説明

オイルヒータ

【課題】温度的な立ち上がりなどに優れ、使い勝手を大いに高めたオイルヒータを提供することを目的とする。
【解決手段】電気ヒータ5で加熱された不燃性のオイルを循環させる循環路の少なくとも一部を構成し、前記オイルの熱を放熱部1を介して放散する複数の放熱循環路2に熱的に結合させて蓄熱手段9を配置し、この蓄熱手段9はケース7に潜熱型蓄熱材8を封入して構成するとともに、加熱手段10で加熱するようにしたものである。したがって、この蓄熱手段9に蓄えた熱でオイルの補助的加熱を有効に行い、オイルヒータとしての温度的立ち上がりなどを良好化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気ヒータにより加熱した不燃性オイルの熱を放熱部を介して放散し、主に対流作用で部屋の暖房を行うオイルヒータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種オイルヒータは、電気ヒータで加熱された不燃性のオイルを循環路を介して循環させ、この循環路の一部を構成する複数の放熱フィンをもつ放熱循環路から放熱して対流で部屋の暖房を行うようにしていた。
【0003】
したがって、オイルヒータは室内空気などを一切汚さず、住環境面で非常に優れているところから、幼児とか老人向け暖房に主に利用されてきた。
【0004】
また、不燃性のオイルの加熱温度が比較的に低く設定されるので、火傷などの虞がなく、安全面でも優れた暖房器具というのが定説であった(例えば、特許文献1、および特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−60900号公報
【特許文献2】特開平11−37486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この種オイルヒータの共通した課題は、使用開始からの温度的立ち上がりが遅いという点であった。
【0006】
そのため、別の暖房手段、例えば、エアコン、燃焼型のストーブ、あるいは別の輻射型電気ストーブで一旦部屋を暖め、その後、その暖房温度を維持するのにオイルヒータが使用され場合が多く、オイルヒータがもつ特徴、つまり、住環境に優しい、安全性が高い、などの機能を十分に発揮させることができなかった。
【0007】
また、厳寒の期間ではどうしても熱量が不足気味となりやすく、やはり別の暖房器具を補助的に使用する必要性が生じるものであった。
【0008】
本発明はこのような従来の課題を解消したもので、立ち上がりに優れ、熱量も確保できる使い勝手のよいオイルヒータを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために本発明のオイルヒータは、電気ヒータで加熱された不燃性のオイルを循環させる循環路と、この循環路の少なくとも一部を構成し、前記オイルの熱を放熱部を介して放散する複数の放熱循環路と、前記循環路に熱的に結合させて配置した蓄熱手段と、この蓄熱手段を加熱する加熱手段とを備えたもので、蓄熱手段で蓄えられ熱を利用して暖房の立ち上がりが速く、また、不燃性オイルからの放熱と蓄熱手段からの放熱とを同時に行うことで、十分な熱量が得られることとなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、オイルヒータとしての特長を活かしつつ暖房の立ち上がりを向上させ、併せて、厳寒の期間でも確実な暖房を可能としたもので、大いに使い勝手を高め得るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、電気ヒータで加熱された不燃性のオイルを循環させる循環路と、この循環路の少なくとも一部を構成し、前記オイルの熱を放熱部を介して放散する複数の放熱循環路と、前記循環路に熱的に結合させて配置した蓄熱手段と、この蓄熱手段を加熱する加熱手段とを具備したもので、これまでのオイルヒータの特長を活かしつつ暖房の立ち上がりを向上させ、しかも確実な暖房を可能とすることができるものである。
【0012】
