説明

オキセタニル基及びカルボキシル基を有する化合物、並びに、これより得られる重合物

【課題】自己重付加反応を行うことのできる新規な化合物を提供する。
【解決手段】同一分子内にオキセタニル基とカルボキシル基とを有し、下記式(1)で表される化合物、その化合物を自己重付加反応して得られる新規な重合物、及び、その製造方法。(式中、Aは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、Bは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、又は、ニトロ基を表し、また、Bの置換基数nは0〜4の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オキセタニル基及びカルボキシル基を有する化合物、並びに、その化合物の自己重付加反応により得られる重合物に関する。
【背景技術】
【0002】
環状エーテル化合物は、環内の酸素原子の電気陰性度に起因する電荷の偏りにより、種々の試薬に対し高い反応性を示すことが知られている。中でも三員環エーテル構造のエポキシ類は、その大きな歪みエネルギーにより他の環状エーテル類にはない多様な反応性を示すことから、有機合成や高分子合成において大変有用であり、多くの詳細な検討がなされている。さらに、エポキシ化合物を用いた高分子材料は耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性などに優れることから、塗料、接着剤、電気絶縁材料などに幅広く使われている。しかし、その反応性の高さから保存安定性が悪く、さらに変異原性も指摘され始めている。
四員環エーテル構造であるオキセタン類は、エポキシ類と比較して環の歪みエネルギーは同程度であるが保存安定性に優れており、エポキシ化合物で指摘され始めている変異原性は現在認められていない。
オキセタン類を用いた重合物の合成としては、反復構造単位の側鎖に1個のオキセタン環を有する重合体と分子中に2個以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸との付加反応について報告されている(例えば、特許文献1参照。)。また、オキセタン化合物と多官能性カルボン酸化合物との重付加反応による方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、自己重付加反応とは、同一分子内に異なる反応性基を二つ有するモノマーを用いる反応である。したがって、二分子で行う重付加反応とは異なり、モノマーの比率を制御する必要がない。さらに、自己重付加反応により得られたポリマーは、末端に異なる官能性基を有することから、容易にブロック共重合体を合成することができる。しかし、自己重付加反応は、モノマーの反応性等に起因して、モノマーの慎重な分子設計が必要である。
【0003】
【特許文献1】特開平11−236438号公報
【特許文献2】特開2002−003585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一つの目的は、自己重付加反応を行うことのできる新規な化合物を提供することである。
本発明の他の目的は、自己重付加反応による新規な重合物、及び、その製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記従来技術における問題点を克服するために鋭意検討した結果、以下の<1>、<3>及び<4>により上記課題を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。好ましい実施態様である<2>、<5>及び<6>と共に以下に記載する。
<1> 同一分子内にオキセタニル基とカルボキシル基とを有し、下記式(1)で表されることを特徴とする化合物、
【0006】
【化1】

(式(1)中、Aは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、Bは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、又は、ニトロ基を表し、また、Bの置換基数nは0〜4の整数を表す。)
<2> 下記式(2)又は(3)で表される上記<1>に記載の化合物、
【0007】
【化2】

<3> 上記<1>又は<2>に記載の化合物を自己重付加反応させて得られる重合物、
<4> 塩基性触媒存在下自己重付加反応を行う工程を含む上記<3>に記載の重合物の製造方法、
<5> 前記塩基性触媒が、第4オニウム塩、クラウンエーテル錯体類、又は、第3アミンである上記<4>に記載の重合物の製造方法、
<6> 前記塩基性触媒がテトラフェニルホスホニウムブロミドである上記<4>又は<5>に記載の重合物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、末端に2種類以上の異なる官能基を有するヘテロテレケリックポリマーの合成に用いることができ、機械的強度、電気的特性に優れ、自己重付加反応による高分子量の重合物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の化合物は、同一分子内にオキセタニル基とカルボキシル基とを有し、下記式(1)で表されることを特徴とする。
【0010】
【化3】

