説明

オキシムの製造方法

【課題】ケトンを過酸化物及びアンモニアによりアンモオキシム化反応させて、良好な収率でオキシムを製造すること。
【解決手段】チタン及びケイ素酸化物を含む触媒の存在下に、ケトンを過酸化物及びアンモニアによりアンモオキシム化反応させてオキシムを製造する方法であって、チタン及びケイ素酸化物を含む触媒が、ケイ素化合物で接触処理されていることを特徴とする。過酸化物としては、有機過酸化物が好ましい。チタン及びケイ素酸化物を含む触媒としては、チタンを含有するシリケート又はチタンを含有するシリカが好ましい。ケトンとしては、シクロアルカノンが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケトンをアンモオキシム化反応してオキシムを製造する方法に関するものである。オキシムは、アミドやラクタムの原料等として有用である。
【背景技術】
【0002】
ケトンをアンモオキシム化反応してオキシムを製造する方法として、特許文献1〜4には、チタン及びケイ素酸化物を含む触媒の存在下に、ケトンを過酸化物及びアンモニアによりアンモオキシム化反応させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−169168号公報
【特許文献2】特開2007−1952号公報
【特許文献3】特開2007−238541号公報
【特許文献4】特開2010−24144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記方法では、オキシムの収率の点で必ずしも十分ではないことがあった。そこで、本発明の目的は、ケトンを過酸化物及びアンモニアによりアンモオキシム化反応させて、良好な収率でオキシムを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意検討の結果、ケイ素化合物で接触処理されているチタン及びケイ素酸化物を含む触媒の存在下に前記反応を行うことにより、前記目的を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、チタン及びケイ素酸化物を含む触媒の存在下に、ケトンを過酸化物及びアンモニアによりアンモオキシム化反応させてオキシムを製造する方法であって、前記触媒が、ケイ素化合物で接触処理されていることを特徴とするオキシムの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ケトンを過酸化物及びアンモニアによりアンモオキシム化反応させて、良好な収率でオキシムを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明では、ケトンを原料に用い、これを所定のチタン及びケイ素酸化物を含む触媒の存在下に、過酸化物及びアンモニアによりアンモオキシム化反応させることにより、オキシムを製造する。
【0009】
原料のケトンは、脂肪族ケトンであってもよいし、脂環式ケトンであってもよいし、芳香族ケトンであってもよく、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。ケトンの具体例としては、アセトン、エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトンのようなジアルキルケトン;メシチルオキシドのようなアルキルアルケニルケトン;アセトフェノンのようなアルキルアリールケトン;ベンゾフェノンのようなジアリールケトン;シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロオクタノン、シクロドデカノンのようなシクロアルカノン;シクロペンテノン、シクロヘキセノンのようなシクロアルケノン等が挙げられる。中でもシクロアルカノンが本発明の好適な対象となる。
【0010】
原料のケトンは、例えば、アルカンの酸化により得られたものであってもよいし、2級アルコールの酸化(脱水素)により得られたものであってもよいし、アルケンの水和及び酸化(脱水素)により得られたものであってもよい。
【0011】
アンモニアは、ガス状のものを用いてもよいし、液状のものを用いてもよく、また有機溶媒の溶液として用いてもよい。ガス状のアンモニアを使用する場合は、必要に応じて不活性ガスで希釈される。前記不活性ガスとしては、例えば、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。アンモニアの使用量は、反応混合物の液相におけるアンモニアの濃度が1重量%以上となるように調整されるのが好ましい。このように反応混合物液相中のアンモニア濃度を所定値以上とすることにより、原料のケトンの転化率と目的物のオキシムの選択率を高めることができ、その結果、目的物のオキシムの収率も高めることができる。このアンモニアの濃度は、好ましくは1.5重量%以上であり、また、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下である。なお、アンモニア使用量の目安は、ケトン1モルに対して、通常1モル以上、さらには1.5モル以上である。
【0012】
