説明

オイルミスト除去装置

【課題】目詰まりを起こすことのないミストコレクタを得ることであり、これによってメンテナンスフリーもしくはそれに近い状態を維持して常時高い捕集効率を発揮させる。
【解決手段】羽根車1の上流側に位置するコレクタケース7に搭載される入側コレクタ2は、上下端が開口して垂直な多数の独立したエアパスを持ち、吸引空気を上端開口から下端開口に向けて流通させる通路集合体26で構成しておく。その通路集合体における各エアパスの断面差し渡し寸法は、2.0ないし4.0ミリメートルとしておくと、圧損増加を回避してファン動力の増大を抑え、運転コストの低減が図られる。捕捉されたオイルミストの結集を助成して流落を促し、吸引空気の流通の円滑も図られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオイルミスト除去装置に係り、詳しくは、機械加工作業場などで発生する油煙を吸引し、複数のミストコレクト構造によってオイルミストを順次捕捉し、空気の浄化を図ることができるようにしたミスト除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工場などで発生する塵埃や油煙を除去するために用いられているオイルミスト除去装置は、例えば特開2003−225524に記載されている。図14はその一例であり、羽根車1の回転によって吸引した空気51を、入側コレクタ52としての第一フィルタ、出側コレクタ53としての第二フィルタに通し、浮遊するオイルミストや微細な切削屑などのダストを捕捉するようにしている。
【0003】
第一フィルタ52は羽根車上流側に位置する多層構造のフィルタであり、第二フィルタ53は羽根車下流側の多重構成のフィルタである。吸引空気51はこれらを順次流通し、浄化されて大気中へ戻される。しかし、各フィルタは、オイルミストや塵埃が多量に付着すると目詰まりするので、定期的に交換される。なお、これらのフィルタとしては、通常ポリエステル繊維等からなるある一定厚みの不織布や多重構造の繊維質マット等が使用される。
【0004】
このようなオイルミスト除去装置は、羽根車1およびモータ10を格納しているファンケース54と、上流側でこれに一体化されたフィルタケース55とを備える。空気導入管56に連なるフィルタケースには面板状の入側フィルタ52が、大気への排気用吐出口9を持ったファンケース54には円筒状の出側フィルタ53が格納され、前者は側方へ、後者は後方へ引き出して交換することができる。
【0005】
すなわち、入側フィルタ52は吸引空気の流れに対して直角をなすように垂直な姿勢に設置され、その厚みは上下や左右の寸法に比べれば小さいので、前後方向に短い開口57を覆ったサイドカバー(図示せず)を外して、フィルタホルダ58に装着したまま側方へ出し入れすることができる。出側フィルタ53は横置きされたファン駆動用モータ10を包囲する円筒ケージ14の外周に嵌められるので、ファンケース54のリヤカバー54aを外せば、横置き姿勢を維持したまま引き出すことができる。
【0006】
このようなフィルタ取付構造を採用しておけば、壁際に配備されたり工作機械直上の高い位置に設置されることの多いこの種の装置でのフィルタ交換作業が極めて容易となる。梯子を掛けるなどしなければならない高いところで空気導入管56をフィルタケース55から外し、狭い前方開口から手を入れるなどしてフィルタ52を取り外し取り付けるといった手間ひまを要する作業負担の大きい解体や再組立ての作業が必要でなくなる。
【0007】
ところで、吸引空気には微細な切削屑が混入していることがあるが、これがフィルタに付着すると、目詰まりの進行を早める。そのため、入側フィルタの前面には衝突板21が設けられ、空気の流れの勢いで衝突するダストを予めはたき落とすことができるようにしている。この衝突板21の面積は入側フィルタ52の前面面積よりも小さいので、空気は衝突板の周囲からフィルタに進入することができる。なお、落下したダストは、第一フィルタを支持するフィルタホルダ58の底部に溜まる。
【0008】