(式(1)中、Aは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、Bは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、又は、ニトロ基を表し、また、Bの置換基数nは0〜4の整数を表す。)
以下に、本発明の化合物、これより得られる重合物、及び、重合物の製造方法について詳述する。
【0011】
(同一分子内にオキセタニル基とカルボキシル基とを有する化合物)
本発明の化合物は、同一分子内に1つのオキセタニル基と1つのカルボキシル基とを有する化合物であり、上記式(1)で表される化合物である。
上記式(1)のAは、水素原子、又は、炭素数1〜6の分岐を有してもよいアルキル基であり、その中でも水素原子、メチル基、又は、エチル基が好ましい。
上記式(1)のBは、芳香環上の任意の位置における一価の置換基を表し、Bの置換基数nは0〜4を表す。
Bは、炭素数1〜6の分岐を有してもよいアルキル基、炭素数1〜6の分岐を有してもよいアルコキシ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、又は、ニトロ基であり、その中でもメチル基、メトキシ基、塩素原子、臭素原子、又は、ヨウ素原子が好ましい。
nが0の場合は、芳香環上にBがないことを表し、nが1〜4の場合は、芳香環上にBがそれぞれ1〜4つ結合していることを表す。また、nが2以上の場合、芳香環上のそれぞれのBは、互いに同一でもことなっていてもよい。nは0、1又は4が好ましく、0がより好ましい。
上記式(1)のカルボキシル基(−COOH)は、芳香環上の任意の位置に結合したカルボキシル基であり、芳香環上のオキセタニル基を含むアルコキシ基の置換位置に対し、パラ位、又は、メタ位にあるのが好ましい。
【0012】
上記式(1)で表される化合物は、好ましくは下記式(2)又は(3)で表される化合物である。
【0013】
【化4】

【0014】
本発明の同一分子内にオキセタニル基とカルボキシル基とを有する化合物の合成法としては、特に制限されるわけではないが、例えば以下のScheme1及び2に示す方法で合成することができる。
【0015】
【化5】

(Scheme1及び2中、A、B及びnは、式(1)のA、B及びnと同義であり、Xは、ハロゲン原子を表し、また、R’はアルキル基を表す。)
【0016】
上記Scheme1に示すように、上記式(4)に示すフェノールに、塩基存在下上記式(5)に示すハライドを反応させ、上記式(6)に示すエステル化合物が得られる。続いて上記Scheme2に示すように、上記エステル化合物を加水分解し、本発明の同一分子内にオキセタニル基とカルボキシル基とを有し、式(1)で表される化合物を得ることができる。
【0017】
R’としては、アルキル基が好ましく、炭素数1〜6の分岐を有してもよいアルキル基がより好ましく、コストや入手のしやすさの点からエチル基が特に好ましい。
塩基としては、アルカリ金属、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属水素化物、および有機アンモニウムなどが例示できる。この用いられる塩基化合物の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、金属ナトリウム、金属カリウム、トリエチルアミン、またはジイソプロピルエチルアミン等である。これらの中でも、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムが好ましい。
Xはハロゲン原子であり、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
上記式(5)に示す化合物は、上記(4)に示す化合物に対し、1〜5当量用いるのが好ましく、1〜2当量がより好ましい。
上記Scheme1では、前記塩基の使用量が、上記式(4)に示すフェノールに対して1〜2モル用いることが好ましく、1〜1.2モルであるのがより好ましい。
上記Scheme1に用いられる溶媒としては、原料および反応生成物に対して不活性な化合物を用いることができる。好適な反応溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロルベンゼン、アニソール、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、クロロベンゼン及びジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
また、反応速度を促進するため、相間移動触媒を用いてもよい。相間移動触媒としては、公知のものを用いることができるが、第4アンモニウム塩類や第4ホスホニウム塩類が好ましく、その中でもテトラブチルアンモニウムブロマイドがより好ましい。
【0018】
上記Scheme2の加水分解に用いる塩基としては、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属の炭酸塩等が例示できる。具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
上記Scheme2に用いられる溶媒としては、原料および反応生成物に対して不活性な化合物を用いることができる。反応溶媒としては、水と上記Scheme1で用いることのできる溶媒とを併用するのが好ましく、中でも水とテトラヒドロフランとの混合溶媒がより好ましい。
【0019】
上記Schemeの出発物質であるフェノールは、市販のもの用いる、又は、市販の化合物より誘導し得てもよく、特に合成法は限定されないが、例えば、対応するヒドロキシ安息香酸化合物をエステル化し得ることができる。
上記ヒドロキシ安息香酸化合物として、例えば、2−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ−4−メチル安息香酸、3−メチルサリチル酸、4−メチルサリチル酸、5−メチルサリチル酸、3−ヒドロキシ−4−メトキシ安息香酸、4−ヒドロキシ−3−メトキシ安息香酸、3−メトキシサリチル酸、4−メトキシサリチル酸、5−メトキシサリチル酸、6−メトキシサリチル酸、3−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、3−クロロサリチル酸、4−クロロサリチル酸、5−クロロサリチル酸、5−ブロモサリチル酸、5−ヨードサリチル酸、2−ヒドロキシ−5−ニトロ安息香酸、3−ヒドロキシ−4−ニトロ安息香酸、4−ヒドロキシ−3−ニトロ安息香酸等が好ましく挙げられる。これらの化合物は、市販品として入手できる。
【0020】
(重合物、及び、その製造方法)
本発明の重合物は、本発明の同一分子内にオキセタニル基とカルボキシル基とを有する化合物を自己重付加反応させて得られる重合物である。
本発明の重合物は、塩基性触媒存在下自己重付加反応を行う工程を含む製造方法により製造することができる。
この製造方法によりポリマー中の繰り返し構造が、下記式(7)で代表される重合物が得られる。また、得られた重合物を再度重合させて高分子量化する工程を行うこともできる。
したがって、この重合物は、オキセタニル基とカルボキシル基とを末端に有する重合物である。
【0021】
【化6】

