049】
図6に示すように、巻き終点部51bは、仕切部材20に組み付けられた状態で開閉弁駆動装置50の右側に位置するようになっており、仕切部材20の上部溝27d、中間溝27e及び下部溝27fのうちのいずれか1つに挿入された状態でバイメタル固定部27cに固定されるようになっている。
【0050】
巻き形状バイメタル51は、巻き終点部51bを固定した状態で、低温状態から加熱していくと、巻き始点部51aが巻き中心を回動中心として反時計周りに回動するように構成されている。低温状態とは、例えば5℃以下であり、この温度が本発明の所定温度に相当する。
【0051】
また、詳細は後述するが、巻き形状バイメタル51は低温時に仕切部材20に取り付けられた状態で、開閉弁30を閉方向に付勢して連通孔21を閉じるように巻き始点部51aと巻き終点部51bとの位置が設定されている。
【0052】
伝達部材52は、仕切部材20に取り付けられ、巻き形状バイメタル51の側面を覆うように構成されている。図10に示すように、伝達部材52は、巻き形状バイメタル51の側面を覆う円形の板部53と、板部53の裏面(仕切部材20への取付状態で巻き形状バイメタル51の側面を覆う面)に形成された周壁部54と、板部53の裏面の略中央部から突出する支軸55と、板部53の周縁部に形成されたリンク取付部56とを備えている。
【0053】
図9に示すように、板部53の外径は、巻き形状バイメタル51の外径よりも若干大きめに設定されており、巻き形状バイメタル51の側面の全体が板部53によって覆われる。周壁部54は、巻き形状バイメタル51の内周面に沿って延びるように形成されており、巻き形状バイメタル51の内周部が周壁部54の外側に配設されるようになっている。
【0054】
伝達部材52の周壁部54の周方向の一部には、巻き形状バイメタル51の巻き始点部51aが挿入されるスリット54aが形成されている。スリット54aの両縁部には、周壁部54内へ向かって延びる第1板部54bと、第2板部54cとが連なっている。第1板部54bと第2板部54cとの離間寸法は、巻き形状バイメタル51の巻き始点部51aの肉厚と同じか又はがたつきがない程度に若干長めに設定されている。第2板部54cの端部は第1板部54b側へ向けてL字状に屈曲している。
【0055】
尚、周壁部54は、スリット54a以外は周方向に連続して形成されているが、断続的に形成されていてもよい。
【0056】
支軸55は、仕切部材20の駆動装置配設用凹部27の貫通孔27r(図6に示す)に挿入された状態で貫通孔27rの内面によって回動可能に支持され、従って、伝達部材52は、支軸55周りに回動可能となる。支軸55の外径は、貫通孔27rの内径と同じか、若干小さく形成されているので、伝達部材52はがたつきなく回動する。
【0057】
支軸55は、径方向に2分割された2つの軸構成部55a,55aで構成されている。軸構成部55a,55aの間には隙間が形成されており、軸構成部55a,55aは径方向に弾性変形するようになっている。軸構成部55a、55aの先端部には、径方向外方へ突出する爪部55b,55bがそれぞれ形成されている。支軸55は、仕切部材20の駆動装置配設用凹部27の貫通孔27rに挿入された状態で爪部55b,55bが仕切部材20の開口孔20dの内側端に位置し、開口孔20dの周縁部に対し仕切部材20の内側から係合して支軸55の抜けが抑制されることになる。また、板部53の支軸55に対応する部位には、凹部53a(図2等に示す)が形成されている。これにより、裏面側に変形の起こりにくい段部55cが形成されることになり、この段部55cに、仕切部材20の円筒部27aの先端面27sを、前後方向のがたつきを防止して高精度に当接させることができるので、板部53をより一層スムーズに回動させることができる。
【0058】
図2に示すように、リンク取付部56は、リンク35の第2取付軸35cが回動可能に取り付けられる部位であり、図10に示すように、板部53の周縁部から該板部53の裏側へ延びた後、径方向外方へ向けて延びるように形成されており、全体として略L字状に折り曲げられた板状をなしている。図11にも示すように、リンク取付部56の先端部には、アーム34の先端部と同様なリンク取付用軸受部56bに連なる切欠部56aが形成されている。
【0059】
リンク取付部56の形成位置は、周壁部54のスリット54aの形成位置に対し、伝達部材52の周方向に約90゜離れている。
【0060】
