説明

オイルミスト電気集塵装置の電極洗浄方式

【課題】電気集塵装置の極板洗浄のために装置内部を水密にし、また水密にした装置内部を満たすために多くの洗浄液が必要であり洗浄後の廃液量が増大するといった課題がある。
【解決手段】スプレーノズルが帯電極部または集塵極部を構成する極板の上端から鉛直上側の任意位置に配置され、その噴射方向を極板に向け、かつ、噴射時に形成される流体の形状の上端が極板上端と平行になるような角度と、噴射時に形成される流体の形状の下端が鉛直下方になるような角度との範囲内に入るようにしたことで、極板に噴射する洗浄液および洗浄液を洗い流す水または温水を最適な角度で配置することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械工場や鋳物工場等で使用される粉塵またはオイルミストなどの浮遊粒子の集塵を行う電気集塵装置において、浮遊粒子が付着した装置内の極板の洗浄手段としてスプレーノズルから洗浄液等を噴射して洗浄を行う構造および噴射手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電気集塵装置の極板洗浄方法は、帯電部と集塵部で構成された電気集塵ユニット部の通風口前後を水密に閉塞する開閉自在な閉塞手段により、内部を洗浄液で満たし、その洗浄液を振動または流動させることで極板の洗浄を行い、洗浄後の廃液を排出する洗浄液排出手段を備えた構造がよく知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−15197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような従来の電気集塵装置の極板洗浄方法では、電気集塵ユニット部を洗浄するために通風口前後を水密に保つことが必要であるが、水漏れを発生させない構造を維持するという課題がある。また電気集塵ユニット部を洗浄するために内部を水で満たすために多くの水を使用することが必要といった課題があり、水漏れが発生し難い簡素な構造を持ち、かつ高い洗浄能力であることが要求されている。また、環境および経済性の観点から水の使用量を低減する洗浄方法であることも要求されている。
【0004】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、高い洗浄能力を確保し、かつ洗浄で使用する水の使用量を低減した洗浄方法を提供することができ、また、洗浄手段としてのスプレーノズルを電気集塵装置の極板上側または下側にまとめて配置したことで、メンテナンス性の向上も図ることのできる電気集塵装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電気集塵装置は上記目的を達成するために、粉塵またはオイルミストなどの浮遊粒子を帯電させる帯電極部と前記帯電極部で帯電された浮遊粒子を集塵極部で電気的に吸着して捕集し、極板に吸着した浮遊粒子の洗浄手段としてスプレーノズル、洗浄に使用する洗浄液および前記洗浄液を洗い流す水または温水を搬送させる手段としてポンプを備えた電気集塵装置において、前記スプレーノズルは、前記帯電極部または前記集塵極部を構成する極板の上端から鉛直上側の任意位置に配置され、その噴射方向は、前記極板に向け、かつ、噴射時に形成される流体の形状の上端が極板上端と平行になるような角度と、噴射時に形成される流体の形状の下端が鉛直下方になるような角度との範囲内に入るようにしたことを特徴としたものである。
【0006】
この手段により極板に噴射する洗浄液および洗浄液を洗い流す水または温水を最適な角度で配置することで、極板に吸着した浮遊粒子の洗浄および除去能力を向上する洗浄手段を提供することができる電気集塵装置が得られる。
【0007】
また他の手段は、前記帯電極部および前記集塵極部の風路入口幅を大きくし、複数個の前記スプレーノズルを配置したことを特徴としたものである。
【0008】
この手段により処理風量が多い大型の装置においても、最適レイアウトにスプレーノズルを配置することで、極板に吸着した浮遊粒子の洗浄および除去能力を向上する洗浄手段を提供することができる電気集塵装置が得られる。
