説明

オイルフィルタ

【課題】フィルタエレメント交換時に周囲に油だれするのを防止することができるオイルフィルタを提供する。
【解決手段】戻り側配管7から導入されたオイルを、フィルタエレメント2を通過させて出口配管8に流出させるように構成されたオイルフィルタ1であって、フィルタケース3が、フィルタエレメント2の下エンドプレート49の形状に倣うよう略同一形状に形成され密着可能なエンドプレート当接部23cを有する油除去部材であるリテーナ23と、一端部がリテーナ23に支持され、他端部がフィルタケース3内の下端部に支持されて、フィルタエレメント3がフィルタケース2内に挿入された状態で、リテーナ23が下エンドプレート49に密着するように付勢するリテーナ用スプリング22とを備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油の濾過を行うオイルフィルタに関し、さらには着脱自在なフィルタエレメントを設けたオイルフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
各種機械に用いられる潤滑油や、産業用油圧機器の油圧回路中の作動油は、使用によって不純物が混入するため、適宜濾過を行う必要がある。これら作動油等の濾過に用いられるオイルフィルタは、油圧回路配管の途中に設けられたり、戻り側配管端部に繋がってオイルタンク内に装着されたりする。オイルフィルタ内には油の濾過を行うための濾材を有したフィルタエレメントが配設されているが、このフィルタエレメントは所定時間毎に交換する必要があるため、このフィルタエレメントの交換を容易に行うことができるようにした種々のオイルフィルタが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、着脱自在なフィルタエレメントの底部に排出孔を設け、フィルタエレメントがフィルタケース内に装着された状態においては、オイルタンクに連通する出口配管をこの排出孔からフィルタエレメント内部に挿通させて、フィルタエレメント内の濾材を通過して濾過されたオイルを出口配管からオイルタンク内に流出させ、フィルタケースから取外した状態においては、フィルタエレメント内に配設された蓋部材により排出孔が塞がれることにより、フィルタエレメント内に残ったオイルが外部に漏れ出るのを防止するように構成されたオイルフィルタが開示されている。
【特許文献1】特開平8−192004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなオイルフィルタにおいて、フィルタエレメント交換のためにフィルタケースから排出された使用済みのフィルタエレメントは、使用により表面全体にオイルが付着した油まみれの状態となっているため、処分場などに持ち運ぶ際にオイルがフィルタエレメント表面から流れ落ちたり、滴下して周囲を汚したり、作業者の衣服等を汚したりするという問題があった。
【0005】
以上のような課題に鑑みて、本発明では、フィルタエレメント交換時に周囲に油だれするのを防止することができるオイルフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明に係るオイルフィルタは、内部にエレメント配設空間を有し、エレメント配設空間と外部を連通させる流入孔(例えば、実施形態におけるケース流入孔20a)および流出孔(例えば、実施形態におけるケース流出孔21a)が形成されたフィルタケースと、エレメント配設空間を流入孔に連通する流入空間と、流出孔に連通する流出空間(例えば、実施形態における内部空間S3)とに二分させ、エレメント配設空間に着脱自在に装着されるフィルタエレメントとからなり、流入孔から流入空間に導入されたオイルを、フィルタエレメントを通過させて流出空間から流出孔へ流出させるように構成されたオイルフィルタであって、フィルタケースが、フィルタエレメントの底部の形状に倣うよう略同一形状に形成され底部に密着可能な当接部(例えば、実施形態におけるエンドプレート当接部23c)を有する油除去部材(例えば、実施形態におけるリテーナ23)と、一端部が油除去部材に支持され、他端部がフィルタケース内の下端部に支持されて、フィルタエレメントがフィルタケース内に挿入された状態で、油除去部材がフィルタエレメントの底部に密着するように付勢する付勢部材(例えば、実施形態におけるリテーナ用スプリング22)とを備えて構成される。
【0007】