リンク35は、開閉弁30のアーム34と、開閉弁駆動装置50の伝達部材52とを連結し、開閉弁駆動装置50の駆動力を開閉弁30に伝達するためのものである。リンク35は、樹脂材からなるものであり、略直線状に延びている。
【0061】
図12に示すように、リンク35の側面の長手方向一端部には、開閉弁30のアーム34に回動可能に取り付けられる第1取付軸35aが形成されている。第1取付軸35aは、アーム34のリンク取付用切欠部34b(図8に示す)に該リンク取付用切欠部34bの開放側から差し込まれた状態で、リンク取付用切欠部34bの開放側に設けられた抜け止め形状によってリンク取付用切欠部34bからの抜けが阻止されるようになっている。また、第1取付軸35aがリンク取付用切欠部34bに差し込まれて軸受部34cに嵌合した状態では、第1取付軸35aが回動自在となる。
【0062】
第1取付軸35aの先端部には、第1取付軸35aよりも大径の第1円板部35bが形成されている。この第1円板部35bによって第1取付軸35aがリンク取付用切欠部34bから軸方向に抜けないようになっている。
【0063】
リンク35の側面の長手方向他端部には、伝達部材52のリンク取付部56に回動可能に取り付けられる第2取付軸35cが形成されている。第2取付軸35cは、第1取付軸35aと同様にリンク取付用切欠部56a(図11等に示す)に挿入されて軸受部56bに嵌合した状態で回動可能となる。また、第2取付軸35cにも大径の第2円板部35dが形成されている。
【0064】
次に、上記仕切部材20に、開閉弁30、開閉弁駆動装置50及びリンク35を組み付ける要領について説明する。
【0065】
まず、仕切部材20に開閉弁30を組み付ける。すなわち、開閉弁30の前側回動軸32の軸部32bを前側支持部26の切欠部26bから軸受孔26aに挿入し、後側回動軸33の軸部33bを後側支持部25の切欠部25bから軸受孔25aに挿入する。
【0066】
そして、伝達部材52に巻き形状バイメタル51を組み付ける。このとき、巻き形状バイメタル51を伝達部材52の周壁部54の外側に嵌めるとともに、巻き形状バイメタル51の巻き始点部51aを周壁部54のスリット54aに挿入して第1板部54bと第2板部54cとで挟む。これによって巻き形状バイメタル51の巻き始点部51aが伝達部材52に固定される。
【0067】
次いで、開閉弁駆動装置50を仕切部材20に組み付ける。すなわち、仕切部材20の駆動装置配設用凹部27に開閉弁駆動装置50を入れていき、このとき、伝達部材52の支軸55を駆動装置配設用凹部27の円筒部27aに挿入する。円筒部27aに挿入した支軸55を押し込んでいくと、支軸55の軸構成部55a、55aの爪部55b、55bが円筒部27aの内面に接触することによって径方向内方へ押される。これによって軸構成部55a,55aが互いに接近する方向に弾性変形して爪部55b、55bが貫通孔20dの周縁部を乗り越えて仕切部材20内に入り、軸構成部55a,55aの形状が復元する。よって、爪部55b、55bが貫通孔20dの周縁部に仕切部材20の内側から係合して支軸55の抜けが阻止される。
【0068】
また、支軸55の挿入作業と並行して巻き形状バイメタル51の巻き終点部51bを上部溝27d、中間溝27e及び下部溝27fのいずれかに挿入する。どれに挿入するかによって巻き形状バイメタル51の巻き終点部51bの周方向の位置が異なる。すなわち、各部品に製造誤差が生じても、閉状態にある開閉弁30を連通孔21の周縁部に圧接することができるように、巻き形状バイメタル51の巻き終点部51bの周方向の位置を設定する。
【0069】
その後、リンク35の第1取付軸35aを開閉弁30のアーム34に取り付け、さらに、リンク35の第2取付軸35cを伝達部材52に取り付ける。この組み付けの際、伝達部材52を反時計回りに回動させて、リンク35の第2取付軸35cを伝達部材52のリンク取付部56のリンク取付用切欠部56a(図11等に示す)に挿入する。このように組み付けることによって、開状態にある開閉弁30を連通孔21の周縁部に圧接することができるようになる。
【0070】
尚、この実施形態では、上部溝27d、中間溝27e及び下部溝27fの3つの溝を形成しているが、これに限らず、1つや2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0071】