本発明のアンモオキシム化反応(ammoximation)では、通常溶媒が使用される。溶媒の例としては、ブタン、ペンタン、へキサン、シクロへキサン、ベンゼン、クメン、トルエン、キシレンのような炭化水素や、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、トリメチルアセトニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル、ベンゾニトリルのようなニトリルや、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、t−アミルアルコールのようなアルコールなどが挙げられる。中でも炭化水素やニトリルが好適である。また、必要に応じそれらの2種以上を用いることもできる。
【0013】
溶媒を使用する場合、その量は、ケトン1重量部に対して、通常1〜500重量部、好ましくは2〜300重量部である。
【0014】
本発明では、ケイ素化合物で接触処理されている、チタン及びケイ素酸化物を含む触媒の存在下に前記アンモオキシム化反応を行う。かかるチタン及びケイ素酸化物を含む触媒を用いることにより、良好な収率でオキシムを製造することができる。
【0015】
チタン及びケイ素酸化物を含む触媒としては、例えば、チタンを含有するシリケート、チタンを含有するシリカ等が挙げられる。
【0016】
チタンを含有するシリケートとしては、例えば、チタンを含有するメソポーラスシリケート、チタンを含有する結晶性シリケート等が挙げられる。メソポーラスシリケートとしては、例えば、MCM−41、MCM−48、HMS、SBA−15、FSM−16、MSU−H、MSU−F等が挙げられる。結晶性シリケートとしては、例えば、シリカライト−1(MFI型)、シリカライト−2(MEL型)、ITQ−1(MWW型)、YNU−2(MSE型)等が挙げられる。チタンを含有するシリケートの中でも、チタンを含有するメソポーラスシリケートが好ましく、チタンを含有するMCM−41、チタンを含有するHMSがより好ましい(以下、チタンを含有するMCM−41、チタンを含有するHMSをそれぞれ、Ti−MCM−41、Ti−HMSと称することがある。)。尚、メソポーラスシリケートとは、2〜50nm程度の細孔径を有するメソ多孔性のシリケートを意味するものである。メソポーラス構造の有無は、銅Kα線によるXRD(X線回折)測定における2θ=0.2〜4.0°のピークの有無で確認することができる。チタンを含有するシリケートにおけるチタンは、シリケート骨格中に組み込まれていてもよく、細孔中に組み込まれていてもよく、シリケート骨格表面に担持されていてもよい。前記のチタンを含有するシリケート、チタンを含有するメソポーラスシリケート、チタンを含有する結晶性シリケート、チタンを含有するMCM−41、チタンを含有するHMSにおいては、それぞれ、シリケート骨格中にチタンを含有するものが好ましい。
【0017】
チタンを含有するシリカとしては、シリカ担体にチタンが担持されてなるものや、チタニア−シリカ複合酸化物等が挙げられる。
【0018】
チタン及びケイ素酸化物を含む触媒に含まれうる、チタン、ケイ素及び酸素以外の元素としては、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、鉄、クロム等が挙げられる。該触媒がチタンを含有するシリケートの場合、チタン、ケイ素及び酸素以外に含まれうる元素は、シリケート骨格中に組み込まれていてもよく、細孔中に組み込まれていてもよく、シリケート骨格表面に担持されていてもよい。該触媒がシリケート骨格中にチタンを含有するシリケート(チタノシリケート)の場合、該シリケートは、骨格を構成する元素として、チタン、ケイ素及び酸素を含むものであり、実質的にチタン、ケイ素及び酸素のみから骨格が構成されるものであってもよいし、骨格を形成する元素としてさらにホウ素、アルミニウム、ガリウム、鉄、クロム等、チタン、ケイ素及び酸素以外の元素を含むものであってもよい。該触媒がチタンを含有するシリカの場合、チタン、ケイ素及び酸素以外に含まれうる元素は、シリカ骨格中に組み込まれていてもよく、シリカ表面に担持されていてもよい。
【0019】
上記チタン及びケイ素酸化物を含む触媒におけるチタンの含有量は、ケイ素に対する原子比(Ti/Si)で表して、通常0.0001以上、好ましくは0.005以上であり、また、通常1.0以下、好ましくは0.5以下である。なお、このチタン及びケイ素酸化物を含む触媒がチタン、ケイ素及び酸素以外の元素を含む場合、該元素の含有量は、ケイ素に対する原子比で表して、通常1.0以下、好ましくは0.5以下である。また酸素は、酸素以外の各元素の含有量及び酸化数に対応して存在しうる。かかるチタン及びケイ素酸化物を含む触媒の典型的な組成は、ケイ素を基準(=1)として、次の式で示すことができる。
【0020】
SiO2・xTiO2・yMnn/2
【0021】
(式中、Mはケイ素、チタン及び酸素以外の少なくとも1種の元素を表し、nは該元素の酸化数であり、xは0.0001〜1.0であり、yは0〜1.0である。)
【0022】
なお、上記式中、Mはチタン、ケイ素及び酸素以外の元素であり、例えば、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、鉄、クロム等が挙げられる。