このように構成されたオイルフィルタにおいて、フィルタエレメントの底部が、円筒状に形成された濾材の円筒軸方向の一端部を覆って設けられたエンドプレート(例えば、実施形態における下エンドプレート49)を備えて構成されることが好ましい。
【0008】
また、フィルタケースが、フィルタエレメントをエレメント配設空間へ挿脱するための着脱口(例えば、実施形態におけるエレメント挿入孔12)に弾性部材(例えば、実施形態におけるワイパー17)を備え、フィルタエレメントの取外し時に、フィルタエレメントをフィルタケースの着脱口から引き抜くことにより、フィルタエレメントの外周面が弾性部材に接触して外周面に付着したオイルを弾性部材が掻き落とすように構成されることが好ましい。
【0009】
さらに、フィルタケースが着脱口を閉塞する着脱可能なカバー部材(例えば、実施形態におけるフランジカバー18)を備え、付勢部材がフィルタケース内にフィルタエレメントが装着された状態において、フィルタエレメントがエレメント配設空間内で固定保持されるように、フィルタエレメントをカバー部材側に付勢するセットスプリングとして用いられるように構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に関するオイルフィルタによれば、フィルタエレメントがフィルタケース内に装着された状態において、油除去部材が付勢部材によりフィルタエレメント底部に密着するよう付勢され、フィルタエレメント底部と油除去部材との間にはごく少量のオイルが油膜状にのみ付着し、さらに、フィルタエレメントをフィルタケースから排出するためにフィルタエレメントを引き抜くときには、フィルタエレメント底部と油除去部材との間に残留する油膜状のオイルを引き剥がすようにフィルタエレメント底部が油膜除去部との当接(密着)を離れるため、フィルタエレメント底部にはオイルが殆んど残留しない。したがって、排出された使用済のフィルタエレメンから油だれするのを抑えることができ、作業場等の床面などに油だれして周囲を汚すのを防止することができる。
【0011】
また、フィルタケースのフィルタエレメント着脱口に弾性部材を配設する構成とすると、フィルタエレメント交換時にフィルタエレメントを上方に引き抜くことにより、フィルタエレメントの外周面が弾性部材と接触して、この外周面に付着したオイルを掻き落とすため、排出されたフィルタエレメントから油だれするのをさらに防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。まず、図1〜3を用いて、油圧回路中の戻り側配管7の端部に繋がるとともに、オイルタンク6内に装着されて作動油(リターンオイル)の濾過を行うオイルフィルタ(リターンフィルタ)1について説明する。
【0013】
オイルフィルタ1は、図1に示すように、フィルタエレメント2と、このフィルタエレメント2を着脱自在に挿着可能なエレメント配設空間S1を有するフィルタケース3とから構成される。
【0014】
フィルタエレメント2は、図1に示すように、フィルタケース3内に配設されるエレメント部材2aと、このエレメント部材2aの上部に着脱自在に配設されるエレメントカバー2bとから構成される。
【0015】
エレメント部材2aは、図2に示すように、プロテクタ30と、このプロテクタ30の内部に配設されるインナーチューブ41と、このインナーチューブ41の外周に配設される濾材40と、プロテクタ30の上端面に固着された上エンドプレート45と、プロテクタ30の下端面に固着された下エンドプレート49と、インナーチューブ41の内部に配設されたホルダ55とから構成される。プロテクタ30、インナーチューブ41、上エンドプレート45および下エンドプレート49はプラスチック等の可燃性の樹脂材料によって焼却可能に形成されている。
【0016】
プロテクタ30はフィルタケース3内において所定の流入空間(エレメント配設空間S1の一部を構成する空間)S2が形成されるように、フィルタケース3の内径よりも小さい外径で円筒状に形成されており、側壁部の上方側には、外側から内側へ向かって打ち抜き貫通させたプロテクタ流通孔31が上下一対として円周方向に等間隔で複数形成されている。
【0017】
濾材40は、プロテクタ30の内周面に近接するように、プロテクタ30の内径よりも小さい外径で円筒状に形成され、且つ、内周面がインナーチューブ41の外周面に当接接触するように装着されている。なお、この濾材40は、板状の濾紙を所定の幅でプリーツ状(菊花状)に形成したり、濾紙、グラスファイバー、不織布等によって所定の厚さを有して形成されている。