上記の構成によれば、巻き形状バイメタル51の巻き終点部51bが仕切部材20に固定されているので、巻き形状バイメタル51の温度変化によって巻き始点部51aが時計回り、反時計回りに移動することになる。巻き始点部51aは伝達部材52に固定されているので、巻き始点部51aが移動すると、その移動方向に伝達部材52が回動する。このときの伝達部材52の回動中心は支軸55の中心である。
【0072】
伝達部材52にはリンク35を介して開閉弁30が連結されているので、図5に示すように、伝達部材52が反時計回りに回動するとリンク35が伝達部材52の回動方向に引っ張られていき、これにより、アーム34には下向きの力が作用して開閉弁30が前側回動軸32及び後側回動軸33周りに開方向に回動する。一方、開閉弁30が開状態にあるときに伝達部材52が時計回りに回動すると、リンク35が伝達部材52の回動方向に移動していき、これにより、開閉弁30が閉方向に回動する。
【0073】
上記開閉弁30や開閉弁駆動装置50が組み付けられた仕切部材20をエンジンブロックEに取り付けた後、オイルパン本体10をエンジンブロックEに取り付ける。尚、オイルストレーナ40は、仕切部材20の取り付け前にエンジンに取り付けておく。
【0074】
上記のようにしてオイルパン1が得られる。
【0075】
次に、上記オイルパン1の作用について説明する。図1に示すオイルレベルLは、開閉弁駆動装置50よりも上に位置している。冷間時のようにオイルの温度が例えば5℃以下の場合には、巻き形状バイメタル51の巻き始点部51aは、開閉弁30を閉状態とする位置にあり、開閉弁30が閉状態になる。このとき、開閉弁30が連通孔21の周縁部に圧接するように巻き形状バイメタル51の巻き終点部51bの位置(上部溝27d、中間溝27e及び下部溝27fのどれに挿入するか)を設定しているので、第1室R1と第2室R2との間でのオイルの行き来は殆どない。
【0076】
従って、エンジンのオイルポンプは仕切部材20内の第1室R1内のオイルをオイルストレーナ40から吸い上げてエンジンの各部に送給する。エンジンの各部を循環したオイルはオイルパン1の第1室R1に戻されて再度オイルポンプに吸い上げられる。これにより、第1室R1内のオイルの昇温速度が上昇するので、暖機運転時間を低減して燃費の低減を図ることができる。
【0077】
第1室R1内のオイルの温度が上昇していくと、第1室R1内のオイルによって仕切部材20が加熱され、その熱が第2室R2にも伝達する。これにより、開閉弁駆動装置50の巻き形状バイメタル51の温度が上昇する。
【0078】
巻き形状バイメタル51の温度が上昇すると、巻き形状バイメタル51は巻き始点部51aを反時計回りに回動させるように変形していく。このとき、上記したように巻き始点部51a及び巻き終点部51bの位置は、開閉弁30を連通孔21の周縁部に圧接する位置にあるので、巻き形状バイメタル51が温度上昇によって変形し始めても直ちに巻き始点部51aが反時計回りに回動することはない。
【0079】
そして、第2室R2のオイルの温度が更に上昇して例えば80℃以上になって巻き形状バイメタル51がさらに変形すると、巻き始点部51aが反時計回りに回動し始め、これにより、開閉弁30が開方向に回動して連通孔21が開放される。連通孔21が開放されると、第1室R1と第2室R2とが連通してオイルが行き来し、オイルの異常な温度上昇が抑制されて劣化が抑制される。
【0080】
巻き形状バイメタル51は、長尺状バイメタルからなるものなので、巻き始点部51aは大きく変位する。この巻き始点部51aにリンク35を介して開閉弁30を連結することで開閉弁30を大きく動作させることが可能になり、連通孔21の開度が大きくなる。
【0081】
また、巻き形状バイメタル51は、電動モーター等と異なり、オイルに浸かっていても動作不良を起こすことはなく、開閉弁30は確実に動作する。そして、開閉弁駆動装置50と開閉弁30とをリンク35で連結しているので、開閉弁駆動装置50と開閉弁30とが離れて配置されていても、開閉弁駆動装置50の駆動力を開閉弁30に確実に伝達することが可能である。
【0082】
以上説明したように、この実施形態1によれば、巻き形状バイメタル51を有する開閉弁駆動装置50と開閉弁30とをリンク35で連結するようにしたので、開閉弁駆動装置50と開閉弁30とをオイルパン1の内部において離して配置しても、開閉弁駆動装置50の駆動力を開閉弁30に確実に伝達できるとともに、動作不良を起こすことなく開閉弁30を開閉動作させることができる。
【0083】
(実施形態2)