【0023】
上記チタン及びケイ素酸化物を含む触媒は、水熱合成法、ゾルゲル法などにより調製される。例えば、チタンを含有するメソポーラスシリケートの場合、酸性化合物又は塩基性化合物の存在下、水性溶媒中、原料チタン化合物、原料ケイ素化合物及び構造規定剤(テンプレート)を混合した後、一定の温度及び圧力の条件下、又は後述の温度及び圧力の範囲内で温度及び/又は圧力を変動させる条件下にて熟成して、構造規定剤が組み込まれたチタン含有シリケートを得、このチタン含有シリケートから構造規定剤を除去することにより、チタンを含有するメソポーラスシリケートが調製される。チタニア−シリカ複合酸化物の場合、酸性化合物又は塩基性化合物の存在下、水性溶媒中、原料チタン化合物及び原料ケイ素化合物を混合した後、一定の温度及び圧力の条件下、又は後述の温度及び圧力の範囲内で温度及び/又は圧力を変動させる条件下にて熟成することにより調製される。
【0024】
チタンを含有するメソポーラスシリケートの構造は、使用する構造規定剤の種類や量等により調整することができ、例えば、Ti−MCM−41を調製する場合には、臭化セチルトリメチルアンモニウム塩の如き第四級アンモニウム塩等が用いられ、Ti−HMSを調製する場合には、n−ドデシルアミンの如き一級アミン等が用いられる。一方、上記原料チタン化合物としては、テトラ−n−ブチルオルソチタネートの如きテトラアルキルオルソチタネートや、ペルオキシチタン酸テトラ−n−ブチルアンモニウムの如きペルオキシチタン酸塩、ハロゲン化チタン等が挙げられ、上記原料ケイ素化合物としては、テトラエチルオルソシリケートの如きテトラアルキルオルソシリケートや、シリカ等が挙げられる。また、上記酸性化合物としては、塩化水素の如き無機酸や酢酸の如き有機酸が挙げられ、上記塩基性化合物としては、水酸化アルカリやアンモニアの如き無機塩基やピリジンの如き有機塩基が挙げられる。さらに、上記水性溶媒としては、水や、メタノール、エタノール、プロパノ−ル、2−プロパノ−ル等の水溶性の有機溶媒、または水と水溶性有機溶媒との混合溶媒が挙げられる。
【0025】
チタンを含有するメソポーラスシリケート又はチタニア−シリカ複合酸化物の調製時の熟成における温度は、通常−20〜200℃、好ましくは20〜170℃であり、圧力は、通常、絶対圧で0.1〜1.0MPa、好ましくは0.1〜0.8MPaである。上記熟成の時間は、通常0.5〜170時間、好ましくは4〜72時間である。
【0026】
チタンを含有するメソポーラスシリケートを調製する場合、上記熟成により、構造規定剤が組み込まれているチタン含有シリケートが得られ、次いで、このチタン含有シリケートから構造規定剤を除去する。かかる除去方法としては、メタノール、アセトン、トルエン等の有機溶媒により洗浄する方法、塩酸(塩化水素の水溶液)、硫酸水溶液、硝酸水溶液等により洗浄する方法、200〜800℃で熱処理する方法等が挙げられる。上記除去方法は、いずれか一つを採用してもよく、二つ以上を組み合わせて採用してもよい。
【0027】
なお、Ti−MCM−41は、例えば、マイクロポーラス・アンド・メソポーラス・マテリアルズ、2007年、P312−321に記載の方法に準拠して調製することができ、Ti−HMSは、例えば、ネイチャー、1994年、P321−323に記載の方法に準拠して調製することができる。
【0028】
本発明におけるチタン及びケイ素酸化物を含む触媒は、ケイ素化合物で接触処理されているものである。かかるケイ素化合物としては、有機ケイ素化合物、無機ケイ素化合物が挙げられ、中でも、有機ケイ素化合物が好ましい。有機ケイ素化合物としては、チタン及びケイ素酸化物を含む触媒と反応してその表面に結合可能なものであるのが好ましく、中でも、アルコキシシラン化合物、有機ジシラザン化合物、ハロゲン化有機シラン化合物が好ましく、アルコキシシラン化合物、有機ジシラザン化合物がより好ましい。アルコキシシラン化合物、有機ジシラザン化合物、ハロゲン化有機シラン化合物は、それぞれ1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。アルコキシシラン化合物としては、例えば、テトラアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、トリアルキルアルコキシシラン等が挙げられ、中でも、トリアルキルアルコキシシランが好ましい。テトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラメチルオルソシリケート、テトラエチルオルソシリケート、テトラプロピルオルソシリケート、テトラブチルオルソシリケート等が挙げられ、アルキルトリアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等が挙げられ、ジアルキルジアルコキシシランとしては、例えば、ジメチルジエトキシシラン等が挙げられ、トリアルキルアルコキシシランとしては、例えば、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン等が挙げられる。