すなわち、暖房していない場合などに蓄熱手段を加熱手段で加熱して蓄熱しておきことで、例えば、暖房開始時に電気ヒータへ通電して不燃性のオイルの加熱を行うと同時に蓄熱手段から放熱することによりオイルの温度的立ち上がりが速やかになされる。それ故、暖房の立ち上がり特性も大いに向上できるものである。
【0013】
また、暖房温度を高める場合にも、蓄熱手段からの放熱によって容易に実現できるものである。
【0014】
蓄熱手段は、具体的には潜熱型蓄熱材を使用する。条件に応じてその融点を設定すれば、換言すると、条件に適合する融点をもつ潜熱型蓄熱材を使用すれば所望の暖房効果が得られるものである。
【0015】
蓄熱手段の配置部位としては、放熱循環路の少なくとも一部とか、或いは、複数の放熱循環路の上下端を共通循環路に接続するとともに、前記下側の共通循環路にオイルと隔離した蓄熱手段を内設することが考えられ、特に、下側の共通循環路にオイルと隔離した蓄熱手段を内設したものでは、蓄熱手段を加熱する加熱手段として電気ヒータを兼用できることとなる。
【0016】
オイルと隔離して蓄熱手段を配置するには、例えば、熱良導材からなるケースに蓄熱材を封入して下側の共通循環路に配置すればよい。そして、熱伝授を良好なものとするために、望ましくは、ケースの外表面よりフィンを突設する。
【0017】
蓄熱手段を加熱する加熱手段は深夜電力により作動させるのが好ましく、また、潜熱型蓄熱材を使用する場合は、20〜80℃の範囲に融点をもつように設定する。
【0018】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
図1,2において、縦方向に配列された複数のフィン状の放熱部1にはそれぞれ複数列の放熱循環路2が形成されており、横方向の上下共通循環路3,4にそれら放熱循環路2の上下端が接続連通してある。そして、これら放熱循環路2、上下共通循環路3,4に不燃性のオイルが充填してある。
【0020】
したがって、下部共通循環路4に内設した電気ヒータ5に通電することにより加温された同下部共通循環路4のオイルは対流作用で放熱部1の放熱循環路2を上昇して上部共通循環路3に達し、その過程でオイルがもつ熱はフィン状の放熱部1から放熱される。
【0021】
放熱で温度低下したオイルは、比重が大となって放熱循環路2を下降して再度下部共通循環路4に還流して電気ヒータ5で加熱される。このようなオイルの循環流動で部屋の空気が対流で暖められ暖房に供されることとなる。
【0022】
前記放熱部1の一側部位にはコントロールボックス6が配設してあり、ここに、運転発
停などのスイッチ、暖房時間などを制御するタイマー、および温度調整部が設けてある。
【0023】
熱良導材製のケース7に蓄熱材8を封入して構成された蓄熱手段9が放熱部1の少なくとも一つに接合して設けられている。この蓄熱材8はケース7の外面に取付けた電気ヒータなどの加熱手段10で加熱されて蓄熱されるように設定してある。
【0024】
上記の構成において、加熱手段10は、暖房を行っていない、例えば深夜に動作して蓄熱材8を加熱し、その熱を蓄える。
【0025】
このとき、電気ヒータ5には通電されていないところから、下部共通循環路4→放熱循環路2→上部共通循環路3→放熱循環路2→下部共通循環路4に至るオイル循環は抑制されており、よって、蓄熱材8から放熱循環路2への放熱も制限されたものとなり、その蓄熱材8への蓄熱が十分に行われる。
【0026】
次に、暖房の開始にあたって電気ヒータ5を動作(通電)させると、対流でオイル循環がなされ、その循環に対応して蓄熱材8に蓄えられていた熱がオイルに伝達されることとなる。
【0027】
そのため、オイルの熱的な立ち上がりが速くなり、その分、暖房も時間をかけず行うことができるものである。
【0028】
蓄熱材8の熱容量が大きいものであれば、電気ヒータ5の熱に蓄熱材8の熱を加えてオイルの温度を一段高めことも可能で、この場合には暖房温度の設定が高くできるものである。
【0029】
また、例えば深夜時間帯の前段で蓄熱材8への蓄熱を行い、後段でその蓄熱材8よりオイルに対して放熱することでそのオイルの保温を行い、電気ヒータ5の加熱に伴い同オイルの温度立ち上がりを良くすることも考えられるものである。
【0030】