【0022】
上記式(7)のA、B、及び、nは、式(1)のA、B、及び、nと同義である。
上記式(7)のmは、2〜10,000が好ましく、2〜1,000がより好ましく、2〜300がさらに好ましく、2〜100が特に好ましい。
【0023】
(塩基性触媒)
本発明で行う自己重付加反応には、第4オニウム塩、クラウンエーテル錯体または第3アミンなどを塩基性触媒として用い、これらの存在下に共重合反応させることが好ましい。これらの塩基性触媒の中でも、オキセタニル基とカルボキシル基との反応性の面から、第4オニウム塩またはクラウンエーテル錯体の使用が好ましい。
【0024】
第4オニウム塩としては、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルクロライド、テトラエチルアイオダイド、n−ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムブロマイド、セチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルジメチルベンジルアンモニウムブロマイド、セチルピリジウムサルフェート、テトラエチルアンモニウムアセテート、トリメチルベンジルアンモニウムベンゾエート、トリメチルベンジルアンモニウムボレート、5−ベンジル−1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネニウムクロライド、及び5−ベンジル−1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネウムテトラフルオロボレート等の第4アンモニウム塩類が例示でき、並びにアンモニウムテトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムアイオダイド、テトラフェニルホスホニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、トリフェニルメトキシメチルホスホニウムクロライド、トリフェニルメチルカルボニルメチルホスホニウムクロライド、トリフェニルエトキシカルボニルメチルホスホニウムクロライド、トリオクチリベンジルホウホニウムクロライド、トリオクチルメチルホスホニウムクロライド、トリオクチルエチルホスホニウムアセテート、及びテトラオクチルホスホニウムクロライド、トリオクチルエチルホスホニウムジメチルホスフェートなどの第4ホスホニウム塩類が例示できる。これらの中でも第4ホスホニウム塩類を用いることが好ましく、反応性の面からテトラフェニルホスホニウムブロミドが特に好ましい。
【0025】
クラウンエーテル錯体としては、12−クラウン−4、15−クラウン−5、18−クラウン−6、ジベンゾ−18−クラウン−6、21−クラウン−7、及び24−クラウン−8などが挙げられる。これらは、KF、KCl、KBr、CsF、CsCl、CsBr、チオシアン酸カリウム、ナトリウムフェノキサイド、カリウムフェノキサイド、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、酢酸ナトリウム、または酢酸カリウムなどの無機塩類あるいは有機塩類との錯体として用いられる。これらの中でもジベンゾ−18−クラウン−6が好ましい。
【0026】
第3アミンとしては、ジエチルアミノプロピルアミン、N−アミノエチルピペラジン、ベンジルジメチルアミン及びトリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどが例示できる。
【0027】
本発明の重合物の製造方法における反応条件は、反応に用いる同一分子内にオキセタニル基とカルボキシル基とを有する化合物の種類により、決定すればよい。具体的には、以下の各条件で行うことが好ましい。また、反応は連続式および回分式のいずれでも行なうことができる。
【0028】
(触媒濃度)
前記塩基性触媒の使用量は、同一分子内にオキセタニル基とカルボキシル基とを有する化合物に対して、1〜20mol%であることが好ましく、より好ましくは3〜15mol%であり、特に好ましくは10mol%である。上記範囲であると、反応速度が速く、コストの面でも好適である。
【0029】
(反応温度、及び、反応時間)
前記自己重付加反応における反応温度は、120〜200℃の範囲で行うことが好ましく、130〜190℃がより好ましく、170℃が特に好ましい。一方、反応時間については特に限定はないが、反応温度との兼ね合いで、6〜30時間の反応時間が好ましく、24時間が特に好ましい。
【0030】
(反応溶媒)
前記自己重付加反応は、無溶媒で行っても、反応溶媒を用いて行ってもよい。反応溶媒としては、例えば、トルエン、アニソール、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン及びジメチルスルホキシドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
本発明の重合物は、同一分子内にオキセタニル基とカルボキシル基を有する化合物が自己重付加反応したものであり、その結果、機械的性質(引っ張り強度など)、電気的特性(電気絶縁性など)、耐熱性、耐薬品性、接着性などに優れた樹脂であり、各種用途で利用することができる。
この場合、本発明の重合物の効果を損なわない範囲内であれば他の樹脂と配合して用いても良い。また、公知の各種添加剤、例えば、無機充填剤、強化材、着色剤、安定剤(熱安定剤または耐候性改良剤など)、増量剤、粘度調節剤、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、変色防止剤、抗菌剤、防黴剤、老化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、発泡剤、及び/又は離型剤などを添加・混合することができる。上記着色剤としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、及び金属錯塩染料などの染料、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、及びマイカなどの無機顔料、並びにカップリングアゾ系、縮合アゾ系、アンスラキノン系、チオインジゴ系、ジオキサゾン系、及びフタロシアニン系などの有機顔料などが挙げられる。また、上記安定剤としては、ヒンダードフェノール系、ヒドラジン系、リン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、及びオキザリックアシッドアニリド系などの化合物が挙げられる。さらに、上記無機充填剤としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、炭素繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化珪素繊維、塩基性硫酸マグネシウム繊維、ホウ素繊維、及びステンレス鋼繊維などの無機質及び金属繊維、銅、鉄、ニッケル、亜鉛、錫、鉛、ステンレス鋼、アルミニウム、金、及び銀などの金属粉末、木粉、マグネシア、カルシアなどの酸化物、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、石英粉末、タルク、クレイ、各種金属の水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、ホウ珪酸塩、アルミノ珪酸塩、チタン酸塩、塩基性硫酸塩、塩基性炭酸塩及びその他の塩基性塩、ガラス中空球、ガラスフレークなどのガラス材料、炭化珪素、窒化アルミ、ムライト、コージェライトなどのセラミック、フライアッシュ、及びミクロシリカなどが挙げられる。
【実施例】
【0032】
以下に実施例を用いて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、Mnは数平均分子量、Mw/Mnは分子量分布である。
【0033】
(合成例1)
<4−(3−エチル−オキセタニルメトキシ)−安息香酸[p−EOMBA]の合成>
【0034】
【化7】