【0018】
インナーチューブ41は、濾材40の内周面に沿ってパンチングメタル等から円筒状に形成されており、内部にはホルダ55を配設可能な内部空間S3を有している。また、このインナーチューブ41は、その側面に濾材40によって濾過されたオイルを内部空間S3へ流通可能な多数のチューブ流通孔42を有している。このインナーチューブ41と濾材40とは、プロテクタ30の円筒軸方向両端にそれぞれ配設された上および下エンドプレート45,49で挟持されている。
【0019】
上エンドプレート45は、略中空円筒状に形成されており、中央の内径部にはゴム等の弾性材料によって形成されたガスケット47が配設されている。このガスケット47の中央部には、後述するバルブ保持部73の下方外側部が嵌合可能なエレメント上部中心孔47aが形成される。また、上エンドプレート45の上面部からは、上方に突出して延び、さらに円周方向に屈曲して延びたフック係止部46が形成されている。
【0020】
下エンドプレート49は、上方に延びた折曲部が外周側に形成される略リング状の基端部49aと、この基端部49aの内周部から上方に延びたのち内側に屈曲して延び、ゴム等の弾性材料によって形成されたガスケット50を内側先端で支持する配管支持部49bとを有している。ガスケット50の内周部には、出口配管8を挿脱可能なエレメント下部中心孔50aが形成されており、このエレメント下部中心孔50aに出口配管8が挿入されると、ガスケット50の弾性力により出口配管8に対して上下方向に摺動自在に、且つ、一定の保持力を有して出口配管8は嵌合保持される。また、このガスケット50は、後述する下部揺動ホルダ60のキャップ部60aとも嵌合可能となっている。
【0021】
ホルダ55は、インナーチューブ41の内部空間S3内に配設されており、上部固定ホルダ56、ホルダ用スプリング58および下部揺動ホルダ60を有している。上部固定ホルダ56は、外周面がインナーチューブ41の内周面に溶接等により接合されている。この上部固定ホルダ56の中心部には、オイルの流通を可能にするため上下方向に貫通した上部ホルダ通油孔56aが形成されている。
【0022】
ホルダ用スプリング58は、上部固定ホルダ56と下部揺動ホルダ60との間で挟持されるようにして、一端が下部揺動ホルダ60に支持され、他端が上部固定ホルダ56に支持されている。
【0023】
下部揺動ホルダ60は、図2の鎖線で示すように、ホルダ用シリンダ58の付勢力によりインナーチューブ41の内部空間S3内で上下に揺動自在であり、円筒受皿状に形成されたキャップ部60aがガスケット50に嵌合することによりエレメント下部中心孔50aに着脱自在であるとともに、キャップ部60aの底面から下方に向かって突出するように複数個形成されたフィン60bにより出口配管8の先端口に着脱自在に構成されている。複数のフィン60bは、周方向等間隔にそれぞれ所定の間隔を隔ててキャップ部60aの底面に設けられているため、各フィン60b間にはオイルが流通可能なフィン通油孔60cが形成され、各フィン60bが出口配管8に嵌合された状態であっても、内部空間S3内にあるオイルはこのフィン通油孔60cを通過して出口配管8内に流通することができるようになっている。
【0024】
エレメントカバー2bは、エレメント部材2aの上エンドプレート45に着脱自在に取り付けられる。このエレメントカバー2bは、図3に示すように、略円板状に形成されたハンドルフランジ70と、このハンドルフランジ70の中央上端にボルト77aによりネジ止めされたハンドル77と、ハンドルフランジ70の下方部に設けられたバルブ保持部73と、リリーフバルブ80とを有している。
【0025】
ハンドルフランジ70には、バルブ保持部73と連結することによりリリーフオイルを流通させるためのリリーフ油路70aが流入空間S2から内部空間S3に向かって形成される。このハンドルフランジ70の外側部は、第1外側部71および第2外側部72を有する。第1外側部71は、平面視において周方向等間隔で複数の略扇状の突起として形成されている。第2外側部72は、後述するリング部材13の内径部13bよりも若干小さな外径からなり、この第2外側部72にはOリング溝71aが形成されている。このOリング溝72aにOリング79が装着されることにより、流入空間S2内にあるオイルが、ハンドルフランジ70の外側部とタンクフランジ10の内周部との嵌合部から流出することはない。
【0026】