衝突板21を越えた空気に伴われるオイルミストは、そのかなり部分が入側フィルタ52で捕捉される。入側フィルタを透過する吸引空気はファンの軸方向に流れ、捕捉されたオイルミストは下方向へ移動することになる。従って、オイルミストは、フィルタ繊維を伝って重力によりゆっくりと流下する。この入側フィルタ52には背後にデミスタ59も付設されているので、フィルタに付着する間に結集した油滴のうちデミスタにまで到達したものは、そこでの流落が速められる。
【0009】
羽根車1で加圧された空気には、依然として僅かであるが細かいミストが残存する。加圧空気60はデミスタ11を通過し、出側フィルタ53の外周から内方へ送り込まれ、吐出口9から放出される。図9は、予め定められた流量の空気にオイルをミスト状にして浮遊させ、それがどの程度捕捉されるかをテストした結果の一例である。白い三角印は入側フィルタおよび出側フィルタを装備させたときのもので、それをたどる一点鎖線61は、噴霧量8g/min以上であると捕集効率が99.5%もしくはそれ以上に達することを教えている。
【0010】
黒い丸印は入側フィルタのみの場合であり、それを示す破線62は噴霧量が10g/minを超えると捕集効率が99.1%を超えることを示している。この破線62と上記した一点鎖線61との差は出側フィルタによる捕捉率であることは言うまでもないが、入側フィルタの捕捉貢献度は絶大であることが分かる。その結果、オイルミストが付着する量は入側フィルタで極めて多く、目詰まりが出側フィルタに比べれば問題とならないほどに激しい。
【0011】
入側フィルタに付着したミストは、フィルタ面に対して直角に入る吸引空気により剥がされたり飛ばされることはあっても、フィルタを伝っての流落が助けられることはない。このようなことから、目詰まりの進行を早める原因が排除されないかぎり、フィルタ交換の時間的間隔を短くせざるを得なく、頻繁な点検や保守作業が余儀なくされる。交換までの間の目詰まりの進行は捕集効率を漸次低下させるが、これは出側フィルタでの捕捉負荷を大きくし、結果としてオイルミスト除去装置全体の捕捉作用を著しく減退させる。
【0012】
目詰まりが進むとフィルタでの圧損は増えるから、非目詰まり時に適切な能力を超えるファンや大きい出力のモータの搭載が必要となる。これでは、設備費や運転費の増大を招く。その一方、非目詰まり時は過大な能力や過剰なパワーを備えたオイルミスト除去装置となってしまう。フィルタでオイルミストを捕捉する以上は目詰まりは避けられないが、これによる最も大きい問題は油煙発生源における汚染空気の排除不足や停滞である。加えて、上記した幾つもの問題が生じることに対して、その抜本的な解決は未だなされるところでなく、結局は、目詰まりを生じない捕捉機構の出現が切望される。
【0013】
ちなみに、気流中に浮遊する水滴を捕捉する装置としては、各種プラントの洗浄塔等でしばしば使用されるエリミネータがある。これは気流が迷路をたどる間に浮遊する水滴を慣性力で気流から離脱させ、そのまま迷路壁に付着させて水膜を形成させる。その場合、水が重力で壁面を伝うが、気流は上記した入側フィルタと同様に水垂れ方向に対して直角をなして流れ込んだり(特開平5−180470号公報を参照)、垂れ落ちる水を吹き上げる方向にすなわち逆行するように流されたりする(特開平5−200221号公報を参照)。いずれの場合も、後続気流に伴われてきた水滴を水膜に付着させて増嵩を図り、離脱水滴の再浮遊を阻止して、持ち出し水滴量を少なくする。
【0014】
このようなミスト捕集機構では屈曲板を多数配列した迷路ユニットが使用されるが、この思想をオイルミスト除去装置の入側フィルタに適用しても、オイルミスト除去効果は望むべき結果も出ない。気流が通過する距離は迷路ユニットの厚み分であって短いこと、効果を期待するまでに厚みを大きくしては、ミスト除去装置がむやみに長くなって所望スペースに設置しにくくなること、油煙などのミストは洗浄塔等で発生する浮遊水滴よりは格段に細かく、素通りしてエリミネート作用が十分に発揮されないことによる。
【特許文献1】特開2003−225524