【0035】
回転子を入れた二口ナスフラスコに、p−ヒドロキシ安息香酸エチル 1.66 g(10 mmol)、塩基として水酸化カリウム(KOH) 0.56 g(10 mmol)、溶媒としてN−メチルピロリドン(NMP) 15 mLを加え、50℃で1時間攪拌した。次に、オイルバスを80℃にし、相間移動触媒としてテトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB) 0.16 g(5 mol%)、3−エチル−3−クロロメチルオキセタン(CEO) 2.03 mL(15 mmol)をゆっくり滴下した後、24時間反応を行った。反応終了後、塩酸を加えて母液の中和を行った後、酢酸エチルを用いて抽出操作を2回行った。続いて水洗を3回行い、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、乾燥剤をろ別し、溶媒を減圧留去した。
次に、得られた粘性液体をテトラヒドロフラン(THF) 50 mLに溶解させた。このTHF溶液に、KOH 2.24 gを溶解させた水溶液(20 mL)を加え、室温で24時間反応を行った。反応終了後、THFを減圧留去し、析出した固体を蒸留水で希釈して酸析を行った。次に、酢酸エチルを用いて抽出操作を2回行い、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤をろ別し、有機相を減圧留去後、析出した固体をn−ヘキサン/酢酸エチルの混合溶媒を用いて再結晶を行い、白色針状結晶(収率:66%、収量:1.56g)を得た。
【0036】
融点:131.4〜132.6℃
IR (KBr, cm-1) 1708 (νC=O carboxylate), 1606 (νC=C aromatic), 1274 and 1252 (νC-O-C carboxylate), 1166 (νC-O-C ether), 981 (νC-O-C cyclic ether).
【0037】
【化8】