バルブ保持部73は、雄ネジが形成された固定ネジ部78を中央に有し、ハンドルフランジ70のネジ孔部70bにこの固定ネジ部78を螺合させることによりハンドルフランジ70の下方部に取り付けられる。また、バルブ保持部73は、上方外側部から外側に延びたのち約90°屈曲して上方に延びたフック76が左右一対に形成されている。このフック76を上エンドプレート45のフック係止部46に引掛けるようにして係合させることにより、エレメントカバー2bとエレメント部材2aとを連結することができる。
【0027】
リリーフバルブ80は、円板状のバルブ80aと、ハンドルフランジ70の上部中央から下方へ向かって挿通される支持ボルト80bと、バルブ80aを上方に押し上げる所定の付勢力を有するバルブ用スプリング80cと、このバルブ用スプリング80cの下端部を受けるように取り付けられるスプリング受け80dと、支持ボルト80dと螺合可能な受けナット80eとから構成される。バルブ80aは、バルブ用スプリング80cの付勢力によって常時バルブ保持部73の下端面に当接され、リリーフ油路70aと内部空間S3とが連通しないよう閉弁している。また、バルブ80aがバルブ用スプリング80cの付勢力に抗して開弁されると(下方に押し下げられると)、リリーフ油路70aと内部空間S3とが連通することとなる。
【0028】
次に、リターンオイルを濾過するために上記フィルタエレメント2が着脱自在に配設されるフィルタケース3について説明する。フィルタケース3は、図1に示すように、オイルタンク6の上面部6aに形成される円形状のタンク開口部の内周部に固設されたタンクフランジ10と、タンクフランジ10の上面側に上下方向の中心軸の軸心を同一にして複数のボルト11により着脱自在に取り付けられる円板状のフランジカバー18と、タンクフランジ10の下面側に上記中心軸の軸心を同一にして固設された中空円筒状のケース本体20と、このケース本体20の開口された底面を覆うように固設された底板21と、この底板21上に設けられたリテーナ用スプリング22により上下に揺動自在に配設されたリテーナ23とから構成されている。これらタンクフランジ10、フランジカバー18、ケース本体20、底板21、およびリテーナ23は、アルミ合金等の非鉄金属や鉄等の金属材料によって形成されている。
【0029】
また、フィルタケース3は、内部にフィルタエレメント2を配設可能なエレメント配設空間S1を有しており、ケース本体20の側壁のケース流入孔20aから中空パイプ状の戻り側配管7が連通されていることにより、この戻り側配管7を通過するリターンオイルをエレメント配設空間S1内に流入させることができる。底板21の中心部には、ケース流出孔21aが形成され、このケース流出孔21aから中空パイプ状の出口配管8が上方(エレメント配設空間S1内)に延びるようにして嵌合接合されている。
【0030】
タンクフランジ10は、中空円筒状に形成されており、中心部にはフィルタエレメント2を上下方向に挿通可能なエレメント挿入孔12が形成される。このエレメント挿入孔12を形成するタンクフランジ10の内周部は、小径部12a、中径部12bおよび大径部12cを有する段付形状に形成されている。中径部12bと大径部12cとを繋ぐ端面部上には、リング部材13、プレート部材15およびワイパー17がボルト16により取り付けられている。また、大径部12cの内方側には、Oリング14が配設されている。
【0031】
リング部材13は、図4に示すように、タンクフランジ10の中径部12bとほぼ同一径となる外径部13aと、タンクフランジ10の小径部12aとほぼ同一径となる内径部13bとを有し、この内径部13bには上端面から凹んだ平面視において略扇状の第1係合溝13cが周方向等間隔に形成されている。第1係合溝13cは、ハンドルフランジ70の第1外側部71を上下方向に挿通可能な大きさを有して形成されている。
【0032】
プレート部材15は、図5に示すように、タンクフランジ10の中径部12bとほぼ同一径となる外径部15aと、タンクフランジ10の小径部12aとほぼ同一径となる内径部15bとを有し、この内径部15bにはリング部材13の第1係合溝13cに対応位置して第2係合溝15cが周方向等間隔に形成されている。第2係合溝15cは、ハンドルフランジ70の第1外側部71を遊挿可能な大きさを有して形成されている。
【0033】