有機ジシラザン化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシラザンやジ-n-ブチルテトラメチルジシラザンの如きヘキサアルキルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、ジフェニルテトラメチルジシラザン、テトラフェニルジメチルジシラザン等が挙げられ、中でも、ヘキサアルキルジシラザンが好ましい。ハロゲン化有機シラン化合物としては、例えば、クロロトリメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、トリクロロメチルシラン、クロロブロモジメチルシラン、ヨードジメチルブチルシラン等が挙げられる。触媒表面の水酸基をトリアルキルシリル基に変換できるという点で、有機ケイ素化合物として、トリアルキルアルコキシシラン及びヘキサアルキルジシラザンからなる群から選ばれる少なくとも一種を使用するのが好ましい。
【0029】
無機ケイ素化合物としては、例えば、珪酸、シリカゲル、フュ−ムドシリカ、コロイダルシリカ等が挙げられる。
【0030】
ケイ素化合物による接触処理方法としては、例えば、チタン及びケイ素酸化物を含む触媒をケイ素化合物を含む液体又はスラリーに浸漬する方法や、チタン及びケイ素酸化物を含む触媒にケイ素化合物を含む気体を接触させる方法等が挙げられる。前記接触処理は、酸や塩基を適宜添加して、酸性条件下、塩基性条件下又は中性条件下で行うことができ、接触処理の途中で酸性、塩基性又は中性の条件を変更しながら行ってもよい。前記浸漬は、攪拌しながら行うことが好ましい。前記浸漬においては、浸漬後、例えば、浸漬後の混合物をそのまま乾燥することにより、あるいは、浸漬後の混合物から、得られたチタン及びケイ素酸化物を含む触媒を濾過やデカンテーション等により分離した後、必要に応じて洗浄し、乾燥することにより、ケイ素化合物で接触処理されてなるチタン及びケイ素酸化物を含む触媒が得られる。前記乾燥は、常圧下、減圧下のいずれでも行うことができ、乾燥温度は、20〜150℃が好ましく、乾燥時間は、0.5〜100時間が好ましい。
【0031】
ケイ素化合物の使用量は、チタン及びケイ素酸化物を含む触媒100重量部に対し、通常1〜10000重量部、好ましくは5〜2000重量部、さらに好ましくは10〜1500重量部である。尚、上述のとおり、ケイ素化合物としてアルコキシシラン化合物、有機ジシラザン化合物及びハロゲン化有機シラン化合物の内、2種以上を併用する場合、合計使用量が上記範囲となるようにすればよい。また、上述のとおり、ケイ素化合物としてトリアルキルアルコキシシラン及びヘキサアルキルジシラザンを使用する場合、合計使用量が上記範囲となるようにすればよい。
【0032】
ケイ素化合物による接触処理の温度は、液体又はスラリーに浸漬する場合、好ましくは0〜200℃、より好ましくは30〜100℃であり、気体を接触させる場合、好ましくは0〜800℃、より好ましくは100〜500℃である。該接触処理の時間は、液体又はスラリーに浸漬する場合、好ましくは0.5〜50時間、より好ましくは1〜20時間であり、気体を接触させる場合、0.5〜100時間、好ましくは1〜50時間である。
【0033】
ケイ素化合物を含む液体又はスラリーの調製には、ケイ素化合物を安定に存在させるために溶媒を使用してもよい。また、ケイ素化合物及び溶媒を含む液体を気化させて、ケイ素化合物を含む気体として使用してもよい。溶媒の例としては、水、メタノール、エタノール、アセト二トリル、トルエン、キシレン、クメン、テトラヒドロフラン、四塩化炭素、N,N-ジメチルアセトアミド等が挙げられる。上記溶媒は、いずれか一つを採用してもよく、二つ以上を採用してもよい。
【0034】
前記触媒にケイ素化合物を含む気体を接触させる処理は、ケイ素化合物を含む気体とともに不活性ガスを存在させて行ってもよい。前記不活性ガスとしては、例えば窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。
【0035】
なお、チタン及びケイ素酸化物を含む触媒は、必要に応じてバインダーを用いて、粒状やペレット状等の形状に成形してから使用してもよいし、担体に担持して使用してもよい。かかる成形処理又は担持処理は、ケイ素化合物による接触処理の前に行ってもよいし、ケイ素化合物による接触処理の後に行ってもよい。
【0036】
本発明で使用する過酸化物は、過酸化水素や有機過酸化物が挙げられる。中でも、有機過酸化物を使用する場合において、本発明はより効果的に作用する。加えて、アンモオキシム化反応に有機過酸化物を使用すると、有機過酸化物はアルコールやカルボン酸へと変換されるが、これらは蒸留、抽出等により回収可能であるため、コスト面で有利となる。例えば、有機過酸化物としてクメンヒドロペルオキシドを使用した場合、アンモオキシム化反応後に得られる2−フェニル−2−プロパノールは、水添、酸化することによりクメンヒドロペルオキシドとして回収、再使用することができる。
【0037】