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は上記の問題に鑑みなされたもので、その目的は、目詰まりを起こすことのないミストコレクタを得ることであり、これによってメンテナンスフリーもしくはそれに近い状態を維持して常時高い捕集効率を発揮させること、圧損増加を回避してファン動力の増大を抑え運転コストの低減が図られること、捕捉されたオイルミストの結集を助成して流落を促進できること、油滴の結集に基因したブリッジの発生を阻止して吸引空気の流通の円滑が図られることを実現しようとするオイルミスト除去装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、オイルミストを含んだ空気をファンケース内の羽根車の回転により吸引し、そのファンケースの上流側に位置するコレクタケース内に配置の入側コレクタによってオイルミストを一次的に捕集し、羽根車室を経てファンケース後部に導入された空気から出側コレクタによって残存オイルミストを二次的に除去し、吸引空気からオイルミストを捕捉して浄化できるようにしたオイルミスト除去装置に適用される。その特徴とするところは、図1に示すように、入側コレクタ2には、上下端が開口して垂直もしくは傾斜した多数の独立したエアパス27(図3を参照)を持たせ、吸引空気を上端開口から下端開口に向けて流通させる通路集合体26としたことである。その通路集合体の各エアパス27の断面差し渡し寸法は、2.0ないし4.0ミリメートルとしておけばよい。
【0017】
通路集合体26U,26Lを図13の(a)に示すように上下複数段に配置し、各段の総開口面積より大きい断面積を持った拡大空間48を各段間に形成しておく。
【0018】
図4を参照して、通路集合体26はコレクタケース7に設けた左右へ延びるガイドレール32,33に沿って側方へ出し入れすることができるコレクタホルダ17に装着され、そのコレクタホルダの下部に落下ダストを収容するダスト受け24が前方へ張り出して形成される。
【0019】
図7の(b)に示すように、コレクタホルダ17の入側コレクタ直下の底部には、吸引空気およびオイルの抜き口43が設けられる。
【0020】
図7の(a)にあるように、通路集合体26の下端にはデミスタ22が連設され(図1も参照)、コレクタホルダ17のデミスタ背後には空気抜き口39が、入側コレクタ直下の底部にはオイル抜き口41(図7の(b)を参照)が設けられる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、入側コレクタは上下端が開口して垂直もしくは傾斜した多数の独立したエアパスを持ち、吸引空気を上端開口から下端開口に向けて流通させる通路集合体となっているので、吸引空気が不織布等からなる繊維質のフィルタを透過する場合と異なり、細くて長い各エアパスを通過する間にオイルミストがパス壁に付着する機会を長く与えることができる。パス壁での油垂れは油膜の増厚をきたすが滴状付着を無くすため、エアパスが油滴で狭められたり閉塞されることはない。
【0022】
たとえブリッジが形成されかけても、油垂れと同じ方向に流通する吸引空気によってその成長が抑えられる。吸引空気による後押しによって油の流下も促進され、目詰まりは原則的に起こることがない。
【0023】
入側コレクタにおいてはメンテナンスフリーに近い状態が長く維持され、最も高い捕集効率が安定的に持続される。目詰まりがないから圧損の増大はなく、過大な能力のファンや高出力モータの搭載は必要でなく、機器導入コストのみならず運転コストの低減も図られる。吸引空気の流通が一定量を維持して連続的になされるから、油煙発生源でのミスト吸引力の減退や汚染空気の停滞もなくなる。
【0024】
通路集合体の各エアパス断面差し渡し寸法を2.0ないし4.0ミリメートルとしておけば、対面するパス壁の油膜間にブリッジが掛かることはない。通路集合体の設置空間の大きさを同じとした場合、パス壁の対面距離を上記のように選定すれば、浮遊ミストを付着させる総壁面積は可及的に大きく確保される。もちろん、エアパスにおける圧損を少なくして、捕集効率を常時最も高く維持させることができる。
【0025】
通路集合体を上下複数段配置し、各段の総開口面積より大きい断面積を持った拡大空間が各段間に形成されていれば、上段から出た吸引空気が減速され、空間で浮遊するオイルミストに後続の吸引空気により持ち込まれたミストが付着するなどして結集が促される。これらは下段で捕捉されやすい状態となり、結果的には捕捉量の増大につながる。