これらリング部材13およびプレート部材15は、第1係合溝13cと第2係合溝15cとが重合するように対応位置させて(両係合溝13c,15cの中心線X1,X2が一致するように位置させて)、タンクフランジ10に取り付けられる。そして、ハンドルフランジ70の第1外側部71を、プレート部材15の第2係合溝15c内を挿通させ、さらにリング部材13の第1係合溝13c内まで到達させたのち、平面視で時計周りに回転させることによって係合させることができる。このとき、第2係合溝15cの周方向の幅の大きさW2は、第1係合溝13cの周方向の幅の大きさW1よりも小さく設定されているため、上記のように係合された後、ハンドルフランジ70が上方に持ち上げられても、第1外側部71はプレート部材15の下端面に当接し、第2係合溝15cから抜け出ることがない。
【0034】
ワイパー17は、内側部がリング部材13の内径部13bおよびタンクフランジ10の小径部12aよりも内方側に突出するようにして設けられている。このワイパー17は、図6に示すように、プロテクタ30の外径よりも小さい内径部17aを有し、この内径部17aから半径方向の略中央まで延在する切欠部17bが周方向等間隔に形成されている。このため内径部17aは、切欠部17bにより押し広げられるように内径を大きく拡げることができるため、プロテクタ30をこの内径部17aに接触させながら挿入することができる。
【0035】
フランジカバー18は、底面にフィルタエレメント3の上端部を収容する円形溝を有して円板状に形成されており、ボルト11によりタンクフランジ10のエレメント挿入孔12を閉塞するようにして着脱可能に取り付けられる。また、フランジカバー18がタンクフランジ10の大径部12cに配設されたOリング14を押しつぶすように押さえ込んで封止するため、外部からのゴミや埃などがフィルタケース2内に侵入するのを防止している。
【0036】
リテーナ用スプリング22は、出口配管8に挿通されて、上下の各端部が内方に絞り込まれるように内径が若干小さく形成されていることにより、下端部が底板21上で出口配管8の外周部に支持され、上端部がリテーナ23の下方外周部に支持されている。
【0037】
リテーナ23は、リテーナ用スプリング22の付勢力により、エレメント配設空間S3内で出口配管8を挿通した状態で上下に揺動自在となっている。このリテーナ23は、リテーナ用スプリング22に上端部を支持するスリーブ状のスプリング支持部22aと、このスプリング支持部22aから上方に延びた中間部22bと、この中間部22bから略下方に屈曲して、さらに外側に向かって下エンドプレート49の外周部とほぼ同一径となる位置まで延在した略円板状のエンドプレート当接部22cと、このエンドプレート当接部22cから下方に屈曲した屈曲部22dとを有し、これらが一体成形されている。エンドプレート当接部22cは、上面形状が下エンドプレート49の底面形状に倣うように、形状をほぼ一致させて形成されており、フィルタエレメント2がフィルタケース3内に装着されたとき、リテーナ用スプリング22によって上方に付勢されることにより、エンドプレート当接部22cの上面が下エンドプレート49の底面に当接し、密着した状態で保持されるようになっている。
【0038】
このように構成されたオイルフィルタ1によって、リターンオイルの濾過を行う場合について説明する。先ず、フィルタケース3にフィルタエレメント2を装着する手順について説明する。フィルタケース3に装着される前(未使用状態)のフィルタエレメント2は、フック76およびフック係止部46を係合させてエレメント部材2aにエレメントカバー2bが連結された状態であり、ハンドル77を掌で掴んでフィルタエレメント2をフィルタケース3のところまで持っていくことができる。
【0039】
フィルタエレメント2のフィルタケース3への装着は、タンクフランジ10のエレメント挿入孔12から行われるため、ボルト11を取外してフランジカバー18がタンクフランジ10から取外された状態にしておく。このフランジカバー18を取外すと、タンクフランジ10のエレメント挿入孔12の開口が開放されることになる。作業者は、ハンドル77を掴んでエレメント挿入孔12からフィルタエレメント2をまっすぐにケース本体20のエレメント配設空間S1内に挿入する。フィルタエレメント2を下方に挿入していき、図7に示すように、下エンドプレート49の底面がリテーナ23のエンドプレート当接部22cに密着されるのと同時に、リテーナ用スプリング22の付勢力が作用し始める。そして、リテーナ用スプリング22の付勢力に抗して、さらにフィルタエレメント2を下方に挿入していき、このフィルタエレメント2のフィン60bを出口配管8に嵌合させると、ガスケット50がキャップ部60aから外れて出口配管8の外周部を摺動するように下方に揺動していく。