ここでいう有機過酸化物としては、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、シクロヘキシルヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシドのようなヒドロペルオキシド;t−ブチルクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジ−t−ヘキシルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、α,α’−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3のようなジアルキルペルオキシド;クミルペルオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、t−ヘキシルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシネオヘプタノエート、t−ヘキシルペルオキシバレート、t−ブチルペルオキシピバレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシラウレート、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカルボネート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルモノカルボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ヘキシルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシベンゾエートのようなペルオキシエステル;ジイソブチリルペルオキシド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジサクシニックアシドペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ジ(4−メチルベンゾイル)ペルオキシドのようなジアシルペルオキシド;ジイソプロピルペルオキシジカルボネート、ジ−n−プロピルペルオキシジカルボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカルボネート、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカルボネート、ジ−sec−ブチルペルオキシジカルボネートのようなペルオキシジカルボネート等が挙げられる。中でも、ヒドロペルオキシドが好ましい。
【0038】
アンモオキシム化反応は、回分式で行ってもよく、半回分式で行ってもよく、連続式で行ってもよく、回分式、半回分式及び連続式の組み合わせで行ってもよい。中でも、半回分式、連続式又はその組み合わせが好ましい。半回分式の場合、攪拌混合式又はループ式の反応器内に反応原料を供給しながら前記反応を行うのが好ましい。連続式の場合、攪拌混合式又はループ式の反応器内に反応原料を供給しながら、反応混合物の液相を抜き出す方式や、触媒を充填した固定床反応器に反応原料を流通させる固定床流通方式で前記反応を行うのが、生産性及び操作性の点から望ましい。
【0039】
攪拌混合式反応器を使用する半回分式の反応は、例えば、前記反応器内にチタン及びケイ素酸化物を含む触媒が懸濁した反応混合物を存在させるようにして、この中にケトン等の反応原料を供給することにより、好適に行うことができる。攪拌混合式反応器を使用する連続式の反応は、例えば、前記反応器内にチタン及びケイ素酸化物を含む触媒が懸濁した反応混合物を存在させるようにして、この中にケトン等の反応原料を供給しながら、反応器からフィルターを介して反応混合物の液相を抜き出すことにより、好適に行うことができる。
【0040】
前記の攪拌混合式反応器を使用する半回分式又は連続式の反応は、あらかじめ溶媒、触媒及び過酸化物を入れた反応器内に、ケトン及びアンモニアを供給するのが好ましく、あらかじめ溶媒、触媒、過酸化物及びアンモニアを入れた反応器内に、ケトン、過酸化物及びアンモニアを供給するのがより好ましい。具体的には、まず、攪拌混合式反応器内に、溶媒、触媒及び過酸化物を導入する。これらの導入順序には特に制限はない。これらを反応器内に導入した後、攪拌して触媒を懸濁させ、次いで、ケトン及びアンモニアを供給する。ケトン及びアンモニアは、それぞれ単独で供給(いわゆる共フィード)してもよいし、これらの混合物を供給してもよい。また、あらかじめ溶媒、触媒及び過酸化物とともにアンモニアを反応器内に入れておき、次いで該反応器内にケトン及び追加のアンモニアを供給してもよいし、あらかじめ溶媒、触媒及び過酸化物を反応器内に入れておき、次いで、ケトンやアンモニアとともに、過酸化物を追加で供給してもよいし、あらかじめ溶媒、触媒及び過酸化物とともにアンモニアを反応器内に入れておき、次いで、ケトンや追加のアンモニアとともに、過酸化物を追加で供給してもよい。なお、前記供給に使用されるケトン、アンモニア及び過酸化物は、溶媒で希釈されていてもよい。
【0041】
攪拌混合式反応器を使用する半回分式又は連続式の反応に使用する前記触媒の量は、反応混合物総量に対して0.1〜20重量%程度であればよい。なお、触媒活性の低下を抑制することを目的として、例えば特開2004−83560号公報に示される如く、シリカやケイ酸等のケイ素化合物を反応系内に共存させてもよい。
【0042】