1H NMR (500 MHz, DMSO, TMS) : δ(ppm) = 0.91 (t, 3.0 H, Jab = 7.5 Hz, Ha), 1.80 (q, 2.0 H, Jba = 7.5 Hz, Hb), 3.39 (s, 2.0 H, Hd), 4.36 (d, 2.0 H, Jcc = 6.0 Hz, Hc), 4.45 (d, 2.0 H, Jcc = 6.0 Hz, Hc), 7.08 (d, 4.0 H, Jef =6.0 Hz, He), 7.91 (d, 4.0 H, Jfe =6.0 Hz, Hf).
【0038】
【化9】

13C NMR (125 MHz,DMSO-d6,TMS )δ(ppm) = 8.7 (Ca), 26.6 (Cb), 43.1 (Cd), 77.2 (Ce), 79.3 (Cc), 113.6 (Cg), 122.1 (Ci), 132.9 (Ch), 163.3 (Cf), 171.4 (Cj).
【0039】
(合成例2)
<3−(3−エチル−オキセタニルメトキシ)−安息香酸[m−EOMBA]の合成>
【0040】
【化10】

【0041】
回転子を入れた二口ナスフラスコに、m−ヒドロキシ安息香酸エチル(m−HBAE) 8.30 g(50 mmol)、塩基として水酸化カリウム(KOH) 2.80 g(50 mmol)、溶媒としてN−メチルピロリドン(NMP) 50 mLを加え、50℃で1時間攪拌した。次に、オイルバスを80℃にし、相間移動触媒としてテトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB) 0.80 g(5 mol%)、3−エチル−3−クロロメチルオキセタン(CEO) 10.15 mL(75 mmol)をゆっくり滴下した後、24時間反応を行った。反応終了後、塩酸を加えて母液の中和を行った後、酢酸エチルを用いて抽出操作を2回行った。続いて水洗を3回行い、溶媒を減圧留去した。
次に、得られた粘性液体をテトラヒドロフラン(THF) 40 mLに溶解させた。このTHF溶液に、KOH 5.60 gを溶解させた水溶液(100 mL)を加え、室温で24時間反応を行った。反応終了後、THFを減圧留去し酸析を行った。次に、酢酸エチルを用いて抽出操作を2回行い、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤をろ別し、有機相を減圧留去後、得られた粘性液体をn−ヘキサンに落とし個体を析出させた。析出した固体をn−ヘキサン/酢酸エチルの混合溶媒を用いて再結晶を行い、白色針状結晶(収率:67.3%、収量:7.94g、融点:88.2〜88.7℃)を得た。構造確認はIR、1H NMR、13C NMRにて行った。
【0042】
IR (KBr, cm-1) 1697 (νC=O carboxylate), 1587 (νC=C aromatic), 1288 and 1265 (νC-O-C carboxylate), 1166 (νC-O-C ether), 971 (νC-O-C cyclic ether).
【0043】
【化11】

1H NMR (500 MHz, DMSO, TMS) : δ(ppm) = 0.90 (t, 3.0 H, Jab = 7.5 Hz, Ha), 1.81 (q, 2.0 H, Jba = 7.5 Hz, Hb), 4.15 (s, 2.0 H, Hd), 4.39〜4.47 (AB qultet, 4.0 H, Jcc = 6.0 Hz, Hc), 7.25 (d, 1.0 H, Jef = 7.5 Hz, He), 7.42 (t, 1.0 H, Jf e =7.5 Hz, Hf), 7.50 (s, 1.0 H, Hh), 7.56 (d, 1.0 H, Jgf =7.5 Hz, Hg).
【0044】
【化12】

13C NMR (125 MHz,DMSO-d6,TMS ) δ(ppm) = 7.7 (Ca), 25.9(Cb), 39.2 (Cd), 70.0 (Ce), 76.4 (Cc), 114.4 (CL), 119.1 (Cg), 121.5 (Ci), 129.4 (Ch), 131.9 (Cj), 158.4 (Cf), 166.7 (Ck).
元素分析 C13H16O4 計算値(%) C : 66.09 H : 6.83 実測値(%) C : 65.95 H : 7.06
【0045】
(実施例1)
<ポリ−4−(3−エチル−オキセタニルメトキシ)−安息香酸 Poly(p−EOMBA)合成>
【0046】
【化13】