【0026】
通路集合体をミストコレクタケースに設けた左右へ延びるガイドレールに沿って側方へ出し入れできるコレクタホルダに装着しておけば、一纏めにして取り扱うことができる。コレクタホルダの下部に落下ダストを収容するダスト受けが前方へ張り出して形成されるから、吸引空気が通路集合体のエアパスに入る前に流れから脱落したダストを貯め、通路集合体で捕捉される油とは独立して処理することができる。
【0027】
コレクタホルダの入側コレクタ直下の底部に抜き口を設けておけば、吸引空気が通路集合体を通過した後にコレクタホルダの下から羽根車室に向かい、捕捉オイルをコレクタホルダの底部からコレクタケースに落とすことができる。吸引空気は捕捉油と全く同じ経路をたどることになり、パス壁からの油切れが促進される。
【0028】
通路集合体の下端にデミスタが連設され、コレクタホルダのデミスタ背後には空気抜き口が、入側コレクタ直下の底部にはオイル抜き口が設けられるなら、通路集合体を出た吸引空気はデミスタを透過して空気抜き口から羽根車室に向かい、デミスタは通路集合体からの油切りを促進する。油切りが進めば、通路集合体での吸引空気の流通は円滑となり、通路集合体における圧損は最小限にとどめられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に、本発明に係るオイルミスト除去装置を、その実施の形態を示した図面に基づいて詳細に説明する。図1は、水平な回転軸を有するパドルファン形式の遠心式羽根車1とその上流側の入側コレクタ2と下流側の出側コレクタ3を備えるオイルミスト除去装置4の縦断面図である。
【0030】
これは、オイルミストを含んだ空気をファンケース5内の羽根車1の回転によって吸引し、空気導入管6に連なるコレクタケース7内に配置の入側コレクタ2によってオイルミストの大部分を一次的に捕集する。羽根車室8を経てファンケース5の後部に導入された空気から出側コレクタ3によって残存オイルミストが二次的に除去され、油煙発生源で集めた空気が浄化されるようになっている。
【0031】
上記したファンケース5は吐出口9を備え、羽根車1とそれを駆動するモータ10、二次デミスタ11、出側コレクタ3としての繊維質多重構造ドラムフィルタを収容し、羽根車室8と濾過室12と排気室13に画成されている。なお、排気室は円筒状ケージ14を備えて、モータ格納空間ともなっている。コレクタケース7はファンケース5の上流側に位置し、前後方向にボルト15,15でファンケースに締結される。これは吸込口16を備え、コレクタホルダ17を収容し、ダスト除去空間18とミスト捕捉空間19とが軸方向に並び、捕集油溜め20がその下方に形成されている。
【0032】
コレクタホルダ17には次に詳しく述べる入側コレクタ2が装着されるが、入側コレクタの前方には衝突板21が設けられ、下方には第一デミスタ22が付設される。衝突板21はステー23を介してコレクタホルダ17に固定され、空気の流れの勢いで衝突するダストを予めはたき落とす。そのダストのみを収容するダスト受け24が、コレクタホルダの下部で前方へ張り出して形成されている。これによって、捕集油にごみが混ざることは避けられ、排油パイプ25が切粉等で詰まるようなことはなくなり、排油の後処理も簡素化される。
【0033】
第一デミスタ22はファンケース5に備えられた二次デミスタ11と同じもので、例えば多数のアルミ線を絡ませたものである。アルミ線を伝って油をコレクタケース7の下部へ導びくようになっているが、これは油切れが極めてよく、特に清掃したり交換することを要しない。
【0034】
入側コレクタ2は繊維質の多層構造フィルタではなく、図2に示すような通路集合体26が使用される。これは、上端および下端が開口して垂直な多数の独立したエアパス27を持ち、図3に示すように、吸引空気28を上端開口から下端開口に向けて流通させるものである。すなわち、ミストを含んだ空気を上下にストレートなエアパス27に流してパス壁面27aにミストを付着させ、その付着ミスト29の流落方向30に吸引空気を流通させるようにしている。
【0035】