攪拌混合式反応器を使用する半回分式又は連続式の反応において、反応器内にあらかじめ過酸化物を入れておく場合、あらかじめ入れておく過酸化物の量は、反応器内の混合物における液相中の過酸化物濃度が0.01〜50重量%になるように調整される。また、攪拌混合式反応器を使用する半回分式又は連続式の反応において、反応器内にあらかじめアンモニアを入れておく場合、あらかじめ入れておくアンモニアの量は、反応器内の混合物における液相中のアンモニア濃度が0.1〜15重量%になるように調整される。
【0043】
攪拌混合式反応器を使用する半回分式又は連続式の反応における、過酸化物の供給量は、ケトン1モルに対して、通常0.5〜20モルであり、好ましくは0.5〜15モルである。
【0044】
攪拌混合式反応器を使用する半回分式又は連続式の反応における、アンモニアの供給量は、ケトン1モルに対して、通常1モル以上である。
【0045】
なお、攪拌混合式の反応器は、有機過酸化物の分解を防ぐ観点から、グラスライニングされたものやステンレススチール製のものが好ましい。
【0046】
固定床流通方式での反応は、例えば、チタン及びケイ素酸化物を含む触媒が充填された固定床反応器に、反応原料であるケトン、過酸化物及びアンモニアを、必要に応じて溶媒とともに、アップフロー又はダウンフローで通液することにより反応を実施できる。アンモニアとしてガス状のアンモニアを使用する場合には、ガス状のアンモニアは、必要に応じて不活性ガスで希釈され、その供給方向は、アンモニア以外の原料の供給方向に対して並流、向流のいずれでもよい。反応は、加圧条件下で行うのが好ましい。加圧条件の制御により、触媒と反応原料の接触時間の調整が可能である。
【0047】
なお、固定床反応器は、反応器に原料供給口と反応液取り出し口が設けられた流通式の各種固定床反応器を使用することができる。反応管の本数は特に限定されるものではなく、単管式固定床反応器、多管式固定床反応器のいずれも使用することができる。また、断熱方式又は熱交換方式の固定床反応器が使用可能である。有機過酸化物の分解を防ぐ観点から、グラスライニングされたものやステンレススチール製のものが好ましい。
【0048】
アンモオキシム化反応の反応温度は、通常50〜200℃、好ましくは80〜150℃である。また、反応圧力は、通常、絶対圧で0.1〜5.0MPa、好ましくは0.2〜1.0MPaである。反応混合物の液相にアンモニアが溶解し易くするために、加圧下に反応を行うのが好ましく、この場合、窒素やヘリウム等の不活性ガスを用いて、圧力を調整してもよい。
【0049】
得られた反応混合物の後処理操作については、適宜選択されるが、例えば、反応混合物から前記触媒を濾過やデカンテーション等により分離した後、液相を蒸留に付すことにより、オキシムを分離することができる。分離した触媒は、必要に応じて洗浄、焼成、ケイ素化合物による再接触等の処理が施された後、再使用することができる。また、反応混合物中に溶媒や未反応原料が含まれる場合、前記液相の蒸留により回収された溶媒や未反応原料は再使用することができる。得られたオキシムは、ベックマン転位反応により対応するアミド化合物を製造するための原料として好適に使用される。
【0050】
以下、本発明の実施例及び比較例を示すが、本発明はこれによって限定されるものではない。尚、例中、反応混合物の液相をガスクロマトグラフィーにより分析し、シクロヘキサノンの転化率、シクロヘキサノンオキシムの選択率及び収率を算出した。
【0051】
参照例1
100mlナスフラスコ内に、トルエンを102g、Ti−MCM−41を2.5g、ヘキサメチルジシラザンを7.8g入れ、室温で5分間攪拌した。その後、オイルバスを使用して、混合物を攪拌しながら昇温し、80℃になってから2時間保持した。室温まで冷却後、攪拌を停止して静置し、次いでデカンテーションにより上澄み液を除去した。残った混合物を減圧条件下、60℃で2時間乾燥し、触媒Aを調製した。
【0052】
参照例2
Ti−MCM−41に代えてTi−HMSを使用した以外は参照例1と同様の操作を行い、触媒Bを調製した。
【0053】
実施例1
1Lのオートクレーブ(攪拌混合式反応器)内に、アンモニアを4.3重量%含むアセトニトリル溶液150.8g、クメンヒドロペルオキシドを80重量%含むクメン溶液7.7g、及び触媒Aを2.5g入れ、該反応器内の気相部を窒素で置換した後、密閉し、攪拌しながら反応器内の温度を120℃に昇温した。このときの反応器内の圧力は0.5MPaであった。次いで、該反応器内に、シクロヘキサノンを4.7重量%含むアセトニトリル溶液を10g/h、及びクメンヒドロペルオキシドを2.6重量%含みかつアンモニアを3.9重量%含むアセトニトリル溶液を115g/hの流量でそれぞれ連続的に供給(共フィード)し、反応を開始した。反応開始から1時間経過した時点において、反応器内の反応混合物の容量が約250gに保たれるように、ステンレススチール製の焼結金属フィルターを介して反応混合物の液相を抜き出しながら反応を継続した。尚、反応混合物液相中のアンモニア濃度は、該液相に対し1.1〜4.3重量%で推移した。
【0054】