【0009】
また他の手段は、前記スプレーノズルの噴霧方向は、前記極板の面に対し0度を超え90度未満にしたことを特徴としたものである。
【0010】
この手段により極板に任意の角度で洗浄液および洗浄液を洗い流す水または温水を噴射することで、各極板に当たる流量が増加し、吸着した浮遊粒子の洗浄および除去能力を向上する洗浄手段を提供することができる電気集塵装置が得られる。
【0011】
また他の手段は、風路風上側から見て前記帯電極部または前記集塵極部の極板の右面に対し0度を超え90度未満の角度で配置した右側スプレーノズルと、風路風上側から見て前記帯電極部または前記集塵極部の極板の左面に対し0度を超え90度未満の角度で配置した左側スプレーノズルとを有し、右側スプレーノズルで極板の右面を、左側スプレーノズルで各極板の左面の洗浄を行うことを特徴としたものである。
【0012】
この手段により極板の右面および左面をそれぞれ異なるスプレーノズルで噴射、洗浄することで、各極板に当たる流量が増加し、吸着した浮遊粒子の洗浄および除去能力を向上する洗浄手段を提供することができる電気集塵装置が得られる。
【0013】
また他の手段は、右側スプレーノズルで行う洗浄工程と左側スプレーノズルで行う洗浄工程の運転時間が重ならないことを特徴としたものである。
【0014】
この手段により極板の右面および左面を洗浄するそれぞれのスプレーノズルが噴射する運転時間を重ならないようにすることで、スプレーノズルから噴射される流体同士が干渉して各極板に当たる流量が減少することが防止することができ、吸着した浮遊粒子の洗浄および除去能力を向上する洗浄手段を提供することができる電気集塵装置が得られる。
【0015】
また他の手段は、洗浄手段としての前記スプレーノズルを配置した前記帯電極部および前記集塵極部を上下に複数段重ねたことを特徴としたものである。
【0016】
この手段により処理風量が多い大型の装置で電気集塵ユニット部が上下に多段に配置された場合においても、極板に吸着した浮遊粒子の洗浄および除去能力を向上する洗浄手段を提供することができる電気集塵装置が得られる。
【0017】
また他の手段は、前記帯電極部および前記集塵極部を上下に複数段重ねたことを特徴とする電気集塵装置において、最上段に配置した前記帯電極部または前記集塵極部の極板上端側および最下段に配置した前記帯電極部または前記集塵極部の極板下端側に前記スプレーノズルを配置し、前記極板上端側の前記スプレーノズルは極板上端から鉛直上側の任意位置で下方の極板に平行に前記スプレーノズルの流体噴射口を配置し、前記極板下端側の前記スプレーノズルは極板下端から鉛直下側の任意位置で上方の極板に平行に前記スプレーノズルの流体噴射口を配置したことを特徴としたものである。
【0018】
この手段により処理風量が多い大型の装置で電気集塵ユニット部が上下に多段に配置された場合においても、上下に配置されたスプレーノズルから極板を挟みこむように洗浄する構造とすることで、極板に吸着した浮遊粒子の洗浄および除去能力を向上する洗浄手段を提供することができる電気集塵装置が得られる。
【0019】
また他の手段は、前記スプレーノズルを風路風上側の前記帯電極部および風下側の前記集塵極部のそれぞれに配置したことを特徴としたものである。
【0020】
この手段により通風方向に長い電気集塵ユニット部においても極板全体をカバーして噴射することができ、またユニット前後から洗浄を行うことで、極板に吸着した浮遊粒子の洗浄および除去能力を向上する洗浄手段を提供することができる電気集塵装置が得られる。
【0021】
また他の手段は、洗浄手段としての前記スプレーノズルに前記洗浄液の噴射および前記洗浄液を洗い流す水または温水の噴射を兼用させたことを特徴としたものである。
【0022】
この手段により使用するスプレーノズル個数が減り、結果としてメンテナンス部品の削減が図れるためメンテナンスが容易となる電気集塵装置が得られる。
【0023】
また他の手段は、前記スプレーノズルに前記洗浄液および水または温水の噴射と洗浄後に付着した水滴を吹き飛ばすエアブローも兼用させたことを特徴としたものである。