蓄熱材8の蓄熱を確実なものとするため、加熱手段10が動作しているときには放熱部1との熱的関係をなくすことも考えられる。具体的には、加熱手段10の動作と連動して機械的手段を用いて蓄熱材8を放熱部1から一時的に離反させる。
【0031】
前記蓄熱材8は潜熱型である方が望ましい。その理由は潜熱型であれば種々の融点のものが存在し、任意に蓄熱温度を設定できるからである。そして、潜熱型蓄熱材としては以下表1のものが挙げられる。
【0032】
【表1】

【0033】
一般家庭の実際の部屋暖房を考慮した場合、20〜80℃の範囲に融点をもつ潜熱型蓄熱材を使用するのが望ましい。
【0034】
(実施の形態2)
図3は本発明の実施の形態2を示し、便宜上、図1,2と同作用を行う構成については同一符号を付し、詳細な説明は実施の形態1のものを援用する。
【0035】
実施の形態1と異なるところは、下部共通循環路4の内部にあって、電気ヒータ5と近接して熱良導材製のケース7に蓄熱材8を封入して構成された蓄熱手段9を配置したものである。そして、前記ケース7の表面からはフィン11が一体に突設してある。
【0036】
以上の構成において、蓄熱手段9は電気ヒータ5の加熱で蓄熱が行われるから、実施の形態1のような加熱手段10を別設しなくてもよく、また、フィン11は吸熱用として作用するものである。
【0037】
さらに、蓄熱手段9からオイルへ熱を伝える場合には、放熱用として機能し、拡大表面積によって熱伝達が的確となる。
【0038】
なお、蓄熱材8の蓄熱を確実なものとするため、蓄熱材8の蓄熱動作時には下部共通循環路4と各放熱部1との連通を断つことが考えられる。具体的には、蓄熱材8の蓄熱動作と連動して機械的手段を用いて各放熱部1側を遮蔽する。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように、本発明に係るオイルヒータは、暖房の立ち上がりを向上させ、併せて、厳寒の期間でも確実な暖房を可能としたもので、一般家庭用暖房器具としての用途に最適
なものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態1におけるオイルヒータの側面図
【図2】同オイルヒータの一部を切断した側面図
【図3】本発明の実施の形態2におけるオイルヒータの要部拡大断面図
【符号の説明】
【0041】
1 放熱部
2 放熱循環路
3,4 共通循環路
5 電気ヒータ
7 ケース
8 蓄熱材
9 蓄熱手段
10 加熱手段
11 フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気ヒータで加熱された不燃性のオイルを循環させる循環路と、この循環路の少なくとも一部を構成し、前記オイルの熱を放熱部を介して放散する複数の放熱循環路と、前記循環路に熱的に結合させて配置した蓄熱手段と、この蓄熱手段を加熱する加熱手段とを具備したオイルヒータ。
【請求項2】
蓄熱手段は潜熱型蓄熱材を使用した請求項1記載のオイルヒータ。
【請求項3】
放熱循環路の少なくとも一部に蓄熱手段を配置した請求項1または2記載のオイルヒータ。
【請求項4】
複数の放熱循環路の上下端を共通循環路に接続するとともに、前記下側の共通循環路にオイルと隔離した蓄熱手段を内設し、電気ヒータを蓄熱手段の近傍に位置させて、この蓄熱手段を加熱する加熱手段に兼用した請求項1記載のオイルヒータ。
【請求項5】
熱良導材からなるケースに蓄熱材を封入して構成した蓄熱手段を下側の共通循環路に配置した請求項4記載のオイルヒータ。
【請求項6】
収納ケースの外表面よりフィンを突設した請求項5記載のオイルヒータ。
【請求項7】
蓄熱手段を加熱する加熱手段は深夜電力により作動させるようにした請求項1記載のオイルヒータ。
【請求項8】
潜熱型蓄熱材は20〜80℃の範囲に融点をもつように設定した請求項2記載のオイルヒータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−267626(P2008−267626A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107948(P2007−107948)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】