反応開始から1時間経過した時点において、抜き出した反応混合物の液相をガスクロマトグラフィーで分析したところ、シクロヘキサノンの転化率は99.3%であり、シクロヘキサノンオキシムの選択率は91.7%、収率は91.0%であった。また、シクロヘキサノンイミン(シクロヘキサノンがイミン化した化合物)や該イミン由来の不純物の供給したシクロヘキサノンに対する生成率は8.3%であった。反応開始から6時間経過した時点において、抜き出した反応混合物の液相をガスクロマトグラフィーで分析したところ、シクロヘキサノンの転化率は97.1%であり、シクロヘキサノンオキシムの選択率は81.4%、収率は79.0%であった。また、シクロヘキサノンイミン(シクロヘキサノンがイミン化した化合物)や該イミン由来の不純物の供給したシクロヘキサノンに対する生成率は16.1%であった。
【0055】
実施例2
1Lのオートクレーブ(攪拌混合式反応器)内に、アンモニアを3.9重量%含むアセトニトリル溶液153.3g、クメンヒドロペルオキシドを80重量%含むクメン溶液7.6g、及び触媒Bを2.4g入れ、該反応器内の気相部を窒素で置換した後、密閉し、攪拌しながら反応器内の温度を120℃に昇温した。このときの反応器内の圧力は0.5MPaであった。次いで、該反応器内に、シクロヘキサノンを4.7重量%含むアセトニトリル溶液を10g/h、及びクメンヒドロペルオキシドを2.6重量%含みかつアンモニアを3.8重量%含むアセトニトリル溶液を115g/hの流量でそれぞれ連続的に供給(共フィード)し、反応を開始した。反応開始から1時間経過した時点において、反応器内の反応混合物の容量が約250gに保たれるように、ステンレススチール製の焼結金属フィルターを介して反応混合物の液相を抜き出しながら反応を継続した。尚、反応混合物液相中のアンモニア濃度は、該液相に対し1.4〜3.9重量%で推移した。
【0056】
反応開始から1時間経過した時点において、抜き出した反応混合物の液相をガスクロマトグラフィーで分析したところ、シクロヘキサノンの転化率は99.2%であり、シクロヘキサノンオキシムの選択率は95.5%、収率は94.7%であった。また、シクロヘキサノンイミン(シクロヘキサノンがイミン化した化合物)や該イミン由来の不純物の供給したシクロヘキサノンに対する生成率は4.5%であった。反応開始から6時間経過した時点において、抜き出した反応混合物の液相をガスクロマトグラフィーで分析したところ、シクロヘキサノンの転化率は91.5%であり、シクロヘキサノンオキシムの選択率は98.8%、収率は90.3%であった。また、シクロヘキサノンイミン(シクロヘキサノンがイミン化した化合物)や該イミン由来の不純物の供給したシクロヘキサノンに対する生成率は1.2%であった。
【0057】
比較例1
1Lのオートクレーブ(攪拌混合式反応器)内に、アンモニアを3.0重量%含むアセトニトリル溶液154.6g、クメンヒドロペルオキシドを80重量%含むクメン溶液7.6g、及びTi−MCM−41を2.5g入れ、該反応器内の気相部を窒素で置換した後、密閉し、攪拌しながら反応器内の温度を120℃に昇温した。このときの反応器内の圧力は0.5MPaであった。次いで、該反応器内に、シクロヘキサノンを4.7重量%含むアセトニトリル溶液を10g/h、及びクメンヒドロペルオキシドを2.6重量%含みかつアンモニアを3.8重量%含むアセトニトリル溶液を115g/hの流量でそれぞれ連続的に供給(共フィード)し、反応を開始した。反応開始から1時間経過した時点において、反応器内の反応混合物の容量が約250gに保たれるように、ステンレススチール製の焼結金属フィルターを介して反応混合物の液相を抜き出しながら反応を継続した。尚、反応混合物液相中のアンモニア濃度は、該液相に対し1.0〜3.0重量%で推移した。
【0058】
反応開始から1時間経過した時点において、抜き出した反応混合物の液相をガスクロマトグラフィーで分析したところ、シクロヘキサノンの転化率は94.1%であり、シクロヘキサノンオキシムの選択率は74.9%、収率は70.5%であった。また、シクロヘキサノンイミン(シクロヘキサノンがイミン化した化合物)や該イミン由来の不純物の供給したシクロヘキサノンに対する生成率は23.6%であった。反応開始から6時間経過した時点において、抜き出した反応混合物の液相をガスクロマトグラフィーで分析したところ、シクロヘキサノンの転化率は94.1%であり、シクロヘキサノンオキシムの選択率は73.4%、収率は69.0%であった。また、シクロヘキサノンイミン(シクロヘキサノンがイミン化した化合物)や該イミン由来の不純物の供給したシクロヘキサノンに対する生成率は25.1%であった。
【0059】
比較例2
1Lのオートクレーブ(攪拌混合式反応器)内に、アンモニアを3.3重量%含むアセトニトリル溶液155.0g、クメンヒドロペルオキシドを80重量%含むクメン溶液7.6g、及びTi−HMSを2.5g入れ、該反応器内の気相部を窒素で置換した後、密閉し、攪拌しながら反応器内の温度を120℃に昇温した。このときの反応器内の圧力は0.5MPaであった。次いで、該反応器内に、シクロヘキサノンを4.7重量%含むアセトニトリル溶液を10g/h、及びクメンヒドロペルオキシドを2.6重量%含みかつアンモニアを3.8重量%含むアセトニトリル溶液を115g/hの流量でそれぞれ連続的に供給(共フィード)し、反応を開始した。反応開始から1時間経過した時点において、反応器内の反応混合物の容量が約250gに保たれるように、ステンレススチール製の焼結金属フィルターを介して反応混合物の液相を抜き出しながら反応を継続した。尚、反応混合物液相中のアンモニア濃度は、該液相に対し1.2〜3.3重量%で推移した。