【0024】
この手段により使用するスプレーノズル個数が減り、結果として保守および交換部品の削減が図れるためメンテナンスが容易となる電気集塵装置が得られる。
【0025】
また他の手段は、前記スプレーノズルで噴射する前記洗浄液および水または温水が極板を伝って流れ落ちてきたものを貯水槽に回収し、前記ポンプで循環して再噴射することを特徴としたものである。
【0026】
この手段により前記洗浄液および水または温水を循環させることで再利用するため、洗浄により廃液を抑制することが可能であり、前記洗浄剤および水または温水の使用量が低減できる電気集塵装置が得られる。
【0027】
また他の手段は、前記スプレーノズルで噴射される液体が通過する流路を直径2mm以上としたことを特徴としたものである。
【0028】
この手段により使用するスプレーノズルの目詰まりの頻度を抑制することが可能であり、メンテナンスの回数を低減することが可能となる電気集塵装置が得られる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、帯電極部または集塵極部を構成する複数枚の極板を洗浄する洗浄手段としてのスプレーノズルを極板の上端から鉛直上側の任意位置に配置し、その噴射方向は、前記極板に向け、かつ、噴射時に形成される流体の形状の上端が極板上端と平行になるような角度と、噴射時に形成される流体の形状の下端が鉛直下方になるような角度との範囲内に入るようにしたことにより、極板に対して洗浄液および洗浄液を洗い流す水または温水を最適な角度で噴射することが可能となり、極板に吸着した浮遊粒子の洗浄および除去能力の向上という効果のある電気集塵装置を提供できる。
【0030】
また、複数個のスプレーノズルを極板上部または下部に配置することで、処理風量が多い用途にも対応可能となる電気集塵装置を提供できる。
【0031】
また、1つのスプレーノズルに洗浄液および水または温水の噴射と水滴を吹き飛ばすエアブローを兼用させたことにより、使用するスプレーノズルの種類および個数を低減することが可能となり、メンテナンスが容易な電気集塵装置を提供できる。
【0032】
また、スプレーノズルから噴射した洗浄液および水または温水を装置下部に配置した貯水槽で回収し、スプレーノズルから再噴射が可能な循環経路を設けたことで、洗浄により生成される廃液量を抑制することが可能であり、洗浄剤および水または温水の使用量が少ない電気集塵装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明は、粉塵またはオイルミストなどの浮遊粒子を帯電させる帯電極部と前記帯電極部で帯電された浮遊粒子を集塵極部で電気的に吸着して捕集し、極板に吸着した浮遊粒子の洗浄手段としてスプレーノズル、洗浄に使用する洗浄液および前記洗浄液を洗い流す水または温水を搬送させる手段としてポンプを備えた構造で、前記スプレーノズルは、前記帯電極部または前記集塵極部を構成する極板の上端から鉛直上側の任意位置に配置され、その噴射方向は、前記極板に向け、かつ、噴射時に形成される流体の形状の上端が極板上端と平行になるような角度と、噴射時に形成される流体の形状の下端が鉛直下方になるような角度との範囲内に入るように配置した構造としたものであり、極板に噴射する洗浄液および洗浄液を洗い流す水または温水を最適な角度で配置したことで、極板に吸着した浮遊粒子の洗浄および除去能力を向上する洗浄手段を提供することが可能という作用を有する。
【0034】
また、前記帯電極部および前記集塵極部の風路入口幅を大きくし、複数個の前記スプレーノズルを配置した構造としたものであり、処理風量が多い大型の装置においても、最適なレイアウトにスプレーノズルを配置したことで、極板に吸着した浮遊粒子の洗浄および除去能力を向上する洗浄手段を提供することが可能という作用を有する。
【0035】
また、前記スプレーノズルの噴霧方向を、前記極板の面に対し0度を超え90度未満に配置した構造としたものであり、極板に任意の角度で洗浄液および洗浄液を洗い流す水または温水を噴射することで、各極板に当たる流量が増加し、吸着した浮遊粒子の洗浄および除去能力を向上する洗浄手段を提供することが可能という作用を有する。