その各エアパス27は断面の差し渡し寸法が4.0ミリメートル程度まで、すなわち、2.0ないし3.5ミリメートルの辺長もしくは対面距離の一定断面をなす矩形で形成される。この通路集合体26は例えば樹脂製であり、形材31aと背板31bとからなる張り合わせ厚層板31の集合物である。個々の厚層板の高さh、幅wはともに例えば40センチメートル、厚みtは3.5ミリメートル、これを20枚密着させると約7センチメートルとなり、図1に示すように、入側コレクタ2としてコレクタケース7に格納するに許容されるサイズとなる。
【0036】
このような通路集合体26は、図4に示すように、コレクタケース7に設けた左右へ延びるガイドレール32,33に沿って側方へ出し入れすることができるコレクタホルダ17に装着される。従って、通路集合体を多数の厚層板で構成しても、一纏めにしてコレクタホルダと共に取り扱うことができる。コレクタホルダ17は、図5に示すクランプ金具34を外してサイドカバー35(図6も参照)を取れば、コレクタケース7の側面から引き出すことができる。なお、図中の36はコレクタケース7から羽根車室8へ空気を送るための開口である。
【0037】
次に、図4を参照して、通路集合体26を収納するコレクタホルダ17について説明する。なお、通路集合体は厚層板を接着によって一体化しておいてもよいし、単なる寄せ集め状態であってもよい。コレクタホルダ17は、ダスト受け24と一体のサイドパネル37と、上下方向に抜き差し可能なリヤパネル38とからなる。サイドパネル37は下ろされた通路集合体26をホールドするもので、折り曲がった前縁37fで最前列の厚層板31Fの背板31bを押さえる。リヤパネル38は通路集合体26を背後から押さえるもので、図7の(a)に示すサイドパネル37の折り曲げられた後縁37rで保持される。これには、通路集合体26よりは高く、コレクタケース内の上側ガイドレール32,32(図1を参照)に案内される天板部38aが設けられる。
【0038】
本例では入側コレクタ2が第一デミスタ22を伴うので、リヤパネル38におけるデミスタ背後部には空気抜き口39が幾つか設けられる。デミスタ22は通路集合体26の油切りを促進するもので、流落する油を確実に捕集油溜め20(図1を参照)に導くが、図8の(a)に示すように、通路集合体26を出た空気40を、捕集油溜め20を通過させることなくデミスタ22を透過して羽根車室8へ送り出させることができる。油切れがよければ吸引空気の流通は円滑となり、通路集合体26における圧損は最小限にとどめられる。なお、図7の(b)に示すように、コレクタホルダ17の底部には、通路集合体の直下でオイル抜き口41が設けられる。
【0039】
ところで、通路集合体26は、各エアパス27の断面差し渡し寸法を2.0ないし4.0ミリメートルとしているので、対面するパス壁の油膜間にブリッジが生じるほどに接近したものとはならず、エアパスにおける圧損も少なくしてくことができる。通路集合体(入側コレクタ)の設置空間の大きさを同じとした場合、パス壁の対面距離を上記のように選定しておけば、浮遊ミストを付着させる壁面積は可及的に大きく確保される。パス壁の対面距離を例えば5ミリメートルとしたなら、厚層板の使用数は減り、ミスト付着総面積を急激に小さくして、捕集効率を高く維持させることができなくなる。
【0040】
図9中の黒い菱形をたどる実線63は通路集合体26を採用したときのテスト結果であり、図14のところで述べた入側フィルタによる噴霧量10g/minを超える領域では破線62と略同等の捕集作用のあることが分かる。図10はエアパスの角穴サイズの違いによる捕集効率の変化の一例で、2.5ミリメートルのときが最大となっている。図11はエアパスを通過する空気の速度を変えたときの例で、7m/secを超えると捕集率のよいことが分かる。もちろん、風速を上げればよいというものではなく、搭載可能動力を考慮して定められる。なお、エアパス内でたとえブリッジが発生しかけても、油垂れと同じ方向に流通する空気によってその成長が抑えられる。吸引空気により後押しされる油はその流下が促され、エアパス内での目詰まりは原則的に起こることがない。
【0041】