【0040】
また、フィルタエレメント2の自重よりリテーナ用スプリング22の付勢力が大きくなると、作業者はこの不勢力に抗して下方に押し込むようにフィルタエレメント2を挿入することになる。そして、バルブ保持部73がガスケット47のエレメント上部中心孔47aに挿入されるように下方に押し込んで嵌合させる。
【0041】
エレメントカバー2bのハンドルフランジ70が、タンクフランジ10のエレメント挿入孔12に到達する位置まできたら、ハンドルフランジ70の第1外側部71をプレート部材92の第2係合溝92b内を挿通させ、さらにリング部材91の第1係合溝91b内まで到達させたのち、平面視で時計周りに回動させハンドルフランジ70をリング部材91およびプレート部材92に係合させることにより、フィルタエレメント2をフィルタケース3内に仮止めさせる。
【0042】
そして、ボルト11によりフランジカバー18を再度タンクフランジ10に取り付けることにより、リテーナ用スプリング22の付勢力で上方に付勢されるフィルタエレメント2をフランジカバー18が下方に押し込んだ状態で固定保持させる。このようにリテーナ用スプリング22が常にフィルタエレメント2を上方に付勢して、この付勢力をフランジカバー18が受け止めるため、フィルタエレメント2をフィルタケース3内でしっかり保持させることができ、リテーナ用スプリング22はフィルタエレメント2の挙動を抑制するセットスプリングとしての役割も果たすことができる。
【0043】
次に、上記のようにフィルタエレメント2が装着されたオイルフィルタ1によって濾過されるリターンオイルの流れについて図1を参照して説明する。なお、図1においてオイルの流れは矢印Fによって表されている。リターンオイルは、オイルタンク6の外部から戻り側配管7を通ってフィルタケース3内の流入空間S2に流入される。このときオイルタンク6内は、このオイルタンク6に備えられたエアブリーザ(図示しない)により大気圧より高圧に加圧調整されており、フィルタケース3内のオイルレベルはL0からL1まで上昇されている。流入空間S2に流入してきたリターンオイルはプロテクタ30の外側壁に当たることにより流れの向きを変えられて上方へ向かって流れていき、プロテクタ流通孔31から濾材40の内側に向かって流れる。このとき濾材40によってオイル内に混入したゴミ等の不純物が濾過されることとなる。濾過されたオイルはインナーチューブ41のチューブ流通孔42を通って内部空間S3に流入する。なお、濾材40はインナーチューブ41の外周に当接しているため、外周側からオイルが流入してきても内側に押されて変形することがない。内部空間S3の上部側に流入したオイルは、上部固定ホルダ56の上部ホルダ通油孔56aから内部空間S3の下部側に流入し、その後、フィン通油口60cを通過して出口配管8に流入することによりオイルタンク6へ流出させる。
【0044】
そして、濾材40に目詰まりが生じると流入空間S2内のオイルの圧力が高くなり、流通空間S2と内部空間S3との間の圧力差が所定圧以上となる。これによりリリーフ油路70aに流入するオイルが、バルブ80aをバルブスプリング80cの付勢力以上の力で下方に押し下げて開弁させる。このためリリーフ油路70aと内部空間S3とが連通されることとなり、オイルは濾材40を通過しないでバルブ80aの開弁部から内部空間S3内に流入されて、オイルフィルタ1の損傷を防止するようにしている。
【0045】
上記のように構成されたオイルフィルタ1は、長時間の使用により濾材40の目詰まりが生じるため、定期的(所定時間毎)にフィルタエレメント2を交換する必要があるが、フィルタエレメント2の取り外しは、取り付けと逆の手順で行われる。このとき、ケース本体20内は密閉された状態であるため、ハンドル77はこのケース本体20内のオイルに接触しておらず、フィルタエレメント3の取り外しの際に作業者の手がハンドル77を介しオイルに触れて手や衣服を汚したり、周囲を汚したりすることが防止される。
【0046】