【0036】
また、風路風上側から見て前記帯電極部または前記集塵極部の極板の右面に対し0度を超え90度未満の角度で配置した右側スプレーノズルと、風路風上側から見て前記帯電極部または前記集塵極部の極板の左面に対し0度を超え90度未満の角度で配置した左側スプレーノズルとを有し、右側スプレーノズルで極板の右面を、左側スプレーノズルで各極板の左面の洗浄を行う構造としたものであり、極板の右面および左面をそれぞれ異なるスプレーノズルで噴射洗浄することで、各極板に当たる流量が増加し、吸着した浮遊粒子の洗浄および除去能力を向上する洗浄手段を提供することが可能という作用を有する。
【0037】
また、右側スプレーノズルで行う洗浄工程と左側スプレーノズルで行う洗浄工程の運転時間が重ならないように時間差を設けたものであり、極板の右面および左面を洗浄するそれぞれのスプレーノズルが噴射する運転時間を重ならないようにすることで、各スプレーノズルから噴射される流体同士の干渉により極板を洗浄する流量が減少することを防止し、吸着した浮遊粒子の洗浄および除去能力を向上する洗浄手段を提供することが可能という作用を有する。
【0038】
また、洗浄手段としての前記スプレーノズルを配置した前記帯電極部および前記集塵極部を上下に複数段重ねた構造としたものであり、処理風量が多い大型の装置で電気集塵ユニット部が上下に多段に配置された場合においても、極板に吸着した浮遊粒子の洗浄および除去能力を向上する洗浄手段を提供することが可能という作用を有する。
【0039】
また、前記帯電極部および前記集塵極部を上下に複数段重ねた構造で、最上段に配置した前記帯電極部または前記集塵極部の極板上端側および最下段に配置した前記帯電極部または前記集塵極部の極板下端側に前記スプレーノズルを配置し、前記極板上端側の前記スプレーノズルは極板上端から鉛直上側の任意位置で下方の極板に平行に前記スプレーノズルの流体噴射口を配置し、前記極板下端側の前記スプレーノズルは極板下端から鉛直下側の任意位置で上方の極板に平行に前記スプレーノズルの流体噴射口を配置した構造としたものであり、処理風量が多い大型の装置で電気集塵ユニット部が上下に多段に配置された場合においても、上下に配置されたスプレーノズルから極板を挟みこむように洗浄する構造とすることで、極板に吸着した浮遊粒子の洗浄および除去能力を向上する洗浄手段を提供することが可能という作用を有する。
【0040】
また、前記スプレーノズルを風路風上側の前記帯電極部および風下側の前記集塵極部のそれぞれに配置した構造としたものであり、通風方向に長い電気集塵ユニット部においても極板全体をカバーして噴射することができ、またユニット前後から洗浄を行うことで、極板に吸着した浮遊粒子の洗浄および除去能力を向上する洗浄手段を提供することが可能という作用を有する。
【0041】
また、洗浄手段としての前記スプレーノズルに前記洗浄液の噴射および前記洗浄液を洗い流す水または温水の噴射を兼用させた構造としたものであり、使用するスプレーノズル個数が減り、結果として保守および交換部品の削減が図れるためメンテナンス性が向上することが可能という作用を有する。
【0042】
また、前記スプレーノズルに前記洗浄液および水または温水の噴射と洗浄後に付着した水滴を吹き飛ばすエアブローも兼用させた構造としたものであり、使用するスプレーノズル個数が減り、結果として保守および交換部品の削減が図れるためメンテナンス性が向上することが可能という作用が有する。
【0043】
また、前記スプレーノズルで噴射する前記洗浄液および水または温水が極板を伝って流れ落ちてきたものを貯水槽に回収し、前記ポンプで循環して再噴射する構造としたものであり、前記洗浄液および水または温水を循環させることで再利用するため、洗浄による廃液を抑制することが可能であり、前記洗浄剤および水または温水の使用量を低減することが可能という作用を有する。
【0044】
また、前記スプレーノズルで噴射される液体が通過する流路を直径2mm以上とした構造としたものであり、使用するスプレーノズルの目詰まりの頻度を抑制することが可能であり、メンテナンスの回数を低減することが可能という作用を有する。