以上のような構成によれば、結集してできた油滴が表面張力などによって簡単に流下することがないフィルタの場合に比べて、付着油が流通空気によって押し下げられる通路集合体においては、メンテナンスフリーに近い状態が長く維持され、最も高い捕集効率が安定的に持続される。目詰まりはないから圧損が増大することはなく、目詰まりを考慮したファンやモータの選定は必要でなくなる。機器導入コストのみならず運転コストの低減も進む。吸引空気の流通量が一定するから、油煙発生源やその近傍でのミスト吸引力の減退や汚染空気の停滞もなくなる。
【0042】
本装置においては、入側コレクタに流入する空気から予めダストを除去した際に、そのダストを入側コレクタの上流側に位置するダスト受けに貯めておくことができるので、捕集されたオイルミストの油滴が混入することがなく、コレクタホルダを引き出したときなどに簡単に取り除くことができる。ダストがコレクタケース内に散在することも少なくなり、ケース内の清掃負担が軽減されるだけでなく、コレクタホルダの出し入れ操作も常に円滑なものとなる。
【0043】
なお、リヤパネル38に空気抜き口を設けなければ、図8の(b)のようにオイル抜きを兼ねた空気抜き口43、捕集油溜め20を経由して吸引空気42が羽根車室8へ導出される。図12の(a)はデミスタを備えない入側コレクタ2Aの例であるが、この場合も吸引空気44は捕集油溜め20を経由する。通路集合体26Aを下方へ延ばすことになるので、ミスト捕捉面が広くなることは言うまでもない。油滴と同じ方向をたどる空気は、パス壁からの油切れをさらに助長する。
【0044】
図12の(b)は、衝突板を備えない例である。通路集合体26Aの上流側の面は、図3に示したように背板31bであるから、これを衝突板として機能させたものである。衝突したダストがダスト受け24に収容されることは、図12の(a)と異ならない。ちなみに、図中の45は吸込口16の内面上半部に取りつけられた樋であり、図5や図6に示したように、コレクタケース7のフロントプレート7aの内面を伝う油滴46を吸込口16に滴下させないようにしている。ファンケース5の後部にも同様の樋47が設けられ(図1を参照)、吐出口9への逸散を防止できるようにしている。
【0045】
図13の(a)は通路集合体26U,26Lを上下二段に配置した例である。通路集合体の総開口面積より大きい断面積を持った拡大空間48が両段間に形成されている。この拡大空間は上段通路集合体26Uの下端開口から出た吸引空気49を淀ませ、その後に下段通路集合体26Lに流通させる。拡大空間48では、そこで停滞するオイルミストと後続する吸引空気により持ち込まれたミストとが入り混じったり衝突して、ミストの結集が促される。これらは下段の通路集合体で捕捉されやすくなり、結果的には捕捉量の増大が図られる。
【0046】
コレクタケースを高くしておくことができる場合には、三段以上の配置とすることもできる。いずれにしても、エアパスはストレートでなければならないというものではなく、曲がっていたり波形にしておくこともできる。さらには、入側コレクタ、羽根車室、出側フィルタは横並び配置にかぎらず、適宜上下にレイアウトするようにしてもよい。
【0047】
なお、コレクタケースにスペースの余裕があるかぎり、図13の(b)のように通路集合体26Bを傾斜して設置するようにしても差し支えない。いずれにしても、入側コレクタは上下端が開口し多数の独立したエアパスを持ち、吸引空気を上端開口から下端開口に向けて流通させるので、吸引空気が不織布等からなる繊維質のフィルタを透過する場合と異なり、細くて長い各エアパスを通過する間にオイルミストがパス壁に付着する機会を長く与える。パス壁に付着した油は吸引空気の流通によって流落が助長され、エアパスからの油切れがよくなるから閉塞をきたしたり、圧損を大きく発生させるようなことはなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係るオイルミスト除去装置の全体縦断面図。
【図2】内部構造の一部を目視可能とした装置全体の斜視図。
【図3】通路集合体の部分拡大斜視図。
【図4】通路集合体をコレクタホルダに装着し、コレクタホルダをコレクタケースに取りつける様子を示した斜視図。