図13は、本発明の実施形態2にかかるオイルパン1の仕切部材20を示すものである。実施形態2のオイルパン1は、仕切部材20の構造が一部異なるだけであり、他の部分は実施形態1と同一であるため、以下、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0084】
尚、実施形態2のオイルパン本体は実施形態1のものと同じであるため、図示を省略する。
【0085】
図14〜図16にも示すように、実施形態2の仕切部材20には、実施形態1の第1開閉弁30と、第2開閉弁60とが設けられていて、これら第1開閉弁30及び第2開閉弁60とを単一の開閉弁駆動装置50で駆動するようにしている。
【0086】
すなわち、図13に示すように、仕切部材20の右側壁部20fの下部には、右側の連通孔22が左側壁部20bの連通孔21と同様に形成されている。また、図15に示すように、右側壁部20fには、左側壁部20bと同様に前側及び後側支持部28,29が設けられている。
【0087】
第2開閉弁60は右側の連通孔22を開閉するためのものであり、基本構造は第1開閉弁30と同じである。第2開閉弁60は、連通孔21を閉塞する閉塞板部61と、閉塞板部61の上端の前縁部から前方へ突出する前側回動軸62と、閉塞板部61の上端の後縁部から後方へ突出する後側回動軸63と、アーム64とを備えている。閉塞板部61には、リブ61aが形成されている。第2開閉弁60の前側回動軸62及び後側回動軸63が前側及び後側支持部28,29に回動可能に支持される。第2開閉弁60は、反時計回りに回動すると連通孔22を開放し、時計回りに回動すると連通孔22を閉塞する。この第2開閉弁60は、開閉弁駆動装置50から右側に離れることになる。
【0088】
第2開閉弁60のアーム64の延びる方向は、第1開閉弁30のアーム34の延びる方向とは異なっており、図16に示すように、第2開閉弁60が閉状態にあるときに略上下方向に延びる。
【0089】
また、開閉弁駆動装置50の伝達部材52には、実施形態1のリンク取付部である第1リンク取付部56と、これとは別に第2リンク取付部57が設けられている。第2リンク取付部57は、第1リンク取付部56と同様に形成された板状のものである。第2リンク取付部57は、伝達部材52の板部53の周縁部において、第1リンク取付部56から時計回りに約90゜離れた部位に形成されている。
【0090】
第2開閉弁60のアーム64と、開閉弁駆動装置50の伝達部材52とは、リンク(第2連結部材)68によって連結されている。リンク68は、実施形態1のリンク35と基本構造が同様に構成されている。リンク68の方がリンク35よりも長く、また、リンク68は僅かに屈曲している。
【0091】
また、仕切部材20のバイメタル固定部27cには、1つの溝27hが形成されている。バイメタル固定部27cに形成する溝の数は、これに限られるものではなく、例えば実施形態1のように複数形成してもよい。
【0092】
この実施形態2では、冷間時、巻き形状バイメタル51の巻き始点部51aは、第1及び第2開閉弁30,60を閉状態とする位置にあり、第1及び第2開閉弁30,60が閉状態になる。このとき、第1及び第2開閉弁30,60が連通孔21,22の周縁部に圧接するように巻き形状バイメタル51の巻き終点部51bの位置を設定しているので、第1室R1と第2室R2との間でのオイルの行き来は殆どない。
【0093】
従って、エンジンのオイルポンプは仕切部材20内の第1室R1内のオイルをオイルストレーナ40から吸い上げてエンジンの各部に送給する。エンジンの各部を循環したオイルはオイルパン1の第1室R1に戻されて再度オイルポンプに吸い上げられる。
【0094】
第1室R1内のオイルの温度が上昇して巻き形状バイメタル51の温度が上昇すると、巻き形状バイメタル51は巻き始点部51aを反時計回りに回動させるように変形していく。第2室R2のオイルの温度が例えば80℃以上になると、巻き始点部51aが反時計回りに回動し始め、これにより、第1開閉弁30が開方向に回動して連通孔21が開放されるとともに、リンク68が伝達部材52の回動によって引っ張られて第2開閉弁60が開方向に回動する。
【0095】