まず、タンクフランジ10からフランジカバー18を取外した後、フィルタエレメント2に取り付けられたハンドル77を作業者が掌でつかんで持ち上げることにより、フィルタエレメント2は上方に引き上げられる。フィルタエレメント2が上方に引き上げられると、ガスケット50が、このガスケット50の弾性力により一定の嵌合力をもって出口配管8に対して上方に摺動していく。ここで、出口配管8に対するフィン60bの嵌合力は、出口配管8に対するガスケット50の嵌合力よりも強くなるように構成され、且つ、ホルダ用スプリング58が上方からフィン62を出口配管8に押え付けるように付勢するため、フィルタエレメント2を上方に引き上げてもフィン62が出口配管8から外れることはない。さらにガスケット50が上方に摺動されて出口配管8から抜け出た後は、ガスケット50が下部揺動ホルダ60のキャップ部60aに嵌合されるため、ガスケット50のエレメント下部中心孔50aはキャップ部60aによって塞がれることとなる。そして、この状態からフィルタエレメント2を上方に引き上げると、ガスケット50の上面部がキャップ部60aの外側下面部に当接されて、作業者がフィルタエレメント2を上方に引き上げる力は、出口配管8からフィン60bを引き抜くことに作用されるとともに、この力を受けてガスケット50がキャップ部60aに確実に嵌合されることとなる。このため、フィルタエレメント2内に残留したオイルがエレメント下部中心孔50aから漏れ出ることがない。
【0047】
また、フィルタエレメント2が引き上げられているときには、図8に示すように、フィルタエレメント2(プロテクタ30)の外周部がワイパー17の内径部17aを上方に押し広げるように接しながら通過していくため、ワイパー17がフィルタエレメント2の外周部に付着したオイルを掻き落とすことができる。このようにフィルタエレメント2の排出時には、ワイパー17によりフィルタエレメント2の外周部に付着したオイルを掻き落とすことにより、フィルタエレメント2からオイルが垂れて周囲を汚すのを防止することができる。そして、フィルタエレメント2の底部(下エンドプレート49)に付着して残るオイルをも低減化させ、油だれをより抑制させるためにリテーナ23が設けられている。
【0048】
フィルタエレメント2を上方に引き上げることにより、リテーナ23は、図8に示すように、リテーナ用スプリング22によりリテーナ23のエンドプレート当接部22cが下エンドプレート49の基端部49aに当接するように付勢されて密着状態となっており、フィルタエレメント2が上方に引き上げられるのとともにリテーナ用スプリング22の付勢力によって下エンドプレート49に密着した状態で上方に揺動する。そして、フィルタエレメント2の底部がケース本体20内の油面から出て、リテーナ用スプリング22の付勢力がリテーナ23に作用しなくなるまでリテーナ用スプリング22が伸長した位置まで到達すると、下エンドプレート49の基端部49aがリテーナ22のエンドプレート当接部22cとの当接を離れていく。このとき、下エンドプレート49の底面にはリテーナ23が密着した状態であったため、下エンドプレート49とリテーナ23との間にはごく少量のオイルが油膜状にのみ付着し、さらに、リテーナ23から下エンドプレート49を引き離していくことにより、リテーナ23および下エンドプレート49間に付着した油膜状のオイルが引き剥がされるようにして分離されるため、この結果、下エンドプレート49の底面には非常に薄い油膜のみしか残らず自重により滴下することもない。したがって、フィルタエレメント2の表面(外周面および底面)には、オイルの付着が殆んどない状態でフィルタケース3から引き抜かれることとなる。
【0049】
そして、このようにハンドル77をつかんでフィルタエレメント2を上方に持ち上げることにより、容易にフィルタエレメント2をフィルタケース3から排出することができる。ここで、フィルタケース3から排出されたフィルタエレメント2は、下エンドプレート49の中央を開口するエレメント下部中心孔50aがキャップ部60aによってしっかりと塞がれているため、フィルタエレメント2内に残留したオイルがエレメント下部中心孔50aから漏れ出ることがない。そして、リテーナ23およびワイパー17がフィルタエレメント2の表面(外周面および底面)に付着して残るオイルを最小限に抑えるためオイルがこの表面を伝って流れ落ちたり、滴下したりするのを防止できる。このため、排出されたフィルタエレメント2を持ち運ぶ際に、作業場等の床面に油だれ等して周囲を汚してしまうこともない。
【0050】
なお、フィルタエレメント2が排出されたフィルタケース3内には、濾過されていないオイルが残留しているが、出口配管8の先端部はオイル油面よりも上方位置となるように構成されているため、この濾過前のオイルが出口配管8に流入してオイルタンク6内に流出する虞がない。