【0060】
反応開始から1時間経過した時点において、抜き出した反応混合物の液相をガスクロマトグラフィーで分析したところ、シクロヘキサノンの転化率は94.8%であり、シクロヘキサノンオキシムの選択率は98.9%、収率は93.8%であった。また、シクロヘキサノンイミン(シクロヘキサノンがイミン化した化合物)や該イミン由来の不純物の供給したシクロヘキサノンに対する生成率は1.0%であった。反応開始から6時間経過した時点において、抜き出した反応混合物の液相をガスクロマトグラフィーで分析したところ、シクロヘキサノンの転化率は96.7%であり、シクロヘキサノンオキシムの選択率は87.2%、収率は84.4%であった。また、シクロヘキサノンイミン(シクロヘキサノンがイミン化した化合物)や該イミン由来の不純物の供給したシクロヘキサノンに対する生成率は12.3%であった。
【0061】
比較例3
1Lのオートクレーブ(攪拌混合式反応器)内に、アンモニアを3.1重量%含むアセトニトリル溶液155.5g、クメンヒドロペルオキシドを80重量%含むクメン溶液7.6g、及びTi−MWW(ケミストリー・レターズ、2000、pp774−775記載と同等の方法によって調製)を2.5g入れ、該反応器内の気相部を窒素で置換した後、密閉し、攪拌しながら反応器内の温度を120℃に昇温した。このときの反応器内の圧力は0.5MPaであった。次いで、該反応器内に、シクロヘキサノンを4.7重量%含むアセトニトリル溶液を10g/h、及びクメンヒドロペルオキシドを2.6重量%含みかつアンモニアを3.8重量%含むアセトニトリル溶液を115g/hの流量でそれぞれ連続的に供給(共フィード)し、反応を開始した。尚、反応混合物液相中のアンモニア濃度は、該液相に対し1.0〜3.1重量%で推移した。
反応開始から1時間経過した時点において、反応混合物の液相を抜き出し、ガスクロマトグラフィーで分析したところ、シクロヘキサノンの転化率は67.8%であり、シクロヘキサノンオキシムの選択率は89.8%、収率は60.9%であった。また、シクロヘキサノンイミン(シクロヘキサノンがイミン化した化合物)や該イミン由来の不純物の供給したシクロヘキサノンに対する生成率は6.9%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン及びケイ素酸化物を含む触媒の存在下に、ケトンを過酸化物及びアンモニアによりアンモオキシム化反応させてオキシムを製造する方法であって、前記触媒が、ケイ素化合物で接触処理されていることを特徴とするオキシムの製造方法。
【請求項2】
前記過酸化物が、有機過酸化物である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記有機過酸化物が、ヒドロペルオキシドである請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記触媒が、チタンを含有するシリケート又はチタンを含有するシリカである請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記シリケートが、メソポーラスシリケートである請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記メソポーラスシリケートが、HMS又はMCM−41である請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記ケイ素化合物が、アルコキシシラン化合物、有機ジシラザン化合物及びハロゲン化有機シラン化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記ケイ素化合物が、トリアルキルアルコキシシラン及びヘキサアルキルジシラザンからなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
あらかじめ溶媒、触媒及び過酸化物を入れた反応器内に、ケトン及びアンモニアを供給して前記アンモオキシム化反応を行う請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
あらかじめ溶媒、触媒、過酸化物及びアンモニアを入れた反応器内に、ケトン、過酸化物及びアンモニアを供給して前記アンモオキシム化反応を行う請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
ケトンが、シクロアルカノンである請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2012−20966(P2012−20966A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160302(P2010−160302)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】