よって、連通孔21,22が開放されて第1室R1と第2室R2とが連通してオイルが行き来し、オイルの部分的な劣化が抑制される。このときのオイルの流通量は、2つの連通孔21,22があることにより、実施形態1に比べて多くなる。従って、エンジンの高回転運転が続いた場合であっても、オイルの温度が上昇すれば巻き形状バイメタル51が第1開閉弁30を開方向に回動させるように更に変形して連通孔21が大きく開放されるとともに、リンク68が伝達部材52の回動によって引っ張られて第2開閉弁60が開方向に回動するので、オイルが異常に高温になるのを抑制し、オイルの寿命を延ばすことができる。
【0096】
以上説明したように、この実施形態2によれば、実施形態1のものと同様に、巻き形状バイメタル51を有する開閉弁駆動装置50と第1及び第2開閉弁30,60とをリンク35、68で連結するようにしたので、開閉弁駆動装置50と第1及び第2開閉弁30,60とをオイルパン1の内部において離して配置しても、開閉弁駆動装置50の駆動力を第1及び第2開閉弁30,60に確実に伝達できるとともに、動作不良を起こすことなく第1及び第2開閉弁30,60を開閉動作させることができる。
【0097】
また、第1及び第2開閉弁30,60を単一の開閉弁駆動装置50で駆動するようにしたので、第1室R1と第2室R2との間のオイルの流通量を多く確保しながらオイルの温度上昇を抑制し、しかも、部品点数の増加を抑制して低コスト化を図ることができる。また、第1開閉弁30と第2開閉弁60との動作を同期させることもできる。
【0098】
(実施形態3)
図20は、本発明の実施形態3にかかるオイルパン1の仕切部材20を示すものである。実施形態3のオイルパン1は、仕切部材20の構造及び伝達部材52の構造が一部異なるだけであり、他の部分は実施形態1と同一であるため、以下、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0099】
実施形態3の仕切部材20の駆動装置配設用凹部27には、第1室R1と第2室R2とを連通させるための複数の連通孔20k,20k,…が形成されている。連通孔20k,20k,…は、開口孔20dの周囲を取り囲むように周方向に互いに間隔をあけて配置されている。各連通孔20kは、開口孔20dの周方向に長い形状となっている。尚、連通孔20kの数や形状は、上記したものに限られず、任意に設定することができる。
【0100】
また、図21にも示すように、駆動装置配設用凹部27には環状リブ20nと複数の放射状リブ20m,20m,…とが形成されている。環状リブ20nは、開口孔20dと連通孔20k,20k,…との間において開口孔20dを囲むように延びている。放射状リブ20mは、環状リブ20nに連なり、連通孔20k,20kの間を通って環状リブ20nの外方へ向かって延びている。これら環状リブ20n及び放射状リブ20mにより、連通孔20kを有する仕切部材20の後壁部20cが補強されることになる。
【0101】
また、図22及び図23に示すように、伝達部材52は、支軸55の径方向へ膨出する膨出部52aを有している。膨出部52aは、仕切部材20のバイメタル固定部27cを覆うように形成されている。伝達部材52が回動した際にバイメタル固定部27cと接触しないように膨出部52aの形状が設定されている。伝達部材52の板部53の周縁部には周壁部58が形成されている。板部53及び周壁部58によって囲まれた内部空間Tが形成される。
【0102】
実施形態3の伝達部材52を仕切部材20に取り付けると、伝達部材52の内部空間Tが仕切部材20の駆動装置配設用凹部27によって覆われることになる。この状態で、内部空間Tは、連通孔20kを介して第1室R1と連通する。
【0103】
従って、実施形態3では、第1室R1の温まったオイルが連通孔20kから伝達部材52の内部空間Tに流出することになる。これにより、第1室R1のオイルを巻き形状バイメタル51に直接供給して加熱することが可能になる。
【0104】
以上説明したように、この実施形態3によれば、実施形態1のものと同様な作用効果を奏することができる。
【0105】
また、図24に示す変形例のように、仕切部材20の駆動装置配設用凹部27に外側環状リブ20pを設けてもよい。外側環状リブ20pは、上記環状リブ20nの外側において、放射状リブ20mの端部に連なるように環状リブ20nと略同心上に延びている。この外側環状リブ20pによって仕切部材20の後壁部20cの剛性がより一層高まる。仕切部材20の駆動装置配設用凹部27に設けるリブは上記した3種類に限られるものではない。
【0106】
また、上記実施形態では、長尺状バイメタルを渦巻き状に巻くことによって巻き形状バイメタル51としているが、長尺状バイメタルは、例えば、コイルばねのように螺旋状に巻いて成形してもよいし、U字状やW字状に成形してもよいし、各種形状に湾曲成形してもよい。