【図5】コレクタケース単独の斜視図。
【図6】空気導入管を除いたミスト除去装置の前面図。
【図7】コレクタホルダの背後を示し、(a)は通路集合体を装着させたときの斜視図、(b)は通路集合体とリヤパネルの装着前における斜視図。
【図8】吸引空気の流れを示すコレクタケース内の様子を示し、(a)はリヤパネルに設けた空気抜き口を流れる吸引空気の流通説明図、(b)はケース底部に設けたオイル抜き口を兼ねた空気抜き口を流れる吸引空気の流通説明図。
【図9】オイルミストの噴霧量に対する捕集効率の変化を示すグラフ。
【図10】エアパスの角穴サイズに対する捕集効率の変化を示すグラフ。
【図11】エアパスの角穴内風速に対する捕集効率の変化を示すグラフ。
【図12】入側コレクタが通路集合体のみである場合の空気流れを示し、(a)は衝突板がある場合の吸引空気の流通説明図、(b)は衝突板がない場合の流通説明図。
【図13】(a)は通路集合体間に拡大空間を挟んだ場合の吸引空気の挙動説明図、(b)は通路集合体を傾斜して設置した場合の吸引空気の流れ説明図。
【図14】入側コレクタとして多層構造の繊維質フィルタを使用したオイルミスト除去装置の全体縦断面図。
【符号の説明】
【0049】
1…羽根車、2,2A…入側コレクタ、3…出側コレクタ、4…オイルミスト除去装置、5…ファンケース、7…コレクタケース、17…コレクタホルダ、22…第一デミスタ、24…ダスト受け、26,26A,26B,26U,26L…通路集合体、27…エアパス、32,33…ガイドレール、39…空気抜き口、41…オイル抜き口、43…オイル抜きを兼ねた空気抜き口、48…拡大空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルミストを含んだ空気をファンケース内の羽根車の回転によって吸引し、該ファンケースの上流側に位置するコレクタケース内に配置の入側コレクタによってオイルミストを一次的に捕集し、羽根車室を経てファンケース後部に導入された空気から出側コレクタによって残存オイルミストを二次的に除去し、吸引空気からオイルミストを捕捉して浄化できるようにしたオイルミスト除去装置において、
前記入側コレクタは、上下端が開口して垂直もしくは傾斜した多数の独立したエアパスを持ち、吸引空気を上端開口から下端開口に向けて流通させる通路集合体であることを特徴とするオイルミスト除去装置。
【請求項2】
前記通路集合体の各エアパス断面差し渡し寸法は、2.0ないし4.0ミリメートルであることを特徴とする請求項1に記載されたオイルミスト除去装置。
【請求項3】
前記通路集合体は上下複数段に配置され、各段の総開口面積より大きい断面積を持った拡大空間が各段間に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたオイルミスト除去装置。
【請求項4】
前記通路集合体は前記コレクタケースに設けた左右へ延びるガイドレールに沿って側方へ出し入れすることができるコレクタホルダに装着され、該コレクタホルダの下部には落下ダストを収容するダスト受けが前方へ張り出して形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載されたオイルミスト除去装置。
【請求項5】
前記コレクタホルダの入側コレクタ直下の底部には、吸引空気およびオイルの抜き口が設けられていることを特徴とする請求項4に記載されたオイルミスト除去装置。
【請求項6】
前記通路集合体の下端にデミスタが連設され、前記コレクタホルダのデミスタ背後には空気抜き口が、入側コレクタ直下の底部にはオイル抜き口が設けられていることを特徴とする請求項4に記載されたオイルミスト除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−88050(P2006−88050A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−277336(P2004−277336)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(391010596)昭和電機株式会社 (7)
【Fターム(参考)】