【0047】
ドライバッグ中(湿度<10%)でアンプル管にテトラフェニルホスホニウムブロミド(TPPB)を0.021 g (5 mol%)と回転子を入れ、60℃、5時間減圧乾燥をした。その後ドライバッグ中で、アンプル管にp−EOMBAを0.236 g (1.0 mmol)、o−ジクロロベンゼンを0.25 mL量り取った。アンプル管に二方コックを接続し、密閉状態でドライバッグから取り出し、次の方法で脱気した。アンプル管を液体窒素に入れ、試料が完全に凍結してから減圧し数分後アンプル管を水中にいれ解凍し、乾燥高純度窒素で置換した。この操作を二回続けて行い、再び凍結させ減圧状態でアンプル管を封管した。試料が解凍したのを確認し、170℃のオイルバスで24時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を少量のクロロホルムで希釈し蒸留水で三回洗浄した。有機相を回収し無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、クロロホルムを減圧留去した。得られた溶液をn−へキサン中に注ぎ、析出した固体をろ別回収し、良溶媒としてクロロホルム、貧溶媒としてジエチルエーテルを用い二回再沈殿精製を行った。その後減圧乾燥を行い、白色粉末の固体(収率:81%、収量:0.19g、Mn:1st=9,200、2nd=1,600、total=3,200、Mw/Mn:3.03)を得た。
【0048】
IR (KRS, cm-1) 3398 (νO-H), 1711 (νC=O ester), 1605 (νC=C aromatic), 1251 (νC-O-C ester), 1166 (νC-O-C ether).
【0049】
【化14】

1H NMR (500 MHz, DMSO, TMS) : δ(ppm) = 0.86〜1.07 (m, 3.0 H, Ha), 1.24〜1.67 (m, 2.0 H, Hb), 3.44〜3.49 (m, 2.0 H, Hd), 3.82〜4.43 (m, 4.0 H, Hc, He), 4.78 (s, 1.0 H, Hh), 7.11 (m, 2.0 H, Hf), 7.81〜7.85 (m, 2.0 H, Hg).
【0050】
IRスペクトルにより、981 cm-1のオキセタンの環状エーテルに起因する吸収が消失し、3398 cm-1付近に水酸基に起因する新たな吸収を確認した。また、1H NMRスペクトルより、4.40〜4.50 ppm付近のオキセタンのメチレンプロトンに起因するシグナルが消失し、新たに4.78 ppmにオキセタンが開環したことを意味する水酸基に起因するシグナルを確認した。以上のことから、目的とするポリマーが得られたことが明らかとなった。
【0051】
(実施例1−2)
<後重合>
【0052】
【化15】

実施例1と同様な反応条件で反応時間を24hとし、Poly(p−EOMBA)(Mn=18,000、Mw/Mn=1.2)の後重合を行った。その結果、Mn=41,000、Mw/Mn=2.6のポリマーが収率57%で得られた。後重合を行うことにより分子量が増加したことからpoly(p−EOMBA)同士の反応が起きていると考えられる。以上の結果から、poly(p−EOMBA)が末端にオキセタニル基とカルボキシル基を有するヘテロテレケリックポリマーであるということが確認された。
【0053】
(実施例2)
<ポリ−3−(3−エチル−オキセタニルメトキシ)−安息香酸 Poly(m−EOMBA)合成>
【0054】
【化16】

【0055】
ドライバッグ中(湿度<10%)でアンプル管にテトラフェニルホスホニウムブロミド(TPPB)を0.042 g (10 mol%)と回転子を入れ、60℃、5時間減圧乾燥をした。その後ドライバッグ中で、アンプル管にm−EOMBAを0.236 g (1.0 mmol)、o−ジクロロベンゼンを0.1 mL量り取った。アンプル管に二方コックを接続し、密閉状態でドライバッグから取り出し、次の方法で脱気した。アンプル管を液体窒素に入れ、試料が完全に凍結してから減圧し数分後アンプル管を水中にいれ解凍し、乾燥高純度窒素で置換した。この操作を二回続けて行い、再び凍結させ減圧状態でアンプル管を封管した。試料が解凍したのを確認し、170℃のオイルバスで24時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を少量のジメチルホルムアミド(DMF)で希釈し、メタノールで二回再沈殿精製を行った。その後減圧乾燥を行い、白色粉末の固体(収率:93%、収量:0.22g、Mn=25,100、Mw/Mn:1.26)を得た。
【0056】
IR (KRS, cm-1) 3434 (νO-H), 1718 (νC=O ester), 1587 (νC=C aromatic), 1272 (νC-O-C ester), 1103 (νC-O-C ether).
【0057】
【化17】