【0107】
尚、オイルパン本体10は、例えば鉄やアルミニウム合金等の金属製であってもよい。
【0108】
また、仕切部材20も、同様に例えば鉄やアルミニウム合金等の金属製であってもよい。
【0109】
また、上記実施形態では、仕切部材20を凹状に形成しているが、これに限らず、底の無い形状であってもよいし、また、オイルパン1の内部を例えば前側と後側とに仕切るように、または左側と右側とに仕切るように上下方向に延びる仕切壁を仕切部材として用いてもよい。
【0110】
また、仕切部材としては、オイルパン本体10の内部を上側と下側とに仕切るように、水平方向に延びる仕切壁であってもよい。
【0111】
また、上記実施形態では、開閉弁30を樹脂の一体成形品としているが、これに限らず、前側回動軸32と後側回動軸33とを閉塞板部31とは別部材とし、前側回動軸32及び後側回動軸33を閉塞板部31に組み付けるようにしてもよい。
【0112】
また、上記実施形態2では、連通孔21と連通孔22とが対向し、同様に開閉弁30と開閉弁60とを配設し、開閉弁30と開閉弁60との回動軸線が略平行となっているが、これに限らず、アーム34,64とリンク35,68と伝達部材52の各々の連結部分をボールジョイントにしたり、リンク35,68を屈曲又は湾曲させることによって開閉弁30と開閉弁60との回動軸線が互いに交差するように両開閉弁30,60を配設してもよい。
【0113】
また、リンク35,68は、例えば金属製のロッド等で構成してもよい。また、リンク35,68の代わりに、プッシュプル式のワイヤを連結部材として用いてもよいし、歯車を用いて連結してもよい。
【0114】
また、本発明は、自動車用エンジン以外のエンジンのオイルパンとして使用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0115】
以上説明したように、本発明にかかるオイルパンは、例えば、自動車のエンジン用オイルパンとして適している。
【符号の説明】
【0116】
1 オイルパン
10 オイルパン本体
20 仕切部材
21 連通孔
30 開閉弁(第1開閉弁)
34 アーム
35 リンク(第1連結部材)
41 吸入口
50 開閉弁駆動装置(開閉弁駆動手段)
51 巻き形状バイメタル
50a 巻き始点部
50b 巻き終点部
60 第2開閉弁
64 アーム
68 リンク(第2連結部材)
R1 第1室
R2 第2室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルを貯留するオイルパン本体(10)と、
上記オイルパン本体(10)の内部に設けられ、該オイルパン本体(10)の内部空間を、オイルの吸入口(41)が位置する第1室(R1)とオイルの吸入口(41)が位置しない第2室(R2)とに仕切るとともに、上記第1室(R1)と上記第2室(R2)とを連通させる連通孔(21)が形成された仕切部材(20)と、
上記連通孔(21)を開閉する第1開閉弁(30)と、
上記第1室(R1)のオイルの温度が所定温度以下のときに上記第1開閉弁(30)を閉状態にする一方、所定温度よりも高くなったときに上記第1開閉弁(30)を開状態にする開閉弁駆動手段(50)とを備えたオイルパン(1)において、
上記開閉弁駆動手段(50)は動力発生部材として長尺状バイメタルを有しており、
上記第1開閉弁(30)と上記開閉弁駆動手段(50)とは互いに離れて配置されており、
上記第1開閉弁(30)と上記開閉弁駆動手段(50)とを連結して該開閉弁駆動手段(50)の駆動力を該第1開閉弁(30)に伝達する第1連結部材(35)を備えていることを特徴とするオイルパン(1)。
【請求項2】
請求項1に記載のオイルパン(1)において、
上記オイルパン本体(10)には、第2開閉弁(60)が設けられ、
上記第2開閉弁(60)と上記開閉弁駆動手段(50)とを連結する第2連結部材(68)を備えていることを特徴とするオイルパン(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−113229(P2013−113229A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260946(P2011−260946)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】