【0045】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0046】
以下、本発明のオイルミスト電気集塵装置の電極洗浄方式の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0047】
図1は本発明の一実施例によるオイルミスト電気集塵装置の電極洗浄構造の概要を示す斜視図、図2は本発明第二の実施例のオイルミスト電気集塵装置の電極洗浄のスプレーノズル配置を示した同オイルミスト電気集塵装置の電極洗浄構造の平面図、図3は本発明第二の実施例のオイルミスト電気集塵装置の電極洗浄のスプレーノズル配置を示した同オイルミスト電気集塵装置の電極洗浄構造の断面図、図4は本発明第三の実施例のオイルミスト電気集塵装置の電極洗浄のスプレーノズル配置を示した同オイルミスト電気集塵装置の電極洗浄構造の平面図、図5は本発明第四の実施例の電極洗浄のスプレーノズルを備えたオイルミスト電気集塵装置を多段に積載した同電気集塵装置の電極洗浄構造の概要を示す斜視図、図6は本発明第四の実施例のオイルミスト電気集塵装置を多段に積載し、電気洗浄のスプレーノズルをその上下に備えた同電気集塵装置の電極洗浄構造の概要を示す斜視図である。
【0048】
(実施例1)
図1に示すように、本発明の第1の実施例のオイルミスト電気集塵装置は、粉塵、オイルミストなどの浮遊粒子を帯電させる帯電極部1と帯電極部で帯電された浮遊粒子を吸着して捕集する集塵極部2で構成されている。この集塵極部2は、複数段で構成してもよい。また、帯電極部1および集塵極部2は複数枚の極板3で構成されている。帯電極部1、集塵極部2の上部には、極板3と直交する向きに洗浄液、あるいは水・温水を噴射する噴射管8を設ける。この噴射管8には複数個のスプレーノズル4を配置し、洗浄液、あるいは水・温水はこのスプレーノズル4から噴射される。装置下部には、洗浄に使用する洗浄液、あるいは水・温水を貯める貯水槽5が設けられている。この貯水槽5には配管を接続し、ポンプ6を介して配管を流れる流体を制御するバルブ7に接続されており、その後、噴射管8に接続される構造としている。
【0049】
図2および図3に示すように、スプレーノズル4は、極板3の上端から鉛直上側の任意位置に、かつ、流体噴射口が帯電極部1、集塵極部2を構成する極板3に向かって吹き付けるように配置される。噴射される流体は、所定の角度を有した状態で噴射される。スプレーノズル4の取り付けは、噴霧形状の上端が極板上端と平行になるような取付角度を上限とし、他端(噴射される流体の下端)がスプレーノズル4の取付位置から鉛直下方になるような角度αで配置するようにしている。この取付角度は調整することが可能であり、それにより、スプレーノズル4で噴射する流体が極板3を洗浄する範囲を任意に変更することが可能である。なお、実施例ではスプレーノズル4のスプレー形状はフルコーン形のものを使用したが他のものを使用しても同様の効果が得られる。
【0050】
このような構成の電気集塵装置は、運転することによって極板3上に浮遊粒子が付着する。浮遊粒子の付着がすすむと集塵効率が低下してしまうため、適宜洗浄が必要である。洗浄する際には、ポンプ6を運転し、貯水槽5内の洗浄液(あるいは水・温水)を噴射管8へ送る。送られた洗浄液(あるいは水・温水)は、スプレーノズル4から極板3に向けて噴射され、極板3上に付着した浮遊粒子を洗い流すこととなる。なお、スプレーノズル4は洗浄液(あるいは水・温水)を噴射した後、極板などに付着した水滴を吹き飛ばすためのエアブローとしても利用可能としている。さらに、スプレーノズル4から噴射された洗浄液(あるいは水・温水)は極板3を洗浄しながら流れ落ちていき、再び貯水槽5に蓄えられポンプ6によって再循環する構造となっている。
【0051】
上記構成によれば、貯水槽5で蓄えた洗浄液(あるいは水・温水)をポンプ6で循環させることで再利用するため、極板3を洗浄することで発生する廃液の使用量を低減できるという効果がある。なお、洗浄液(あるいは水・温水)を循環で再利用するために、スプレーノズル4で噴射する流体が通過する流路の最小径を2mm以上としている。それにより、スプレーノズル4の目詰まりの頻度を抑制できるという効果がある。