1H NMR (500 MHz, DMSO, TMS) : δ(ppm) = 0.84 (s, 3.0 H, Ha), 1.24〜1.64 (m, 2.0 H, Hb), 3.49 (s, 2.0 H, Hd), 3.78〜3.91 (m, 2.0 H, He), 4.08〜4.40 (m, 2.0 H, Hc), 4.75 (s,0.5 H, Hj), 7.16 (s, 1.0 H, Hf), 7.34〜7.48 (m, 3.0 H, Hg,Hh,Hi).
【0058】
IRスペクトルにより、971 cm-1のオキセタンの環状エーテルに起因する吸収が消失し、3434 cm-1付近に水酸基に起因する新たな吸収を確認した。また、1H NMRスペクトルより、4.34〜4.47 ppm付近のオキセタンのメチレンプロトンに起因するシグナルが消失し、新たに4.75 ppmにオキセタンが開環したことを意味する水酸基に起因するシグナルを確認した。以上のことから、目的とするポリマーが得られたことが明らかとなった。
【0059】
(実施例2−2)
<後重合>
【0060】
【化18】

実施例2と同様な反応条件で反応時間を24hとし、Poly(m−EOMBA)(Mn=16,300、Mw/Mn=1.2)の後重合を行った。その結果、Mn=39,100、Mw/Mn=2.9のポリマーが収率39%で得られた。後重合を行うことにより分子量が増加したことからpoly(m−EOMBA)同士の反応が起きていると考えられる。以上の結果から、poly(m−EOMBA)が末端にオキセタニル基とカルボキシル基を有するヘテロテレケリックポリマーであるということが確認された。
【0061】
(合成例3)
<3−クロロ−4−(3−エチル−オキセタニルメトキシ)−安息香酸[3−Cl−p−EOMBA]合成>
【0062】
【化19】

【0063】
出発物質としてp−ヒドロキシ安息香酸エチルの代わりに、3−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸エチルを用いた以外は、上記4−(3−エチル−オキセタニルメトキシ)−安息香酸[p−EOMBA]の合成と同様な方法で、3−クロロ−4−(3−エチル−オキセタニルメトキシ)−安息香酸[3−Cl−p−EOMBA]を得ることができる。
【0064】
(実施例3)
<ポリ−3−クロロ−4−(3−エチル−オキセタニルメトキシ)−安息香酸 Poly(3−Cl−p−EOMBA)合成>
【0065】
【化20】

【0066】
p−EOMBAの代わりに3−Cl−p−EOMBAを用いた以外は、実施例1と同様な方法で、ポリ−3−クロロ−4−(3−エチル−オキセタニルメトキシ)−安息香酸 Poly(3−Cl−p−EOMBA)を得ることができる。
【0067】
(合成例4)
<2−(3−エチル−オキセタニルメトキシ)−安息香酸[o−EOMBA]の合成>
【0068】
【化21】

【0069】
o−ヒドロキシ安息香酸エチル(o−HBAE) 1.66 g(10 mmol)と3−エチル−3−クロロメチルオキセタン(CEO)2.03 mL(15 mmol)の反応を、KOH 0.56 g(10 mmol)を塩基として用い、TBAB 0.16 g(5 mol%) 存在下、NMP 10 mL中、80℃、24時間の条件で行い、続いてアルカリ加水分解反応を行った。その結果、収率52%でo−EOMBAを得た。構造確認はIR、1H NMR、13C NMR、元素分析で行った。IRスペクトルにおいて、977 cm-1にオキセタニル基に起因する新たな吸収を確認した。また、1H NMRスペクトルよりフェノール性水酸基およびエチルエステルに起因するシグナルが消失し、4.31〜4.48 ppm付近にオキセタニル基のメチレンプロトンに起因するシグナルが観測された。また、元素分析の値も計算値と一致した。
【0070】
融点:34.9〜35.7℃
IR (KBr, cm-1) 1673 (νC=O carboxylate), 1602 (νC=C aromatic), 1301 and 1245 (νC-O-C carboxylate), 1166 (νC-O-C ether), 977 (νC-O-C cyclic ether).
【0071】
1H NMR (500 MHz, DMSO, TMS) : σ ppm = 0.89 (t, 3.0 H, Jab = 7.5 Hz, Ha), 1.81 (q, 2.0 H, Jba = 7.5 Hz, Hb), 4.14 (s, 2.0 H, Hd), 4.31, 4.48 (AB qultet, 4.0 H, Jcc = 6.0 Hz, Hc), 7.02 (t, 1.0 H, Jef = 7.5 Hz, He), 7.20 (d, 1.0 H, Jgfe =7.5 Hz, Hg), 7.49 (t, 1.0 H, Jfgh =7.5 Hz, Hf)、7.63 (d, 1.0 H, Jhg =7.5 Hz, Hh), 12.60 (s, 0.68 H, Hi).
【0072】
【化22】