【0051】
以上のように構成されたオイルフィルタ1によれば、長時間の使用によりフィルタエレメント2を交換するため、フィルタケース3からフィルタエレメント2を排出させても、フィルタエレメント2の表面から油だれして周囲を汚すのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態に係るオイルフィルタを示す側面断面図である。
【図2】上記オイルフィルタの一部を構成するフィルタエレメントのエレメント部材を示す側面断面図である。
【図3】フィルタエレメントのエレメントカバーを示す側面断面図である。
【図4】上記オイルフィルタの一部を構成するフィルタケースに備えられるリング部材を示し、(A)は、リング部材を示す平面図であり、(B)はリング部材の側面断面図である。
【図5】フィルタケースに備えられるプレート部材を示す平面図である。
【図6】フィルタケースに備えられるワイパーを示す平面図である。
【図7】フィルタエレメントがフィルタケース内に装着される途中の状態を示す側面断面図である。
【図8】フィルタエレメントがフィルタケース内から排出される途中の状態を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 オイルフィルタ
2 フィルタエレメント
2a エレメント部材
2b エレメントカバー
3 フィルタケース
12 エレメント挿入孔(着脱口)
17 ワイパー(弾性部材)
18 フランジカバー(カバー部材)
20a ケース流入孔(流入孔)
21a ケース流出孔(流出孔)
22 リテーナ用スプリング(付勢部材)
23 リテーナ(油除去部材)
23c エンドプレート当接部(当接部)
49 下エンドプレート
S1 エレメント配設空間
S2 流入空間
S3 内部空間(流出空間)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にエレメント配設空間を有し、前記エレメント配設空間と外部を連通させる流入孔および流出孔が形成されたフィルタケースと、
前記エレメント配設空間を前記流入孔に連通する流入空間と、前記流出孔に連通する流出空間とに二分させ、前記エレメント配設空間に着脱自在に装着されるフィルタエレメントとからなり、
前記流入孔から前記流入空間に導入されたオイルを、前記フィルタエレメントを通過させて前記流出空間から前記流出孔へ流出させるように構成されたオイルフィルタであって、
前記フィルタケースが、
前記フィルタエレメントの底部の形状に倣うよう略同一形状に形成され前記底部に密着可能な当接部を有する油除去部材と、
一端部が前記油除去部材に支持され、他端部が前記フィルタケース内の下端部に支持されて、前記フィルタエレメントが前記フィルタケース内に挿入された状態で、前記油除去部材が前記フィルタエレメントの底部に密着するように付勢する付勢部材とを備えて構成されることを特徴とするオイルフィルタ。
【請求項2】
前記フィルタエレメントの底部が、円筒状に形成された濾材の円筒軸方向の一端部を覆って設けられたエンドプレートを備えて構成されることを特徴とする請求項1に記載のオイルフィルタ。
【請求項3】
前記フィルタケースが、前記フィルタエレメントを前記エレメント配設空間へ挿脱するための着脱口に弾性部材を備え、
前記フィルタエレメントの取外し時に、前記フィルタエレメントを前記フィルタケースの前記着脱口から引き抜くことにより、前記フィルタエレメントの外周面が前記弾性部材に接触して前記外周面に付着したオイルを前記弾性部材が掻き落とすことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のオイルフィルタ。
【請求項4】
前記フィルタケースが、前記着脱口を閉塞する着脱可能なカバー部材を備え、
前記付勢部材が、前記フィルタケース内に前記フィルタエレメントが装着された状態において、前記フィルタエレメントが前記エレメント配設空間内で固定保持されるように、前記フィルタエレメントを前記カバー部材側に付勢するセットスプリングとして用いられるように構成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のオイルフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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