【0052】
また、スプレーノズル4から噴射される洗浄液(あるいは水・温水)は、極板3の上方から所定の角度で噴射され、極板3全体に洗浄液(あるいは水・温水)が行き渡るようになっている。そのため、極板3の洗浄を効率よくできることとなる。
【0053】
(実施例2)
第2の実施例の電気集塵装置は、図4に示すように、スプレーノズル4の噴射方向を帯電極部1または集塵極部2を構成する極板3面に対し、所定の角度β(0度を超え90度未満)で配置したものである。この構成により、スプレーノズル4で噴射する洗浄液(あるいは水・温水)が複数枚備えられた極板3の間に入り込み易くなる。従って、洗浄液(あるいは水・温水)が極板3に効率よく行き渡り、洗浄能力を向上させている。
【0054】
なお、図4では、スプレーノズル4を帯電極部1の風上側(スプレーノズル4a)と集塵極部2の風下側(スプレーノズル4b)それぞれに配置し、風上側にはバルブ7a、風下側にはバルブ7bを接続している。このような構成において、風路風上側のスプレーノズル4aが噴射する際は風路風下側のバルブ7bを閉め、風路風下側のスプレーノズル4bが噴射する際は風路風上側のバルブ7aを閉めて洗浄液(あるいは水・温水)を噴射する。これにより、スプレーノズル4から噴射される流体同士が干渉して極板3を洗浄する流量が減少しないようになり、洗浄性能を向上する効果が得られる。なお、バルブ7aまたは7bは制御手段を使用することで開閉を行うタイミングを可変することを可能としている。
【0055】
(実施例3)
図5に示すように、帯電極部1、集塵極部2、スプレーノズル4を上下2段に配置し、上段に配置した帯電極部1および集塵極部2は上段の上側に備えたスプレーノズル4で洗浄を行い、下段に配置した帯電極部1および集塵極部2は下段の上側に備えたスプレーノズル4で洗浄を行うようにすることで、粉塵またはオイルミストの処理風量が多い大型の装置においても各極板3を洗浄できる効果が得られる。なお、図6に示すように、上段に配置した帯電極部1および集塵極部2は上段の上側に備えたスプレーノズル4で下向きに噴射洗浄を行い、下段に配置した帯電極部1および集塵極部2の下側にスプレーノズル4を配置し、上向きに噴射洗浄を行うように構成することもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、電気集塵装置の電極洗浄方式としてスプレーノズルから噴射する流体を洗浄液および洗浄液を洗い流す水または温水としたが、洗浄液および洗浄液を洗い流す水または温水以外の流体を利用するものにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施例1のオイルミスト電気集塵装置の電極洗浄構造の概要を示す斜視図
【図2】本発明の実施例1のオイルミスト電気集塵装置の電極洗浄のスプレーノズル配置を示した同オイルミスト電気集塵装置の電極洗浄構造の平面図
【図3】本発明の実施例1のオイルミスト電気集塵装置の電極洗浄のスプレーノズル配置を示した同オイルミスト電気集塵装置の電極洗浄構造の断面図
【図4】本発明の実施例2のオイルミスト電気集塵装置の電極洗浄のスプレーノズル配置を示した同オイルミスト電気集塵装置の電極洗浄構造の平面図
【図5】本発明の実施例3の電極洗浄のスプレーノズルを備えたオイルミスト電気集塵装置を多段に積載した同電気集塵装置の電極洗浄構造の概要を示す斜視図
【図6】本発明の実施例3のオイルミスト電気集塵装置を多段に積載し、電気洗浄のスプレーノズルをその上下に備えた同電気集塵装置の電極洗浄構造の概要を示す斜視図
【符号の説明】
【0058】
1 帯電極部
2 集塵極部
3 極板
4 スプレーノズル
4a スプレーノズル
4b スプレーノズル
5 貯水槽
6 ポンプ
7 バルブ
7a バルブ
7b バルブ