【0073】
13C NMR (125 MHz,DMSO-d6,TMS ) δ(ppm):8.06 (Ca), 26.18 (Cb), 42.68 (Cd), 71.02 (Ce), 76.76 (Cc), 113.93 (Cf), 120.41 (Cj), 130.53 (Ch), 132.92 (Ci), 157.49 (Cg), 166.03 (Ck), 178.53 (Cl).
【0074】
【化23】

【0075】
元素分析 C13H16O4:計算値 (%) C : 66.09 H : 6.83、実測値 (%) C : 66.14 H : 6.99
【0076】
(実施例4)
<ポリ−3−(3−エチル−オキセタニルメトキシ)−安息香酸 Poly(m−EOMBA)合成>
【0077】
【化24】

【0078】
触媒としてTPPBを5 mol%用いて、o−EOMBAの自己重付加反応をo−ジクロロベンゼン(10 mol/L)中、150℃で24時間にて、アンプル管中で行った。その結果、Mn=14,500、Mw/Mn=2.83のPoly(o−EOMBA)が収率85%で得られた。得られたポリマーの構造確認はIR、1H NMRにより行った。その結果、IRスペクトルにより、977 cm-1のオキセタニル基に起因するピークが消失し、さらにポリマー側鎖の水酸基に起因するピークが3434 cm-1に現れたことを確認した。また、1H NMRスペクトルより、4.31〜4.48 ppm付近のオキセタンのメチレンプロトンに起因するシグナルが消失し、新たに4.75 ppmにオキセタニル基が開環したことにより生じる水酸基に起因するプロトンが出現したことを確認した。
【0079】
IR (KRS, cm-1) 3434 (νO-H), 1668 (νC=O ester), 1585 (νC=C aromatic), 1245 (νC-O-C ester), 1170 (νC-O-C ether).
【0080】
1H NMR (600 MHz, DMSO, TMS) : σ ppm = 0.80-0.91(m, 3.0 H, Ha), 1.43-1.56 (m, 2.0 H, Hb), 3.63-4.09 (m, 4.0 H, Hd.e), 4.26-4.37 (m, 2.0 H, Hc), 4.75 (s, 0.7 H, Hj), 6.98 (s, 1.0 H, Hf), 7.15 (s, 1.0 H, Hh,), 7.50 (s, 1.0 H, Hg), 7.65 (s, 1.0 H, Hi).
【0081】
【化25】

【0082】
(実施例4−2)
<後重合(post-polymerization)>
【0083】
【化26】

【0084】
触媒としてTPPBを5 mol%用いて、poly−o−EOMBA(Mn=1,000、Mw/Mn=1.8)0.24 g (1.0 mmol)の後重合をo−ジクロロベンゼン(10 mol/L)中、150℃で24時間アンプル管中で行った。その結果、収率:75.2%(収量:0.18g)、Mn=4,600、Mw/Mn=2.26でポリマーが得られた。
後重合を行うことにより分子量が増加したことからpoly(o−EOMBA)同士の反応が起きていると考えられる。以上の結果から、poly(o−EOMBA)が末端にオキセタニル基とカルボキシル基を有するヘテロテレケリックポリマーであるということが確認された。
また、後重合において測定したGPCチャートからも、後重合によって分子量が増加していることが見て取れた。また、後重合後のポリマーのチャートからは低分子量側に肩が現れた。この肩は後重合時の副反応として進行した環化反応によるものと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一分子内にオキセタニル基とカルボキシル基とを有し、
下記式(1)で表されることを特徴とする
化合物。
【化1】

(式(1)中、Aは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、Bは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、又は、ニトロ基を表し、また、Bの置換基数nは0〜4の整数を表す。)
【請求項2】
下記式(2)又は(3)で表される請求項1に記載の化合物。
【化2】

【請求項3】
請求項1又は2に記載の化合物を自己重付加反応させて得られる重合物。
【請求項4】
塩基性触媒存在下自己重付加反応を行う工程を含む
請求項3に記載の重合物の製造方法。
【請求項5】
前記塩基性触媒が、第4オニウム塩、クラウンエーテル錯体類、又は、第3アミンである請求項4に記載の重合物の製造方法。
【請求項6】
前記塩基性触媒がテトラフェニルホスホニウムブロミドである請求項4又は5に記載の重合物の製造方法。

【公開番号】特開2006−241149(P2006−241149A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−29445(P2006−29445)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(592218300)学校法人神奈川大学 (243)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】