8 噴射管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉塵またはオイルミストなどの浮遊粒子を帯電させる帯電極部と前記帯電極部で帯電された浮遊粒子を集塵極部で電気的に吸着して捕集し、極板に吸着した浮遊粒子の洗浄手段としてスプレーノズル、洗浄に使用する洗浄液および前記洗浄液を洗い流す水または温水を搬送させる手段としてポンプを備えた電気集塵装置において、前記スプレーノズルは、前記帯電極部または前記集塵極部を構成する極板の上端から鉛直上側の任意位置に配置され、その噴射方向は、前記極板に向け、かつ、噴射時に形成される流体の形状の上端が極板上端と平行になるような角度と、噴射時に形成される流体の形状の下端が鉛直下方になるような角度との範囲内に入るようにしたことを特徴とする電気集塵装置。
【請求項2】
前記帯電極部および前記集塵極部の風路入口幅を大きくし、複数個の前記スプレーノズルを配置したことを特徴とする請求項1記載の電気集塵装置。
【請求項3】
前記スプレーノズルの噴霧方向は、前記極板の面に対し0度を超え90度未満にしたことを特徴とする請求項1または2記載の電気集塵装置。
【請求項4】
風路風上側から見て前記帯電極部または前記集塵極部の極板の右面に対し0度を超え90度未満の角度で配置した右側スプレーノズルと、風路風上側から見て前記帯電極部または前記集塵極部の極板の左面に対し0度を超え90度未満の角度で配置した左側スプレーノズルとを有し、右側スプレーノズルで極板の右面を、左側スプレーノズルで各極板の左面の洗浄を行うことを特徴とする請求項3記載の電気集塵装置。
【請求項5】
右側スプレーノズルで行う洗浄工程と左側スプレーノズルで行う洗浄工程の運転時間が重ならないことを特徴とする請求項4記載の電気集塵装置。
【請求項6】
洗浄手段としての前記スプレーノズルを配置した前記帯電極部および前記集塵極部を上下に複数段重ねたことを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の電気集塵装置。
【請求項7】
前記帯電極部および前記集塵極部を上下に複数段重ねたことを特徴とする電気集塵装置において、最上段に配置した前記帯電極部または前記集塵極部の極板上端側および最下段に配置した前記帯電極部または前記集塵極部の極板下端側に前記スプレーノズルを配置し、前記極板上端側の前記スプレーノズルは極板上端から鉛直上側の任意位置で下方の極板に平行に前記スプレーノズルの流体噴射口を配置し、前記極板下端側の前記スプレーノズルは極板下端から鉛直下側の任意位置で上方の極板に平行に前記スプレーノズルの流体噴射口を配置したことを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の電気集塵装置。
【請求項8】
前記スプレーノズルを風路風上側の前記帯電極部および風下側の前記集塵極部のそれぞれに配置したことを特徴とする請求項1〜7いずれかに記載の電気集塵装置。
【請求項9】
洗浄手段としての前記スプレーノズルに前記洗浄液の噴射および前記洗浄液を洗い流す水または温水の噴射を兼用させたことを特徴とする請求項1〜8いずれかに記載の電気集塵装置。
【請求項10】
前記スプレーノズルに前記洗浄液および水または温水の噴射と洗浄後に付着した水滴を吹き飛ばすエアブローも兼用させたことを特徴とする請求項1〜8いずれかに記載の電気集塵装置。
【請求項11】
前記スプレーノズルで噴射する前記洗浄液および水または温水が極板を伝って流れ落ちてきたものを貯水槽に回収し、前記ポンプで循環して再噴射することを特徴とした請求項1〜10いずれかに記載の電気集塵装置。
【請求項12】
前記スプレーノズルで噴射される液体が通過する流路を直径2mm以上としたことを特徴とする請求項11記載の電気集塵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−248056(P2009−248056A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−102289(P2008−102289)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】